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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1326431
審判番号 不服2016-8413  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-07 
確定日 2017-03-23 
事件の表示 特願2014-175723号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 49230号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月29日の出願であって、平成27年9月3日付け拒絶理由通知に対して、同年10月29日付けで手続補正がなされたところ、平成28年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月7日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、明細書及び特許請求の範囲の請求項1?2を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前に、

(平成27年10月29日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技の進行に応じて演出を行う遊技機であって、
遊技の進行に関する主制御処理を実行し、当該主制御処理を実行して得られた遊技に関する情報を含むデータを生成して出力する遊技制御手段と、
前記遊技制御手段から出力されたデータを受け付け、当該データに基づき演出に関わる処理を行う演出制御手段と、を備え、
前記遊技制御手段により生成される前記データは、
aビット(aは3以上の整数)のサイズで、先頭の1ビットの値が1または0の何れか一方に特定されている第1データ部と、
n×aビット(nは1以上の整数)のサイズで、先頭の1ビットの値が前記第1データ部の先頭の1ビットの値とは異なる値に特定されていることにより当該第1データ部と識別可能な第2データ部と、を含み、
前記第1データ部を構成する所定のビットと、前記第2データ部を構成するビットとを用いて、所定の種類のデータが記録され、当該第1データ部における当該所定のビットを除く残りのビットを用いて、当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータが記録されることを特徴とする、遊技機。」

とあったものを、

(本件補正である平成28年6月7日付け手続補正)
「【請求項1】
A 遊技の進行に応じて演出を行う遊技機であって、
B 遊技の進行に関する主制御処理を実行し、当該主制御処理を実行して得られた遊技に関する情報を含むデータを生成して出力する遊技制御手段と、
C 前記遊技制御手段から出力されたデータを受け付け、当該データに基づき演出に関わる処理を行う演出制御手段と、を備え、
D 前記遊技制御手段により生成される前記データは、
D1 aビット(aは3以上の整数)のサイズで、先頭の1ビットの値が1または0の何れか一方に特定されている第1データ部と、
D2 n×aビット(nは1以上の整数)のサイズで、先頭の1ビットの値が前記第1データ部の先頭の1ビットの値とは異なる値に特定されていることにより当該第1データ部と識別可能な第2データ部と、を含み、
E 前記第1データ部を構成する所定のビットを上位の所定数のビットとして用い、前記第2データ部を構成するビットを下位の所定数のビットとして用いて、所定の種類のデータが記録され、当該第1データ部における当該所定のビットを除く残りのビットを用いて、当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータが記録されることを特徴とする、遊技機。」

と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。記号A?Eは、分説するため当審で付した。)。

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記第1データ部を構成する所定のビット」「を用い」ることに関して、「上位の所定数のビットとして」との限定を付加するとともに、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記第2データ部を構成するビットとを用い」ることに関して、「下位の所定数のビットとして」との限定を付加するものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の段落【0171】及び図22(b)の記載からみて、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)引用文献に記載された事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-225430号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1-ア)
「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による遊技機は、表示状態が変化可能な可変表示装置(例えば可変表示装置9)を含み、変動開始の条件の成立(例えば始動入賞口14への入賞)に応じて可変表示装置に表示される識別情報の可変表示(例えば特別図柄の変動)を開始し、可変表示装置に可変表示される識別情報の表示結果が特定の表示態様(例えば大当り表示態様)となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態(例えば大当り遊技状態)に制御可能な遊技機であって、遊技の進行を制御する遊技制御手段(例えばCPU56等)と、遊技制御手段から送信された演出コマンドにもとづいて識別情報の可変表示に関わる演出を実行可能な演出手段(例えば可変表示装置9、ランプ・LED、スピーカ27)を制御する演出制御手段(例えば表示制御用CPU101を含む表示制御手段、ランプ制御用CPU351を含むランプ制御手段、音制御用CPU701を含む音制御手段)と、可変表示装置における表示結果が特定の表示態様となる確率を複数段階に設定操作可能な確率設定操作手段(例えば設定スイッチ925)とを備え、・・・」

