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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1327328
審判番号 不服2015-20316  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-13 
確定日 2017-04-19 
事件の表示 特願2011-551234「パラジウム担持触媒複合体」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月16日国際公開、WO2010/104658、平成24年 8月16日国内公表、特表2012-518531〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年 2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年 2月20日、2009年 2月26日、2010年 2月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月11日に国際出願翻訳文提出書により、明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、平成25年10月25日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年 1月20日に手続補正書及び意見書が提出され、平成26年 9月30日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年 1月30日に手続補正書及び意見書が提出されたが、平成27年 7月 3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年11月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成27年11月13日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

本件補正は、平成27年 1月30日に提出された手続補正書により補正された本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?15を補正して、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?13とするものであり、そのうち、本件補正前の請求項1及び本件補正後の請求項1については、以下のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。

(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
エンジン排ガス用触媒複合体であって、担体上に触媒材料を含み、触媒材料は、少なくとも60質量%のジルコニア成分と、ランタナ、ネオジミア、プラセオジミア、イットリアからなる群から選択される1種以上の希土類元素酸化物とを含む第1支持体上に分散されたパラジウム成分を含み、第1支持体は、セリアを含まないか、或いは15質量%以下0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まないことを特徴とする触媒複合体。」

(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
エンジン排ガス用触媒複合体であって、担体上に触媒材料を含み、触媒材料は、60質量%?79.7質量%のジルコニア成分と、ランタナ、ネオジミア、プラセオジミア、イットリアからなる群から選択される1種以上の希土類元素酸化物とを含む第1支持体上に分散されたパラジウム成分を含み、第1支持体は、セリアを含まないか、或いは10質量%以下0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まないことを特徴とする触媒複合体。」

2 補正の目的要件

補正の目的について以下に検討する。

本件補正によって、第1支持体を構成するジルコニア成分の含有量を「少なくとも60質量%のジルコニア成分」から「60質量%?79.7質量%のジルコニア成分」とする補正(以下、「補正事項1」という。)と、「第1支持体は、セリアを含まないか、或いは15質量%以下0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まない」を、「第1支持体は、セリアを含まないか、或いは10質量%以下0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まないこと」とする補正(以下、「補正事項2」という。)とがなされた。

ここで、補正事項1及び2は、それぞれジルコニア成分の含有量及び第1支持体を構成するセリアの含有量を限定することによって、狭い範囲の態様に限定するものであり、発明の属する技術分野及び解決すべき課題を変更するものではないから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含んでいるから、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

3 独立特許要件

(1) 本願補正発明

本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
エンジン排ガス用触媒複合体であって、担体上に触媒材料を含み、触媒材料は、60質量%?79.7質量%のジルコニア成分と、ランタナ、ネオジミア、プラセオジミア、イットリアからなる群から選択される1種以上の希土類元素酸化物とを含む第1支持体上に分散されたパラジウム成分を含み、第1支持体は、セリアを含まないか、或いは10質量%以下0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まないことを特徴とする触媒複合体。」(以下、「本願補正発明」という。)

(2) 刊行物に記載された事項及び刊行物に記載された発明

ア 刊行物に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願優先日前に頒布されたことが明らかな特開2006- 68728号公報(以下、「引用例1」という。)は、【発明の名称】を「排気ガス浄化触媒」とする特許文献であって、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加したものである。以下同じ。)

「【請求項1】
ハニカム状担体に、触媒貴金属が担持された酸化物を含有する触媒層が形成されている排気ガス浄化触媒において、
上記酸化物は、ZrとPrとを結晶格子に有するZr-Pr複酸化物であり、該複酸化物のZr/Pr原子モル比が1/1以上であることを特徴とする排気ガス浄化触媒。
【請求項2】
請求項1において、
上記触媒貴金属としてPd単体とPdOとが上記Zr-Pr複酸化物に担持されていることを特徴とする排気ガス浄化触媒。」

