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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04M 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M |
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管理番号 | 1326543 |
審判番号 | 不服2016-4482 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-25 |
確定日 | 2017-04-11 |
事件の表示 | 特願2014-510727「ホームネットワークのセグメント間における双方向通信を提供するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日国際公開、WO2012/156222、平成26年 8月21日国内公表、特表2014-520423、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年5月16日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年1月14日付けで手続補正され、平成27年1月5日付けで拒絶理由が通知され、同年4月10日付けで手続補正され、同年4月20日付けで手続補正されたが、同年11月24日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成28年3月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、その後、当審において平成28年10月28日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年1月27日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成29年1月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものと認められる。 本願発明1は以下のとおりである。 「【請求項1】 ホームネットワークのセグメント間の双方向通信を提供する方法であって、 第1の時間期間中にドメイン間ブリッジの第1のインタフェースにおいて第1の通信信号を第1の端末から受信すること、 前記第1の時間期間中に前記ドメイン間ブリッジの第2のインタフェースにおいて第2の通信信号を第2の端末から受信すること、 前記第1の通信信号と前記第2の通信信号との重畳信号を生成すること、 第2の時間期間中に前記第1のインタフェースおよび前記第2のインタフェースを介してそれぞれ前記第1の端末および前記第2の端末に前記重畳信号を送信することを含み、 前記第2の時間期間が前記第1の時間期間の完了後に生じる、方法。」 なお、本願発明2-14の概要は以下のとおりである。 本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明である。本願発明4は、本願発明1の主体を「ホームネットワークのあるセグメント中の端末」とした発明である。本願発明5-7は、本願発明4を減縮した発明である。本願発明8は、本願発明1の主体を「ドメイン間ブリッジ」とした発明である。本願発明9-10は、本願発明8を減縮した発明である。本願発明11は、本願発明1の主体を「通信端末」とした発明である。本願発明12-14は、本願発明11を減縮した発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-84553号公報(引用文献1)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「〔産業上の利用分野〕 本発明は音声会議システムに使用される音声ミキシング装置に関し、特に複数地点を対象とした多地点の会議システムにおいて同時に発言を行っている複数地点の音声情報から限定された数の音声情報のみを選択合成する音声ミキシング装置に関する。」(1頁右下欄2?8行) ロ.「本発明の一実施例を示す第1図を参照すると、音声ミキシング装置は、音声情報送受信部1?3と、音声レベル検出部4?6と、優先選択部7と、制御部8と、音声情報合成部9とを備える。音声情報は交換機のネットワークを経由して音声情報送受信部1?3に接続され、音声情報送受信部1?3では、この入力された音声情報を音声レベル検出部4?6及び優先選択部7へ出力する。音声レベル検出部4?6では、各回線毎の音声情報の有音部分及び無音部分を判断し、この判断結果を音声情報の付随データとして制御部8に出力する。この付随データは、回線番号,回線対応の音声の有音部分を認識した時刻,音声の無音部分を認識した時刻及び音声の有無情報などから構成される。 第2図は本発明の音声ミキシング装置を使用した音声会議システムの一実施例を説明するための図である。10?12は各会議室などに設置される会議端末で13は交換機である。複数地点に設置された会議端末のうち会議に参加する会議端末は交換機13で交換接続され、音声ミキシング装置14に接続される。 