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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1326442
審判番号 不服2014-8978  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-14 
確定日 2017-03-22 
事件の表示 特願2012-113519「LTE/EUTRANからGPRS/GERANへのハンドオーバをサポートする方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 6日出願公開、特開2012-170144〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許出願は、平成20年2月12日(パリ条約による優先権主張 平成19年2月12日 米国)を国際出願日とする特願2009-549605号の一部を平成24年5月17日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年 8月28日付け:拒絶理由の通知
平成25年12月 3日 :意見書及び手続補正書の提出
平成26年 1月 8日付け:拒絶査定
平成26年 5月14日 :審判請求書の提出
平成28年 4月22日付け:当審にて拒絶理由の通知
平成28年 8月26日 :意見書及び手続補正書の提出


第2.本件発明について

本件特許出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成28年8月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「発展型ノードB(eNB)であって、
移動元ロングタームエボリューション(LTE)セルから移動先グローバルシステムフォーモバイル通信(GSM)GSM進化型高速データ伝送(EDGE)無線アクセスネットワーク(GERAN)セルへの無線送受信ユニット(WTRU)のハンドオーバについての判定を行うように構成されたプロセッサと、
LTEセルを介して無線通信をWTRUに提供する間、(1)移動元LTEセルから、GERANセル情報を使用する移動先GERANセルを含む、他の無線カバレッジエリアへのハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト、および(2)前記GERANセル情報のいずれか、並びに
移動元モビリティ管理エンティティ(MME)へのハンドオーバ要求メッセージを送信するように構成された送信機であって、前記ハンドオーバ要求メッセージは、ハンドオーバ移動元識別子および前記移動先GERANセルの識別子を含む、送信機と、
前記移動元MMEから第1のハンドオーバ命令メッセージを受信するように構成された受信機であって、前記第1のハンドオーバ命令メッセージは、一時的移動加入者識別(TMSI)を含む、前記移動先GERANセルに関係する無線通信パラメータを含む、受信機と
を備え、
前記送信機は、前記移動元MMEからの前記第1のハンドオーバ命令メッセージに基づいて第2のハンドオーバ命令メッセージを前記WTRUに通信するようにさらに構成されたことを特徴とするeNB。」


第3.引用文献

1.これに対して、当審において平成28年4月22日付けで通知した拒絶理由にて引用した、「Huawei,Inter RAT handover procedures between 3GPP access systems,3GPP TSG SA WG2 Architecture - S2#56 S2-070078,2007年1月9日」(以下、「引用文献1」という。)の各項目部分、図5.4-3(Figure 5.4-3: Information flow for handover from SAE/LTE to 2G)、及び、同図中で示される各プロセスに関する説明には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ア)「5.4.1 2G mode to SAE/LTE mode Handover
5.4.2 3G mode to SAE/LTE mode Handover
5.4.3 SAE/LTE mode to 2G mode Handover
5.4.4 SAE/LTE mode to 3G mode Handover 」

(仮訳:5.4.1 2GモードからSAE/LTEモードへのハンドオーバ
5.4.2 3GモードからSAE/LTEモードへのハンドオーバ
5.4.3 SAE/LTEモードから2Gモードへのハンドオーバ
5.4.4 SAE/LTEモードから3Gモードへのハンドオーバ)

