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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1327342
審判番号 不服2016-9846  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-30 
確定日 2017-05-09 
事件の表示 特願2011-554175「サーフェースベースの触覚効果を特徴とするインターフェースのためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月16日国際公開、WO2010/105006、平成24年 9月 6日国内公表、特表2012-520521、請求項の数(22)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)3月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年3月12日 米国、2009年11月17日 米国、2009年11月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月10日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日付けで誤訳訂正書が提出され、平成28年2月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正がされ、同年7月29日に前置報告がされ、同年10月3日に審判請求人から前置報告に対する上申がなされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年2月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1,12,22に係る発明は、以下の引用文献1?5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願請求項2?11,13?21に係る発明は、以下の引用文献1?11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2008-516348号公報
2.国際公開第2009/026337号
3.熊澤逸夫,誰でも触れた途端に何気なく使えるユーザインターフェイスを求めて,映像情報メディア学会技術報告,日本,(社)映像情報メディア学会,2005年8月29日,Vol.29,No.46,67?70頁
4.米国特許出願公開第2004/0169674号明細書
5.特開2009-003867号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2004-265281号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2006-228151号公報
8.特表2008-520012号公報(周知技術を示す文献)
9.特開2004-046792号公報(周知技術を示す文献)
10.特開2005-078644号公報
11.特開2005-077674号公報(周知技術を示す文献)


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1,12,22に「前記第2触覚効果は、前記コンテンツの場所に関連するコントロール部にマップされる前記タッチ領域の部分に向かってユーザをガイドする触覚効果を含む」という事項が追加された。
当該補正事項は、平成27年12月11日付けで提出された誤訳訂正書により訂正された明細書の段落【0072】、及び、図5Bに記載された事項であるから、新規事項を追加するものではない。
また、当該補正事項は、補正前の請求項1,12,22の各々に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2触覚効果」を限定するものであって、補正前の請求項1,12,22に記載された発明と補正後の請求項1,12,22に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が各々同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?22に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明
本願請求項1?22に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明22」という。)は、平成28年6月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
物体がタッチサーフェースに接触すると、グラフィカルユーザインターフェースのディスプレイ領域にマップされるタッチ領域へのタッチを検出するように構成されるセンサと、
プロセッサと通信をし、さらに前記タッチサーフェースに結合されるアクチュエータであり、触覚信号に応答して触覚効果を出力するように構成されたアクチュエータと、
アクチュエータ及びセンサと通信をするプロセッサであり、
(a)前記センサから供給されるセンサデータを用いて、タッチの予測される位置を識別すること、
(b)前記タッチによって提供される入力ジェスチャをパターン認識に基づいて認識すること、
及び(c)ディスプレイ領域におけるある場所にてグラフィカルユーザインターフェースに表示されるコンテンツに基づいて発生する触覚効果であって、前記タッチの予測される位置が前記コンテンツの場所に対応すると、前記コンテンツをシミュレートするように構成される第1触覚効果と、前記タッチの予測される位置が前記コンテンツの場所とは異なる場所に対応すると前記第1触覚効果とは異なる第2触覚効果を含む前記触覚効果を選択し、
さらにディスプレイのテクスチャ、シミュレートされた障害物又は境界、又は調整された摩擦係数のうちの少なくとも一つを提供するために前記タッチが生じている間に、前記選択された触覚効果を発生するために前記アクチュエータに触覚信号を送信するように、構成される前記プロセッサと
を備え、
前記第2触覚効果は、前記コンテンツの場所に関連するコントロール部にマップされる前記タッチ領域の部分に向かってユーザをガイドする触覚効果を含む、システム。」

なお、本願発明2?22の概要は以下のとおりである。
本願発明2?11は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明12は、本願発明1の「システム」を「方法」として記載した発明である。
本願発明13?21は、本願発明12を減縮した発明である。
本願発明22は、本願発明1の「システム」を「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」として記載した発明である。


