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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1326994 |
異議申立番号 | 異議2017-700069 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-01-27 |
確定日 | 2017-04-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5964560号発明「乳化型整髪料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5964560号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第5964560号に係る発明は、平成23年8月11日に特許出願され、平成28年7月8日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人 金山愼一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2 本件発明 本件の請求項1-2に係る発明(以下、「本件発明1」-「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1-2に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】 「次の(A)?(E)成分を含有する乳化型整髪料。 (A)キャンデリラロウ 1?15質量% (B)揮発性炭化水素 0.5?15質量% (C)パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上 0.5?12質量% (D)下式(1)で示される直鎖状メチルポリシロキサン 0.05?10質量% (E)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.01?0.5質量% 【化1】 ![]() (nは10?3000の整数である。)」 【請求項2】 「(D)成分の直鎖状メチルポリシロキサンの平均重合度nが15?2000である請求項1記載の乳化型整髪料。」 (以下、【請求項1】の(D)成分に係る直鎖状メチルポリシロキサンを「化1直鎖状メチルポリシロキサン」という。」 3 申立ての理由の概要 申立人は、特許異議申立書において、本件発明1-2は、甲第1号証及び甲第2-9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであり(「理由1」という。)、甲第10号証及び甲第2-9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであり(「理由2」という。)、甲第11号証及び甲第1-9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであり(「理由3」という。)、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである旨主張する。 <証拠方法> 甲第1号証:特開2007-15935号公報 甲第2号証:「化粧品原料製品カタログ」、日清オイリオ株式会社、 2003年5月発行、3頁(サラコスP-8【パルミチン酸 オクチル】) 甲第3号証:特開2011-126829号公報 甲第4号証:発売日2009年9月1日の「ロレッタ メイクアップミルク (グラマラス)」に関する有限会社久光工房のウェブページ、 2017年1月13日検索 甲第5号証:光井武夫編、「新化粧品学」第2版、南山堂、 2001年1月18日発行、145頁、157-158頁 甲第6号証:「パーソナルケア用シリコーン」カタログ、 東レ・ダウコーニング株式会社、2010年5月発行、2頁 (ジメチルシリコーンオイル) 甲第7号証:特開2009-91259号公報 甲第8号証:特開2005-179337号公報 甲第9号証:特開2004-67653号公報 甲第10号証:特開2009-13125号公報 甲第11号証:特開2009-161488号公報 (以下、「甲第1号証」…「甲第11号証」を、「甲1」…「甲11」という。) (1)理由1について ア 甲1に記載された事項 (ア)「【請求項1】 次の成分(A)および(B) (A)20℃において固体のワックス (B)沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素および/または珪素数が2?8の揮発性シリコーン を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比が1:3?3:1であることを特徴とする整髪料。 【請求項2】 更に、成分(C)エステル油を含有する請求項1に記載の整髪料。」 (イ)「【0008】 すなわち、本発明の目的とするところは、のびが良く、べたつきが少なく、毛髪に対して高いセット力によりヘアアレンジを可能にし、そのアレンジした髪型が長時間持続する優れたセット保持力を有する整髪料を提供することにある。 … 【発明の効果】 【0011】 本発明の整髪料によれば、のびが良く、べたつきが少なく、毛髪に対して高いセット力によりヘアアレンジを可能にし、そのアレンジした髪型が長時間持続する優れたセット保持力を有することができる。」 (ウ)「【0013】 本発明における(A)成分であるワックスは、20℃において固体の形状を示すものであることが必須である。ここで固体の形状とは、結晶質のものを指す。この固体のワックスとしては、具体的には、ロウ類、炭化水素類、油脂類等があげられる。例えば、ロウ類としては…、キャンデリラロウ…等があげられ、…これら固体のワックスの中でも、べたつきの無さと毛髪のセット性の点で…、キャンデリラロウ…が特に好ましい。 【0014】 本発明においては、これら固体のワックスの中から一種または二種以上を適宜選択して用いることができ、その配合量としては、整髪料の全量に対して5?30%が好ましく、更に好ましくは10?20%である。この配合量であれば、良好なセット性を得ることができ、なおかつ使用時に取り易くなる組成物の硬度が得られるため好ましい。」 (エ)「【0015】 本発明における(B)成分として選択されるものは、沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素および珪素数が2?8の揮発性シリコーンであり、これらは単独で配合しても、二種以上を組み合わせて配合してもよい。 【0016】 沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素としては、イソブテンとn-ブテンを共重合したものを水素添加して得られる炭素数12?28の軽質流動イソパラフィン、石油から精製して得られる揮発性の炭化水素混合物である炭素数6?30の軽質流動パラフィンがあげられ、それらの市販品を例示すると、日本油脂社製のNAS-3、NAS-4、NAS-5、エクソン社製のアイソパーC、同D、同E、同E、同G、同H、同K、同L、同M、シェル社製のシェルゾール71、日本石油化学社製の日石アイメゾール300、同400、フィリップ社製のソルトロール100、同130、同22等があげられる。 【0017】 珪素数が2?8の揮発性シリコーンとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサンおよびデカメチルテトラシロキサン、メチルトリメチコン等があげられ、これらは通常、沸点が100?260℃の範囲にある。それらの市販品を例示すると、信越化学社製のKF-96A-1cs、KF-96A-1.5cs、KF-995、TMF-1.5、東レダウコーニングシリコーン社製のSH244、SH344、SH245、DC345、DC246、SH200C-1cs、SH200C-1.5cs、GE東芝シリコーン社製のTSF404、TSF405、TSF4045、TSF451-1A、TSF451-1.5A等があげられる。 【0018】 本発明においては、成分(B)の配合量は、全組成物中に5?30%が好ましく、更に好ましくは10?20%である。この配合量であれば、ワックスの溶解性が良好であり、組成物よりワックスが固形となって析出したり、組成物が分離することもない。また、良好なセット性を得ることもでき好ましい。」 (オ)「【0020】 また、本発明においては、成分(C)であるエステル油を配合することが好ましい。エステル油は固体ワックスを溶解或いは分散させ、析出を防止してセット性を高めるために配合され、脂肪酸とアルコールとのエステル体を主成分とするものである。その具体例としては、ミリスチン酸イソプロイル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル等の直鎖高級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、カプリル酸セチル、ラルリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン等の直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリルステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル等の直鎖脂肪酸と分枝アルコールとのエステル…などが挙げられる。… 【0021】 本発明においては、これらエステル油の中から、一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。これらエステル油の配合量は、成分(A)のワックスの配合量によって適宜選択され、成分(A)と成分(C)の質量比が1:5?5:1であること好ましく、更に好ましくは 質量比が1:2?2:1である。この質量比であれば、高いセット力が得られヘアアレンジが良好にでき、また、固形のワックスが析出することなくセット性が十分となり好ましい。」 (カ)「【0022】 本発明の整髪料には、上記必須成分の他に、必要により、一般に化粧料に用いられている成分、例えば、他の界面活性剤、高分子化合物、油脂類、粉体、シリコーン類、pH調整剤、保湿剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、色素、液状アルコール、植物エキス、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、薬剤、香料等を、本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。」 (キ)「【0032】 【表1】 ![]() 【0033】 表1から明らかなように、本発明の整髪料は、比較例と比べて明らかに塗布時ののび、べたつき、アレンジ力、スタイル持続力に関する試験のいずれの評価においても優れていた。 【0034】 以下、本発明整髪料のその他の処方例を実施例として挙げる。なお、これらの実施例の整髪料についても、上記の塗布時ののび、べたつき、アレンジ力、スタイル持続力に関する試験を検討したところ、いずれの実施例においても、優れた特性を有しており良好であった。 【0035】 実施例9(ヘアクリーム) 配合量(%) (1)キャンデリラロウ 10.0 (2)マイクロクリスタリンワックス 2.0 (3)デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0 (4)軽質流動イソパラフィン 2.0 (5)2エチルヘキサン酸アルキル(14,16,18) 8.0 (6)セタノール 0.5 (7)ステアリン酸 3.0 (8)ミリスチン酸 1.5 (9)ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.O.) 1.5 (10)トリイソステアリン酸硬化ヒマシ油 1.5 (11)モノステアリン酸グリセリン 1.5 (12)コレステロール 0.3 (13)パラメトキシケイ皮酸オクチル 0.5 (14)グリセリン 1.0 (15)セチル硫酸ナトリウム 0.5 (16)水酸化カリウム 0.1 (17)カルボキシビニルポリマー 0.1 (18)フェノキシエタノール 0.3 (19)パラオキシ安息香酸エステル 微 量 (20)香料 0.3 (21)精製水 残 部 【0036】 (製法)(1)?(14)を80℃で均一に混合溶解し、(15)?(19)および(21)を80℃で均一に混合溶解したものを加えて乳化し、冷却を行う。60℃で(20)を加えて、室温まで冷却してヘアクリームを得た。 