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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1326620
審判番号 不服2015-13900  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-23 
確定日 2017-03-29 
事件の表示 特願2013-550415「立体映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日国際公開、WO2012/102550、平成26年 4月17日国内公表、特表2014-509402〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年1月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年1月25日、2012年1月25日、いずれも大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月20日付けで拒絶理由が通知され、同年12月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年3月16日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年7月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年7月23日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1?12を、補正後の特許請求の範囲の請求項1?12と補正するとともに明細書を補正するものであり、補正前後の請求項1は、それぞれ次のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
左眼用領域及び右眼用領域を有し、前記左眼用領域及び前記右眼用領域がそれぞれ位相差層及び偏光子を含むメガネを着用して立体映像を観察する装置であり、
駆動状態で左眼用信号及び右眼用信号をそれぞれ生成することができる左眼用信号生成領域及び右眼用信号生成領域を含む表示素子と、前記表示素子で生成された左眼用信号及び右眼用信号が入射され得るように配置された第1偏光板と、前記左眼用信号生成領域及び前記右眼用信号生成領域で生成された左眼用信号及び右眼用信号が前記第1偏光板を経てそれぞれ入射され得るように配置されており、位相差層をそれぞれ含む左眼用信号偏光調節領域及び右眼用信号偏光調節領域を含むフィルタと、を含み、下記一般式1または一般式2の条件を満たし、
[一般式1]
D_(L)=|θ_(2)-θ_(L)|≦15.0
[一般式2]
D_(R)=|θ_(1)-θ_(R)|≦15.0
上記一般式1及び一般式2で前記D_(L)は、前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記左眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度であり、D_(R)は、前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記右眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度であり、θ_(2)は、前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸が前記第1偏光板の吸収軸と成す角度であり、θ_(L)は、前記メガネの前記左眼用領域の偏光子の吸収軸を前記第1偏光板の吸収軸と垂直になるように配置した状態で前記左眼用領域の位相差層の光軸と前記第1偏光板の吸収軸が成す角度であり、θ_(1)は、前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸が前記第1偏光板の吸収軸と成す角度であり、θ_(R)は、前記メガネの右眼用領域の偏光子の吸収軸を前記第1偏光板の吸収軸と垂直になるように配置した状態で前記右眼用領域の位相差層の光軸と前記第1偏光板の吸収軸が成す角度であり、
前記左眼用信号偏光調節領域及び前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層は、それぞれ100nm?200nmの位相差を有し、
前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の位相差と前記左眼用領域の位相差層の位相差の差が、-5nm?5nmであり、
前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の位相差と前記右眼用領域の位相差層の位相差の差が、-5nm?5nmである、立体映像表示装置。」

(補正後)
「左眼用領域及び右眼用領域を有し、前記左眼用領域及び前記右眼用領域がそれぞれ位相差層及び偏光子を含むメガネを着用して立体映像を観察する立体映像表示装置であり、
駆動状態で左眼用信号及び右眼用信号をそれぞれ生成することができる左眼用信号生成領域及び右眼用信号生成領域を含む表示素子と、前記表示素子で生成された左眼用信号及び右眼用信号が入射され得るように配置された第1偏光板と、前記左眼用信号生成領域及び前記右眼用信号生成領域で生成された左眼用信号及び右眼用信号が前記第1偏光板を経てそれぞれ入射され得るように配置されており、位相差層をそれぞれ含む左眼用信号偏光調節領域及び右眼用信号偏光調節領域を含むフィルタと、を含み、下記一般式1または一般式2の条件を満たし、
[一般式1]
D_(L)=|θ_(2)-θ_(L)|≦5.0
[一般式2]
D_(R)=|θ_(1)-θ_(R)|≦5.0
上記一般式1及び一般式2で前記D_(L)は、前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記左眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度であり、D_(R)は、前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記右眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度であり、θ_(2)は、前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸が前記第1偏光板の吸収軸と成す角度であり、θ_(L)は、前記メガネの前記左眼用領域の偏光子の吸収軸を前記第1偏光板の吸収軸と垂直になるように配置した状態で前記左眼用領域の位相差層の光軸と前記第1偏光板の吸収軸が成す角度であり、θ_(1)は、前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸が前記第1偏光板の吸収軸と成す角度であり、θ_(R)は、前記メガネの右眼用領域の偏光子の吸収軸を前記第1偏光板の吸収軸と垂直になるように配置した状態で前記右眼用領域の位相差層の光軸と前記第1偏光板の吸収軸が成す角度であり、
前記左眼用信号偏光調節領域及び前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層は、それぞれ100nm?200nmの位相差を有し、
前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の位相差と前記左眼用領域の位相差層の位相差の差が、-5nm?5nmであり、
前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の位相差と前記右眼用領域の位相差層の位相差の差が、-5nm?5nmであり、
前記立体映像表示装置のクロストーク率は1%以下であり、
前記クロストーク率は、明状態の輝度に対する暗状態の輝度の比率であり、
前記輝度は、前記立体映像表示装置の中心から前記立体映像表示装置の水平方向の長さの3/2倍に相当する距離だけ離れた観測地点で測定され、前記メガネは、観察者が前記立体映像表示装置の中心に向けて観察することを仮定して前記観測地点に位置される、立体映像表示装置。」(下線は、補正箇所に請求人が付加したもの。)

2 本件補正についての検討
(1)補正の目的についての検討
本件補正は、請求項1についての補正(以下「補正事項1」という。)」を含むものであり、当該補正事項1は、補正前の請求項1について、「D_(L)」、「D_(R)」の数値範囲の上限値、及び「立体映像表示装置」の「クロストーク率」を限定するものである。
したがって、当該補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下において検討する。

(2)独立特許要件について
ア 本件補正後の発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記「1 本件補正の内容」の「(補正後)」に記載したとおりである。