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次のア?ウのとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。
ア.
「【0008】
本発明は、コンピュータシステムへの入力に用いる触覚フィードバック平面型タッチ式入力装置に関する。このタッチ式入力装置は、携帯型コンピュータに備えられたタッチパッドであってよく、または各種デバイスに見られるタッチスクリーンであってもよく、または類似の入力デバイスとともに実施されてもよい。タッチ式入力装置で出力される触覚による感覚は、表示されたグラフィック環境における、またはタッチ式入力装置を用いて電子機器を制御する際の、相互作用や操作性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的には、本発明はコンピュータに信号を入力し、タッチ式入力装置のユーザに対して力を出力する触覚フィードバックタッチ式入力装置に関する。このタッチ式入力装置は、タッチ面上のユーザの接触位置に基づき、上記コンピュータの処理部に位置信号を入力するよう操作可能なほぼ平面(平面または略平面)のタッチ面を備える。この位置信号は、いろいろな方法で用いることができ、例えば、少なくとも部分的に位置信号に基づいて、ディスプレイ装置上に表示されたグラフィック環境内でのカーソルの位置付けに用いることができる。また、少なくとも部分的に位置信号に基づいて、ディスプレイ装置上に表示されたオブジェクトの画像の回転、再配置、拡大および/または縮小に用いることができる。コンピュータ機器にその他の所望の入力を行うために用いてもよい。この入力には、グラフィック環境において、テキストまたは表示された画像の上下左右への移動、回転、または拡大縮小するスクロール入力を含んでもよい。また、少なくとも1つのアクチュエータがタッチ式入力装置にも接続されており、タッチ式入力装置に力を出力して、タッチ面に接触しているユーザに触覚による感覚を与える。このアクチュエータは、処理部がアクチュエータに出力する力情報に基づいて上記力を出力する。ほとんどのタッチ式入力装置では、タッチ中にタッチ式入力装置に加えられる相対圧力を測定することもできる。この相対圧力は制御に用いてもよく、また、少なくとも部分的にユーザに対する触覚による出力の生成に用いてもよい。
【0010】
このタッチ式入力装置は、コンピュータのディスプレイスクリーンから離れたタッチパッドであってよく、または、タッチスクリーンとしてコンピュータのディスプレイスクリーンに含まれてもよい。このタッチ式入力装置は、コンピュータもしくは携帯機器のハウジングに一体化することができ、またはコンピュータから独立したハウジングに備えることもできる。ユーザは、指、スタイラスペン、その他を用いてタッチ面に接触する。このアクチュエータは、圧電アクチュエータ、ボイスコイルアクチュエータ、ページャーモータ、ソレノイド、またはその他のタイプのアクチュエータを含むことができる。一実施形態において、このアクチュエータはタッチ式入力装置と接地面との間に接続される。別の実施形態では、このアクチュエータは慣性質量部に結合される。このアクチュエータは、ディスプレイスクリーンとタッチスクリーンデバイスのディスプレイスクリーン上に配された透明なタッチ入力パネルとの間に相対移動を生じさせるよう、結合されてもよい。タッチデバイスのマイクロプロセッサは、コンピュータのメイン処理部から独立してもよく、ホストコンピュータからの力情報を受信し、この力情報に基づいて制御信号を与えてアクチュエータを制御することができる。
【0011】
パルス、振動、または空間テクスチャなどの触覚による感覚は、ユーザが制御する位置とグラフィック環境におけるグラフィックオブジェクトとの間の相互作用に応じて出力されてもよい。このタッチ式入力装置は、複数の異なる領域を含むことができ、この領域のうち少なくとも1つは位置信号を与え、少なくとも別の1つは、値またはボタン押下のレート制御機能のような別の機能を制御するためにコンピュータに用いられる信号を与える。異なる領域および領域間の境界は、異なる触覚による感覚と関連付けることができる。また、レート制御は、ユーザにより加えられるタッチ力の大きさにより設定されてもよい。例えば、大きな力はレート入力を増加させ、小さな力はレート入力を減少させるように用いることができる。」
イ.
「【0051】