以下に動作を説明する。会議端末からネットワークを介した音声情報は音声情報送受信部1?3で受信され、音声レベル検出部4?6及び優先選択部7へ伝達される。音声レベル検出部4?6では、一定時間ごとに音声の有音部分及び無音部分を監視して、この監視時間が経過しても同一の状態が継続しているか否かにより音声の有音部分及び無音部分の識別判断を行う。 音声レベル検出部4?6から音声の有無及び認識した時刻を受信した制御部8は、まず音声の有音部分が検出された回線数が予め設定されたN(Nは正の整数)回線より少ないかどうかをチェックし、少ない場合には優先選択部7を制御し、音声の有音部分が検出された回線のみを音声情報合成部9に接続する。又、多い場合にはこれら回線で音声の有音部分が認識された時刻を時系列的にチェックし、音声の発生した順序に従い早いものからN回線を選択し、優先選択部7を制御し選択されたN回線を音声情報合成部9へ接続する。なお、音声の有音部分が検出された回線がN個以下の場合には無条件にその音声情報を音声情報合成部9に出力する。 音声情報合成部9は選択された最大N回線の音声情報を合成して音声情報送受信部1?3へ出力し、音声情報送受信部1?3では、個々にこの合成された音声情報から交換機経由で入力されたそれぞれ送出元の音声情報を削除し、交換機経由で各地点へ出力する。」(2頁右上欄10行?同頁右下欄19行) 引用文献1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.における「第2図は本発明の音声ミキシング装置を使用した音声会議システムの一実施例を説明するための図である。10?12は各会議室などに設置される会議端末で13は交換機である。複数地点に設置された会議端末のうち会議に参加する会議端末は交換機13で交換接続され、音声ミキシング装置14に接続される。」との記載、及び図1、2によれば、引用文献1の音声会議システムは、交換機のネットワークの会議端末間で音声情報を送受信しているから、この方法は、交換機のネットワークの会議端末間で音声情報を送受信する方法ということができる。 また、上記ロ.における「音声ミキシング装置は、音声情報送受信部1?3と、音声レベル検出部4?6と、優先選択部7と、制御部8と、音声情報合成部9とを備える。音声情報は交換機のネットワークを経由して音声情報送受信部1?3に接続され、音声情報送受信部1?3では、この入力された音声情報を音声レベル検出部4?6及び優先選択部7へ出力する。」との記載、及び図1、2によれば、交換機のネットワークの会議端末間で音声情報を送受信する方法は、交換機を経由して音声ミキシング装置の音声情報送受信部(以下、「第1の音声情報送受信部」という。)において音声情報(以下、「第1の音声情報」という。)を会議端末(以下、「第1の会議端末」という。)から受信しているといえる。 また、別の会議端末に着目すれば、交換機のネットワークの会議端末間で音声情報を送受信する方法は、交換機を経由して音声ミキシング装置の別の音声情報送受信部(以下、「第2の音声情報送受信部」という。)において別の音声情報(以下、「第2の音声情報」という。)を別の会議端末(以下、「第2の会議端末」という。)から受信しているといえる。 また、上記ロ.における「音声の発生した順序に従い早いものからN回線を選択し、優先選択部7を制御し選択されたN回線を音声情報合成部9へ接続する。」との記載、及び図1、2によれば、交換機のネットワークの会議端末間で音声情報を送受信する方法は、第1の音声情報と第2の音声情報との合成音声情報を合成しているといえる。 また、上記ロ.における「音声情報合成部9は選択された最大N回線の音声情報を合成して音声情報送受信部1?3へ出力し、音声情報送受信部1?3では、個々にこの合成された音声情報から交換機経由で入力されたそれぞれ送出元の音声情報を削除し、交換機経由で各地点へ出力する。」との記載、及び図1、2によれば、交換機のネットワークの会議端末間で音声情報を送受信する方法は、交換機を経由してそれぞれ第1の音声情報送受信部および第2の音声情報送受信部を介してそれぞれ第1の会議端末および第2の会議端末に合成音声情報からそれぞれ送出元の音声情報を削除して、送信しているといえる。 したがって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。 「交換機のネットワークの会議端末間で音声情報を送受信する方法であって、 交換機を経由して音声ミキシング装置の第1の音声情報送受信部において第1の音声情報を第1の会議端末から受信することと、 前記交換機を経由して前記音声ミキシング装置の第2の音声情報送受信部において第2の音声情報を第2の会議端末から受信することと、 前記第1の音声情報と前記第2の音声情報との合成音声情報を合成することと、 前記交換機を経由してそれぞれ前記第1の音声情報送受信部および前記第2の音声情報送受信部を介してそれぞれ前記第1の会議端末および前記第2の会議端末に前記合成音声情報からそれぞれ送出元の音声情報を削除して、送信することを含む、 方法。」 2. 原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-58658号公報(引用文献2)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「第1図は本発明の一実施例である。 