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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1327269
審判番号 不服2015-18895  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-20 
確定日 2017-05-08 
事件の表示 特願2013-520250号「日周リズムによる動的照明システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年1月26日国際公開、WO2012/011008、平成25年9月12日国内公表、特表2013-535768号、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年7月21日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりある。
平成27年3月20日付け :拒絶理由の通知
平成27年6月18日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年7月28日付け :拒絶査定
平成27年10月20日 :審判請求書の提出
平成28年6月14日付け :拒絶理由の通知
平成28年9月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年12月7日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」とい
う。)の通知
平成29年3月14日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成27年7月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献1-3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2010-92993号公報
引用文献2:特開2007-328954号公報
引用文献3:特開2000-294388号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由1]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願請求項1に記載の「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明を供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明を供給する」に対応する実施形態として、本願明細書の段落【0059】及び図1bには、「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明『のみ』を供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明『のみ』を供給する」ことが記載されているだけであり、その他の形態については何ら記載されてない。
加えて、本願明細書の段落【0017】には、本願発明の効果として、24時間のリズムの一部の間では照明システムが如何なる白色も存在することのない非白色光を使用するような日周リズムを供給することで、固有の感情的な又は健康及び安らぎの利点を生じ得ることも記載されている。
したがって、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
本願発明11についても、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

[理由2]
本願請求項1、2、4-6、10、11に係る発明は、以下の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由3]
本願請求項3、7-9、12、13に係る発明は、以下の刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:米国特許出願公開第2009/0021186号明細書

第4 本願発明
本願の請求項1-13に係る発明(以下、「本願発明1-13」という。)は、平成29年3月14日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1-13は以下のとおりである。
「【請求項1】
照明システムによる或る領域の制御された照明のための方法であって、前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明のみを供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明のみを供給するステップを有し、前記時間プログラムは少なくとも6時間にわたり稼働し、前記照明システムを前記所定の時間プログラムに従って制御する制御ユニットが適用される方法。
【請求項2】
前記時間プログラムが少なくとも24時間にわたり稼働する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照明システムにより前記所定の時間プログラムに従って所定の暗期間の間において何の照明も供給しないステップを更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の第1有色照明期間が、19:00p.m.と04:00a.m.との間で適用され、0.25?6時間の範囲内の期間にわたり継続する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1有色照明期間の間の前記非白色照明が、緑色、黄色及び赤色照明の1以上を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記照明システムにより所定の第2有色照明期間の間に非白色照明を供給するステップを更に含み、該第2有色照明期間の間における前記非白色照明が、青色、橙色及び赤色照明の1以上を有する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の第2有色照明期間が05:00a.m.と10:00a.m.との間で適用され、0.25?6時間の、より好ましくは0.25?2時間の範囲内の期間にわたり継続する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記時間プログラムが少なくとも24時間にわたり稼働し、前記所定の第1有色照明期間が19:00p.m.と04:00a.m.との間で適用され、該第1有色照明期間の間における前記非白色照明が緑色、黄色及び赤色照明のうちの1以上を有し、当該方法が前記照明システムにより所定の第2有色照明期間の間に非白色照明を供給するステップを更に含み、該第2有色照明期間の間における前記非白色照明が青色、橙色及び赤色照明のうちの1以上を有し、前記所定の第2有色照明期間が05:00a.m.と10:00a.m.との間で適用される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記領域が、オフィス、屋内植物領域、接待領域、病院領域、老人ホーム及び看護ホームからなる群から選択される請求項1ないし8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータプログラムであって、該コンピュータプログラムが、照明システムの制御ユニット上で走らされる場合に、該制御ユニットに請求項1ないし8の何れか一項に記載の方法を実施させるためのデータ及び命令を有するコンピュータプログラム。
【請求項11】
照明システムであって、(a)白色照明を発生する全般照明ユニットと、(b)非白色光を発生する有色照明ユニットと、(c)当該照明システムを所定の時間プログラムに従って制御する制御ユニットとを有し、前記所定の時間プログラムが、白色照明のみを供給するための所定の全般照明期間と、該全般照明期間と時間的に重ならない、非白色照明のみを供給するための所定の第1有色照明期間とを含み、該時間プログラムが少なくとも6時間にわたり稼働する照明システム。
【請求項12】
前記時間プログラムが少なくとも24時間にわたり稼働し、前記所定の第1有色照明期間が19:00p.m.と04:00a.m.との間におけるものであり、該第1有色照明期間の間における前記非白色照明が緑色、黄色及び赤色照明のうちの1以上を有し、前記時間プログラムが非白色照明を供給するための所定の第2有色照明期間を更に含み、該第2有色照明期間の間における前記非白色照明が青色、橙色及び赤色照明のうちの1以上を有し、
前記所定の第2有色照明期間が05:00a.m.と10:00a.m.との間におけるものであ
る請求項11に記載の照明システム。
【請求項13】
前記有色照明ユニットが1以上のウォールウォッシング・ランプを有する請求項11又は請求項12に記載の照明システム。」

