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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B41J 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 B41J 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 B41J 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) B41J |
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管理番号 | 1326949 |
異議申立番号 | 異議2016-700390 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-05-02 |
確定日 | 2017-02-24 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5804922号発明「印刷装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5804922号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5804922号の請求1?3項に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第5804922号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成23年12月7日に特許出願され、平成27年9月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人伊村友彰により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年6月16日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である同年8月19日付けで意見書の提出がなされ、さらに当審において平成28年9月28日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、その指定期間内である同年12月2日付けで意見書の提出及び訂正の請求がなされたものである。なお、特許異議申立人伊村友彰に対して、上記訂正の請求について意見を求めたが、意見書の提出はなされなかった。 第2.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 特許請求の範囲の請求項1の 「上記高さ調節機構と、上記位置固定機構とが同一直線上にある」を、 「上記高さ調節機構と、上記位置固定機構とが同一直線上にあり、同一直線上にある上記高さ調節機構と上記位置固定機構とが複数箇所に設けられている」(下線は審決で付した。以下同じ。)と訂正する。 2.訂正の適否についての判断 訂正事項は、高さ調節機構、及び位置固定機構の設置箇所に関して、具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項は、願書に添付した明細書(段落【0030】)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。 第3.特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明、並びに請求項2、及び3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明3」という。)。 「【請求項1】 被記録媒体を載せる載置台と、 上記載置台を支持する支持台と、 上記支持台に対する上記載置台の高さを調節する高さ調節機構と、 上記高さ調節機構で調節された高さにて、上記支持台に対する上記載置台の位置を固定する位置固定機構と、を備え、 調節のために上記高さ調節機構を操作する部位と、固定のために上記位置固定機構を操作する部位とが、上記載置台からみて同じ側にあり、 上記高さ調節機構には、内側貫通口が設けられており、当該内側貫通口は、上記位置固定機構を貫通させる透孔となっており、上記位置固定機構が、上記高さ調節機構の上記内側貫通口に挿入されることで、上記高さ調節機構と、上記位置固定機構とが同一直線上にあり、同一直線上にある上記高さ調節機構と上記位置固定機構とが複数箇所に設けられていることを特徴とする印刷装置。 【請求項2】 被記録媒体を載せる載置台と、 上記載置台を支持する支持台と、 上記支持台に対する上記載置台の高さを調節する高さ調節機構と、 上記高さ調節機構で調節された高さにて、上記支持台に対する上記載置台の位置を固定する位置固定機構と、を備え、 調節のために上記高さ調節機構を操作する部位と、固定のために上記位置固定機構を操作する部位とが、上記載置台からみて同じ側にあり、 上記高さ調節機構は、上記載置台に設けられた高さ調節ネジ用貫通口を通り、自ネジの側壁が上記高さ調節ネジ用貫通口の内壁に螺合するとともに、上記支持台に当接する当接部を備えている高さ調節ネジであり、 上記高さ調節ネジを回転させることにより、上記当接部が上記載置台から上記支持台側に突出する突出高さが調節され、上記支持台に対する上記載置台の高さが調節されるようになっており、 上記位置固定機構は、上記載置台に設けられた位置固定ネジ用貫通口を通る位置固定ネジであることを特徴とする印刷装置。 