イ 引用例の記載と引用発明
(ア)引用例1:特開平10-232365号公報
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-232365号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は、当審による。以下、同じ。)。

a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、観察者が立体眼鏡を着用することにより3次元映像を観察することができ、立体眼鏡を用いないことにより2次元映像を観察することができる映像表示システムに関する。」

b 「【0002】
【従来の技術】…(略)…
【0003】また、立体表示装置として、偏光透過軸方向が互いに直交する第1の偏光板と第2の偏光板とからなる偏光フィルムを用いたものも知られている。この偏光フィルムは、第1の偏光板と第2の偏光板とを所定の表示単位に対応させて互いに隣接し、かつ、均等に対称性を有する配列パターンで交互に配置することにより得られる。
…(略)…
【0007】
【発明が解決しようとする課題】…(略)…
【0008】また、上述の第1の偏光板と第2の偏光板とをパターン配列させた偏光フィルムを用いた立体表示装置では、一般に、配向膜をラビング処理してそれに接する液晶材料を一軸方向に配向させた液晶パネルが用いられる。…(略)…さらに、表示装置の左目用画素に設けられた偏光板の偏光透過軸と眼鏡の左目用偏光板の偏光透過軸方向とを正確に一致させ、かつ、表示装置の右目用画素に設けられた偏光板の偏光透過軸と眼鏡の右目用偏光板の偏光透過軸方向とを正確に一致させなければ、右目用画素から出射された映像が左目で観察され、または左目用画素から出射された映像が右目で観察されるというクロストークが発生して、立体視が不可能となる。」

c 「【0014】以下に、本発明の作用について説明する。
【0015】請求項1に記載の本発明にあっては、表示装置の位相差板の左目用領域と右目用領域とで進相軸または遅相軸方向を異ならせてあるので、左目用領域を透過する左目用画像光と右目用領域を透過する右目用画像光とに異なる位相差が加えられて表示装置から出射される。
【0016】このうち、左目用画像光に加えられた位相差は、立体眼鏡の左目用位相差板を透過することにより相殺されるので、左目用画像光は位相差が加えられていない状態で、波長分散が生じず、出射されたときと同一の振動方向の偏光として立体眼鏡の左目用偏光板に入射する。
【0017】ここで、表示装置の偏光板の透過軸方向と立体眼鏡の左目用偏光板の透過軸方向とがほぼ同一にしてあるので、左目用画像信号は波長分散が無い状態で左目用偏光板を透過し、色調のずれの無い映像が観察される。同様にして右目用画像光は右目用偏光板を透過し、色調のずれの無い映像が観察される。
【0018】また、請求項2に記載の本発明にあっては、表示装置の位相差板の左目用領域と右目用領域とで進相軸または遅相軸方向を異ならせてあるので、左目用領域を透過する左目用画像光と右目用領域を透過する右目用画像光とに異なる位相差が加えられて表示装置から出射される。
【0019】このうち、左目用画像光に加えられた位相差は、立体眼鏡の右目用位相差板を透過することにより相殺されるので、左目用画像光は位相差が加えられていない状態で、波長分散が生じず、出射されたときと同一の振動方向の偏光として立体眼鏡の右目用偏光板に入射する。
【0020】ここで、表示装置の偏光板の透過軸方向と立体眼鏡の右目用偏光板の透過軸方向とが異ならせてあるので、左目用画像信号は右目用偏光板を透過せず、クロストークが生じない。同様にして右目用画像信号は左目用偏光板を透過せず、クロストークが生じない。
【0021】一方、右目用画像光には立体眼鏡の右目用位相差板を透過することにより右目用偏光板を透過するように位相差が加えられるので、右目用画像光は立体眼鏡の右目用偏光板を透過する。同様に、左目用画像光は立体眼鏡の左目用偏光板を透過する。」

d 「【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に述べる実施形態に限られない。
【0023】(実施形態1)図1(a)に、本発明の映像表示システムに用いられる表示装置の一実施形態を示す。この表示装置は、単純マトリクス型の液晶表示素子であり、液晶パネル10を構成する一対の基板1a、1bの間に液晶材料6が挟持されている。一方の基板1aには、液晶材料6側に、遅相軸方向が互いに90゜異なるλ/4板からなる位相差領域2a、2bが設けられ、その上に位相差領域2a、2bにわたって偏光フィルム3が設けられている。偏光フィルム3の液晶材料6側には、ITO等からなる帯状の透明電極4aが複数設けられ、基板1bの液晶材料6側には、ITO等からなる帯状の透明電極4bが複数設けられている。両透明電極4a、4bは互いに交差(図では直交)しており、両透明電極4a、4bが重なり合っている箇所が画素5a、5bとなっている。λ/4板2の位相差領域2aは左目用画素および右目用画素のうちの一方の画素(図では画素5a)に対応するように配置されており、位相差領域2bは他方の画素(図では画素5b)に対応するように配置されている。また、透明電極4a、4bと表示媒体との間には、電気絶縁膜および配向膜(共に図示せず)が、配向膜を表示媒体側に配置して設けられている。
【0024】この表示装置は、図2に示すような立体眼鏡20を着用して3次元映像を観察し、立体眼鏡20を外して2次元映像を観察するようになっている。
【0025】この立体眼鏡20の左目には透明な基材(図示せず)に左目用λ/4板21と左目用偏光フィルム23とが設けられ、右目には透明な基材(図示せず)に右目用λ/4板22と右目用偏光フィルム24とが設けられている。
【0026】液晶パネル10のλ/4板2における各位相差領域2a、2bの遅相軸と偏光フィルム3の透過軸と、および立体眼鏡20の各λ/4板21、22と各偏光フィルム23、24とは、図3または図4に示すように配置されている。
【0027】図3では、液晶パネル10の偏光フィルム3の透過軸方向と立体眼鏡20の偏光フィルム23、24の透過軸方向とが同一であり、液晶パネル10のλ/4板2における左目用画素に対応する領域(左目用領域2a)および右目用画素に対応する領域(右目用領域2b)のうちの一方(図では左目用領域2a)の遅相軸方向と液晶パネル10の偏光フィルム3の透過軸方向とが45゜の角度をなし、液晶パネル10のλ/4板2における左目用領域2aの遅相軸方向と立体眼鏡20の左目用λ/4板21の透過軸方向が90゜の角度をなすと共に、右目用領域2bの遅相軸方向と右目用λ/4板22の遅相軸方向が90゜の角度をなすように配置されている。
【0028】また、図4では、液晶パネル10の偏光フィルム3の透過軸方向と立体眼鏡20の偏光フィルム23、24の透過軸方向とが90゜の角度をなし、液晶パネル10のλ/4板2における左目用領域2aおよび右目用領域2bのうちの一方の領域(図では左目用領域2a)の遅相軸方向と液晶パネル10の偏光フィルム3の透過軸方向とが45゜の角度をなし、液晶パネル10の左目用領域2aの遅相軸方向と立体眼鏡20の左目用λ/4板21の遅相軸方向が同一であると共に、右目用領域2bの遅相軸方向と右目用λ/4板22の遅相軸方向が同一であるように配置されている。
【0029】この表示装置は、例えば図5に示すようにして作製することができる。
【0030】まず、図5(a)に示すように、透明な基板1a上に、λ/4板からなる位相差領域2a、2bを形成する。このとき、各位相差領域2a、3bの遅相軸方向は、図3または図4に示したように配置する。このように遅相軸方向が異なる位相差領域2a、2bを有するλ/4板2は、例えば、本出願人が特願平8-324464、特願平8-321937、特願平8-312482において開示しているような方法により作製することができる。この実施形態では、ポリスルホンからなるリターデーション値130nmの1/4波長板を用いて、7059ガラス基板(コーニング社製)からなる基板1a上に、互いの遅相軸方向が直交する位相差領域2a、2bを幅280μm、間隔20μmの帯状パターンで交互に配置した。また、位相差領域2a、2bの遅相軸方向は、図3に示したように配置した。」

