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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1326837
審判番号 不服2016-4460  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-24 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2013- 81560「通信装置、通信装置の制御方法、サーバ、表示装置、コンテンツ配信システム、および制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月27日出願公開、特開2014-204400、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
1.手続
本願は、平成25年4月9日を出願日とする特許出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成27年 3月26日(起案日)
手続補正 :平成27年 5月29日
拒絶理由通知(最後) :平成27年11月 6日(起案日)
手続補正 :平成27年12月25日
補正の却下の決定 :平成28年 2月15日(起案日)
拒絶査定 :平成28年 2月15日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成28年 3月24日
手続補正 :平成28年 3月24日
拒絶理由(当審) :平成28年11月30日(起案日)
手続補正 :平成28年12月22日

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。(なお、原査定に先立ち、平成27年12月25日付けの手続補正は却下されている。)

理由1
この出願の請求項4に係る発明(平成27年5月29日付け手続補正書による)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2
この出願の請求項4に係る発明(平成27年5月29日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(備考)
請求項4に記載された「請求項1または2に記載の通信装置(他のサブコンビネーション)」に関する事項は、表示装置(サブコンビネーション)の発明の構造、機能等を何ら特定していないことから、「請求項1または2に記載の通信装置」に関する事項と、引用文献1又は2に記載の発明特定事項との記載上、表現上の相違が生じていても、他に相違点がなければ、請求項4に係る表示装置の発明と引用発明との間で、構造、機能等に差異は生じない。
よって、請求項4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。
また、請求項4に係る発明は、引用文献1又は2に記載の発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
刊行物1:特開2011- 71880号公報
刊行物2:特開2007-166365号公報

3.当審における拒絶の理由(平成28年11月30日付け)は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項4に係る発明(平成28年3月24日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(理由)
平成28年3月24日付け手続補正書により補正された請求項4の記載によれば、「表示装置」を特定する構成としては、
「自表示装置の近傍にある通信装置に自表示装置を識別可能な識別情報を送信し、該通信装置から送出されたコンテンツを受信して表示する表示装置であって、
上記表示装置は、テレビジョン番組を表示面に表示するテレビであり、
上記コンテンツは、上記通信装置において表示されているコンテンツであり、上記テレビジョン番組と共に上記表示面に表示されることを特徴とする表示装置」
の特定事項しか記載がなく、「請求項1または2に記載の通信装置」は、「通信装置」は特定しているが、表示装置を特定してはいない。
したがって、そのような「請求項1または2に記載の通信装置」の特定事項は、請求項4に記載の「表示装置」の発明を特定するための意味を有しないものとして発明を認定でき、請求項4に記載の「請求項1または2に記載の通信装置」(他のサブコンビネーション)に関する事項は、請求項4に記載の「表示装置」(サブコンビネーション)の発明の構造、機能等を何ら特定していない場合に該当するものと認定して請求項4に係る発明の進歩性について検討すると、請求項4に係る発明は、引用文献1に記載の発明、及び引用文献2に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に想到できることである。

引 用 文 献 等 一 覧
刊行物1:特開2012-19463号公報
刊行物2:特開2011-176896号公報

第2 本願発明
当審が上記第1 3.の拒絶の理由を通知したところ、平成28年12月22日付けの手続補正により、本願の請求項4の記載は以下のとおりとなったから、本願の請求項4に係る発明は、平成28年12月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(請求項4に係る発明は、請求項1、請求項2の記載を引用しているから、請求項1、請求項2の記載も含めている。下線は、補正箇所。)
((A)ないし(K)は当審において付与した。以下「構成要件(A)」等として引用する。)

【請求項1】
(A)所定のコンテンツを受信可能な通信装置であって、
(B)当該通信装置と通信可能に接続された表示装置から、当該表示装置を識別可能な識別情報を取得する識別情報取得手段と、
(C)前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において、表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得するコンテンツ取得手段と、
(D)前記コンテンツ取得手段によって取得された許可コンテンツを前記表示装置に表示させるために、当該許可コンテンツを前記表示装置に送出する第1のコンテンツ送出手段と、
(E)前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において表示されることが許可されているか否かを、コンテンツごとに判定する第1の許否判定手段と、を備え、
(F)前記第1の許否判定手段は、前記表示装置が通信可能に接続された時、前記通信装置が備えた表示部に現在表示されているコンテンツが、当該表示装置において表示されることが許可されているか否かを判定し、
(G)前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていると判定されたコンテンツを、前記許可コンテンツとして取得し、
(H)前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていないと判定される場合、当該表示装置において表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得することを特徴とする通信装置。

【請求項2】
前記第1のコンテンツ送出手段によって送出された許可コンテンツを識別可能なコンテンツ識別情報を、所定の外部装置に送出する識別情報送出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。

【請求項4】
(I)請求項1または2に記載の通信装置であって、前記表示装置の近傍にある通信装置に自表示装置を識別可能な前記識別情報を送信し、該通信装置から送出されたコンテンツを受信して表示する前記表示装置であって、
(J)上記表示装置は、テレビジョン番組を表示面に表示するテレビであり、
(K)上記コンテンツは、上記通信装置において表示されているコンテンツであり、上記テレビジョン番組と共に上記表示面に表示されることを特徴とする表示装置。

以上の記載によれば、請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2の記載を引用しているが、請求項2に係る発明は、請求項1の記載を引用しているから、請求項1を引用する請求項4に係る発明(以下、本願発明という。)のみを検討する。
また、上記請求項4の記載では、補正前は、「表示装置」、「識別情報」について、請求項1に記載された「表示装置」、「識別情報」との関係が特定されていない構成であったのに対し、補正後の本願発明では、「表示装置」、「識別情報」が、「前記表示装置」、「前記識別情報」と特定されているから、請求項1にて特定される「表示装置」、「識別情報」であることが明らかとなった。
したがって、本願発明の「表示装置」、「識別情報」は、請求項1で特定されている「表示装置」、「識別情報」以外の「表示装置」、「識別情報」は含まない構成となった。