「【0012】
上記Zr-Pr複酸化物のZr/Pr原子モル比は、1/1以上12/1以下とすること、さらには2/1以上12/1以下とすることが、上記HC浄化のライトオフ性能を向上させる上で好ましい。上記触媒貴金属としては、Pt、Pd、Rh等の白金族元素が好ましい。」

「【0031】
図1には本発明に係る自動車のエンジンの排気ガス浄化触媒1が示されている。この触媒1は、三元触媒又は酸化触媒として用いられるものであり、排気ガス流れ方向に貫通する多数のセル3を有する多孔質のモノリス担体(ハニカム状担体)2の各セル壁に、触媒貴金属を含有する触媒層を形成してなるものである。」

「【0034】
<供試触媒>
-実施例1?3-
実施例1?3に係る触媒貴金属のサポート材(酸化物)として、Zr/Pr原子モル比が12/1、2/1及び1/1の3種類のZr-Pr複酸化物を準備した。このZr-Pr複酸化物の製法は次の通りである。
【0035】
オキシ硝酸ジルコニウムとプラセオジウム硝酸塩溶液と水とを混合して合計300mLとし、この混合溶液を室温で約1時間攪拌した。この混合溶液に28%アンモニア水50mLを添加して攪拌した。このアンモニア水の混合によって白濁した溶液を一昼夜放置し、生成したゲルを遠心分離器にかけ、十分に水洗した。この水洗したゲルを150℃の温度で乾燥させた後、200℃の温度に2時間保持し、次いで500℃の温度に2時間保持する焼成を行なった。」

「【0037】
以上の実施例3種の各Zr-Pr複酸化物について、触媒貴金属としてPdを含有する溶液を含浸させ、乾燥及び焼成を行なうことによって実施例1?3の各触媒粉末を得た。これら触媒粉末では、PdはPd単体とPdOとの形態でZr-Pr複酸化物に担持されている。そうして、各実施例の触媒粉末を水及びバインダと混合してスラリーを形成し、このスラリーをコージェライト製ハニカム状担体のセル壁にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことによって触媒層を形成した。」

「【0051】【表1】

【0052】
同表によれば、実施例触媒はいずれも比較例触媒よりもHCライトオフ温度が低い。特に、Zr/Pr原子モル比が2/1及び12/1の実施例1,2各々において比較例触媒と顕著な差違が見られる。実施例1?3及び比較例1?3の結果から、Zr/Pr原子モル比が1以上のZr-Pr複酸化物をサポート材として用いると、HCライトオフ性能が良くなること、特にZr/Pr原子モル比を2/1以上12/1以下にすることが好ましいことがわかる。」

イ 引用例1に記載された発明

引用例1には、【請求項1】、【請求項2】に、「ハニカム状担体に、Pd単体とPdOが担持された酸化物を含有する触媒層が形成されている排気ガス浄化触媒において、上記酸化物は、ZrとPrとを結晶格子に有するZr-Pr複酸化物であり、該複酸化物のZr/Pr原子モル比が1/1以上である排気ガス浄化触媒」が記載されており、【0031】に該触媒を自動車のエンジンの排気ガス浄化触媒に用いることが記載されており、【0012】、【0034】、【0052】に、実施例1?2に基づいて、Zr-Pr複酸化物のZr/Pr原子モル比を2/1以上12/1以下とすることが記載されているから、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。

「エンジン排ガス用浄化触媒であって、ハニカム状担体にPd単体とPdOが担持された酸化物を含有する触媒層が形成されており、前記酸化物は、ZrとPrとを結晶格子に有するZr-Pr複酸化物であり、前記複酸化物のZr/Pr原子モル比が2/1以上12/1以下である排気ガス浄化触媒」(以下、「引用発明」という。)

