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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1326800
審判番号 不服2016-6257  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-27 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2011- 55441「高周波モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-191122、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月14日の出願であって、平成28年2月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年7月6日付けで前置報告がされ、同年8月25日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年2月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?3に係る発明は、以下の引用文献1?6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2000-216691号公報
2.特許第2785753号公報
3.特開平10-107476号公報
4.実願昭51-176409号(実開昭53-091405号)のマイクロフィルム
5.特開平08-250912号公報
6.特開2001-102747号公報

なお、引用文献2については、平成27年9月25日付け拒絶理由通知書、平成28年2月2日付け拒絶査定、及び同年7月6日付け前置報告書において「特許第2786753号公報」と誤記されていたが、出願人は平成27年11月27日付け意見書において述べているように、これを「特許第2785753号公報」の誤記であるものとし、正しい引用文献に基づいて主張している。


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとは認められない。


第4 本願発明
本願請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成28年4月27日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明と認める。

「 【請求項1】
複数の素子で構成される高周波回路部品が表面に実装され、前記高周波回路部品からの高周波信号を外部に通す高周波信号用コネクタと前記高周波回路部品とを電気的に接続するトリプレート線路を内層に有し、両面にスルーホールを介して電気的に接続する接地導体がプリントされた誘電体基板と、
前記高周波回路部品の各素子間に配置され、前記誘電体基板の表面の接地導体と電気的に接続し、前記素子毎に独立した複数の密閉空間を形成する、直下に前記スルーホールが位置する立壁を有する導体蓋と、
前記導体蓋が取り付けられて内部に前記誘電体基板を格納する金属導体ベースとを備え、
前記誘電体基板は、前記高周波回路部品が実装された表面に対応する裏面全面に接地導体がプリントされ、当該裏面の接地導体の全面で前記金属導体ベースと電気的に接続されて、前記素子毎に独立した複数の密閉空間では、前記高周波信号の進行方向に対する垂直方向の幅で決まるカットオフ周波数による電磁遮蔽が行われ、前記素子毎に独立した複数の密閉空間と前記高周波信号用コネクタとの間に形成された高周波線路は、前記トリプレート線路で形成されて前記高周波信号の放射・結合が抑制されることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記導体蓋は、樹脂の表面に金属メッキを施して形成されていることを特徴とする請求項1記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記金属導体ベースと前記導体蓋との接触部分に導電性パッキンを挟持させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波モジュール。」


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

a.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は衛星放送受信用コンバータ、特に回路基板のシャーシ本体への固定構造に関するものである。」

b.「【0020】回路基板8の表面には複数の高周波回路(回路パターン及び実装される部品は図示を省略)が実裝されており、各高周波回路はアースパターン18により隔離されている。回路基板8の裏面には全面にアースパターン20が施されており、アースパターン18に形成されたスルーホール19によりその表裏を電気的に接続している。
【0021】9はコンバータのシールドシャーシであり、例えばアルミ又は亜鉛等により成形されている。シャーシ9には回路基板8のアースパターン18に対応するリブ10が設けられており、このリブ10により高周波回路に対応するシールド空間を形成している。
【0022】12は金属箔であり、例えばアルミ又は銅等により0.1?0.2ミリの厚みに加工されたものである。13はゴム板であり、例えばシリコンやEPDMウレタン等のゴムシート又は成形により、回路基板8のサイズに対応した大きさに構成されたものである。14は配設板であり、例えば板金やアルミ又は亜鉛等の成形品である。15は固定用ビスである。
【0023】図3は図1、図2で説明した各部品を組み立てたときのA-A’断面図、図4は図3のA部拡大断面図である。
【0024】図示のように固定用ビス15で固定された回路基板8は、基板8裏面と配設板14との間に介在されたゴム板13により、回路基板8全体に均一な荷重をかけることができ、シャーシリブ10と表面アースパターン18が十分接地させられる。このように、配設板14によりかけられる荷重が、ゴム板13によりまんべんなく回路基板8に分散し押さえ付けるため、組み立て時におこる回路基板18への圧力バラツキ及びビス15間の膨らみを押さえることができる。又、さまざまな環境下においても常に一定の圧力がかかっているため、安定したアース接地が達成できる。」

c.図1?3として以下の図面が記載されている。
【図1】

【図2】

【図3】

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 表面に複数の高周波回路が実裝されており、表面のアースパターン18と裏面のアースパターン20がスルーホール19により電気的に接続された回路基板8と、
前記高周波回路の間に配置され、前記アースパターン18に対応して設けられて前記アースパターン18と電気的に接続され、前記高周波回路に対応するシールド空間を形成し、対応する前記アースパターン18に前記スルーホール19が存在するリブ10を有するシールドシャーシ9と、
前記シールドシャーシ9に取り付けられ、前記シールドシャーシ9の内部に前記回路基板8を格納する、金属箔12、ゴム板13、及び配設板14を順に重ねたものと、を備え、
前記回路基板8は、複数の前記高周波回路が実裝された表面に対応する裏面の全面に前記アースパターン20が形成された衛星放送受信用コンバータ。」

