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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F23C
管理番号 1326976
異議申立番号 異議2016-700100  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-08 
確定日 2017-03-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5761568号発明「アブラヤシ空果房の燃焼方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5761568号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。 特許第5761568号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5761568号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成23年7月28日に特許出願され、平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年2月8日付け(受理日:同年2月9日)で特許異議申立人 石井良和(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年4月18日付けで取消理由が通知され、同年6月20日に特許権者より訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年6月27日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年7月27日付け(受理日:同年7月28日)で特許異議申立人より意見書が提出され、同年9月8日付けで取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)が通知され、同年11月10日に特許権者より訂正の請求がされるとともに意見書が提出され、同年12月15日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、平成29年1月17日付け(受理日:同年1月18日)で特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
なお、平成28年6月20日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成28年11月10日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである(なお、下線は訂正箇所を示すものである。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、次の(A)ないし(L)の訂正をする。
(A)「草本系バイオマス」を「アブラヤシ空果房」に訂正する。
(B)「流動層炉の炉本体に草本系バイオマスを供給する」と記載されているのを「流動層炉の炉本体にアブラヤシ空果房を燃料として供給する」に訂正する。
(C)「アブラヤシ空果房は乾燥燃料中のカリウム含有率が0.7%以上であり、流動層炉内の燃焼領域でガス状のカリウム化合物を放出するものであり、」を追加する訂正をする。
(D)「上記炉本体中段温度を850?900℃に維持し、」を追加する訂正をする。
(E)「上記炉本体内へ石灰石または消石灰を添加剤として草本系バイオマスのカリウム含有重量の2?10倍の量で供給し、」と記載されているのを「上記炉本体内へ石灰石をアブラヤシ空果房の乾燥重量に対し1.4?7.0wt%の量で、かつ、アブラヤシ空果房のカリウム含有重量の2?10倍の重量で供給し、」に訂正する。
(F)「上限値より少なく供給することにより飛灰として排出される石灰石の増加を抑制し、」を追加する訂正をする。
(G)「下限値より多く供給することにより」を追加する訂正をする。
(H)「上記添加剤からカルシウム化合物の微粒子を脱離させてケイ砂粒子表面に付着させ、」と記載されているのを「上記炉本体内中段の850?900℃の温度領域の下で上記石灰石からカルシウム化合物の微粒子を脱離させて、アブラヤシ空果房から放出されたカリウム化合物を吸着して溶融を始めたケイ砂粒子表面に付着、相溶させ、」に訂正する。
(I)「ケイ砂粒子表面で、付着させたカルシウム化合物とケイ砂の成分であるSiO_(2)と草本系バイオマスから放出されたカリウム化合物とを反応させて、SiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を生成させ、」と記載されているのを「ケイ砂粒子表面で、付着、相溶させたカルシウム化合物とケイ砂の成分であるSiO_(2)とアブラヤシ空果房から放出されたガス状のカリウム化合物とを反応させて、融点が1000℃以上であって炉内温度より高いSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を生成させ、」に訂正する。
(J)「ケイ砂粒子表面にSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を存在させることにより、」と記載されているのを「石灰石からカルシウム化合物の微粒子を溶融し始めたケイ砂粒子表面に供給し続けて、ケイ砂粒子表面に溶融していないSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を存在させ続けることにより、」に訂正する。
(K)「ケイ砂粒子表面に草本系バイオマスから放出されたカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応によりSiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物が生成されることを抑制し、ケイ砂粒子が溶融物により融着・凝集することを防止する」と記載されているのを「ケイ砂粒子表面にアブラヤシ空果房から放出されたガス状のカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応により融点が800℃以下であって炉内温度より低いSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成され、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物がケイ砂粒子表面に存在することを抑制し、ケイ砂粒子が溶融物により融着・凝集し炉本体底部で塊化することを防止し、」に訂正する。
(L)「流動層炉が、炉本体と、該炉本体の上部からの流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体を炉本体へ戻すための戻し管とを有する循環流動層炉であり、石灰石は粒径が88μm?2mmであって流動媒体と共に循環流動層炉内を循環するのに適し捕集部で捕集するのに適した粒径のものである」を追加する訂正をする。

併せて、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2及び3についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、次の(M)及び(N)の訂正をする。
(M)「添加剤」を「石灰石」に訂正する。
(N)「草本系バイオマス」を「アブラヤシ空果房」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3について、次の(O)ないし(Q)の訂正をする。
(O)「流動層炉が、炉本体と、該炉本体の上部からの流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体を炉本体へ戻すための戻し管とを有する循環流動層炉であり、」を削除する。
(P)「添加剤」を「石灰石」に訂正する。
(Q)「草本系バイオマス」を「アブラヤシ空果房」に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書について、次の(R)及び(S)の訂正をする。
(R)【発明の名称】、段落【0001】及び段落【0015】にそれぞれ「草本系バイオマス」と記載されているのを「アブラヤシ空果房」に訂正する。
(S)段落【0001】及び段落【0015】のそれぞれについて、「および燃焼装置」を削除する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書の訂正をする場合であって、請求項毎に訂正の請求をするときに、請求項の全てについて行っているか否か、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
(A)の訂正は、「草本系バイオマス」を「アブラヤシ空果房」に特定するものである。
(B)の訂正は、流動層炉の炉本体に供給される草本系バイオマスが「燃料として」の「アブラヤシ空果房」であることを特定するものである。
(C)の訂正は、アブラヤシ空果房について、乾燥燃料中のカリウム含有率が0.7%以上であり、流動層炉内の燃焼領域でガス状のカリウム化合物を放出するものであることを特定するものである。
(D)の訂正は、炉本体中段温度を850?900℃に維持することを特定するものである。
(E)の訂正は、添加剤としての「石灰石または消石灰」を「石灰石」に特定するとともに、石灰石の供給量について「草本系バイオマスのカリウム含有重量の2?10倍の量」を「アブラヤシ空果房の乾燥重量に対し1.4?7.0wt%の量で、かつ、アブラヤシ空果房のカリウム含有重量の2?10倍の重量」に特定するものである。
(F)の訂正は、石灰石を上限値より少なく供給することにより飛灰として排出される石灰石の増加を抑制することを特定するものである。
(G)の訂正は、石灰石を下限値より多く供給することを特定するものである。
(H)の訂正は、カルシウム化合物の微粒子が脱離しケイ砂粒子表面に付着する温度環境について、炉本体内中段の850?900℃の温度領域であることを具体的に特定し、上記微粒子が付着するケイ砂粒子表面では溶融が始まっていること、また、ケイ砂粒子表面が、アブラヤシ空果房から放出されたカリウム化合物を吸着することにより溶融を始めることを特定し、そして、上記微粒子がケイ砂粒子表面に付着することを特定するものである。
(I)の訂正は、アブラヤシ空果房から放出されたカリウム化合物がガス状であることを特定するとともに、生成されるSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物の融点が1000℃以上であって炉内温度より高いことを特定するものである。
(J)の訂正は、ケイ砂粒子表面に存在するSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物は溶融していないことを特定し、また、ケイ砂粒子表面に溶融していないSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を存在させ続けるために、石灰石からカルシウム化合物の微粒子を溶融し始めたケイ砂粒子表面に供給し続けることを特定するものである。
(K)の訂正は、ガス状のカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応により生成されるSiO_(2)-K_(2)O化合物の融点が800℃以下であって炉内温度より低いことを特定し、また、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物がケイ砂粒子表面に存在することが抑制されることを特定し、さらに、溶融物によりケイ砂粒子の融着・凝集を防止することにより、炉本体底部でのケイ砂粒子の塊化が防止されることを特定するものである。
(L)の訂正は、流動層炉の構成について、流動層炉が、炉本体と、該炉本体の上部からの流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体を炉本体へ戻すための戻し管とを有することを特定し、また、石灰石について、粒径が88μm?2mmであって流動媒体と共に循環流動層炉内を循環するのに適し捕集部で捕集するのに適した粒径のものであることを特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
(M)の訂正は、「添加剤」を「石灰石」に特定するものである。
(N)の訂正は、「草本系バイオマス」を「アブラヤシ空果房」に特定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
(O)の訂正は、請求項1において(L)の訂正したことに伴い、請求項3において(L)に対応する記載を削除するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(P)の訂正は、「添加剤」を「石灰石」に特定するものである。
(Q)の訂正は、「草本系バイオマス」を「アブラヤシ空果房」に特定するものである。
したがって、訂正事項3は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
(R)及び(S)の訂正は、訂正事項1ないし3に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、本件訂正の請求は、特許請求の範囲に関しては、請求項1ないし3についての訂正であり、本件特許の請求項の数は3であるから、請求項の全てについて訂正の請求を行っている。
さらに、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)一群の請求項
本件訂正の請求による訂正は、訂正後の請求項1ないし3についての訂正であるが、訂正前の請求項2及び3は訂正前の請求項1を引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし3は、一群の請求項である。したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3及び4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4ないし6項の規定に適合するので、本件訂正の請求による訂正は適法なものであり、訂正後の請求項1ないし3について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正の請求による訂正は認められるので、請求項1ないし3に係る特許に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、平成28年11月10日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
流動層炉の炉本体にアブラヤシ空果房を燃料として供給するとともに該炉本体の下部から酸化性ガスを供給して、ケイ砂粒子を含む流動媒体とともに該アブラヤシ空果房を流動させて流動層を形成し、該流動層中で上記アブラヤシ空果房を燃焼させる燃焼方法において、
アブラヤシ空果房は乾燥燃料中のカリウム含有率が0.7%以上であり、流動層炉内の燃焼領域でガス状のカリウム化合物を放出するものであり、
上記炉本体中段温度を850?900℃に維持し、
上記炉本体内へ石灰石をアブラヤシ空果房の乾燥重量に対し1.4?7.0wt%の量で、かつ、アブラヤシ空果房のカリウム含有重量の2?10倍の重量で供給し、上限値より少なく供給することにより飛灰として排出される石灰石の増加を抑制し、下限値より多く供給することにより上記炉本体内中段の850?900℃の温度領域の下で上記石灰石からカルシウム化合物の微粒子を脱離させて、アブラヤシ空果房から放出されたカリウム化合物を吸着して溶融を始めたケイ砂粒子表面に付着、相溶させ、ケイ砂粒子表面で、付着、相溶させたカルシウム化合物とケイ砂の成分であるSiO_(2)とアブラヤシ空果房から放出されたガス状のカリウム化合物とを反応させて、融点が1000℃以上であって炉内温度よりも高いSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を生成させ、
石灰石からカルシウム化合物の微粒子を溶融し始めたケイ砂粒子表面に供給し続けて、ケイ砂粒子表面に溶融していないSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を存在させ続けることにより、ケイ砂粒子表面にアブラヤシ空果房から放出されたガス状のカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応により融点が800℃以下であって炉内温度より低いSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成され、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物がケイ砂粒子表面に存在することを抑制し、ケイ砂粒子が溶融物により融着・凝集し炉本体底部で塊化することを防止し、
流動層炉が、炉本体と、該炉本体の上部からの流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体を炉本体へ戻すための戻し管とを有する循環流動層炉であり、
石灰石は粒径が88μm?2mmであって流動媒体と共に循環流動層炉内を循環するのに適し捕集部で捕集するのに適した粒径のものであることを特徴とするアブラヤシ空果房の燃焼方法。
【請求項2】
石灰石を炉本体内へ直接供給することとする請求項1に記載のアブラヤシ空果房の燃焼方法。
【請求項3】
戻し管を経由させて石灰石を上記炉本体に供給することとする請求項1に記載のアブラヤシ空果房の燃焼方法。」

