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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1326631 |
審判番号 | 不服2015-11975 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-24 |
確定日 | 2017-04-06 |
事件の表示 | 特願2014- 23032「デマンドカレンダー,デマンドカレンダー作成装置,デマンドカレンダー作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月17日出願公開,特開2014-132822〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成22年12月6日に出願した特願2010-271825号の一部を平成26年 2月10日に新たな特許出願としたものであって,平成26年11月27日付けで拒絶理由が通知され(発送日:同年12月 2日),平成27年 1月30日に意見書が提出されたが,同年 3月20日付けで拒絶査定(発送日:同年 3月24日)がされ,これに対して,同年 6月24日に本件審判が請求された。 そして,この出願の請求項1に係る発明は,出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下,「本願発明」という。) 「【請求項1】 一の電気料金請求期間を一枚に収め,かつ同期間の最初の日から最後の日まで日単位で一定区画を占有させ,同じ週の各日の区画は左から右へ横方向に並べ,同じ曜日の各日の区画は上から下へ縦方向に並べて配置されたカレンダーであって, 各日の区画の横軸として,縦方向に眺めた場合に各日の区画にて同じ曜日の同じ時刻の目盛となるように左から右へ向かう時間経過で配置される時刻軸と, 各日の区画の縦軸として,横方向に眺めた場合に同じ週の各日の区画にて同じデマンド値の目盛となるように配置されるデマンド値軸と, 各日の区画にて前記各軸の目盛に従って各デマンド時限のデマンド値を指示するデマンド値指示と, を有し, 各日の区画は,各日の日出時刻と日没時刻を前記時刻軸の目盛に従って指示する日出没時刻指示をさらに有するデマンドカレンダー。」 2.刊行物 (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-285483号公報(以下,「刊行物1」という。)には,次の事項が図面とともに記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら,遠隔監視システムを再構築(バージョンアップ)するために,現在のシステムを用いたサービスを中断すると,現在サービスを利用しているユーザの不利益となるため,現在のサービスを中断させずに,新たな遠隔監視システムを構築する必要がある。 【0008】 本発明は,このような状況に鑑みてなされたものであり,信頼性が高く,かつ,多機能な遠隔管理システムを提供することができるようにするものである。」 ・「【0011】 データは,例えば,所定の機器で取得される,所定期間における平均使用電力値であるデマンド値,温度値,漏洩電流値などの電流値,または機器内部の温度値とすることができる。また,ユーザの情報取得レベルは,所定のサービスを受けるための契約状況(課金状況)とすることができる。 【0012】 表示制御情報は,例えば,30分間隔,1日単位,週単位,月単位などのデマンド値をグラフ化して表示させる画面を生成する,HTML(Hyper Text Markup Language)等で記述された情報とすることができる。また,表示制御情報は,30分間隔,1日単位,週単位,月単位などのデマンド値と,温度値,または他の機器で取得されたデマンド値とを重ね合わせて表示させる画面を生成する,HTML(Hyper Text Markup Language)等で記述された情報とすることができる。」 ・「【0040】 ここで,デマンド値とは,電力会社との取引に使用される,30分間(デマンド時限)における平均使用電力値である。一般的に,電力会社に支払う電気料金は,使用した電力量に応じて課金される電力量料金と,デマンド値によって更新される契約電力に応じて決定される基本料金とを加算した金額となる。