e 「【0045】(実施形態2)本実施形態では、液晶パネル10のλ/4板2における各位相差領域2a、2bの遅相軸と偏光フィルム3の透過軸と、および立体眼鏡20の各λ/4板21、22と各偏光フィルム23、24とを、図4に示すように配置した。
【0046】図7に、左目用画素から出射されて左目で観察され、右目用画素から出射されて右目で観察される主映像の光量の波長分散を測定した結果を■で示し、左目用画素から出射されて右目で観察され、右目用画素から出射されて左目で観察されるクロストークの光量の波長分散を測定した結果を□で示す。この図から理解されるように、クロストークの光量には波長分散が全く生じていなかった。また、主映像の光量には波長分散が若干生じているが、これによる影響は約3.4%であり、色調のずれは殆ど生じなかった。
【0047】さらに、顔を30゜傾けて3次元画像を観察した場合のクロストーク比は約0.9%であり、観察者の顔の位置による影響をほとんど受けなかった。」

f 「【0056】上記実施形態1および2では、液晶パネル10を構成する一対の基板のうちの一方の基板1aの液晶材料6側にλ/4板2と偏光フィルム3とを配置したが、図1(b)に示すように、基板1aの液晶材料6とは反対側にλ/4板2と偏光フィルム3とを配置してもよい。この場合、偏光フィルム3が熱プロセスを通過しなくてもよくなるので、汎用の偏光板を用いて表示装置のコストダウンを図ることができる。さらに必要に応じて別途位相差フィルムを設けて色調補償や視野角拡大等を図ってもよい。」

(イ)引用発明
上記「(ア)引用例1」の摘記事項d及びeによれば、引用例1には、図4に示され、段落【0045】に記載される(実施形態2)の表示装置として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「液晶パネル10を構成する一対の基板1a、1bの間に液晶材料6が挟持されており、一方の基板1aには、液晶材料6側に、遅相軸方向が互いに90゜異なるλ/4板からなる位相差領域2a、2bが設けられ、その上に位相差領域2a、2bにわたって偏光フィルム3が設けられており、偏光フィルム3の液晶材料6側には、ITO等からなる帯状の透明電極4aが複数設けられ、基板1bの液晶材料6側には、ITO等からなる帯状の透明電極4bが複数設けられており、両透明電極4a、4bは互いに交差しており、両透明電極4a、4bが重なり合っている箇所が画素5a、5bとなっており、λ/4板2の位相差領域2aは左目用画素および右目用画素のうちの一方の画素5aに対応するように配置されており、位相差領域2bは他方の画素5bに対応するように配置されている表示装置であって、
この表示装置は、左目には左目用λ/4板21と左目用偏光フィルム23とが設けられ、右目には右目用λ/4板22と右目用偏光フィルム24とが設けられている立体眼鏡20を着用して3次元映像を観察するようになっており、
液晶パネル10の偏光フィルム3の透過軸方向と立体眼鏡20の偏光フィルム23、24の透過軸方向とが90゜の角度をなし、液晶パネル10のλ/4板2における左目用領域2aの遅相軸方向と液晶パネル10の偏光フィルム3の透過軸方向とが45゜の角度をなし、液晶パネル10の左目用領域2aの遅相軸方向と立体眼鏡20の左目用λ/4板21の遅相軸方向が同一であると共に、右目用領域2bの遅相軸方向と右目用λ/4板22の遅相軸方向が同一であるように配置されており、
基板1aに設けられるλ/4板2は、リターデーション値130nmの1/4波長板である表示装置。」