(1-イ)
「【0108】タイマ割込が発生すると、図18に示すように、CPU56は、レジスタの退避処理(ステップS20)を行った後、ステップS21?S31の遊技制御処理を実行する。遊技制御処理において、CPU56は、まず、スイッチ回路58を介して、ゲートスイッチ32a、始動口スイッチ14a、カウントスイッチ23および入賞口スイッチ29a,30a,33a,39a等のスイッチの検出信号を入力し、それらの状態判定を行う(スイッチ処理:ステップS21)。」

(1-ウ)
「【0148】図28は、主基板31から他の電気部品制御基板に送出される制御コマンドのコマンド形態の一例を示す説明図である。この実施の形態では、制御コマンドは2バイト構成であり、1バイト目はMODE(コマンドの分類)を表し、2バイト目はEXT(コマンドの種類)を表す。MODEデータの先頭ビット(ビット7)は必ず「1」とされ、EXTデータの先頭ビット(ビット7)は必ず「0」とされる。このように、電気部品制御基板へのコマンドとなる制御コマンドは、複数のデータで構成され、先頭ビットによってそれぞれを区別可能な態様になっている。なお、図28に示されたコマンド形態は一例であって他のコマンド形態を用いてもよい。例えば、1バイトや3バイト以上で構成される制御コマンドを用いてもよい。また、図28には図柄制御基板80に送出される表示制御コマンドが例示されているが、他の電気部品制御基板に送出される制御コマンドも同一構成である。」

(1-エ)
「【0152】図30および図31は、図柄制御基板80に送出される表示制御コマンドの内容の一例を示す説明図である。図30および図31に示す例において、コマンド8000(H)?800E(H)は、特別図柄を可変表示する可変表示装置9における特別図柄の変動パターンを指定する表示制御コマンドである。なお、変動パターンを指定するコマンド(変動パターンコマンド)は変動開始指示も兼ねている。また、コマンド800E(H)は、短縮表示パターンを指定するコマンドである。」

(1-オ)
「【0202】表示制御コマンドの受信処理において、表示制御用CPU101は、まず、各レジスタをスタックに退避する(ステップS670)。次いで、表示制御コマンドデータの入力に割り当てられている入力ポートからデータを読み込む(ステップS671)。そして、2バイト構成の表示制御コマンドのうちの1バイト目であるか否か確認する(ステップS672)。1バイト目であるか否かは、受信したコマンドの先頭ビットが「1」であるか否かによって確認される。先頭ビットが「1」であるのは、2バイト構成である表示制御コマンドのうちのMODEバイト(1バイト目)のはずである(図28参照)。そこで、表示制御用CPU101は、先頭ビットが「1」であれば、有効な1バイト目を受信したとして、受信したコマンドを受信バッファ領域におけるコマンド受信個数カウンタが示す受信コマンドバッファに格納する(ステップS673)。
・・・・・
【0204】1バイト目を既に受信している場合には、受信した1バイトのうちの先頭ビットが「0」であるか否か確認する。そして、先頭ビットが「0」であれば、有効な2バイト目を受信したとして、受信したコマンドを、受信バッファ領域におけるコマンド受信個数カウンタ+1が示す受信コマンドバッファに格納する(ステップS675)。先頭ビットが「0」であるのは、2バイト構成である表示制御コマンドのうちのEXTバイト(2バイト目)のはずである(図28参照)。なお、ステップS674における確認結果が「1バイト目を既に受信した」(=Y)である場合には、2バイト目として受信したデータのうちの先頭ビットが「0」でなければ処理を終了する。なお、ステップS674で「N」と判断された場合には、ステップS676の処理が行われないので、次に受信したコマンドは、今回受信したコマンドが格納されるはずであったバッファ領域に格納される。」