本実施例は、マスタサーバ11,会議サーバ12,ドメインサーバ13,複数のクライアント14およびLAN16から成る第1のドメイン15と、ドメインサーバ13,複数のクライアント14,LAN16およびドキュメントサーバ20から成る第2のドメイン15と、ドメインサーバ13,複数のクライアント14およびLAN16から成る第3のドメイン15と、2つのPBX19とデータ通信装置とから成る。 データ通信装置として、ドメイン15内はLAN(ローカルエリアネットワーク)16を使い、ドメイン間は回線18を使っている。LAN16と回線18を結ぶためにゲートウェイ17を使用している。電話はPBX(構内電話交換機)19を介して結ばれている。」(2頁右上欄16行?同頁左下欄11行) ロ.「会議開始時間が来て会議を開始するには、まず会議の招集者はクライアント14を操作することにより、他の利用者を呼び出し、会議への参加を促す。このとき、他の利用者には参加を促すメッセージが表示され、それに回答することを求められる。 参加する人が決定したら、会議が始まる。会議中の音声は電話でPBX19を介して送られる。データはドメインサーバ13が適切な宛先に届くように制御を行う。会議サーバ12は会議中の共通画面操作権の移行の制御や共通画面操作権保持者の画面操作内容の記録などを主に行う。」(3頁右下欄6?17行) 引用文献2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.における「複数のクライアント14およびLAN16から成る第1のドメイン15と、ドメインサーバ13,複数のクライアント14,LAN16およびドキュメントサーバ20から成る第2のドメイン15・・・電話はPBX(構内電話交換機)19を介して結ばれている。」、上記ロ.における「会議が始まる。会議中の音声は電話でPBX19を介して送られる。データはドメインサーバ13が適切な宛先に届くように制御を行う。」との記載、及び第1図によれば、異なるドメインのクライアント間の会議において、会議情報(データ)は、ゲートウェイを介して(データ)回線により伝送されるとともに、音声はPBXの回線により伝送される分散会議のシステムが記載されているいうことができる。 したがって、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。 「異なるドメインのクライアント間の会議において、会議情報(データ)は、ゲートウェイを介して(データ)回線により伝送されるとともに、音声はPBXの回線により伝送される分散会議のシステム。」 3. 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-98318号公報(引用文献3)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0018】 【実施例】以下、本発明を具体的な一実施例に基づいて説明する。 第1実施例 図1は、第1の地における映像会議システムの構成を示したブロック図である。このシステムの配設されたビル内には、ローカルエリアネットワーク(以下、「LAN」という。)2が配設されている。このLAN2は周波数分割多重伝送方式による伝送路であり、ヘッドエンド1へ情報を伝達するための低群帯域の複数の上りチャネルとヘッドエンド1から端末側に情報を伝達するための高群帯域の複数の下りチャネルとを有している。ヘッドエンド1は、上りチャネルの信号を下りチャネルの信号に変換する周波数変換機能を有している。 【0019】このLAN2の配設されたビルの一つの固定箇所に端末装置設置室10が設けられている。端末装置設置室10には、LAN2の下り第1チャネルの信号を復調する復調器12(第1復調器)が設けられており、その復調器12により第1映像信号A及び第1混合音声信号a+bが得られる。第1映像信号Aは、TV会議端末装置11(第1端末装置)の映像及び音声の送信入力端に入力している。TV会議端末装置11は、ISDN回線3により第2の地に設置された第2会議室に設けられた同一構成のTV会議端末装置(第2端末装置)と接続されている。このTV会議端末装置11の受信出力端からは、第2会議室からの第2映像信号B及び第2音声信号bが出力される。 【0020】復調器12により得られた第1混合音声信号a+bは、エコー消去器15(第1エコー消去装置)の入力端(IN)に入力し、参照端(ref)にTV会議端末装置11の受信出力端から出力された第2音声信号bが入力している。そして、エコー消去器15は、第1混合音声信号a+bのなかから第2音声信号bと同一成分の信号が消去されて、第1音声信号aが生成される。この第1音声信号aは第1会議室の発言者の発言音声として第1映像信号Aと共にTV会議端末装置11を介して第2の地に送信される。 【0021】又、エコー消去器15の出力する第1音声信号aとTV会議端末装置11の受信出力端から出力される第2音声信号bは、混合器14(第2混合器)により混合されて、第2混合音声信号a+bが生成される。第2混合音声信号a+bと第2映像信号Bは変調器13(第2変調器)により変調され、上り第2チャネルの信号としてLAN2に送出される。 