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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G09G |
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管理番号 | 1326650 |
審判番号 | 不服2016-11419 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-29 |
確定日 | 2017-04-18 |
事件の表示 | 特願2013-548174「制御装置及びリモコン装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日国際公開、WO2013/084728、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、平成24年11月22日(優先権主張:平成23年12月7日)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月13日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月3日付けで手続補正がなされ、平成27年9月17日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年11月17日付けで手続補正がなされ、平成28年5月25日付けで、平成27年11月17日付けでなされた手続補正についての補正却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、平成28年7月29日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正の適否 本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、次のとおりのものである。 (1)本件補正前の請求項3、6に「前記描画コマンドを生成するためのデータ」とあったところを「前記描画コマンドを構成するデータ」と補正する。 (2)本件補正前の請求項7に「前記要素画像を配置するための要素配置データ」とあった記載から「前記」を削除するとともに、同請求項7に「前記要素画像データ」とあった記載を「前記要素画像を示す要素画像データ」と補正する。 (3)本件補正前の請求項10の末尾に、「請求項1から10のいずれか1項に記載の制御装置」とあったところを、「請求項4から9のいずれか1項に記載の制御装置」と補正する。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号の明りようでない記載の釈明、及び、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものである。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 したがって、本件補正は適法になされたものである。 第3 本願発明について 本件補正は適法になされたものであるので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 表示データによって示される表示画像を画面に表示する表示装置と、 前記表示データを生成するために実行される描画コマンド群の各々について、描画コマンドを構成するデータの少なくとも一部を含む描画コマンドデータを予め記憶している記憶装置と、 予め定められた描画条件と前記描画コマンドデータを特定するための描画コマンド特定データとが関連付けられた画面管理テーブルを予め記憶しており、当該画面管理テーブルに基づいて、前記描画条件に対応する描画コマンド特定データを特定し、当該特定した描画コマンド特定データを出力する中央演算装置と、 前記中央演算装置から出力された描画コマンド特定データによって特定される前記描画コマンドデータを前記記憶装置から取得し、前記取得した描画コマンドデータに基づいて、前記描画コマンド群の各々について前記描画コマンドを構成するデータを取得し、当該取得したデータで構成される描画コマンド群の各々を実行することによって、前記表示データを生成する描画演算装置とを備える 制御装置。 【請求項2】 前記描画コマンド特定データは、前記記憶装置において前記描画コマンドデータが記憶されているアドレスを示す 請求項1に記載の制御装置。 【請求項3】 前記描画コマンドデータは、前記描画コマンドを構成するデータのすべてを含む 請求項1又は2に記載の制御装置。 