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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1326726
審判番号 不服2015-566  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-09 
確定日 2017-03-28 
事件の表示 特願2013-528135「不揮発性記憶装置の認証方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月15日国際公開、WO2012/033386、平成25年11月21日国内公表、特表2013-542636〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2011年9月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月10日,韓国,2010年10月11日,韓国,2011年9月2日,韓国)を国際出願日とする出願であって,平成26年1月23日付けの拒絶理由通知に対して,同年4月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,同年9月4日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成27年1月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年2月4日付けで特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成28年3月7日付けの当審の拒絶理由通知に対して同年7月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2.本願の請求項1ないし3に係る発明について
本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成28年7月14日付けの手続補正により補正された請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるものである。

「 【請求項1】
不揮発性記憶装置の認証方法であって,
前記記憶装置を認証するためのEMID(Enhanced Media Identification)デコーダが前記記憶装置の識別のためのエンコーディングされたIDの要請を前記記憶装置に送信するステップと,
前記要請に対応して,IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用して生成された,エンコーディングされたIDを前記記憶装置から受信するステップと,
前記EMIDデコーダが前記記憶装置から署名情報を受信するステップと,
前記EMIDデコーダが前記受信したエンコーディングされたIDに対してデコーディングプロセスを適用して抽出された元のIDと,前記署名情報と,を利用して前記記憶装置を認証するステップと,を含み,
前記元のIDは,前記記憶装置の内部のみで利用され,前記EMIDデコーダによる読み出し及び書き込みが防止される前記記憶装置のタイプ1領域に記憶される
ことを特徴とする記憶装置の認証方法。
【請求項2】
前記エンコーディングされたIDに対して公開鍵(public key)とを利用したデコーディングプロセスを適用して抽出された前記元のIDと,前記署名情報と,を利用して前記記憶装置を認証する
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置の認証方法。
【請求項3】
前記元のIDとバインディングされた暗号化キーとを利用して,コンテンツを暗号化または復号化する
ことを特徴とする請求項2に記載の記憶装置の認証方法。」

第3.当審の拒絶理由の概要
平成28年3月7日付けの当審の拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という)は,概略,次のとおりである。

「[理由1]
この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1には,「前記要請に対応して,IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用した予め設定された演算により生成されたエンコーディングされたIDを前記記憶装置から受信するステップ」と記載されている。
上記記載における「IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用した予め設定された演算」により「エンコーディングされたID」を「生成」することに関連して,本願明細書の翻訳文には以下のような記載がある。

(ア)「【0014】
・・・メモリ領域311は,EMIDを記憶するための任意に指定されたEMID領域312と,EMIDにノイズを発生させてEMIDを変形するためのEMIDエンコーダ318と,を含む。」
(イ)「【0016】
EMIDエンコーダ318は,EMID変換オペレーションを遂行するEMID変換部314と,EMID変換オペレーションの遂行時に使用されるランダムエラーを生成するためのブラックボックス313とを含む。EMIDエンコーダ314は,ブラックボックス313を通して生成されたランダム値,すなわち,ランダムエラーと,EMID領域312のタイプ1領域に含まれたメモリ領域311の固有の情報と,事前にホスト装置から受信したEMIDエンコーディングオペレーションのための値との予め設定された演算を通し,EMID値を変形してノイズを発生させる。・・・」
(ウ)「【0017】
・・・EMIDエンコーダ314は,EMID領域312に挿入された物理的識別子,すなわちEMIDを抽出する時,ノイズを発生させる。このようなEMIDエンコーダ318は,乱数生成器(Random number generator)やスクランブラー(Scrambler)などを使用することができる。EMIDエンコーダ318は,複数のノイズが発生されたEMIDを生成する。
一方,コントローラ316は,記憶媒体のレコーディングまたは再生時,レコーディングまたは再生装置のEMID要請317により,EMIDエンコーダ318によりノイズが発生されたEMID315を該当装置のEMIDデコーダ330に伝達する。」
(エ)「【0019】
・・・図5を参照すれば,記憶装置の特定位置に記録されたEMIDは,コンテンツ再生またはレコーディング装置430の要請によりEMIDエンコーダ318を経て,ノイズが発生された複数のEMID315に変換される。図5に示したように,本発明の記憶装置認証方法は,本発明の特徴によって,ノイズが追加された複数のEMIDを生成する過程を複数回遂行する。この場合,EMIDエンコーダ318がノイズを追加した複数のEMIDを一度生成する過程を1ラウンド(One Round)とすると,本発明では,再生またはレコーディング装置430が記憶装置に複数回EMIDを要請し,各要請時(ラウンド)ごとにEMIDエンコーダ318を通し,当ラウンドのEMIDを生成して,再生またはレコーディング装置430に伝送する。」
(オ)「【0021】
・・・この場合,要請に対応してEMIDデコーダ330が記憶装置310から受信したEMIDは,ランダム誤りが反映されて複数個生成されたEMIDである。」
(カ)「【0024】
・・・図7を参照すれば,ステップ710で,レコーディング装置430(認証装置330)は,記憶装置310にEMIDを要請して,記憶装置310から変形されたEMIDを受信する。この時,受信されるEMIDは,記憶装置310内のEMID領域312に記憶された値がEMIDエンコーダ314を経てノイズが発生された複数の値(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)である。・・・」
(キ)「【0028】
・・・図8を参照すれば,ステップ810で再生装置430(認証装置330)は,記憶装置310にEMIDを要請し,記憶装置310からEMIDを受信する。この時,受信される変形されたEMIDは,記憶装置310内のEMID領域312に記憶された値がEMIDエンコーダ314を経てノイズが追加された複数の値(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)である。・・・」