第5 刊行物及び刊行物発明
1.刊行物1について
刊行物1には、「発光装置(light emitting apparatus)」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている(当該箇所の当審仮訳も合わせて掲載する。他の摘記事項についても同様。)(下線は当審で付与した。以下同様。)。
(1)[0004]の13行目から19行目
「For example, the white light with a high color temperature in a middle degree of the light emitting intensity is desirable in the daytime, in which human beings are mainly active, in order for them to concentrate on their work, and the white light with low color temperature is desirable at night, which is time for rest and sleep, in order for them to feel easy and comfortable.」
「例えば、中程度の発光強度における高い色温度を有する白色光は、人間が主に活動する日中において、人間が仕事に集中するのに望ましい。また、低い色温度の白色光は、休息及び睡眠のために時間である夜において、人間がゆったりと心地よく感じるにの望ましい。」

(2)[0007]の7行目から13行目
「wherein the first and second light emitting portions are independently driven. The light emitting apparatus may further comprise a controller for controlling voltage applied to the first and/or second light emitting portion from the outside. The controller may control the voltage input from the outside in accordance with time and applies it to the first or second light emitting portion.」
「ここで、第1及び第2発光部は独立に駆動される。発光装置は、外部から第1及び/又は第2発光部に印加される電圧を制御するためのコントローラを有することができる。コントローラは、外部からの入力電圧を時間に応じて制御し、制御された電圧を第1又は第2の発光部に印加する。」

(3)[0031]の3行目から5行目
「a first light emitting portion 200 emitting white light, a second light emitting portion 300 emitting red-based light」
「白色光を発する第1発光部200、赤色光を発する第2発光部300」

(4)[0057]の段落全て
「The controller, which is to control the voltage applied to the second light emitting portion, may comprise a timer and a voltage controller circuit. That is, after controlling the voltage input from an external power source to the controller in accordance with time through the timer and the voltage controller circuit, the controlled voltage is transmitted to the second light emitting portion.」
「第2発光部に印加される電圧を制御するコントローラはタイマーと電圧制御回路を有する。つまり、タイマーと電圧制御回路により、外部電源からのコントローラへの入力電圧を制御した後、制御された電圧は第2発光部に伝えられる。」

(5)[0060]の段落全て
「The controller 500 is to control the voltage applied to the second light emitting portion 600 . For example, as shown in FIG. 8 , the controller 500 controls the voltage input from the outside in accordance with time and outputs the voltage. Referring to FIG. 8 , the controller transmits the voltage input from the external power source for 12 hours. Thereafter, the controller allows no voltage to be applied for next 12 hours. That is, the controller transmits the external voltage to the second light emitting portion 600 for 12 hours a day to drive it, and then, allows the external voltage not to be applied to the second light emitting portion 600 for next 12 hours thus not driving it.」
「コントローラ500は、第2発光部600に印加される電圧を制御するためのものである。例えば、図8に示されるように、コントローラ500は、外部からの入力電圧を時間に応じて制御し、制御された電圧を出力する。図8を参照すると、コントローラは、外部電源からの入力電圧を12時間伝える。その後、コントローラは、12時間電圧が印加されないことを許容する。つまり、コントローラは、第2発光部600を駆動すべく、一日につき12時間、外部電圧を第2発光部600に伝え、それから、次の12時間、外部電圧が第2発光部600に印加されないことを許容し、それにより、第2発光部600を駆動しない。」