【請求項4】 前記描画コマンドデータは、前記表示画像に含まれる要素である要素画像を示す要素画像データを予めさらに記憶した前記記憶装置にて特定するための要素特定データと、前記表示装置に前記表示画像を表示するために前記描画演算装置が用いる仮想的な領域である仮想領域内において前記要素画像が配置される位置を特定するための要素配置データとを含み、 前記描画演算装置は、 前記描画コマンド特定データを中央演算装置から取得するインタフェース手段、 前記インタフェース手段が取得した描画コマンド特定データによって特定される前記描画コマンドデータに基づいて、前記描画コマンド群の各々について前記描画コマンドを構成するデータを取得する解釈手段、及び、 前記解釈手段が取得したデータで構成される描画コマンド群の各々を実行することによって、前記表示データを生成する描画手段を有し、 前記解釈手段は、前記描画コマンドを構成するデータとして前記要素特定データと前記要素配置データとを取得し、 前記描画手段は、前記仮想領域のうち、前記表示装置に表示される前記画面に対応する領域である表示領域内に、前記解釈手段が取得した要素配置データに基づいて配置される前記要素画像が含まれる場合に、前記解釈手段が抽出した要素特定データと要素配置データとに基づいて配置した要素画像を含む前記表示データを生成する 請求項3に記載の制御装置。 【請求項5】 前記要素配置データは、ウィンドウ領域を設定する前記仮想領域内の位置を示すウィンドウ領域データと、前記要素画像を配置する前記ウィンドウ領域内の位置を示す相対位置データとを含む 請求項4に記載の制御装置。 【請求項6】 前記描画コマンドデータは、前記描画コマンドを構成するデータの一部と前記描画コマンドを構成するデータの残部を前記中央演算装置から取得することを示す描画割込フラグとを含み、 前記描画演算装置は、 前記描画コマンド特定データを前記中央演算装置から取得するインタフェース手段、 前記インタフェース手段が取得した描画コマンド特定データによって特定される前記描画コマンドデータに基づいて、前記描画コマンド群の各々について前記描画コマンドを構成するデータを取得する解釈手段、及び、 前記解釈手段が取得したデータで構成される描画コマンド群の各々を実行することによって、前記表示データを生成する描画手段を有し、 前記解釈手段は、前記描画コマンドを構成するデータの一部を取得するとともに、前記描画コマンドを構成するデータの残部を要求する描画割込信号を前記インタフェース手段に出力させ、 前記インタフェース手段は、前記描画コマンドを構成するデータの残部を前記中央演算装置から取得し、 前記描画手段は、前記解釈手段によって取得された描画コマンドを構成するデータの一部と前記インタフェース手段によって取得された描画コマンドを構成するデータの残部とに基づいて構成される描画コマンドを実行することによって、前記表示データを生成する 請求項1又は2に記載の制御装置。 【請求項7】 前記描画コマンドを構成するデータの一部は、前記表示データを生成するために前記描画演算装置が用いる仮想的な領域である仮想領域内において要素画像を配置するための要素配置データであり、 前記描画コマンドを構成するデータの残部は、前記要素画像を示す要素画像データを予めさらに記憶した前記記憶装置にて特定するための要素特定データであり、 前記描画手段は、前記仮想領域のうち、前記表示装置に表示される前記画面に対応する領域である表示領域内に、前記インタフェース手段によって取得された要素配置データに基づいて配置される前記要素画像が含まれる場合に、前記解釈手段が取得した要素特定データと前記インタフェース手段が取得した要素配置データとに基づいて配置した要素画像を含む前記表示データを生成する 請求項6に記載の制御装置。 【請求項8】 前記インタフェース手段は、ユーザによる操作の種別を示す操作信号を受け付けた場合に、前記描画コマンド特定データを前記中央演算装置から取得する 請求項4から7のいずれか1項に記載の制御装置。 【請求項9】 前記インタフェース手段は、前記操作の種別と前記表示装置に表示されている表示画像の種別との組み合わせに応じた前記描画コマンド特定データを前記中央演算装置から取得する 請求項8に記載の制御装置。 【請求項10】 前記描画演算装置は、前記描画手段によって生成された描画データのデータ形式を前記表示装置に適合するように変換することによって前記表示画像を示す表示データを生成する変換手段をさらに備える 請求項4から9のいずれか1項に記載の制御装置。 【請求項11】 請求項1から10のいずれか1項に記載の制御装置と、 ユーザが操作をした場合に当該操作の種別を示す操作信号を出力する操作手段とを備え、 前記中央演算装置は、前記操作手段が操作された場合に、当該操作に応じた前記操作信号を受け付けるリモコン装置。」 第4 原査定の理由の概要 理由1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由3.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 理由1について (1) 請求項3-11 請求項3,6の「描画コマンドを生成するためのデータ」という記載について、発明の詳細な説明には、描画コマンドを「生成」することの、具体的な記載も示唆もされていないので、上記各請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 理由2について (1) 請求項3-11 請求項3の「前記描画コマンドを生成するためのデータのすべて」及び請求項6の「描画コマンドを生成するためのデータの一部」「描画コマンドを生成するためのデータの残部」という記載について、 具体的に、どのような(単位として定められる、一連あるいは一つの)描画コマンドを生成するために用いられる、どのような集合のデータを対象としたものについての、すべて、一部あるいは残部を意味しているのか、明確でない。 