【0022】一方、端末装置設置室10とは別の室の映像会議室(第1会議室)30には、LAN2から下り第2チャネルの信号を復調する復調器(第2復調器)31と、映像会議室30内の映像及び音声を第1チャネルの信号に変調してLAN2に出力する変調器(第1変調器)34と、エコー消去器(第2エコー消去装置)38と、混合器(第1混合器)37が設置されている。復調器31により復調された映像信号BはTV受像器32に出力され、第2の地の会議室の映像が表示される。 【0023】また、復調器31により復調された第2混合音声信号a+bは、エコー消去器38の入力端(IN)に入力し、マイクロホン36により収音されて得られた第1音声信号aはエコー消去器38の参照端(ref)に入力している。そして、エコー消去器38において、第2混合音声信号a+bのなかから第1音声信号aと同一成分の信号が消去されて、第2音声信号bが出力端(OT)から出力される。スピーカ33はこの第2音声信号bを入力しており、スピーカ33から第2会議室の発言者の音声bが出力される。 【0024】一方、エコー消去器38で得られた第2音声信号bとマイクロホン36の出力する第1音声信号a(エコー消去器38の参照端(ref)から出力される信号と同一)とは、混合器37に入力し、その混合器37により両信号は混合されて第1混合音声信号a+bが出力される。第1混合音声信号a+bは、TVカメラ35により撮像されて得られた映像信号Aと共に変調器34に入力し、その変調器34で、上り第1チャネルの信号A/a+bに変調されLAN2に出力される。 【0025】一次的には、LAN2の第1チャネルは、第1の地の映像会議室30における映像信号Aと音声信号aを伝送するチャネルである。また、第2チャネルは、第2の地の会議室の映像信号B及び音声信号bを伝送するチャネルである。 【0026】しかし、復調器31で第2チャネルの信号を復調して得られる第2混合音声信号a+bのうち、第2音声信号bが原始信号であり、第1音声信号aは映像会議室30における発言者の音声の混合器14により返送されるエコー信号である。エコー消去器38により原始信号の第2音声信号bだけが抽出され、マイクロホン36で生成された原始信号の第1音声信号aとが混合器37で混合されて、変調器34により第1チャネルの信号として出力される。よって、第1チャネルは原始信号の第1音声信号aと原始信号の第2音声信号bの混合である第1混合音声信号a+bが伝送することになる。 【0027】同様に、復調器12で第1チャネルの信号を復調して得られる第1混合音声信号a+bのうち、第1音声信号aが原始信号であり、第2音声信号bは第2会議室における発言者の音声の混合器37により返送されるエコー信号である。エコー消去器15により原始信号の第1音声信号aだけが抽出され、TV会議端末装置11で受信された原始信号の第2音声信号bとが混合器14で混合されて、変調器13により第2チャネルの信号として出力される。よって、第2チャネルは原始信号の第1音声信号aと原始信号の第2音声信号bの混合である第2混合音声信号a+bが伝送することになる。 【0028】よって、LAN2に接続されている別室40,50に設置されたTV受像器41,51において、第1チャネルを受信すれば、映像会議室30の映像Aを監視できると共に、第1の地の会議室30の音声aと第2の地の会議室の音声bとの混合音とを傍聴できる。また、第2チャネルを受信すれば、第2の地の会議室の映像Bを監視できると共に、第1の地の会議室30の音声aと第2の地の会議室の音声bとの混合音とを傍聴できる。 【0029】このように、本実施例では、映像会議室30における復調器31,変調器34をLAN2に接続すると共に、TV会議端末装置11を復調器12,及び変調器13を介してLAN2に接続しているため、端末装置設置室10が固定されて移動不可能であったとしても、映像会議室30はLAN2が敷設されている任意の室に移動することが容易となる。」 引用文献3の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.の【0019】における「端末装置設置室10には、LAN2の下り第1チャネルの信号を復調する復調器12(第1復調器)が設けられており、その復調器12により第1映像信号A及び第1混合音声信号a+bが得られる。」、同イ.の【0020】における「復調器12により得られた第1混合音声信号a+bは、エコー消去器15(第1エコー消去装置)の入力端(IN)に入力し、参照端(ref)にTV会議端末装置11の受信出力端から出力された第2音声信号bが入力している。そして、エコー消去器15は、第1混合音声信号a+bのなかから第2音声信号bと同一成分の信号が消去されて、第1音声信号aが生成される。」との記載、及び図1によれば、端末装置設置室において、映像会議室から端末装置設置室へ混合音声信号a+bが送信され、端末装置設置室内のTV会議端末装置から入力された音声信号bを消去して、音声信号aを取り出しているといえる。 したがって、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認める。 「端末装置設置室において、映像会議室のTV会議端末装置から端末装置設置室へ混合音声信号a+bが送信され、端末装置設置室内のTV会議端末装置から入力された音声信号bを消去して、音声信号aを取り出し、前記端末装置室内のTV会議端末装置に送信すること。」 