2 取消理由(決定の予告)の概要
取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。

「 <<<< 決定の予告 >>>>
・・・(略)・・・
第1 手続の経緯
・・・(略)・・・
第2 訂正の適否について
・・・(略)・・・
第3 本件発明
・・・(略)・・・
第4 取消理由についての判断
1 取消理由で引用した文献
甲第1号証:Sigrid De Geyter,et.al.,Effects of Non-Quartz Minerals in Natural Bed Sand on Agglomerations Characteristics during Fluidized Bed Combustions of Biomass Fuels,Energy&Fuels,08/23/2007,21,p.2663-2668
甲第2号証:特表2004-528399号公報
甲第3号証:国際公開第2011/007618号
甲第4号証:Sigrid De Geyter,The role of sulphur in preventing bed aggolomeration during combustion of biomass,Degree work presented to obtain a degree in Master of Science in Energy Engineering,Umea University,2006
甲第5号証:特開2008-81638号公報
甲第6号証:特表平2-503925号公報
甲第7号証:特表2008-503707号公報
甲第8号証:西尾実ら、「岩波国語辞典」、第5版、株式会社岩波書店、1994年11月10日、第668ページ、第1157ページ
(・・・(略)・・・以下、順に「甲1」ないし「甲8」という。)
・・・(略)・・・
4 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲3発明、周知技術1、周知技術2-1ないし2-3及び甲1開示事項並びに周知技術3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1ないし3に係る特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。」

3 取消理由(決定の予告)についての判断
3-1 取消理由(決定の予告)において引用した文献
取消理由(決定の予告)において、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物として引用した文献は、次の(1)及び(2)のとおりである。

(1)特許異議申立人が平成28年2月8日付けで(受理日:同年2月9日)提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に添付された文献
甲第1号証:Sigrid De Geyter, et al., Effects of Non-Quartz Minerals in Natural Bed Sand on Agglomerations Characteristics during Fluidized Bed Combustion of Biomass Fuels, Energy&Fuels, 08/23/2007, 21, p.2663-2668
甲第2号証:特表2004-528399号公報
甲第3号証:国際公開第2011/007618号
甲第4号証:Sigrid De Geyter, The role of sulphur in preventing bed aggolomeration during combustion of biomass, Degree work presented to obtain a degree in Master of Science in Energy Engineering, Umea University, 2006
甲第5号証:特開2008-81638号公報
甲第6号証:特表平2-503925号公報
甲第7号証:特表2008-503707号公報
甲第8号証:西尾実ら、「岩波国語辞典」、第5版、株式会社岩波書店、1994年11月10日、第668ページ、第1157ページ
(甲第2及び8号証については、取消理由(決定の予告)において刊行物として提示しているが、具体的には引用していない。以下、順に「甲1」のようにいう。)

(2)周知技術を示すために引用した文献
周知文献1:特開2010-229259号公報
周知文献2:特開2010-270320号公報
周知文献3:特開2010-222474号公報
周知文献4:特開2009-243744号公報
周知文献5:特開2000-297915号公報
(以下、順に「周知文献1」のようにいう。)

3-2 取消理由(決定の予告)で引用した文献の記載等
(1)甲3の記載等
ア 甲3の記載
甲3には、「流動床式ボイラの燃焼方法、及び流動床式ボイラ」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、総称して「甲3の記載」という。)がある。

・「[0001] 本発明は、ボイラ燃料としてアルカリ成分含有の燃料を用いた流動床式ボイラの燃焼方法、及び流動床式ボイラに関する。
[0002] 流動床式ボイラ(「CFBボイラ」ともいう)へのバイオマス燃料の適用が求められている。バイオマス燃料のうち、モミ殻やEFB(Empty Fruit Bunches)などの低品位のバイオマス燃料はアルカリ成分を多く含み、このアルカリ成分は低融点の化合物を生じさせる。低融点の化合物は流動材(「ベット材」ともいう)に付着して流動不良を引き起こす可能性があるため、炉内温度を低融点の化合物が生じない程度、具体的には750℃以下に保持するなどの制御が必要であった(特許文献1参照)。」(段落[0001]及び[0002])

・「[0008] すなわち、本発明は、アルカリ成分含有の燃料を用いた流動床式ボイラの燃焼方法において、鉱石の製錬によって生じる製錬スラグを燃料に加えて流動床式ボイラで燃焼させることを特徴とする。
[0009] 流動床式ボイラの燃料として、バイオマス燃料などのアルカリ成分含有の燃料を用いた場合には、カリウム(K)やナトリウム(Na)などのアルカリ成分と、流動材成分としての石英粒子との間の化学反応により、アルカリ珪酸塩が形成される。このアルカリ珪酸塩は、700℃程度で溶融する低融点化合物であり、流動材としての粒子表面に粘着層を形成し、流動材の流動を阻害する可能性がある。しかしながら、本発明では、アルカリ成分含有の燃料に加えて製錬スラグを流動床式ボイラに供給しており、製錬スラグ中には酸化マグネシウムが含まれているため、アルカリ珪酸塩の生成を抑制できる。従って、低融点化合物の生成に伴う流動不良発生の虞が低減し、流動床式ボイラの高温での運転が可能になる。その結果として、エネルギー回収効率の向上を図り易くなる。さらに、製錬スラグ中には炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムではなく酸化マグネシウムが含まれているため、その酸化マグネシウムがアルカリ珪酸塩の生成抑制に直接に寄与するので、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムを添加する場合に比べて高いエネルギー回収効率を期待できる。」(段落[0008]及び[0009])

・「[0017] 以下、本発明に係る流動床式ボイラ、及び流動床式ボイラの燃焼方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[0018] 図1に示されるように、流動床式ボイラ(以下「CFBボイラ」という)1は、燃料を燃焼し、密閉容器内の水を加熱して蒸気を生成する燃焼塔(炉本体)3と、燃焼塔3で生じた燃焼ガス(以下、「排ガス」という)Gから固形物を分離するサイクロン分離器(分離部)5と、排ガスGの熱を熱回収する熱回収部7と、サイクロン分離器5で排ガスGから分離された飛灰、すなわち排ガスGから分離された流動材Fa(図2参照)を燃焼塔3の下部に戻す循環ライン9等を備えている。なお、熱回収部7には、過熱器などの熱交換チューブ等が配置されている。
[0019] 燃焼塔3には、モミ殻やEFB(Empty Fruit Bunches)などのバイオマス燃料が投入される。この種のバイオマス燃料は、カリウムやナトリウムなどのアルカリ成分を多く含む低品位燃料である。さらに、燃焼塔3には、製錬スラグの一種であるフェロニッケルスラグが投入される。燃焼塔3には、石英粒子を主成分とする流動材Faが投入されており、この流動材Fa中に下部から空気が供給され、流動材Faが流動して流動床(以下「ベット」という)Fが形成される。ベットFの形成により、燃料の燃焼が促進される。燃焼の結果として生じる排ガスGは、流動材Faの一部を随伴しながら燃焼塔3内を上昇する。なお、本実施形態では、フェロニッケルスラグを流動材Fa中に添加する態様を説明するが、フェロニッケルスラグそのものを流動材Faとして利用することも可能である。
[0020] サイクロン分離器5は、燃焼塔3に隣接して配置されており、燃焼塔3から排出された排ガスG及び排ガスGに随伴された流動材Faを受け入れ、遠心分離作用によって排ガスGと流動材Faとを分離し、流動材Faは燃焼塔3に戻し、排ガスGは熱回収部7に送り込む。
[0021] サイクロン分離器5には、循環ライン9が接続されている。循環ライン9は、燃焼塔3の下部に接続された管路からなり、循環ライン9上にはループシール(循環シール部)9aが設けられている。ループシール9aは、燃焼塔3からの排ガスGの逆流を防止する設備であり、ループシール9a内には、サイクロン分離器5から送り込まれた流動材Faが蓄積され、流動材Faはループシール9aの出口のリターンシュート部9bから燃焼塔3内に投入される。
[0022] また、CFBボイラ1は、ループシール9a内に製錬スラグの一種であるフェロニッケルスラグを供給するための製錬スラグ供給部11を備えている。ループシール9a内にフェロニッケルスラグを供給することで、ループシール9a内での流動不良を効果的に抑えることができる。」(段落[0017]ないし[0022])