理由3,4について ・請求項1-3,6,11 ・引用文献等2 ・備考 仮に、引用例2に記載された発明と、本願の上記各請求項に係る発明との間に、画面管理テーブルが記憶される装置についての差異があるとしても、設計事項にすぎない。 理由4について ・請求項4-11 ・引用文献等2 ・備考 引用例2に記載された発明において、描画コマンドとして具体的にどのようなものを用いるか、及び、基本画面の切り換えを操作の種別に応じて行うことは、いずれも、設計事項にすぎず、また、表示のためのデータを、ウィンドウ領域内の相対位置で表現すること、及び、描画データを表示装置に適合するデータに変換することは、いずれも、例示するまでもない周知技術である。 <引用文献等一覧> 2.特開2010-171776号公報 第5 当審の判断 1 理由1、理由2について 本件補正により、上記「第2」のとおり、本件補正前の請求項3、6に「前記描画コマンドを生成するためのデータ」とあった記載は「前記描画コマンドを構成するデータ」と補正された。 よって、原査定の拒絶の理由とされた理由1及び理由2は、解消した。 2 理由3、4について (1)引用例の記載事項等 原査定の拒絶の理由3及び理由4に引用された、特開2010-171776号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 ア 「【0001】 本発明は、電子機器を遠隔操作する操作端末およびその画面表示方法に関する。」 イ 「【0013】 実施の形態1. 図1は、本発明の実施の形態1に係る設備機器リモコン100の機能ブロック図である。設備機器リモコン100は、空気調和機などの設備機器を遠隔操作するための操作端末である。 【0014】 設備機器リモコン100は、ボタンスイッチ110、CPU120、フラッシュROM(Read Only Memory)130、RAM(Random Access Memory)140、グラフィックエンジン150、VRAM(Video RAM)160、LCDC170(Liquid Crystal Display Controller)、LCD(Liquid Crystal Display)180を備える。 【0015】 ボタンスイッチ110は、ユーザーが設備機器リモコン100を操作するための押下ボタンで構成された操作手段である。 ボタンスイッチ110が押下され、または元の状態に戻ると、その旨の電気信号がCPU120の所定ポートに入力される。CPU120は、そのポートの電圧変動などに基づき、ボタンスイッチ110の押下状態を得ることができる。 【0016】 CPU120とグラフィックエンジン150は、後述の処理を実行する演算処理装置であり、それぞれ異なるクロック周期に基づいて独立に動作する。」 ウ 「【0019】 CPU120は、アプリケーション開発者が開発したアプリケーションプログラム131が規定する動作にしたがって、設備機器の遠隔操作のための動作を実行する。 アプリケーションプログラム131は、例えば設備機器の制御プログラム、通信プログラムなどで構成されている。アプリケーションプログラム131は、フラッシュROM130に格納されており、CPU120が稼動した際にRAM140に読み出され、CPU120によって実行される。 【0020】 グラフィックエンジン150は、GUI画面の描画処理を行う。詳細は後述する。」 エ 「【0023】 グラフィックエンジン150およびCPU120は、お互いにバス線上で動作の調停を行う。」 オ 「【0030】 (3.2)描画命令の種類についての補足 基本画面を描画する描画命令を、基本画面描画命令132と呼ぶ。また、基本画面と操作画面の差分を描画するための描画命令を、差分描画命令141と呼ぶ。グラフィックエンジン150は、基本画面描画命令132と差分描画命令141を順に実行して、操作画面を描画する。」 カ 「【0036】 図2は、基本画面描画命令132の構成例を示す図である。なお、描画命令は0と1によって表されるバイナリデータであるが、図2では説明のため、バイナリデータに代えて文字列で記載した。 【0037】 描画命令205には、線、円、点、四角、多角形、などの描画指示をグラフィックエンジン150に伝える個別描画命令201が複数格納されている。 個別描画命令201は、1つの描画要素と複数の描画引数を持つ。例えば図示した個別描画命令201は、描画要素202、開始位置203、終了位置204から構成される。 【0038】 個別描画命令201は、LCD180が表示する画面の個々の表示要素、例えば線や円などを描画するための命令である。