第3 当審が通知した拒絶の理由についての検討
(ア)刊行物の記載事項
(ア-1)刊行物1の記載
当審における拒絶の理由の通知において引用された特開2012-19463号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。)

【0001】
本発明は、受信側機器にコンテンツを供給する送信側機器、そのような送信側機器の識別方法、及び、そのような送信側機器と受信側機器とを含むシステムに関する。また、コンピュータをそのような送信側機器として動作させるためのプログラム、及び、そのようなプログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)を搭載するテレビが普及し、テレビとソース機器とをHDMIケーブルを介して接続することが一般的となっている。HDMIケーブルを介して接続されたテレビとソース機器とは、映像信号および音声信号に加え、CEC(Consumer Electronics Control)コマンドを互いに送受信する。
【0003】
CECコマンドを用いれば、テレビからソース機器を制御したり、ソース機器からテレビを制御したりすることによって、これまでにはなかった利便性をユーザに提供することが可能になる。例えば、テレビの入力ソースを、コンテンツの再生を開始したソース機器に自動的に切り替えることができる。HDMIの詳細については、例えば、非特許文献1を参照されたい。
【0004】
また、Micro・HDMIコネクタが規格化されたことに伴い、今後、携帯機器とテレビとをHDMI接続し、携帯機器にて再生されたコンテンツをテレビに表示するといったユースケースの増加が想定される。例えば、昨今の携帯電話端末は、静止画コンテンツ、動画コンテンツ、及び音声コンテンツを再生する機能を有しており、ソース機器として利用することができる。PDA、携帯型デジタルオーディオプレーヤ、デジタルカメラ等の携帯機器も同様である。

【0056】
なお、本実施形態では、テレビ2との通信はHDMIケーブルを用いるものとするが、本発明はこれに限定されず、例えば、USBケーブルを用いてもよい。また、有線ケーブルを用いた通信でなくてもよい。例えば、WLANやBluetoothといった無線信号を用いた通信であってもよい。

【0098】
図5は、テレビ2に有線もしくは無線通信で接続された携帯電話端末1a及び携帯電話端末1bにおける、通知処理実行時の携帯電話端末1a及び携帯電話端末1bの動作例を示す図である。(a)は、テレビ2にコンテンツを供給している機器が携帯電話端末1aである場合の動作例であり、(b)は、テレビ2にコンテンツを供給している機器が携帯電話端末1bである場合の動作例である。(c)は、テレビ2にコンテンツを供給している機器が、携帯電話端末1a及び携帯電話端末1bではない場合の動作例を示す。
【0099】
図5(a)?(c)に示すように、テレビ2に接続されている携帯電話端末1a及び携帯電話端末1bが同メーカ、同機種の場合、テレビ2に表示される入力切替メニューは図9のような入力切替メニュー90が表示される。しかし、テレビ2にコンテンツを供給している機器の着信用LED151のみが点灯し、コンテンツを供給していない機器の着信用LED151は、点灯及び点滅しない。
【0100】
このように、テレビ2にコンテンツを供給している機器がどの機器であるのかを、ユーザは、携帯電話端末1a及び携帯電話端末1bのコンテンツとテレビ2に表示されたコンテンツとを見比べることなく、通知部150の着信用LED151を確認することで知ることが出来る。

(ア-2)刊行物2の記載
当審における拒絶の理由の通知において引用された特開2011-176896号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。)

【0001】
本発明は、通信装置および通信装置における制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像の高精細化が進められており、例えばHD(High Definition)の画像を再生可能な光ディスクや、地上デジタル放送等の再生及び表示が可能な光ディスクプレーヤやセットトップボックス、パーソナルコンピュータ等の機器が普及しつつある。通常この種の機器は、高精細映像信号を外部出力する機能を有しており、例えばHDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブルにより映像信号を出力する。
【0003】
HDMI規格では、TMDSラインにより、ソース機器は非圧縮の映像信号をシンク装置(デジタルテレビ等の再生装置)側へと出力する。ここで、シンク側の装置が受信する(入力を受ける)ことのできる映像信号のチャネル(HDMIトポロジー上の映像ストリームの数)は1チャネルのみである。
【0004】
HDMI規格では、映像信号の他、CECラインにより、制御信号(CECコマンド)を双方向に送受信することができる。CECコマンドには種々のコマンドが定義されているが、例えば、シンク装置がSet Stream Pathコマンドを送信すると、映像信号のストリームを切り換えて、該シンク装置が受信する映像信号を出力するソース機器を変えることができる(例えば、特許文献1参照)。

【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(システムの構成)
図1は、本発明の実施形態に関わるHDMI(High-Definition Multimedia Interface)システムを示す概略図である。
HDMIシステム1は、図示しないアンテナから地上デジタル放送波を受信し復調して表示、又は、外部入力から映像信号を受信して表示する電子機器であるデジタルテレビ100と、Blu-ray Disc(BD)等の光ディスクを再生するBDプレーヤ200と、DVD(Digital Versatile Disk)プレーヤ300と、地上デジタル放送波を受信して復調し、映像信号を出力するセットトップボックス400及び600と、たとえばAV(Audio and Visual)アンプなどであって、CEC機器から入力する映像信号の出力先の切換や映像処理を行うCECスイッチ500とを有し、それぞれを、図示するようにHDMIケーブルで接続することで構成される。
【0013】
HDMIシステム1において、BDプレーヤ200、DVDプレーヤ300、セットトップボックス400及び600は映像信号を出力する機器であり、以下ソース機器とも称する。一方、デジタルテレビ100は、映像信号を受信し、受信した映像信号に基づく映像を表示する表示機器であって、以下シンク機器とも称する。また、ソース機器からシンク機器であるデジタルテレビ100へ至る映像信号の流れを、以下映像ストリームと呼ぶ。
【0014】
通常、1つのHDMIシステム内では、1つの映像ストリームを流すことしか考慮していないが、本実施形態のHDMIシステム1では、メイン画面用の映像ストリームと、サブ画面用の映像ストリームとの2つの映像ストリームを流すことができる。図1の例において、メイン画面用の映像ストリームを流れる映像信号の映像は、デジタルテレビ100の表示パネル109の全画面領域10Aに表示され、サブ画面用の映像ストリームを流れる映像信号の映像は、表示パネルの子画面領域10Bに表示される。以下、全画面領域10Aをメイン画面、子画面領域10Bをサブ画面とも称する。
【0015】
尚、図1の例では、メイン画面とサブ画面とをピクチャ・イン・ピクチャ(PIP)の形で表示しているが、これに限られるものではなく、例えば2つの同じ大きさの画面を並べて表示するようにしても良い。但し、通常、デジタルテレビ100のスピーカ(図1には図示せず)からは、メイン画面に表示される映像の音声のみが出力される。