しかしながら,上記(ア)?(キ)の記載を参照しても,「IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用した予め設定された演算」とは,具体的にどのような「演算」であるのか,つまり,「ID」,「ランダム値」,「EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値」を具体的にどのように利用して「演算」を行っているのか,また,当該「演算」により「生成されたエンコーディングされたID」とは具体的にどのような「ID」であるのかについて何も説明されていないため,当該技術分野の周知技術を参酌しても,本願の発明の詳細な説明は,「IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用した予め設定された演算」により「エンコーディングされたID」を「生成」することについて,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(2)請求項1には,「前記EMIDデコーダが前記受信したエンコーディングされたIDと前記署名情報とを利用して前記記憶装置を認証するステップ」と記載されている。
上記記載における「エンコーディングされたIDと前記署名情報とを利用して前記記憶装置を認証する」処理は,例えば本願明細書の翻訳文【0025】段落に「ステップ730で,レコーディング装置430は,ステップ710で受信した複数の値をEMIDデコーダ330に入力する。EMIDデコーダ330は,受信した複数の値(EMID_i(1≦i≦N))にデコーディングプロセス(Decoding Process)を適用して元のID(ID_i(1≦i≦N))を抽出する。この場合,レコーディング装置330は,1ラウンドで提供された複数の値から元のIDを復元することができる。次に,ステップ740では,抽出されたEMID(ID_i(1≦i≦N))を下記数式(1)に示したように,一般的なRSA暗号方式によって,署名情報との一致性を検証する。」と記載されているように,まず,「エンコーディングされたID」に対してデコーディングプロセス(Decoding Process)を適用して「元のID(元のEMID)を抽出し,抽出された元のID(元のEMID)を用いて署名情報との一致検証を行うものであるから,「エンコーディングされたID」から「元のEMID」を復元できることが前提である。
そこで,「エンコーディングされたIDから元のEMIDを復元する処理」について,本願明細書の翻訳文の記載を確認する。
本願明細書の翻訳文には,「エンコーディングされたIDから元のEMIDを復元する処理」に関連して以下のような記載がある。