・「[0028](コーティング誘発メカニズム)
図2(a)に示されるように、コーティング誘発メカニズムのアグロメXは、流動材Faの表面での共晶コーティング(アルカリ珪酸塩相)Cが形成されたボトムアッシュ粒子群が、それらの共晶コーティングCにより接合と離散とを繰り返し、その結果、粒子凝集が開始され、徐々にネック(流動阻害要因)になるアグロメXの形成に到り、このメカニズムの主要な制御因子は、共晶コーティング厚さ(接合離間のし易さ)、共晶コーティング組成(接合強度)および局所温度である。
[0029] なお、流動材Faの表面に実際にコーティングされた部分の詳細な分析結果から、このコーティング層は、共晶コーティング(K_(2)O-SiO_(2):アルカリ珪酸塩層)Cであることが確認されている。この共晶コーティングCは、図3に示されるように、700℃にて溶融しはじめる。CFBボイラ1の流動材Fa中の温度、具体的には、800℃?900℃においては、流動材Faである粒子同士を容易に付着、凝集させるものであることが確認できる。なお、図3は、K_(2)O-SiO_(2)状態図である。
[0030] 次に、アグロメXの形成と酸化マグネシウム(MgO)との関係について図4及び図5を参照して説明する。図4は、MgO-SiO_(2)状態図であり、図5は、MgO-K_(2)O-SiO_(2)状態図である。なお、図3に示されるように、K_(2)O-4SiO_(2)の状態からMgOとなる過程を図5の直線Laで示し、さらに、MgOの割合が増える方向を矢印Daで示す。
[0031] 一番最初の反応状態(第1反応状態)は図3に示されるように、700℃程度の低い温度で生じ、この第1反応状態では、K_(2)O-4SiO_(2)の形態にてコーティング等が形成される(図3参照)。次に、第2反応状態では、図5の矢印Daの方向に反応が進み、第1反応状態で形成されたK_(2)O-4SiO_(2)に対して、少しずつMgOが反応していく。MgOの反応が進んだ状態を直線La(図5参照)上で見ると、MgOの割合が数%(4%程度)で742℃の第1ポイントPbとなって融点が上がり(第3反応状態)、次に、MgOの割合が8%程度で1000℃の第2ポイントPbとなって融点が上がり、付着性の少ない層になる(第4反応状態)。
[0032] 第2ポイントPb以上には、MgOは反応し難い。融点が1000℃以上となり固体となるので、MgO(固体)との反応が起こり難くなるからである。ここで、またMgOが付着すると、例えば、第2ポイントPbから第1ポイントPbに戻り、742℃が融点になって付着が起こり易くなる。次に、第2反応状態に戻ってMgOが反応し、再び、第3反応状態及び第4反応状態が繰り返される。
[0033] 図4に示されるように、MgOとSiO_(2)との反応では、1543℃まで融体を形成しないことが容易に推察され、また、図5に示されるように、MgOとK_(2)O-SiO_(2)との反応においても、1000℃程度まで融体を形成しないことが推察される。従って、アルカリ成分を多く含むバイオマス燃料を燃焼する際に、流動材Fa中に酸化マグネシウムを添加することによって低融点の共晶コーティング(K_(2)O-SiO_(2):アルカリ珪酸塩相)Cの形成を抑制することができる。
[0034] ここで、図6を参照して、低融点の共晶コーティングCの形成を抑制することについて構造的に説明する。図6は、共晶コーティングCにMgOが作用する状態を模式的に示す説明図である。図6に示されるように、流動材Faの表面に共晶コーティングCが形成されると、その表面に融点が高いMgO-K_(2)O-SiO_(2)の層Sが形成されて固化し、融点が上がる。また、その表面に共晶コーティングCが形成されても、また融点が高いMgO-K_(2)O-SiO_(2)の層Sが形成されて固化し、融点が上がる。その結果として低融点である共晶コーティングCが形成されたとしても、その共晶コーティングCの表面に融点の高いMgO-K_(2)O-SiO_(2)の層Sが形成されることとなり、低融点化が抑制される。」(段落[0028]ないし[0034])

・図1として、次の図面が記載されている。
「【図1】



イ 甲3発明
甲3の記載及び図面を整理すると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「流動床式ボイラ1の燃焼塔3にEFBを燃料として供給するとともに該燃焼塔3の下部から空気を供給して、流動材Faとともに該EFBを流動させて流動床を形成し、該流動床中で上記EFBを燃焼させる燃焼方法において、
上記燃焼塔3内へMgOを含む精錬スラグを供給し、上記燃焼塔3内中段温度を800?900℃に維持し、上記燃焼筒3中段の800?900℃の温度領域の下で上記MgOを含む精錬スラグからMgOの微粒子を脱離させて溶融を始めたケイ砂粒子表面に付着、相溶させ、ケイ砂粒子表面で、付着、相溶させたMgOと流動材Faの成分であるSiO_(2)とEFBから放出されたカリウム化合物とを反応させて、SiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物を生成させ、
流動材Fa表面に溶融していないSiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物を存在させることにより、流動材Fa表面にEFBから放出されたカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応によりSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成され、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物が流動材Fa表面に存在することを抑制し、流動材Faが溶融物により融着・凝集することを防止し、
流動床式ボイラ1が、燃焼塔3と、該燃焼塔3の上部からの流動材Faを捕集するサイクロン分離器5と、該サイクロン分離器5で捕集された流動材Faを燃焼塔3へ戻すための循環ライン9とを有する流動床式ボイラ1であるEFBの燃焼方法。」

(2)甲1の記載
甲1には、「Effects of Non-Quartz Minerals in Natural Bed Sand on Agglomeration Characteristics during Fluidized Bed Combustion of Biomass Fuels」に関して、おおむね次の記載がある。なお、原文は省略し、特許異議申立書に添付された甲第1号証訳文を参考に当審で作成した該当箇所の翻訳文を摘記する。

・「(b)気相又はエアロゾル相のカリウムによる直接攻撃で、粘性流焼結及び凝集を誘発する低融点シリケートの形成を行うもの(通常、アルカリリッチ燃料)」(第2664ページ左欄第6ないし8行)

・「層形成
概して、カリウムが床粒子層の形成及び床凝集において重要な役割を担っていることが分かっている。またカリウムとシリカとの相互作用がシリケートの重合程度にかなり依存することもよく知られている。高度に重合化された溶融シリケート構造は、木材灰溶融物中に通常見い出される、結合距離がより短くてより少量のアルカリ土類元素のみを可能とするジシリケート又はオルトシリケートの構造に比べて、そのSi四面体ネットワーク内の大きな空孔にカリウムのようなアルカリ金属カチオンをより容易に含有する。これは、化学平衡計算の一般的結果にも反映される。
石英については、アルカリ及び/又は溶解カリウムシリケート粒子のガス状攻撃により、恐らく高度に重合化されたカリウムシリケート溶解物が床粒子表面上に形成される。燃料(例えば、樹皮)中にCaが利用可能である場合、この層は、CaOとの反応が進行するに連れて成長し、徐々にCaを取り込む。このように形成されたシリケート層は、解重合が進むに連れて、さらなるカリウムの攻撃から次第に粒子を「保護」する。
K長石から開始し、カリウム(ガス状攻撃)のレベルを増すには、初期融点が石英に比べて約100℃高いこととなる。任意の量の溶解物を形成するには、この温度は高すぎることとなる。さらに、周辺の灰からの溶解カリウムシリケートが長石粒子に付着することがある。この溶解物は、恐らく、固体カリウムシリケートとともに、長石と平衡にあるであろう。この化学駆動力の不足により、長石に関連した層形成反応は実質的に生じないであろうし、これがK長石の床粒子層の厚さが比較的薄いことを説明するものとしてもよい。一方、K長石についてはより低い開始流動化温度が見受けられた。可能な説明として、層形成の程度が低い結果として、より多くのカリウムシリケートが灰中に保持され、上述の種別cの機構に従った凝集を誘発するというものである。
斜長石は、樹皮の燃焼中には薄い床粒子被覆を成長させるものの、オリーブ残渣の燃焼中には比較的厚い層を成長させる。暫定的に、斜長石表面とガス状カリウム種との反応により、前者の組成をゲーレナイト(Ca_(2)Al_(2)SiO_(7))、白榴石(KAlSi_(2)O_(6))及びアルミナ(Al_(2)O_(3))からなるアセンブリに移行させる一方で、溶解カリウムシリケートとの反応により、白榴石及び珪灰石(CaSiO_(3))を生成するであろう。斜長石床粒子の高い凝集温度は、恐らく、比較的屈折性の白榴石を形成することによる、ガス状カリウム種及びカリウムシリケート溶解物の「中和」能力機能であろう。これらの反応によって溶解物は生成されない。この理由は、もっぱら斜長石中で優位な灰長石成分(Ca_(2)Al_(2)Si_(2)O_(8))に基づくものである。曹長石(NaAlSiO_(8))成分は、K長石と類似の挙動をすると推定される。
同様に、カンラン石が存在する場合、ガス状カリウムとカンラン石表面との反応が妥当である。考えられる限りこのような反応による生成物であるK-Mg-シリケートがいくらか存在する。さらに、周囲の灰からの溶解カリウムがカンラン石表面に付着し、K-Mg-シリケートと反応することがある。樹皮が燃焼する際、溶解カリウムシリケート灰粒子はCaが比較的豊富であり、カンラン石(Mg_(2)SiO_(4))面と反応してモンティセライト(MgCaSiO_(4))を形成することができる。
凝集物ネック組成
さて3つの主要要素にのみ注目すべく、凝集体ネックに見い出される多成分条件を劇的に簡易化することにより、参考にした三元系平衡状態図から凝集特性がさらに理解されてもよい。このように凝集体ネックの主要要素について見い出された理論的初期溶解温度が表4にまとめられており、CFBA実験において見出されたものと類似の傾向を明らかにしている。
床物質/燃料の8つの組み合わせ中の3つが、結果として、K_(2)O-CaO-SiO_(2)システムにおける主要成分との凝集体ネック祖成が生じる。このシステムにおいて、Ca含有率が高いと、結果として、高い第1包晶温度(1075℃、Ca高含有率側)の領域に近づき、K濃度が増加すると組成が低い共晶温度(725℃、K高含有率側)の領域側に移行するため、Ca/K比は特に重要であり、カリウムシリケート(例えば、懸濁又は付着した灰粒子)にCaを導入することによって初期溶解温度を上昇させる効果を示している。このシステムにおいて初期溶解温度を上昇させる他の方法として、Siの量を減ちすというものがあり、斜長石-オリーブ残渣のケースとして明確に説明している。
K長石床における樹皮の燃焼は、結果として、優位な要素としてのSi、K、及びAlによる凝集体ネックを生じる。カリウムシリケート溶解物にAlを導入することにより、695℃程度の低い共晶温度が発生する、少なくともK/A1比が高く(K_(2)十Al_(2))/Si比が低い場合に溶解温度を降下させる。
Si及びAl(斜長石-樹皮)とともにCaを含有する凝集体ネックについて、このシステムにおける溶解温度は、1170℃を下回ることはない。
カリウムシリケートへのNaの導入は、オリーブ残渣との燃焼においてK長石に発生するが、初期比流動化温度の深刻な低下に繋がり、理論上の融点は540℃程度に低くなる。これは、Blander及びPeltonにも見受けられた。
凝集体ネックにMgが存在する場合(カンラン石)、初期非流動化温度にプラスの効果が見られた。K_(2)O-Mgo-SiO_(2)略図において最も低い共晶温度は、純粋なカリウムシリケートについて見い出される。カリウムシリケートにおいてMgが僅かに増加すると、初期溶解温度が大きく異なり得る。低レベル(数重量%)のMgにより、より高い共晶温度で制御される領域に向かって、組成物を移すことができる。」(第2667ページ左欄第22行ないし第2668ページ左欄第8行)