(イ)刊行物1に記載された発明
以上の記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、刊行物1発明という。)が記載されている。((a)ないし(c)は当審において付与し、以下「構成要件(a)」等として引用する。)

(a)テレビと携帯電話端末とを備え、
(b)携帯電話端末とテレビとは、無線信号を用いた通信(Bluetooth)で接続されており、
(c)携帯電話機器にて再生されたコンテンツをテレビに表示するシステムに用いられるテレビ。

(ウ)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(ウ-1)本願発明の構成要件(A)と刊行物1発明の構成要件(a)とを対比する。
刊行物1発明の携帯電話端末は、構成要件(c)によれば、コンテンツを再生することができるものであり、当該再生するコンテンツが、受信したコンテンツでも良いことは、当該技術分野の技術常識を踏まえれば、当業者であれば普通に想起できるから、所定のコンテンツを受信可能な通信装置であるといえ、したがって、刊行物1発明の携帯電話端末は、本願発明の構成要件(A)の通信装置と相違はない。

(ウ-2)本願発明の構成要件(B)と刊行物1発明の構成要件(b)とを対比する。
刊行物1発明の「携帯電話端末」、「テレビ」は、本願発明の「通信装置」、「表示装置」と対応することは明白である。
そして、上記携帯電話端末とテレビとは、無線信号を用いた通信(Bluetooth)で接続されている。
上記無線信号を用いた通信(Bluetooth)で接続する際には、互いに識別可能な端末識別情報をやりとりすることは、技術常識として普通に知られているから、携帯電話端末は、テレビを識別可能な識別情報を取得していることは明らかである。
したがって、刊行物1発明は、本願発明の構成要件(B)を備えている。

(ウ-3)本願発明の構成要件(C)ないし(H)と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明は、「識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において、表示されることが許可されているコンテンツ(許可コンテンツ)」に関する構成を有していないから、構成要件(C)ないし構成要件(H)を有していない。

(ウ-4)本願発明の構成要件(I)と刊行物1発明の構成要件(b)、(c)とを対比する。
刊行物1発明のテレビは、携帯電話端末と無線信号を用いた通信(Bluetooth)で接続されているから、表示装置の近傍にある通信装置に自表示装置を識別可能な前記識別情報を送信していることは技術常識から明白であり、携帯電話機器にて再生されたコンテンツをテレビに表示しているから、通信装置から送出されたコンテンツを受信して表示する表示装置である点で、本願発明の構成要件(I)と相違はない。

(ウ-5)本願発明の構成要件(J)と刊行物1発明の構成要件(a)とを対比する。
刊行物1発明のテレビは、テレビジョン番組を表示面に表示するテレビである点で、本願発明の構成要件(J)を有している。

(ウ-6)本願発明の構成要件(K)と刊行物1発明の構成要件(c)とを対比する。
刊行物1発明のテレビは、携帯電話機器にて再生されたコンテンツをテレビに表示するシステムに用いられるテレビであるから、通信装置において表示されているコンテンツをテレビの表示面に表示している。
したがって、刊行物1発明のテレビは、「上記コンテンツは、上記通信装置において表示されているコンテンツであり、上記表示面に表示されることを特徴とする表示装置」である点で、本願発明の構成要件(K)に対応している。
もっとも、本願発明では「(コンテンツは)上記テレビジョン番組と共に上記表示面に表示される」のに対し、刊行物1発明では、当該構成を有していない点で相違する。

(ウ-7)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、本願発明と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
所定のコンテンツを受信可能な通信装置であって、
当該通信装置と通信可能に接続された表示装置から、当該表示装置を識別可能な識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記表示装置の近傍にある通信装置に自表示装置を識別可能な前記識別情報を送信し、該通信装置から送出されたコンテンツを受信して表示する前記表示装置であって、
上記表示装置は、テレビジョン番組を表示面に表示するテレビであり、
上記コンテンツは、上記通信装置において表示されているコンテンツであり、上記表示面に表示されることを特徴とする表示装置。

(相違点)
相違点1
本願発明は、
「前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において、表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得するコンテンツ取得手段と、
前記コンテンツ取得手段によって取得された許可コンテンツを前記表示装置に表示させるために、当該許可コンテンツを前記表示装置に送出する第1のコンテンツ送出手段と、
前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において表示されることが許可されているか否かを、コンテンツごとに判定する第1の許否判定手段と、を備え、
前記第1の許否判定手段は、前記表示装置が通信可能に接続された時、前記通信装置が備えた表示部に現在表示されているコンテンツが、当該表示装置において表示されることが許可されているか否かを判定し、
前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていると判定されたコンテンツを、前記許可コンテンツとして取得し、
前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていないと判定される場合、当該表示装置において表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得することを特徴とする通信装置」
の構成を有しているのに対し、刊行物1発明は当該構成を有していない点

相違点2
本願発明では「(コンテンツは)上記テレビジョン番組と共に上記表示面に表示される」のに対し、刊行物1発明では、当該構成を有していない点

(エ)判断
上記相違点について検討する。
(エ-1)相違点1について
当審が通知した拒絶理由通知書にて提示した刊行物1、刊行物2のいずれにも、相違点1に相当する技術事項の開示はなく、該相違点1に相当する事項は当該技術分野における技術常識あるいは、当該技術分野において周知の事項ということもできないから、刊行物1発明に、相違点1の構成を適用することは当業者が容易に想到することができたということはできない。