(イ)「5.4.3 SAE/LTE mode to 2G mode Handover

Figure 5.4-3:Information flow for handover from SAE/LTE to 2G

1.The source eNB decides to initiate a handover to BSS.
2.The source eNB sends a Handover Required (Cause, Source ID, Target ID, Source BSS to target BSS transparent container) message to MME. The Source BSS to target BSS transparent container consist of the required information for access in the target cell and the information on allocated radio resources, etc. The Source ID IE identifies the source for the Handover. The Target ID IE identifies the target for the Handover.
3.・・・前段省略・・・・
After the SGSN receives the Handover Preparation Request message,the required PDP context, MM context, SNDCP and LLC contexts are established and a new P-TMSI is allocated for the UE,and the SGSN it begins the process of establishing PFCs for all PDP contexts.
・・・後段省略・・・
9.The MME sends a Handover Required Acknowledge (Target BSS to Source eNB Transparent Container, RABs to be Released List) message to the source eNB.
10.The source eNB sends a Handover Command message to the UE.」
(仮訳:
図5.4-3 SAE/LTEから2Gへのハンドオーバのための情報の流れ
1.ソースeNBは、BSSへのハンドオーバの開始を決定する。
2.ソースeNBは、ハンドオーバリクワイアード(原因、ソースID、ターゲットID、ソースBSSからターゲットBSSへのトランスペアレントコンテナ)メッセージをMMEに送信する。ソースBSSからターゲットBSSトランスペアレントコンテナは、ターゲットセルへのアクセスのために必要とされる情報、割り当てられた無線リソースに関する情報、等を含む。ソースID IEは、ハンドオーバのソースを識別する。ターゲットID IEは、ハンドオーバのターゲットを識別する。
3.SGSNがハンドオーバー準備要求メッセージを受信した後、要求されたPDPコンテキスト、MMコンテキスト、SNDCP及びLLCコンテキストが確立され、そして、新しいP-TMSIがUEのために割り当てられる、そして、SGSNは全てのPDPコンテキストに関するPFCsを確立するプロセスを開始する。
9.MMEは、ハンドオーバリクワイアードアックナレッジ(ターゲットBSSからソースeNBへのトランスペアレントコンテナ、解放されるRAB(ラジオアクセスベアラ)リスト)メッセージをソースeNBに送る。
10.ソースeNBは、ハンドオーバコマンドメッセージをUEに送る。)

上記(ア)、(イ))の記載から引用文献1には、

「SAE/LTEから2Gへのハンドオーバの開始を決定するソースeNBであって、
ソースeNBは、ハンドオーバリクワイアードメッセージをMMEに送信し、ハンドオーバリクワイアードメッセージは、ソースID、ターゲットIDを含み、
ソースIDのIEは、ハンドオーバのソースを識別するものであり、ターゲットIDのIEは、ハンドオーバのターゲットを識別するものであって、
SGSNは、新しいP-TMSIをUEのために割当て、
ソースeNBは、MMEからハンドオーバリクワイアードアックナレッジメッセージを受信し、
ハンドオーバリクワイアードアックナレッジメッセージは、ターゲットBSSからソースeNBへのトランスペアレントコンテナを含み、
ソースeNBは、ハンドオーバコマンドメッセージをUEに送信する、ソースeNB。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


2.また、当審において平成28年4月22日付けで通知した拒絶理由にて引用した、特表2002-541747号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ウ)「本発明は、第3世代システムから多数の異なる第2世代システムへのハンドオフを効率的にかつ中断せずに行なうことを保証する非常に有効な方法を与える。
これにより、たとえば第3世代UMTSシステムは、DAMPS,GSM,PDCなどのあらゆる種類の第2世代システムとの通信を保証することができる。」(【0009】)

(エ)「図2のステップ4では、ステップ3で与えられる性能によって、移動局がデュアルモードで動作可能なことを知っているネットワークは、移動局へ隣接セル情報を与える。移動局へのこの伝送には、それらのシステムが同じ世代であっても異なる世代であっても、隣接セルのコンテナ情報が含まれる。」(【0024】)

(オ)「上記の実施形態において、UMTS、GSM、PDCシステムは例として用いただけである。このコンテナ構造は、これらのシステムのいずれかに限定されるものではなく、現在のあらゆるタイプのシステムや将来の移動体無線システムにおいても用いることができる。」(【0048】)

(カ)「

」(【図2】)

3.さらに、本件特許出願の優先権主張の日前である平成18年11月23日に国際公開された国際公開2006/124950号(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与し、仮訳は、対応する特願2008-512452号の公表公報である特表2008-541670号公報を参考にした。)

(キ)「The present invention is related to wireless communication systems.More particularly, the present invention is related to a method and apparatus for implementing a handoff between radio access networks (RANs) deployed under different radio access technologies (RATs).」([0003])

(仮訳:本発明は、無線通信システムに関する。より詳細には、本発明は、異なる無線アクセス技術(RAT)の下で配備された無線アクセスネットワーク(RAN)間のハンドオフを実装するための方法および装置に関する。)

