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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B29D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B29D
管理番号 1327368
審判番号 不服2016-6554  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-02 
確定日 2017-05-09 
事件の表示 特願2011-36369号「未加硫タイヤ及び空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年9月10日出願公開、特開2012-171251号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年2月22日に出願され、平成26年11月25日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月19日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年8月24日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月28日付けで補正の却下の決定がされると同時に拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、平成29年1月31日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、平成29年3月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりの発明であると認められるところ、本願発明1は次のとおりの発明である。
「【請求項1】
少なくとも1層のバリア層と、2層以上の保護層とを含む積層体からなるインナーライナーを備え、
前記バリア層の1層あたりの厚みが、1?30μmであり、
前記インナーライナーは、両端部を重ねて接合する際のタイヤ径方向内側に配置される接合表面及び該接合表面以外の表面に、発泡状凸部及び発泡状凹部を有することを特徴とする未加硫タイヤ。」

なお、本願発明2?6は、本願発明1を直接又は間接的に引用しており、本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献に記載された事項及び発明
原査定の拒絶理由に引用された引用文献は、以下のとおりである。
1.特開平6-40207号公報(以下、「引用文献1」という。)
2.再公表特許第2002/032640号(以下、「引用文献2」という。)
3.再公表特許第2006/059621号(以下、「引用文献3」という。)
4.特開平9-29877号公報(以下、「引用文献4」という。)
5.特開2001-260135号公報(以下、「引用文献5」という。)
6.特開2006-188218号公報(以下、「引用文献6」という。)
7.特開昭58-83074号公報(以下、「引用文献7」という。)
8.特開平9-141771号公報(以下、「引用文献8」という。)

1 引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は、当審が加筆した。以下同様である。
(1a)
「【0008】以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の空気入りタイヤを例示する子午線方向半断面図である。図1において、左右一対のビードコア1,1間にカーカス層2が装架されている。このカーカス層2の内側のタイヤ内面にはインナーライナー層3が設けられ、一方、カーカス層2の外側にはサイドウォール4が設けられている。」
(1b)
「【0009】図2は図1のA部の拡大図である。インナーライナー層3は、ポリ塩化ビニリデン系フィルム又はエチレンビニルアルコール共重合体フィルムからなる非通気層3bの両面にポリオレフィン系フィルム、脂肪族ポリアミド系フィルム又はポリウレタン系フィルムからなる接着層3a,3cを設けた積層構造となっており、接着層3cを介してカーカス層2に接着されている。このインナーライナー層3は、少なくとも接着層3cを介して非通気層3bをタイヤ内面に接着するように構成されていればよく、必要に応じて接着層3aを設けるようにし、2層構造、3層構造、5層構造などにすることができる。
【0010】本発明において、インナーライナー層3の非通気層3bを構成するポリ塩化ビニリデン系フィルムの材料としては、塩化ビニリデンを主成分とする塩化ビニル等との共重合体を使用することができる。また、インナーライナー層3の接着層3a,3cを構成するポリオレフィン系フィルムの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等を使用することが好ましい。・・・ポリウレタン系フィルムの材料としては、1,3 プロパンジイソシアナートとデカンジオールから得られるポリウレタン、1,4 ブタンジイソシアナートとジエチレングリコールから得られるポリウレタン、1,8 オクタンジイソシアナートとデカンジオールから得られるポリウレタン等を使用することが好ましい。上記材料は、いずれも非通気層3bを構成するポリ塩化ビニリデン系フィルム又はエチレンビニルアルコール共重合体フィルムとはドライラミネート法によって良好に接着することができ、またカーカス層2の被覆ゴムに対する接着性はそのままでも優れていると共に、タイゴムに比べて薄く成型することができ、しかも、それ自体が非気体透過性を有している。」
(1c)
「【0011】上記タイヤにおいて、インナーライナー層3は、従来のブチルゴムからなるインナーライナー層よりも非気体透過性が優れているため薄肉化することができ、しかもその接着にタイゴムを使用していないので、空気圧保持性を損なうことなしにタイヤ重量を軽減することができる。上述のような本発明の空気入りタイヤを製造する場合、ポリ塩化ビニリデン系フィルム又はエチレンビニルアルコール共重合体フィルムからなる非通気層3bと、ポリオレフィン系フィルム、脂肪族ポリアミド系フィルム又はポリウレタン系フィルムからなる接着層3a,3cとは、予め積層して薄膜に成型するとよい。この薄膜を未加硫ゴムからなるグリーンタイヤの内面に、接着層3cがカーカス層2に接するように積層した後に、このグリーンタイヤを金型に挿入し、通常の方法によって加硫成型することにより、カーカス層2の内側のタイヤ内面にインナーライナー層3を設けることができる。」
(1d)
「【0012】本発明において、インナーライナー層3となる薄膜の厚さは20?300μmにすることが好ましい。この薄膜の厚さを20μm以上にすることにより空気漏れを有効に防止し、空気圧を一定に保つことができる。また、薄膜の厚さを300μm以下にすることによりインナーライナー層としての良好なフレキシビリティーを確保することができる。」
(1d)
「【0013】特に、上記のように非通気層3bの両外側に接着層3a,3cを設けるようにした場合は、図3に示すように、インナーライナー層3のラップスプライス部5において接着層3aと3cとが互いに接触するようになり加熱によって強固に接着されるので、空気圧保持性を一層向上させることができると共に、加硫成型時においてタイヤ内側に挿入されるブラダーが非通気層3bに直接接触することがないので、非通気層3bを熱的及び機械的に保護することができる。」