(ク)「【0005】
・・・本発明は,不揮発性記憶装置の認証方法であって,記憶装置を認証するためのEMID(Enhanced Media Identification)デコーダが,・・・任意の値との予め設定された演算により変形されたEMIDを上記記憶装置から受信するステップと,上記受信した変形されたEMIDをデコーディング(decoding)してEMIDを復元するステップと,を含むことを特徴とする。」
(ケ)「【0006】
・・・本発明は,不揮発性記憶装置を認証するためのEMIDデコーダであって,・・・任意の値との予め設定された演算により変形されたEMIDを受信してEMID復元部に伝達するメディア認証部と,上記受信した変形されたEMIDをデコーディングしてEMIDを復元するEMID復元部と,を含むことを特徴とする。」
(コ)「【0011】
・・・キオスク(Kiosk)とコンテンツ管理者(Contents Aggregator)のように,記憶装置にコンテンツを記録して,コンテンツを提供するためのコンテンツ提供業者(Content providing entity)220は,ライセンス機関210を通して決定されたIDデコーダ213を伝達されて,復号化されたコードパラメータと変形された(ノイズが含まれた)EMIDを元のIDに変形する機能を利用でき,このような機能を利用し記憶装置の物理的識別子を認証して適法なコンテンツを記憶装置の物理的識別子にバインディング(binding)してコンテンツレコーディングを遂行する。」
(サ)「【0012】
また,記憶装置のコンテンツを再生するためのプレーヤを製造する製造業者(Player manufacturer)230は,ライセンス機関210を通し決定されたIDデコーダ213を伝達されて,復号化されたコードパラメータと変形された(ノイズが含まれた)EMIDを元のIDに変形する機能を利用することができる。・・・」
(シ)「【0017】
・・・EMIDデコーダ330は,少なくとも一つ以上のノイズが発生されたEMID315を受信して,元のID値を復元する。・・・」
(ス)「【0020】
・・・メディア認証部332は,記憶装置310から受信したノイズが含まれた複数のEMIDをEMID復元部331に入力し,EMID復元部331から出力されたEMIDが入力され暗号学的検証を遂行して適法な記憶装置310であるか否かを判断する。・・・」
(セ)「【0021】
・・・EMID復元部331は,受信したエンコーディングされたID情報をデコーディングして元のIDを復元する。
この場合,要請に対応してEMIDデコーダ330が記憶装置310から受信したEMIDは,ランダム誤りが反映されて複数個生成されたEMIDである。」
(ソ)「【0023】
また,メディア認証部332は,記憶装置310にEMIDの要請を複数回遂行して,上記各要請によりEMIDを受信し,EMIDを復元し,上記復元したEMIDの検証動作を複数回遂行する。
また,メディア認証部332は,記憶装置310にIDの署名情報と,EMIDデコーディングのためのパラメータ(parameter)情報を要請し,上記要請により上記記憶装置から署名情報と,パラメータ情報を受信し,EMID復元部331は,上記受信したパラメータ情報を利用して上記ノイズが発生されたEMIDをデコーディングして元のIDを復元する。」
(タ)「【0025】
ステップ730で,レコーディング装置430は,ステップ710で受信した複数の値をEMIDデコーダ330に入力する。EMIDデコーダ330は,受信した複数の値(EMID_i(1≦i≦N))にデコーディングプロセス(Decoding Process)を適用して元のID(ID_i(1≦i≦N))を抽出する。
この場合,レコーディング装置330は,1ラウンドで提供された複数の値から元のIDを復元することができる。・・・」
(チ)「【0029】
ステップ830で,再生装置430は,ステップ810で受信した複数のEMIDをIDデコーダ330に入力する。EMIDデコーダ330は,受信した複数の値(EMID_i(1≦i≦N)))にデコーディングプロセス(Decoding Process)を適用して元のID(ID_i(1≦i≦N))を抽出する。
この場合,再生装置430は,1ラウンドで提供された複数のEMIDから元のIDを復元することができる。・・・」

しかしながら,上記(ク)?(チ)の記載を参照しても,「エンコーディングされたID」とは具体的にどのようなものであり,また,それをどのように処理すれば「元のEMIDを復元する」ことができるのかについては,具体的に何も説明されていない。
そうすると,本願の発明の詳細な説明には,「エンコーディングされたIDから元のEMIDを復元する」ことが,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから,これを前提とした,請求項1の「エンコーディングされたIDと前記署名情報とを利用して前記記憶装置を認証する」処理についても,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって,本願の発明の詳細な説明は,「前記EMIDデコーダが前記受信したエンコーディングされたIDと前記署名情報とを利用して前記記憶装置を認証するステップ」について,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(3)<省略>

よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

[理由2] <省略>

[理由3] <省略> 」

第4.当審の判断
1.[理由1]の(1)について

(1)平成28年7月14日付けの手続補正により補正された請求項1には,「前記要請に対応して,IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用して生成された,エンコーディングされたIDを前記記憶装置から受信するステップ」と記載されている。
上記記載における「IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用して」「エンコーディングされたID」を「生成」することに関連して,本願明細書の発明の詳細な説明には,前記「第3.当審の拒絶理由の概要」で引用した当審拒絶理由において引用された前記「(ア)?(キ)」のとおりの記載がある。

前記(ア)?(キ)の記載について検討する。

(a)前記(ア),(イ),(ウ),及び(エ)の記載から,「記憶装置310のEMID領域312には,物理的識別子(EMID,固有の情報)が記憶されていること」が読み取れる。