2.その他の公知技術、周知技術について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の【0003】、【0020】?【0023】段落、及び図3には、高周波回路が形成された基板を内部に配置した金属製の筐体1を、シールド枠3に取り付けるという技術事項が記載されていると認められる。
拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された上記引用文献5,6に記載されているとおり、多層の基板を用いたトリプレート線路に高周波信号用コネクトを直接接続するという技術事項は、本願出願日前において周知技術であったものと認められる。
また、前置報告書において周知技術を示す文献として引用された特開平2-312321号公報、及び特開2009-170843に記載されているとおり、アンテナ等への外部に接続する手段としてコネクタを使用するという技術事項は、本願出願日前において周知技術であったものと認められる。


第6 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1を引用発明と対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「高周波回路」、「回路基板8」、「シールドシャーシ9」は、本願発明1における「素子」、「誘電体基板」、「導体蓋」にそれぞれ相当する。
また、引用発明では「シールドシャーシ9」(「導体蓋」に相当)が「金属箔12、ゴム板13、及び配設板14を順に重ねたもの」に取り付けられるのに対して、本願発明1では「導体蓋」が「金属導体ベース」に取り付けられる点で相違するものの、導体蓋が取り付けられて内部に前記誘電体基板を格納する構成を備えるという点で両者は共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致ないし相違するものと認められる。

(一致点)
「 複数の素子で構成される高周波回路部品が表面に実装され、両面にスルーホールを介して電気的に接続する接地導体がプリントされた誘電体基板と、
前記高周波回路部品の各素子間に配置され、前記誘電体基板の表面の接地導体と電気的に接続し、前記素子毎に独立した複数の密閉空間を形成する、直下に前記スルーホールが位置する立壁を有する導体蓋と、
前記導体蓋が取り付けられて内部に前記誘電体基板を格納する構成とを備え、
前記誘電体基板は、前記高周波回路部品が実装された表面に対応する裏面全面に接地導体がプリントされることを特徴とする高周波モジュール。」

(相違点1)
本願発明1では、誘電体基板が、高周波回路部品からの高周波信号を外部に通す高周波信号用コネクタと前記高周波回路部品とを電気的に接続するトリプレート線路を内層に有するのに対して、引用発明はそのような構成を有しているのか明らかではない点。

(相違点2)
一致点とした「前記導体蓋が取り付けられて内部に前記誘電体基板を格納する構成」に関して、本願発明1では「金属導体ベース」であるのに対して、引用発明では「金属箔12、ゴム板13、及び配設板14を順に重ねたもの」である点。

(相違点3)
本願発明1では、誘電体基板は裏面の接地導体の全面で金属導体ベースと電気的に接続されているのに対して、引用発明では回路基板8の裏面の全面が金属箔12に接続されている点。

(相違点4)
本願発明1では、素子毎に独立した複数の密閉空間では、前記高周波信号の進行方向に対する垂直方向の幅で決まるカットオフ周波数による電磁遮蔽が行われているのに対して、引用発明ではどのような電磁遮断が行われているのか明らかにされていない点。

(相違点5)
本願発明1では、素子毎に独立した複数の密閉空間と高周波信号用コネクタとの間に形成された高周波線路は、トリプレート線路で形成されて高周波信号の放射・結合が抑制されるものであるのに対して、引用発明ではそのような高周波線路を有していない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には上記「第5 引用文献、引用発明等」のとおり、高周波回路が形成された基板を内部に配置した金属製の筐体1を、シールド枠3に取り付けるという技術事項が記載されている。しかしながら、当該技術を参照しても引用発明における「金属箔12、ゴム板13、及び配設板14を順に重ねたもの」を一体的に構成したり、また、ゴム板13を取り除いて本願発明1のように金属だけによる構成にしようとすることも、ゴム板13は回路基板8全体に均一な荷重をかけ、シャーシリブ10と表面アースパターン18が十分接地させるために必要な構成であることを勘案すれば、これを除いて本願発明のような構成とすることは当業者が容易になし得た事項ということはできない。

次に、上記相違点1及び5について合わせて検討する。
上記「第5 引用文献、引用発明等」のとおり、「多層の基板を用いたトリプレート線路に高周波信号用コネクトを直接接続するという技術」、及び「アンテナ等への外部に接続する手段としてコネクタを使用するという技術」はともに周知技術であるが、当該周知技術を引用発明に適用しても、密閉空間であるシールドシャーシ9の内部からシールドシャーシ9の外部のコネクタへトリプレート線路で接続するという相違点に係る構成は、密閉空間の内外をトリプレート線路で接続する構成が引用文献1?6に開示も示唆もされておらず、また周知技術とも言えないことを勘案すると、当業者が容易に想到できた事項ということはできない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?4に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.請求項2、3について
本願発明2及び3は、本願発明1と同一の構成を備え、更に構成を限定したものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2?4に記載された技術事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について
審判請求時の補正により、補正後の本願発明1?3は上記相違点5に係る構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?6に基づいて、容易に発明できたものとは認められない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-12 
出願番号 特願2011-55441(P2011-55441)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 水野 恵雄
山本 章裕
発明の名称 高周波モジュール  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 倉谷 泰孝  
代理人 村上 加奈子  
代理人 松井 重明  
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