【請求項3】 上記高さ調節ネジ用貫通口と上記位置固定ネジ用貫通口とは同一の貫通口であり、 上記高さ調節ネジには、上記位置固定ネジ用貫通口の深さ方向に平行な直線を中心軸とする内側貫通口が設けられており、 上記位置固定ネジは、径が上記内側貫通口の径より大きい鍔部、及び上記内側貫通口を貫通し、上記支持台に設けられた雌ネジに螺合する延設部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。」 2.取消理由(決定の予告)の概要 当審において、訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成28年9月28日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 訂正前の請求項1に係る発明は、甲1、及び2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同項に係る特許は、取り消されるべきものである。 また、訂正前の請求項2、及び3に係る発明は、甲1、及び2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由)によっては、本件請求項2、及び3に係る特許を取り消すことはできない。 3.甲各号証の記載 (1)甲1号証 甲1号証(特開2009-90640号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、長尺状のターゲットとしての連続紙12を繰り出す繰り出し部13と、該繰り出し部13から繰り出された連続紙12に順次印刷を行って乾燥する本体部14と、該本体部14で印刷が行われて乾燥された連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。すなわち、本体部14は直方体状の本体ケース16を備えており、連続紙12の搬送方向において上流側となる本体ケース16の左側に繰り出し部13が配設されるとともに下流側となる本体ケース16の右側に巻き取り部15が配設されている。」(段落【0021】) イ.「図1に示すように、本体部14の本体ケース16内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース16内を上下に区画する平板状のベース部材としての基台30が設けられており、本体ケース16内における基台30よりも上側の領域は連続紙12に印刷を行うための印刷室31となっている。一方、本体ケース16内における基台30よりも下側の領域には、左右方向に並ぶように区画された3つの区画室33,34,35が形成されている。なお、これら3つの区画室は、左から順に第1区画室33、第2区画室34、第3区画室35とされている。」(段落【0027】) ウ.「次に、プラテン48の支持構造について詳述する。 図5及び図6に示すように、プラテン48は、複数の支承部材としてのジャッキボルト47を介して基台30上に支持されている。プラテン48の後端縁部には左右方向において互いに等間隔に並ぶように平面視で円形の複数(本実施形態では6つ)の支持孔110が上下に貫通形成されており、プラテン48の後端縁部における6つの支持孔110が形成された部位は左側から順に支持部a?fとされている。」(段落【0067】) エ.「基台30におけるプラテン48の各支持部a?lと対応する位置にはそれぞれ雌ねじ部としての雌ねじ孔30aが上下に貫通形成されており、該各雌ねじ孔30aには下側からジャッキボルト47における支柱部としての軸部47aがそれぞれ螺入されている。すなわち、各ジャッキボルト47の軸部47aが外周面に有している雄ねじ部47bは基台30の各雌ねじ孔30aに対してそれぞれ螺合しており、各ジャッキボルト47の軸部47aの先端部(上端部)は基台30よりも上側に真っ直ぐに延びている。」(段落【0070】) オ.「そして、雌ねじ孔30aに対してジャッキボルト47を螺進または螺退させることにより、基台30から上側に突出するジャッキボルト47の軸部47aの長さを調節することが可能となっている。したがって、ジャッキボルト47の軸部47aは、基台30によって上下方向に移動自在に支持されている。」(段落【0071】) カ.「(プラテン48の支持部aにおける支持構造) 図6に示すように、プラテン48の支持部aにおける下面には、該支持部aに対応するジャッキボルト47の軸部47aの先端面(上端面)47cが当接しており、該先端面47cにおける中心部には雌ねじ孔47dが形成されている。プラテン48の支持部aにおける支持孔110には上側から支持機構を構成する押止部材としてのトラスねじ112が挿入されている。