(b)前記(ウ),(エ),(オ),(カ),及び(キ)の記載から,「レコーディング装置または再生装置が記憶装置310に対してEMIDの要請を行うこと」が読み取れる。

(c)前記(ウ),(エ),(オ),(カ),及び(キ)の記載から,「コントローラは,要請に対して,EMIDエンコーダにより,ノイズが発生された複数のEMID(ノイズが追加された複数のEMID,ノイズを追加した複数のEMID,ランダム誤りが反映されて複数個生成されたEMID,変形されたEMID,ノイズが発生された複数の値(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N),ノイズが追加された複数の値(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N))を再生装置またはレコーディング装置に送信すること」が読み取れる。

(d)前記(ア),(イ),(ウ),及び(エ)の記載から,「EMIDエンコーダは,ランダム値(ランダムエラー)と,物理的識別子(EMID,固有の情報)と,事前にホスト装置から受信した値とを演算して,EMIDにノイズを発生させてEMIDを変形する(EMID値を変形してノイズを発生させる,複数のノイズが発生されたEMIDを生成する,ノイズを追加した複数のEMIDを生成する)こと」が読み取れる。

(e)前記(エ)の記載から,「再生装置またはレコーディング装置が記憶装置に対して,複数回EMIDを要請すること」が読み取れる。

上記(a)?(e)より,本願明細書の発明の詳細な説明には,
「記憶装置の所定の記憶領域にはEMIDが記憶されており,レコーディング装置または再生装置が記憶装置にEMIDの要請を行うと,EMIDエンコーダは,所定の記憶領域から読み出したEMIDと,ランダム値と,事前にホスト装置から受信した値とを演算して,“ノイズが追加された複数のEMID(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)”を生成し,コントローラは,“ノイズが追加された複数のEMID(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)”を再生装置またはレコーディング装置に送信する。」
という動作内容が記載されていると理解される。

上記動作内容によれば,EMIDエンコーダは,所定の記憶領域から読み出したEMIDとランダム値とを用いて“複数の異なるEMID(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)”を生成しているものと認められるところ,複数の異なるEMID(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)を生成することにどのような技術的意味があるのか,また,この“複数の異なるEMID(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)”が,それぞれがどのようなランダム値を用いて,どのように生成されるものであるのか,つまり,どのようなランダム値を用い,どのような生成方法とすることで,各EMID(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)を異ならせているのかについて,具体的には何も説明されていない。

してみれば,本願明細書の発明の詳細な説明は,「IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用して」「エンコーディングされたID」を「生成」することについて,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(2)本願明細書の発明の詳細な説明の【0025】?【0026】段落には,
「次に,ステップ740では,抽出されたEMID(ID_i(1≦i≦N))を下記数式(1)に示したように,一般的なRSA暗号方式によって,署名情報との一致性を検証する。下記数式(1)に示された方式は,本発明の一実施形態であるだけで,署名情報との一致性検証にはそれ以外の暗号学的方法が使われることができる。
Verify_RSA(hash(ID_i), additional parameter) = Value of Signature on ID for all i (1≦i≦N) ----------(1)」(【0025】)
「ステップ740で,N個の値のうち少なくとも一つに対して検証が成功すれば,レコーディング装置430は物理的識別を確認する。」(【0026】)
と記載され,“抽出されたEMID(ID_i(1≦i≦N))”,すなわち,「デコーディングされたN個の元のID(ID_i(1≦i≦N))」に対して署名情報との一致性を検証する際に,「デコーディングされたN個の元のID(ID_i(1≦i≦N))」のうちの少なくとも一つに対して検証が成功すれば,物理的識別を確認する旨が記載されているが,「デコーディングされたN個の元のID(ID_i(1≦i≦N))」の中で,検証が成功するものと検証が成功しないものとの間にどのような違いがあるのか不明であり,また,「デコーディングされたN個の元のID(ID_i(1≦i≦N))」のうちの少なくとも一つが“必ず”検証が成功するようにするためには,エンコーディングプロセスにおいて,“ノイズが追加された複数のEMID(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)”を生成する際に,“何らかの工夫”がなされている必要があると思われるが,エンコーディングの処理において,そのような“工夫”がなされているとの説明もない。
また,そのような“何らかの工夫”がなされていないとすると,「デコーディングされたN個の元のID(ID_i(1≦i≦N))」の中で,検証が成功するものが一つも無い場合も想定されるところ,そのような場合は,記憶装置の認証を不能と判断するのか否かも不明である。