4. 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-345332号公報(引用文献4)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0074】親コンテンツ保持部12ならびに子コンテンツ保持部13から送られてくる情報とは、コンテンツの画像情報やコンテンツ情報である。コンテンツ情報が送られてくる場合には、重畳表示画像生成出力部14において、コンテンツ情報を解釈し、レンダリング処理などを施すことで、コンテンツの画像を生成する。重畳表示の生成は、親コンテンツと子コンテンツとをレイヤによって管理し、双方のレイヤの画素を加算や乗算、論理和や論理積、排他的論理和といった演算により合成する。その演算の際に、透過率/混合率設定部15によって設定された透過率や混合率を反映させることで、ブレンディングの制御を行う。」 したがって、引用文献4には、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認める。 「コンテンツの合成を行う際に、排他的論理和を用いること。」 第4 当審の判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 a.引用発明1の「交換機のネットワークの会議端末間」と、本願発明1の「ホームネットワークのセグメント間」とは、「所定のネットワークの所定単位要素間」である点で共通する。 b.引用発明1の「交換機を経由して音声ミキシング装置」と、本願発明1の「ドメイン間ブリッジ」とは、「中継手段」である点で共通する。 c.引用発明1の「第1の音声情報送受信部」と「第2の音声情報送受信部」と、本願発明1の「第1のインタフェース」と「第2のインタフェース」、引用発明1の「第1の会議端末」と「第2の会議端末」と、本願発明1の「第1の端末」と「第2の端末」とは、それぞれ「第1のインタフェース手段」と「第2のインタフェース手段」、「第1の装置」と「第2の装置」である点で共通する。 d.引用発明1の「前記第1の音声情報送受信部および前記第2の音声情報送受信部を介してそれぞれ前記第1の会議端末および前記第2の会議端末に前記第1の音声情報と前記第2の音声情報を合成した音声信号から自己の音声情報を削除して、それぞれ第2の音声情報および第1の音声情報を送信する」と、本願発明の「前記第1のインタフェースおよび前記第2のインタフェースを介してそれぞれ前記第1の端末および前記第2の端末に前記重畳信号を送信する」とは、後述する相違点を除いて、「前記第1のインタフェース手段および前記第2のインタフェース手段を介してそれぞれ前記第1の装置および前記第2の装置に所定の信号を送信する」という点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。 <一致点> 「所定のネットワークの所定単位要素間の双方向通信を提供する方法であって、 中継手段の第1のインタフェース手段において第1の通信信号を第1の装置から受信すること、 前記中継手段の第2のインタフェース手段において第2の通信信号を第2の装置から受信すること、 前記第1の通信信号と前記第2の通信信号との重畳信号を生成すること、 前記第1のインタフェース手段および前記第2のインタフェース手段を介してそれぞれ前記第1の装置および前記第2の装置に所定の信号を送信することを含む、 方法。」 <相違点1> 一致点の「所定のネットワークの所定単位要素」に関し、 本願発明は、「ホームネットワークのセグメント」であるのに対し、引用発明1は、「交換機のネットワークの会議端末」である点。 それに伴い、一致点の「第1の装置」、「第2の装置」が、本願発明1では、異なるセグメントに配置される「第1の端末」、「第2の端末」であるのに対し、引用発明1では、交換機に接続される「第1の会議端末」、「第2の会議端末」である点。 <相違点2> 一致点の「中継手段」が、本願発明1では、「ドメイン間ブリッジ」であるのに対し、引用発明1では、「交換機を経由して音声ミキシング装置」である点。 それに伴い、一致点の「第1のインタフェース手段」、「第2のインタフェース手段」が、本願発明1では、「ドメイン間ブリッジ」の「第1のインタフェース」、「第2のインタフェース」であるのに対し、引用発明1では、「音声ミキシング装置」の「第1の音声情報送受信部」、「第2の音声情報送受信部」である点。 <相違点3> 一致点の「第1の通信信号」、「第2の通信信号」の「受信」のタイミングが、本願発明1では、「第1の時間期間中」であるのに対し、引用発明1では、「受信」のタイミングについて明記されていない点。 <相違点4> 一致点の「所定の信号」が、本願発明1では、「重畳信号」であるのに対し、引用発明1では、「合成音声情報」から「送出元の音声を削除」したものである点。 <相違点5> 一致点の「所定の信号を送信」のタイミングが、本願発明1では、「第2の時間期間中」で「前記第2の時間期間が前記第1の時間期間の完了後に生じる」のに対し、引用発明1では、「送信」のタイミングが記載されていない点。 (2)相違点についての判断 そこで、上記相違点2について検討する。 