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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63B
管理番号 1327022
異議申立番号 異議2016-700122  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-12 
確定日 2017-01-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第5764044号発明「ゴルフスイングの計測解析システム、計測解析装置、ゴルフクラブ及び計測解析方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5764044号の請求項1?6、及び10に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5764044号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成23年11月10日に特許出願され、平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1?10に係る特許について、特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年4月18日付けで請求項7?9に係る特許について取消理由を通知し、その指定期間内である同年6月17日付けで意見書の提出及び訂正の請求がなされ、当審において同年6月22日付けで特許異議申立人に対して通知書を通知し、その指定期間内である同年7月25日付けで意見書の提出がなされ、同年9月26日付けで「特許第5764044号の明細書、及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔7?9〕について、訂正することを認める。特許第5764044号の請求項7、及び8に係る特許を維持する。特許第5764044号の請求項9に係る特許についての申立てを却下する。」との異議の決定がなされたところ、さらに、残りの請求項1ないし6、及び10に係る特許についての特許異議の申立てについて、次のとおり特許異議の決定をする。
第2.本件特許発明
特許第5764044号の請求項1ないし6、及び10の特許に係る発明は、それぞれ、その訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし6、及び10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件特許発明1」・・・「本件特許発明10」という。)。
「【請求項1】
ゴルファがゴルフクラブによりゴルフボールを打撃するときのゴルフクラブの挙動を計測解析するゴルフスイングの計測解析システムであって、
ゴルフクラブのシャフト軸上に少なくとも2つのシャフト用マーカーと、前記ゴルフクラブのヘッド上に少なくとも1つのヘッド用マーカーと、前記シャフトから突出して設けられた治具上に少なくとも1つのシャフト回転用マーカーと、を有するゴルフクラブと、
前記ゴルフクラブを用いたゴルフスイングを撮像する、少なくとも2台のカメラと、
前記各マーカーを認識し、認識された各マーカーの位置情報を取得するマーカー認識位置情報取得部、取得された前記位置情報から前記シャフトの回転を表す第1ベクトル、及び前記ヘッドの回転を表す第2ベクトルを算出するベクトル算出部、並びに前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとがなすベクトル角を算出するヘッド挙動取得部を有する計測解析装置と、
を備えることを特徴とする、ゴルフスイングの計測解析システム。
【請求項2】
前記ヘッド挙動取得部は、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとがなすベクトル角の経時変化を取得することを特徴とする、請求項1に記載のゴルフスイングの計測解析システム。
【請求項3】
前記ベクトル算出部は、
前記シャフト用マーカー及び前記シャフト回転用マーカーの位置情報から前記第1ベクトルを算出し、
前記シャフト用マーカー及び前記ヘッド用マーカーの位置情報から前記第2ベクトルを算出することを特徴とする、
請求項1又は2に記載のゴルフスイングの計測解析システム。
【請求項4】
前記ゴルフクラブは、前記シャフト又は前記グリップ上に、少なくとも3つのシャフト用マーカーを有し、
前記ベクトル算出部は、
少なくとも3つの前記シャフト用マーカーのうち前記ヘッドから遠い順に2つのシャフト用マーカーの位置情報と、前記シャフト回転用マーカーの位置情報とを用いて前記第1ベクトルを算出し、
前記シャフト用マーカーのうち前記ヘッドに近い順に2つのシャフト用マーカーの位置情報と、前記ヘッド用マーカーの位置情報とを用いて前記第2ベクトルを算出する、
ことを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載のゴルフスイングの計測解析システム。
【請求項5】