ここでは、線を描画する命令の例として、「線描画, 開始位置(x,y), 終了位置(x+dx,y)」といった内容がバイナリデータで記述されている例を示した。 【0039】 描画要素202の「線描画」は、VRAM160上の画面のビットマップイメージに線を描くことを意味する。 【0040】 基本画面描画命令132の終端には、デリミタ命令206が挿入される。 【0041】 グラフィックエンジン150は、描画命令を1行ずつ読み込み実行する。グラフィックエンジン150は、デリミタ命令206の読み込みにより基本画面描画命令の終端を認識する。 なお、差分描画命令141の構成も、基本画面描画命令132と同様である。 【0042】 図3は、グラフィックエンジン150の詳細構成図である。 グラフィックエンジン150は、線、点、円、四角、文字などの描画する要素ごとに異なる描画回路を備える。図3では、線描画回路301、点描画回路302、円描画回路303、文字描画回路304を備える例を示した。 描画回路については、任意の公知アルゴリズムなどを元に、例えばロジック回路で構成することができる。それぞれの描画回路は、入力を受け、線、点、円、四角、文字などの基本的な描画要素であるグラフィックプリミティブを、VRAM160上にビットマップイメージとして書き込む。 【0043】 グラフィックエンジン150は、描画命令を読み込んで、各描画回路に命令を振り分ける。例えば、線描画に関する命令は線描画回路301に、円描画に関する命令は円描画回路303に、それぞれ描画命令を振り分ける。命令の振り分けは、図示しない各描画回路の回路選択ビットで行う。 【0044】 図4は、グラフィックエンジン150の線描画回路301の構成図である。なお、図3で示した線描画回路301以外の描画回路も、基本的な構成は同じであることを付言しておく。 【0045】 線描画回路301は、開始位置203および終了位置204の2つの座標データを入力値とする。これらは線描画回路301が備える所定のレジスタに格納される。 線描画回路301は、入力された開始位置203から終了位置204まで順に座標位置をずらしながら、VRAM160に描画要素202のビットマップイメージを書き込む。図4の右図では、線のビットマップイメージをVRAM160上に書き込んだ状態のイメージを示した。 【0046】 VRAM160上では、LCD180におけるX座標、Y座標に対応するアドレス番地が決められている。線描画回路301は、該当するアドレスに対して、指定の色データを書き込むことによって、VRAM160上にビットマップイメージを構築する。 LCDC108は、VRAM160に記録されたビットマップイメージを、LCD180に画面表示させる。」 キ 「【0100】 実施の形態4. 本発明の実施の形態4では、複数の種類の基本画面を設け、それぞれの基本画面に対応する複数の基本画面描画命令132をフラッシュROM130に書き込んで、これを切り替えることにより基本画面の切り替えを行う動作を説明する。 なお、その他の構成や動作は実施の形態1?3と同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。 【0101】 以下、実施の形態3で説明した構成を例にとり、設備機器リモコン100の画面描画処理を、下記ステップ(1)?(4)で説明する。他の実施の形態で説明した構成についても、同様の動作を行うことができることを付言しておく。 【0102】 (1)フラッシュROM書き込み装置1501は、フラッシュROM130に、複数の基本画面それぞれに対応する複数の基本画面描画命令132を書き込む。このとき、フラッシュROM130のアドレス上では、「基本画面1の複数の描画命令」、「基本画面2の複数の描画命令」、「基本画面3の複数の描画命令」、・・・といった配列になる。各基本画面描画命令132の間には、デリミタ命令を挿入しておく。 【0103】 (2)アプリケーションプログラム131には、フラッシュROM130上における上記複数の基本画面描画命令それぞれの先頭アドレスを、全てテーブルとして記述しておく。あるいは、フラッシュROM書き込み装置1501が、フラッシュROM130の所定アドレスに上記テーブルを書き込んでおいてもよい。 【0104】 (3)CPU120は、基本画面を他の基本画面に切り替える時は、上記テーブルを参照して、切り替え後の基本画面描画命令132の先頭アドレスを取得し、グラフィックエンジン150のレジスタ(図示せず)に書き込む。 【0105】 (4)グラフィックエンジン150は、新たに書き込まれたレジスタ値の指すアドレスから、順に基本画面描画命令を実行する。デリミタ命令を読み込むと処理を終了する。 【0106】 以上のように、本実施の形態4によれば、CPU120はグラフィックエンジン150のレジスタを書き換えるのみで、表示画面を切り替えることができる。これにより、画面切替に必要となる時間を大幅に短縮することができる。」 ク 基本画面描画命令132の構成例を示す図2には、基本画面描画命令132が、描画命令205と、終端に挿入されたデリミタ命令とで構成されることが記載されている。 