そして、トラスねじ112の支持部としての軸部112aは支持孔110の小孔部110bに挿通されてジャッキボルト47の雌ねじ孔47dに強く螺入されている。」(段落【0073】) キ.「すなわち、プラテン48は、支持部aにおいて、トラスねじ112の頭部112bの下面112cとジャッキボルト47の軸部47aの先端面47cとで挟圧されている。したがって、プラテン48は、支持部aにおいて支持機構(ジャッキボルト47及びトラスねじ112)により完全に固定された状態で支持されている。」(段落【0075】) ク.図6から、以下の事項が看取できる。 ジャッキボルト47とトラスねじ112とは、同一直線状にある。 これらの記載を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「連続紙12を繰り出す繰り出し部13と、該繰り出し部13から繰り出された連続紙12に順次印刷を行って乾燥する本体部14と、該本体部14で印刷が行われて乾燥された連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えているインクジェット式プリンタ11において、 本体部14の本体ケース16内には、基台30が設けられており、 プラテン48は、ジャッキボルト47を介して基台30上に支持されており、支持孔110が形成された部位は支持部aとされ、 基台30におけるプラテン48の支持部aと対応する位置には雌ねじ孔30aが上下に貫通形成されており、該雌ねじ孔30aには下側からジャッキボルト47における軸部47aがそれぞれ螺入されて、そして、雌ねじ孔30aに対してジャッキボルト47を螺進または螺退させることにより、基台30から上側に突出するジャッキボルト47の軸部47aの長さを調節することが可能となっており、 プラテン48の支持部aにおける下面には、該支持部aに対応するジャッキボルト47の軸部47aの先端面(上端面)47cが当接しており、該先端面47cにおける中心部には雌ねじ孔47dが形成されて、プラテン48の支持部aにおける支持孔110には上側からトラスねじ112が挿入されおり、 プラテン48は、支持部aにおいて、トラスねじ112の頭部112bの下面112cとジャッキボルト47の軸部47aの先端面47cとで挟圧されて、ジャッキボルト47及びトラスねじ112により完全に固定された状態で支持されており、 ジャッキボルト47とトラスねじ112とは、同一直線状にあるインクジェット式プリンタ11。」 (2)甲2号証 甲2号証(特開平10-100459号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「第1の方向に伸びた発熱素子アレイを有する基板と、この基板が下面に固定され、上部に複数の放熱フィンが第1の方向に配列されたアルミ基板とを備えたサーマルヘッドにおいて、 前記放熱フィンの全て又は所定個数おきに、放熱フィンの上面から垂直方向に伸びた状態で形成された第1の雌ネジと、 前記放熱フィンの上面に重ねられた基準板と、 前記第1の雌ネジよりもネジ径が大きく、これに対面するように基準板に形成された第2の雌ネジと、 前記第2の雌ネジに螺合し、その先端が放熱フィンの上面を下方に押圧する外側調整ネジと、 前記外側調整ネジの中央を貫通するように形成された穴と、 前記穴を介して第1の雌ネジに螺合し、放熱フィンを基準板に向けて引き上げて放熱フィンの上面が外側調整ネジの先端から離れないようにする内側調整ネジとを設けたことを特徴とする発熱素子アレイの平面性調整機構。」(【請求項1】) イ.「【発明の属する技術分野】 本発明は、サーマルプリンタに用いられている発熱素子アレイの平面性を調整する調整機構、及び平面性を測定する測定装置に関するものである。」(段落【0001】) ウ.図1から、以下の事項が看取できる。 調節のために外側調整ネジを操作する部位と、内側調整ネジを操作する部位とが、発熱素子アレイからみて同じ側にある。 上記の記載を総合すると、甲2号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「第1の方向に伸びた発熱素子アレイを有する基板と、この基板が下面に固定され、上部に複数の放熱フィンが第1の方向に配列されたアルミ基板とを備えたサーマルヘッドを用いるサーマルプリンタにおいて、 前記放熱フィンの全て又は所定個数おきに、放熱フィンの上面から垂直方向に伸びた状態で形成された第1の雌ネジと、 前記放熱フィンの上面に重ねられた基準板と、 前記第1の雌ネジよりもネジ径が大きく、これに対面するように基準板に形成された第2の雌ネジと、 前記第2の雌ネジに螺合し、その先端が放熱フィンの上面を下方に押圧する外側調整ネジと、 前記外側調整ネジの中央を貫通するように形成された穴と、 前記穴を介して第1の雌ネジに螺合し、放熱フィンを基準板に向けて引き上げて放熱フィンの上面が外側調整ネジの先端から離れないようにする内側調整ネジとを設けており、 外側調整ネジを操作する部位と、内側調整ネジを操作する部位とが、発熱素子アレイからみて同じ側にある発熱素子アレイの平面性調整機構を用いるサーマルプリンタ。」 