(6)[0065]の段落全て
「Further, in the present invention, a controller may be formed in each of the first and second light emitting portions. This will be described below in the following third embodiment. The detailed descriptions overlapping with those of the first and second embodiments will be omitted.」
「さらに、本発明においては、コントローラは、第1発光部及び第2発光部のそれぞれに形成されてもよい。このことは、以下の第3実施例で説明されるであろう。第1、第2実施例の説明と重複する説明は、省略されるであろう。」

(7)[0067]の段落全て
「Referring to FIG. 9, a light emitting apparatus comprises a first light emitting portion emitting white light with a color temperature of 5700K or more, a second light emitting portion emitting red-based light, a first controller connected to the first light emitting portion, and a second controller connected to the second light emitting portion.」
「図9を参照すると、発光装置は、色温度5700K以上の白色光を発する第1発光部と、赤色光を発する第2発光部と、第1発光部に接続された第1コントローラと、第2発光部に接続された第2コントローラと、を有する。」

(8)[0068]の1行目から4行目
「The first controller can control the voltage applied to the first light emitting portion, and the second controller can control the voltage applied to the second light emitting portion.」
「第1コントローラは、第1発光部に印加される電圧を制御することができ、第2コントローラは、第2発光部に印加される電圧を制御することができる。」

(9)[0069]の1行目から3行目
「The first or second controller comprises a timer and a voltage controller circuit, so that the voltage can be controlled in accordance with time.」
「第1又は第2コントローラは、時間に応じて電圧が制御されるよう、タイマーと電圧制御回路を有する。」

以上の記載事項から次の事項が認定できる。
(10)上記(7)には、発光装置は、第1発光部と、第2発光部と、第1コントローラと、第2コントローラを有することが記載され、上記(2)、(4)、(5)、(8)、(9)には、第1コントローラにより第1発光部を制御し、第2コントローラにより第2発光部を制御する旨記載されているので、刊行物1には、発光装置の制御方法が記載されていると認められる。

これらの記載事項(1)?(9)、認定事項(10)及び図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
「発光装置の制御方法であって、第1コントローラは、タイマーを有し、白色光を発する第1発光部の電圧を時間に応じて制御して第1発光部を駆動すると共に、第2コントローラは、タイマーを有し、赤色光を発する第2発光部の電圧を時間に応じて制御して、12時間第2発光部を駆動し、次の12時間第2発光部を駆動しない、発光装置の制御方法。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア.上記第5 1.(1)を参照すると、刊行物発明の「発光装置」は、人間の存在する空間に対して光を発する、すなわち、照明を行うものといえるので、本願発明1の「照明システム」に相当する。
そして、照明システムが或る領域を照明するのは当然である。
したがって、刊行物発明の「発光装置の制御方法」は、本願発明1の「照明システムによる或る領域の制御された照明のための方法」に相当する。

イ.刊行物発明の「第1コントローラ」は、「タイマーを有し、白色光を発する第1発光部の電圧を時間に応じて制御して第1発光部を駆動する」ものであるから、時間に応じた電圧制御を実行するための所定の時間プログラムを有しているものと認められる。
また、白色光を発する第1発光部を駆動すれば、第1発光部より白色光が発せされる、すなわち、第1発光部は白色光を供給することになる。
そして、上記ア.で述べたとおり、刊行物発明の「発光装置」は、照明を行っているといえるので、刊行物発明の「白色光」は本願発明1の「白色照明」に相当する。
さらに、刊行物発明の「第2発光部を駆動しない」「次の12時間」の間も、刊行物発明の第1発光部より「白色光」が発せられ、当該「白色光」による全般照明が行われると認められるので、刊行物発明の「第2発光部を駆動しない」「次の12時間」は、本願発明1の「所定の全般照明期間」に相当する。
そうすると、刊行物発明の「第2発光部を駆動しない」「次の12時間」「第1コントローラは、タイマーを有し、白色光を発する第1発光部の電圧を時間に応じて制御して第1発光部を駆動する」という構成は、本願発明1の「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明のみを供給する」という構成に相当する。