引用例1の段落【0100】には、「実施の形態4」について、「その他の構成や動作は実施の形態1?3と同様である」と記載されているから、この点を踏まえると、引用例1には、実施の形態4として、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「設備機器リモコン100は、ボタンスイッチ110、CPU120、フラッシュROM(Read Only Memory)130、RAM(Random Access Memory)140、グラフィックエンジン150、VRAM(Video RAM)160、LCDC170(Liquid Crystal Display Controller)、LCD(Liquid Crystal Display)180を備え(段落【0014】より)、CPU120は、そのポートの電圧変動などに基づき、ボタンスイッチ110の押下状態を得ることができ(段落【0015】より)、CPU120とグラフィックエンジン150は、処理を実行する演算処理装置であり、それぞれ独立に動作し、(段落【0016】より)、 アプリケーションプログラム131は、フラッシュROM130に格納されており、CPU120が稼動した際にRAM140に読み出され、CPU120によって実行され(段落【0019】より)、 基本画面を描画する描画命令を、基本画面描画命令132と呼び(段落【0030】より)、基本画面描画命令132は、描画命令205と、終端に挿入されたデリミタ命令とで構成され(図2より)、描画命令205には、線、円、点、四角、多角形、などの描画指示をグラフィックエンジン150に伝える個別描画命令201が複数格納されており、個別描画命令201は、1つの描画要素と複数の描画引数を持ち、個別描画命令201は、描画要素202、開始位置203、終了位置204から構成され(段落【0037】より)、個別描画命令201は、LCD180が表示する画面の個々の表示要素、例えば線や円などを描画するための命令であり、線を描画する命令の例としては、「線描画, 開始位置(x,y), 終了位置(x+dx,y)」といった内容がバイナリデータで記述されており(段落【0038】より)、 グラフィックエンジン150は、描画命令を1行ずつ読み込み実行し(段落【0041】より)、グラフィックエンジン150は、線、点、円、四角、文字などの描画する要素ごとに異なる描画回路を備え、線描画回路301、点描画回路302、円描画回路303、文字描画回路304を備え(段落【0042】より)、 線描画回路301は、開始位置203および終了位置204の2つの座標データを入力値とし、これらは線描画回路301が備える所定のレジスタに格納され、線のビットマップイメージをVRAM160上に書き込み(【0045】より)、線描画回路301以外の描画回路も、基本的な構成は同じであり(段落【0044】)、 LCDC108は、VRAM160に記録されたビットマップイメージを、LCD180に画面表示させ(段落【0046】より)、 複数の種類の基本画面を設け、それぞれの基本画面に対応する複数の基本画面描画命令132をフラッシュROM130に書き込んで、これを切り替えることにより基本画面の切り替えを行なう動作(段落【0100】より)では、 (1)フラッシュROM書き込み装置1501は、フラッシュROM130に、複数の基本画面それぞれに対応する複数の基本画面描画命令132を書き込み、このとき、フラッシュROM130のアドレス上では、「基本画面1の複数の描画命令」、「基本画面2の複数の描画命令」、「基本画面3の複数の描画命令」、・・・といった配列になり、各基本画面描画命令132の間には、デリミタ命令を挿入しておき、(段落【0102】より)、 (2)アプリケーションプログラム131には、フラッシュROM130上における上記複数の基本画面描画命令それぞれの先頭アドレスを、全てテーブルとして記述しておき(段落【0103】より)、 (3)CPU120は、基本画面を他の基本画面に切り替える時は、上記テーブルを参照して、切り替え後の基本画面描画命令132の先頭アドレスを取得し、グラフィックエンジン150のレジスタに書き込み(段落【0104】より)、 (4)グラフィックエンジン150は、新たに書き込まれたレジスタ値の指すアドレスから、順に基本画面描画命令を実行し、デリミタ命令を読み込むと処理を終了し(段落【0105】より)、 CPU120はグラフィックエンジン150のレジスタを書き換えるのみで、表示画面を切り替えることができ、これにより、画面切替に必要となる時間を大幅に短縮することができる(段落【0106】より)、 設備機器リモコン100(段落【0014】より)。」 (2)対比・判断 (請求項1に係る発明について) 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1における「VRAM160に記録されたビットマップイメージを、LCD180に画面表示させ」る「LCDC108」が、本願発明1における「表示データによって示される表示画像を画面に表示する表示装置」に相当する。 