少なくとも3つの前記シャフト用マーカーのうち、前記ヘッドに最も近いシャフト用マーカーと、該シャフト用マーカーに最も近い前記シャフト用マーカーとの距離が、1200mm以内であることを特徴とする、請求項4に記載のゴルフスイングの計測解析システム。
【請求項6】
ゴルファがゴルフクラブによりゴルフボールを打撃するときのゴルフクラブの挙動を計測解析するゴルフスイングの計測解析装置であって、
ゴルフクラブのシャフト軸上に少なくとも2つのシャフト用マーカーと、前記ゴルフクラブのヘッド上に少なくとも1つのヘッド用マーカーと、前記シャフトから突出して設けられた治具上に少なくとも1つのシャフト回転用マーカーと、を有するゴルフクラブのゴルフスイングを撮像した画像を、少なくとも2台のカメラから取得する画像取得部と、
前記各マーカーを認識し、認識された前記各マーカーの位置情報を取得するマーカー認識位置情報取得部と、
取得された前記位置情報から前記シャフトの回転を表す第1ベクトル、及び前記ヘッドの回転を表す第2ベクトルを算出するベクトル算出部と、
前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとがなすベクトル角を算出するヘッド挙動取得部と、
を含むことを特徴とする、ゴルフスイングの計測解析装置。
【請求項10】
ゴルファがゴルフクラブによりゴルフボールを打撃するときのゴルフクラブの挙動を計測解析するゴルフスイングの計測解析方法であって、
ゴルフクラブのシャフト軸上に少なくとも2つのシャフト用マーカーと、前記ゴルフクラブのヘッド上に少なくとも1つのヘッド用マーカーと、前記シャフトから突出して設けられた治具上に少なくとも1つのシャフト回転用マーカーと、を有するゴルフクラブのゴルフスイングを撮像した画像を、少なくとも2台のカメラから取得するステップと、
前記各マーカーを認識し、認識された各マーカーの位置情報を取得するステップと、
取得された前記位置情報から前記シャフトの回転を表す第1ベクトル、及び前記ヘッドの回転を表す第2ベクトルを算出するステップと、
前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとがなすベクトル角を算出するステップと、
を含むことを特徴とする、ゴルフスイングの計測解析方法。」
第3.本件決定に係る特許異議の申立理由の概要
特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社は、主たる証拠として特開2005-218783号公報(以下「甲1号証」という。)、及び特開2002-331060号公報(以下「甲9号証」という。)、並びに従たる証拠として特開2010-155074号公報、(以下「甲2号証」という。)、特開2011-110164号公報(以下「甲3号証」という。)、特開2011-110165号公報(以下「甲4号証」という。)、特開2007-244716号公報(以下「甲5号証」という。)、特開2004-195240号公報(以下「甲6号証」という。)、特開2008-73210号公報(以下「甲7号証」という。)、及びゴルフ規則 2007年度版(以下「甲8号証」という。)を提出し、請求項1?6、及び10に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?6、及び10係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
第4.判断
1.本件特許発明1について
(1).本件特許発明1
ア.本件特許明細書には、次の事項が記載されている。
「【背景技術】
【0002】
一般的に、ゴルファがボールを真直ぐに飛ばすことを意図して、ゴルフクラブをスイングして、ゴルフボールを打撃した(ショットした)場合に、ゴルフボールの飛行方向が比較的真直ぐであり、曲がらない(曲がりにくい)ことが望ましい。特に、各ゴルファが、適切なゴルフクラブを用いることで、そのような望ましいショットが比較的容易に可能となりうる。ショットによるゴルフボールの飛行方向は、ゴルフスイングにおけるバックスピン量や打ち出し角その他の様々な要因に影響される。
【0003】
そこで、従来、ゴルファのゴルフスイング動作を計測するための様々な方法が研究されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、少なくとも2つのシャフト軸線用マーク(以下、マーカー)が取り付けられると共に、シャフトから直交方向に突設された治具にシャフト回転用マーカーが取り付けられたシャフトを有するゴルフクラブを用いてゴルファのゴルフスイングが計測される。
【0004】
さらに、従来、ゴルファのゴルフスイング動作時にゴルフクラブのシャフトの動的挙動を評価する評価方法が研究されてきた(例えば、特許文献2参照)。特許文献2によれば、歪ゲージ等を用いてゴルフスイング中のシャフト上の2点に生じるひずみの時刻歴データを用いて相互相関関数を導出し、当該相互相関関数により実際のゴルフスイング時のシャフトのしなり、ねじれ等のシャフトの動的な挙動の評価を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-218783号公報