4.判断 (1)本件特許発明1について ア.対比 本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、 後者における「連続紙12」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「被記録媒体」に相当し、以下同様に、「プラテン48」は「載置台」に、「基台30」は「支持台」に、「インクジェット式プリンタ11」は「印刷装置」に、それぞれ相当する。 また、後者における「プラテン48」は、本体部14の本体ケース16内の基台30上に支持されて、本体部14において連続紙12に印刷を行っているから、「連続紙12を載せている」といえる。 また、後者における「ジャッキボルト47」は、プラテン48を基台30上に支持して、基台30に上下に貫通形成された雌ねじ孔30aに螺入されて、雌ねじ孔30aに対してジャッキボルト47を螺進または螺退させることにより、基台30から上側に突出するジャッキボルト47の軸部47aの長さを調節しているから、「基台30(支持台)に対するプラテン48(載置台)の高さを調節する高さ調節機構」に相当する。 また、後者における「トラスねじ112」は、プラテン48をジャッキボルト47と挟圧して固定された状態で支持しており、また、「ジャッキボルト47」は、プラテン48を基台30上に支持して、基台30に上下に貫通形成された雌ねじ孔30aに螺入されて、雌ねじ孔30aに対してジャッキボルト47を螺進または螺退させることにより、基台30から上側に突出するジャッキボルト47の軸部47aの長さを調節しているから、後者における「トラスねじ112」は、「ジャッキボルト47(高さ調節機構)で調節された高さにて、基台30(支持台)に対するプラテン48(載置台)の位置を固定する位置固定機構」に相当する。 したがって、両者は、 「被記録媒体を載せる載置台と、 上記載置台を支持する支持台と、 上記支持台に対する上記載置台の高さを調節する高さ調節機構と、 上記高さ調節機構で調節された高さにて、上記支持台に対する上記載置台の位置を固定する位置固定機構と、を備え、 上記高さ調節機構と、上記位置固定機構とが同一直線上にある印刷装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本件特許発明1においては、「調節のために高さ調節機構を操作する部位と、固定のために位置固定機構を操作する部位とが、載置台からみて同じ側にある」のに対し、引用発明1においては、その点を備えていない点。 [相違点2] 本件特許発明1においては、「高さ調節機構には、内側貫通口が設けられており、当該内側貫通口は、位置固定機構を貫通させる透孔となっており、上記位置固定機構が、上記高さ調節機構の上記内側貫通口に挿入される」のに対し、引用発明1においては、その点を備えていない点。 [相違点3] 本件特許発明1においては、「高さ調節機構と位置固定機構とが複数箇所に設けられている」のに対し、引用発明1においては、その点を備えていない点。 イ.判断 上記相違点について以下検討する。 (ア)相違点1、及び2について 引用発明2は、上記「3.(2)」のとおりであって、引用発明2における「サーマルプリンタ」は、その構造、機能、作用等からみて、本件特許発明1における「印刷装置」に相当する。 また、引用発明2における「基準板」と本件特許発明1における「支持台」とは、共に所望の部材の平面性を調整する際の基準となる部材であるから、「調整用基準部材」との概念で共通する。 また、引用発明2における「放熱フィンを配列したアルミ基板に固定された基板が有する発熱素子アレイ」と本件特許発明1における「載置台」とは、共に上記の調整用基準部材を基準として平面性を調整される部材であるから、「被調整部材」との概念で共通する。 また、引用発明2における「外側調整ネジ」は、基準板に形成された第2の雌ネジに螺合し、その先端が放熱フィンの上面を下方に押圧して、基準板に対する発熱素子アレイの高さを調整しているものであることは明らかであるから、「基準板に対する発熱素子アレイの高さを調整する高さ調節機構」といえる。 また、引用発明2における「内側調整ネジ」は、外側調整ネジの中央を貫通するように形成された穴を介して第1の雌ネジに螺合し、放熱フィンを基準板に向けて引き上げて放熱フィンの上面が外側調整ネジの先端から離れないようにするものであり、また、「外側調整ネジ」は、上記のとおり、基準板に対する発熱素子アレイの高さを調整しているものであるから、引用発明2における「内側調整ネジ」は、「高さ調節機構で調節された高さにて、基準板に対する発熱素子アレイの位置を固定する位置固定機構」といえると共に、「内側調整ネジ(位置固定機構)には、内側貫通口が設けられており、当該内側貫通口は、上記内側調整ネジ(位置固定機構)を貫通させる透孔となっており、上記内側調整ネジ(位置固定機構)が、外側調整ネジ(高さ調節機構)の上記内側貫通口に挿入されることで、上記外側調整ネジ(高さ調節機構)と、上記内側調整ネジ(位置固定機構)とが同一直線上にある」といえる。 