ウ.刊行物発明の「第2コントローラ」は、「タイマーを有し、赤色光を発する第2発光部の電圧を時間に応じて制御して、12時間第2発光部を駆動し、次の12時間第2発光部を駆動しない」ものであるから、時間に応じた電圧制御を実行するための所定の時間プログラムを有しているものと認められる。
また、赤色光を発する第2発光部を駆動すれば、第2発光部より赤色光が発せされる、すなわち、第2発光部は赤色光を供給することになる。
そして、上記ア.で述べたとおり、刊行物発明の「発光装置」は、照明を行っているといえるので、刊行物発明の「赤色光」は本願発明1の「非白色照明」に相当する。
加えて、第2発光部から発せられる赤色光は有色光であるから、刊行物発明の「第2発光部を駆動」する「12時間」は、非白色照明を供給しており、「所定の第1有色照明期間の間」に相当する。そして、刊行物発明の「第2発光部を駆動」する「12時間」と「第2発光部を駆動しない」「次の12時間」とが時間的に重ならないことは明らかである。
そうすると、刊行物発明の「第2コントローラは、タイマーを有し、赤色光を発する第2発光部の電圧を時間に応じて制御して、12時間第2発光部を駆動し、次の12時間第2発光部を駆動しない」という構成と、本願発明1の「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って」「該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明のみを供給するステップを有し」という構成は、「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って」「該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明を供給するステップを有し」という構成の限度で一致する。

エ.刊行物発明の第2コントローラが所定の時間プログラムを有する点については上記ウ.で述べたとおりである。
そして、「第2コントローラは、タイマーを有し、赤色光を発する第2発光部の電圧を時間に応じて制御して、12時間第2発光部を駆動し、次の12時間第2発光部を駆動しない」ものであるから、所定の時間プログラムは少なくとも24時間にわたり可動するものであるといえる。
そうすると、刊行物発明の「第2コントローラは、タイマーを有し、赤色光を発する第2発光部の電圧を時間に応じて制御して、12時間第2発光部を駆動し、次の12時間第2発光部を駆動しない」という構成は、本願発明1の「前記時間プログラムは少なくとも6時間にわたり稼働し」という構成を充足する。

オ.刊行物発明の第1コントローラ、第2コントローラが所定の時間プログラムを有する点については上記イ.及びウ.で述べたとおりである。
そうすると、刊行物発明の「第1コントローラ」、「第2コントローラ」は、いずれも、本願発明1の「前記照明システムを前記所定の時間プログラムに従って制御する制御ユニット」に相当するので、刊行物発明の「第1コントローラは、タイマーを有し、白色光を発する第1発光部の電圧を時間に応じて制御して第1発光部を駆動すると共に、第2コントローラは、タイマーを有し、赤色光を発する第2発光部の電圧を時間に応じて制御して、12時間第2発光部を駆動し、次の12時間第2発光部を駆動しない」という構成は、本願発明1の「前記照明システムを前記所定の時間プログラムに従って制御する制御ユニットが適用される」という構成を充足する。

以上から、本願発明1と刊行物発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「照明システムによる或る領域の制御された照明のための方法であって、前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明のみを供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明を供給するステップを有し、前記時間プログラムは少なくとも6時間にわたり稼働し、前記照明システムを前記所定の時間プログラムに従って制御する制御ユニットが適用される方法。」

そして、本願発明1と刊行物発明とは、以下の点で相違する。
<相違点a>
「非白色照明」の制御に関し、
本願発明1では、「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って」「第1有色照明期間の間には非白色照明『のみ』を供給する」のに対し、
刊行物発明では、そのように特定されていない点。