イ 引用文献1に記載された発明
上記ア(1a)?(1d)の記載事項及び図1?3から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
[引用発明]
「インナーライナー層3は、非通気層3bの両面にポリウレタン系フィルムからなる接着層3a,3cを設けた積層構造となっており、
インナーライナー層3となる薄膜の厚さは20?300μmであり、
インナーライナー層3のラップスプライス部5において接着層3aと3cとが互いに接触するグリーンタイヤ。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「ここで、第2次加硫工程における、クローラ部分相互の加硫接合形態としては、たとえば、第1次加硫工程に先立って、少なくともその第1次加硫工程によって加硫ゴムとなるゴム部分2A、2B、3A、3Bの接合面に凹凸を有する剥離シートを貼着し、その加硫後に該剥離シートを剥離して接合面に凹凸を形成した後、ゴム部分2A、2B、3A、3Bと、第2次加硫工程におけるゴム部分2C、2D、3C、3Dとを加硫接合するようにすれば、オックス帆布のような表面に凹凸を有するありふれたシート状物等を剥離シートとして使用して簡単にゴム部分の接合面に凹凸を施して接着性を向上させることができるので、従来のような接着部表面のバフ作業等の面倒な工程を省略することも可能である。
また、このように加硫接合に当って、第1次加硫工程におけるゴム部分2A、2B、3A、3Bと、第2次加硫工程におけるゴム部分2C、2D、3C、3Dとの接合部間に接着ゴム等からなる接着シートを介装してそれらを加硫接合した場合は、第2次加硫工程におけるゴム部分2C、2D、3C、3Dの加硫を通じて、同時に未加硫ゴムである接着シートを加硫して、第1次加硫工程におけるゴム部分2A、2B、3A、3Bと第2次加硫工程におけるゴム部分2C、2D、3C、3Dとを良好に接合させることができる。ここで、接着シートについて、第1次加硫工程での加硫後のゴム部分2A、2B、3A、3Bの接合面は剥離シートにより微細な凹凸が形成されているが、第2次加硫工程における未だ未加硫のゴム部分2C、2D、3C、3Dの接合面が平坦面である場合は、接着シートの、ゴム部分2C、2D、3C、3D側の表面に凹凸を形成してもよい。」(7頁11?28行)