(ク)「Different types of wireless access systems have been developed to provide different types of services. Some examples of the wireless access systems include wireless local area networks (WLANs), (such as IEEE 802-based networks), and cellular networks, (such as universal mobile telecommunication systems (UMTS) terrestrial radio access network (UTRAN), an evolved UTRAN (E-UTRAN), a GPRS/EDGE radio access network (GERAN), or the like). Each of these networks have been developed and tailored to provide specific applications.」([0005]

(仮訳:さまざまな種類のサービスを提供するために、さまざまな種類の無線アクセスシステムが開発されてきた。無線アクセスシステムのいくつかの例は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)(IEEE802ベースのネットワークなど)、およびセルラーネットワーク(ユニバーサルモバイルテレコミュニケーションシステム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)、発展型UTRAN(E-UTRAN)、GPRS/EDGE無線アクセスネットワーク(GERAN)など)を含む。これらのネットワークのそれぞれは、特定の用途向けに開発され、仕立てられている。)

(ケ)「Hereinafter the present invention will be explained with reference to an E-UTRAN and an IEEE-based I-WLAN. However, it should be noted that the present invention is applicable to any type of RANs using any type of RATs.」([0028])

(仮訳:以降、本発明は、E-UTRANおよびIEEEベースのI-WLANを参照して説明されるであろう。しかし、本発明は、任意の種類のRATを使用して任意の種類のRANに適用可能であることに留意されたい。)

(コ)「Figure 2 is a signaling diagram of a process 200 of a WTRU-initiated handoff from an E-UTRAN 160 to an I-WLAN 170 based on location in accordance with the present invention. The WTRU 150 is currently attached to the E-UTRAN 160 and is listening to an E-UTRAN channel, such as a broadcast control channel (BCCH) (step 202). The E-UTRAN 160 sends, (i.e., broadcasts, multicasts or unicasts), a list of RANs, (e.g., I-WLANs, a UTRAN, a GERAN or a GAN), available within the coverage area of the E-UTRAN 160 (step 204). The WTRU 150 receives the list and stores it (step 206). The WTRU 150 then sends a request for the location of service areas of the RANs in the list to the E-UTRAN 160 (step 208). The E-UTRAN 160 then retrieves the location information and sends it to the WTRU 150 (steps 210). The list may include information about the service area locations, radio technologies used by the listed RANs, supported frequencies and data rates, or the like.」([0029])

(仮訳:図2は、本発明によるロケーションに基づくE-UTRAN160からI-WLAN170へのWTRU開始ハンドオフのプロセス200のシグナリングの図である。WTRU150は、現在、E-UTRAN160にアタッチされており、ブロードキャスト制御チャネル(BCCH)などのE-UTRANチャネルをリッスンしている(ステップ202)。E-UTRAN160は、E-UTRAN160のカバレッジエリア内で利用可能なRANのリスト(例えば、I-WLAN、UTRAN、GERAN、またはGAN)を送信する(すなわち、ブロードキャスト、マルチキャスト、またはユニキャストする)(ステップ204)。WTRU150は、このリストを受信し、格納する(ステップ206)。WTRU150は、次いで、リストにあるRANのサービスエリアのロケーションに対する要求をE-UTRAN160に送信する(ステップ208)。E-UTRAN160は、次いで、ロケーション情報を取り出して、WTRU150に送信する(ステップ210)。このリストは、サービスエリアロケーション、リストされているRANによって使用される無線技術、サポートされている周波数およびデータレートなどに関する情報含むことができる。)


第4.本件発明と引用発明の対比

1.引用発明に係る「ソースeNB」、「MME」、「UE」は、それぞれ、本件発明の『発展型ノードB(eNB)』、『移動元モビリティ管理エンティティ(MME)』、『無線送受信ユニット(WTRU)』に対応することは明らかである。

2.引用発明に係る「ソースeNB」は、「SAE/LTEから2Gへのハンドオーバの開始を決定する」ものであり、ここで、引用発明の「ハンドオーバの開始」は、「ハンドオーバについて」の事項であることは明らかであり、「ハンドオーバの開始を決定する」ことは、ハンドオーバを開始するか否かを決定するにあたって、判定を行うプロセスを経ることは当然のことである。
また、引用発明における「2G」とは、第2世代無線通信技術を意味していることは技術常識である。
してみると、引用発明と本件発明は、「移動元ロングタームエボリューション(LTE)セルから、LTEセルよりも前である旧世代セルへの無線送受信ユニット(WTRU)のハンドオーバについての判定を行う」との点で共通しているといえる。