したがって、本願発明1は、刊行物発明と相違するから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(2)判断
刊行物1の段落[0006]、[0007]、[0029]等に記載されるように、刊行物発明は、発光装置が発する光の色温度を環境に応じて変化させることを発明の課題とし、当該課題を解決すべく、刊行物発明では、第1発光部が発する白色光に、第2発光部が発する赤色光を混合することで、発光装置が発する光の色温度を変化させるという構成を採用している。
そうすると、刊行物発明において、敢えて、白色光を発する第1発光部と赤色光を発する第2発光部とを同時に駆動することなく、混合するための赤色光を発する第2発光部のみを単独で駆動することには動機付けがなく、むしろ阻害要因があるといえる。
したがって、刊行物発明において、相違点aに係る本願発明1の発明特定事項を想到することは、当業者にとって容易であるとはいえないから、本願発明1は、当業者が刊行物発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2-10について
本願発明2-10も、相違点aに係る本願発明1の発明特定事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が刊行物発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明11-13について
本願発明11-13も、「前記所定の時間プログラムが、白色照明のみを供給するための所定の全般照明期間と、該全般照明期間と時間的に重ならない、非白色照明のみを供給するための所定の第1有色照明期間とを含み」という、相違点aに係る本願発明1の発明特定事項と同様の事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が刊行物発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定についての判断
1.本願発明1について
(1)引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献2には、「照明器具」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
ア.「【0005】
本発明は、かかる従来の問題を解消すべくなされたもので、利用者が目覚めた後、覚醒度の上昇や交感神経活動の亢進を促し、速やかに眠気を取ることのできる照明器具を提供することを目的とする。」

イ.「【0080】
次に、図5を参照してこの照明器具3の制御系の構成について説明する。器具本体7には、制御装置81と照明点灯回路82とからなる制御部80と、受光部33と、蛍光灯17および赤色LED15が設けられている。受光部33は、リモコン21から発光された赤外線通信コマンドを受信する。
【0081】
照明点灯回路82は、蛍光灯17及び赤色LED15の点灯及び消灯を行う。制御装置81は、受信された赤外線通信コマンドに応じて照明点灯回路82を制御し、照明の点消灯制御を行う。」

ウ.「【0082】
蛍光灯17は、赤色LED15とは異なる色、例えば白色、昼光色、電球色などで点灯する一般的な照明を行うものである。」

エ.「【0091】
続いて、図7を参照してこの照明器具3の動作を説明する。図7は照明器具3の動作を示すフローチャートである。
この照明器具3では、リモコン21に内蔵されたCPU51が、あらかじめ目覚まし時刻調整釦41によって設定されてメモリ53に記憶されている任意のアラーム時刻の設定時刻と、時計部49の時刻とを比較する(S1)。」

オ.「【0106】
このようにこの実施形態の照明器具3によれば、あらかじめ設定されたアラーム時刻になると、アラーム音を発生し、利用者に対して目覚めを促し、このアラーム音が利用者によるアラーム釦43の操作で停止されると、アラーム釦43が操作されたことでCPU51が利用者の目覚めを検知し、赤色LED15を点灯させ、赤色照明が利用者に照射される。
【0107】
この赤色照明の照射により、利用者は、目覚めはしたものの眼を閉じていた場合であっても瞼を赤色光が透過して覚醒度を上昇させ、交感神経活動の亢進を促すので、利用者の眠気を速やかに取ることができる。」

カ.「【0109】
例えば上記実施形態では、離床センサ23を用いて利用者の離床を検知していたが、赤色光を浴びた利用者の血圧上昇が6分後にピークになることを考慮して、アラーム釦43がOnになってから6分経過した時に、赤色LED15を自動的に消灯させ、かつ蛍光灯17を点灯させるようにしてもよい。」

以上の記載事項から次の事項が認定できる。
キ.上記エ.には、「続いて、図7を参照してこの照明器具3の動作を説明する。図7は照明器具3の動作を示すフローチャートである。」と記載されており、併せて図7を参照すると、引用文献2には、照明装置3の制御方法が記載されていると認められる。

これらの記載事項ア.?カ.、認定事項キ.及び図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「照明装置3の制御方法であって、アラーム時刻になると、アラーム音を発生し、このアラーム音が利用者によるアラーム釦43の操作で停止されると、アラーム釦43が操作されたことで利用者の目覚めを検知し、赤色LED15を点灯させ、赤色照明が利用者に照射され、アラーム釦43が操作されてから6分経過した時に、赤色LED15を自動的に消灯させ、かつ蛍光灯17を点灯させるようにする制御部80を備えた照明装置3の制御方法。」