タッチパッド16上に出力可能な別のタイプの力感覚に、テクスチャ力がある。このタイプの力はパルス力に類似するが、タッチパッドの領域上でのユーザの指位置および/またはグラフィック環境内のカーソル位置に依存する。したがって、テクスチャ隆起は、カーソルがグラフィックオブジェクトにおける隆起位置を越えて移動されたかどうかによって出力される。このタイプの力は、空間依存でもある。すなわち、この力は、カーソルが指示されたテクスチャ領域を移動する際のカーソル位置に依存して出力される。カーソルがテクスチャの「隆起」の間に位置するときには力は出力されず、カーソルが隆起上を移動すると力が出力される。これは、ホスト制御(例えば、カーソルが格子上をドラッグされるとホストがパルス信号を送信する)によって実現可能である。ある実施形態では、個別のタッチパッドマイクロプロセッサを、タッチパッドを用いた触覚フィードバック専用とすることができ、テクスチャ効果はローカル制御を用いて実現することができる(例えば、ホストは高レベルのテクスチャパラメータのコマンドを送信し、感覚はタッチパッド処理部により直接制御される)。別の場合では、テクスチャはユーザに振動を与えることによって実現され、この振動はタッチパッド上のユーザの指(または他の物体)の現在の速度に依存する。指が静止しているとき、振動は起こらない。指がより速く動くと、振動の周波数と振幅が上昇する。この感覚は、タッチパッド処理部(あれば)によってローカルに、またはホストによって、制御可能である。ある実施形態では、パッド処理部によるローカルな制御により通信負担を排除することができる。他の空間的力感覚を出力することもできる。加えて、ここに記載された力感覚は全て、望ましい場合には、同時または組み合わせて出力することができる。
【0052】
異なるタイプのグラフィックオブジェクトを触覚による感覚と関連付けることができる。触覚による感覚は、カーソルとウィンドウとの相互作用に基づいてタッチパッド16上に出力することができる。例えば、Z軸方向の「隆起」またはパルスをタッチパッド上に出力して、カーソルがウィンドウの境界を越えて移動するときユーザにカーソル位置の信号を送ってもよい。カーソルがウィンドウの境界内を移動するとき、テクスチャ力感覚を出力することができる。テクスチャは、ウィンドウ領域内に所定のパターンで空間的に配置された一連の隆起であってもよい。カーソルが指示された隆起領域を移動するとき、隆起力がタッチパッド上に出力される。パルスまたは隆起力は、表示されたウェブページ内のリンクやアイコンなど、選択されたオブジェクト上をカーソルが移動するときに出力されてもよい。振動を出力して、カーソルが現在位置しているグラフィックオブジェクトを示してもよい。さらに、ウィンドウに表示されている文書の特徴を力感覚と関連付けることもできる。例えば、文書のページ区切りがウィンドウの特定の領域を越えてスクロールされたとき、パルスをタッチパッド上に出力することができる。文書のページ区切りまたは改行は、同様に、隆起や振動などの力感覚と関連付けることができる。
【0053】
さらに、メニュー見出しまたはグラフィックボタンを選択した後に、表示されたメニュー内のメニュー項目をユーザにより選択できるようにしてもよい。メニュー内の個別のメニュー項目は力と関連付けることができる。例えば、カーソルがメニュー項目間の境界上を移動するときに垂直(Z軸)隆起またはパルスが出力されてもよい。特定のメニュー選択に対する感覚は、他のメニュー選択よりも強くして重要度または使用頻度を示すこともできる。すなわち、最もよく使われるメニュー選択は、使用頻度の低いメニューよりも大きい振幅の(強い)パルスに関連付けてもよい。また、現在無効となっているメニュー選択は弱いパルスまたはパルスを出さないようにして、そのメニュー選択はその時点では有効でないことを示すことができる。さらに、マイクロソフトウィンドウズ(登録商標)のように、特定のメニュー要素を選択した後にサブメニューが表示されるようタイトルメニューを用いてもよい。パルス感覚はサブメニューが表示されたときに送信することができる。ユーザはメニュー要素上にカーソルが移動してもサブメニューが表示されないことを予想していることがあるので、これは非常に有効である。アイコンは、上記のウィンドウと同様に、テクスチャ、パルス、および振動と関連付けることができる。描画またはCADプログラムも、類似の触覚による感覚との関連付けが可能な、表示(または非表示)グリッド線またはドット、描画オブジェクトの制御ポイント、その他などの多くの機能を有している。」
ウ.
「【0068】
さらに、タッチパッド上に出力される力の大きさは、グラフィック環境におけるイベントまたは相互作用に依存する。例えば、力パルスは、カーソルが遭遇するグラフィックオブジェクトの種類によって、力の大きさが異なってもよい。例えば、カーソルがウィンドウ上を移動するときにはより大きいパルスが出力され、カーソルがアイコン上を移動するときにはより小さいパルスが出力されてもよい。パルスの大きさは、バックグラウンドのウィンドウと区別されるアクティブなウィンドウ、ユーザが指定する優先順位の異なるファイルフォルダのアイコン、ビジネスアプリケーション用アイコンと区別されるゲーム用アイコン、ドロップダウンメニューの異なるメニュー項目、その他など、グラフィックオブジェクトの他の特徴に依存してもよい。ユーザまたは開発者は、好ましくは、特定のグラフィックオブジェクトをカスタマイズされた触覚による感覚に関連付けることができる。」