【0037】 実施例10(ヘアワックス) 配合量(%) (1)キャンデリラロウ 20.0 (2)モクロウ 3.0 (3)ポリエチレン末 1.0 (4)デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0 (5)パルミチン酸オクチル 6.0 (6)コハク酸ジ2-エチルヘキシル 3.0 (7)セトステアリルアルコール 2.0 (8)ポリオキシエチレンセチルエーテル(15E.O.) 5.0 (9)1,3-ブチレングリコール 2.0 (10)ポリビニルピロリドン 2.0 (11)メチルパラベン 0.2 (12)セリシン(20%水溶液) 1.0 (13)トリエタノールアミン 0.5 (14)エデト酸二ナトリウム 0.05 (15)香料 0.1 (16)精製水 残 部 【0038】 (製法)(1)?(9)を80℃にて均一に混合溶解し、(16)に(10)?(14)を80℃にて混合溶解したものを投入して乳化する。ホモミキサーを用いて分散後、次いで冷却を行い、70℃で(15)を入れ、室温まで冷却してヘアワックスを得た。 【0039】 実施例11(ヘアクリーム) 配合量(%) (1)キャンデリラロウ 15.0 (2)マイクロワックス 5.0 (3)コメヌカロウ 2.0 (4)カルナバワックス 2.0 (5)デカメチルシクロペンタシロキサン 25.0 (6)軽質流動イソパラフィン 2.0 (7)パルミチン酸オクチル 6.0 (6)コハク酸ジ2-エチルヘキシル 3.0 (9)ステアリン酸 2.0 (10)ミリスチン酸 3.0 (11)メドフォーム油 0.5 (12)メチルパラベン 0.2 (13)ステアリルアルコール 2.0 (14)プロピレングリコール 3.0 (15)エデト酸二ナトリウム 0.05 (16)香料 0.1 (17)精製水 残 部 【0040】 (製法)(1)?(11)、(13)を80℃にて均一に混合溶解し、(17)に(14)?(15)を80℃にて混合溶解したものを投入して乳化する。ホモミキサーを用いて分散後、次いで冷却を行い、70℃で(12)を入れ、65℃で(16)を入れ、室温まで冷却してヘアクリームを得た。」 イ 甲1に記載された発明 上記ア(ア)(ウ)(エ)(オ)からみて、甲1には、次の甲1発明が記載されている。 「(A)20℃において固体のワックス 5?30% (B)沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素および/または珪素数が2?8の揮発性シリコーン 5?30% (C)エステル油 成分(A)と成分(C)の質量比が1:5?5:1となる量 を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比が1:3?3:1であることを特徴とする整髪料。」 ウ 本件発明1と甲1発明との対比・判断 (ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「20℃において固体のワックス」は、上記ア(ウ)(キ)からみて、キャンデリラロウが用いられているから、本件発明1の「キャンデリラロウ」に相当する。また、「沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素」は、上記ア(エ)(キ)からみて、軽質流動イソパラフィン、すなわち揮発性炭化水素が用いられているから、本件発明1の「揮発性炭化水素」に相当する。さらに、甲1発明の「整髪料」は、上記ア(キ)からみて、乳化型整髪料と認められる。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、下記の点で一致する。 「次の成分を含有する乳化型整髪料。 キャンデリラロウ 揮発性炭化水素」 そして、両発明は、下記の点で相違する。 相違点1:キャンデリラロウの配合量が、本件発明1は「1?15質量%」であるのに対し、甲1発明は「5?30%」である点。 相違点2:揮発性炭化水素の配合量が、本件発明1は「0.5?15質量%」であるのに対し、甲1発明は揮発性シリコーンと合わせて「5?30%」である点。 相違点3:本件発明1は「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」を配合してなり、その配合量が「0.5?12質量%」であるのに対し、甲1発明は「エステル油」を配合してなり、その配合量が「成分(A)と成分(C)の質量比が1:5?5:1となる量」である点。 相違点4:本件発明1は「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を配合してなり、その配合量が「0.05?10質量%」であるのに対し、甲1発明は「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を配合するものでない点。 相違点5:本件発明1は「カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー」を配合してなり、その配合量が「0.01?0.5質量%」であるのに対し、甲1発明は「カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー」を配合するものでない点。 (イ)上記相違点について検討する。 相違点4に関し、甲1には「本発明の整髪料には…、シリコーン類…を用いることができる」(上記ア(カ))と、比較例4では、キャンデリラロウ10質量%と併せて、「ジメチルポリシロキサン(100cs)(非揮発性油)」10質量%を用いたものが記載されている(上記ア(キ))。 しかし、甲1発明において、nが10以上すなわち珪素数が12以上の「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を用いることができるとする根拠が、甲1には存在しない。すなわち、比較例4は、「nが10?3000の整数」を満たすものと解される「ジメチルポリシロキサン(100cs)(非揮発性油)」を用いたものであり、その評価結果において劣るものと認識されていること(上記ア(キ))に鑑みると、甲1発明において、敢えて「nが10?3000の整数」を満たす「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を用いようとする理由がない。また、甲2-9のいずれの刊行物を参照しても、甲1発明に係る乳化型整髪料において、「化1直鎖状メチルポリシロキサン」をその一成分として用いることの動機づけが存在しない。 