してみれば,本願明細書の発明の詳細な説明からは,どのようなエンコーディングプロセスを実行すれば,「デコーディングされたN個の元のID(ID_i(1≦i≦N))」のうちの少なくとも一つに対して検証が成功するような「エンコーディングされたID」を「生成」することができるのかが全く不明であるから,本願明細書の発明の詳細な説明は,請求項1の「IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用して」「エンコーディングされたID」を「生成」することについて,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

また,請求項2及び3は,請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから,上記請求項1と同様のことがいえる。

(3)したがって,当審拒絶理由の[理由1]の(1)で指摘した不備の点は依然として解消していない。

2.[理由1]の(2)について
平成28年7月14日付けの手続補正により補正された請求項1には,「前記EMIDデコーダが前記受信したエンコーディングされたIDに対してデコーディングプロセスを適用して抽出された元のIDと,前記署名情報と,を利用して前記記憶装置を認証するステップ」と記載されている。
上記記載における「エンコーディングされたIDに対してデコーディングプロセスを適用して」「元のID」を「抽出」することに関連して,本願明細書の発明の詳細な説明には,前記「第3.当審の拒絶理由の概要」で引用した当審拒絶理由において引用された前記「(ク)?(チ)」のとおりの記載がある。

前記(ク)?(チ)の記載について検討する。

(a)前記(ク)の記載から,「EMID(Enhanced Media Identification)デコーダが,変形されたEMIDをデコーディング(decoding)してEMIDを復元すること」が読み取れる。

(b)前記(ケ)の記載から,「EMID復元部が,変形されたEMIDをデコーディングしてEMIDを復元すること」が読み取れる。

(c)前記(シ)の記載から,「EMIDデコーダは,少なくとも一つ以上のノイズが発生されたEMID315を受信して,元のID値を復元すること」が読み取れる。

(d)前記(ス)の記載から,「EMID復元部331は,ノイズが含まれた複数のEMIDを入力してEMIDを出力すること」が読み取れる。

(e)前記(セ)の記載から,「EMID復元部331は,受信したエンコーディングされたID情報(ランダム誤りが反映されて複数個生成されたEMID)をデコーディングして元のIDを復元すること」が読み取れる。

(f)前記(ソ)の記載から,「メディア認証部332は,記憶装置310にIDの署名情報と,EMIDデコーディングのためのパラメータ(parameter)情報を要請し,上記要請により上記記憶装置から署名情報と,パラメータ情報を受信し,EMID復元部331は,上記受信したパラメータ情報を利用して上記ノイズが発生されたEMIDをデコーディングして元のIDを復元すること」が読み取れる。

(g)前記(タ)の記載から,「EMIDデコーダ330は,複数の値(EMID_i(1≦i≦N))にデコーディングプロセス(Decoding Process)を適用して元のID(ID_i(1≦i≦N))を抽出すること」が読み取れる。

(h)前記(チ)の記載から,「EMIDデコーダ330は,複数の値(EMID_i(1≦i≦N)))にデコーディングプロセス(Decoding Process)を適用して元のID(ID_i(1≦i≦N))を抽出すること」が読み取れる。

しかしながら,前記(ク)?(チ)のいずれの記載を参照しても,また,その他の記載をみても,複数の値(EMID_i(1≦i≦N)))が具体的にどのようなものであり,どのようなデコーディングプロセスを適用することによって元の(ID_i(1≦i≦N))を復元することができるのかについて,具体的には何も説明されておらず,デコーディングプロセスの具体的な処理内容を理解することができない。
特に,上記「1.[理由1]の(1)について」で記載したように,EMIDエンコーダは,“ランダム値”を用いて“複数の異なるEMID(EMID_1,EMID_2,...,EMID_N)”を生成しているものと認められるところ,上記摘記したデコーディングプロセスの説明にはどこにも,“ランダム値”に関する説明がなされていない。
そして,エンコーディングプロセスで使用された“ランダム値”と同じ“ランダム値”を使用しなければ,元のIDがデコーディングできないことは技術常識であるから,単に“デコーディングプロセスで元のIDを復元する”との説明のみでは,デコーダが,エンコーディングプロセスで使用された“ランダム値”をいつ,どのようにして入手しているのか(本願明細書の発明の詳細な説明には,記憶装置の内部においてエンコーディングに使用された“ランダム値”をどのようにしてデコーダが知ることができるのかについては,何も説明されていない。)が不明であり,本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が“デコーディングプロセス”を適切に実施することができる程度に明確に記載されているとは認められない。