以上、下線部の記載によれば、引用文献1には、
「ユーザが、指等でタッチ面上に接触し、その接触位置に基づき、コンピュータの処理部に位置信号を入力するよう操作可能なタッチ面を有する、コンピュータのディスプレイスクリーンに含まれるタッチスクリーンと、
処理部からの出力される力情報に基づいて、タッチ面に接触しているユーザに触覚による感覚を与えるアクチュエータと、を備え、
タッチスクリーンからの位置信号は、ディスプレイ装置上に表示されたグラフィック環境内でのカーソルの位置付けに用いられ、
アクチュエータにより与えられる感覚は、異なるタイプのグラフィックオブジェクトと関連づけることができ、カーソルがウィンドウの境界内を移動するとき、ウィンドウ領域内に所定のパターンで空間的に配置された一連の隆起であるテクスチャ力感覚を出力され、カーソルが指示された隆起領域を移動するとき、隆起力がタッチ面に出力され、パルスまたは隆起力は、表示されたウェブページ内のリンクやアイコンなど、選択されたオブジェクト上をカーソルが移動するときに出力される、
コンピュータシステムへの入力に用いる触覚フィードバック平面型タッチ式入力装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落[0096],[0157],[0174],図15の記載によれば、引用文献2には、タッチ画面に対するユーザのジェスチャをパターン認識の処理により認識して、ユーザに触覚的なフィードバックを行うという技術的事項が記載されている。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3のp.68右欄の記載によれば、引用文献3には、触覚、力覚フィードバックの導入により、タッチパッドの表面に対してジェスチャーや指先の運動を正確にガイドするという技術的事項が記載されている。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4のFig.1,Fig.2,段落[0015]-[0020]の記載によれば、引用文献4には、デバイスをX,Y,Zの各方向にタップすること、タップを複数回数行うことが記載され、触覚フィードバックによりユーザにタップ入力の確認を行うという技術的事項が記載されている。