(エ-2)相違点2について
当審が通知した拒絶理由通知書にて提示した刊行物2には、外部入力により得たコンテンツを他のコンテンツと同時に表示することが開示されているから、刊行物1発明のテレビにおいて、相違点2の構成を採用することは当業者が容易に為し得たことである。

(エ-3)まとめ(判断)
以上のとおり、本願発明は、少なくとも、上記(エ-1)で検討したとおりの相違点1の構成を含むから、刊行物1、刊行物2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるということはできない。

第4 原審での査定の理由についての検討
(ア)刊行物の記載事項
(ア-1)刊行物Aの記載
原査定において引用された特開2011- 71880号公報(以下、「刊行物A」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。)

【0001】
本発明は、映像番組等を受信可能なテレビ受像機、又は、IPTV用のセットトップボックス、又は、ケーブルテレビ用のセットトップボックス等をリモコン操作可能な携帯電話端末等の携帯無線通信端末、コンテンツ視聴システム、携帯無線通信端末の制御方法、携帯無線通信端末の制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ受像機や、IPTV(Internet Protocol TeleVision)用のセットトップボックス(STB)、又は、ケーブルテレビ用のSTB等では、EPG(Electronic Program Guide:電子番組ガイド)が利用可能なものが普及している。その際、EPGをテレビ受像機に表示しても、近年のIPTVやケーブルテレビ等では、番組数が膨大な数となり、全てを番組表に一覧表示することができず、画面のスクロールを繰り返したり検索キーワードを入力したりする必要があり、利用者が所望する番組を探すことが容易ではない場合が多かった。そのため、利用者の嗜好状況の分析結果に応じた番組表をテレビ受信機に表示している(例えば、特許文献1)。そして、利用者は、横軸をチャンネル、縦軸を放送時刻として利用者毎に編集された番組表から所望の番組を選択し、視聴したり録画予約を行ったりする。
【0003】
一方、携帯電話端末に設けられた赤外線発光素子を使い、テレビ受像機等のリモコンとして携帯電話端末を利用可能とする製品が既に市販されており、これに関する提案も行われている(例えば、特許文献2)。携帯電話端末をテレビ受像機等のリモコンとして利用する場合には、携帯電話の通信回線を利用して番組情報を取得して、番組表を携帯電話端末の表示画面上に表示する。そして、その表示された番組表から所望の番組を選択することにより、該当する番組の視聴や予約を行うためのリモコン信号が携帯電話端末から出力される。また、携帯電話端末に設けられたBluetooth(登録商標)を使い、テレビ受信機等のリモコンとして利用可能とする場合も見られる(例えば、特許文献3)。

【0037】
(実施形態)
図1は、本発明による携帯無線通信端末を含むコンテンツ視聴システムの実施形態を示すブロック図である。
本実施形態のコンテンツ視聴システムは、テレビ受像機100と、STB200と、携帯無線通信端末300と、無線基地局400と、コンテンツ配信サーバ500と、レコメンドサーバ600と、認証課金サーバ700と、外部サーバ800と、無線LANルータ900とを備えている。なお、図1において、テレビ受像機100と、STB200と、携帯無線通信端末300と、無線LANルータ900とを囲む破線は、利用者の宅内に設けられていることを示すものである。
【0038】
テレビ受像機100は、地上デジタル放送に対応したコンテンツ受信装置であり、RF信号送受信部101と、ディスプレイ部102とを備えている。
RF信号送受信部101は、STB200のRF信号送受信部203と接続されており、コンテンツの送受信を行う。
ディスプレイ部102は、テレビ受像機100が有する不図示の受信部が放送波を介して受信した映像や、RF信号送受信部101を介して受信した映像等を表示する液晶ディスプレイ装置等の表示部である。
【0039】
STB200は、映像/制御信号送受信部201と、コンテンツ録画部202と、RF信号送受信部203と、リモコン信号受信部204とを備えたコンテンツ受信装置である。
映像/制御信号送受信部201は、ブロードバンド回線やケーブルテレビ回線を介して映像信号や制御信号をコンテンツ配信サーバ500との間で送受信する。本実施形態の映像/制御信号送受信部201は、無線LANルータ900を介した固定有線通信により、ブロードバンド回線やケーブルテレビ回線に接続されている。
コンテンツ録画部202は、映像/制御信号送受信部201により得たコンテンツを録画するメモリやハードディスク装置である。
RF信号送受信部203は、テレビ受像機100のRF信号送受信部101と接続されており、コンテンツの送受信を行う。
リモコン信号受信部204は、携帯無線通信端末300から送られたリモコン信号を受信する。なお、本実施形態では、リモコン信号受信部204は、赤外線のリモコン信号を受信するが、電波を使った近距離通信等を用いるものであってもよい。
本実施形態のテレビ受像機100は、単体でも地上デジタル放送等の放送波を受信して映像を表示できるが、以下では、STB200から得たコンテンツ等を表示するものとして説明する。
【0040】
携帯無線通信端末300は、携帯電話サービスを利用する携帯電話端末である。本実施形態の携帯無線通信端末300は、複数のアプリケーションをアプリケーション格納部310に格納しており、必要に応じてこれらアプリケーションを起動することにより、様々な機能を実現できる。本実施形態の携帯無線通信端末300は、リモコンアプリケーション310aを格納しており、このリモコンアプリケーション310aを起動することにより、STB200をリモートコントロールするリモコン信号を送信するリモコン制御手段としての機能を実現できる。
図2は、携帯無線通信端末300の構成を示すブロック図である。
図3は、携帯無線通信端末300の外観を示す図である。
本実施形態の携帯無線通信端末300は、リモコンアプリケーション起動部301と、通信部302と、表示操作部303と、リモコン信号送信部304と、コンテンツ評価投票部305と、コメント発信部306と、利用状況収集部307と、位置検出部308と、通信端末識別情報記憶部309と、アプリケーション格納部310とを備えている。