また、引用発明2においては、上記のとおりであるから、「外側調整ネジを操作する部位と、内側調整ネジを操作する部位とが、発熱素子アレイからみて同じ側にある」といえる。 してみると、引用発明2には、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項と共通する「調節のために高さ調節機構を操作する部位と、固定のために位置固定機構を操作する部位とが、被調整部材からみて同じ側にある」との事項が示され、また、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項が示されているといえる。 また、引用発明1と引用発明2とは、印刷装置という共通の技術分野に属し、共に所望の部材の平面性を調整するという機能を有するものであるから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、引用発明1における「プラテン48」、及び「基台30」は、それぞれ本件特許発明1における「載置台」、及び「支持台」に相当し、引用発明2における「基準板」、及び「発熱素子アレイ」と本件特許発明1における「支持台」、及び「載置台」とは、それぞれ「調整用基準部材」、及び「被調整部材」との概念で共通するから、引用発明1における「プラテン48」、及び「基台30」と引用発明2における「基準板」、及び「発熱素子アレイ」とは、それぞれ「調整用基準部材」、及び「被調整部材」との概念で共通することになる。しからば、引用発明1に引用発明2を適用すれば、引用発明2における「基準板」、及び「発熱素子アレイ」が、それぞれ引用発明1における「プラテン48」、及び「基台30」に対応することになるから、必然的に上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えることになる。 したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、相違点1、及び2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 (イ)相違点3について 引用発明2には、上記「3.(2)」のとおりであって、「放熱フィンの全て又は所定個数おきに、放熱フィンの上面から垂直方向に伸びた状態で形成された第1の雌ネジ」との事項が示されている。してみると、引用発明2には、上記「(ア)」も踏まえると、「外側調整ネジ(高さ調節機構)と内側調整ネジ(位置固定機構)とが複数箇所に設けられている」ことが示されているから、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を具備するものである。 また、甲1号証には、「次に、プラテン48の支持構造について詳述する。図5及び図6に示すように、プラテン48は、複数の支承部材としてのジャッキボルト47を介して基台30上に支持されている。プラテン48の後端縁部には左右方向において互いに等間隔に並ぶように平面視で円形の複数(本実施形態では6つ)の支持孔110が上下に貫通形成されており、プラテン48の後端縁部における6つの支持孔110が形成された部位は左側から順に支持部a?fとされている。」(段落【0067】)、「一方、プラテン48の前端縁部には左右方向において互いに等間隔に並ぶように平面視で円形の複数(本実施形態では6つ)の支持孔110が上下に貫通形成されており、プラテン48の前端縁部における6つの支持孔110が形成された部位は、左側から順に支持部g?lとされている。そして、支持部a?fはプラテン48の前後方向の中央部を挟んで支持部g?lとそれぞれ対向している。」(段落【0068】)、「(1)プラテン48の各支持部b?lにおけるスペーサ113の外周面と小孔部110bの内周面との間にはプラテン48の水平方向への熱膨張を十分に吸収可能な大きさの隙間が形成されているため、該隙間によりプラテン48の水平方向の熱膨張分を確実に吸収することができる。加えて、プラテン48は、各支持部b,d,f,g,i,kにおいて第1支持機構の第1位置決め部が当接されるとともに、各支持部c,e,h,j,lにおいて第2支持機構の第2位置決め部が当接されている。これによりプラテン48の上下方向の位置が決められるので、印刷時における記録ヘッド54とプラテン48との距離の精度を確保することができる。加えて、プラテン48が水平方向に熱膨張する際に、該プラテン48が上下方向にがたつくことを抑制することができる。」(段落【0100】)と記載されているように、引用発明1に特定されているプラテン48の支持部aを支持する支持機構のみならず、プラテンに支持部b?lを設け、これらの支持部b?lを第1支持機構、又は第2支持機構で支持することが示されている。 しかしながら、甲1号証には、「ところで、特許文献1のプリンタでは、印刷時に記録媒体に着弾したインクの定着性を高めるために、プラテン上に支持された記録媒体を、プラテンを介して加熱部(加熱装置)により加熱している。このため、プラテンが複数箇所においてねじにより完全に固定さている場合には、プラテンが加熱されて水平方向に熱膨張することで、プラテンにおける記録媒体を支持する面が各ねじ間において波を打つように変形することがあるという問題があった。」