(ウ)引用例2:特開2010-164956号公報
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2010-164956号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに次の記載がある。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性を有する位相差素子およびそれを備えた表示装置に係わり、特に偏光眼鏡を用いた立体映像の観察に際して好適に用いられる位相差素子およびそれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、偏光眼鏡を用いるタイプの立体映像表示装置として、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるものがある。このような表示装置では、視聴者が偏光眼鏡をかけた上で、左目用画素からの射出光を左目のみに入射させ、右目用画素からの射出光を右目のみに入射させることにより、立体映像の観察を可能とするものである。
【0003】
例えば、特許文献1では、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるために位相差素子が用いられている。この位相差素子では、一の方向に遅相軸または進相軸を有する片状位相差部材が左目用画素に対応して設けられ、上記片状位相差部材とは異なる方向に遅相軸または進相軸を有する片状位相差部材が右目用画素に対応して設けられている。
…(略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の表示装置では、左目用画素から射出された左目用の映像光が左目のみに入射され、右目用画素から射出された右目用の映像光が右目のみに入射されることが望ましい。しかし、左目用の映像光が若干右目に入射されてしまったり、右目用の映像光が若干左目に入射されてしまったりといったゴーストと呼ばれる問題がある。」

b 「【0015】
[表示装置1の構成]
表示装置1は、後述する偏光眼鏡2を眼球の前に装着した観察者(図示せず)に対して立体映像を表示する偏光眼鏡方式の表示装置である。この表示装置1は、バックライトユニット10、液晶表示パネル20(表示パネル)および位相差素子30をこの順に積層して構成されたものである。この表示装置1において、位相差素子30の表面が映像表示面となっており、観察者側に向けられている。」

c 「【0023】
[位相差素子30]
次に、位相差素子30について説明する。図3(A)は、本実施の形態の位相差素子30の構成の一例を斜視的に表したものである。図3(B)は、図3(A)の位相差素子30の遅相軸について表したものである。同様に、図4(A)は、本実施の形態の位相差素子30の構成の他の例を斜視的に表したものである。図4(B)は、図4(A)の位相差素子30の遅相軸について表したものである。なお、図3(A),(B)に示した位相差素子30と、図4(A),(B)に示した位相差素子30は、基材フィルム31(後述)の遅相軸AX3の向きの点で相違している。
【0024】
位相差素子30は、液晶表示パネル20の偏光板21Bを透過した光の偏光状態を変化させるものである。この位相差素子30は、例えば、図1に示したように、基材フィルム31と、位相差層32とを有している。
…(略)…
【0027】
位相差層32は、光学異方性を有する薄い層である。この位相差層32は、基材フィルム31の表面に設けられたものであり、液晶表示パネル20の光射出側の表面(偏光板21B)に粘着剤(図示せず)などによって貼り付けられている(図1)。この位相差層32は、遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)を有している。なお、本実施の形態の右目用領域32Aが本発明の「一方の種類の位相差領域」の一具体例に相当し、本実施の形態の左目用領域32Bが本発明の「他方の種類の位相差領域」の一具体例に相当する。」

d 「【0033】
[偏光眼鏡2]
次に、偏光眼鏡2について説明する。図5は、偏光眼鏡2の構成の一例を、表示装置1と共に斜視的に表したものである。偏光眼鏡2は、観察者(図示せず)の眼球の前に装着されるものであり、映像表示面に映し出される映像を観察する際に観察者によって用いられるものである。この偏光眼鏡2は、例えば、図5に示したように、右目用眼鏡41および左目用眼鏡42を有している。
…(略)…
【0035】
右目用眼鏡41は、例えば、偏光板41Aおよび右目用位相差フィルム41Bを有している。一方、左目用眼鏡42は、例えば、偏光板42Aおよび左目用位相差フィルム42Bを有している。右目用位相差フィルム41Bは、偏光板41Aの表面であって、かつ表示装置1から射出された光Lの入射側に設けられたものである。左目用位相差フィルム42Bは、偏光板42Aの表面であって、かつ光Lの入射側に設けられたものである。」

e 「【0038】
[リタデーション]
図6(A),(B)?図9(A),(B)を参照して、位相差素子30と偏光眼鏡2のリタデーションについて説明する。図6(A),(B)および図7(A),(B)は、位相差層32の右目用領域32Aに入射した右目用画像光L2のみに着目し、偏光眼鏡2を介して、光L2が左右の目でどのように認識されるかを示した概念図である。また、図8(A),(B)および図9(A),(B)は、位相差層32の右目用領域32Bに入射した左目用画像光L3のみに着目し、偏光眼鏡2を介して、光L3が左右の目でどのように認識されるかを示した概念図である。なお、実際には、右目用画像光L2および左目用画像光L3は、混在した状態で出力されるが、図6(A),(B)?図9(A),(B)では、説明の便宜上、右目用画像光L2と左目用画像光L3を別個に分けて記述した。
…(略)…
【0040】
具体的には、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bのリタデーションのうち一方が+λ/4となっており、他方が-λ/4となっていることが好ましい。ここで、リタデーションの符号が逆になっているのは、それぞれの遅相軸の向きが90°異なることを示している。このとき、右目用位相差フィルム41Bのリタデーションは右目用領域32Aのリタデーションと同一となっていることが好ましく、左目用位相差フィルム42Bのリタデーションは左目用領域32Bのリタデーションと同一となっていることが好ましい。」

(エ)引用例3:特開2010-96900号公報
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2010-96900号公報(以下「引用例3」という。)には、図とともに次の記載がある。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性を有する位相差素子およびそれを備えた表示装置に係わり、特に偏光眼鏡を用いた立体映像の観察に際して好適に用いられる位相差素子およびそれを備えた表示装置に関する。」
【背景技術】
【0002】
従来から、偏光眼鏡を用いるタイプの立体映像表示装置として、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるものがある。このような表示装置では、視聴者が偏光眼鏡をかけた上で、左目用画素からの射出光を左目のみに入射させ、右目用画素からの射出光を右目のみに入射させることにより、立体映像の観察を可能とするものである。【0003】
例えば、特許文献1では、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるために位相差素子が用いられている。この位相差素子では、一の方向に遅相軸または進相軸を有する片状位相差部材が左目用画素に対応して設けられ、上記片状位相差部材とは異なる方向に遅相軸または進相軸を有する片状位相差部材が右目用画素に対応して設けられている。
…(略)…
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の表示装置では、左目用画素から射出された左目用の映像光が左目のみに入射され、右目用画素から射出された右目用の映像光が右目のみに入射されることが望ましい。しかし、左目用の映像光が若干右目に入射されてしまったり、右目用の映像光が若干左目に入射されてしまったりといったゴーストと呼ばれる問題がある。」