ウ 本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「触媒層」、「浄化触媒」がそれぞれ本願補正発明の「触媒材料」、「触媒複合体」に相当する。
また、引用発明の「Zr-Pr複酸化物」は、本願補正発明の「60質量%?79.7質量%のジルコニア成分と、ランタナ、ネオジミア、プラセオジミア、イットリアからなる群から選択される1種以上の希土類元素酸化物とを含む第1支持体」のうちの「ジルコニア成分と、プラセオジミアからなる希土類元素酸化物とを含む第1支持体」に相当する。
なお、本願補正発明の「ジルコニア成分と、プラセオジミアからなる希土類元素酸化物」は、結晶構造に関して特定をしていないため、引用発明の「Zr-Pr複酸化物」が「ZrとPrとを結晶格子に有する」点は相違点とはならない。

よって、本願補正発明と引用発明とは「エンジン排ガス用触媒複合体であって、担体上に触媒材料を含み、触媒材料は、ジルコニア成分と、プラセオジミアからなる希土類元素酸化物とを含む第1支持体上に分散されたパラジウム成分を含む触媒複合体。」である点で一致し、以下の2点(以下、各々「相違点A」、「相違点B」という。)で一応相違する。

相違点A:本願補正発明は、第1支持体が、セリアを含まないか、或いは10質量%以下0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まないのに対し、引用発明は、Zr-Pr複酸化物中のセリア及びアルミナの含有量が不明である点。

相違点B:本願補正発明は、第1支持体を構成するジルコニア成分が60質量%?79.7質量%であるのに対し、引用発明は、Zr/Pr原子モル比が2/1以上12/1以下である点。

エ 相違点についての判断

(ア) 相違点Aについて

引用例1には、引用発明におけるZr-Pr複酸化物に、不可避不純物を除いて、あえてセリア及びアルミナを導入することについて記載も示唆もなく、【0034】?【0037】に記載された製造方法において、実施例1?2のZr-Pr複酸化物にセリア及びアルミナ等の他の成分が導入されているとも認められない。
よって、相違点Aは、両者の実質的な相違点とはいえない。
なお、引用例1の請求項3?4、実施例4?8にはZr-Pr複酸化物をアルミナで担持することが記載されているが、当該請求項及び実施例は、引用発明とは別な実施態様といえる。

(イ) 相違点Bについて

上述したように、実施例1?2のZr-Pr複酸化物にセリア及びアルミナ等の他の成分は導入されておらず、引用発明のZr-Pr複酸化物は、ZrとPrからなる複酸化物であると認められる。
ここで、複酸化物のZr/Pr原子モル比からジルコニア成分の質量比を計算すると、複酸化物のZr/Pr原子モル比が2/1の場合、ZrO_(2)/Pr_(6)O_(11)分子モル比は2/0.1667であり、各分子の分子量を用いてジルコニア成分の質量比を計算すると、ZrO_(2)の分子量が123.22、Pr_(6)O_(11)の分子量が1021.44であるから、ジルコニア成分の質量比は59.1質量%となり、複酸化物のZr/Pr原子モル比が12/1の場合のジルコニア成分の質量比を計算すると89.7質量%となる。

よって、相違点Bは、本願補正発明が第1支持体を構成するジルコニア成分が60質量%?79.7質量%であるのに対し、引用発明は、Zr-Pr複酸化物を構成するジルコニア成分が59.1質量%?89.7質量%である点といえる。

そこで次に、この相違点Bにより、本願補正発明が引用発明に対し、いわゆる選択発明を構成するか否かについて検討するに、本願翻訳文明細書等には、発明が解決しようとする課題、及び、第1支持体を構成するジルコニア成分の数値範囲に関して、以下の事項が記載されている。

「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パラジウムが触媒複合体において貴金属として用いられるとき、ガソリンおよびディーゼルの両方の内燃機関からの排出を処理する際にアルミナがPd支持体として一般に用いられている。さらに、ジルコニアがパラジウム支持体として用いられてきたが、ジルコニアの表面積の大幅な損失が、この目的でのジルコニア支持体の広範な使用を抑制してきた。かかる支持体は、水熱安定性の欠失に悩まされる。かかる触媒の性能を向上させることが依然として必要とされており、残存炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物の減少を5%向上させることが、優れた性能向上と考えられている。」

