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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1326882 |
審判番号 | 不服2016-6991 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-12 |
確定日 | 2017-04-06 |
事件の表示 | 特願2014-185278号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月12日出願公開、特開2015- 27516号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年12月2日を出願日とする特願2010-269485号の一部を平成26年9月11日に新たに特許出願したものであって、平成27年7月28日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年9月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年2月22日付け(発送日:平成28年3月1日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成28年5月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、これに対して平成28年7月14日付けで前置報告がなされ、これに対して平成28年8月8日付けで上申書が提出されたものである。 第2 平成28年5月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年5月12日付けの手続補正(以下、本件補正という)を却下する。 [理由] 1.本件補正の概要 本件補正は特許請求の範囲の請求項1の補正を含むものであり、平成27年9月7日付け手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す)。 ) (補正前:平成27年9月7日付け手続補正) 「【請求項1】 周囲に複数の図柄が付された複数の回転リールと、 すべての回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、 各回転リールに対応して設けられ、かつ回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、 複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの役抽選を行う役抽選手段と、 役抽選手段による役抽選の結果およびストップスイッチの操作に基づいて、回転リールの回転を適位置で停止させる停止制御を行う停止制御手段と、 すべての回転リールが停止した際に、所定の役を構成する図柄の組み合せが有効入賞ライン上に停止表示されたことに基づいて役に入賞したと判定する入賞判定手段と、 通常演出状態、特別演出状態および特殊演出状態を含む複数の演出状態について演出状態を設定し、前記特別演出状態あるいは前記特殊演出状態では、前記役抽選で特定役が当選した場合に前記特定役を入賞させるための報知演出を演出装置に実行させる演出制御手段とを備え、 前記演出制御手段は、 前記通常演出状態において前記役抽選の結果が特定の結果となった場合に、前記通常演出状態を終了して前記特殊演出状態に設定するか否かを決定し、 前記特殊演出状態では、前記特別演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで加算させる処理を行い、 前記特殊演出状態の終了後、前記特別演出状態において、加算された前記遊技回数に達するまで遊技を行うことを特徴とする遊技機。」 (補正後:平成28年5月12日付け手続補正) 「【請求項1】 周囲に複数の図柄が付された複数の回転リールと、 すべての回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、 各回転リールに対応して設けられ、かつ回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、 複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの役抽選を行う役抽選手段と、 役抽選手段による役抽選の結果およびストップスイッチの操作に基づいて、回転リールの回転を適位置で停止させる停止制御を行う停止制御手段と、 すべての回転リールが停止した際に、所定の役を構成する図柄の組み合せが有効入賞ライン上に停止表示されたことに基づいて役に入賞したと判定する入賞判定手段と、 通常演出状態、特別演出状態および特殊演出状態を含む複数の演出状態について演出状態を設定し、前記特別演出状態あるいは前記特殊演出状態では、前記役抽選で特定役が当選した場合に前記特定役を入賞させるための報知演出を演出装置に実行させる演出制御手段とを備え、 前記演出制御手段は、 前記通常演出状態において前記役抽選の結果が特定の結果となった場合に、前記通常演出状態を終了して前記特殊演出状態に設定するか否かを決定し、 前記特殊演出状態では、前記特別演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで遊技が行われる度に加算させる処理を行い、 前記特殊演出状態の終了後、前記特別演出状態において、加算された前記遊技回数に達するまで遊技を行うことを特徴とする遊技機。」 