3 引用文献3について
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「【0001】
本発明は、積層体、その製造方法及びそれを用いたタイヤに関する。さらに詳しくは、本発明は、樹脂フイルム層とゴム状弾性体層とが、接着剤層を介して接合、一体化された積層体であって、その製造工程における作業性がよい上、剥離抗力に優れ、空気入りタイヤのインナーライナーなどとして好適に用いられる積層体、このものを効率よく製造する方法、及び該積層体を用いてなるタイヤに関するものである。」
(3b)
「【0016】
本発明の積層体において、(A)層を構成する樹脂フイルムの成形方法に特に制限はなく、単層フイルムの場合、従来公知の方法、例えば溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法などを採用することができるが、これらの方法の中で、Tダイ法やインフレーションなどの溶融押出法が好適である。また、多層フイルムの場合は、共押出しによるラミネート法が好ましく用いられる。
本発明の積層体における(A)樹脂フイルム層を含む層の厚さは、該積層体をインナーライナーとして用いる場合の薄ゲージ化の観点から、200μm以下が好ましい。また、薄すぎると(A)層を(B)層に接合した効果が十分に発揮されないおそれが生じる。したがって、(A)層の厚さの下限は1μm程度であり、より好ましい厚さは10?150μm、さらに好ましい厚さは20?100μmの範囲である。
本発明の積層体においては、(A)樹脂フイルム層を含む層を構成する、樹脂フイルム層として、前記変性エチレン-ビニルアルコール共重合体層を一層以上含み、特に、樹脂フイルム層以外の層として熱可塑性ウレタン系エラストマー層を含む多層フイルムからなる層が好ましい。
(3c)
「【0017】
このような多層フイルムの具体例としては、前記の変性エチレン-ビニルアルコール共重合体からなる樹脂フイルムの両面に、それぞれ熱可塑性ウレタン系エラストマーフイルムが積層された三層構造の多層フイルムを挙げることができる。
この(A)層を構成する樹脂フイルム層を含む層は、その上に設けられる接着剤層との密着性を向上させるために、所望により、少なくとも接着剤層側の面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フイルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。」
(3d)
「【0039】
・・・
図2は、前記空気入りタイヤにおける本発明の積層体からなるインナーライナー層の一例の断面詳細図であって、インナーライナー層(本発明の積層体層)3は、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体層11の両面に、それぞれ熱可塑性ウレタン系エラストマー層12a及び12bがラミネートされてなる樹脂フイルム層を含む層13と、ゴム状弾性体層15が、接着剤層14を介して接合され、一体化してなる構造を有している。なお、ゴム状弾性体層15は、接着剤層14とは反対側の面が、図1におけるカーカス層2と接合されている。」

4 引用文献4について
引用文献4には、次の事項が記載されている。
(4a)
「【0027】
【作用】本発明の接着性が改善された自動車内装材用発泡積層シートは、従来法の如く非発泡層に接着剤を介して表皮材の接着させたものではなく、変性PPE系樹脂発泡積層シートの非発泡層を片面無くし、露出した発泡層面に接着剤と表皮材を重ね合わせ熱プレスにより圧着することにより接着させたもので、これにより接着性を向上させたものである。この理由としては、従来法の如く非発泡層にホットメルトフィルム接着剤を接着する場合は、非発泡層層の熱容量が大きい為、加熱成形の際の熱量を吸収してしまい、ホットメルトフィルム接着剤が充分に昇温されず溶融出来ないのに対し、本発明では発泡層に接着するため、このような問題はなく充分に溶融され、充分な接着性が得られたものと考えられる。また、表面の粗い発泡層表面の凹凸部に接着剤が入り込み、このアンカー効果により更に接着力が相乗的に増強されたものと考えられる。」