b 「【0018】
[表示装置1の構成]
本実施の形態の表示装置1は、後述する偏光眼鏡2を眼球の前に装着した観察者(図示せず)に対して立体映像を表示する偏光眼鏡方式の表示装置である。この表示装置1は、バックライトユニット10、液晶表示パネル20(表示パネル)および位相差素子30をこの順に積層して構成されたものである。この表示装置1において、位相差素子30の表面が映像表示面となっており、観察者側に向けられている。なお、本実施の形態では、映像表示面が垂直面(鉛直面)と平行となるように表示装置1が配置されているものとする。また、映像表示面は長方形状となっており、映像表示面の長手方向が水平方向(図中のy軸方向)と平行となっているものとする。また、観察者は偏光眼鏡2を眼球の前に装着した上で、映像表示面を観察するものとする。」

c 「【0025】
[位相差素子30]
次に、位相差素子30について説明する。図3(A)は、本実施の形態の位相差素子30の構成の一例を斜視的に表したものである。図3(B)は、図3(A)の位相差素子30の遅相軸について表したものである。同様に、図4(A)は、本実施の形態の位相差素子30の構成の他の例を斜視的に表したものである。図4(B)は、図4(A)の位相差素子30の遅相軸について表したものである。なお、図3(A),(B)に示した位相差素子30と、図4(A),(B)に示した位相差素子30は、基材フィルム31(後述)の遅相軸AX3の向きの点で相違している。
【0026】
位相差素子30は、液晶表示パネル20の偏光子21Bを透過した光の偏光状態を変化させるものである。この位相差素子30は、例えば、図1に示したように、基材フィルム31と、位相差層32とを有している。」
…(略)…
【0029】
位相差層32は、光学異方性を有する薄い層である。この位相差層32は、基材フィルム31の表面に設けられたものであり、液晶表示パネル20の光射出側の表面(偏光板21B)に貼り付けられている。この位相差層32は、遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)を有している。なお、本実施の形態の右目用領域32Aが本発明の「一方の種類の位相差領域」の一具体例に相当し、本実施の形態の左目用領域32Bが本発明の「他方の種類の位相差領域」の一具体例に相当する。」

d 「【0036】
[偏光眼鏡2]
次に、偏光眼鏡2について説明する。図5は、偏光眼鏡2の構成の一例を、表示装置1と共に斜視的に表したものである。偏光眼鏡2は、観察者(図示せず)の眼球の前に装着されるものであり、映像表示面に映し出される映像を観察する際に観察者によって用いられるものである。この偏光眼鏡2は、例えば、図5に示したように、右目用眼鏡21および左目用眼鏡22を有している。
…(略)…
【0038】
右目用眼鏡21は、例えば、偏光板21Aおよび右目用位相差フィルム21Bを有している。一方、左目用眼鏡22は、例えば、偏光板22Aおよび左目用位相差フィルム22Bを有している。右目用位相差フィルム21Bは、偏光板21Aの表面であって、かつ光入射側に設けられたものである。左目用位相差フィルム22Bは、偏光板22Aの表面であって、かつ光入射側に設けられたものである。」

e 「【0041】
[リタデーション]
ところで、偏光眼鏡2を用いて観察した場合に、例えば、図6(A),(B)、図7(A),(B)に示したように、右目には右目用画素の画像が認識でき、左目には右目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。また、同時に、例えば、図8(A),(B)、図9(A),(B)に示したように、左目には左目用画素の画像が認識でき、右目には左目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。そのためには、以下に示したように、右目用領域32Aおよび右目用位相差フィルム21Bのリタデーションならびに左目用領域32Bおよび左目用位相差フィルム22Bのリタデーションを設定することが好ましい。
【0042】
具体的には、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bのリタデーションのうち一方が+λ/4となっており、他方が-λ/4となっていることが好ましい。ここで、リタデーションの符号が逆になっているのは、それぞれの遅相軸の向きが90°異なることを示している。このとき、右目用位相差フィルム21Bのリタデーションは右目用領域32Aのリタデーションと同一となっていることが好ましく、左目用位相差フィルム22Bのリタデーションは左目用領域32Bのリタデーションと同一となっていることが好ましい。」

ウ 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

(ア)引用発明は、「左目には左目用λ/4板21と左目用偏光フィルム23とが設けられ、右目には右目用λ/4板22と右目用偏光フィルム24とが設けられている立体眼鏡20を着用して3次元映像を観察するようになって」いる「表示装置」であり、前記「左目」、「右目」、「λ/4板」、「偏光フィルム」及び「眼鏡20」がそれぞれ本願補正発明の「左眼用領域」、「右眼用領域」、「位相差層」、「偏光子」及び「メガネ」に相当するところであり、引用発明の「表示装置」は、本願補正発明でいう「左眼用領域及び右眼用領域を有し、前記左眼用領域及び前記右眼用領域がそれぞれ位相差層及び偏光子を含むメガネを着用して立体映像を観察する立体映像表示装置」といえる。

(イ)引用発明の「画素5a」及び「画素5b」がそれぞれ本願補正発明の「左眼用信号生成領域」及び「右眼用信号生成領域」に相当するところであり、引用発明の『「透明電極4a」、「透明電極4b」及び「液晶材料6」』は、本願補正発明の「駆動状態で左眼用信号及び右眼用信号をそれぞれ生成することができる左眼用信号生成領域及び右眼用信号生成領域を含む表示素子」に相当する。