(2)対比
ア.通常、照明装置は、或る領域を照明するために用いられるのが技術常識であるから、引用発明の「照明装置3」も或る領域を照明するために用いられるものと認められる。
したがって、引用発明の「照明装置3の制御方法」は、本願発明1の「照明システムによる或る領域の制御された照明のための方法」に相当する。

イ.引用文献2(上記(1)ウ.(段落【0082】))には、「蛍光灯17は、赤色LED15とは異なる色、例えば白色、昼光色、電球色などで点灯する一般的な照明を行うものである。」と記載される一方、本願明細書の段落【0032】には、「本明細書における”白色光”なる用語は、当業者により既知のものである。特には、該”白色光”なる用語は、・・・全般照明に対しては特に約2,700K?6,500Kの範囲内の・・・光に関するものである。」と記載されており、一般に、白色、昼光色、電球色の色温度が、それぞれ、4200K、5000K、3000Kであることも考慮すると、引用発明の「蛍光灯17」は、本願発明1でいうところの「白色照明」を供給して「全般照明」を行うものと認められる。
また、引用発明の「赤色LED15」は、「赤色照明」を照射するものであるから、本願発明1でいうところの「非白色照明」を供給して「第1有色照明」を行うものと認められる。

ウ.引用発明の「照明装置3の制御方法」では、「アラーム釦43が操作されたことで利用者の目覚めを検知し、赤色LED15を点灯させ、赤色照明が利用者に照射され、アラーム釦43が操作されてから6分経過した時に、赤色LED15を自動的に消灯させ、かつ蛍光灯17を点灯させる」ので、「蛍光灯17」の点灯時と「赤色LED15」の点灯時は時間的に重ならないものと認められる。
また、引用発明における「赤色LED15を点灯させ、」「赤色LED15を自動的に消灯させ」るまでの「6分」は、本願発明1の「所定の第1有色照明期間」に相当する。

エ.引用発明の「制御部80」は、「アラーム時刻になると、アラーム音を発生し、このアラーム音が利用者によるアラーム釦43の操作で停止されると、アラーム釦43が操作されたことで利用者の目覚めを検知し、赤色LED15を点灯させ、赤色照明が利用者に照射され、アラーム釦43が操作されてから6分経過した時に、赤色LED15を自動的に消灯させ、かつ蛍光灯17を点灯させるようにする」ものであるから、制御部80は、アラーム音の発生、赤色LED15の点灯・消灯、蛍光灯17の点灯等を自動的に行うための、所定のプログラムを内蔵しているものと認められる。
また、引用発明の「制御部80」は、本願発明1の「制御ユニット」に相当する。

オ.以上、上記イ.?エ.より、引用発明の「アラーム時刻になると、アラーム音を発生し、このアラーム音が利用者によるアラーム釦43の操作で停止されると、アラーム釦43が操作されたことで利用者の目覚めを検知し、赤色LED15を点灯させ、赤色照明が利用者に照射され、アラーム釦43が操作されてから6分経過した時に、赤色LED15を自動的に消灯させ、かつ蛍光灯17を点灯させるようにする制御部80を備えた」という事項と、
本願発明1の「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明のみを供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明のみを供給するステップを有し、前記時間プログラムは少なくとも6時間にわたり稼働し、前記照明システムを前記所定の時間プログラムに従って制御する制御ユニットが適用される」という事項は、
「前記照明システムにより所定のプログラムに従って所定の全般照明時には白色照明のみを供給すると共に該全般照明時と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明のみを供給するステップを有し、前記照明システムを前記所定のプログラムに従って制御する制御ユニットが適用される」という事項の限度で一致する。

以上から、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「照明システムによる或る領域の制御された照明のための方法であって、前記照明システムにより所定のプログラムに従って全般照明時には白色照明のみを供給すると共に該全般照明時と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明のみを供給するステップを有し、前記照明システムを前記所定のプログラムに従って制御する制御ユニットが適用される方法。」