5 引用文献5について
引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(5a)
「【0020】ここで、合体部材12には、表裏2面の粗さが異なる樹脂フィルム11を適用する。すなわち、樹脂フィルム11は、一方の表面粗さが他方の表面粗さに比しより粗い加工表面を有する。そして、図4に一部断面を示すように、表面粗さがより粗い樹脂フィルム11の一方表面をインナーライナゴム10内面に粘着させる。インナーライナゴム10内面は樹脂フィルム11の一方の表面粗さの凹凸に沿い密着させる。ここで言う内面とは、未加硫タイヤ1で見た内側面である。他方面は粗さ加工を施しても、平滑のままとしても、いずれでも良い。」

6 引用文献6について
引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。
(6a)
「【0011】
本発明はさらに、最も内側の開放セル発泡ゴム層を持つ2層のインナーライナーを有している空気入りタイヤの製造方法を提供する。その方法は、グリーンタイヤカーカス上に第1のグリーンゴムインナーライナー層を組み立て、かつ第1のグリーンゴムインナーライナー層上に第2のグリーンゴムインナーライナー層を組み立てて、グリーンタイヤアセンブリを形成することを含んでおり、第1のグリーンゴムインナーライナー層はその中に発泡剤を含んでおらず、第2のグリーンゴムライナー層はその中に分散された窒素放出発泡剤を含んでいる。グリーンタイヤアセンブリは、第2のグリーンゴムインナーライナー層と一緒に硬化金型内に、硬化金型の表面から最も遠くに配置され、加硫温度を加えて硬化したタイヤアセンブリを形成しながら、硬化ブラダが第2のグリーンインナーライナー層に向けて膨張させられてグリーンタイヤアセンブリを金型表面へ押す。加硫温度での硬化中、発泡剤の分解によって窒素ガスが放出される。結果として得られた硬化したタイヤは、タイヤカーカスに隣接している非発泡の第1のインナーライナー層と、タイヤの最も内側の表面にある発泡した第2のインナーライナー層と、を含んでいる。硬化後、硬化ブラダは収縮させられ、発泡した第2のインナーライナー層から剥がされる。最後に、最も内側の表面を物理的に改変して複数の開放した空洞を形成することによって、発泡した第2のインナーライナー層に開放セル構造が形成される。」
(6b)
「【0015】
第2のインナーライナー層18は、発泡剤と、開放した多数の穴をあけるために最も内側の表面19を物理的に変えることと、によって形成された開放セル構造を有している発泡多孔性ゴムである。・・・第2のインナーライナー層18は、1?5mmの厚さ(最も厚い点で)を有していてもよい。・・・」
(6c)
「【0017】
硬化の完了後、硬化ブラダは収縮させられ、発泡した第2のインナーライナー層18から剥がされる。・・・本発明によれば、第2のインナーライナー層18は、処理されて最も内側の表面19を物理的に変えて、図2に示すように、開放した複数の空洞を形成する。この物理的改変(physical alternation)によって、より多数の開放した空洞が得られ、開放した空洞の寸法は、単に発泡プロセスによって生成されるいかなる開放セルよりも極めて大きい。本発明の一実施形態では、最も内側の表面19の物理的改変の後、開放した複数の空洞の平均直径は約50?250μmである。本発明の他の実施形態では、開放した複数の空洞の平均直径は焼く130?200μmである。」

7 引用文献7について
引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。
(7a)
「この発泡接着剤の大きな結合強度は少なくとも部分的には、同じ圧縮状態においては発泡接着剤の方が非発泡接着剤の少なくとも2倍の大きさの面積にわたって広がると言う事実に基ずくものである。結合強度は接着剤によって被覆される面積の関数であるから、所定量の発泡した接着剤を使用すれば、発泡しない同じ接着剤のほぼ2倍の強度を得ることができる。」(2頁右上欄19行?同頁左下欄7行)