すなわち,一度決定した契約電力を超えて電気を使用すると,契約超過金の支払いが必要になったり,契約料金のアップにつながることになるので,デマンド値を抑制することで,電気料金を軽減することになる。」 ・「【0149】 図7は,表示制御部154Bが,デマンド閲覧契約Bで遠隔監視通報サービスを契約しているユーザに対して表示させるデータ閲覧画面の例を示している。 【0150】 図7に示すデータ閲覧画面231は,タイトル領域241,計測データ設定領域242,比較データ設定領域243,グラフ表示領域244,および詳細データ表示領域245により構成されている。 【0151】 タイトル領域241は,このデータ閲覧画面231が設定(指定)された1日内のデータを表示する画面であることを表すタイトル「日次データ」を表示する領域である。 【0152】 なお,表示制御部154Bが表示するデータ閲覧画面としては,「日次データ」の他に,例えば,1週間内の日ごとのデータを表示する「週次データ」や,月内の日ごとのデータを表示する「月次データ」などが表示可能である。 【0153】 計測データ設定領域242は,ユーザが管理する監視通報装置11の(電力計41-1で計測された)デマンド値をグラフ表示領域244に表示させる日付をユーザに入力させる(指定させる)領域である。計測データ設定領域242には,デフォルトとして,データ閲覧画面を操作している日(現在日)の日付が予め入力されており,それに伴い,グラフ表示領域244には,現在日の現在の時刻までに計測されたデマンド値のデータが表示されるようになっている。 【0154】 また,ユーザが計測データ設定領域242のテキストボックスに年月日を入力して「移動」ボタンを押下した場合,グラフ表示領域244の表示が,テキストボックスで入力された日付のグラフに変更される。あるいは,ユーザが計測データ設定領域242の左矢印(「←」)または右矢印(「→」)ボタンを押下した場合,グラフ表示領域244の表示が,1日単位で古い方向または新しい方向の日付のグラフに変更される。 【0155】 比較データ設定領域243は,グラフ表示領域244において,計測データ設定領域242で入力されたデマンド値のグラフと重ね合わせて比較表示させるデータ(比較データ)を指定する領域である。 【0156】 比較データ設定領域243において,テキストボックス,左矢印ボタン,右矢印ボタン,および「移動」ボタンが操作(入力)されることにより,計測データ設定領域242と同様に,グラフ表示領域244に表示させる日付が指定される。 【0157】 また,比較データ設定領域243において,「重ね合わせ」ボタンが押下されると,表示制御部154Bは,新たに比較データとして採用する監視通報装置11およびセンサ41-n(n=1乃至Nのいずれか)を指定するダイアログを表示させ,それにより指定された監視通報装置11およびセンサ41-nが,比較データ設定領域243内の「端末」欄および「CH」欄に表示される。 【0158】 従って,比較データ設定領域243においては,ユーザは,自分が管理する監視通報装置11のデマンド値以外のデータを指定することや,自分が管理していない監視通報装置11のデマンド値または温度値などのデータを指定することが可能である。図7のデータ閲覧画面231の例では,コンビニB店の監視通報装置11-2の温度値(AI4)が指定されている。 【0159】 グラフ表示領域244は,計測データ設定領域242および比較データ設定領域243で入力(指定)されたデータに対応するグラフを重ね合わせて表示する領域である。即ち,表示制御部154Bは,計測データ設定領域242で指定された日付の30分ごとのデマンド値(例えば,図7では,コンビニA点の2005年3月21日のデマンド値)を,図7に示すように,棒グラフで表示するとともに,比較データ設定領域243で指定された日付の指定された監視通報装置11の指定されたデータ(例えば,図7では,コンビニB点の2005年3月22日の温度値)を,折れ線グラフ(波形)でグラフ表示領域244に表示する。 【0160】 なお,グラフ表示領域244の横軸(の目盛)は,1日内の時刻を表し,縦軸の右側(の目盛)は,折れ線グラフに対応する温度値を表し,縦軸の左側(の目盛)は,棒グラフに対応するデマンド値を表している。 【0161】 詳細データ表示領域245は,グラフ表示領域244で表示されている棒グラフに対応する30分ごとのデマンド値を表示する領域である。なお,詳細データ表示領域245内の右側には,画面サイズの制約上,表示されていない時間帯のデマンド値を参照可能とするためのツールバーが表示されている。 