上記(1-ア)?(1-オ)に基づき、引用文献1に記載された事項について、以下に検討する。

(1-a)
上記(1-ア)の段落【0010】には、「本発明による遊技機は、・・・遊技の進行を制御する遊技制御手段(例えばCPU56等)と、遊技制御手段から送信された演出コマンドにもとづいて識別情報の可変表示に関わる演出を実行可能な演出手段(例えば可変表示装置9、ランプ・LED、スピーカ27)を制御する演出制御手段(例えば表示制御用CPU101を含む表示制御手段、ランプ制御用CPU351を含むランプ制御手段、音制御用CPU701を含む音制御手段)と、・・・を備え」と記載されている。
そうすると、遊技機は、遊技の進行を制御する遊技制御手段から送信された演出コマンドにもとづいて演出手段を制御する演出制御手段を備えているから、引用文献1には、「遊技の進行に応じて演出手段を制御する遊技機」が記載されていると認められる。

(1-b)
上記(1-ア)の段落【0010】には、「遊技の進行を制御する遊技制御手段(例えばCPU56等)」と記載され、上記(1-イ)の段落【0108】には、「タイマ割込が発生すると、図18に示すように、CPU56は、レジスタの退避処理(ステップS20)を行った後、ステップS21?S31の遊技制御処理を実行する。」と記載されているから、引用文献1には、「遊技の進行を制御する遊技制御処理を実行する遊技制御手段」が記載されているといえる。
また、上記段落【0010】には、「遊技制御手段から送信された演出コマンド」と記載されているから、遊技制御手段が演出コマンドを生成して送信していることは明らかである。
したがって、引用文献1には、「遊技の進行を制御する遊技制御処理を実行し、演出コマンドを生成して送信する遊技制御手段」が記載されていると認められる。

(1-c)
上記(1-ア)の段落【0010】には、「遊技制御手段から送信された演出コマンドにもとづいて識別情報の可変表示に関わる演出を実行可能な演出手段(例えば可変表示装置9、ランプ・LED、スピーカ27)を制御する演出制御手段(例えば表示制御用CPU101を含む表示制御手段、ランプ制御用CPU351を含むランプ制御手段、音制御用CPU701を含む音制御手段)」と記載されているから、引用文献1には、「遊技制御手段から送信された演出コマンドにもとづいて演出を実行可能な演出手段を制御する演出制御手段」が記載されていると認められる。

(1-d)
上記(1-ウ)の段落【0148】には、「制御コマンドは2バイト構成であり、1バイト目はMODE(コマンドの分類)を表し、2バイト目はEXT(コマンドの種類)を表す。MODEデータの先頭ビット(ビット7)は必ず「1」とされ、EXTデータの先頭ビット(ビット7)は必ず「0」とされる。このように、電気部品制御基板へのコマンドとなる制御コマンドは、複数のデータで構成され、先頭ビットによってそれぞれを区別可能な態様になっている。」と記載されている。
ここで、「MODEデータ」と「EXTデータ」は、それぞれ制御コマンドの1バイト目と2バイト目を構成するものであるから、そのデータサイズは1バイト、すなわち、8ビットであるといえる。
また、上記段落【0148】には、「図28には図柄制御基板80に送出される表示制御コマンドが例示されている」と記載され、制御コマンドの例示として表示制御コマンドがあげられており、上記(1-エ)の段落【0152】には、「図柄制御基板80に送出される表示制御コマンドの内容の一例」として、「特別図柄の変動パターンを指定する表示制御コマンド」が記載され、当該「特別図柄の変動パターンを指定する表示制御コマンド」は「演出コマンド」といえるから、「演出コマンド」は、少なくとも「制御コマンド」に含まれるものであることは明らかである。
以上のことから、引用文献1には、
「前記演出コマンドは、
8ビットのサイズで、先頭ビットは必ず「1」とされる、1バイト目のMODEデータと、
8ビットのサイズで、先頭ビットは必ず「0」とされ、先頭ビットによって1バイト目のMODEデータと区別可能な態様になっている、2バイト目のEXTデータと、を含む」
ことが記載されていると認められる。