8 引用文献8について
引用文献8には、図面とともに次の事項が記載されている。
(8a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は例えば自動車内装材製造の際、表皮材と基材とを接着するために使用されるホットメルトシートに関するものである。」
(8b)
「【0005】
【発明の実施の形態】図1および図2に本発明の一実施の形態が示される。図1に示すホットメルトシート(1) は支持シート(2) と該支持シート(2) の両面に形成されているホットメルト樹脂発泡層(3,3) とからなる。該支持シート(2) は例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ウレタン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等のプラスチックシート、繊維編織物シート、不織布、紙等を材料とする。ホットメルト樹脂発泡層(3) は例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、低融点ポリアミド、低融点ポリエステル、低融点熱可塑性ポリウレタン等のホットメルト性のある合成樹脂の発泡層であり、通常該合成樹脂の融点は90?130℃、該発泡層の厚みは40?300μm、発泡倍率は2?10倍とされる。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「非通気層3b」、「接着層3a,3c」及び「インナーライナー層3」は、それぞれ、本願発明1の「少なくとも1層のバリア層」、「2層以上の保護層」及び「インナーライナー」に相当するから、引用発明の「インナーライナー層3は、非通気層3bの両面にポリウレタン系フィルムからなる接着層3a,3cを設けた積層構造となって」いることは、本願発明1の「少なくとも1層のバリア層と、2層以上の保護層とを含む積層体からなるインナーライナーを備え」ることに相当する。

引用発明の「グリーンタイヤ」は、本願発明1の「未加硫タイヤ」に相当する。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「少なくとも1層のバリア層と、2層以上の保護層とを含む積層体からなるインナーライナーを備える未加硫タイヤ。」
<相違点>
本願発明1は、「前記バリア層の1層あたりの厚みが、1?30μmであり、前記インナーライナーは、両端部を重ねて接合する際のタイヤ径方向内側に配置される接合表面及び該接合表面以外の表面に、発泡状凸部及び発泡状凹部を有する」のに対して、引用発明は、「インナーライナー層3となる薄膜の厚さは20?300μmであり、インナーライナー層3のラップスプライス部5において接着層3aと3cとが互いに接触する」点。

(2)判断
以下、相違点について検討する。

上記相違点に係る本願発明1の構成に含まれる「バリア層の1層あたりの厚みが、1?30μmであ」る(以下、「構成A」という。)ことは、引用文献2?8のいずれにも、記載されていない。
上記引用文献3、6及び8の厚みに関連する記載事項(上記第3 3(3b)、6(6b)及び8(8b))を参照しても、上記構成Aを想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

上記相違点に係る本願発明1の構成に含まれる「インナーライナーは、両端部を重ねて接合する際のタイヤ径方向内側に配置される接合表面及び該接合表面以外の表面に、発泡状凸部及び発泡状凹部を有する」(以下、「構成B」という。)ことは、引用文献2?8のいずれにも、記載されていない。
上記「両端部を重ねて接合する際のタイヤ径方向内側に配置される接合表面及び該接合表面以外の表面」は、本願の図3のとおり、タイヤ径方向外側の面であるところ、上記引用文献2、3及び5の凹凸に関連する記載事項(上記第3 2(2a)、3(3c)及び5(5a))を参照しても、上記構成Bを想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

上記ア及び上記イのとおりであり、上記相違点に係る本願発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2?8に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1を直接又は間接的に引用しており、本願発明1を減縮した発明であるから、構成A及び構成Bを備えるものであり、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2?8に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 小括
以上のとおり、本願の請求項1?6に係る発明(本願発明1?6)は、その出願前において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2?8に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1?6について、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2?8に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年3月27日付けの手続補正により補正された請求項1?6は、それぞれ構成A及び構成Bという発明事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1?6は、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2?8に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)について
平成29年3月27日付けの手続補正により、請求項1に係る発明におけるバリア層の厚みに関する発明特定事項について、「前記バリア層の1層あたりの厚みが、1?30μmであり、」と補正された結果、拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-20 
出願番号 特願2011-36369(P2011-36369)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B29D)
P 1 8・ 121- WY (B29D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡▲さき▼ 潤  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
尾崎 和寛
発明の名称 未加硫タイヤ及び空気入りタイヤ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 冨田 和幸  
代理人 吉田 憲悟  

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