そして、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「白色照明」と「非白色照明」の制御に関し、
本願発明1では、「前記照明システムにより所定の『時間』プログラムに従って『所定の全般照明期間の間』には白色照明のみを供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明のみを供給するステップを有し、」「前記照明システムを前記所定の『時間』プログラムに従って制御する制御ユニットが適用される」のに対し、
引用発明では、そのように特定されていない点。

<相違点2>
「所定の」「プログラム」の稼働時間に関し、
本願発明1では、「前記時間プログラムは『少なくとも6時間にわたり稼働』」するのに対し、
引用発明では、そのように特定されていない点。

(3)判断
相違点1について検討する。
上記(1)ア.(段落【0005】)には、「本発明は、かかる従来の問題を解消すべくなされたもので、利用者が目覚めた後、覚醒度の上昇や交感神経活動の亢進を促し、速やかに眠気を取ることのできる照明器具を提供することを目的とする。」と記載され、上記(1)オ.(段落【0107】)には、「この赤色照明の照射により、利用者は、目覚めはしたものの眼を閉じていた場合であっても瞼を赤色光が透過して覚醒度を上昇させ、交感神経活動の亢進を促すので、利用者の眠気を速やかに取ることができる。」と記載されるように、引用発明は、利用者が目覚めた後、覚醒度の上昇や交感神経活動の亢進を促し、速やかに眠気を取ることのできる照明器具を提供することを発明の課題とし、当該課題を解決すべく、引用発明では、「アラーム音が利用者によるアラーム釦43の操作で停止されると、アラーム釦43が操作されたことで利用者の目覚めを検知し、赤色LED15を点灯させ」るという構成を採用している。
そうすると、引用発明においては、アラーム釦43が操作されたのを検知した上で赤色LED15を点灯させることが必須であるから、引用発明において、「アラーム音が利用者によるアラーム釦43の操作で停止されると、アラーム釦43が操作されたことで利用者の目覚めを検知し、赤色LED15を点灯させ」るという構成に替えて、アラーム釦43が操作されたことで利用者の目覚めを検知することなく、所定の時刻になると赤色LED15を自動的に点灯させる、すなわち、所定の時間プログラムに従って赤色LED15を点灯させるように構成することには阻害要因があるといえる。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは、当業者にとって容易であるとはいえない。

なお、引用文献1及び引用文献3には、いずれも、白色照明のみを供給する照明システムが記載されているのみであり、本願発明1の「照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明のみを供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明のみを供給する」という事項については、何ら記載も示唆もされていない。

(4)小括
以上から、引用発明において、少なくとも相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは当業者にとって容易であるとはいえないから、本願発明1は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2-10について
本願発明2-10も、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明11-13について
本願発明11-13も、「(c)当該照明システムを所定の時間プログラムに従って制御する制御ユニットとを有し、前記所定の時間プログラムが、白色照明のみを供給するための所定の全般照明期間と、該全般照明期間と時間的に重ならない、非白色照明のみを供給するための所定の第1有色照明期間とを含み」という、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項と同様の事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第8 当審拒絶理由の理由1についての判断
平成29年3月14日に提出された手続補正書により、補正前の請求項1の「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明を供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明を供給するステップを有し」は、「前記照明システムにより所定の時間プログラムに従って所定の全般照明期間の間には白色照明のみを供給すると共に該全般照明期間と時間的に重ならない所定の第1有色照明期間の間には非白色照明のみを供給するステップを有し」と補正された(下線は補正箇所を示す。以下同様)。
また、同手続補正書により、補正前の請求項11の「前記所定の時間プログラムが、白色照明を供給するための所定の全般照明期間と、該全般照明期間と時間的に重ならない、非白色照明を供給するための所定の第1有色照明期間とを含み」は、「前記所定の時間プログラムが、白色照明のみを供給するための所定の全般照明期間と、該全般照明期間と時間的に重ならない、非白色照明のみを供給するための所定の第1有色照明期間とを含み」と補正された。

以上の補正により、当審拒絶理由で通知した理由1は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-21 
出願番号 特願2013-520250(P2013-520250)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05B)
P 1 8・ 537- WY (H05B)
P 1 8・ 113- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 米山 毅  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 森林 宏和
出口 昌哉
発明の名称 日周リズムによる動的照明システム  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

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