【0162】 以上のように,表示制御部154Bがユーザのクライアント端末装置15のディスプレイ上に表示させるデータ閲覧画面231では,ユーザが管理する監視通報装置11のセンサ41で取得されたデマンド値と,その他のデータ(例えば,温度値)とを重ね合わせて表示したり,ユーザが管理する監視通報装置11のセンサで取得されたデマンド値と,他の監視通報装置11のデマンド値(またはその他のデータ)とを重ね合わせて表示することができるようになっている。 【0163】 従って,表示制御部154Bは,表示制御部154Aが表示させるデータ閲覧画面201より,高機能,かつ,見易い画面を提供することができる。」 ・図7より,データ閲覧画面231には,横軸として,左から右へ向かう時間経過で配置される時刻軸と,縦軸として,デマンド値の目盛が配置されるデマンド値軸とを有し,軸の目盛に従って表示する棒グラフが表示されているといえる。 よって,以上の事項を整理し,本願発明にならって表現すると,刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる(以下,この発明を「引用発明」という。)。 「横軸として,左から右へ向かう時間経過で配置される時刻軸と, 縦軸として,デマンド値の目盛が配置されるデマンド値軸と, 軸の目盛に従って30分間ごとのデマンド値を表示する棒グラフと,を有するデータ閲覧画面。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-77345号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0007】 本発明に係る省エネルギ支援システムの上記第1の特徴構成によれば,画像データ生成手段によって生成された省エネ支援カレンダ表示用画像データが与えられた表示装置上に,指定された表示対象期間について,対応する日のデータ表示領域内に省エネ支援用情報に基づく表示データが配置されたカレンダ形式の省エネ支援カレンダを表示可能な状態となる。エネルギ消費者は,この表示装置上に表示される省エネ支援カレンダによって,表示対象期間に係るエネルギ消費量の実績値や評価結果等の省エネ支援用情報を曜日別或いは週別に確認することができ,曜日別或いは週別の過去の行動の比較が容易であると共に,これらの過去の行動を参照して今後の省エネ行動への指針とすることができる。 【0008】 このように,カレンダ形式で表示させることによって,例えば,先々週の評価結果は好ましいものであったが,先週の評価結果は芳しいものではなかったことを省エネ支援カレンダによって確認したエネルギ消費者に対しては,今週或いは来週はもっと消費エネルギを抑制する行動(以下,「省エネ行動」と称する)に取り組もうという意識を向上させる効果が期待でき,毎週日曜日の評価が好ましくないことを省エネ支援カレンダによって確認したエネルギ消費者に対しては,今週の日曜日こそ評価結果が良くなるように省エネ行動に取り組もうという意識を向上させる効果が期待できる。」 ・「【0027】 消費量計測手段11は,例えば電力量計等で構成され,空間2内で消費されたエネルギ量(電力量計であれば電力量)を計測する。消費量計測手段11によって計測された消費実績値は一時記憶手段13によって一時的に記録される。尚,消費量計測手段11は,所定の時間毎の消費量を計測可能であり,一例として,以下では1時間毎のエネルギ消費量を計測可能であるとする。」 ・「【0042】 画像データ生成手段25は,指定された表示対象期間に係る省エネ支援カレンダを表示するための表示用画像データを生成し,所定の表示装置(例えば操作端末14の操作画面)上に当該表示用画像データを出力する機能的手段である。ここで,省エネ支援カレンダとは,指定された表示対象期間に属する日を同一曜日が同一列又は同一行となるようにマトリクス状に整列して形成される一般的なカレンダ表示に加えて,各日のデータ表示領域内に,前記在不在情報と,前記評価結果,前記消費実績値,及び前記消費目標値の内の少なくとも一の情報(以下,これらの情報を「省エネ支援用情報」と総称する)が配置されて構成されるカレンダ形式の表示態様である。又,表示対象期間とは,カレンダとして表示させるために外部から指定される期間であり,所定月(例えば2006年9月),処理日を含む月(例えば2006年9月25日であれば9月),或いは処理日を含む過去1ヶ月(例えば2006年9月25日であれば8月26日から9月25日まで)等のように指定される構成とすることができる。」 ・「【0051】 [省エネ支援カレンダの画面例] 次に,画像データ生成手段25によって生成される省エネ支援カレンダ表示用画像データによって表示装置上で表示可能な省エネ支援カレンダの表示態様の一例について,図2?図8を参照して説明する。 【0052】 図2は,省エネ支援カレンダの一画面例である。図2に示される省エネ支援カレンダ30は,カレンダ表示領域31,週毎評価集計領域32,及び曜日毎評価集計領域33の3領域で構成される。尚,図2は,表示対象期間として2006年9月が指定された場合の一画面例を示しており,日曜日を起点として2006年9月に係る全30日を含む5週間分が表示されている。尚,表示対象期間が月で指定される場合に,表示される5週間内に指定月以外の月(前月,或いは次月)が含まれる場合には,これらの月に属する日は,指定月と識別できるように色分けをするものとしても良く,又,休日と平日とを識別するために更に別の色分けをしても良い。図2では,前月に属する日(2006年8月27日から8月31日まで)については灰色で塗りつぶすことで指定月(2006年9月に属する日)との識別を可能としており,又,土曜日,日曜日及び祝日については網掛けを付して平日との識別を可能としている。 【0053】 尚,表示対象期間として月が指定された場合,表示方法として指定された月の初日を起点として表示する表示方法と,図2に示すように日曜日を起点として表示する表示方法とを切替可能に構成されているものとしても構わない。 【0054】 カレンダ表示領域31は,表示対象期間に属する日を,同一曜日が同一列又は同一行となるようにマトリクス状に整列したカレンダ形式の表示がされる領域である。このとき,表示対象期間に属する日毎に,当該日の省エネ支援用情報が表示されるデータ表示領域34が形成される。」 ・「【0058】 図3は,省エネ支援カレンダ30の各日に係るデータ表示領域34の表示例である。図3(a),(b)及び(c)は,夫々2006年9月1日,10日,及び19日のデータ表示領域の表示例を示している。 【0059】 図3(a)に示されるように,データ表示領域34には,消費目標値が折れ線41で示されており,消費実績値が棒グラフ42で示されている。又,不在時間帯と滞在時間帯とが識別されて表示されており,図3(a)では,不在時間帯42aが滞在時間帯より濃く塗りつぶされている。尚,折れ線,或いは棒グラフによる表示形式は一例であって,この形式に限定されるものではない。又,不在時間帯と滞在時間帯の識別方法についても,図3上に示されるような濃淡を相違させる方法に限られず,形状,模様,色彩,又はこれらの組み合わせによって両者を相違させることで識別可能に構成されるものとして良い。」 ・「【0071】 図6は,あるエネルギ消費者の,ある日のデータ表示領域内の表示例であり,図6(a)と図6(b)とは,同一曜日で異なる日のデータ表示例であるとする。以下では,図6(a)が2006年9月14日木曜日のデータ表示であり,図6(b)が2006年9月21日木曜日のデータ表示であるとする。 【0072】 図6では,両日共に評価結果が表示されていないことから,エネルギ消費者は当該表示内容を確認して両日共に消費実績値を消費目標値以下に抑制できなかったことを認識する。このとき,図6(a)及び(b)を検討すると,不在時間帯51a及び51bに係る消費実績値と消費目標値との乖離と,他の時間帯(滞在時間帯)に係る消費実績値と消費目標値との乖離との間に,大きな差異が見られない。即ち,このエネルギ消費者は,不在時と滞在時とでエネルギ消費量にあまり相違がないことが分かる。通常,滞在時と不在時とを比較すると,滞在時の方がエネルギ消費量が顕著に大きくなると言えるため,かかる点を考慮すると,このエネルギ消費者は不在時のエネルギ消費量を削減する余地があると想定することができる。従って,今後は不在時のエネルギ消費量を削減するような省エネ行動を取り組むことで,消費実績値を消費目標値以下に抑制することができる可能性があると言える。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 後者の「横軸として,左から右へ向かう時間経過で配置される時刻軸」と,前者の「各日の区画の横軸として,縦方向に眺めた場合に各日の区画にて同じ曜日の同じ時刻の目盛となるように左から右へ向かう時間経過で配置される時刻軸」とは,「横軸として,左から右へ向かう時間経過で配置される時刻軸」という概念で共通する。 