【0047】
通信部302は、外部と無線通信を行う。本実施形態の通信部302は、携帯電話サービスに用いられる無線通信回線を介して無線通信を行う他、外部と有線接続された無線LANルータを介して外部と無線通信を行うことができる。通信部302は、通信端末識別情報記憶部309に記憶されている携帯無線通信端末300に固有の通信端末識別情報を外部のレコメンドサーバ600に送信する。また、通信部302は、レコメンドサーバ600から通信端末識別情報に応じて送られたコンテンツ情報を受信する。携帯電話端末等の携帯無線通信端末は、通常、個人の利用者に紐付くことが多い。そこで、本実施形態では、利用者を特定するための情報として通信端末識別情報を用いている。
【0048】
ここで、コンテンツ情報とは、後述のコンテンツ配信サーバ500が配信するコンテンツに関する情報である。具体的には、利用者毎にレコメンドされた情報である。レコメンドされた情報とは、利用者に関連が高そうな情報や、利用者が関心を持ちそうな情報を選択して勧めるための情報等である。
例えば、利用者が父親である携帯無線通信端末300の通信端末識別情報により認証された場合、その父親がよく視聴しているコンテンツが野球中継であれば、野球に関連性の高いコンテンツや広告等をコンテンツ情報に含める。また、利用者が子供である携帯無線通信端末300の通信端末識別情報により認証された場合、その子供がよく視聴しているコンテンツがアニメーション作品であれば、アニメーション作品に関連性の高いコンテンツや教育関連のコンテンツ及び情報等をコンテンツ情報に含める。
【0049】
なお、コンテンツ情報には、レコメンドされたコンテンツに関する情報の他に、配信される全てのコンテンツに関する情報も付加してもよい。例えば、レコメンドされたお勧めの番組情報の他に、放送予定の番組全ての情報もコンテンツ情報に含めてもよい。その場合、どちらの情報を見るのかを利用者に選択してもらうようにするとよい。
なお、通信部302とレコメンドサーバ600との間の通信は、携帯電話サービス事業者が提供する無線通信回線を用いるが、無線LANルータ900を介して通信を行ってもよい。
【0050】
表示操作部303は、通信手段により得られたコンテンツ情報等の各種情報を表示する表示手段として機能する。また、表示操作部303は、表示されたコンテンツ情報の中から利用者が選択するコンテンツを操作入力する等の各種入力操作が可能な操作手段としても機能する。具体的には、本実施形態では、タッチパネル入力機能を持つ液晶表示装置を設けている。図3には、利用者「Aさん」に対してレコメンドされた情報として、3つのお勧めコンテンツが表示された例を示している。
【0051】
リモコン信号送信部304は、表示操作部303に表示された多チャンネル放送の番組表の中から操作入力されて選択されたコンテンツに応じてリモコン信号を外部のSTB200に送信する。上述したように、本実施形態では、リモコン信号送信部304は、赤外線のリモコン信号を送信する。

【0060】
コンテンツ配信サーバ500は、IPTV事業者又はケーブルテレビ事業者が有するコンテンツ発信装置であり、コンテンツの配信を行う。本実施形態のコンテンツ配信サーバ500は、フォーマット変換部501と、コンテンツ配信部502と、映像/制御信号送受信部503とを備えている。
フォーマット変換部501は、コンテンツを配信する配信経路に合わせてコンテンツのデータ形式を変換する。
コンテンツ配信部502は、映像/制御信号送受信部503を介してSTB200から得た制御信号に基づいて、STB200へコンテンツを配信する。
映像/制御信号送受信部503は、ブロードバンド回線やケーブルテレビ回線を介して映像信号や制御信号をSTB200との間で送受信する。
なお、コンテンツ配信サーバ500は、閉域網を介してレコメンドサーバ600、認証課金サーバ700、外部サーバ800と接続されている。
【0061】
レコメンドサーバ600は、携帯無線通信端末300から得た通信端末識別情報に基づいて、該当する利用者に対してレコメンドしたコンテンツ情報を生成し、生成したコンテンツ情報を携帯無線通信端末300に送る。本実施形態のレコメンドサーバ600は、コンテンツデータベース(以下、データベースをDBと表す)601と、広告/関連情報DB602と、ユーザプロファイルDB603と、EPGDB604と、配信コンテンツ生成部605と、レコメンドエンジン部606と、ユーザプロファイル収集部607とを備えている。

(ア-2)刊行物Bの記載
原査定において引用された特開2007-166365号公報(以下、「刊行物B」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。)

【0001】
本発明は、VOD(Video On Demand)サービスに対応したデジタルテレビ受信機の画面上にVODサービスの利用に必要な操作情報を表示する方法、及びその方法を採用したデジタルテレビ受信機に関する。

【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施の形態では、IP通信網を介して接続されたVOD配信センタのビデオサーバから、VODサービスを受信する機能を搭載したデジタルテレビ受信機が、HTMLブラウザを用いて、画面上にVOD操作情報を表示する方法について説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態におけるVODサービスシステムの構成図である。図1において、デジタルテレビ受信機100は、ホームルータ200を介して、アクセス網300に接続され、ユーザからのビデオ視聴リクエストに応じて、VOD配信センタ700内のビデオサーバ701に対して、ビデオ配信リクエストを送信する。
【0017】
ビデオサーバ701は、オンデマンドで映像コンテンツを配信し、デジタルテレビ受信機100で受信・再生される。アクセス網300は、ISP(Internet Service Provider)400を介してインターネット500に接続されており、デジタルテレビ受信機100は、インターネット上のWebサーバ600とも通信可能な構成となっている。