(ウ)引用発明の「偏光フィルム3」は、本願補正発明の「前記表示素子で生成された左眼用信号及び右眼用信号が入射され得るように配置された第1偏光板」に相当する。

(エ)引用発明において、「一方の基板1aには、液晶材料6側に、遅相軸方向が互いに90゜異なるλ/4板からなる位相差領域2a、2bが設けられ、その上に位相差領域2a、2bにわたって偏光フィルム3が設けられており」、「λ/4板2の位相差領域2aは左目用画素および右目用画素のうちの一方の画素5aに対応するように配置されており、位相差領域2bは他方の画素5bに対応するように配置されている」から、引用発明の「λ/4板2」は、本願補正発明の「前記左眼用信号生成領域及び前記右眼用信号生成領域で生成された左眼用信号及び右眼用信号が前記第1偏光板を経てそれぞれ入射され得るように配置されており、位相差層をそれぞれ含む左眼用信号偏光調節領域及び右眼用信号偏光調節領域を含むフィルタ」に相当する。

(オ)本願の明細書の【0012】に「透過軸に直交する吸収軸」と記載されているように、偏光フィルムにおいて、吸収軸が透過軸に直交することは技術常識であるから、引用発明の「偏光フィルム3」、「左目用偏光フィルム23」及び「右目用偏光フィルム24」における「吸収軸」は、引用発明における「透過軸」に直交する軸である。
したがって、引用発明の「偏光フィルム3」、「左目用偏光フィルム23」及び「右目用偏光フィルム24」における「透過軸」に直交する軸のそれぞれが、本願補正発明の「第1偏光板の吸収軸」、「左眼用領域の偏光子の吸収軸」及び「右眼用領域の偏光子の吸収軸」に相当する。
また、本願の明細書の【0024】には、『本明細書において用語「光軸」は、光が当該領域を透過する過程での遅相軸(slow axis)または進相軸(fast axis)を意味することができ、特に別途規定しない限り、遅相軸を意味することができる。』と記載されているから、引用発明における「遅相軸」が本願補正発明の「光軸」に相当する。
そして、引用発明は、「(液晶パネル10に)遅相軸方向が互いに90゜異なるλ/4板からなる位相差領域2a、2bが設けられ」、「液晶パネル10の偏光フィルム3の透過軸方向と立体眼鏡20の偏光フィルム23、24の透過軸方向とが90゜の角度をなし、液晶パネル10のλ/4板2における左目用領域2aの遅相軸方向と液晶パネル10の偏光フィルム3の透過軸方向とが45゜の角度をなし」、「液晶パネル10の左目用領域2aの遅相軸方向と立体眼鏡20の左目用λ/4板21の遅相軸方向が同一」であるとともに、「右目用領域2bの遅相軸方向と右目用λ/4板22の遅相軸方向が同一」であるように配置されているものであるから、引用例1の図4から明らかなように、本願補正発明でいう「(前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記左眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度である)D_(L)」及び「(前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記右眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度である)D_(R)」は、いずれも「0」である。

したがって、本願補正発明と引用発明は、
「下記一般式1または一般式2の条件を満たし、
[一般式1]
D_(L)=|θ_(2)-θ_(L)|≦5.0
[一般式2]
D_(R)=|θ_(1)-θ_(R)|≦5.0
上記一般式1及び一般式2で前記D_(L)は、前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記左眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度であり、D_(R)は、前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記右眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度であり、θ_(2)は、前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸が前記第1偏光板の吸収軸と成す角度であり、θ_(L)は、前記メガネの前記左眼用領域の偏光子の吸収軸を前記第1偏光板の吸収軸と垂直になるように配置した状態で前記左眼用領域の位相差層の光軸と前記第1偏光板の吸収軸が成す角度であり、θ_(1)は、前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸が前記第1偏光板の吸収軸と成す角度であり、θ_(R)は、前記メガネの右眼用領域の偏光子の吸収軸を前記第1偏光板の吸収軸と垂直になるように配置した状態で前記右眼用領域の位相差層の光軸と前記第1偏光板の吸収軸が成す角度であり、」の点で一致する。

(カ)引用発明において、「基板1aに設けられるλ/4板2は、リターデーション値130nmの1/4波長板」であるから、引用発明と本願補正発明は、「前記左眼用信号偏光調節領域及び前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層は、それぞれ100nm?200nmの位相差を有」する点で一致する。

(キ)以上をまとめると、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「左眼用領域及び右眼用領域を有し、前記左眼用領域及び前記右眼用領域がそれぞれ位相差層及び偏光子を含むメガネを着用して立体映像を観察する立体映像表示装置であり、
駆動状態で左眼用信号及び右眼用信号をそれぞれ生成することができる左眼用信号生成領域及び右眼用信号生成領域を含む表示素子と、前記表示素子で生成された左眼用信号及び右眼用信号が入射され得るように配置された第1偏光板と、前記左眼用信号生成領域及び前記右眼用信号生成領域で生成された左眼用信号及び右眼用信号が前記第1偏光板を経てそれぞれ入射され得るように配置されており、位相差層をそれぞれ含む左眼用信号偏光調節領域及び右眼用信号偏光調節領域を含むフィルタと、を含み、下記一般式1または一般式2の条件を満たし、
[一般式1]
D_(L)=|θ_(2)-θ_(L)|≦5.0
[一般式2]
D_(L)=|θ_(2)-θ_(R)|≦5.0
上記一般式1及び一般式2で前記D_(L)は、前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記左眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度であり、D_(R)は、前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸と前記右眼用領域の位相差層の光軸の相対的離脱程度であり、θ_(2)は、前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸が前記第1偏光板の吸収軸と成す角度であり、θ_(L)は、前記メガネの前記左眼用領域の偏光子の吸収軸を前記第1偏光板の吸収軸と垂直になるように配置した状態で前記左眼用領域の位相差層の光軸と前記第1偏光板の吸収軸が成す角度であり、θ_(1)は、前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の光軸が前記第1偏光板の吸収軸と成す角度であり、θ_(R)は、前記メガネの右眼用領域の偏光子の吸収軸を前記第1偏光板の吸収軸と垂直になるように配置した状態で前記右眼用領域の位相差層の光軸と前記第1偏光板の吸収軸が成す角度であり、
前記左眼用信号偏光調節領域及び前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層は、それぞれ100nm?200nmの位相差を有する、立体映像表示装置。」