してみると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1及び甲2-9に記載された発明から当業者が容易に想到したものとはいえない。 (2)理由2について ア 甲10に記載された事項 (ア)「【請求項1】 (A)カルナウバロウ、(B)キャンデリラロウ、(C)非イオン性界面活性剤および(D)分岐型脂肪酸および/又は分岐型脂肪酸エステルを含有してなる整髪用乳化化粧料。 … 【請求項4】 更に、(E)揮発性油剤を含有してなる請求項1?3の何れかに記載の整髪用乳化化粧料。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、カルナウバロウの優れた整髪性を損なうことなく、安定に乳化することができるとともに、高配合しても、凝集・析出が生じない乳化安定性の高い整髪用乳化化粧料を提供することを課題とする。更には、毛髪へのなじみおよび延展性に優れるとともに、べたつき感を与えずに、高融点ロウ類特有の優れた整髪性を付与することができる整髪用乳化化粧料を提供することを課題とする。 … 【発明の効果】 【0009】 本発明の整髪用乳化化粧料は、カルナウバロウとキャンデリラロウを併配合することにより、整髪性を損なうことなく、安定に乳化することができるとともに、例え高配合としても、凝集・析出が生じず、優れた乳化安定性を有するという効果を奏する。更に、本発明の整髪用乳化化粧料は、毛髪へのなじみおよび延展性が良好で整髪時の操作性に優れるとともに、べたつき感を低減し、高融点ロウ類特有の優れた整髪性を付与するという効果を奏する。」 (ウ)「【0011】 (A)成分のカルナウバロウは、融点80?86℃の淡黄色?淡褐色のロウ状固体である。(A)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、整髪性の観点から、組成物中、1重量%以上が好ましく、より好ましくは2重量%以上である。また、乳化安定性の観点から、25重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、組成物中、1?25重量%が好ましく、より好ましくは2?20重量%である。 【0012】 (B)成分のキャンデリラロウは、融点68?72℃の帯褐黄色?帯黄褐色のロウ状固体である。(B)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、整髪性および乳化安定性の観点から、組成物中、1重量%以上が好ましく、より好ましくは2重量%以上である。また、乳化安定性の観点から、30重量%以下が好ましく、より好ましくは25重量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、組成物中、1?30重量%が好ましく、より好ましくは2?25重量%である。」 (エ)「【0023】 また、本発明の整髪用乳化化粧料には、使用感を向上させる観点から、(E)揮発性油類を含有させることができる。(E)成分の具体例としては、例えば、イソパラフィン、軽質イソパラフィンなどの室温で液状の炭化水素;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン;オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、低粘度メチルポリシロキサンなどの鎖状シリコーンなどを例示することができる。これら成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。 【0024】 (E)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、使用感を向上させる観点から、組成物中、1重量%以上が好ましく、より好ましくは2重量%以上である。また、乳化安定性の観点から、20重量%以下が好ましく、より好ましくは15重量%以下である。これらの観点から、(E)成分の含有量は、組成物中、1?20重量%が好ましく、より好ましくは2?15重量%である。」 (オ)「【0029】 また、本発明の整髪用乳化化粧料には、乳化安定性を更に向上させるために、増粘性高分子を含有させることができる。用いられる増粘性高分子としては、水溶性を有する天然高分子、半合成高分子、合成高分子などが挙げられる。…合成高分子としては…、カルボキシビニルポリマー…を例示することができる。…好適な増粘性高分子としては、カルボキシビニルポリマー…を用いることが好ましい。 … 【0031】 増粘性高分子の含有量は、特に限定されないが、通常、乳化安定性を更に向上させる観点から、組成物中、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。また、使用感の観点から、15重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。これらの観点から、増粘性高分子の含有量は、0.01?15重量%が好ましく、より好ましくは0.1?10重量%である。」 (カ)「【0032】 本発明の整髪用乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば…、ステアリン酸ステアリルなどの直鎖脂肪酸エステル…などを目的に応じて適宜配合することができる。」 (キ)「【実施例】 【0035】 以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「重量%」を表す。 … 【0047】 【表1】 ![]() 」 イ 甲10に記載された発明 上記ア(ア)(ウ)(エ)からみて、甲10には、次の甲10発明が記載されている。 「(A)カルナウバロウ、 (B)キャンデリラロウ、 (C)非イオン性界面活性剤、 (D)分岐型脂肪酸および/又は分岐型脂肪酸エステルおよび (E)揮発性油剤 を含有してなる整髪用乳化化粧料。」 ウ 本件発明1と甲10発明との対比・判断 (ア)本件発明1と甲10発明とを対比する。 甲10発明の「揮発性油剤」は、上記ア(エ)からみて、本件発明1でいう「揮発性炭化水素」である。 そうすると、本件発明1と甲10発明とは、下記の点で一致する。 「次の成分を含有する乳化型整髪料。 キャンデリラロウ 揮発性炭化水素」 そして、両発明は、下記の点で相違する。 