(段落【0004】)、「本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ターゲットを支持する支持部材が加熱されて熱膨張する際に、該支持部材の熱膨張分を吸収することが可能な液体噴射装置を提供することにある。」(段落【0005】)、「また、プラテン48は、支持機構により完全に固定されるように支持された支持部aにおける高さが基準の高さとなっており、各支持部a?lにおいて支持機構により水平に支持されている。なお、本実施形態では、ジャッキボルト47の軸部47aの先端面47cによりプラテン48に対して下側から当接して該プラテン48を下側から位置決めする第1位置決め部が構成され、トラスねじ112の頭部112bの下面112cによりプラテン48に対して上側から当接して該プラテン48を上側から位置決めする第2位置決め部が構成されている。」(段落【0085】)、「(10)プラテン48は支持部a一カ所のみにおいて、トラスねじ112とジャッキボルト47とに挟圧されて上下方向、左右方向及び前後方向において完全に固定されるように位置決めされている。そのため、支持部aを基準として各支持部b?lの上下方向における高さ位置を設定することにより、より正確にプラテン48の位置決めを行うことができる。また、プラテン48を完全に固定しているのは支持部a一カ所のみなので、プラテン48を複数箇所で固定することなく位置決めすることができる。これにより、プラテン48が複数箇所で固定された状態で熱膨張して波を打つように変形することを抑制することができる。」(段落【0109】)と記載されているように、プラテンが複数箇所においてねじにより完全に固定されている場合、プラテンが加熱されて水平方向に熱膨張すると波を打つように変形することがあるという従来技術の課題を解決するために、引用発明1においては、ジャッキボルト47(高さ調節機構)、及びトラスねじ112(位置固定機構)よるプラテン48の支持は、プラテン48の支持部aのみで行っているものであって、支持部b?lにおける支持は、引用発明1のジャッキボルト47(高さ調節機構)、及びトラスねじ112(位置固定機構)で行うことを想定していないし、仮に支持部b?lにおいて、上記支持部aのようなジャッキボルト47(高さ調節機構)、及びトラスねじ112(位置固定機構)による支持を行うとすると、上記の課題を解決することはできなくなる。 してみると、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものではない。 また、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項とする根拠もない。 したがって、引用発明1において、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得るものではない。 よって、本件特許発明1は、引用発明1、及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)本件特許発明2について ア.対比 本件特許発明2と甲第1号証発明とを対比すると、上記「(1)ア.」での検討を踏まえるに、両者は、上記「(1)ア.」において示した一致点があり、上記相違点1に加え、以下の点で相違している。 [相違点4] 本件特許発明2においては、「高さ調節機構は、載置台に設けられた高さ調節ネジ用貫通口を通り、自ネジの側壁が上記高さ調節ネジ用貫通口の内壁に螺合するとともに、支持台に当接する当接部を備えている高さ調節ネジであり、 上記高さ調節ネジを回転させることにより、上記当接部が上記載置台から上記支持台側に突出する突出高さが調節され、上記支持台に対する上記載置台の高さが調節されるようになっており、 位置固定機構は、上記載置台に設けられた位置固定ネジ用貫通口を通る位置固定ネジである」のに対し、引用発明1においては、その点を備えていない点。 イ.判断 上記相違点4について以下検討する。 引用発明2は、第2の雌ネジ(本件特許発明2の「高さ調節ネジ用貫通口」に相当する。)が、基準板(本件特許発明2の「支持台」と「調整用基準部材」との概念で共通する。)に設けられ、外側調整ネジ(本件特許発明2の「高さ調節ネジ」に相当する。)の先端(本件特許発明2の「当接部」に相当する。)が、放熱フィンに当接し、上記外側調整ネジを回転させることにより、上記先端が上記基準板から上記放熱フィン側に突出する突出高さが調節されるようになっており、内側調整ネジ(本件特許発明2の「位置固定ネジ」に相当する。)が、上記基準板に設けられた第2の雌ネジ(本件特許発明2の「固定ネジ用貫通口」に相当する。)を通るものである。 してみると、引用発明2は、上記相違点4に係る本件特許発明2の発明特定事項を備えるものではない。 また、引用発明1は、雌ねじ孔30a(本件特許発明2の「高さ調節ネジ用貫通口」に相当する。)が、基台30(本件特許発明2の「支持台」に相当する。)に設けられ、ジャッキボルト47(本件特許発明2の「高さ調節ネジ」に相当する。)の先端面47c(本件特許発明2の「当接部」に相当する。)