「【0008】
本発明の第1実施形態において、触媒複合体であって、担体上に触媒材料を含み、触媒材料は、少なくとも60質量%のジルコニア成分と、ランタナ、ネオジミア、プラセオジミア、イットリアからなる群から選択される1種以上の希土類元素酸化物とを含む第1支持体上に分散されたパラジウム成分を含み、・・・(略)・・・
第1実施形態における詳細な変形例において、ジルコニア成分は、少なくとも65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、または99質量%の量で支持体に存在し得る。
・・・(略)・・・
【0009】
・・・(略)・・・他の実施形態において、ジルコニア成分は、60?90質量%、65?89質量%、70?87質量%、75?85質量%、または78?82質量%の範囲の量で支持体に存在し得・・・(略)・・・」

「【0056】
比較サンプルAおよびBならびにサンプルC?Hのそれぞれに用いられた各支持体の組成を表2に示す。
【0057】【表2】



「【0066】
図1は、250℃におけるCO+NO+蒸気反応試験およびNOx転化率の結果を示す。図1が示すように、サンプルC?HのそれぞれのNOx転化率は、少なくとも約80%以上である一方で、アルミナが担持した材料は、25%未満のNOx転化率しか示さなかった。
【0067】
図2は、300℃で測定したNOx転化率の結果を示す:参照の、Pd担持のアルミナ材料と比較して、Pd担持のZrO_(2)系材料では、有意により高いNOx転化率が達成された。ZrO_(2)系材料は、0.5%Pd担持アルミナでの10%未満のNOx転化率と比較して、50%を超えるNOx転化率を示した。Pd/ZrO_(2)についてのNOx転化率におけるこの有意な向上は、低温始動の間のガソリンビヒクルにおけるNOxライトオフ温度を結果として向上させるであろう。図2は、アルミナ参照材料と比較した実験材料でのNOx転化率を示す。NOx転化率をいくつかの温度でモデルガス反応(僅かにリッチな条件)を用いて測定した。
【0068】
実施例3-プロピレンおよびメタンの転化試験
プロピレン転化活性:この反応は、ガソリンビヒクル試験における僅かにリッチな条件を模倣する。この反応において、プロピレンおよびメタンの酸化活性を、参照の、Pd担持のアルミナ、およびPd担持の実験ZrO_(2)複合体材料に対して研究した。炭化水素転化率を、このモデルガス反応(以下の条件を参照されたい)を用いて測定した。300℃で測定したプロピレン転化率の結果は、図3に示すように、参照の、Pd担持のアルミナ材料と比較して、Pd担持ZrO_(2)系材料では、有意により高いプロピレン転化率が達成されたことを示す。ZrO_(2)系材料は、0.5%のPd担持の参照アルミナでの10%未満のプロピレン転化率と比較して、20%を超えるプロピレン転化率を示した。Pd/ZrO_(2)についてのプロピレン転化率におけるこの有意な向上は、低温始動の間のガソリンビヒクルにおける炭化水素ライトオフ活性を結果として向上させるであろう。」