(1-e)
上記(1-ウ)の段落【0148】には、「制御コマンドは2バイト構成であり、1バイト目はMODE(コマンドの分類)を表し、2バイト目はEXT(コマンドの種類)を表す。MODEデータの先頭ビット(ビット7)は必ず「1」とされ、EXTデータの先頭ビット(ビット7)は必ず「0」とされる。」と記載されているから、引用文献1には、「1バイト目のMODEデータを構成するビットを用いてMODE(コマンドの分類)が記録され、2バイト目のEXTデータを構成するビットを用いてEXT(コマンドの種類)が記録される」ことが記載されていると認められる。

上記(1-ア)?(1-オ)の記載事項、及び、上記(1-a)?(1-e)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?eは、本願補正発明の記号A?Eに対応させて付した。)。

「a 遊技の進行に応じて演出手段を制御する遊技機であって、
b 遊技の進行を制御する遊技制御処理を実行し、演出コマンドを生成して送信する遊技制御手段と、
c 遊技制御手段から送信された演出コマンドにもとづいて演出を実行可能な演出手段を制御する演出制御手段と、を備え、
d 前記演出コマンドは、
d1 8ビットのサイズで、先頭ビットは必ず「1」とされる、1バイト目のMODEデータと、
d2 8ビットのサイズで、先頭ビットは必ず「0」とされ、先頭ビットによって1バイト目のMODEデータと区別可能な態様になっている、2バイト目のEXTデータと、を含み、
e 1バイト目のMODEデータを構成するビットを用いてMODE(コマンドの分類)が記録され、2バイト目のEXTデータを構成するビットを用いてEXT(コマンドの種類)が記録される、遊技機。」

イ 引用文献2
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-153987号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(2-ア)
「【0001】
本発明は、パチンコ機などの遊技機に関するものである。」

(2-イ)
「【1319】
次に、図154?図159を参照して、第24実施形態におけるパチンコ機10について説明する。上述の第23実施形態におけるパチンコ機10では、主制御装置110と音声ランプ制御装置113とにおいて、普通図柄の停止種別コマンドを送受信した履歴を記憶して、所定回数毎にその照合を行う場合について説明した。
【1320】
これに対し、本第24実施形態におけるパチンコ機10では、主制御装置110は、主制御装置110とは別に設けられた図柄履歴制御装置300と音声ランプ制御装置113とに共通して普通図柄の停止種別コマンドを出力する。図柄履歴制御装置300と音声ランプ制御装置113とは、普通図柄の停止種別コマンドを受信するとその履歴を設定値で記憶する。図柄履歴制御装置300は、所定回数以上の履歴を記憶すると、その履歴に基づく履歴演算値を示す履歴コマンドを生成して音声ランプ制御装置113に対して出力する。そして、音声ランプ制御装置113は、履歴コマンドを受信すると、同様に、従図柄履歴記憶エリア223g8に記憶されている履歴に基づいて、履歴演算値を算出し、受信した履歴コマンドが示す履歴演算値と照合する。その結果、差異があった場合には、異常処理が実行される。
・・・・・
【1339】
図柄履歴記憶エリア303aには、50回分の普通図柄の停止種別コマンドに対応する設定値(履歴情報)が記憶されている(アドレス0001?0050に対応する記憶領域に設定値が記憶された)か判別される(S3004)。50回分の普通図柄の停止種別コマンドに対応する設定値が図柄履歴記憶エリア303aに記憶されていると判別された場合には(S3004:Yes)、図柄履歴記憶エリア303aに記憶されている設定値に基づいて、(「設定値」×「その設定値が記憶されている記憶領域に設定されている受信回数」)を図柄履歴記憶エリア303aのアドレス0001?0050に対して行い、その結果を合計した履歴演算値を算出する(S3005)。S3005の処理で算出された履歴演算値を示す履歴コマンドを生成して音声ランプ制御装置113に対して出力する(S3006)。ここで、履歴演算値は、3825(50回すべて外れ変動コマンドであった場合)?8925(50回すべて特殊外れコマンドであった場合)までの値で算出され、履歴コマンドは、2バイト構成のコマンドで生成され、上位バイトの上位2ビットまでが、コマンドが履歴コマンドであることを表す識別データ(本実施形態では「10」)で構成され、上位下位バイト合わせた14ビットで履歴演算値が2進数で示されて構成される。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願補正発明の構成A?Eと引用発明の構成a?eについて、それぞれ(a)?(e)の見出しを付けて行った。)。