<相違点a>
本願補正発明は、「前記左眼用信号偏光調節領域の位相差層の位相差と前記左眼用領域の位相差層の位相差の差が、-5nm?5nmであり、
前記右眼用信号偏光調節領域の位相差層の位相差と前記右眼用領域の位相差層の位相差の差が、-5nm?5nmであ」るのに対し、引用発明においては、液晶パネルのλ/4板2の位相差領域2aの位相差と立体眼鏡の左目用λ/4板21の位相差の差、及び液晶パネルのλ/4板2の位相差領域2bの位相差と立体眼鏡の右目用λ/4板22の位相差の差が、このようなものであるか不明な点。

<相違点b>
本願補正発明は、「前記立体映像表示装置のクロストーク率は1%以下であり、
前記クロストーク率は、明状態の輝度に対する暗状態の輝度の比率であり、
前記輝度は、前記立体映像表示装置の中心から前記立体映像表示装置の水平方向の長さの3/2倍に相当する距離だけ離れた観測地点で測定され、前記メガネは、観察者が前記立体映像表示装置の中心に向けて観察することを仮定して前記観測地点に位置される」ものであるのに対し、引用発明がこのようなものであるか不明な点。

エ 判断
(ア)相違点a及び相違点bについて
a 相違点aについて
引用発明において、立体眼鏡20には左目用λ/4板21及び右目用λ/4板22が設けられ、液晶パネル10にはλ/4板からなる位相差領域2a、2bが設けられており、立体眼鏡20に設けられる位相差層も液晶パネルに設けられる位相差層もいずれもλ/4板とされている。
一方、上記「イ(ウ)引用例2」の摘記事項eの段落【0040】等、上記「イ(エ)引用例3」の摘記事項eの段落【0042】等、いずれにも、偏光眼鏡を用いた立体映像の観察に用いられる位相差素子を備えた表示装置に関し、右目用メガネの右目用位相差フィルムのリタデーションは、液晶表示パネルの位相差素子の位相差層の右目用領域のリタデーションと同一となっていることが好ましく、左目用位相差フィルムのリタデーションは左目用領域のリタデーションと同一となっていることが好ましい旨が記載されている。
したがって、引用発明において、液晶パネルのλ/4板2の位相差領域2aと立体眼鏡の左目用λ/4板21それぞれの位相差(リタデーション)、及び液晶パネルのλ/4板2の位相差領域2bと立体眼鏡の右目用λ/4板22それぞれの位相差(リタデーション)を、いずれも、λ/4に相当する同一の値のものとすることは、当業者が当然に想到し得たことである。

b 相違点bについて
クロストークは、通常の観察状態において問題となるものであるところ、本願補正発明における「前記クロストーク率は、明状態の輝度に対する暗状態の輝度の比率であり、前記輝度は、前記立体映像表示装置の中心から前記立体映像表示装置の水平方向の長さの3/2倍に相当する距離だけ離れた観測地点で測定され、前記メガネは、観察者が前記立体映像表示装置の中心に向けて観察することを仮定して前記観測地点に位置される」との観察条件は、本願の明細書の段落【0084】に「立体映像装置のクロストーク率は、暗状態(Dark state)と明状態(Bright stat)での輝度の比率として定義されることができ、実施例で使用した立体映像表示装置のクロストーク率は、例えば、下記のような方式で測定することができる。まず、立体映像表示装置の通常の観測地点に立体映像観察用メガネを位置させる。上記で通常の観測地点は、立体映像表示装置の中心から上記立体映像表示装置の水平方向の長さの3/2倍に相当する距離だけ離れた地点であり、このような位置でメガネは、観察者が表示装置の中心に向けて観察することを仮定して、位置させる。上記立体映像表示装置の水平方向の長さは、観察者が立体映像を観察する状態を仮定するとき、上記観察者を基準とする水平方向の長さ、例えば、映像表示装置の横の長さであることができる。上記配置で立体映像表示装置がL信号を出力するようにした状態でメガネのGL及びGR領域の背面に輝度計(装備名:SR-UL2 Spectrometer)を配置し、それぞれの場合の輝度を測定する。上記でGL領域の背面で測定される輝度は、明状態の輝度であり、GR領域の背面で測定される輝度は、暗状態の輝度である。各輝度を測定した後、明状態の輝度に対する暗状態の輝度の比率([暗状態の輝度]/[明状態の輝度])を求め、その百分率をクロストーク率として規定することができる。また、クロストーク率は、上記と同一の方式で測定するが、装置がR信号を出力している状態で明及び暗状態での輝度を求めて測定することができる。この場合、GL領域の背面で測定される輝度は、暗状態の輝度であり、GR領域の背面で測定される輝度は、明状態の輝度である。同様に、その比率([暗状態の輝度/明状態の輝度])の百分率をクロストーク率として規定することができる。」と記載されているように、「立体映像表示装置の通常の観測地点に立体映像観察用メガネを位置させ」て観察するものである。

また、上記「イ(ア)引用例1」の摘記事項bの段落【0008】に、「左目用画素から出射された映像が左目で観察され、または左目用画素から出射された映像が右目で観察されるというクロストークが発生して、立体視が不可能となる。」と記載されているように、立体眼鏡を着用して3次元映像を観察する表示装置において、クロストークが発生するとの問題があることは技術常識である。

したがって、引用発明において、本願補正発明で規定される「クロストーク率」を、本願補正発明で規定する条件で測定した場合に、「クロストーク率」を所定の上限値以下のものとすべきことも、当業者であれば当然に想到し得たことである。

c 次に、本願補正発明における、相違点aに係る位相差と位相差の「差」の数値範囲の下限値である「-5nm」及び上限値である「5nm」、並びに相違点bに係る「クロストーク率」の上限値である「1%」について検討する。
本願の明細書には、当該「位相差と位相差の『差』」及び「クロストーク率」に関し、以下のように記載されている。

・「【0071】
上記のように、一般式1及び/または2、及び/または一般式3及び/または4を満たす立体映像表示装置においてRC及びLC領域に存在する位相差層は、例えば、位相差値がそれぞれ100nm?200nmの範囲にあり得る。上記位相差値は、上記数式1で測定される面方向の位相差値であるか、上記数式2で計算される厚さ方向の位相差値であることができ、例えば、上記面方向の位相差値であることができる。
【0072】
また、1つの例示において上記GL領域に存在する位相差層の位相差値は、上記LC領域に存在する位相差層の位相差値との偏差が±15nm以内、±12nm以内、±9nm以内、±7nm以内、±6nm以内、±5nm以内、±4nm以内または±3nm以内であることができる。 また、上記GR領域に存在する位相差層の位相差値は、上記RC領域に存在する位相差層の位相差値との偏差が±15nm以内、±12nm以内、±9nm以内、±7nm以内、±6nm以内、±5nm以内、±4nm以内または±3nm以内であることができる。」

・「【図面の簡単な説明】
【0080】
…(略)…
【図11】実施例で確認された立体映像の観察時にクロストーク比率1%以下の特性を確保するための光軸離脱角と位相差値の関係を示す図である。」

・「【0085】
実施例1
図1に示されたような構造を有し、…(略)…図7のように、GL及びGR領域を含み、且つ、各位相差層701L、701Rに面方向の位相差値R_(in)が125nmの位相差層を含むメガネを使用して上記装置10から出射される映像を観察する場合のクロストーク率を求めた。上記メガネ70において偏光子702L、702Rに形成されている各吸収軸は、互いに同一の方向に形成されており、図8に示された仮想の線CLを上記装置10のLC及びRC領域の境界と垂直を成すようにしたとき、上記偏光子702L、702Rの吸収軸の方向は、上記第1偏光板104の吸収軸と垂直を成した。上記状態でメガネのGRまたはGL領域の位相差層701L、701Rの光軸及びRCまたはLC領域の位相差値Rinを多様に変更させながらクロストーク率を評価した。測定結果、GR領域の位相差層701Rの光軸及びRC領域の位相差値R_(in)を変更させながら測定したクロストーク率とGL領域の位相差層701Lの光軸及びLC領域の位相差値R_(in)を変更させながら測定したクロストーク率は、互いに同一の傾向を示したが、下記表1には、クロストーク率が1%として測定されるDLの数値及びLC領域の位相差値のセットを整理して記載し、これを図11にグラフで示した。
…(略)…
【0088】
実施例2
実施例1と同様に、装置10及びメガネ70を構成し、…(略)…同一の方式でクロストーク率を測定した。測定結果、実施例1と同様に、LCまたはRC領域の位相差層の位相差値R_(in)がDLまたはDRが約5(度)以下の範囲で1%またはそれ未満のクロストーク率が測定された。
【0089】
実施例3
実施例1と同様に、装置10及びメガネ70を構成し、…(略)…同一の方式でクロストーク率を測定した。測定結果、実施例1と同様に、LCまたはRC領域の位相差層の位相差値R_(in)がDLまたはDRが約5(度)以下の範囲で1%またはそれ未満のクロストーク率が測定された。
【0090】
実施例4
実施例1と同様に、装置10及びメガネ70を構成し、…(略)…同一の方式でクロストーク率を測定した。測定結果、実施例1と同様に、LCまたはRC領域の位相差層の位相差値R_(in)がDLまたはDRが約5(度)以下の範囲で1%またはそれ未満のクロストーク率が測定された。」

以上の本願の明細書の記載及び図11を含めた、本願の明細書及び図面全体の記載を勘案しても、本願補正発明において、「位相差と位相差の『差』」を、「-5nm?5nm」とし、「クロストーク率」を「1%」以下とすることにより、格別な効果を奏することを当業者が認識できる記載は見出せない。
したがって、本願補正発明における相違点aに係る位相差と位相差の「差」の数値範囲の下限値である「-5nm」及び上限値である「5nm」、並びに相違点bに係る「クロストーク率」の上限値である「1%」が臨界的な意義を有するものとは認められない。
よって、引用発明において、相違点a及び相違点bに係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たものと認められる。

(イ)判断についてのまとめ
以上検討したとおり、引用発明において、引用例2及び引用例3に記載の技術に基づいて、相違点a及び相違点bに係る本願補正発明の構成、それぞれを採用することは、いずれも当業者が容易になし得たことである。
また、上記相違点a及び相違点bを総合判断しても、本願補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2、3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

オ 独立特許要件についてのまとめ
よって、本件補正は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。

3 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成26年12月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記「第2 1 本件補正の内容」の「(補正前)」に記載したとおりである。

2 引用例の記載と引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-232365号公報(引用例1、再掲)には、上記「第2 2(3)イ(ア)引用例1」に記載した事項が記載されており、引用例1には上記「第2 2(3)イ(イ)引用発明」に記載したとおりの引用発明が記載されている。

2 対比・判断
本願発明は、上記「第2 2 本件補正についての検討」で検討した本願補正発明において、「D_(L)」及び「D_(R)」の数値範囲の上限値を「15.0」とするとともに、「クロストーク率」の限定を除去したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を実質的に全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 本件補正についての検討」において検討したとおり、引用発明及び引用例2、3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例2、3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-25 
結審通知日 2016-11-01 
審決日 2016-11-15 
出願番号 特願2013-550415(P2013-550415)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 小松 徹三
恩田 春香
発明の名称 立体映像表示装置およびメガネ  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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