「【0070】
メタン転化活性:メタンは、酸化するのが最も困難な炭化水素の1種である。図6に示すように、メタン転化率は、Pd担持のアルミナについて観察されたものの2倍を超えている。これは、DOCを含む種々の用途および予混合圧縮着火(HCCI)タイプの用途からメタンを除去するのに非常に有意である。図4は、メタン転化活性における有意な向上を、参照の、Pd担持のアルミナと比較して、ZrO_(2)複合体Pd支持体を用いて達成したことを示す。Pd担持のアルミナ支持体についての転化率は、15%に過ぎず、低くて約5%であったが、Zr支持体については、転化率は、25%、30%および35%を超えた。
【0071】
実施例4-僅かに希薄な条件でのモデルガス試験
この研究を、ガソリンビヒクル試験におけるある一定の過渡状態の代表例であり得る僅かに希薄な条件で実施した。図5に示す結果は、Pd担持のアルミナ参照材料の利点と比較した、Pd担持のZrO_(2)複合体材料の利点を明確に示す。希薄条件下でのプロピレン転化率は、約30%以下でのPd担持の参照アルミナと比較して60%を超えるプロピレン転化活性を示した。これらの結果は、Zr系支持体材料が、ガソリン三元触媒用途において非常に有用であることを示している。」












以上の記載によれば、本願補正発明が解決しようとする課題は、内燃機関の排出ガスを処理する際に、残存炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物の減少を5%向上させることであって、本願補正発明は残存炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物のいずれかのガスに特化した触媒複合体に用途限定されているものではなく、処理温度が特定されたものでもない。
してみると、図1?図6のように、処理温度によって残存炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物の転化率は変化することも考慮すると、(当審注:図4又は図6は同じ温度となっているが、いずれかの温度が誤記であると思われる。)、引用発明の範囲内であって、本願補正発明の範囲外の触媒(サンプルC?E)に比べて、本願補正発明の範囲内の触媒(サンプルF?H)が、必ず優れた効果を有していると認めることはできない。
(例えば、図3に記載されているように、プロピレンの転化率について、本願補正発明の範囲外のもの(サンプルC、E)に比べて、本願補正発明の範囲内のもの(サンプルF)は、優れた効果を有していない。)

してみると、本願補正発明が、引用発明に比して顕著な効果を奏しているものということはできず、上記相違点B、すなわち、「60質量%?79.7質量%のジルコニア成分」と限定した点でいわゆる選択発明が成立しているものとはいえないから、上記相違点Bは、実質的な相違点でないか、仮に相違点であったとしても、当業者が引用例1に記載の発明に基づき適宜なし得る成分調整の範囲内の差にすぎない。

オ 審判請求書における主張について

請求人は審判請求書の「[5](2)b)」において、以下の点を主張している。

「HC(炭化水素)としては、引用文献2(当審注:引用例1)はプロピレン(段落0060)を開示しているものの、「酸化するのが最も困難な炭化水素の1種である」メタンは開示しておりません(本願明細書の段落0070)。」と主張しているが、本願補正発明はメタンに特化した触媒複合体に用途限定されているわけではないため、上記主張は請求項の記載に基づかない主張であるとともに、本願図6によれば、メタンの転化率について、比較例(サンプルB)、及び、本願補正発明の範囲外のもの(サンプルC?E)に比べて、本願補正発明の範囲内のもの(サンプルF)が、選択的に優れた効果を有していると認めることもできない。

さらに、「拒絶査定でご指摘頂いた通り、引用文献2は「アルミナは触媒材料の構成成分として必須ではない」とも認識されうるものの、引用文献2はアルミナに担持させることで、HC浄化に関するライトオフ性能を更に向上させております(引用文献2の段落0016)。
HC(炭化水素)としては、引用文献2はプロピレン(段落0060)を開示しているものの、「酸化するのが最も困難な炭化水素の1種である」メタンは開示しておりません(本願明細書の段落0070)。
本発明は、従来使用していたアルミナを排除した上で、ジルコニア及びセリアの含有量を設定し、「ジルコニア支持体の広範な使用」を可能にしております(本願明細書の段落0005、図1?6等)。
これに対し、引用文献2は、アルミナを好適材料とした上で、ジルコニア含有量を59?90質量%に設定しており、セリアの量については何ら言及がないのだから、引用文献2からアルミナを排除した上で、ジルコニア含有量を60?79.7質量%、セリア含有量を10質量%以下に限定することは、他の引用文献1や周知技術を参照しても容易に想到し得たはずはありません。」とも主張している。