3.引用発明に係る「ソースIDのIE」及び「ターゲットIDのIE」の「IE」とは、Information Element(情報要素)の略称であるから、「ソースIDのIE」及び「ターゲットIDのIE」とは、IDを表す情報の要素、すなわち「ソースID」及び「ターゲットID」それ自体のことである。
更に、引用発明の「ソースIDのIE」は、ハンドオーバのソース、すなわち、ハンドオーバ元を識別するIDであって、引用発明の「ターゲットIDのIE」は、ハンドオーバのターゲット、すなわち、ハンドオーバ先を識別するIDである。
これらのことから、引用発明に係る「ソースID」は、本件発明でいうところの『ハンドオーバ移動元識別子』に対応し、引用発明に係る「ターゲットID」は、本件発明でいうところの『移動先GERANセルの識別子』に対応するものといえる。

4.引用発明において、「ソースID」及び「ターゲットID」を含む「ハンドオーバリクワイアードメッセージ」はソースeNBからMMEに送信されるものであり、本件発明でいうところの『ハンドオーバ移動元識別子』および『移動先セルの識別子』を含む『ハンドオーバ要求メッセージ』に対応するものといえる。

5.引用発明における「ハンドオーバリクワイアードアックナレッジメッセージ」はソースeNBがMMEから受信するものであり、「ハンドオーバコマンドメッセージ」は前記ハンドオーバリクワイアードアックナレッジメッセージを受信した後、ソースeNBがUEに送信するものであるから、それぞれ、本件発明でいうところの『第1のハンドオーバー命令メッセージ』、『第2のハンドオーバー命令メッセージ』に対応するものといえる。

上記1.?5.の事項を踏まえると、本件発明と引用発明とは、

「発展型ノードB(eNB)であって、
移動元ロングタームエボリューション(LTE)セルから、LTEセルよりも前である旧世代セルへの無線送受信ユニット(WTRU)のハンドオーバについての判定を行うように構成され、
移動元モビリティ管理エンティティ(MME)へのハンドオーバ要求メッセージを送信するように構成され、前記ハンドオーバ要求メッセージは、ハンドオーバ移動元識別子および前記移動先GERANセルの識別子を含み、
前記移動元MMEから第1のハンドオーバ命令メッセージを受信するように構成され、
前記移動元MMEからの前記第1のハンドオーバ命令メッセージに基づいて第2のハンドオーバ命令メッセージを前記WTRUに通信するようにさらに構成されたことを特徴とするeNB。」

で一致し、下記の点で相違する。

[相違点1]
本件発明においては、eNBが『プロセッサ』、『送信機』、『受信機』を備える旨特定されているが、引用発明には、ソースeNBの具体的構成について言及されていない点。

[相違点2]
ハンドオーバ先について、引用発明では「2G」とあるのに対し、本件発明においてはハンドオーバー先が『移動先グローバルシステムフォーモバイル通信(GSM)GSM進化型高速データ伝送(EDGE)無線アクセスネットワーク(GERAN)セル』である点。

[相違点3]
本件発明においては、送信機が『LTEセルを介して無線通信をWTRUに提供する間、(1)移動元LTEセルから、GERANセル情報を使用する移動先GERANセルを含む、他の無線カバレッジエリアへのハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト、および(2)前記GERANセル情報のいずれか』を送信する旨特定されているが、引用発明にはその旨特定されていない点。

[相違点4]
本件発明においては、第1のハンドオーバ命令メッセージは『一時的移動加入者識別(TMSI)を含む、前記移動先GERANセルに関係する無線通信パラメータを含む』との事項が特定されているのに対し、引用発明にはその旨特定されていない点。


第5.当審の判断

上記相違点について検討する。

●[相違点1]について
引用発明ではeNBの具体的な構成は明記されていないが、eNBがプロセッサ、送信機、受信機の構成を備えることは当業者に明らかである。
そして、引用発明のeNBにおいて、判定をプロセッサにて行い、メッセージの送信を送信機にて行い、メッセージの受信を受信機にて行うことは当業者が適宜為し得ることである。