後者の「縦軸として,デマンド値の目盛が配置されるデマンド値軸」と,前者の「各日の区画の縦軸として,横方向に眺めた場合に同じ週の各日の区画にて同じデマンド値の目盛となるように配置されるデマンド値軸」とは,「縦軸として,デマンド値の目盛が配置されるデマンド値軸」という概念で共通する。 後者の「30分間ごとのデマンド値を表示する棒グラフ」は,前者の「デマンド時限のデマンド値を指示するデマンド値指示」に相当する。 後者の「データ閲覧画面」は,「日次データ」の他に,例えば,1週間内の日ごとのデータを表示する「週次データ」や,月内の日ごとのデータを表示する「月次データ」などが表示可能である(段落【0152】を参照のこと。)から,後者の「データ閲覧画面」と前者の「カレンダー」とは,「カレンダー表示」という概念で共通する。 してみると,両者は, 「横軸として,左から右へ向かう時間経過で配置される時刻軸と, 縦軸として,デマンド値の目盛が配置されるデマンド値軸と, 軸の目盛に従ってデマンド時限のデマンド値を指示するデマンド値指示と,を有するカレンダー表示。」 である点で一致し,次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明は,一の電気料金請求期間を一枚に収め,かつ同期間の最初の日から最後の日まで日単位で一定区画を占有させ,同じ週の各日の区画は左から右へ横方向に並べ,同じ曜日の各日の区画は上から下へ縦方向に並べて配置されたカレンダーであるのに対し,引用発明は,そのような表示ではないデータ閲覧画面である点。 [相違点2] 左から右へ向かう時間経過で配置される時刻軸について,本願発明では,各日の区画の横軸として,縦方向に眺めた場合に各日の区画にて同じ曜日の同じ時刻の目盛となるように配置されるのに対し,引用発明では,そのような特定がない点。 [相違点3] デマンド値の目盛が配置されるデマンド値軸について,本願発明では,各日の区画の縦軸として,横方向に眺めた場合に同じ週の各日の区画にて同じデマンド値の目盛となるように配置されるのに対し,引用発明では,そのような特定がない点。 [相違点4] デマンド値指示について,本願発明では,各日の区画にて各軸の目盛に従って各デマンド時限のデマンド値を指示するのに対し,引用発明では,そのような特定がない点。 [相違点5] 本願発明は,各日の区画は,各日の日出時刻と日没時刻を時刻軸の目盛に従って指示する日出没時刻指示を有するのに対し,引用発明では,そのような特定がない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]ないし[相違点4]について 刊行物2の段落【0027】,【0051】?【0054】,【0058】,【0059】,図2,3等からは,以下の技術的事項を把握することができる(以下,「刊行物2記載の技術的事項」という。)。 「1ヶ月を指定された表示対象期間として,一画面に表示し,かつ,表示対象期間の最初の日から最後の日まで日単位で一定区画を占有させ,同じ週の各日の区画は左から右へ横方向に並べ,同じ曜日の各日の区画は上から下へ縦方向に並べて配置されたカレンダであって, 各日の区画の横軸として,縦方向に眺めた場合に各日の区画にて同じ曜日の同じ時刻の目盛となるように左から右へと向かう時間経過で配置される時刻軸と, 各日の区画の縦軸として,横方向に眺めた場合に同じ週の各日の区画にて同じ消費された電力量の実績値の目盛となるように配置される消費された電力量の実績値の軸と, 各日の区画にて各軸の目盛に従って所定の時間毎の消費された電力量の実績値を表示する消費された電力量の実績値の棒グラフによる表示と,を有する 省エネ支援カレンダ。」 また,刊行物2自体の「エネルギ消費者は,この表示装置上に表示される省エネ支援カレンダによって,表示対象期間に係るエネルギ消費量の実績値や評価結果等の省エネ支援用情報を曜日別或いは週別に確認することができ,曜日別或いは週別の過去の行動の比較が容易である」(段落【0007】)や段落【0008】,【0059】,【0071】,図3,図6等の記載によれば,刊行物2記載の技術的事項は,少なくとも曜日別等,複数の日のエネルギ消費量(消費された電力量)の比較を容易とすることを意図したものであり,上記エネルギ消費量(消費された電力量)はグラフの形式で比較できるような態様で表示されたものである。 