(3)甲4の記載
甲4には、「The role of sulphur in preventing bed agglomeration during combustion of biomass」に関して、おおむね次の記載がある。なお、原文は省略し、特許異議申立書に添付された甲第4号証訳文を参考に当審で作成した該当箇所の翻訳文を摘記する。

・「添加剤
燃焼環境の化学的性質を変化させ、凝集のリスクを低下させるため、FBC燃焼時に、多くの異なる添加剤を試験した。当分野で最も重要な文献をまとめる試みにおいて、表1は、添加剤一燃料燃焼とそれらの文献参照についての概略である。これらの報告の結論及び所見を添加物毎に簡単に議論する。
[表1]
FBC中の添加物使用の凝集に対する効果を説明する参照文献の概略」(第10ページ第25行ないし第11ページ第1行)

・第11ページ「Table1」の下から5行目の欄に、次の記載がある。
「カルサイト 森林残澄アルファルファ ・・・(略)・・・CaCO_(3)」

(4)甲5の記載
甲5には、「木質バイオマスのガス化方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0001】
本発明は、木質バイオマスのガス化方法に関し、特にクリンカの発生を抑制するガス化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、森林から得られる枝、葉、梢、根株等の林地残材、製材工場から出るオガ粉、樹皮、端材、背板等の残廃材、建築廃材・解体材などの産業廃棄物等といった木質バイオマスをガス化し、燃料等として使用することが行われている。
この場合におけるガス化炉の形式として、流動床式や固定床式のものが広く用いられている。特に固定床式は比較的小規模の設備として設計し得ることから山間部の製材所等、中小規模の設備への適用が可能である(例えば特許文献1参照)。両形式ともガス化される木質バイオマスはガス化炉投入前に細かく破砕された後、投入されることが一般的である。(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭59-38284号公報
【特許文献2】特開2002-38163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法では、バーク(樹皮)のような融点の低い木質バイオマスの場合、炉内にクリンカ(焼塊)が発生するという問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、クリンカの発生を抑制することにある。」(段落【0001】ないし【0003】)

・「【0013】
本発明では、ガス化に際して、ガス化炉6内に原料の融点を上昇させる作用を持つ融点上昇物質を存在させる。このために、予め原料に融点上昇物質を混入させる等により、原料とともに融点上昇物質をガス化炉6内に供給することができる。吹込口67の近傍(特に、下向流式の場合には吹込口67の下側、上向流式の場合には吹込口の上側)はクリンカが発生し易いため、吹込口67を介して空気とともに融点上昇物質を炉6内に投入したり、吹込口67近傍の高さ位置(特に、下向流式の場合には吹込口67の下側、上向流式の場合には吹込口の上側)に専用の投入口を設け、この投入口を介して空気とは別に融点上昇物質を炉6内に投入したりするのは好ましい形態である。これらの融点上昇物質の供給位置は適宜組み合わせて使用できる。融点上昇物質としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、燐酸カルシウム、ドロマイト等を用いることができ、粉状や粒子状の形態で用いることができる。融点上昇物質の添加量は、適宜定めることができるが、木質バイオマス原料に対して0.5?20重量%とするのが好ましい。」(段落【0013】)

(5)甲6の記載
甲6には、「アルカリ含有燃料の燃焼」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「1. 熱エネルギーを生産して回収するため、低融点アルカリ複合品を有する固体燃料を燃焼させる方法において、前記固体燃料がファースト流動床反応器内で燃料させられ、そこで、
a) 低融点アルカリ成分を有する固体燃料及び酸素含有ガスを反応室の中へ導入し、流動床内で燃焼を行わせ、そして固体粒子を含む高温の排気ガス前記反応室から放出させること、
b) 前記反応室から放出された排気ガスから固体粒子を分離して前記反応室へ戻すように再循環させること、
c) 前記反応室内へ、前記燃料と共に、この燃料の燃焼中に燃料の低融点アルカリ成分と反応して高融点アルカリ金属化合物を作ることができる反応材料を導入すること、及び、
d) 前記反応室内へ酸素と燃料の供給及び/又はその他の燃焼温度に影響するパラメータを制御して、前記反応室の全ての部分の温度が、前記燃料のアルカリ複合品と前記反応材料との反応によって作られる前記アルカリ金属化合物の融点より低くなるようにすることの諸段階を含むことを特徴とする方法。
2. 前記反応材料が、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、シリカ、鉄、チタン、及びこれらの2つ又はそれ以上の混合物で成るグループの酸化物、又は燃焼中に酸化物へ変換される水酸化物であり、そして前記段階(c)が固体粒子の形の前記反応材料を前記反応室内へ導入することによって行われることを特徴とする請求項1記載の方法。」(第1ページ左下欄第2行ないし右下欄第3行)

(6)甲7の記載
甲7には、「循環流動層ボイラーからの二酸化硫黄放出物を減少させる方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0002】
石炭のような炭素質燃料は、砂のような少なくとも1種の一般的に不活性な物質及び石灰石のような二酸化硫黄減少用添加剤を含む層において、CFBボイラーの加熱炉中で燃焼させられる。流動化用気体、通常空気は、反応器の底格子を通して導入され層物質を流動化させ燃料を酸化する。一方、燃料中の硫黄は酸化して主に二酸化硫黄(SO_(2))を形成するが、それは大量に環境に放出されると有害であろう。加熱炉で効果がある高温、通常750°?900℃では、石灰石の炭酸カルシウム(CaCO_(3))はか焼されて酸化カルシウム(CaO)を形成し、それがSO_(2)を硫酸カルシウム(CaSO_(4))に変換し、それは燃焼で生成した灰と一緒に加熱炉から除去することが出来る。」(段落【0002】)

(7)周知文献1の記載
周知文献1には、「微粉炭ボイラ用のバイオマス燃料の製造方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。なお、下線は他の文献も含め当審で付したものである。

・「【0003】
固体バイオマス燃料については、種々の種類があるが、例えば海外のアブラヤシから生産するパーム油製品の残渣(以下、パーム残渣)を石炭火力発電所で燃焼させることが考えられている。パーム残渣を用いたバオイマス発電は、発電コストや調達ポテンシャルの面で優れていることに特徴がある。
【0004】
パーム残渣としては、パーム果実房から果実を取り除いた空果房を細かく砕きペレット状に固めたパーム空果房ペレット(EFBペレット)、アブラヤシの内果皮であるパームシェル、パーム核油かす(PKE)等がある。」(段落【0003】及び【0004】)

(8)周知文献2の記載
周知文献2には、「バイオマスの洗浄方法、バイオマス炭の製造方法、および竪型炉の操業方法」に関して、おおむね次の記載がある。

・「【0020】
実施の形態1では、上記のバイオマスの中でも特に、カリウムやナトリウムなどのアルカリ金属を高濃度で含有するバイオマスを原料としてバイオマス炭を製造する場合に用いると効果的であり、カリウム濃度1mass%以上のバイオマスに本発明を用いることが好ましい。カリウムやナトリウムなどのアルカリ金属を高濃度で含有するバイオマスとしては、パームヤシ(アブラヤシ)、トウモロコシ、バナナ等がある。パームオイルの副産物であるパームヤシ(アブラヤシ)の空果房(EFB)は、オイルを含んだ果実をはがした果房茎部であり、カリウムを2?3mass%(ドライベース)を含有することが知られている。」(段落【0020】)

(9)周知文献3の記載
周知文献3には、「バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0036】
原料1として、パーム油を生成する過程で発生するアブラヤシの空果房(EFB)からなるバイオマス系の残渣を用いた。EFBの含水率は20mass%であった。ロータリーキルン10の炭化温度は550℃とした。冷却温度も、本発明例と比較例とで同一とした。」(段落【0036】)

(10)周知文献4の記載
周知文献4には、「粒状添加剤及びその製造方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0039】
本発明の粒状添加剤は、平均粒径が0.1?5.5mm、好ましくは0.5?2mm、見掛比重が1.0?5.0、圧潰強度が9.8?98N、好ましくは9.8?49Nである。
平均粒径が0.1mmよりも小さい場合は発塵が起こったり投入後にボイラーの後部に飛散したりする。5.5mmを超える場合は燃料との混合が困難であったり流動底部に脱落してボトムから排出されたりする。見掛比重が1.0よりも小さい場合は嵩高になり扱いづらい。5.0を超える場合は硬くなってしまう。また圧潰強度が9.8Nよりも小さい場合は移送時に粒子が崩壊し形状を維持することができない。98Nを超える場合は添加剤が炉内、特に水管のエロージョンを引き起こす原因異物となる。なお圧潰強度は、島津製作所製オートグラフで測定した値である。」(段落【0039】)

(11)周知文献5の記載
周知文献5には、「流動層式燃焼炉の運転方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0018】即ち、当該流動媒体の固着防止剤Dは、基本的には燃焼物F内に存在するKやNa、P等によって燃焼残渣内に形成される低軟化点化合物の生成量を減少させると共に、生成された化合物の軟化温度そのものを高める機能を果すものであり、本発明では固着防止剤Dとして、消石灰や生石灰(石灰石)等のカルシウム化合物と、水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物との何れか一方又は両方が用いられており、図1の実施形態では石灰石の粒体(平均粒径0.2mm?5mm)がサイロ11内に貯留されている。尚、固着防止剤Dとしては、石灰石CaOの他に、消石灰Ca(OH)_(2)、炭酸カルシウムCaCO_(3)等のカルシウム化合物や水酸化マグネシウムMg(OH)_(2)、酸化マグネシウムMgO、炭酸マグネシウムMgCO_(3)等のマグネシウム化合物が使用可能であり、塊状、粒状又は粉体状の何れであってもよい。また、カルシウム化合物とマグネシウム化合物とは、夫々単独で用いても或いは混合して用いてもよい。」(段落【0018】)