2.補正の適否 (1)補正事項 上記補正は、補正前の請求項1に記載の 「前記特殊演出状態では、前記特別演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで加算させる処理を行い」を、 「前記特殊演出状態では、前記特別演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで遊技が行われる度に加算させる処理を行い」に補正するものである。 ここで、上記「遊技が行われる度に」という記載について、文言どおり「遊技が行われる度に」の意味に解釈する場合(A)と、 明細書の「【0258】 また、本実施の形態では、再遊技役押し順報知演出実行手段183は、第2ATAフラグ又は第2ATBフラグが設定されている場合であって、役抽選により、上記したいずれかの再遊技役に当選した場合に、加算する第3AT遊技の遊技回数をカウントする後述の第3AT遊技回数カウンタA186のカウント値が、第3AT遊技の遊技回数を保証する回数である「40」より小さいときには、リプレイAB押し順報知演出を実行する。そして、第3AT遊技回数カウンタA186のカウント値が「40」に達するまでは、リプレイAB押し順報知演出を実行する。 【0259】 また、本実施の形態では、再遊技役押し順報知演出実行手段183により、リプレイAB押し順報知演出が実行される場合には、後述する加算遊技回数決定手段184により、加算する第3AT遊技の遊技回数が決定される。そして、リプレイA役又はリプレイB役を構成する図柄の組み合わせが有効入賞ライン上に停止表示されると、第3AT遊技カウンタ制御手段により、第3AT遊技回数カウンタA186のカウント値に、加算遊技回数決定手段184により決定された遊技回数の値が加算される。これにより、第3AT遊技の遊技回数が、少なくとも、40回保証されることとなる。」 等の記載を参酌して、「リプレイAB押し順報知演出が実行される場合であって、リプレイA役又はリプレイB役を構成する図柄の組み合わせが有効入賞ライン上に停止表示されると、第3AT遊技の遊技回数の値が加算される」場合を実施の形態の1つとする、所定の報知演出が実行される場合に、その報知演出に従って遊技が行われる度に、という意味に解釈する場合(B)に分けて、補正の適否を検討する。 (2)文言通り「遊技が行われる度に」の意味に解釈する場合(A) (2-1)新規事項の追加にあたるかどうかについて 上記補正事項により、「前記特殊演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで加算させる処理を行う」ことについて、「遊技が行われる度に」加算させるとの限定がなされた。 請求人は、上記補正事項の根拠として、平成28年5月12日付け審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)本願発明の補正」において、以下の主張をしている。 「(2)本願発明の補正 本出願人は、同時に提出する手続補正書によって、特許請求の範囲及び明細書の補正を行った。 補正した請求項1の「前記特殊演出状態では、前記特別演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで遊技が行われる度に加算させる処理を行い、」の下線部の記載は、出願当初の明細書の段落番号「0437」の「決定した遊技回数に達するように、適宜、遊技回数を加算するようにしてもよい。」の記載を根拠とする。 」 そこで、上記補正事項の根拠について検討すると、出願当初の明細書の【0437】の「決定した遊技回数に達するように、適宜、遊技回数を加算するようにしてもよい。」という記載は、「遊技回数を所定の回数を超えるまで加算させる処理を行う」に関して、「適宜、遊技回数を加算するようにしてもよい」ことを示すにとどまり、「遊技が行われる度に加算させる処理を行う」ことを裏付けるものではない。 さらに、「遊技回数を加算する」ことに関する出願当初の明細書の他の記載(例えば、【0258】-【0259】、【0274】-【0277】、【0278】-【0282】、【0385】、【0389】、【0391】、【0397】、【0403】)を参照しても、「「リプレイAB押し順報知演出が実行される場合であって、リプレイA役又はリプレイB役を構成する図柄の組み合わせが有効入賞ライン上に停止表示された場合に」「遊技回数を加算する」ことが記載されているのみで、「遊技が行われる度に」「遊技回数を加算する」については記載されていない。 したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、また、これらすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 (2-2) 小括 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (3)「遊技が行われる度に」を「所定の報知演出が実行される場合、その報知演出に従って遊技が行われる度に」と解釈する場合(B) (3-1)限定的減縮について 上記補正事項により、「前記特殊演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで加算させる処理を行う」ことについて、「遊技が行われる度に」加算させるとの限定がなされた。 また、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。 (3-2)新規事項の追加にあたるかどうかについて 上記補正事項について、明細書の【0258】-【0259】には「リプレイAB押し順報知演出が実行される場合であって、リプレイA役又はリプレイB役を構成する図柄の組み合わせが有効入賞ライン上に停止表示されると、遊技回数の値が加算される」ことが記載されており、出願当初の明細書には「所定の報知演出が実行される場合、その報知演出に従って遊技が行われる度に」「遊技回数が加算される」ことが裏付けられているものといえる。 そうすると、本件補正は新規事項を追加するものではない。 (4) 小括 (3-1)、(3-2)より、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当するものであって、新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 本件補正について、上記2.(4) 小括のとおり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当し、かつ新規事項を追加するものではないとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物 原査定の拒絶の理由において提示された、本願出願遡及日前に日本国内において頒布された刊行物である、「銀河英雄伝説」、パチスロ必勝ガイド攻略年鑑2010、株式会社白夜書房、2010年2月1日発行、P.52-56(以下、刊行物という)には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ) (ア) スロットマシンの技術分野の技術常識を考慮すると、P.52右上のパチスロ機の正面図には、パチスロ機本体が、周囲に複数の図柄が付された3つの回転リールと、3つの回転リールの下方に、各回転リールに対応して設けられ、かつ回転リールの回転を停止するためのストップスイッチとを有し、ストップスイッチの左方には、すべての回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチを有することが図示されている。 (イ) 「本機の出玉増加を担うのは1Gあたり1・6枚増のART・銀河ラッシュ。突入の契機はビッグ中・通常時・AT中の赤7揃いと数多く存在し、ひとたび赤7が揃えば、そこからは1G連がスタート。赤7が1度揃うたびにARTゲーム数が33or99Gずつ上乗せされる仕組みとなっている。赤7の最大連チャン数は36連となっているので1度の赤7揃いで大量出玉を獲得することも充分可能となる。」(P.52右下段「一撃が魅力の銀河ラッシュ」の左隣り「止まらない1G連が出玉増加の鍵を握る」の欄の第7行から第17行) (ウ) 「ART突入契機 ART突入の契機は3パターン AT空戦アタック中 通常時から突入するAT状態 赤7が揃うとG.S.ラッシュへ」(P.52左下段 「ART突入契機」の囲み、及び当該囲みの右上段) (エ) 「1Gあたり1.6枚アップのART・銀河ラッシュ・・・・ART中の打ち方 ART中は基本的に押し順ナビが発生するため、ナビに従って消化すれば問題ない」(P.52右下部の「1Gあたり1.6枚アップのART・銀河ラッシュ」の記載、及びP.52右下段) (オ) 「ART・銀河ラッシュ突入&連チャンの流れ G.S.ラッシュ(CZ+ART)・・・この間は押し順ナビに従って消化・・・ 銀河ラッシュ(ART) ART中は押し順ナビに従って消化・・・(規定G数消化するまで継続)・・・規定G数消化後は敵将戦に移行」(P.53上段囲み内の最上行及び左欄並びに右側の「敵将戦」と記載された小囲みの左側) (カ) 「ART・銀河ラッシュ突入の流れは上カコミのとおりで、基本的にまずはG.S.ラッシュなる準備状態へ移行。ここでナビに従って消化していれば赤7が揃う状態となり、ひとたび赤7が揃ったなら、次ゲームから1G連がスタートすることとなる。