イ 引用発明1において「描画命令205には、線、円、点、四角、多角形、などの描画指示をグラフィックエンジン150に伝える個別描画命令201が複数格納されており」、「個別描画命令201は、LCD180が表示する画面の個々の表示要素、例えば線や円などを描画するための命令であ」るから、引用発明1における、「複数」の「個別描画命令201」からなる群が、本願発明1における「前記表示データを生成するために実行される描画コマンド群」に相当する。 ウ 引用発明1において「フラッシュROM130」には「基本画面描画命令132」が書き込まれ、該「基本画面描画命令132」を構成する「描画命令205」には、「個別描画命令201が複数格納されて」おり、「個別描画命令201は、1つの描画要素と複数の描画引数を持」っているから、引用発明1における「フラッシュROM130」は、「複数の描画引数」を持つ「個別描画命令201」が書き込まれていることは明らかである。 よって、引用発明1における「フラッシュROM130」が、本願発明1における「描画コマンド群の各々について、描画コマンドを構成するデータの少なくとも一部を含む描画コマンドデータを予め記憶している記憶装置」に相当するといえる。 エ 引用発明1において「アプリケーションプログラム131」には、「フラッシュROM130上における上記複数の基本画面描画命令それぞれの先頭アドレスを、全てテーブルとして記述して」おり、該「アプリケーションプログラム131は、フラッシュROM130に格納されており、CPU120が稼動した際にRAM140に読み出され、CPU120によって実行され」るものである。 そして、引用発明1における「基本画面描画命令132の先頭アドレス」が、本願発明1における「前記描画コマンドデータを特定するための描画コマンド特定データ」に相当するから、引用発明1において「フラッシュROM130」又は「RAM140」に「複数の基本画面描画命令それぞれの先頭アドレスを、全てテーブルとして記述して」いることと、本願発明1において「予め定められた描画条件と前記描画コマンドデータを特定するための描画コマンド特定データとが関連付けられた画面管理テーブルを予め記憶して」いることとは、「前記描画コマンドデータを特定するための描画コマンド特定データのテーブル」を備える点で共通する。 オ 引用発明1における「CPU120」は、「処理を実行する演算処理装置」であって、「基本画面を他の基本画面に切り替える時は、上記テーブルを参照して、切り替え後の基本画面描画命令132の先頭アドレスを取得し、グラフィックエンジン150のレジスタに書き込」んでいるから、本願発明1における「当該画面管理テーブルに基づいて、前記描画条件に対応する描画コマンド特定データを特定し、当該特定した描画コマンド特定データを出力する中央演算装置」とは、「テーブルに基づいて、描画コマンド特定データを特定し、当該特定した描画コマンド特定データを出力する中央演算装置」の点で共通する。 カ 引用発明1における「グラフィックエンジン150」が、「CPU120」によって「新たに書き込まれたレジスタ値の指すアドレス」(つまり「切り替え後の基本画面描画命令132の先頭アドレス」)から、「描画命令を1行ずつ読み込」むことが、本願発明1における「前記中央演算装置から出力された描画コマンド特定データによって特定される前記描画コマンドデータを前記記憶装置から取得」することに相当する。 キ 引用発明1において「グラフィックエンジン150」は、「線描画回路301、点描画回路302、円描画回路303、文字描画回路304を備え」、「描画命令を1行ずつ読み込み実行」し、「個別描画命令201」のうち「線を描画する命令」には「「線描画, 開始位置(x,y), 終了位置(x+dx,y)」といった内容がバイナリデータで記述されており」、「線描画回路301は、開始位置203および終了位置204の2つの座標データを入力値とし、これらは線描画回路301が備える所定のレジスタに格納され」、「線描画回路301以外の描画回路も、基本的な構成は同じであ」るとされている。 よって、引用発明1において「グラフィックエンジン150」が、「描画命令を1行ずつ読み込み実行」し、「開始位置203および終了位置204の2つの座標データ」等の「複数の描画引数」を、各「描画回路」「が備える所定のレジスタに格納」することが、本願発明1における「前記取得した描画コマンドデータに基づいて、前記描画コマンド群の各々について前記描画コマンドを構成するデータを取得」することに相当するといえる。 ク 引用発明1における「グラフィックエンジン150」は、「描画命令を1行ずつ読み込み実行」し、「グラフィックエンジン150」の各「描画回路」が、「開始位置203および終了位置204の2つの座標データ」等の「複数の描画引数」を、「所定のレジスタに格納」し、「ビットマップイメージをVRAM160上に書き込」んでいるから、本願発明1における「当該取得したデータで構成される描画コマンド群の各々を実行することによって、前記表示データを生成する描画演算装置」に相当する。 ケ 引用発明1における「設備機器リモコン100」が、次の相違点は別として、本願発明1における「制御装置」に相当する。 よって、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「表示データによって示される表示画像を画面に表示する表示装置と、 前記表示データを生成するために実行される描画コマンド群の各々について、描画コマンドを構成するデータの少なくとも一部を含む描画コマンドデータを予め記憶している記憶装置と、 前記描画コマンドデータを特定するための描画コマンド特定データのテーブルと、 テーブルに基づいて、描画コマンド特定データを特定し、当該特定した描画コマンド特定データを出力する中央演算装置と、 前記中央演算装置から出力された描画コマンド特定データによって特定される前記描画コマンドデータを前記記憶装置から取得し、前記取得した描画コマンドデータに基づいて、前記描画コマンド群の各々について前記描画コマンドを構成するデータを取得し、当該取得したデータで構成される描画コマンド群の各々を実行することによって、前記表示データを生成する描画演算装置とを備える 制御装置。」 (相違点) 本願発明1では、「中央演算装置」が「予め定められた描画条件と前記描画コマンドデータを特定するための描画コマンド特定データとが関連付けられた画面管理テーブルを予め記憶して」おり、「中央演算装置」が「当該画面管理テーブルに基づいて、前記描画条件に対応する描画コマンド特定データを特定」しているのに対し、引用発明1では、「フラッシュROM130」又は「RAM140」に「複数の基本画面描画命令それぞれの先頭アドレスを、全てテーブルとして記述して」おり、「CPU120」は、「処理を実行する演算処理装置」であって、「基本画面を他の基本画面に切り替える時は、上記テーブルを参照して、切り替え後の基本画面描画命令132の先頭アドレスを取得」しているものの、引用発明1における「CPU120」は、「予め定められた描画条件」と基本画面描画命令それぞれの先頭アドレスとが関連付けられた画面管理テーブルを予め記憶しておらず、「当該画面管理テーブル」に基づいて、切り替え後の基本画面描画命令132の先頭アドレスを取得することは示されていない点。 そこで、上記相違点について検討すると、上記相違点は実質的な相違点であるから、本願発明1は引用発明1ではない。 次に、引用発明1は、「CPU120は、そのポートの電圧変動などに基づき、ボタンスイッチ110の押下状態を得ることができ」るものの、引用例1には、「ボタンスイッチ110の押下」を契機として「基本画面を他の基本画面に切り替える」際、切り替え先の基本画面の特定をどのように行うのか、何ら記載されていない。 また、上記相違点に係る本願発明1の構成、つまり、該「中央演算装置」が「予め定められた描画条件と前記描画コマンドデータを特定するための描画コマンド特定データとが関連付けられた画面管理テーブルを予め記憶して」おり、「中央演算装置」が「当該画面管理テーブルに基づいて、前記描画条件に対応する描画コマンド特定データを特定」する構成が、設計事項であるとする根拠も見い出せない。 よって、本願発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (請求項2ないし11に係る発明について) 本願の請求項2、3、6、11に係る発明は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願の請求項2、3、6、11に係る発明は引用発明1であるとはいえず、また、本願の請求項2、3、6、11に係る発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 同様に、本願の請求項4、5、7ないし10に係る発明は、本願発明1をさらに限定したものであるので、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願の請求項1?3、6、11に係る発明は、引用発明1ではない。 また、本願の請求項1ないし11に係る発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、原査定の拒絶の理由とされた理由3、理由4によって、本願を拒絶することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-04-05 |
出願番号 | 特願2013-548174(P2013-548174) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G09G)
P 1 8・ 113- WY (G09G) P 1 8・ 537- WY (G09G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 武田 悟 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
大和田 有軌 清水 稔 |
発明の名称 | 制御装置及びリモコン装置 |
代理人 | 美恵 英樹 |
代理人 | 木村 満 |
代理人 | 八島 耕司 |