相違点1:キャンデリラロウの配合量が、本件発明1は「1?15質量%」であるのに対し、甲10発明は「1?30重量%」である点。 相違点2:揮発性炭化水素の配合量が、本件発明1は「0.5?15質量%」であるのに対し、甲10発明は「1?20重量%」である点。 相違点3:本件発明1は「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」を配合してなり、その配合量が「0.5?12質量%」であるのに対し、甲10発明は「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」を配合するものでない点。 相違点4:本件発明1は「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を配合してなり、その配合量が「0.05?10質量%」であるのに対し、甲10発明は「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を配合するものでない点。 相違点5:本件発明1は「カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー」を配合してなり、その配合量が「0.01?0.5質量%」であるのに対し、甲10発明は「カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー」を配合するものでない点。 (イ)上記相違点について検討する。 相違点4及び3に関し、「化1直鎖状メチルポリシロキサン」が属するシロキサン化合物について、甲10には「(E)揮発性油類…の具体例としては、例えば…;オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、低粘度メチルポリシロキサンなどの鎖状シリコーン」(上記ア(エ))が、そして実施例では、「デカメチルシクロペンタシロキサン」、「メチルポリシロキサン」、「低粘度メチルポリシロキサン」(上記ア(キ))が記載されている。 しかし、甲10発明において、「nが10?3000の整数」の「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を用いることができるとする根拠が、甲10には存在しない。「メチルポリシロキサン」や「低粘度メチルポリシロキサン」にしても、どの程度の分子量を有するものか明らかでない。 また、甲10には、実施例4及び5において、本件発明1の(C)成分に相当する「ステアリン酸ステアリル」を用いることが記載されている。しかし、これらの実施例は、「ステアリン酸ステアリル」を何らかのシロキサン化合物と併せて用いるものではない。しかも、甲10では、この「ステアリン酸ステアリル」は「目的に応じて適宜配合することができる」程度に認識されており、「メチルポリシロキサン」や「低粘度メチルポリシロキサン」と、「ステアリン酸ステアリル」とを併せて用いようとする理由がない。そうすると、本件発明1が(A)-(E)の各成分を併せて用いたことによる所望の作用効果が、甲10の記載からみて予測可能なものとはいえない。 そして、甲2-9のいずれの刊行物を参照しても、甲10発明に係る乳化型整髪料において、「化1直鎖状メチルポリシロキサン」をその一成分として、あるいは、「化1直鎖状メチルポリシロキサン」と「ステアリン酸ステアリル」とを各成分として用いることの動機づけが存在しない。 してみると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲10及び甲2-9に記載された発明から当業者が容易に想到したものとはいえない。 (3)理由3について ア 甲11に記載された事項 (ア)「【請求項1】 (A)ポリアクリル酸ナトリウム及び/又は高重合度ポリエチレングリコール:0.01?1.0質量% (B)植物由来及び/又は植物油脂の半固形油分:0.1?20.0質量% (C)キャンデリラロウ:1.0?30.0質量% (D)不揮発性油分(D1)と揮発性油分(D2)を含む常温で液状の油分:1.0?30.0質量% を含有し、成分(C)と成分(D)の質量比が、(C)/(D)=0.2?2.0であり、 揮発性油分(D2)は珪素数が2?8の低沸点シリコーン及び/又は沸点が60?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素であり、 不揮発性油分(D1)と揮発性油分(D2)の質量比は、10.0≧(D1/D2)≧0.5であることを特徴とする毛髪化粧料。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 そこで本発明は、髪に塗布する際にのびが良くべたつきが少なく、ヘアアレンジがし易く整髪性に優れ、油っぽさがなく自然なツヤを与え、ヘアスタイルキープ性に優れた乳化型毛髪化粧料を提供することを目的とする。 … 【0014】 本発明の毛髪化粧料は、クリーム状またはワックス状であり、ヘアスタイルキープ性に優れた曳糸性のある乳化型毛髪化粧料である。 【発明の効果】 【0015】 本発明の毛髪化粧料は、髪に塗布する際にのびが良くべたつきが少なく、ヘアアレンジがし易く整髪性に優れ、かつ油っぽさがなく自然なツヤを与え、ヘアスタイルキープ性に優れたものである。」 (ウ)「【0017】 次に各成分の詳細について説明する。 本発明で用いられる(A)ポリアクリル酸ナトリウム及び/又は高重合度ポリエチレングリコールは、手に取る際に曳糸性を付与するものである。 ポリアクリル酸ナトリウムとしては、平均重合度は10,000?60,000が好ましく、特に30,000?50,000がより好ましい。市販品は例えば、アロンビスS(日本純薬社製)が挙げられる。 高重合度ポリエチレングリコールは、平均重合度が20,000?200,000であり、水に分散又は溶解した際に曳糸性を有するものが用いられる。市販品としては、例えば、ポリオックス WSR N-12K(アメルコール社製、平均重合度20,000),リタ PEO-8(リタ社製、平均重合度45000)、ポリオックス WSR-301(アメルコール社製、平均重合度90,000)、リタ PEO-27(リタ社製、平均重合度160,000)等が挙げられる。 【0018】 (A)ポリアクリル酸ナトリウム及び/又は高重合度ポリエチレングリコールの配合量は、0.01?1.0質量%であり、好ましくは0.03?0.08質量%であり、より好ましく0.04?0.06質量%である。