(a)引用発明の「演出手段を制御する」ことは、本願補正発明の「演出を行う」ことに相当するから、引用発明の「遊技の進行に応じて演出手段を制御する遊技機」は、本願補正発明の「遊技の進行に応じて演出を行う遊技機」に相当する。

(b)引用発明の「遊技の進行を制御する遊技制御処理」、「送信する」は、それぞれ本願補正発明の「遊技の進行に関する主制御処理」、「出力する」に相当する。
また、引用発明の「演出コマンド」は、演出を実行可能な演出手段を制御するためのものであって(引用発明の構成cを参照。)、演出実行のために必要な、遊技制御処理を実行して得られた遊技に関する情報を含むことは明らかであるから、本願補正発明の「当該主制御処理を実行して得られた遊技に関する情報を含むデータ」に相当する。
そうすると、引用発明の「遊技の進行を制御する遊技制御処理を実行し、演出コマンドを生成して送信する遊技制御手段」は、
本願補正発明の「遊技の進行に関する主制御処理を実行し、当該主制御処理を実行して得られた遊技に関する情報を含むデータを生成して出力する遊技制御手段」に相当する。

(c)引用発明の「演出制御手段」は、「遊技制御手段から送信された演出コマンドにもとづいて演出を実行可能な演出手段を制御する」ものであるから、送信された演出コマンドを受け付けるものであることは、自明の事項である。
また、引用発明の「演出を実行可能な演出手段を制御する」ことは、本願補正発明の「演出に関わる処理を行う」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「遊技制御手段から送信された演出コマンドにもとづいて演出を実行可能な演出手段を制御する演出制御手段」は、
本願補正発明の「前記遊技制御手段から出力されたデータを受け付け、当該データに基づき演出に関わる処理を行う演出制御手段」に相当する。

(d)上記(b)の検討を踏まえると、引用発明の「前記演出コマンド」は、遊技制御手段により生成されるものであるから、本願補正発明の「前記遊技制御手段により生成される前記データ」に相当する。

(d1)引用発明の「8ビット」は、本願補正発明の「aビット(aは3以上の整数)」に相当する(この場合、a=8である。)。
また、引用発明の「先頭ビットは必ず「1」とされる」ことは、本願補正発明の「先頭の1ビットの値が1または0の何れか一方に特定されている」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「1バイト目のMODEデータ」は、本願補正発明の「第1データ部」に相当するといえるから、
引用発明の「8ビットのサイズで、先頭ビットは必ず「1」とされる、1バイト目のMODEデータ」は、
本願補正発明の「aビット(aは3以上の整数)のサイズで、先頭の1ビットの値が1または0の何れか一方に特定されている第1データ部」に相当する。