【特許文献2】特開2003-102886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ゴルフボールの飛行方向は、シャフトのしなりやねじれだけではなく、ゴルフクラブのヘッド(以下、単にヘッドと称する)がゴルフボールを打撃する際(インパクト)の、ヘッドの挙動に大きく影響を受けることが知られている。そして、ゴルフスイング中のヘッドの挙動には、ヘッドの重さや重心位置、ゴルフスイングの加速度、及びシャフトのしなりやねじれ等の様々な要因が複合的に影響する。さらに、ヘッドの回転などのヘッドの挙動に起因して、シャフトにしなりやねじれが生じることもある。このような、ヘッドの回転などのヘッドの挙動と、シャフトのしなりやねじれなどのシャフトの挙動との相対関係については、これまで考慮されてこなかった。
【0007】
つまり、特許文献1に示されているような、シャフト軸上及びシャフトから突出した治具上にマーカーを有するゴルフクラブを用いたとしても、シャフトのしなりやねじれ自体は計測できるが、シャフトの挙動及びヘッドの挙動の相対関係を解析評価することはできなかった。さらには、特許文献2に示されているようなゴルフクラブのシャフトの動的挙動を評価する評価方法によっても、ゴルフスイング時のシャフト自体の動的挙動の計測解析が実現されるに過ぎず、シャフトの挙動及びヘッドの挙動の相対関係を解析評価することはできなかった。また、特許文献2にかかる評価方法では、ゴルフクラブに接続される計測用のケーブル等が必要で、被験者本来のゴルフスイングができなかった。
【0008】
そこで、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、被験者本来ゴルフスイングを計測し、シャフトの挙動及びヘッドの挙動の相対関係を計測解析することができる、ゴルフスイングの計測解析システム、計測解析装置、ゴルフクラブ及び計測解析方法を提供することである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゴルファ本来のゴルフスイングを計測し、ゴルフクラブのシャフトの挙動及びヘッドの挙動の相対関係を計測解析することができる。」
イ.上記「ア.」の記載を踏まえると、本件特許発明1の課題は、「(ゴルファ本来のゴルフスイングを計測し、)ゴルフクラブのシャフトの挙動及びヘッドの挙動の相対関係を計測解析すること」である。
そして、本件特許発明1は、上記の課題を解決するための、「シャフトの回転を表す第1ベクトル、及び前記ヘッドの回転を表す第2ベクトルを算出するベクトル算出部、並びに前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとがなすベクトル角を算出するヘッド挙動取得部を有する計測解析装置と、を備える」ものである(以下「課題解決手段」という。)。
(2)判断
特許異議申立人の証拠方法である甲第1?9号証には、上記の「課題解決手段」は、記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1?9号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
2.本件特許発明2?5について
本件特許発明2?5は、本件特許発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明2?5は、上記「1.」と同様の理由により、甲第1?9号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
3.本件特許発明6、及び10について
本件特許発明1は、「ゴルフスイングの計測解析システム」であるのに対して、本件特許発明6、及び10は、それぞれ「ゴルフスイングの計測解析装置」、及び「ゴルフスイングの計測解析方法」であって、両者のカテゴリーは相違するものではあるが、両者に特定されている発明特定事項は、実質的に相違するものではないから、本件特許発明6、及び10は、上記「1.」と同様の理由により、甲第1?9号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
第5.むすび
以上のとおりであるから、本件決定に係る特許異議の申立理由、及び証拠によっては、本件特許発明1?6、及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?6、及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-01-17 
出願番号 特願2011-246814(P2011-246814)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A63B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
藤本 義仁
登録日 2015-06-19 
登録番号 特許第5764044号(P5764044)
権利者 ブリヂストンスポーツ株式会社 株式会社ブリヂストン
発明の名称 ゴルフスイングの計測解析システム、計測解析装置、ゴルフクラブ及び計測解析方法  
代理人 杉村 憲司  
代理人 吉田 憲悟  
代理人 齋藤 恭一  
代理人 吉田 憲悟  
代理人 冨田 和幸  
代理人 齋藤 恭一  
代理人 杉村 憲司  

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