0.01質量%未満では曳糸性が不十分となり、1.0質量%を超えると、塗布時ののびが悪くなり、べたつきも生じる。 また他の水溶性高分子を用いた場合には、曳糸性がなくごわつきが生じるという不都合がある。」 (エ)「【0024】 (C)キャンデリラロウはキャンデリラ植物の茎から抽出した黄色?黄褐色の固形状ワックスで、例えば炭素数31の直鎖炭化水素を主成分(約50質量%)とし、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルを約30質量%含有するものである。本発明において、キャンデリラロウ以外のワックスを用いた場合には、整髪力、ヘアスタイルキープ力に劣るようになる。 【0025】 (C)キャンデリラロウの配合量は、1.0?30.0質量%であり、好ましくは3.0?20.0質量%であり、より好ましくは5.0?15.0質量%である。1.0質量%未満では整髪力に劣り、べたつきもある。30.0質量%を超えると、塗布時ののびが重くなる。」 (オ)「【0027】 そして、不揮発性油分(D1)とは、具体的には、炭化水素油、シリコーン油、エステル油…等が挙げられる。 このうち、炭化水素油としては、例えば流動パラフィン、スクワラン等がある。 シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等がある。 エステル油としては、例えばセチルイソオクタノエート、グリセリルトリヘキサノエート、イソプロピルミリステート等がある。 … 【0028】 一方、揮発性油分(D2)とは、珪素数が2?7の低沸点シリコーン及び/又は沸点が60?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素である。 低沸点シリコーンとしては、低沸点環状シリコーンや低沸点鎖状シリコーンが挙げられる。 このうち低沸点環状シリコーンでは、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラデカメチルシクロヘキサシロキサン等がある。低沸点環状シリコーンの市販品としては、例えば、信越化学社製のKF-995、東レ・ダウコーニング社製のDC246、DC345、SH245、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のTSF405,SF1258などとして入手できる。 低沸点鎖状シリコーンは、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等で、例えば、信越化学社製のKF-96-1cs、KF-96A-1.5cs、東レ・ダウコーニング株式会社製のシリコーンSH-200C(1.5cs)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のTSF451-5Aなどとして入手できる。 【0029】 低沸点イソパラフィン系炭化水素は、具体的には、エクソン社製のアイソパーA(登録商標)、同C、同D、同E、同G、同H、同K、同L、同M、シェル社のシェルゾール71(登録商標)、フィリップ社のソルトール100(登録商標)、同130などをあげることができる。 【0030】 本発明において、(D)常温で液状の油分の配合量は、1.0?30.0質量%であり、好ましくは3.0?20.0質量%であり、より好ましくは5.0?15質量%である。常温で液状の油分の配合量が1.0質量%未満では、塗布時ののびが重く、30.0質量%を超えると、べたつきがあり、油っぽくなる。」 (カ)「【0041】 【表1】 ![]() 【0042】 【表2】 ![]() … 【0046】 ※1:アロンビスS(日本純薬社製、平均重合度:40,000) ※2:ポリオックスWSR-301(アメルコール社製、平均重合度:90,000) ※3 ジメチルポリシロキサン(20mPa・S)(信越化学社製) ※4:DC345 Fluid(東レ・ダウコーニング社製) 【0047】 以下に、本発明の毛髪化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。 【0048】 実施例18 (1)水添ポリイソブテン 5.0 質量% (2)オクタン酸セチル 5.0 (3)ジメチルポリシロキサン(6mPa・S) 2.0 (4)ステアリン酸水添ヒマシ油 5.0 (5)シア脂 2.0 (6)キャンデリラロウ 10.0 (7)ステアリン酸グリセリル 1.0 (8)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(5EO) 1.0 (9)イソステアリン酸 1.0 (10)カルボキシビニルポリマー 0.4 (11)水酸化カリウム(pH7.5に調整) 適量 (12)イオン交換水 残余 (13)プロピレングリコール 5.0 (14)EDTA-2Na・2H_(2)O 0.05 (15)フェノキシエタノール 0.5 (16)香料 適量 (17)高重合度ポリエチレングリコール 0.1 【0049】 (製造方法) (1)?(9)および(16)を80?90℃で攪拌溶解して油相部とし、(12)に(13)?(15)、(17)を加え溶解後、(10)を加え均一に攪拌分散させ、85℃にて攪拌溶解して水相部とする。水相部に油相部を加え均一攪拌後、(11)を加えホモミキサーにて乳化させた後、脱泡・冷却し目的物を得た。 【0050】 実施例19 (1)カオリン 2.0 質量% (2)フェニルメチルポリシロキサン 10.0 (3)アモジメチコン 1.0 (BY22-079/東レ・ダウコーニング社製) (4)オレイン酸デシル 10.0 (5)メチルシクロポリシロキサン 10.0 (6)オクタメチルトリシロキサン 3.0 (7)リシノレイン酸フィトステリル 5.0 (8)ヒドロキシステアリン酸水添ヒマシ油 5.0 (9)キャンデリラロウ 10.0 (10)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(60EO) 1.0 (11)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 3.0 (12)ステアリン酸 1.0 (13)トリエタノールアミン(pH7.5に調整) 適量 (14)イオン交換水 残余 (15)1,3-ブチレングリコール 5.0 (16)EDTA-2Na・2H_(2)O 0.05 (17)フェノキシエタノール 0.5 (18)香料 適量 (19)ポリアクリル酸ナトリウム 0.1 【0051】 (製造方法) (2)?