(d2)上記(d1)で検討したとおり、a=8であるから、引用発明の「8ビット」は、本願補正発明の「n×aビット(nは1以上の整数)」に相当する(この場合、n=1である。)。
また、引用発明において、1バイト目のMODEデータの先頭ビットは必ず「1」とされるから(引用発明の構成d1を参照。)、引用発明の「先頭ビットは必ず「0」とされ」ることは、本願補正発明の「先頭の1ビットの値が前記第1データ部の先頭の1ビットの値とは異なる値に特定されている」ことに相当する。
そして、引用発明において、1バイト目のMODEデータの先頭ビットは必ず「1」とされ、2バイト目のEXTデータの先頭ビットは必ず「0」とされるから、引用発明の「先頭ビットによって1バイト目のMODEデータと区別可能な態様になっている」ことは、本願補正発明の「先頭の1ビットの値が前記第1データ部の先頭の1ビットの値とは異なる値に特定されていることにより当該第1データ部と識別可能」であることに相当する。
そうすると、引用発明の「2バイト目のEXTデータ」は、本願補正発明の「第2データ部」に相当するといえるから、
引用発明の「8ビットのサイズで、先頭ビットは必ず「0」とされ、先頭ビットによって1バイト目のMODEデータと区別可能な態様になっている、2バイト目のEXTデータ」は、
本願補正発明の「n×aビット(nは1以上の整数)のサイズで、先頭の1ビットの値が前記第1データ部の先頭の1ビットの値とは異なる値に特定されていることにより当該第1データ部と識別可能な第2データ部」に相当する。

(e)引用発明の「EXT(コマンドの種類)」、「MODE(コマンドの分類)」は、それぞれ異なる種類のデータであるから、本願補正発明の「所定の種類のデータ」、「当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータ」に相当する。
そして、上記(d1)及び(d2)で検討したとおり、引用発明の「1バイト目のMODEデータ」、「2バイト目のEXTデータ」は、それぞれ本願補正発明の「第1データ部」、「第2データ部」に相当するから、引用発明の「2バイト目のEXTデータを構成するビットを用いて」「記録される」「EXT(コマンドの種類)」(所定の種類のデータ)は、「第2データ部を構成するビットを用いて記録される」ものといえ、引用発明の「1バイト目のMODEデータを構成するビットを用いて」「記録される」「MODE(コマンドの分類)」(当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータ)は、「第1データ部を構成するビットを用いて記録される」ものといえる。
そうすると、引用発明の「1バイト目のMODEデータを構成するビットを用いてMODE(コマンドの分類)が記録され、2バイト目のEXTデータを構成するビットを用いてEXT(コマンドの種類)が記録される」点と、
本願補正発明の「前記第1データ部を構成する所定のビットを上位の所定数のビットとして用い、前記第2データ部を構成するビットを下位の所定数のビットとして用いて、所定の種類のデータが記録され、当該第1データ部における当該所定のビットを除く残りのビットを用いて、当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータが記録される」点とは、
「前記第1データ部と前記第2データ部を構成するビットを用いて、所定の種類のデータと、当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータが記録される」点で共通する。

上記(a)?(e)により、本願補正発明と引用発明とは、

(一致点)
「A 遊技の進行に応じて演出を行う遊技機であって、
B 遊技の進行に関する主制御処理を実行し、当該主制御処理を実行して得られた遊技に関する情報を含むデータを生成して出力する遊技制御手段と、
C 前記遊技制御手段から出力されたデータを受け付け、当該データに基づき演出に関わる処理を行う演出制御手段と、を備え、
D 前記遊技制御手段により生成される前記データは、
D1 aビット(aは3以上の整数)のサイズで、先頭の1ビットの値が1または0の何れか一方に特定されている第1データ部と、
D2 n×aビット(nは1以上の整数)のサイズで、先頭の1ビットの値が前記第1データ部の先頭の1ビットの値とは異なる値に特定されていることにより当該第1データ部と識別可能な第2データ部と、を含み、
E’ 前記第1データ部と前記第2データ部を構成するビットを用いて、所定の種類のデータと、当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータが記録される、遊技機。」