赤7は1度揃うごとにARTゲーム数が33or99G増加し、この状態は通常リプレイが揃うまで継続(最大36連)。通常リプレイが揃うとG.S.ラッシュが終了して、次ゲームから銀河ラッシュがスタートする。・・・また、規定ゲーム数を消化した後に移行する敵将戦」(P.53右下段 「バトルに勝利すればループが発生する」の欄の上段第1行から下段第3行、下段第7-8行) (キ) 「通常時の留意点 通常時の打ち方は左リールにチェリー狙い・・・・DDT打法の手順は上記のとおりだが、チェリーを上段に押した場合は配列上スイカを引き込むことができないため、取りこぼしが発生してしまう」、「通常時・小役確率」という表において、「役 解析値」という欄の下に「中段チェリー・8枚 1/204.80?109.22」「スイカ3枚 1/113.77?78.76」という記載がある(P.53下段囲み内の第1-2行、囲み内の中段第1-2行、囲み内の左中程) (ク) 「また、通常時はそれと同時に状態移行&空戦アタック突入抽選も行われている。前者は「右下がりリプレイ」「右上がりリプレイ」「スイカ」「中段チェリー」の4役が契機となっており、いずれも低確からいきなり前兆へ移行するケースは稀。高確からであればスイカ時の25%、中段チェリーの50%が前兆へ移行となるため、契機役を引くタイミングが重要となってくるだろう。後者に関しては「上段リプレイ揃い」が契機となり、現在獲得しているマイル数に応じて突入抽選が行われる。」(P.54右上段 「連チャンの仕組み」の左隣り「リプレイのラインでその役割が変化する」の欄の上段第8行から下段第6行) (ケ) 「連チャンテーブル G.S.ラッシュ突入時の赤7連チャン数」において、「連チャンテーブル」の最左カラムに「連チャン数」として「2、3、4-6、7、8-12、13,14?35、36、平均」という記載がある(P.55下段 「連チャンテーブル G.S.ラッシュ突入時の赤7連チャン数」)。 (コ) (キ)の記載から、通常時の小役として8枚払出しする中段チェリーという小役と3枚払出しするスイカという小役があり、小役確率があることから、複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの役抽選を行うこと、そのための役抽選手段があることは明らかである。また、(キ)の記載から、押し方によって取りこぼしが発生する、すなわち役に入賞しない場合がある、ことがいえるから、役抽選を行うだけでなく、役に入賞したことを判定するための入賞判定手段があることも明らかである。 また、パチスロ機における技術常識から、(ア)に記載のストップスイッチの操作に応じて回転リールの回転を停止させる停止制御を行う停止制御手段があることは明らかである。 (サ) (ウ)の「AT空戦アタック中 通常時から突入するAT状態」、(ク)の「通常時は、空戦アタック突入抽選も行われている。上段リプレイ揃いが契機となり、突入抽選が行われる。」の記載から、刊行物には「通常時」と「AT状態であるAT空戦アタック」という状態があり、「通常時、上段リプレイ揃いが契機となり、通常時からAT状態であるAT空戦アタックに突入するかどうかの空戦アタック突入抽選を行う」ことが記載されているものといえる。 また、AT状態とは「役抽選で特定役が当選した場合にこの特定役を入賞させる報知演出を行う状態」であることから、「AT状態であるAT空戦アタックは、役抽選で特定役が当選した場合にこの特定役を入賞させる報知演出を行う状態であ」ることがいえる。 さらに、(ウ)の「AT空戦アタック中 通常時から突入するAT状態 赤7が揃うとG.S.ラッシュへ」の記載、(オ)の「G.S.ラッシュ(ART(CZ+ART)」の記載、(カ)の「G.S.ラッシュへ移行」の記載から、刊行物には「CZ+ARTであるG.S.ラッシュ」という状態があること、「AT空戦アタック中に赤7が揃うとCZ+ARTであるG.S.ラッシュへ移行する」ことが記載されているものといえる。 (シ) (オ)の「G.S.ラッシュ(CZ+ART) この間は押し順ナビに従って消化」の記載から、刊行物には「CZ+ARTであるG.S.ラッシュ」には「押し順ナビ」があることが記載されているといえる。 また、(カ)の「G.S.ラッシュへ移行。ここでナビに従って消化していれば赤7が揃う状態となり、ひとたび赤7が揃ったなら、次ゲームから1G連がスタートすることとなる。赤7は1度揃うごとにARTゲーム数が33or99G増加し、この状態は通常リプレイが揃うまで継続(最大36連)。」の記載から、「CZ+ARTであるG.S.ラッシュの間、ナビに従って消化していれば赤7が揃う状態となり、ひとたび赤7が揃ったなら、次ゲームから1G連がスタートすることとなり、赤7は1度揃うごとにARTゲーム数が33or99G増加し、この状態は通常リプレイが揃うまで継続(最大36連)」させることが記載されており、(イ)の「赤7が1度揃うたびにARTゲーム数が33or99Gずつ上乗せされる仕組みとなっている。赤7の最大連チャン数は36連となっている」の記載から、赤7が1度揃う度にARTゲーム数が33or99G増加する状態が継続することを「赤7連チャン」と称すること、(ケ)の「G.S.