が、プラテン48(本件特許発明2の「載置台」に相当する。)に当接し、上記ジャッキボルト47を回転させることにより、上記先端面47cが上記基台30から上記プラテン48側に突出する突出高さが調節されるようになっており、トラスねじ112(本件特許発明2の「位置固定ネジ」に相当する。)が、上記プラテン48に設けられた支持孔110(本件特許発明2の「固定ネジ用貫通口」に相当する。)を通るものであって、上記「(1)イ.」において検討したとおり、引用発明1における「プラテン48」、及び「基台30」と引用発明2における「基準板」、及び「発熱素子アレイ」とは、それぞれ「調整用基準部材」、及び「被調整部材」との概念で共通するものではあるが、引用発明1に引用発明2を適用しても、上記相違点4に係る本件特許発明2の発明特定事項を構成することにはならない。 また、上記相違点4に係る本件特許発明2の発明特定事項が、当業者にとって設計事項とする根拠もない。 したがって、引用発明1において、上記相違点4に係る本件特許発明2の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得るものではない。 よって、本件特許発明2は、引用発明1、及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (3)本件特許発明3について 本件特許発明3は、本件特許発明2の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明3は、上記「(2)」と同様の理由により、引用発明1、及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由)によっては、本件特許発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 被記録媒体を載せる載置台と、 上記載置台を支持する支持台と、 上記支持台に対する上記載置台の高さを調節する高さ調節機構と、 上記高さ調節機構で調節された高さにて、上記支持台に対する上記載置台の位置を固定する位置固定機構と、を備え、 調節のために上記高さ調節機構を操作する部位と、固定のために上記位置固定機構を操作する部位とが、上記載置台からみて同じ側にあり、 上記高さ調節機構には、内側貫通口が設けられており、当該内側貫通口は、上記位置固定機構を貫通させる透孔となっており、上記位置固定機構が、上記高さ調節機構の上記内側貫通口に挿入されることで、上記高さ調節機構と、上記位置固定機構とが同一直線上にあり、同一直線上にある上記高さ調節機構と上記位置固定機構とが複数箇所に設けられていることを特徴とする印刷装置。 【請求項2】 被記録媒体を載せる載置台と、 上記載置台を支持する支持台と、 上記支持台に対する上記載置台の高さを調節する高さ調節機構と、 上記高さ調節機構で調節された高さにて、上記支持台に対する上記載置台の位置を固定する位置固定機構と、を備え、 調節のために上記高さ調節機構を操作する部位と、固定のために上記位置固定機構を操作する部位とが、上記載置台からみて同じ側にあり、 上記高さ調節機構は、上記載置台に設けられた高さ調節ネジ用貫通口を通り、自ネジの側壁が上記高さ調節ネジ用貫通口の内壁に螺合するとともに、上記支持台に当接する当接部を備えている高さ調節ネジであり、 上記高さ調節ネジを回転させることにより、上記当接部が上記載置台から上記支持台側に突出する突出高さが調節され、上記支持台に対する上記載置台の高さが調節されるようになっており、 上記位置固定機構は、上記載置台に設けられた位置固定ネジ用貫通口を通る位置固定ネジであることを特徴とする印刷装置。 【請求項3】 上記高さ調節ネジ用貫通口と上記位置固定ネジ用貫通口とは同一の貫通口であり、 上記高さ調節ネジには、上記位置固定ネジ用貫通口の深さ方向に平行な直線を中心軸とする内側貫通口が設けられており、 上記位置固定ネジは、径が上記内側貫通口の径より大きい鍔部、及び上記内側貫通口を貫通し、上記支持台に設けられた雌ネジに螺合する延設部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-02-13 |
出願番号 | 特願2011-268408(P2011-268408) |
審決分類 |
P
1
651・
854-
YAA
(B41J)
P 1 651・ 841- YAA (B41J) P 1 651・ 121- YAA (B41J) P 1 651・ 851- YAA (B41J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 西本 浩司 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 黒瀬 雅一 |
登録日 | 2015-09-11 |
登録番号 | 特許第5804922号(P5804922) |
権利者 | 株式会社ミマキエンジニアリング |
発明の名称 | 印刷装置 |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |
代理人 | 井上 義隆 |
代理人 | 井上 義隆 |