してみれば,本願明細書の発明の詳細な説明は,請求項1の「エンコーディングされたIDに対してデコーディングプロセスを適用して」「元のID」を「抽出」することについて,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

また,請求項2及び3は,請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから,上記請求項1と同様のことがいえる。

したがって,当審拒絶理由の[理由1]の(2)で指摘した不備の点は依然として解消していない。

3.審判請求人の主張について
(1)審判請求人は,平成28年7月14日付けの意見書において,次のとおり主張している。

「1.平成28年03月07日起案の拒絶理由通知書により,本願の請求項1?3に係る発明は,実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので,特許法第36条第4項第1号の規定等により特許を受けることができないとされました。

そこで,請求人は,別途提出する手続補正書により本願特許請求の範囲を補正致しました。またこの補正により請求人は,補正後の本願発明が特許法第36条第4項第1号の特許要件等を満たすものと考えますので,拒絶理由との対応の下,下記に意見を述べさせて戴きます。

2.補正の内容及び特許されるべき理由
(一)実施可能要件について
(1)(途中省略)
請求項1の当該指摘事項については,「前記要請に対応して,IDと,ランダム値と,前記EMIDデコーダから受信した前記IDのエンコーディングのための値とを利用して生成された,エンコーディングされたIDを前記記憶装置から受信するステップと,」と補正致しましたので,本指摘事項は解消されるものと請求人は思料致します。
「ID」を「エンコーディング」するにあたり,「ランダム値」を用いることは当業者に良く知られている技術事項であり,本願発明ではそれに加えて「EMIDデコーダから受信したIDのエンコーディングのための値」を用いて,「エンコーディング」を遂行するものと請求人は思料致します。

ここで,エンコーディングに当たって,「ランダム値」のみならず,特定の「キー(鍵)」等を用いてエンコーディングすることは,秘密性を高めるために,「エンコーディング」の技術領域では極めてよく知られている技術思想であるから,本願のように,「IDのエンコーディングのための値」を用いることも当業者には容易に理解できるものと請求人は思料致します。 但し,本願発明は,当該「IDのエンコーディングのための値」を「EMIDデコーダから受信」するという,本願特有の特徴を有するものと請求人は思料致します。

(2)(途中省略)
請求項1の当該指摘事項については,本願段落[0025]の記載等に基づいて,「前記EMIDデコーダが前記受信したエンコーディングされたIDに対してデコーディングプロセスを適用して抽出された元のIDと,前記署名情報と,を利用して前記記憶装置を認証するステップ」と補正致しましたので,本指摘事項は解消されるものと請求人は思料致します。

ここで,拒絶理由通知では,「本願の発明の詳細な説明には,「エンコーディングされたIDから元のEMIDを復元する」ことが,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない」と指摘されています。これについて,上記(1)にも関係しますが,「ID」を種々の方式で「エンコード」したり「デコード」したりする技術は,当業者には極めて良く知られている技術思想であって,本願発明は,「エンコード」それ自体や,「デコード」それ自体に,特別な技術的特徴を有しているものではないと請求人は思料致します。
すなわち,当業者によく知られている公知の「エンコード」方法やこれに対応する「デコード」方法を任意選択して用いることができるものと請求人は思料致します。
従って,本願発明の詳細な説明においては,「エンコード」それ自体や,「デコード」それ自体の技術説明については,公知技術を任意に選択適用できるとの観点から,詳細には説明されていないものと請求人は思料致します。
このため,当該説明記載が本願発明の詳細な説明にないからといって,請求項1のご指摘にかかる記載が,実施可能要件を充足しないとされるものではないと請求人は思料致します。」

(2)しかしながら,上記主張を参照しても,上記1.及び2.で指摘した,「ランダム値」や「複数のEMIDを用いること」等については何ら説明されておらず,上記1.及び2.で指摘した不備を何ら解消するものではないから,請求人の上記主張は採用することができない。

第5.むすび
以上のとおり,本願の発明の詳細な説明の記載は,当業者が請求項1ないし3に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって,本願は,当審で通知した拒絶理由によって拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-28 
結審通知日 2016-10-31 
審決日 2016-11-11 
出願番号 特願2013-528135(P2013-528135)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 須田 勝巳
辻本 泰隆
発明の名称 不揮発性記憶装置の認証方法  
代理人 木内 敬二  
代理人 崔 允辰  
代理人 実広 信哉  
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