である点で一致し、構成E’に関する以下の点で相違している。

(相違点1)
「所定の種類のデータ」について、本願補正発明では、「前記第1データ部を構成する所定のビットを上位の所定数のビットとして用い、前記第2データ部を構成するビットを下位の所定数のビットとして用いて」記録されるのに対して、引用発明では、第2データ部を構成するビットを用いて記録される点。

(相違点2)
「当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータ」について、本願補正発明では、「当該第1データ部における当該所定のビットを除く残りのビットを用いて」記録されるのに対して、引用発明では、第1データ部を構成するビットを用いて記録される点。

(3)判断
まず相違点1について検討する。
上記(2-ア)?(2-イ)の記載事項によれば、引用文献2には、
「図柄履歴制御装置300から音声ランプ制御装置113に対して出力される履歴コマンドは、2バイト構成のコマンドで生成され、上位バイトの上位2ビットまでが、コマンドが履歴コマンドであることを表す識別データで構成され、上位下位バイト合わせた14ビットで履歴演算値が2進数で示されて構成される遊技機。」
が記載されている。
ここで、引用文献2の「図柄履歴制御装置300」、「音声ランプ制御装置113」は、ともに遊技機を構成する制御装置であり、「履歴演算値」、「コマンドが履歴コマンドであることを表す識別データ」は、それぞれ「所定の種類のデータ」、「当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータ」ということができるから、引用文献2には、
「遊技機において、遊技機を構成する一の制御装置から他の制御装置に対して出力される制御コマンドを、上位バイトを構成する所定のビットと下位バイトを構成するビットを用いて、所定の種類のデータを記録し、上位バイトにおける当該所定のビットを除く残りのビットを用いて、当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータを記録する」
という技術的事項が記載されているといえる。
そして、引用文献2に記載された技術的事項の構成により、1バイト(8ビット)を超えるサイズ(14ビット)のデータが制御コマンドに記録可能となっていることが理解できる。
また、引用文献2に記載された技術的事項のように、上位バイトを構成するビットと下位バイトを構成するビットを用いて一つのデータを記録する場合に、上位バイトを構成するビットを上位の所定数のビットとして用い、下位バイトを構成するビットを下位の所定数のビットとして用いるのは、特段の事情のない限り、通常行われることである。
一方、上記(1-オ)の記載事項によれば、引用文献1の段落【0202】には、「2バイト構成の表示制御コマンドのうちの1バイト目であるか否か確認する・・・。1バイト目であるか否かは、受信したコマンドの先頭ビットが「1」であるか否かによって確認される。」と記載され、同段落【0204】には、「1バイト目を既に受信している場合には、受信した1バイトのうちの先頭ビットが「0」であるか否か確認する。そして、先頭ビットが「0」であれば、有効な2バイト目を受信したとして・・・」と記載されている。
そうすると、引用発明において、1バイト目のMODEデータの先頭ビットは必ず「1」とされ、2バイト目のEXTデータの先頭ビットは必ず「0」とされるのは、受信したコマンドデータが1バイト目か2バイト目かを判断するためであることは明らかである。
以上のことを考慮すると、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項とは、遊技機を構成する一の制御装置から他の制御装置に対して出力され、2バイトを用いて2種類のデータを記録する制御コマンドに関するものである点で共通し、また、引用発明でも演出コマンドにEXT(コマンドの種類)として1バイト(8ビット)のサイズを超えるデータを記録する必要性は生じ得るから、引用発明の遊技機において、その演出コマンドに対して引用文献2に記載された技術的事項を適用するとともに、EXT(コマンドの種類)を記録するのに、上位バイト(1バイト目)を構成する所定のビットを上位の所定数のビットとして用い、下位バイト(2バイト目)を構成するビットを下位の所定数のビットとして用い、さらに、受信したコマンドデータが1バイト目か2バイト目かを判断できるように、1バイト目と2バイト目の先頭ビットは、それぞれ「1」、「0」のまま維持して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