5.引用文献5について
原査定において、周知文献として引用された上記引用文献5の段落【0005】,【0007】の記載によれば、タッチパネル部の表示エリア上空に検出エリアを設定して、この検出エリアを通過してタッチパネル部へ接近する指の位置を検出することにより、タッチパネル部に対して押下操作を行う前に、その押下操作に対応する表示部品を事前に予測するという技術的事項が記載されている。

6.引用文献12について
前置報告において、提示された引用文献12(特開2008-070983号公報)の段落【0004】?【0008】の記載によれば、引用文献12には、ユーザがタッチ入力操作を行うときに、表示画面に表示された表示ボタンの表示位置に誘導目標を設定し、誘導目標からユーザがタッチしている接触位置へ向かう方向に進行する進行波を発生させることにより、接触位置から誘導目標へ向かう方向へ操作面に沿った力を指に与えるという技術的事項が記載されている。


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明の「ディスプレイ装置上に」「グラフィック環境が表示された」、「ユーザが、指等でタッチ面上に接触し、その接触位置に基づき、コンピュータの処理部に位置信号を入力するよう操作可能なタッチ面を有する、コンピュータのディスプレイスクリーンに含まれるタッチスクリーン」は、本願発明1の「物体がタッチサーフェースに接触すると、グラフィカルユーザインターフェースのディスプレイ領域にマップされるタッチ領域へのタッチを検出するように構成されるセンサ」に相当する。
引用発明の「処理部からの出力される力情報に基づいて、タッチ面に接触しているユーザに触覚による感覚を与えるアクチュエータ」は、本願発明1の「プロセッサと通信をし、さらに前記タッチサーフェースに結合されるアクチュエータであり、触覚信号に応答して触覚効果を出力するように構成されたアクチュエータ」に相当する。
引用発明において、「処理部」は、「アクチュエータ」を動作させ、また、「タッチスクリーン」から「位置信号を入力」されるから、引用発明の「処理部」は、本願発明1の「アクチュエータ及びセンサと通信するプロセッサ」に相当する。
引用発明において「異なるタイプのグラフィックオブジェクトと関連づけることができ、カーソルがウィンドウの境界内を移動するとき、ウィンドウ領域内に所定のパターンで空間的に配置された一連の隆起であるテクスチャ力感覚を出力され、カーソルが指示された隆起領域を移動するとき、隆起力がタッチ面に出力され、パルスまたは隆起力は、表示されたウェブページ内のリンクやアイコンなど、選択されたオブジェクト上をカーソルが移動するときに出力される」ように「アクチュエータにより」感覚を与えることと、本願発明1の「(c)ディスプレイ領域におけるある場所にてグラフィカルユーザインターフェースに表示されるコンテンツに基づいて発生する触覚効果であって、前記タッチの予測される位置が前記コンテンツの場所に対応すると、前記コンテンツをシミュレートするように構成される第1触覚効果と、前記タッチの予測される位置が前記コンテンツの場所とは異なる場所に対応すると前記第1触覚効果とは異なる第2触覚効果を含む前記触覚効果を選択し、さらにディスプレイのテクスチャ、シミュレートされた障害物又は境界、又は調整された摩擦係数のうちの少なくとも一つを提供するために前記タッチが生じている間に、前記選択された触覚効果を発生するために前記アクチュエータに触覚信号を送信するように」することとは、いずれも、「ディスプレイ領域におけるある場所にてグラフィカルユーザインターフェースに表示されるコンテンツに基づいて発生する触覚効果であって、ディスプレイのテクスチャ、シミュレートされた障害物又は境界、又は調整された摩擦係数のうちの少なくとも一つを提供するために前記タッチが生じている間に、前記選択された触覚効果を発生するために前記アクチュエータに触覚信号を送信するように」する点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「物体がタッチサーフェースに接触すると、グラフィカルユーザインターフェースのディスプレイ領域にマップされるタッチ領域へのタッチを検出するように構成されるセンサと、
プロセッサと通信をし、さらに前記タッチサーフェースに結合されるアクチュエータであり、触覚信号に応答して触覚効果を出力するように構成されたアクチュエータと、
アクチュエータ及びセンサと通信をするプロセッサであり、
(c)ディスプレイ領域におけるある場所にてグラフィカルユーザインターフェースに表示されるコンテンツに基づいて発生する触覚効果であって、
ディスプレイのテクスチャ、シミュレートされた障害物又は境界、又は調整された摩擦係数のうちの少なくとも一つを提供するために前記タッチが生じている間に、前記選択された触覚効果を発生するために前記アクチュエータに触覚信号を送信するように、構成される前記プロセッサと
を備える、システム。」