【0024】
次に、このようなデジタルテレビ受信機100において、VOD操作情報120を画面上に表示する方法について説明する。
VOD操作情報120とは、VODサービスを利用するにあたって、デジタルテレビ受信機100の画面上に表示する必要のある情報を指す。受動的なサービスであるテレビ放送とは異なり、VODサービスを利用するには、再生開始、早送り、巻戻し、一時停止といった視聴操作が必要であり、それらの操作ガイドを画面に表示する必要がある。また、ユーザの要求に応じて、VODコンテンツのタイトル情報や、現在の再生状態(早送り状態、巻戻し状態)を表示することも必要である。
【0025】
これらのVOD操作情報の表示データは、HTMLコンテンツとして記述することにより、HTMLブラウザ102を用いて、デジタルテレビ受信機100に表示することが可能である。本実施の形態では、プラグインアプリケーションをObjectタグで記述したHTMLコンテンツにVOD操作情報120を記述する。
【0026】
HTMLブラウザ102は、Webサーバ600にアクセスする際に、デジタルテレビ受信機100の端末識別情報をWebサーバ600に通知する。通知方法は、例えば、HTTPのヘッダに端末識別情報を書き込むことが考えられる。Webサーバ600は、その端末識別情報に基づき、デジタルテレビ受信機100に適したVOD操作情報120を記述したHTMLコンテンツを生成して送信する。HTMLブラウザ102は、受信したHTMLコンテンツを解釈し、デジタルテレビ受信機100の画面上にVOD操作情報120を表示する。
【0027】
このようなVOD操作情報の表示方法によれば、VODサービスのプロバイダ毎に異なるVOD操作情報を、デジタルテレビ受信機100に表示することが可能となる。
端末識別情報として、デジタルテレビ受信機100のメーカーあるいは機種情報を用いてもよい。この場合、VODサービスプロバイダは、各メーカー毎に異なるユーザインタフェースをユーザに提供することが可能となる。また、新機種で新たなユーザインタフェースを追加した場合にも柔軟に対応することが可能である。

(イ)刊行物に記載された発明
(イ-1)刊行物Aに記載された発明
以上の記載によれば、刊行物Aには次の発明(以下、刊行物A発明という。)が記載されている。((Aa)ないし(Ae)は当審において付与し、以下「構成要件(Aa)」等として引用する。)

(Aa)テレビ受像機とセットトップボックスと携帯無線通信端末とレコメンドサーバとコンテンツ配信サーバとを有するシステムであって、
(Ab)セットトップボックスは、テレビ受像機に対して、コンテンツ配信サーバから受信したコンテンツを送信し、表示するものであり、
(Ac)セットトップボックスは、上記テレビ受像器に対して送信するコンテンツの選択を、携帯無線通信端末から送信されたリモコン信号に基づいて行うものであり、
(Ad)携帯無線通信端末は、通信端末識別情報をレコメンドサーバに対して送信することにより、携帯無線通信端末の利用者に適したコンテンツ情報をレコメンドサーバから受信し、当該コンテンツ情報を表示し、
(Ae)携帯無線通信端末の利用者が、上記表示されたコンテンツ情報から所望のコンテンツを選択すると、選択されたコンテンツの情報がセットトップボックスにリモコン信号として送信されるシステム。

(イ-2)刊行物Bに記載された発明
以上の記載によれば、刊行物Bには次の発明(以下、刊行物B発明という。)が記載されている。((Ba)ないし(Bb)は当審において付与し、以下「構成要件(Ba)」等として引用する。)

(Ba)デジタルテレビ受信機とWebサーバとがネットワークで通信可能なシステムにおいて、
(Bb)デジタルテレビ受信機は、遠隔にあるWebサーバにデジタルテレビ受信機の端末識別情報を通知し、Webサーバは、その端末識別情報に基づき、デジタルテレビ受信機に適したVOD操作情報を記述したHTMLコンテンツを生成して送信することで、Webサーバから送信されたHTMLコンテンツを表示するデジタルテレビ受信機。

(ウ)対比
(ウ-A)刊行物A発明と、本願発明とを対比する。
(ウ-A-1)本願発明の構成要件(A)と刊行物A発明の構成要件(Aa)、(Ad)とを対比する。
刊行物A発明の携帯無線通信端末は、携帯無線通信端末の利用者に適したコンテンツ情報をレコメンドサーバから受信しているから、所定のコンテンツに関する情報を受信している点で、本願発明の構成要件(A)と対応している。
もっとも、本願発明では、受信するコンテンツに関する情報は、「コンテンツ」であるのに対し、刊行物A発明では、「コンテンツ情報」である点で相違する。

(ウ-A-2)本願発明の構成要件(B)と刊行物A発明の構成要件(Aa)、(Ac)とを対比する。
セットトップボックスと携帯無線通信端末とは、リモコン信号の送受信を行う関係であり、セットトップボックスは、テレビ受像機に対して、コンテンツ配信サーバから受信したコンテンツを送信し、表示する関係である。
上記リモコン信号の送受信を行う態様として、刊行物Aでは、「電波を使った近距離通信」(【0039】)でも良いことが開示されており、また従来例として、「携帯電話端末に設けられたBluetooth(登録商標)を使い、テレビ受信機等のリモコンとして利用可能とする場合も見られる」(【0003】)の記載があるから、上記リモコン信号の送受信として「Bluetooth」を採用することは、想定されている。
そして、「Bluetooth」を用いて、送受信を行う機器同士は、互いに識別情報をやりとりすることは技術常識であるから、刊行物Aの当該記載及び当該技術分野の技術常識を踏まえれば、携帯無線通信端末は、セットトップボックスから、識別可能な識別情報を取得している。
したがって、「当該通信装置と通信可能に接続された表示に関する装置から、当該表示に関する装置を識別可能な識別情報を取得する識別情報取得手段」を有している点で、刊行物A発明は対応している。
もっとも、「表示に関する装置」が、本願発明では「表示装置」であるのに対し、刊行物A発明では「セットトップボックス」である点で相違する。