本願発明1の「ドメイン間ブリッジ」について、本願明細書【0041】に「ドメイン間ブリッジ400は、制御パラメータ(すなわちフロー優先順位およびキューイングリスト)を使用して、異なるドメイン101、102からの2つのデバイス501、502間における双方向通信を、X-Iインタフェースを介して開始および調整することができる。」と記載されている。引用発明2ないし引用発明4のいずれにも、本願発明1の「ドメイン間ブリッジ」に相当する事項について記載も示唆もない。 したがって、本願発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2.本願発明2、3について 本願発明2、3は、本願発明1の発明特定事項を含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(2)と同じ理由により、引用発明1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 3.本願発明4について 本願発明4は、本願発明1の主体を「ホームネットワークのあるセグメント中の端末」とした発明であるから、上記(2)と同じ理由により、引用発明1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 4.本願発明5ないし7について 本願発明5ないし7は、本願発明1の発明特定事項を含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(2)と同じ理由により、引用発明1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 5.本願発明8について 本願発明8は、本願発明1の主体を「ドメイン間ブリッジ」とした発明であるから、上記(2)と同じ理由により、引用発明1ないし4基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 6.本願発明9ないし10について 本願発明9ないし10は、本願発明8の発明特定事項を含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(2)と同じ理由により、引用発明1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 7.本願発明11について 本願発明11は、本願発明1の主体を「通信端末」とした発明であるから、上記(2)と同じ理由により、引用発明1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 8.本願発明12ないし14について 本願発明12ないし14は、本願発明11の発明特定事項を含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(2)と同じ理由により、引用発明1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1-14について引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、上記「第4 当審の判断」の「(2)相違点についての判断」の項で示した理由により、本願発明1-14は、引用発明1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1.特許法第36条第6項第2号について (1)請求項4において、「ホームネットワークの異なるセグメント中のリモート端末と通信する」主体が不明である。(例えば、「ホームネットワークのあるセグメント中のリモート端末が、ホームネットワークの異なるセグメント中のリモート端末と通信する方法であって」と補正すれば、この理由は解消される。) (2)請求項11において、「差分信号に達するために」の「達する」の意味が日本語として明確でない。(例えば、「差分信号を得るために」と補正すれば、この理由は解消される。) 2.当審拒絶理由の判断 イ.平成29年1月27日付け手続補正書により、請求項4において、「ホームネットワークのあるセグメント中の端末が」が加えられた。これにより、請求項4に係る発明は、明確となった。 ロ.平成29年1月27日付け手続補正書により、請求項11において、「差分信号を得るために」と補正された。これにより、請求項11に係る発明は、明確となった。 よって、当審拒絶理由1および2は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-03-27 |
出願番号 | 特願2014-510727(P2014-510727) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04M)
P 1 8・ 537- WY (H04M) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松平 英 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 萩原 義則 |
発明の名称 | ホームネットワークのセグメント間における双方向通信を提供するための方法および装置 |
代理人 | 特許業務法人川口國際特許事務所 |