●[相違点2]について
上記「第3.引用文献」の(ア)で言及した様に、本件特許出願の優先権主張の日前において、インターラット(無線アクセス技術間)ハンドオーバとして、「LTEモードから2Gモードへのハンドオーバ」や「LTEモードから3Gモードへのハンドオーバ」が検討されている状況が開示されており、その様な状況下、引用発明において、ハンドオーバ先を3Gモードである『移動先グローバルシステムフォーモバイル通信(GSM)GSM進化型高速データ伝送(EDGE)無線アクセスネットワーク(GERAN)セル』と変更することは当業者であれば適宜なし得ることである。

●[相違点3]について
まず、本件発明において、LTEセルを介して無線通信をWTRUに提供する間、eNBが備える送信機がWTRUへ送信する『(1)移動元LTEセルから、GERANセル情報を使用する移動先GERANセルを含む、他の無線カバレッジエリアへのハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト、および(2)前記GERANセル情報のいずれか』についての解釈について検討する。

上記『(1)移動元LTEセルから、GERANセル情報を使用する移動先GERANセルを含む、他の無線カバレッジエリアへのハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト、および(2)前記GERANセル情報のいずれか』なる記載を文言通りに解釈すると、選択を意味する前記下線部の「いずれか」なる文言があること及び本願明細書の段落【0018】の「WTRUは、GERANを含む様々な無線アクセス技術のリストをS-ENBから受信して、着手する周波数測定のタイプを特定することができる。」との記載を参酌すると、(1)でいうところの「利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト」および(2)でいうところの「前記GERANセル情報」のうち、いずれかを送信機がWTRUへ送信すると解釈できる。(以下、「解釈1」という。)

一方、上記下線部の「いずれか」なる文言が「前記GERANセル情報」にのみ掛かるもの(即ち、修飾する)と解釈すると、上記『(1)移動元LTEセルから、GERANセル情報を使用する移動先GERANセルを含む、他の無線カバレッジエリアへのハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト、および(2)前記GERANセル情報のいずれか』なる記載は、(1)でいうところの「利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト」および(2)でいうところの「前記GERANセル情報のいずれか」の双方を送信機がWTRUへ送信すると解釈することもできる。(以下、「解釈2」という。)

次に、本件特許出願の優先権主張の日前において、いわゆるシステム間ハンドオーバを実行する際の過程(プロセス)で公知の技術事項について整理する。

上記「第3.引用文献」で言及した様に、引用文献2には、システム間ハンドオーバを実行する際、「ネットワークは移動局へ隣接セル情報を与える。」との技術事項が開示されており、更に、これは特定のシステムに限ることなく用いられる旨も開示されている。してみると、本件特許出願の優先権主張の日前において、いわゆるシステム間ハンドオーバを実行する際に「ネットワーク側から移動局へ隣接セル情報を送信する」ことは、当該技術分野においては格別なものとはいえない。

同様に、上記「第3.引用文献」で言及した様に、引用文献3には、無線アクセスネットワーク(RAN)間のハンドオフを実装するための方法および装置において、「E-UTRAN160は、E-UTRAN160のカバレッジエリア内で利用可能なRANのリスト(例えば、I-WLAN、UTRAN、GERAN、またはGAN)を送信する」との技術事項が開示されている。してみると、本件特許出願の優先権主張の日前において、いわゆるシステム間ハンドオーバを実行する際に「ネットワーク側(E-UTRAN)から移動局(WTRU)へE-UTRANのカバレッジエリア内で利用可能なRANのリスト(例えば、I-WLAN、UTRAN、GERAN、またはGAN)を送信する」ことは、当該技術分野においては格別なものとはいえない。

また、本件特許出願の明細書の「WTRUは、GERANを含む様々な無線アクセス技術のリストをS-ENBから受信して、着手する周波数測定のタイプを特定することができる。」(【0018】)なる記載を参酌するに、本件発明に係るeNBが備える送信機がWTRUへ送信する『(1)移動元LTEセルから、GERANセル情報を使用する移動先GERANセルを含む、他の無線カバレッジエリアへのハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト、および(2)前記GERANセル情報のいずれか』は、WTRUがハンドオーバ先候補である隣接セルに関する測定を行う際に用いられる情報であることは明らかである。