(12)および(18)を加え80?90℃で攪拌溶解して油相部とし、(14)に(15)?(17)および(19)を加え攪拌溶解後、(1)を加えディスパーを用いて均一分散させ85℃にて攪拌分散して水相部とする。水相部に油相部を加え均一攪拌後、(13)を加えホモミキサーにて乳化させた後、脱泡・冷却し目的物を得た。 【0052】 実施例20 (1)微粒子シリカ 1.0 質量% (2)リンゴ酸ジイソステアリル 5.0 (3)(ビスイソブチルPEG-14/アモジメチコン)コポリマー 1.0 (SILSTYLE 104/東レ・ダウコーニング社製) (4)イソノナン酸イソノニル 10.0 (5)水添ポリイソブテン 10.0 (6)シクロペンタシロキサン 10.0 (7)ラウリン酸水添ヒマシ油 10.0 (8)水添ダイマー酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)エステル 5.0 (9)キャンデリラロウ 20.0 (10)ステアリルアルコール 1.0 (11)メトキシケイヒ酸オクチル 2.0 (12)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO) 2.0 (13)イソステアリン酸 2.0 (14)トリエタノールアミン(pH7.5に調整) 適量 (15)イオン交換水 残余 (16)ソルビトール 5.0 (17)フェノキシエタノール 0.5 (18)香料 適量 (19)ポリアクリル酸ナトリウム 0.5 【0053】 (製造方法) (2)?(13)および(18)を加え80?90℃で攪拌溶解して油相部とし、(15)に(16)?(17)および(19)を加え攪拌溶解後、(1)を加えディスパーを用いて均一分散させ85℃に加温攪拌分散して水相部とする。水相部に油相部を加え均一攪拌後、(14)を加えホモミキサーにて乳化させた後、脱泡・冷却し目的物を得た。 【0054】 実施例21 (1)酸化チタン 1.0 質量% (2)流動パラフィン 5.0 (3)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 5.0 (4)ポリエーテル変性メチルポリシロキサン 1.0 (5)ヘキサメチルジシロキサン 10.0 (6)デカメチルシクロペンタシロキサン 3.0 (7)パーム核油 3.0 (8)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 7.0 (9)キャンデリラロウ 8.0 (10)ベヘニルアルコール 2.0 (11)ステアリン酸グリセリル 1.0 (12)ステアリン酸 2.0 (13)トリエタノールアミン(pH7.5に調整) 適量 (14)イオン交換水 残余 (15)グリセリン 5.0 (16)加水分解ポリペプタイド 0.8 (17)フェノキシエタノール 0.5 (18)香料 適量 (19)高重合度ポリエチレングリコール 1.0 【0055】 (製造方法) (2)?(12)および(18)を加え80?90℃で攪拌溶解して油相部とし、(14)に(15)?(17)および(19)を加え攪拌溶解後、(1)を加えディスパーを用いて均一分散させ85℃にて攪拌分散して水相部とする。水相部に油相部を加え均一攪拌後、(13)を加えホモミキサーにて乳化させた後、脱泡・冷却し目的物を得た。」 イ 甲11に記載された発明 上記ア(ア)からみて、甲11には、次の甲11発明が記載されている。 「(A)ポリアクリル酸ナトリウム及び/又は高重合度ポリエチレングリコール:0.01?1.0質量% (B)植物由来及び/又は植物油脂の半固形油分:0.1?20.0質量% (C)キャンデリラロウ:1.0?30.0質量% (D)不揮発性油分(D1)と揮発性油分(D2)を含む常温で液状の油分:1.0?30.0質量% を含有し、成分(C)と成分(D)の質量比が、(C)/(D)=0.2?2.0であり、 揮発性油分(D2)は珪素数が2?8の低沸点シリコーン及び/又は沸点が60?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素であり、 不揮発性油分(D1)と揮発性油分(D2)の質量比は、10.0≧(D1/D2)≧0.5であることを特徴とする毛髪化粧料。」 ウ 本件発明1と甲11発明との対比・判断 (ア)本件発明1と甲11発明とを対比する。 甲11発明の「揮発性油分(D2)」のうち「沸点が60?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素」は、本件発明1でいう「揮発性炭化水素」である。また、甲11発明の「毛髪化粧料」は、上記ア(イ)の記載からみて乳化型といえるから、本件発明1の「乳化型整髪料」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲11発明とは、下記の点で一致する。 「次の成分を含有する乳化型整髪料。 キャンデリラロウ 揮発性炭化水素」 そして、両発明は、下記の点で相違する。 相違点1:キャンデリラロウの配合量が、本件発明1は「1?15質量%」であるのに対し、甲11発明は「1.0?30.0質量%」である点。 相違点2:揮発性炭化水素の配合量が、本件発明1は「0.5?15質量%」であるのに対し、甲11発明は不揮発性油分と合わせて「1.0?30.0質量%」である点。 相違点3:本件発明1は「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」を配合してなり、その配合量が「0.5?12質量%」であるのに対し、甲11発明は「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」を配合するものでない点。 相違点4:本件発明1は「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を配合してなり、その配合量が「0.05?10質量%」であるのに対し、甲11発明は「化1直鎖状メチルポリシロキサン」を配合するものでない点。 