3-3 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明における「流動床式ボイラ1」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本件発明1における「流動層炉」及び「循環流動層炉」に相当し、以下、同様に、「燃焼塔3」は「炉本体」に、「空気」は「酸化性ガス」に、「流動材Fa」は「ケイ砂粒子を含む流動媒体」、「ケイ砂粒子」及び「流動媒体」に、「流動床」は「流動層」に、「サイクロン分離器5」は「捕集部」に、「循環ライン9」は「戻し管」に、それぞれ、相当する。
また、甲3発明における「EFB」と本件発明1における「アブラヤシ空果房」は、その機能、構成または技術的意義からみて、「空果房」という限りにおいて一致する。
さらに、甲3発明における「MgOを含む精錬スラグ」と本件発明1における「石灰石」は、「添加剤」という限りにおいて一致する。
さらにまた、甲3発明における「800?900℃」と本件発明1における「850?900℃」は、、その機能、構成または技術的意義からみて、所定の温度範囲という限りにおいて一致する。
さらにまた、甲3発明における「SiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物」と本件発明1における「SiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物」は、その機能、構成または技術的意義からみて、所定の化合物という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「流動層炉の炉本体に空果房を燃料として供給するとともに該炉本体の下部から酸化性ガスを供給して、ケイ砂粒子を含む流動媒体とともに該空果房を流動させて流動層を形成し、該流動層中で上記空果房を燃焼させる燃焼方法において、
上記炉本体内へ添加剤を供給し、上記炉本体内中段温度を所定の温度範囲に維持し、ケイ砂粒子表面に所定の化合物を生成させ、
ケイ砂粒子表面に溶融していない所定の化合物を存在させることにより、ケイ砂粒子表面に空果房から放出されたカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応によりSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成され、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物がケイ砂粒子表面に存在することを抑制し、ケイ砂粒子が溶融物により融着・凝集することを防止し、
流動層炉が、炉本体と、該炉本体の上部からの流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体を炉本体へ戻すための戻し管とを有する循環流動層炉である空果房の燃焼方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
「空果房」に関して、本件発明1においては、「アブラヤシ空果房」であるのに対し、甲3発明においては、「EFB」である点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
「上記炉本体内へ添加剤を供給し、上記炉本体内中段温度を所定の温度範囲に維持し、ケイ砂粒子表面に所定の化合物を生成させ、
ケイ砂粒子表面に溶融していない所定の化合物を存在させることにより、ケイ砂粒子表面に空果房から放出されたカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応によりSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成され、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物がケイ砂粒子表面に存在することを抑制し、ケイ砂粒子が溶融物により融着・凝集することを防止し」に関して、本件発明1においては、「アブラヤシ空果房は乾燥燃料中のカリウム含有率が0.7%以上であり、流動層炉内の燃焼領域でガス状のカリウム化合物を放出するものであり、
上記炉本体中段温度を850?900℃に維持し、
上記炉本体内へ石灰石をアブラヤシ空果房の乾燥重量に対し1.4?7.0wt%の量で、かつ、アブラヤシ空果房のカリウム含有重量の2?10倍の重量で供給し、上限値より少なく供給することにより飛灰として排出される石灰石の増加を抑制し、下限値より多く供給することにより上記炉本体内中段温度を850?900℃の温度領域の下で上記石灰石からカルシウム化合物の微粒子を脱離させて、アブラヤシ空果房から放出されたカリウム化合物を吸着して溶融を始めたケイ砂粒子表面に付着、相溶させ、ケイ砂粒子表面で、付着、相溶させたカルシウム化合物とケイ砂の成分であるSiO_(2)とアブラヤシ空果房から放出されたガス状のカリウム化合物とを反応させて、融点が1000℃以上であって炉内温度よりも高いSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を生成させ、
石灰石からカルシウム化合物の微粒子を溶融し始めたケイ砂粒子表面に供給し続けて、ケイ砂粒子表面に溶融していないSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を存在させ続けることにより、ケイ砂粒子表面にアブラヤシ空果房から放出されたガス状のカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応により融点が800℃以下であって炉内温度より低いSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成され、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物がケイ砂粒子表面に存在することを抑制し、ケイ砂粒子が溶融物により融着・凝集し炉本体底部で塊化することを防止し」であるのに対し、甲3発明においては、「上記燃焼塔3内へMgOを含む精錬スラグを供給し、上記燃焼塔3内中段温度を800?900℃に維持し、上記燃焼筒3中段の800?900℃の温度領域の下で上記MgOを含む精錬スラグからMgOの微粒子を脱離させて溶融を始めたケイ砂粒子表面に付着、相溶させ、ケイ砂粒子表面で、付着、相溶させたMgOと流動材Faの成分であるSiO_(2)とEFBから放出されたカリウム化合物とを反応させて、SiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物を生成させ、
流動材Fa表面に溶融していないSiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物を存在させることにより、流動材Fa表面にEFBから放出されたカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応によりSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成され、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物が流動材Fa表面に存在することを抑制し、流動材Faが溶融物により融着・凝集することを防止し」である点(以下、「相違点2」という。)。

<相違点3>
「添加剤」の粒径に関して、本件発明1においては、「石灰石は粒径が88μm?2mmであって流動媒体と共に循環流動層炉内を循環するのに適し捕集部で捕集するのに適した粒径のものである」のに対し、甲3発明においては、そのようなものか明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点2について、検討する。
相違点2に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「上記炉本体内へ石灰石をアブラヤシ空果房の乾燥重量に対し1.4?7.0wt%の量で、かつ、アブラヤシ空果房のカリウム含有重量の2?10倍の重量で供給し」という発明特定事項は、甲3発明は有していない。
また、上記発明特定事項は、甲1及び4ないし7並びに周知文献1ないし5に記載も示唆もされていないし、本件特許の出願時の技術常識であったともいえない。
したがって、甲3発明において、甲1及び4ないし7に記載された事項、周知文献1ないし5に記載された事項並びに技術常識を考慮しても、上記発明特定事項を特定することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
なお、特許異議申立人は、上記発明特定事項は、平成28年4月18日付け取消理由通知書(10ページ第9ないし13行参照。)において説示されたとおり、出願前周知技術である旨主張するが、上記取消理由通知書においては、融点を上昇させて凝集物の発生を抑制する添加剤を、草本系バイオマス(具体的には、オリーブ残渣である。)のカリウム含有量の2?10倍程度の量を供給することは、本件特許の出願前に周知であるとしたものであり、石灰石をアブラヤシ空果房のカリウム含有重量の2?10倍の重量で供給することが周知であるとしたものではない。
よって、甲3発明において、上記発明特定事項を含む相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そうすると、相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明、甲1及び4ないし7に記載された事項、周知文献1ないし5に記載された事項並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1を引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲3発明、甲1及び4ないし7に記載された事項、周知文献1ないし5に記載された事項並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3-4 むすび
したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しない。

4 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由
取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2ないし7)に基づく進歩性違反、甲2に記載された発明及び周知技術(甲1及び甲4ないし7)に基づく進歩性違反並びに甲4に記載された発明及び周知技術(甲2及び3)に基づく進歩性違反である。

(2)甲1ないし7の記載
甲1及び3ないし7の記載は、上記第3 3-2のとおりである。
また、甲2には、「バイオマスガス化システムおよび方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0001】
この発明は、破砕された樹皮、木材の切屑、鋸屑、スラッジおよび他の炭素質燃料または供給原料等のバイオマスから電力を生産するためのガス化システムに関する。特に、この発明は、循環が改善されかつシステム構成要素の侵食が減じられた平行な噴流床熱分解ユニットを動作する、改善された方法に関する。」(段落【0001】)

・「【0013】
平行な噴流床熱分解ユニットを動作する基本的な方法は、フェルドマンらの米国特許第4,828,581号に開示されるものと類似しており、すべてが記載されるかのように引用によりこの明細書中に十分に援用される。図1に示されるように、この発明のガス化装置システムAは一般的にガス化装置20および燃焼器22を含み、これらガス化装置20および燃焼器22は、協動してバイオマスを熱および有用な中間のBTU生成ガスに転換する。燃焼器22は、ガス化装置20におけるバイオマスのガス化の後に残される残留木炭を熱へ転換するよう動作する。燃焼器22で生産される熱は、次いで、ガス化装置20に移されてガス化反応を駆動する。これにより、ガス化反応を駆動するよう加熱するのに別個の燃料源を消費する必要性をなくすことによるシステム効率の向上が可能となる。」(段落【0013】)

・「【0019】
砂および木炭の流れEEはガス化装置サイクロン36から燃焼器22へ指向され、ここで、砂は再び流動化され、木炭は燃焼されて灰になり、砂をガス化装置20へ再循環させる前に再加熱するための熱を与える。一般的には、燃焼器22における砂は下方からの空気GGの注入により流動化され、再び砂および灰の混合物を循環させ、このため砂および灰の混合物は、燃焼器22の頂部領域における出口50を通って出て燃焼器サイクロン分離器52へ達し、そこでガス化装置20への再循環のために砂が分離される。煙道ガスと灰との混合物HHは、燃焼器分離器52の頂部から出て、灰回収サイクロン54に指向される。灰回収サイクロン54は、灰の流れJJを煙道ガスの流れKKから分離する。好ましい実施形態では、灰は、次いで廃棄物として収集され、煙道ガスの流れKKは、未処理の供給原料AAを乾燥させるために熱源として乾燥器30に指向される。」(段落【0019】)

・「【0033】
他の有用な材料がまた、システム動作を改善するためにガス化装置供給原料に加えられてもよい。たとえば、酸化マグネシウム(MgO)を供給原料に加えることにより、ガス化装置システムAにおける灰、砂および木炭の凝集を減じ得ることが判明した。この凝集は一般的には、燃焼器20に存在する高温での灰の部分的な融解によりもたらされ、さらに、灰、砂およびいずれの残留木炭が、流動化システムにおいて流れを妨げる恐れのある流動化できない塊に引続き凝集する結果である。先行技術のシステムでは、酸化カルシウム(CaO)およびアルミナ(Al_(2)O_(3))が、灰を希釈することにより灰の凝集を減少させるために加えられた。しかしながら、MgOを加えると凝集を減じるのにさらに有効であることが判明した。MgOが存在することで、灰の混合物の低温の共融点が化学的に変更され、融点が上がり、融解による灰の凝集を効果的に減ずる。当業者は、灰混合物の低温の共融点を変更してその融点を上げる他の材料がまたこの発明においても有用であり得ることを認める筈である。好ましくは、MgOは、この発明の供給原料に、ある重量%で、または1%から25%の間の供給原料重量で加えられる。さらに好ましくは少なくとも2%、より好ましくは2%から10%のMgOが、この発明に従って供給原料に加えられて凝集を減ずる。
【実施例】
【0034】
実施例1:
雑種ポプラおよびスイッチグラスが、この発明のガス化システムで用いるために高成長種の供給原料としてテストされた。これら高成長種の供給原料は結果として、ガス化システムの動作を困難にし得る灰の成分となる。高成長種は一般的にその灰において或る成分を凝縮すると仮定されている。これらは、灰の分析においてそれぞれアルカリおよびアルカリ土類酸化物として検出される、より溶けやすい可溶性アルカリおよびアルカリ土類元素により示される。雑種ポプラおよびスイッチグラスの灰が分析されると、表1に示されるように、テストされた先の木材供給原料に比べて、高レベルのカリウムおよびリン、ならびにより高レベルおよびより低レベルの両方のシリカが検出された。
【0035】
【表1】
・・・(略)・・・
【0036】
雑種ポプラの供給原料での最初のテストのうち2つのテストを行なっている間、ある安定性がガス化装置システムにおける砂の循環において認められた。この安定性は、融点が低い灰の成分、または砂粒子の表面上の灰酸化物の反応により生じる灰の凝集物を形成するように燃焼器の砂の床において凝集した結果であると決定した。灰の凝集物は、凝集が緩く、接触すると室温で容易に分解された。雑種ポプラ灰の分析の検討により、この灰が95.0%の塩基性酸化物であることが示された。したがって、1つの起こり得る凝集のメカニズムは、塩基性灰による酸性の床原料(SiO_(2))の溶融であろう。しかしながら、(以下に説明される)DTAテストにおける灰-CaO混合物の凝集は、凝集の原因となる可能性のあるものとして、砂床の灰の溶融を除外している。」(段落【0033】ないし【0036】)

・「【0042】
燃焼器の流動化砂の床における酸化物としてのカリウムがたくさんたくわえられているので、特に雑種ポプラの灰の場合には、K_(2)OとSiO_(2)との間に局所的な反応が発生して、砂(SiO_(2))粒子の表面上の共融混合物に繋がる化合物を形成する可能性がある。SiO_(2)におけるK_(2)Oの濃度勾配が、砂粒子を囲む層において起こり得る。
【0043】
4ケイ酸カリウムまたは関連する共融混合物が問題となる場合、床における凝集を防ぐために、ケイ酸カリウムの形成を防止するか、または形成後に珪酸塩を変換させなければならない。他の種類の木材の灰との直接比較として、DTAテストがパイン材の灰で行なわれた。図7に示されるように、この曲線は、恐らくはパイン材の灰における低レベルのK_(2)Oのせいで、ポプラ材の灰ほど吸熱が激しくないことを示している。加えて、この材料はサンプルのカップから取り除かれると凝集されなかった。
【0044】
先の実験では、カオリン粘土等の添加剤およびCaOを加えることにより、灰が砂の床を凝集する傾向を減じ得ることが示された。こうして、これらの物質は、DTAにおいて、木材の灰のみか、または木材の灰と床の砂との1:1の混合物のどちらかでテストされた。これらのテストおよびその結果は表2に一覧で示される。カオリン粘土は、図8に780Cで持続して存在するピークにより示される凝集と、凝集物の形成とを防ぐには効果的ではなかった。したがって、ケイ酸カリウムの形成に対する反応率は、凝集を防ぐ手段として、カリウムが(アルミナ等の)別の酸性酸化物と結合することを効果的に防ぐのに十分なほど高い。床の材料として、塩基性酸化物を砂の代わりに用いることにより、融点の低い珪酸塩の形成を灰自体の成分により形成され得る程度に制限するための手段が提供される。雑種ポプラの灰の場合、灰におけるシリカの低い濃度により、灰において形成できる珪酸塩の量が制限される。しかしながら、床の砂のせいで、形成し得る珪酸塩のレベルは依然として問題となるおそれがある。」(段落【0042】ないし【0044】)

・「【0049】
K_(2)OSiO_(2)系においてMgOが融点に与える影響を支持する情報が文献中に存在する。5モル%レベルでのK_(2)OMgOSiO_(2)系についての三成分図(図10)を調べてみると、K_(2)O-SiO_(2)系の770C以下の融点が900C?1000Cへ上昇することが示唆されている。」(段落【0049】)

(3)判断
そこで検討するに、甲1ないし7のいずれにも、上記第3 3 3-3(1)アで示した相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていないし、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は本件特許の出願時の技術常識であったともいえない。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2ないし7)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、甲2に記載された発明及び周知技術(甲1及び甲4ないし7)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないし、甲4に記載された発明及び周知技術(甲2及び3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
また、本件発明2及び3は、請求項1を引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2ないし7)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、甲2に記載された発明及び周知技術(甲1及び甲4ないし7)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないし、甲4に記載された発明及び周知技術(甲2及び3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しない。

第4 結語
以上のとおり、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アブラヤシ空果房の燃焼方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層炉の炉本体内にて流動媒体を酸化性ガスにより流動させた流動層中でアブラヤシ空果房を燃焼させるアブラヤシ空果房の燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の防止対策として、バイオマスエネルギーの利用が注目されている。バイオマスは、化石資源ではなく生物由来の有機性資源であるため、再生可能である。なかでも植物由来のバイオマスは、二酸化炭素排出量を削減する効果が特に期待されている。
【0003】
バイオマスは有機物であるので、燃焼させると二酸化炭素が発生する。植物由来のバイオマスは、その植物の成長過程で光合成により二酸化炭素から変換された炭素資源を含んでいる。要するに、植物由来のバイオマスの燃焼により発生する二酸化炭素は、その植物が成長過程で大気中から吸収した二酸化炭素に由来している。したがって、バイオマスを燃焼させても、全体としては大気中の二酸化炭素量を増加させていないとみなすことができる。すなわち、バイオマスは、カーボンニュートラルなエネルギー源である。こうした植物由来のバイオマスとして、草本系バイオマス、特にアブラヤシ空果房やスィッチグラスが着目されている。
【0004】
アブラヤシの空果房は、アブラヤシの果実からパーム油を採取した後に残る一部である。アブラヤシ果房は直径数cmの果実を数百個有しており、果実は果房の芯に強く結合している。この結合を弱めて芯から果実を容易に分離するため、さらに搾油成分の変質を抑制するために、果房は、まず蒸気加熱される。その後、回転篩等により果実が脱果される。果実が脱果された残りの部分が空果房(Empty Fruit Bunch、EFB)である。空果房
は、大量に排出されるものの水分を多く含んでいるため、有効利用されることなく野外放置や野焼きなどで廃棄されていた。
【0005】
近年、アブラヤシ空果房をボイラー燃料として利用することが試みられており、そのための装置が提案されている。かかる装置は、蒸気圧力下で回転篩により果実を空果房から分離する蒸熱脱果機、脱果後の空果房を裁断する空果房裁断機、および裁断後の空果房を圧搾する空果房圧搾機を備えている。空果房は空果房裁断機により裁断された後、空果房圧搾機により水分を除去され、ボイラー燃料として使用される。
【0006】
また、スィッチグラスは、多年生イネ科植物で成長が著しく早いエネルギー作物であり、主に茎部を燃料として用いることが検討されている。
【0007】
このような草本系バイオマスをボイラー燃料として利用する具体的な技術としては、炉内に供給された粒子状の流動媒体(以下、「流動媒体粒子」ともいう)を、炉下部から酸化性ガスを供給することにより流動させた流動層中で、バイオマス粒を燃焼させる流動層炉を用いる方法が検討されている。また、流動層炉では、流動媒体粒子として、安価で汎用的なケイ砂が用いられることが多い。
【0008】
特許文献1には、草本系バイオマスではなく、汚泥や廃棄物などの処理対象物を燃焼するための循環流動層炉が開示されている。この特許文献1の循環流動層炉は、炉本体としてのライザと、流動媒体を捕集してライザへ戻すダウンカマーとで主に構成され、ダウンカマーは、該ライザの上部と接続配管で接続され該ライザから排ガスとともに送られた流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体をライザの下部に戻すための戻し管と、ライザからのガスが捕集部内を上昇するのを防止するシール部を有している。
【0009】
上記循環流動層炉では、ライザの下部から上方へ向けて一次空気がそして該ライザの側部から二次空気が供給されていて、該ライザに投入された処理対象物が砂などの流動媒体粒子とともに流動することによりライザ内に流動層が形成されている。上記処理対象物は該流動層中で燃焼され、ライザで発生した排ガスおよび流動媒体粒子の一部がダウンカマーへ送られ、固気分離される。排ガスは、捕集部から外部の排ガス処理設備へと排出される。また、流動媒体粒子は、捕集部で捕集されて降下して、戻し管を経てライザへ戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-240209
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
アブラヤシ空果房やスィッチグラスなどの草本系バイオマスには、カリウムが多く含まれている。例えば草本系バイオマスにおけるカリウムの含有率は、乾燥ベースで0.7?3wt%程度である。したがって、草本系バイオマスを処理対象物として、例えば特許文献1の循環流動層炉などの流動層炉で燃焼させて燃焼熱エネルギーを回収する際には、このカリウムに起因して以下のような問題が生じる。
【0012】
ケイ砂を流動媒体粒子とする場合、流動層炉では、燃焼により草本系バイオマスから放出されたガス状のカリウム化合物がケイ砂粒子表面に吸着され、ケイ砂粒子表面に融着物が形成される。この結果、ケイ砂粒子同士が融着し、ケイ砂の凝集そして塊化が生じて、ケイ砂粒子の流動状態を維持できなくなり、上記流動層炉の正常な運転が妨げられる。
【0013】
流動媒体が凝集そして塊化して良好な流動をしていない流動層中に草本系バイオマスを投入すると、該草本系バイオマスは流動媒体中に均等に分散できないため、部分的に集まった状態で燃焼することになる。これにより、炉内では発熱する領域が偏在することになり、局所的な高温部分であるホットスポットが形成されることになるため、これに起因するNOx等の有害ガスの発生や、炉内耐火物の損傷、耐用寿命の短縮、COの発生などの問題が生じ、草本系バイオマスの安定した燃焼が困難となる。
【0014】
また、流動媒体粒子が凝集する場合、流動状態を維持するためには、大量の流動媒体粒子の抜出しと新規流動媒体粒子の補充とを行って流動媒体粒子を入れ替える操作を頻繁に行う必要があることから、連続して運転することができないという問題や、新規流動媒体粒子の購入と抜き出した流動媒体粒子の廃棄に多くの費用が必要となるという問題も生じる。
【0015】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、流動層炉の流動層において、流動媒体粒子の凝集を抑制し、アブラヤシ空果房を安定して燃焼することのできる、アブラヤシ空果房の燃焼方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者は、流動媒体粒子の融着・凝集の原因を検討すべく、まず、種々のバイオマスの灰分を分析した。分析の結果を以下の表1に示す。分析したバイオマスは、木屑、PKS、EFB(アブラヤシ空果房)、スィッチグラスである。「PKS」とは、アブラヤシの種子から搾油した残渣である。
【0017】
【表1】