[相違点]
[相違点1]
本願発明1では、「前記センサから供給されるセンサデータを用いて、タッチの予測される位置を識別する」のに対し、引用発明ではそのような構成を有しない点。
[相違点2]
本願発明1では、「前記タッチによって提供される入力ジェスチャをパターン認識に基づいて認識」するのに対し、引用発明ではそのような構成を有しない点。
[相違点3]
触覚効果が、本願発明1では、「前記タッチの予測される位置が前記コンテンツの場所に対応すると、前記コンテンツをシミュレートするように構成される第1触覚効果と、前記タッチの予測される位置が前記コンテンツの場所とは異なる場所に対応すると前記第1触覚効果とは異なる第2触覚効果を含む」ものであるのに対し、引用発明では、「表示されたウェブページ内のリンクやアイコンなど、選択されたオブジェクト上をカーソルが移動するときに出力される隆起力」であり、「前記タッチの予測される位置が前記コンテンツの場所に対応すると、前記コンテンツをシミュレートするように構成される第1触覚効果と、前記タッチの予測される位置が前記コンテンツの場所とは異なる場所に対応すると前記第1触覚効果とは異なる第2触覚効果を含む」ものではない点。
[相違点4]
本願発明1では、「前記第2触覚効果は、前記コンテンツの場所に関連するコントロール部にマップされる前記タッチ領域の部分に向かってユーザをガイドする触覚効果を含む」ものであるのに対し、引用発明ではそのような構成を有しない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず上記相違点4について検討する。
上記「第5」5.の引用文献12に記載されているとおり、「タッチ領域の部分に向かってユーザをガイドする触覚効果」を生じさせるという技術的事項は、本願出願前において周知技術であったといえる。
しかしながら、引用文献1?5,12、他の引用文献には、「前記コンテンツの場所に関連するコントロール部」自体が記載も示唆もされていないから、「前記コンテンツの場所に関連するコントロール部にマップされるタッチ領域」の「部分に向かってユーザをガイドする」触覚効果を生じさせることを、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
したがって、上記相違点1?3について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2?5,12に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

2.本願発明2?11について
本願発明2?11は、本願発明1の相違点4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2?5,12に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

3.本願発明12について
本願発明12は、本願発明1の「システム」を「方法」として記載した発明であり、本願発明1の相違点4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2?5,12に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

4.本願発明13?21について
本願発明13?21は、本願発明12を限定したものであり、本願発明1の相違点4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2?5,12に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

5.本願発明22について。
本願発明22は、本願発明1の「システム」を「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」として記載した発明であり、本願発明1の相違点4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2?5,12に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1.特許法第29条第2項について
審判請求時の補正により、本願発明1?22は、「前記第2触覚効果は、前記コンテンツの場所に関連するコントロール部にマップされる前記タッチ領域の部分に向かってユーザをガイドする触覚効果を含む」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?11、前置報告において提示された引用文献12に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2011-554175(P2011-554175)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 猪瀬 隆広涌井 智則萩島 豪浜岸 広明  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 高瀬 勤
山田 正文
発明の名称 サーフェースベースの触覚効果を特徴とするインターフェースのためのシステム及び方法  
代理人 原 裕子  
代理人 伊藤 正和  
代理人 三好 秀和  

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