(ウ-A-3)本願発明の構成要件(C)ないし(H)と刊行物A発明とを対比する。
刊行物A発明は、「識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において、表示されることが許可されているコンテンツ(許可コンテンツ)」に関する構成を有していないから、構成要件(C)ないし構成要件(H)を有していない。

(ウ-A-4)本願発明の構成要件(I)と刊行物A発明の構成要件(Ab)ないし(Ae)とを対比する。
刊行物A発明では、携帯無線通信端末とセットトップボックスとは近距離通信を行い、携帯無線通信端末にセットトップボックスを識別する情報を送信していることは、(ウ-A-2)で検討したとおりである。
そして、セットトップボックスは、「携帯無線通信端末の利用者が、上記表示されたコンテンツ情報から所望のコンテンツを選択すると、選択されたコンテンツの情報がセットトップボックスにリモコン信号として送信され」(構成要件(Ae))、「テレビ受像機に対して、コンテンツ配信サーバから受信したコンテンツを送信し、表示する」(構成要件(Ab))のであるから、「該通信装置から送出されたコンテンツに関する情報を受信して表示するための前記表示に関する装置」である。
もっとも、
「表示に関する装置」が、本願発明では「表示装置」であるのに対し、刊行物A発明では「セットトップボックス」である点、
「コンテンツに関する情報」が、本願発明では「コンテンツ」であるのに対し、刊行物A発明では「コンテンツ情報」である点、
で相違するのは、先に検討したとおりである。
以上まとめると、「表示に関する装置の近傍にある通信装置に自装置を識別可能な識別情報を送信し、該通信装置から送出されたコンテンツに関する情報を受信して表示する表示に関する装置であ」る点で、本願発明と刊行物A発明とは共通する。
もっとも、「表示に関する装置」が、本願発明では「表示装置」であるのに対し、刊行物A発明では「セットトップボックス」である点、
「コンテンツに関する情報」が、本願発明では「コンテンツ」であるのに対し、刊行物A発明では「コンテンツ情報」である点、
で相違する。

(ウ-A-5)本願発明の構成要件(J)と刊行物A発明の構成要件(Aa)、(Ab)とを対比する。
刊行物A発明は、テレビ受像機を有しており、テレビ受像器は、表示装置であって、テレビジョン番組を表示面に表示するテレビであるから、本願発明の表示装置と相違がない。
もっとも、表示装置が、本願発明では「上記表示装置」であるのに対し、刊行物Aでは、「上記表示に関する装置(セットトップボックス)に接続された表示装置」である点で相違する。

(ウ-A-6)本願発明の構成要件(K)と刊行物A発明の構成要件(Ab)、(Ad)とを対比する。
刊行物A発明のテレビ受像機は、セットトップボックスから、コンテンツが送信されることにより、コンテンツを表示しているから、「上記コンテンツは、上記表示面に表示されることを特徴とする表示装置」といえる。
もっとも、刊行物A発明では、
携帯無線通信端末がコンテンツを表示することはないから、「上記通信装置において表示されているコンテンツ」ではなく、また、
テレビ受像器は、コンテンツをテレビジョン番組と共に上記表示面に表示することも特定されていない、
点で、本願発明と相違する。

(ウ-A-7)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、本願発明と刊行物A発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
所定のコンテンツに関する情報を受信可能な通信装置であって、
当該通信装置と通信可能に接続された表示に関する装置から、当該表示に関する装置を識別可能な識別情報を取得する識別情報取得手段と、
表示に関する装置の近傍にある通信装置に自装置を識別可能な識別情報を送信し、該通信装置から送出されたコンテンツに関する情報を受信して表示する表示に関する装置であって、
表示装置は、テレビジョン番組を表示面に表示するテレビであり、
上記コンテンツは、上記表示面に表示されることを特徴とする表示装置。

(相違点)
相違点1
「表示に関する装置」が、本願発明では「表示装置」であるのに対し、刊行物A発明では「セットトップボックス」である点

相違点2
「コンテンツに関する情報」が、本願発明では「コンテンツ」であるのに対し、刊行物A発明では「コンテンツ情報」である点

相違点3
本願発明は、
「前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において、表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得するコンテンツ取得手段と、
前記コンテンツ取得手段によって取得された許可コンテンツを前記表示装置に表示させるために、当該許可コンテンツを前記表示装置に送出する第1のコンテンツ送出手段と、
前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において表示されることが許可されているか否かを、コンテンツごとに判定する第1の許否判定手段と、を備え、
前記第1の許否判定手段は、前記表示装置が通信可能に接続された時、前記通信装置が備えた表示部に現在表示されているコンテンツが、当該表示装置において表示されることが許可されているか否かを判定し、
前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていると判定されたコンテンツを、前記許可コンテンツとして取得し、
前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていないと判定される場合、当該表示装置において表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得することを特徴とする通信装置」
の構成を有しているのに対し、刊行物A発明は当該構成を有していない点

相違点4
「表示装置」が、本願発明では「上記表示装置」であるのに対し、刊行物Aでは、「上記表示に関する装置(セットトップボックス)に接続された表示装置」である点

相違点5
コンテンツが、本願発明では「上記通信装置において表示されているコンテンツ」であるのに対し、「上記通信装置において表示されているコンテンツ」ではない点

相違点6
コンテンツは、本願発明では「テレビジョン番組と共に上記表示面に表示される」のに対し、刊行物A発明では、当該特定事項を有さない点

(ウ-B)刊行物B発明と、本願発明とを対比する。
(ウ-B-1)本願発明の構成要件(A)と刊行物B発明の構成要件(Ba)とを対比する。
刊行物B発明のWebサーバは、デジタルテレビ受信機とネットワークで通信可能となっているから、通信装置ということができる。
もっとも、刊行物B発明のWebサーバは、コンテンツを受信していないから、この点で、本願発明と相違する。