ラッシュ突入時の赤7連チャン数」および「連チャンテーブル」の「連チャン数」として「2、3、4-6、7、8-12、13,14?35、36、平均」という記載があることから、赤7連チャン数の最小値が2であること、すなわち、赤7連チャンは少なくとも2回継続させることが記載されているものと認められる。 (ス) (カ)の「通常リプレイが揃うとG.S.ラッシュが終了して、次ゲームから銀河ラッシュがスタート」の記載から、刊行物には「通常リプレイが揃うとG.S.ラッシュが終了して、次ゲームから銀河ラッシュをスタート」することが記載されているといえる。 (セ) (オ)の「銀河ラッシュ(ART) ART中は押し順ナビに従って消化 (規定G数消化するまで継続) 規定G数消化後は敵将戦に移行」の記載、(カ)の「規定ゲーム数を消化した後に移行する敵将戦」の記載から、刊行物には「ARTである銀河ラッシュ」という状態があり、「ARTである銀河ラッシュ」には「押し順ナビ」があること、「ARTである銀河ラッシュにおいて、ART中は押し順ナビに従って消化し、規定ゲーム数を消化した後敵将戦に移行する」ことが記載されているといえる。 (ソ) 上記(ス)(セ)から、刊行物には「通常時」「AT状態である AT空戦アタック」「CZ+ARTであるG.S.ラッシュ」「ARTである銀河ラッシュ」という状態が記載されており、またある状態において何らかの演出がなされることはスロットマシンの技術分野の技術常識であることから、これらの状態は「演出状態」ということできる。 上記(ア)?(ケ)の記載事項及び上記(コ)?(ソ)の認定事項から、 刊行物には、 「周囲に複数の図柄が付された3つの回転リールと(記載事項(ア))、 すべての回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと(記載事項(ア))、 各回転リールに対応して設けられ、かつ回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと(記載事項(ア))、 複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの役抽選を行う役抽選手段と(認定事項(コ))、 回転リールの回転を停止させる停止制御を行う停止制御手段と(認定事項(コ))、 役に入賞したことを判定する入賞判定手段と(認定事項(コ))、を備え、 通常時、AT状態であるAT空戦アタック、CZ+ARTであるG.S.ラッシュ、ARTである銀河ラッシュを含む複数の演出状態について演出状態を設定し(認定事項(ソ))、 AT状態であるAT空戦アタックは、役抽選で特定役が当選した場合にこの特定役を入賞させる報知演出を行う状態であり(認定事項(サ))、CZ+ARTであるG.S.ラッシュ、ARTである銀河ラッシュでは押し順ナビがあり(認定事項(シ)(セ))、 通常時、上段リプレイ揃いが契機となり、通常時からAT状態であるAT空戦アタックに突入するかどうかの空戦アタック突入抽選を行い(認定事項(サ))、 AT空戦アタック中に赤7が揃うとCZ+ARTであるG.S.ラッシュへ移行させ(認定事項(サ))、 CZ+ARTであるG.S.ラッシュの間、ナビに従って消化していれば赤7が揃う状態となり、ひとたび赤7が揃ったなら、次ゲームから1G連がスタートすることとなり、赤7が1度揃う度にARTゲーム数が33or99G増加し、この状態が継続する赤7連チャンが、通常リプレイが揃うまで、少なくとも2回継続(最大36連)し(認定事項(シ))、 通常リプレイが揃うとG.S.ラッシュが終了して次ゲームから銀河ラッシュをスタートし(認定事項(ス))、 ARTである銀河ラッシュにおいて、ART中は押し順ナビに従って消化し、規定ゲーム数を消化した後敵将戦に移行することを行う(認定事項(セ))、 パチスロ機(記載事項(ア)。」 いう発明(以下、刊行物記載の発明という)が開示されていると認める。 (2)本件補正発明と刊行物記載の発明との対比 本件補正発明と刊行物記載の発明とを対比する。 (ア)刊行物記載の発明における「周囲に複数の図柄が付された3つの回転リール」「すべての回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチ」「各回転リールに対応して設けられ、かつ回転リールの回転を停止するためのストップスイッチ」「複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの役抽選を行う役抽選手段」は、本件補正発明の「周囲に複数の図柄が付された複数の回転リール」「すべての回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチ」「各回転リールに対応して設けられ、かつ回転リールの回転を停止するためのストップスイッチ」「複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの役抽選を行う役抽選手段」に相当する。 (イ)刊行物記載の発明における「回転リールの回転を停止させる停止制御を行う停止制御手段」は、役抽選の結果及びストップスイッチの操作に基づいて、回転リールの回転を適位置で停止させることは明らかであり、本件補正発明の「役抽選手段による役抽選の結果およびストップスイッチの操作に基づいて、回転リールの回転を適位置で停止させる停止制御を行う停止制御手段」に相当する。 (ウ)刊行物記載の発明における「入賞判定手段」は、すべての回転リールが停止した際に、所定の役を構成する図柄の組み合せが有効入賞ライン上に停止表示されたことに基づいて役に入賞したことを判定することは明らかであり、本件補正発明の「入賞判定手段」に相当する。 (エ)刊行物記載の発明における「通常時」、「AT状態であるAT空戦アタック」及び「CZ+ARTであるG.S.ラッシュ」、「ARTである銀河ラッシュ」について検討する。 刊行物記載の発明における、「AT状態であるAT空戦アタック」は、役抽選で特定役が当選した場合にこの特定役を入賞させるための報知演出を行う状態であり、また、「CZ+ARTであるG.S.ラッシュ」「ARTである銀河ラッシュ」は、いずれも「押し順ナビ」を行うものであるが、「押し順ナビ」は、役抽選で特定役が当選した場合にこの特定役を入賞させるための報知演出の一種であることから、刊行物記載の発明における「AT状態であるAT空戦アタック」「CZ+ARTであるG.S.ラッシュ」「ARTである銀河ラッシュ」において、「役抽選で特定役が当選した場合にこの特定役を入賞させるための報知演出を行う」ことは、本件補正発明の「役抽選で特定役が当選した場合に前記特定役を入賞させるための報知演出を演出装置に実行させる」という処理を行うことに相当する。 刊行物記載の発明は、通常時、上段リプレイ揃が契機となり、AT状態であるAT空戦アタックに突入するかどうかの空戦アタック突入抽選を行い、空戦アタック中に赤7が揃うとCZ+ARTであるG.S.ラッシュなる準備状態へ移行する。そして、G.S.ラッシュではひとたび赤7が揃ったなら、次ゲームから1G連がスタートし、赤7が1度揃う度にARTゲーム数が33or99G増加し、この状態が継続する赤7連チャンが少なくとも2回継続することから、G.S.ラッシュでは少なくとも66(33×2)G以上、すなわち65を超える回数まで、赤7が1度揃う度にARTである銀河ラッシュの回数であるARTゲームの遊技回数が加算され、G.S.ラッシュが終了して銀河ラッシュがスタートすると、規定ゲーム数である加算された分のARTゲームの遊技回数分遊技を行うものといえる。 ここで、「AT状態であるAT空戦アタックとCZ+ARTであるG.S.ラッシュを合わせた状態」を考えると、AT空戦アタックとG.S.ラッシュがいずれも役抽選で特定役が当選した場合にこの特定役を入賞させるための報知演出を行う状態であるから、この状態もまた「役抽選で特定役が当選した場合に特定役を入賞させるための報知演出を行う状態」であり、通常時、上段リプレイ揃いが契機となり、「AT状態であるAT空戦アタックとCZ+ARTであるG.S.ラッシュを合わせた状態」に突入するかどうかの抽選を行い、この状態に突入して1G連がスタートしたとき、この状態の終了後に行われるARTである銀河ラッシュにおいて行われるARTゲームの遊技回数を、少なくとも65回を超えるまで赤7が揃う遊技が行われる度に加算させるということができる。 以上を総合すると、刊行物記載の発明における「AT状態であるAT空戦アタックとCZ+ARTであるG.S.ラッシュを合わせた状態」は、「役抽選で特定役が当選した場合に特定役を入賞させるための報知演出を行う状態」であり、「通常演出状態において役抽選の結果が上段リプレイ揃いという特定の結果となった場合に、前記通常演出状態を終了して設定されるか否かを決定される状態」であり、「終了後に行われる状態で行われる遊技回数を、所定の回数を超えるまで、赤7が揃う遊技が行われる度に加算させる処理を行う状態」であることから、本件補正発明の「特殊演出状態」に相当し、刊行物記載の発明における「通常時」は本件補正発明の「通常演出状態」に相当する。 また、刊行物記載の発明における「ARTである銀河ラッシュ」は、「AT状態であるAT空戦アタックとCZ+ARTであるG.S.ラッシュを合わせた状態」が終了した後、規定ゲーム数である該状態で加算させた遊技回数に達するまで遊技を行う状態であることから、本件補正発明の「特別演出状態」に相当する。 さらに、刊行物記載の発明における「通常時、AT状態であるAT空戦アタック、CZ+ARTであるG.S.ラッシュ、ARTである銀河ラッシュを含む複数の演出状態について演出状態を設定」することは、本件補正発明の「複数の演出状態についての演出状態を設定」することに相当する。 そして、刊行物記載の発明においても、本件補正発明同様の「通常演出状態」「特殊演出状態」「特別演出状態」を有し、「役抽選で特定役が当選した場合に前記特定役を入賞させるための報知演出を演出装置に実行させる」処理、「複数の演出状態についての演出状態を設定」する処理を行う以上、これらの処理を行うための手段があることは明らかであるが、これが本件補正発明の「演出制御手段」に相当する。 (オ)刊行物記載の発明における「パチスロ機」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。 以上のことから、本件補正発明と刊行物記載の発明は一致し、相違点はない。また、仮に存在していたとしても、本件補正発明は、刊行物記載の発明に基づき当業者が容易になし得たものである。 (4)小括 したがって、本件補正発明は、刊行物記載の発明と同一の発明であるから、特許法第29条第1項第3項の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるか、仮にそうでないとしても、特許法特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年9月7日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1.において記載した次のとおりのものである。 「【請求項1】 周囲に複数の図柄が付された複数の回転リールと、 すべての回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、 各回転リールに対応して設けられ、かつ回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、 複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの役抽選を行う役抽選手段と、 役抽選手段による役抽選の結果およびストップスイッチの操作に基づいて、回転リールの回転を適位置で停止させる停止制御を行う停止制御手段と、 すべての回転リールが停止した際に、所定の役を構成する図柄の組み合せが有効入賞ライン上に停止表示されたことに基づいて役に入賞したと判定する入賞判定手段と、 通常演出状態、特別演出状態および特殊演出状態を含む複数の演出状態について演出状態を設定し、前記特別演出状態あるいは前記特殊演出状態では、前記役抽選で特定役が当選した場合に前記特定役を入賞させるための報知演出を演出装置に実行させる演出制御手段とを備え、 前記演出制御手段は、 前記通常演出状態において前記役抽選の結果が特定の結果となった場合に、前記通常演出状態を終了して前記特殊演出状態に設定するか否かを決定し、 前記特殊演出状態では、前記特別演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで加算させる処理を行い、 前記特殊演出状態の終了後、前記特別演出状態において、加算された前記遊技回数に達するまで遊技を行うことを特徴とする遊技機。」 2.拒絶理由通知の概要 平成27年7月28日付け拒絶理由通知は、本願発明は、上記刊行物である「銀河英雄伝説」、パチスロ必勝ガイド攻略年鑑2010、株式会社白夜書房、2010年2月1日発行、P.52-56に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3項に該当し特許を受けることができない、及び刊 行物記載の発明に基づき特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 3.刊行物記載の発明 刊行物記載の発明の認定は前記「第2 平成28年5月12日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、本件補正発明における「前記特殊演出状態では、前記特別演出状態で行われる遊技回数を所定の回数を超えるまで加算させる処理」について、前記第2の2.に記載したように「遊技が行われる度に」という限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2に記載したとおり、刊行物記載の発明と同一の発明であるか、刊行物記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物記載の発明と同一の発明であるか、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明であるか、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-02-02 |
結審通知日 | 2017-02-07 |
審決日 | 2017-02-20 |
出願番号 | 特願2014-185278(P2014-185278) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 史彬、鶴岡 直樹、生駒 勇人 |
特許庁審判長 |
本郷 徹 |
特許庁審判官 |
川崎 優 齋藤 智也 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人太陽国際特許事務所 |
代理人 | 黒田 博道 |