してみると、上記『(1)移動元LTEセルから、GERANセル情報を使用する移動先GERANセルを含む、他の無線カバレッジエリアへのハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト、および(2)前記GERANセル情報のいずれか』の意味するところが、「解釈1」又は「解釈2」の何れであるに拘わらす、システム間ハンドオーバを実行するに際して、WTRUがハンドオーバ先候補である隣接セルに関する測定を実行するために必要な情報をネットワーク側(例えば、eNB)から送信することは、引用文献2及び引用文献3に開示されているごとく当該技術分野においては格別なものではなく、引用発明に当該公知の事項を適用することは当業者であれば容易になし得るものである。
そして、隣接セルに関する測定を実行するために必要な情報としてどの様な情報とするかは当業者による設計事項であるから、『(1)移動元LTEセルから、GERANセル情報を使用する移動先GERANセルを含む、他の無線カバレッジエリアへのハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリスト、および(2)前記GERANセル情報のいずれか』をeNBが備える送信機がWTRUへ送信することは容易に実施し得る事項である。

●[相違点4]について
引用発明には、「SGSNは、新しいP-TMSIをUEのために割当て」ることが開示されている。そして、前記「P-TMSI」は、ハンドオーバを実行する際に用いられる必要な情報であること、そして、移動元の「UE」及び「ネットワーク側(eNB、MME)」、移動先の「ネットワーク側(ターゲットBSS、SGSN)」の双方が知っておくべき情報であることは当業者であれば自明であり、引用発明において、SGSNがUEのために割り当てた「P-TMSI」を当該UEに知らせるためにMMEからソースeNBへ送信されるハンドオーバリクワイアードアックナレッジメッセージに含ませて最終的にUEへ知らせるか、他の手段でUEへ知らせるかは、当業者が適宜決定し得る設計的事項である。

したがって、本件発明は、引用発明に引用文献2及び引用文献3に記載された公知の事項を組み合わせることで、当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本件発明のように構成したことによる効果も引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された事項から予測できる範囲のものである。


第6 平成28年8月26日提出の意見書の主張について

1.審判請求人は、平成28年4月22日付け拒絶理由通知書に対する平成28年8月26日提出の意見書において、理由3(進歩性)について、以下の様に主張している。

「これに対して、引用文献1、2には、請求項1に記載のリストを生成することに関する構成が開示も示唆もされておらず、そのため、請求項1のプロセッサによって生成されたリストを送信する送信機についても引用文献1、2には開示も示唆もされておりません。
また、引用文献3、4にも上記したような構成は開示も示唆もされておりません。引用文献4は、LTE/GERANではなく、CDMAに関する技術が開示されていますので、ハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリストに関しては全く触れられておりません。
このため、当業者が引用文献1?4に記載された発明をどのように組み合わせたとしても本願発明のような構成を想到することは非常に困難であり、理由3は解消されるものと思料します。」

2.審判請求人の上記主張について検討する。
審判請求人は、「リストを生成することに関する構成が開示も示唆もされていない」旨主張しているが、その点については、上記「第5.当審の判断」の[相違点2]で言及した通りである。
また、審判請求人は、「引用文献4は、LTE/GERANではなく、CDMAに関する技術が開示されていますので、ハンドオーバのために使用されるべき、利用可能なLTEセルおよびGERANセルのリストに関しては全く触れられておりません。」旨主張しているが、本審決でいう引用文献2(審判請求人がいうところの「文献4」)には、「上記の実施形態において、UMTS、GSM、PDCシステムは例として用いただけである。このコンテナ構造は、これらのシステムのいずれかに限定されるものではなく、現在のあらゆるタイプのシステムや将来の移動体無線システムにおいても用いることができる。」(【0048】)と記載されている様に、あらゆるタイプのシステムや将来の移動体無線システムにおいても用いることができる旨示唆されていることから、審判請求人の主張は採用できない。


第7.むすび

以上のとおり、本件発明は、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-24 
結審通知日 2016-10-25 
審決日 2016-11-08 
出願番号 特願2012-113519(P2012-113519)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北元 健太  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 吉田 隆之
佐藤 智康
発明の名称 LTE/EUTRANからGPRS/GERANへのハンドオーバをサポートする方法および装置  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 藤原 弘和  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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