(ウ-B-2)本願発明の構成要件(B)と刊行物B発明の構成要件(Bb)とを対比する。
刊行物B発明のWebサーバは、通信可能に接続されたデジタルテレビ受信機から、デジタルテレビ受信機の端末識別情報を通知されているから、「当該通信装置と通信可能に接続された表示装置から、当該表示装置を識別可能な識別情報を取得する識別情報取得手段」を有しており、本願発明の構成要件(B)を有している。

(ウ-B-3)本願発明の構成要件(C)ないし(H)と刊行物B発明とを対比する。
刊行物B発明は、「識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において、表示されることが許可されているコンテンツ(許可コンテンツ)」に関する構成を有していないから、構成要件(C)ないし構成要件(H)を有していない。

(ウ-B-4)本願発明の構成要件(I)と刊行物B発明の構成要件(Bb)とを対比する。
刊行物B発明では、デジタルテレビ受信機は、自身の端末識別情報をWebサーバに通知し、Webサーバから送信されたHTMLコンテンツを表示しているから、通信装置に自表示装置を識別可能な識別情報を送信し、該通信装置から送出されたコンテンツを受信して表示する表示装置といえる。
もっとも、通信装置が、本願発明では「表示装置の近傍にある」のに対し、刊行物B発明では、「表示装置の近傍にある」とはいえない点で相違する。

(ウ-B-5)本願発明の構成要件(J)と刊行物B発明の構成要件(Ba)とを対比する。
刊行物Bのデジタルテレビ受信機は、テレビジョン番組を表示面に表示するテレビであるから、刊行物B発明は本願発明の構成要件(J)を有している。

(ウ-B-6)本願発明の構成要件(K)と刊行物B発明の構成要件(Ba)とを対比する。
刊行物B発明のデジタルテレビ受信機は、HTMLコンテンツを表示しているから、上記コンテンツは、上記表示面に表示される表示装置である点で、本願発明の表示装置と対応している。
もっとも、刊行物B発明では、Webサーバがコンテンツを表示することは特定されていないから、上記コンテンツは、上記通信装置において表示されているコンテンツであり、上記テレビジョン番組と共に表示されていない点で、本願発明と相違する。

(ウ-B-7)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、本願発明と刊行物B発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
通信装置であって、
当該通信装置と通信可能に接続された表示装置から、当該表示装置を識別可能な識別情報を取得する識別情報取得手段と、
通信装置に自表示装置を識別可能な識別情報を送信し、該通信装置から送出されたコンテンツを受信して表示する表示装置であって、
上記表示装置は、テレビジョン番組を表示面に表示するテレビであり、
上記コンテンツは、上記表示面に表示されることを特徴とする表示装置。

(相違点)
相違点1
通信装置が、本願発明では「所定のコンテンツを受信可能な」通信装置であるのに対し、刊行物B発明では、「所定のコンテンツを受信可能」ではない点。

相違点2
本願発明は、
「前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において、表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得するコンテンツ取得手段と、
前記コンテンツ取得手段によって取得された許可コンテンツを前記表示装置に表示させるために、当該許可コンテンツを前記表示装置に送出する第1のコンテンツ送出手段と、
前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において表示されることが許可されているか否かを、コンテンツごとに判定する第1の許否判定手段と、を備え、
前記第1の許否判定手段は、前記表示装置が通信可能に接続された時、前記通信装置が備えた表示部に現在表示されているコンテンツが、当該表示装置において表示されることが許可されているか否かを判定し、
前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていると判定されたコンテンツを、前記許可コンテンツとして取得し、
前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていないと判定される場合、当該表示装置において表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得することを特徴とする通信装置」
の構成を有しているのに対し、刊行物B発明は当該構成を有していない点

相違点3
通信装置が、本願発明では「表示装置の近傍にある」のに対し、刊行物B発明では、「表示装置の近傍にある」とはいえない点

相違点4
コンテンツが、本願発明では「上記通信装置において表示されているコンテンツであり、上記テレビジョン番組と共に上記表示面に表示される」のに対し、刊行物B発明では、通信装置において表示されておらず、テレビジョン番組と共に上記表示面に表示されることも特定されていない点

(エ)判断
原査定の理由について検討する。
(エ-1)理由1について
上記(ウ)で検討したとおり、原査定で引用した、刊行物A、刊行物Bそれぞれに記載された発明と本願発明とを対比すれば、相違点があることは明白であり、原査定の理由1は存在しない。

(エ-2)理由2について
上記(ウ)で検討したとおり、原査定で引用した、刊行物A、刊行物Bそれぞれに記載された発明と本願発明とを対比したところ、共通する相違点として、
『本願発明は、
「前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において、表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得するコンテンツ取得手段と、
前記コンテンツ取得手段によって取得された許可コンテンツを前記表示装置に表示させるために、当該許可コンテンツを前記表示装置に送出する第1のコンテンツ送出手段と、
前記識別情報取得手段によって取得された識別情報により識別される表示装置において表示されることが許可されているか否かを、コンテンツごとに判定する第1の許否判定手段と、を備え、
前記第1の許否判定手段は、前記表示装置が通信可能に接続された時、前記通信装置が備えた表示部に現在表示されているコンテンツが、当該表示装置において表示されることが許可されているか否かを判定し、
前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていると判定されたコンテンツを、前記許可コンテンツとして取得し、
前記コンテンツ取得手段は、前記第1の許否判定手段によって許可されていないと判定される場合、当該表示装置において表示されることが許可されているコンテンツを、許可コンテンツとして取得することを特徴とする通信装置」
の構成を有しているのに対し、各刊行物に記載された発明は、当該構成を有していない』
という相違点が存在し、該相違点に相当する事項は当該技術分野における技術常識あるいは、当該技術分野において周知の事項ということもできないから、刊行物A発明、あるいは刊行物B発明に、当該相違点の構成を適用することは当業者が容易に想到することができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-11 
出願番号 特願2013-81560(P2013-81560)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福西 章人曽我 亮司  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 冨田 高史
渡邊 聡
発明の名称 通信装置、通信装置の制御方法、サーバ、表示装置、コンテンツ配信システム、および制御プログラム  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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