そして,複数のグラフの比較を行う場合,軸のスケールを合わせて並べることは技術常識というべきであって,図3,図6からみても時間軸及びエネルギ消費量(消費された電力量)の軸が縦串,横串で比較可能となるように表示されると解するのが自然である。 さらに,一の電気料金請求期間は,通常一ヶ月を単位とするものであり,刊行物2記載の技術的事項における,エネルギ消費量(消費された電力量)の実績値とは,過去のデータを意味することは明らかであるから,刊行物2記載の技術的事項の表示対象期間を「一の電気料金請求期間」とすることは,当業者が適宜採用し得ることである。 一方,刊行物1には,平均使用電力値であるデマンド値を抑制することで,電気料金を軽減することができる点(段落【0040】参照。),及びデータ閲覧画面として「日次データ」の他に「月次データ」が表示可能な点(段落【0152】参照。)が記載されており,1ヶ月のデマンド値を同時に表示して比較することが示唆されている。 引用発明と刊行物2記載の技術的事項とは,いずれも,電力消費の変動を表示するためのグラフに関するものであって,しかも,電力消費を抑制しようとするためのものである。 よって,刊行物2記載の技術的事項を併せ考えてみれば,引用発明において上記相違点1ないし4に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が格別な創作能力を要さずになし得たことである。 [相違点5]について 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2009/151078号(以下,「刊行物3」という。)には,電気機器が使用されたか否か,設定された時間帯(タイムゾーン)内で使用された場合電気機器の使用が有益か無益かが,単位時間毎に色分けして表示されるシミュレーション画面において,赤色のアイコンI1と黄緑色のアイコンI2と,黄色のアイコンI3を表示し,各色に対応する消費電力量の合計値としてアイコンI3の右側には,タイムゾーンが設定されない時間帯で使用された電気機器の消費電力量の合計値を表示する点(段落[0166]?[0169],[0170]参照。),及びシミュレーション画面に電力が無駄に消費されているかを監視する時間帯であるタイムゾーンTZ1,TZ2を表示し,該タイムゾーンを日の出・日の入りの時刻等を基準に設定する点(段落[0117],[0167]?[0177],[0192]が開示されている。 すなわち,刊行物3には,電気機器の電力消費量を表示するとともに,日の出・日の入りの時刻を基準に設定した消費電力を監視するタイムゾーンを同じ画面に表示した点が開示されている(以下,「刊行物3記載の技術的事項」という。)。 また,例えば,照明機器が日の入りから日の出までの夜間に使用されることが多いことや,暖房機器や冷房機器が日の入りや日の出に応じて使用されることが多いことは,広く知られていることであって,そうしたことをふまえれば,電力使用量の変化が日出時刻や日没時刻に関連があることは,当業者が,ごく普通に認識することというべきである。 以上のことから,デマンド値のグラフを日出時刻や日没時刻がわかるように表示することは,当業者が適宜採用し得ることである。 よって,引用発明において,日出時刻と日没時刻を時刻軸の目盛に従って指示するように構成し,上記相違点5に係る本願発明の構成を採用することも,当業者が格別な創作能力を要さずになし得た域を出ることではない。 しかも,本願発明の構成により,引用発明,刊行物2,3記載の技術的事項からみて格別顕著な効果が奏されるものともいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明,刊行物2,3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項に係る発明において検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-01 |
結審通知日 | 2016-06-02 |
審決日 | 2016-06-14 |
出願番号 | 特願2014-23032(P2014-23032) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂本 聡生 |
特許庁審判長 |
新海 岳 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 前田 浩 |
発明の名称 | デマンドカレンダー、デマンドカレンダー作成装置、デマンドカレンダー作成方法 |
代理人 | 工藤 一郎 |