相違点5:本件発明1は「カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー」を配合してなり、その配合量が「0.01?0.5質量%」であるのに対し、甲11発明は「ポリアクリル酸ナトリウム及び/又は高重合度ポリエチレングリコール」を配合してなり、その配合量が「0.01?1.0質量%」である点。 (イ)上記相違点について検討する。 相違点3及び4に関し、甲11には、「不揮発性油分(D1)とは、具体的には、炭化水素油、シリコーン油、エステル油…等が挙げられる。 このうち…エステル油としては、例えばセチルイソオクタノエート、グリセリルトリヘキサノエート、イソプロピルミリステート等がある。」(上記ア(オ))と記載されており、実施例では、この「エステル油」と解しうる化合物として、「オクタン酸セチル」、「エチルヘキサン酸セチル」、「ステアリン酸グリセリル」、「オレイン酸デシル」、「リンゴ酸ジイソステアリル」、「イソノナン酸イソノニル」、「メトキシケイヒ酸オクチル」、「テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル」(上記ア(カ))が用いられている。 しかし、甲11発明において、「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」を用いることができるとする根拠が、甲11には存在しない。 申立人は、「オレイン酸デシルは、本件特許明細書の【0017】に好ましい(C)成分として記載された「炭素数12?22の直鎖脂肪酸の炭素数8?22の直鎖又は分岐鎖飽和アルコールとのエステル」に含まれる。本件特許明細書には、本件発明1に記載のパルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルが、「炭素数12?22の直鎖脂肪酸の炭素数8?22の直鎖又は分岐鎖飽和アルコールとのエステル」よりも有利な効果があるとは一切記載されていないから、甲第11号証に記載されたオレイン酸デシルも、本件発明1と同等の効果を奏する。 また、…甲第2?4号証に記載されたように、パルミチン酸2-エチルヘキシルは、化粧品原料製品として当業者に広く用いられ、…。 従って、甲第11号証のエステル油に代えて、パルミチン酸2-エチルヘキシルを3?6質量%程度用いることは、当業者は容易になし得ることであった。 さらに、本件発明1では、パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上含有することが記載されているが、一種又は二種以上を用いる程度のことは、当業者には容易に成し得るものである。」(特許異議申立書34頁25行-35頁7行)と主張する。 しかし、「オレイン酸デシル」を用いた実施例19は、例えば実施例1-6、9、15-18で用いられるような「ジメチルポリシロキサン」と併せて用いるものではない。実施例19で用いられるシロキサン化合物のうち「フェニルメチルポリシロキサン」、「アモジメチコン」、「メチルシクロポリシロキサン」は、直鎖状メチルポリシロキサンではなく、「オクタメチルトリシロキサン」は、「化1直鎖状メチルポリシロキサン」のnの数値を満たさない。そして、甲11の記載からみて、甲11発明の「不揮発性油分(D1)」として列記されているシリコーン油とエステル油とは、常に併せて用いるものと解されるものではない。 仮に「オレイン酸デシルは、本件特許明細書の【0017】に好ましい(C)成分として記載された「炭素数12?22の直鎖脂肪酸の炭素数8?22の直鎖又は分岐鎖飽和アルコールとのエステル」に含まれる」ことから、甲11発明のエステル油として「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」を用いることが容易になし得るとしても、甲11の記載からは、「オレイン酸デシル」と「直鎖状メチルポリシロキサン」とを併せて用いようとする根拠が見いだせず、「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」と「化1直鎖状メチルポリシロキサン」とを併せて用いることを想起することはできない。 また、甲1-9のいずれの刊行物を参照しても、甲11発明に係る乳化型整髪料において、「化1直鎖状メチルポリシロキサン」と「パルミチン酸2-エチルヘキシル及びステアリン酸ステアリルから選ばれる一種又は二種以上」とを各成分として用いることの動機づけが存在しない。 してみると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲11及び甲1-9に記載された発明から当業者が容易に想到したものとはいえない。 (4)本件発明2に関する理由1-3についての判断 本件発明2は、本件発明1を引用し、さらに限定を加えたものである。そして、上述のとおり、本件発明1について、理由1-3はいずれも理由がないことに鑑みると、本件発明2についても同様に、理由1-3はいずれも理由がない。 (5)まとめ よって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるとの理由で本件発明1-2に係る特許を取り消すことはできない。 4 むすび 以上のとおりであるから、異議申立ての理由によっては、本件発明1-2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1-2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-03-27 |
出願番号 | 特願2011-176092(P2011-176092) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61K)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小出 直也、岩下 直人、神田 和輝、團野 克也 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
大熊 幸治 小川 慶子 |
登録日 | 2016-07-08 |
登録番号 | 特許第5964560号(P5964560) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | 乳化型整髪料 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |