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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B22C
管理番号 1326627
審判番号 不服2015-21994  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-11 
確定日 2017-03-29 
事件の表示 特願2012-544502「鋳造混合物、鋳型を調製するためのコールドボックス法、金属部品の鋳造方法、鋳型を調製するためのノーベーク法及び鋳型を調製するためのウォームボックス法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年6月23日国際公開、WO2011/075220、平成25年4月25日国内公表、特表2013-514189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2010年(平成22年)10月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年(平成21年)12月16日 米国,2010年(平成22年)9月1日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年7月20日 :翻訳文提出
平成26年9月8日付け:拒絶理由の通知
平成27年3月16日 :意見書,手続補正書の提出
平成27年8月5日付け:拒絶査定(謄本送達日平成27年8月11日)
平成27年12月11日:審判請求書と同時に手続補正書の提出
平成28年1月21日 :手続補正書(方式)の提出
平成28年9月5日 :上申書の提出

第2 平成27年12月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年12月11日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次の通り補正された(下線部は,補正箇所である。)。
「鋳造混合物であって、
ケイ砂を含む鋳造用骨材と、
該鋳造用骨材の重量に対して0.25重量パーセントから5.0重量パーセントの炭酸塩であって、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される炭酸塩と、
赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びそれらの混合物からなる群から選択される酸化鉄と、
有機バインダーと
を含む、鋳造混合物。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成27年3月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「鋳造混合物であって、
ケイ砂を含む鋳造用骨材と、
該鋳造用骨材の重量に対して0.25重量パーセントから5.0重量パーセントの炭酸塩と、
赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びそれらの混合物からなる群から選択される酸化鉄と、
有機バインダーと
を含む、鋳造混合物。」

2 補正の適否
上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「炭酸塩」について,上記1(1)のとおり限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である,特開平4-339537号公報(平成4年11月26日出願公開。以下,「引用例1」という。)には,次の記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、耐火性粒状材料を水溶性フェノール樹脂を粘結剤とし、有機エステルを硬化剤として用いて造型して鋳物用砂型を製造する方法において使用される、硬化性鋳型製造用添加剤及び鋳型の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、周期律表IB?VIII族のうち半金属を除く金属あるいは該金属元素を含む化合物のうち少なくとも一種を含む硬化性鋳型製造用添加剤及び該添加剤を使用する鋳型の製造方法に関するものである。」
「【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは前記問題点を解決すべく鋭意研究の結果、耐火性粒状材料を水溶性フェノール樹脂を粘結剤とし、有機エステルを硬化剤として用いて造型して鋳物用砂型を製造する方法において、特定の添加剤を使用することにより再生砂から造型された鋳型の強度が大幅に向上することを見出し、本発明を完成するに到った。」
「【0077】実施例31?42及び比較例6(表4)
自硬性鋳型造型法における鋳型強度の経時変化(硬化速度)を評価した。即ち、砂の種類が三河5号珪砂である再生砂 100重量部に対し、1モル/リットル相当の水溶液又は分散液とした表4に示す各種添加剤を 0.375重量部、トリアセチンを 0.375重量部、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 0.5重量%(対フェノール樹脂)を含有する水溶性フェノール樹脂(固形分49%、重量平均分子量2300)を 1.5重量部添加混練した混合物を50mmφ×50mmhのテストピース用模型に充填し、混練後の抗圧力の経時変化を測定した。結果を表4に示す。」
段落【0078】の【表4】には,実施例33として,添加剤欄に「CaCO_(3)」と記載されている。

(イ)上記記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されている。
a 引用例1に記載された技術は,硬化性鋳型製造用添加剤及び鋳型の製造方法に関するものであり(【0001】),鋳型の強度が大幅に向上することを課題としたものである(【0008】)。
b 自硬性鋳型造型法における鋳型強度の評価において,砂の種類が三河5号珪砂である再生砂 100重量部に対し,1モル/リットル相当の水溶液又は分散液としたCaCO_(3)(【0078】)を 0.375重量部,トリアセチンを 0.375重量部,γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 0.5重量%(対フェノール樹脂)を含有する水溶性フェノール樹脂(固形分49%,重量平均分子量2300)を 1.5重量部添加混練した混合物(【0077】)を製造した。

(ウ)これらのことから,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「自硬性鋳型造型法における珪砂,CaCO_(3),トリアセチン,水溶性フェノール樹脂の混合物であって,砂 100重量部に対し,CaCO_(3)を 0.375重量部と,を含む混合物。」

イ 引用例2
(ア)同じく引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である,特表2004-524977号公報(平成16年8月19日出願公表。以下,「引用例2」という。)には,次の記載がある。
「【0002】背景技術
サンドコアは、最終鋳物の内部キャビティ(internal cavity)を形成するために使用される。サンドコアが鋳型に置かれ、かつ、溶融金属が金型に導入された時に、サンドコアにおけるサンドの急速な熱膨張が起こる。サンドコアにおけるサンドの急速な熱膨張の結果として、サンドコアがクラックし、また、溶融金属がコアのクラックに流れ込み、溶融金属が固体化した時に、鋳物表面から突出する鋳ばり(fin)(鋳造用語では“ベイン(vein)”)が生じる。制御されていないコアサンドの熱膨張により生じるこれらのベイン化(veining)欠点は、最も頻繁には、サンド及びコアサンドバインダー自身のサンドコアの形成前にそれらと均質に混合される抗ベイン化又は膨張制御剤により制御される。抗ベイン化又は膨張制御剤により、サンドコアの熱膨張係数が変更されて、そのクラッキング及びベイン形成が制御される。」
「【0003】数年間、酸化鉄が鋳造に使用されて、サンドコア及び鋳造性が改善されていた。酸化鉄はサンドコア中において有利であることが証明されているが、これは、熱膨張欠点、例えばベイン化などの形成が低減されることによる。使用される酸化鉄としては、ヘマタイトとしても知られる赤色酸化鉄(Fe_(2)O_(3))、マグネタイトとして知られる黒色酸化鉄(Fe_(3)O_(4))、及びイエロー・オーカーが挙げられる。そのような酸化鉄を使用する最も一般的な方法は、それを約1?3質量%の量で、コアサンドに対して混合中に添加することによる。酸化鉄が表面仕上りを改良するメカニズムは知られていない。ある理論は、酸化鉄が、変性するサンドグレインインターフェースの形成により、鋳造間のサンドコアの可塑性を上昇させ、又は、破壊なしに付与し、それにより、鋳造中にベインを形成し得るコア中のクラックが防止されるというものである。」

(イ)上記記載から,引用例2には,次の技術が記載されている。
「ベインの形成を低減するために,赤色酸化鉄,黒色酸化鉄をコアサンドに対して混合中に添加する技術」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「自硬性鋳型造型法」における「混合物」は,本件補正発明の「鋳造混合物」に相当する。
(イ)引用発明の「珪砂」は,本件補正発明の「ケイ砂を含む鋳造用骨材」に相当する。
(ウ)引用発明の「CaCO_(3)」は,本件補正発明の「炭酸カルシウム」に相当することから,引用発明の「CaCO_(3)」は,本件補正発明の「炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,及びそれらの混合物からなる群から選択される炭酸塩」と対比して,「炭酸カルシウムである炭酸塩」である点で一致する。
(エ)引用発明の「砂 100重量部に対し,CaCO_(3)を 0.375重量部」は,本件補正発明の「鋳造用骨材の重量に対して0.25重量パーセントから5.0重量パーセントの炭酸塩」と対比して,「鋳造用骨材の重量に対して0.375重量パーセントの炭酸塩」という点で一致する。
(オ)引用発明の「水溶性フェノール樹脂」は,本件補正発明の「有機バインダー」に相当する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「鋳造混合物であって,
ケイ砂を含む鋳造用骨材と,
該鋳造用骨材の重量に対して0.375重量パーセントの炭酸塩であって,炭酸カルシウムである炭酸塩と,
有機バインダーと
を含む,鋳造混合物。」

<相違点>
本件補正発明は「赤色酸化鉄,黒色酸化鉄,及びそれらの混合物からなる群から選択される酸化鉄」を含んでいるのに対し,引用発明は酸化鉄を含んでいるか否か不明である点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点について
引用例2には,上記(2)イのとおり,ベインの形成を低減するために,赤色酸化鉄,黒色酸化鉄をコアサンドに対して混合中に添加する技術が記載されている。
引用発明と引用例2に記載された技術とは,いずれも鋳造混合物という点で共通するものであり,ベイン化を抑制するということは,引用例2に背景技術として,溶融金属が金型に導入された時に鋳型の砂の熱膨張によってベインが生じる旨,記載され,さらに,抗ベイン化又は膨張制御剤によりクラッキング及びベイン形成が制御される旨,記載されているように,鋳型において従来周知の課題であることから,引用発明においてもベイン形成は抑制すべき課題として内在しているといえる。そうすると,引用発明においても,ベイン形成のための一般的な技術である赤色酸化鉄,黒色酸化鉄の添加を行い,上記相違点に係る事項を備えたものとすることは,当業者にとって容易に想到し得たことである。

イ 平成28年9月5日付け上申書において審判請求人は,引用発明が,本願の目的とは異なる課題を解決しようとするものであり,試験用鋳物のベイニングを低減するという課題については一切考慮されていない旨,主張している。
しかしながら,引用発明は炭酸塩の含有量において,本件補正発明における炭酸塩の含有量を充足する。そうすると,炭酸塩の含有量に関して,本件補正発明は,従来技術を包含していることは明らかであって,従来技術における炭酸塩の含有量の鋳造混合物に従来と異なる観点で効果を発見したからといって,新たな物を発明したとはいえない。そして,本願補正発明と引用発明とは,酸化鉄の含有の点で異なるとしても,その相違点は,上述のとおり,引用発明に引用例2の技術を適用することで当業者が容易に想到し得るものであり,その適用に阻害要因もみられず,その適用の結果の鋳造混合物が,本件補正発明である以上,本件補正発明は当業者にとって容易になし得たものである。

ウ そして,上記相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用例2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

エ したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
上記のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年12月11日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成27年3月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載から見て,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び2並びにその記載事項は,前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から,炭酸塩の種類に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2[理由]2(3),(4)に記載のとおり,引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-28 
結審通知日 2016-11-01 
審決日 2016-11-15 
出願番号 特願2012-544502(P2012-544502)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B22C)
P 1 8・ 121- Z (B22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 英夫  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 長清 吉範
平岩 正一
発明の名称 鋳造混合物、鋳型を調製するためのコールドボックス法、金属部品の鋳造方法、鋳型を調製するためのノーベーク法及び鋳型を調製するためのウォームボックス法  
代理人 毛受 隆典  
代理人 森川 泰司  
代理人 原田 卓治  
代理人 木村 満  
代理人 美恵 英樹  
代理人 桜田 圭  

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