【0018】
表1に挙げられたバイオマスのうちEFB(アブラヤシ空果房)やスィッチググラスは、乾燥ベースで0.7?3wt%程度のカリウムを含有する。次に、発明者は、このような高いカリウム含有率の草本系バイオマスを循環流動層炉内で燃焼する際の流動媒体粒子(ケイ砂)の挙動を詳細に検討した。そして、発明者は、上記草本系バイオマスが流動媒体粒子に融着を生じさせるメカニズムに関して下記のとおりであることを見出した。
【0019】
循環流動層炉に投入された草本系バイオマスは燃焼し、炉本体の燃焼領域でガス状のカリウム化合物を放出する。燃焼領域に共存するケイ砂粒子表面はこのカリウム化合物を吸着し、カリウムはケイ砂の結晶内部に浸透してガラス状の反応物(SiO_(2)-K_(2)O化合物)を生成し、生成した反応物はその融点が800℃以下と炉内温度より低いため溶融状態となる。そして、カリウムが浸透したケイ砂はその表面に溶融状態のSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成しているため、数粒のケイ砂粒子同士が融着・凝集する。融着・凝集したケイ砂は炉本体の炉底部に落下して更に融着・凝集し、塊を形成する。なお、草本系バイオマス以外の廃棄物を流動層炉で燃焼する際には燃焼灰が溶融して燃焼灰によって流動粒子が融着する事例もあるが、草本系バイオマスの燃焼灰は炉内温度では溶融せず、飛灰としてガスと共に炉本体から排出されるので、融着の原因にはならない。草本系バイオマスでは放出されたカリウム化合物により流動粒子表面に溶融状態の反応物が生成されて流動粒子が融着することが分かった。
【0020】
発明者は、以下のように添加剤を供給することにより、ケイ砂同士の融着・凝集の発生を防止できることを見出した。添加剤として、石灰石(CaCO_(3))、消石灰(Ca(OH)_(2))、ドロマイト((CaCO_(3))_(m)(MgCO_(3))_(n))のうち少なくとも一つを、流動層炉内に投入された草本系バイオマスに添加し、これらから脱離したカルシウム化合物やマグネシウム化合物の微粒子を、草本系バイオマスからカリウム化合物が放出される炉内に共存させることにより、これらの微粒子が、溶融を始めたケイ砂表面に付着し、SiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物やSiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物が生成される。これらの反応物は融点が1000℃以上と炉内温度より高く、ケイ砂表面に溶融融液が存在しないためケイ砂相互の融着・凝集を防止できる。このように、添加剤を供給することにより、ケイ砂粒子表面に草本系バイオマスから放出されたカリウム化合物により溶融物が生成されることを抑制し、ケイ砂相互の融着・凝集を防止できる。
【0021】
また、ケイ砂表面へのカルシウム化合物やマグネシウム化合物の微粒子の付着を、ケイ砂相互の融着が進む前に、炉本体中段の最高温度領域で生じさせることにより、ケイ砂表面へ微粒子を相溶させSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物やSiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物の生成を効果的に進ませることができる。このとき、炉本体内の温度はケイ砂相互の融着防止のために低下させる必要はなく、850?900℃に維持することができ、効率よく草本系バイオマスを燃焼することができる。また、添加剤は、草本系バイオマスのカリウム含有重量の2?10倍の重量を供給すれば、添加剤の過不足ない供給量で、ケイ砂同士の融着を十分に防止できる。
【0022】
<第一発明>
本発明に係る草本系バイオマスの燃焼方法は、流動層炉の炉本体に草本系バイオマスを供給するとともに該炉本体の下部から酸化性ガスを供給して、ケイ砂を含む流動媒体とともに該草本系バイオマスを流動させて流動層を形成し、該流動層中で上記草本系バイオマスを燃焼させる。
【0023】
かかる燃焼方法において、本発明では、上記炉本体内へ石灰石、消石灰またはドロマイトのうち少なくとも一つを添加剤として供給することを特徴としている。
【0024】
炉本体内へ上記添加剤を供給することにより、該添加剤から脱離したカルシウム化合物やマグネシウム化合物の微粒子が、草本系バイオマスからカリウム化合物が放出されている炉内に共存し、これらの微粒子が、溶融を始めたケイ砂の表面に付着し、SiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物やSiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物が生成される。これらの反応物は融点が炉内温度より高く、ケイ砂表面に溶融融液が存在しないためケイ砂相互の融着・凝集を防止できる。
【0025】
添加剤を炉本体内へ直接供給することとしてもよい。また、流動層炉が、炉本体と、該炉本体の上部からの流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体を炉本体へ戻すための戻し管とを有する循環流動層炉である場合には、上記戻し管を経由させて添加剤を上記炉本体に供給することとしてもよい。また、流動層炉が循環流動層炉の場合には、添加剤は炉内の燃焼領域に存在しなければ融着防止効果を発揮できないため、添加剤を流動媒体と共に循環流動層炉内を循環するようにする。そのために、添加剤の粒径は流動媒体と共に循環流動層炉内を循環するのに適した粒径のものを用いる。
【0026】
添加剤の供給量が、供給する草本系バイオマスのカリウム含有重量の2?10倍であることが好ましい。これによって、添加剤の過不足ない供給量で、ケイ砂同士の融着を十分に防止できる。
【0027】
<第二発明>
本発明に係る草本系バイオマスの燃焼装置は、草本系バイオマスが投入されるとともに下部から酸化性ガスが供給されて、ケイ砂を含む流動媒体とともに該草本系バイオマスを流動させて流動層を形成し、該流動層中で上記草本系バイオマスを燃焼させる流動層炉の炉本体を有する。
【0028】
かかる草本系バイオマスの燃焼装置において、本発明では、上記炉本体内へ石灰石、消石灰またはドロマイトのうち少なくとも一つを添加剤として供給する添加剤供給部を有することを特徴としている。
【0029】
添加剤供給部が炉本体内へ添加剤を供給することにより、該添加剤から脱離したカルシウム化合物やマグネシウム化合物の微粒子が草本系バイオマスからカリウム化合物が放出されている炉内に共存され、これらの微粒子がケイ砂の表面に付着し、SiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物やSiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物が生成される。これらの反応物は融点が炉内温度より高く、ケイ砂表面に溶融融液が存在しないためケイ砂相互の融着・凝集を防止できる。
【0030】
添加剤供給部は、添加剤が炉本体へ草本系バイオマスと共にもしくは別途に供給されるように設けられていることとしてもよい。また、流動層炉が、炉本体と、該炉本体の上部からの流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体を炉本体へ戻すための戻し管とを有する循環流動層炉である場合には、添加剤供給部は、添加剤が上記戻し管へ供給されるように設けられていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、炉本体内へ石灰石、消石灰またはドロマイトのうち少なくとも一つを添加剤として供給することにより、該添加剤から脱離したカルシウム化合物やマグネシウム化合物の微粒子が草本系バイオマスからカリウム化合物が放出されている炉内に共存され、これらの微粒子がケイ砂の表面に付着し、SiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物やSiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物が生成される。これらの反応物は融点が炉内温度より高く、ケイ砂表面に溶融融液が存在しないためケイ砂相互の融着・凝集を防止できる。したがって、炉本体底部でケイ砂が塊化することもないので、流動媒体粒子が良好に流動し、上記流動層炉の正常な運転を維持でき、草本系バイオマスを安定して燃焼させることができる。また、局所的な高温部分であるホットスポットに起因するNOx等の有害ガスの発生、炉内耐火物の損傷、耐用寿命の短縮、COの発生などの問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態に係る草本系バイオマスの燃焼装置の概略構成図である。
【図2】第二実施形態に係る草本系バイオマスの燃焼装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0034】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る草本系バイオマスの燃焼装置の概略構成図である。該燃焼装置は、循環流動層炉1と、該循環流動層炉1に後述の添加剤を供給する添加剤供給部40とを有している。該循環流動層炉1は、炉本体にて流動媒体を酸化性ガスにより流動させた流動層中で、該炉本体内に供給された燃料を燃焼させる。本実施形態では、燃料として草本系バイオマスであるアブラヤシ空果房(EFB)が供給されるようになっている。また、流動媒体としてはケイ砂が用いられている。
【0035】
本実施形態では、アブラヤシ空果房が燃料である例を説明するが、燃料はこれに限られず、例えばスィッチグラス等のカリウム含有率が高い草本系バイオマス(乾燥燃料中のカリウム含有率が例えば0.7%以上)であればよい。また、流動媒体としてのケイ砂は流動媒体の一部に含まれていればよい。
【0036】
図1に示されるように、循環流動層炉1は、主に、炉本体としてのライザ10と、流動媒体や添加剤を捕集してライザ10へ戻すダウンカマー20とで構成されている。該ダウンカマー20は、上記ライザ10の上部と接続配管30で接続され該ライザ10から排ガスとともに送られた流動媒体や添加剤を捕集する捕集部21と、該捕集部21で捕集された流動媒体および添加剤をライザ10の下部に戻すための戻し管22と、ライザ10からのガスが捕集部21内を上昇するのを防止するシール部23とを有している。
【0037】
ライザ10は、一次空気を上方へ向けて向き込むための散気管11が炉内の下部に設けられている。また、該ライザ10の下部の側壁には、炉内に燃料たるアブラヤシ空果房および後述の添加剤としての石灰石を供給するための供給口13と、炉内に二次空気を吹き込むための二次空気吹き込み口12とが下方から順次設けられている。
【0038】
添加剤供給部40は、図1に示されるように、添加剤としての石灰石を、供給口13へ供給されるアブラヤシ空果房へ混入するように供給するようになっている。したがって、本実施形態では、アブラヤシ空果房とともに石灰石が上記供給口13からライザ10内に直接供給される。添加剤供給部40が石灰石を供給する位置は、これに限られず、例えばライザ10の側壁に供給口13とは異なる石灰石の供給口を設けて、該供給口から石灰石が供給されるようにしてもよい。
【0039】