次に相違点2について検討する。
引用文献2に記載された上記の技術的事項は、「上位バイトにおける当該所定のビットを除く残りのビットを用いて、当該所定の種類のデータとは異なる他の種類のデータを記録する」構成を含んでいるから、相違点1について検討したとおり、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用する等することにより、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

なお、請求人は審判請求書において、「また、引用文献1に記載された技術では、MODEデータの先頭ビットは必ず「1」とされ、EXTデータの先頭ビットは必ず「0」とされることが明記されている。これに対し、本願発明では、第1データ部と第2データ部とを識別するために各データ部の先頭の1ビットを相異なる固定値としており、前記所定の種類のデータの先頭ビットは固定値ではなく(本願の出願当初明細書の段落[0166]、[0171]参照)、引用文献1におけるデータ構成とは異なっている。」(第5頁第8?14行)と主張している。
しかしながら、本願補正発明の「先頭の1ビットの値が1または0の何れか一方に特定されている第1データ部」、「先頭の1ビットの値が前記第1データ部の先頭の1ビットの値とは異なる値に特定されていることにより当該第1データ部と識別可能な第2データ部」との構成には、引用発明のように、1バイト目のMODEデータ(第1データ部)の先頭ビットは必ず「1」とされ、2バイト目のEXTデータ(第2データ部)の先頭ビットは必ず「0」とされる構成も包含されることは明らかであるから、引用発明のデータ構成が本願補正発明と異なるということはできない。

また、請求人は審判請求書において、「さらに、引用文献1、2に記載の技術を組み合わせ、mビット(mは「8」よりも小さい値)のMODEデータ部とnビット(n=16-m)のEXTデータ部とからなる2バイト構成のデータを想定したとすると、MODEデータ部を構成するmビットのビット列の先頭ビットの値が「1」に固定され、EXTデータ部を構成するnビットのビット列の先頭ビットの値が「0」に固定されることになる。その一方で、1バイト目のデータの先頭ビットはMODEデータ部の先頭ビットと一致するので、その値は「1」に固定されるが、2バイト目のデータの先頭ビットはEXTデータ部の先頭ビットとは一致しないため、その値は固定値とならない。そのため、受信した1バイト分のデータが2バイト構成のデータ全体のどの部分に該当するのかを認識することができない。」(第7頁第13?22行)と主張している。
しかしながら、相違点1の検討において述べたとおり、引用発明において、1バイト目のMODEデータの先頭ビットは必ず「1」とされ、2バイト目のEXTデータの先頭ビットは必ず「0」とされるのは、受信したコマンドデータが1バイト目か2バイト目かを判断するためであることは明らかであるから、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用して、上位バイトを構成する所定のビットと下位バイトを構成するビットを用いてEXT(コマンドの種類)を記録するように構成する際に、受信したコマンドデータが1バイト目か2バイト目かを判断できるように、1バイト目と2バイト目の先頭ビットを、それぞれ「1」、「0」のまま維持することは、当業者であれば当然実施すべきことにすぎない。

以上のことから、請求人の上記主張はいずれも採用することができない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?2に係る発明は、平成27年10月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び2の記載事項及び引用発明の認定については、上記「第2[理由]3(1)引用文献に記載された事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、構成要件である「前記第1データ部を構成する所定のビットを」「用い」ることに関して、「上位の所定数のビットとして」との限定を省くともに、同じく構成要件である「前記第2データ部を構成するビットを」「用い」ることに関して、「下位の所定数のビットとして」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]3(2)対比、(3)判断」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-20 
結審通知日 2017-01-24 
審決日 2017-02-06 
出願番号 特願2014-175723(P2014-175723)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也古屋野 浩志  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 金田 理香
小島 寛史
発明の名称 遊技機  
代理人 古部 次郎  
代理人 尾形 文雄  
代理人 伊與田 幸穂  

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