しかしながら、既に指摘したように、本願補正発明は、残存炭化水素、ましてやメタンの酸化に限定された触媒ではないし、【0051】【表1】には、アルミナを使用しない引用発明の実施例2が、HCライトオフ温度が310℃と、アルミナを併用する実施例に比べても優れた効果を有することが記載されている。

よって、上記主張は採用できない。


(3) 独立特許要件についてのまとめ

以上、検討したとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、仮に、そうでないとしても、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4 補正の却下の決定のむすび

以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

以上のとおり、本件補正は却下されたので、特許請求の範囲についての最新の手続補正書は、平成27年 1月30日に提出されたものである。

そして、平成27年 1月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15のうち、請求項1に係る発明は、次のとおりものと認められる。

「【請求項1】
エンジン排ガス用触媒複合体であって、担体上に触媒材料を含み、触媒材料は、少なくとも60質量%のジルコニア成分と、ランタナ、ネオジミア、プラセオジミア、イットリアからなる群から選択される1種以上の希土類元素酸化物とを含む第1支持体上に分散されたパラジウム成分を含み、第1支持体は、任意に15質量%以下のセリアを含有し、アルミナを含まないことを特徴とする触媒複合体。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用例1の記載及び引用発明

原査定の理由において引用された引用例1の記載事項と引用発明については、上記第2 3(2)ア?イにおいて、それぞれ摘記し、認定したとおりである。

3 対比・判断

上記第2 2において摘記したように、本願補正発明は、本願発明の第1支持体を構成するジルコニア成分の含有量を「少なくとも60質量%のジルコニア成分」から「60質量%?79.7質量%のジルコニア成分」とする補正事項1、「第1支持体は、セリアを含まないか、或いは15質量%以下


0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まない」を、「第1支持体は、セリアを含まないか、或いは10質量%以下0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まないこと」とする補正事項2に係る補正がなされたものである。
すなわち、本願発明は、本願補正発明において、上記補正事項1及び2に係る補正がなされなかったものである。

そこで、前記第2 3(2)ウで本願補正発明と引用発明とを対比したのと同様に、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は「エンジン排ガス用触媒複合体であって、担体上に触媒材料を含み、触媒材料は、ジルコニア成分と、プラセオジミアからなる希土類元素酸化物とを含む第1支持体上に分散されたパラジウム成分を含む触媒複合体。」である点で一致し、以下の2点(以下、各々「相違点A’」、「相違点B’」という。)で一応相違する。

相違点A’:本願発明は、第1支持体が、セリアを含まないか、或いは15質量%以下0質量%を超えてセリアを含有し、アルミナを含まないのに対し、引用発明は、Zr-Pr複酸化物中のセリア及びアルミナの含有量が不明である点。

相違点B’:本願発明は、第1支持体を構成するジルコニア成分が少なくとも60質量であるのに対し、引用発明は、Zr/Pr原子モル比が2/1以上12/1以下である点。

ここで上記相違点A’、B’について検討すると、相違点A’は、前記第2 3(2)ウにおいて前記した相違点Aと同様の相違点であり、前記第2 3(2)エ(ア)で相違点Aについて記載した理由と同様の理由によって、実質的な相違点ではない。
また、引用例1には、引用発明の「実施例1」としてZr-Pr複酸化物を構成するジルコニア成分が89.7質量%(Zr/Pr原子モル比が12/1)のものが記載されているため、相違点B’は相違点にはならない。

よって、本願発明は引用例1に記載された発明である。


第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

したがって、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-09 
結審通知日 2016-11-15 
審決日 2016-12-06 
出願番号 特願2011-551234(P2011-551234)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
P 1 8・ 113- Z (B01J)
P 1 8・ 575- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大城 公孝  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 山本 雄一
後藤 政博
発明の名称 パラジウム担持触媒複合体  
代理人 江藤 聡明  
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