以下、循環流動層炉1の動作を、ライザ10でのアブラヤシ空果房の燃焼を中心に説明する。該循環流動層炉1では、ライザ10に流動媒体が装入されている。そして、該ライザ10にて、散気管11及び二次空気吹き込み口12から炉内に空気を吹き込むことにより、該ライザ10内に供給されたアブラヤシ空果房および石灰石を上記流動媒体とともに流動化させて流動層を形成し、その過程で該流動層にてアブラヤシ空果房を燃焼させる。
【0040】
具体的には、上記流動媒体は、ライザ10内でその下方から吹き込まれる一次空気により流動状態となり、該ライザ10内の下部で流動媒体による濃厚層を形成し、その保有する高い熱容量および撹拌効果によりアブラヤシ空果房の乾燥及び揮発分の放出を促進させる。また、上記ライザ10内の上部には、一次空気及び二次空気の吹き込みにより吹き上げられて流動媒体による希薄層が形成され、その流動媒体の保有する熱容量および撹拌効果によりアブラヤシ空果房の燃焼を行う。つまり、このような循環流動層炉は、ライザ10内に流動媒体による濃厚層と希薄層とから成る流動層を形成することで、チャー(未燃炭素分)の発生を防止して、効率的にアブラヤシ空果房を燃焼させる。また、ライザ10内の燃焼領域は850?900℃程度に維持される。
【0041】
ライザ10でのアブラヤシ空果房の燃焼により生じた排ガスは、接続配管30を経てダウンカマー20の捕集部21に供給されるようになっている。また、流動媒体および添加剤も、その一部が上記排ガスとともに上記捕集部21へ供給される。該捕集部21では、それらを排ガスや比較的粒径の小さい灰などと、流動媒体、添加剤や比較的粒径の大きな灰などとに分離する。したがって、添加剤としての石灰石は、流動媒体と共に循環流動層炉内を循環するのに適した粒径のものであって、上記捕集部21で捕捉するのに適した粒径(例えば、88μm?2mm程度)のものであることが好ましい。捕集部21で分離した排ガスは、比較的粒径の小さな灰などを同伴して、該捕集部21の上部から排ガス処理設備へと送られ、除塵後に煙突から外部へと放出される。捕集部21で回収した流動媒体、添加剤および比較的粒径の大きな灰などは、シール部23及び戻し管22を介してライザ10の下部へと戻される。
【0042】
本実施形態では、ライザ10内で燃焼したアブラヤシ空果房は燃焼領域でガス状のカリウム化合物を放出する。また、アブラヤシ空果房と共にライザ10内に供給された添加剤としての石灰石からカルシウム化合物を含む微粒子が脱離する。添加剤として石灰石を添加しない場合にはガス状のカリウム化合物はケイ砂の表面に吸着され、融点が炉内温度以下である800℃以下のSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成されケイ砂の表面に溶融物が存在しケイ砂相互の融着が生じるが、石灰石を添加することにより、カルシウム化合物を含む微粒子が共存するため、このカルシウム化合物を含む微粒子が、カリウム化合物が吸着され溶融を始めたケイ砂表面に付着し、ケイ砂の表面に反応物としてSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物が生成される。この反応物の融点は、1000℃以上であり、炉内温度より高く、ケイ砂表面に溶融融液が存在しないためケイ砂相互の融着・凝集を防止できる。溶融し始めたケイ砂の表面にカルシウム化合物の供給が続くため、このSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物である反応物の融点は、炉内温度より高くなるように維持される。このように、石灰石を供給することにより、ケイ砂粒子表面にアブラヤシ空果房から放出されたカリウム化合物により溶融物が生成されることを抑制し、ケイ砂相互の融着・凝集を防止できる。また、上記石灰石は、アブラヤシ空果房のカリウム含有重量の2?10倍程度の重量が供給されることが好ましい。また、上記石灰石は、アブラヤシ空果房の乾燥重量の1.4?7.0wt%の重量が供給されることが好ましい。石灰石の供給量が下限値より少ないとケイ砂相互の融着・凝集を防止する効果が無いし、上限値より多いと、反応に寄与しないまま飛灰として排出される比率が増加するため経済的に不利である。これによって、石灰石の過不足ない供給量でケイ砂同士の融着・凝集を十分に防止できる。
【0043】
このように本実施形態では、添加剤として石灰石を、供給口13へ供給されるアブラヤシ空果房へ混入し、ライザ10に供給することにより、流動媒体粒子であるケイ砂相互の融着・凝集が防止されるので、ライザ10の炉本体底部でケイ砂が塊化することもない。したがって、流動媒体粒子は良好に流動し、循環流動層炉1の正常な運転を維持でき、アブラヤシ空果房を安定して燃焼させることができる。また、局所的な高温部分であるホットスポットに起因するNOx等の有害ガスの発生、炉内耐火物の損傷、耐用寿命の短縮、COの発生などの問題を回避できる。
【0044】
さらに、上述したように、本実施形態では流動媒体粒子相互の融着・凝集が防止されるので、流動状態を維持するために従来頻繁に必要だった流動媒体粒子の抜出しや新規流動媒体粒子の補充を行わなくて済む。したがって、循環流動層炉1の確実な連続運転を可能とするとともに、頻繁に必要だった新規流動媒体粒子の購入と抜き出した流動媒体粒子の廃棄に起因する費用の発生を防止できる。
【0045】
また、流動媒体粒子としてアルミナなどを使用すれば、添加剤を供給しなくとも流動媒体粒子相互の融着・凝集を回避することが可能ではあるが、アルミナ等の流動媒体は高価であり、その分、費用が嵩んでしまう。これに対し、本実施形態では、少量の添加剤の投入により、安価なケイ砂を流動媒体粒子として使用できるので、結果として、費用を抑制することができる。
【0046】
<第二実施形態>
第一実施形態では、添加剤が草本系バイオマスとともに循環流動層炉のライザへ直接供給されることとしたが、添加剤が供給される位置はこれに限られない。図2は、第二実施形態に係る燃焼装置の概略構成図である。この図2に見られるように、本実施形態では、添加剤供給部40は、添加剤が戻し管22へ供給されるように設けられており、該添加剤が戻し管22を介して流動媒体粒子とともにライザ10内へ供給されるようになっている。
【0047】
第一および第二実施形態では、添加剤として石灰石(CaCO_(3))を用いることとしたが、添加剤はこれに限られず、例えば、消石灰(Ca(OH)_(2))やドロマイト((CaCO_(3))_(m)(MgCO_(3))_(n))であってもよい。添加剤が消石灰である場合には、既述した石灰石の場合と同様に、流動媒体粒子としてのケイ砂の表面にSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物が生成される。また、添加剤がドロマイトである場合には、ケイ砂の表面にSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物とSiO_(2)-K_(2)O-MgO化合物が生成される。いずれの場合であっても、ケイ砂表面には炉内温度で溶融しない反応物が生成されるため、ケイ砂表面に溶融融液が存在することがないので、ケイ砂相互の融着・凝集を防止できる。添加剤がドロマイトである場合には、アブラヤシ空果房の乾燥重量の1?5wt%の重量が供給されることが好ましい。また、添加剤は、必ずしも石灰石、消石灰およびドロマイトのうち一つだけで構成する必要はなく、これらの混合物であってもよいことは言うまでもない。
【0048】
また、第一実施形態では、本発明を循環流動層炉に適用した形態を説明したが、これに限らず、本発明はダウンカマーを有さない流動層炉にも適用できる。その場合には、草本系バイオマスとともに添加剤を草本系バイオマス供給口から流動層炉に供給してもよいし、添加剤を草本系バイオマス供給口と異なる供給口から流動層炉に供給してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 循環流動層炉
10 ライザ(炉本体)
21 捕集部
22 戻し管
40 添加剤供給部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層炉の炉本体にアブラヤシ空果房を燃料として供給するとともに該炉本体の下部から酸化性ガスを供給して、ケイ砂粒子を含む流動媒体とともに該アブラヤシ空果房を流動させて流動層を形成し、該流動層中で上記アブラヤシ空果房を燃焼させる燃焼方法において、
アブラヤシ空果房は乾燥燃料中のカリウム含有率が0.7%以上であり、流動層炉内の燃焼領域でガス状のカリウム化合物を放出するものであり、
上記炉本体内中段温度を850?900℃に維持し、
上記炉本体内へ石灰石をアブラヤシ空果房の乾燥重量に対し1.4?7.0wt%の量で、かつ、アブラヤシ空果房のカリウム含有重量の2?10倍の重量で供給し、上限値より少なく供給することにより飛灰として排出される石灰石の増加を抑制し、下限値より多く供給することにより上記炉本体内中段の850?900℃の温度領域の下で上記石灰石からカルシウム化合物の微粒子を脱離させて、アブラヤシ空果房から放出されたカリウム化合物を吸着して溶融を始めたケイ砂粒子表面に付着、相溶させ、ケイ砂粒子表面で、付着、相溶させたカルシウム化合物とケイ砂の成分であるSiO_(2)とアブラヤシ空果房から放出されたガス状のカリウム化合物とを反応させて、融点が1000℃以上であって炉内温度より高いSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を生成させ、
石灰石からカルシウム化合物の微粒子を溶融し始めたケイ砂粒子表面に供給し続けて、ケイ砂粒子表面に溶融していないSiO_(2)-K_(2)O-CaO化合物を存在させ続けることにより、ケイ砂粒子表面にアブラヤシ空果房から放出されたガス状のカリウム化合物とケイ砂のSiO_(2)との反応により融点が800℃以下であって炉内温度より低いSiO_(2)-K_(2)O化合物が生成され、SiO_(2)-K_(2)O化合物の溶融物がケイ砂粒子表面に存在することを抑制し、ケイ砂粒子が溶融物により融着・凝集し炉本体底部で塊化することを防止し、
流動層炉が、炉本体と、該炉本体の上部からの流動媒体を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集された流動媒体を炉本体へ戻すための戻し管とを有する循環流動層炉であり、
石灰石は粒径が88μm?2mmであって流動媒体と共に循環流動層炉内を循環するのに適し捕集部で捕集するのに適した粒径のものであることを特徴とするアブラヤシ空果房の燃焼方法。
【請求項2】
石灰石を炉本体内へ直接供給することとする請求項1に記載のアブラヤシ空果房の燃焼方法。
【請求項3】
戻し管を経由させて石灰石を炉本体に供給することとする請求項1に記載のアブラヤシ空果房の燃焼方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-02 
出願番号 特願2011-165204(P2011-165204)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 本庄 亮太郎鈴木 貴雄  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 加藤 友也
三島木 英宏
登録日 2015-06-19 
登録番号 特許第5761568号(P5761568)
権利者 JFEエンジニアリング株式会社
発明の名称 アブラヤシ空果房の燃焼方法  
代理人 藤岡 努  
代理人 藤岡 努  
代理人 藤岡 徹  
代理人 藤岡 徹  

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