• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1327373
審判番号 不服2015-14055  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-27 
確定日 2017-04-21 
事件の表示 特願2013-524494「非適応再送信の方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月23日国際公開、WO2012/023036、平成25年10月 3日国内公表、特表2013-537767〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許出願は、平成23年7月29日(パリ条約による優先権主張 平成22年8月17日 中国)を国際出願日としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 2月 7日付け:拒絶理由の通知
平成26年 5月12日 :意見書及び手続補正書の提出
平成26年11月28日付け:拒絶理由の通知
平成27年 1月15日 :意見書及び手続補正書の提出
平成27年 6月15日付け:拒絶査定
平成27年 7月27日 :審判請求書の提出
平成28年 3月22日付け:当審にて拒絶理由の通知
平成28年 9月15日 :意見書及び手続補正書の提出


第2.本件発明について

本件特許出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成28年9月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「ダウンリンク制御情報DCI内で循環シフト・インジケータCSIを受信するステップであって、前記循環シフト・インジケータCSIは、初期送信に関する最初のレイヤの復調基準信号の構成を示す、ステップと、
受信された前記循環シフト・インジケータCSIに基づいて、前記初期送信に関する所定のルールに従って前記初期送信の残りのレイヤ(1つまたは複数)の復調基準信号の構成を導出するステップと、
再送信要求に応答して、再送信に関するアップリンクUL復調基準信号DM-RSを構成するステップであって、受信された前記循環シフト・インジケータCSIに基づいて、前記初期送信において符号語が正しく受信されなかったレイヤの前記復調基準信号と同一になるように、前記復調基準信号DM-RSを構成するステップを含むステップと
を含む、非適応再送信で使用される方法。」


第3.引用文献

1.これに対して、当審において平成28年3月22日付けで通知した拒絶理由にて引用した、「Qualcomm Incorporated,"Conveying OCC for PUSCH Transmissions",3GPP TSG-RAN WG1 #61bis R1-104228,2010.07.05,pp.1-5」(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ア)「In LTE-A, SU-MIMO is to be supported in the uplink, which requires multiple demodulation reference signals (DM-RS) for all spatial layers to be multiplexed together to enable channel estimation of each layer at the receiver side. In 3GPP RAN1 #57, the following principles for DM-RS multiplexing have been agreed on in support of uplink spatial multiplexing:
-Cyclic shift (CS) separation is the primary multiplexing scheme
-FFS: Orthogonal cover code (OCC) separation between slots as complementary multiplexing scheme」(「1 Introduction」の1-6行参照。)

(仮訳:
LTE-Aにおいて、SU-MIMOはアップリンクでサポートされることになっており、それはレシーバサイドで各々のレイヤのチャネル推定を可能にするために一緒に多重化される全ての空間レイヤに対する複数の復調用リファレンス信号(DM-RS)を要求する。3GPP RAN1 #57において、DM-RS多重化に対する以下の原理がアップリンク空間多重化のサポートにおいて合意された。
-サイクリックシフト(CS)分離は主要な多重化スキームである
-FFS:補足的な多重化スキームとしたスロット間の直交カバーコード(OCC)分離)

(イ)「In LTE Rel-8, DCI (downlink control information) format 0 for PUSCH scheduling [5] has a 3-bit filed for signaling of the cyclic shift for DM-RS. To support SU-MIMO in the uplink of LTE-A, multiple cyclic shifts and/or orthogonal cover codes are needed to be signaled to the UE for DM-RS multiplexing. It is not practical to signal multiple cyclic shift indices explicitly for all layers considering the large overhead incurred. So our view for CS signaling is:
-Only one cyclic shift index is signaled in the corresponding DCI as in Rel-8; the mapped cyclic shift value :n^((2))_(DMRS)[4] from the signaled cyclic shift index is used for DM-RS of layer-0; the cyclic shift values for other layers are derived from according to a pre-defined rule.」(「2 Signalling of CS and OCC」の1-7行参照。)

(仮訳:
LTE Rel-8において、PUSCHスケジューリングに対するDCI(ダウンリンク制御情報)フォーマット0は、DM-RSに対するサイクリックシフトのシグナリングに対する3ビットフィールドを有する。LTE-AのアップリンクにおけるSU-MIMOをサポートするために、複数のサイクリックシフト及び/又は直交カバーコードはDM-RS多重化のためにUEへ送られることが必要とされる。大きなオーバーヘッドを招くことを考慮して全てのレイヤに対して明示的に複数のサイクリックシフトを送ることは現実的ではない。そこで、私達のCSシグナリングに対する意見は:
-Rel-8のように、ただ1つのサイクリックシフトインデックスが対応するDCIにおいて送られる;送られたサイクリックシフトインデックスから対応づけられたサイクリックシフト値:n^((2))_(DMRS)[4]はレイヤー0のDM-RSのために使用される;他のレイヤーのためのサイクリックシフト値は予め決められたルールに従ってn^((2))_(DMRS)から得られる。)

(ウ)「The DM-RS for each layer (a.k.a. virtual antenna) can be constructed according to the following procedures:
- for PDCCH scheduled first transmission or re-transmission:
○ after receiving the cyclic shift value:n^((2))_(DMRS) from the corresponding PDCCH ・・・(途中省略)・・・
○ determine the transmission rank from the grant: R

- for PHICH-triggered re-transmission:

○ follow the most recent assignment to determine n^((2))_(DMRS) and n^((1))_(DMRS) , ・・・(途中省略)・・・
○ determine the transmission rank of the re-transmission: R

- then, the DM-RS for each layer/virtual antenna can be constructed according to the following rules for the transmission rank R, which ranges from 1 to 4:

Rank-1 Transmission

Rank-2 Transmission

・・・(途中省略)・・・

Rank-3 Transmission

Rank-4 Transmission

」(「3 DM-RS Construction」参照。)

(仮訳:
各々のレイヤ(a.k.a. バーチャルアンテナ)に対するDM-RSは下記の手順により構成される:
-PDCCHスケジューリングされた最初の送信又は再送信について:
○対応するPDCCHからサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を受け取った後 ・・・(途中省略)・・・
○グラントから送信ランクを決定する:R

-PHICH-トリガされる再送信について:
○n^((2))_(DMRS)とn^((1))_(DMRS)を決定する最も最近の指示に従い、・・・(途中省略)・・・
○再送信の送信ランクを決定する:R

-そして、各々のレイヤ又はバーチャルアンテナに対するDM-RSは、送信ランクRに対する次のルールにより構成される、それは1?4に渡る:)

ここで、前記「送信ランクRに対する(次の)ルール」を表す上記4つの表を参照すると、「Rank-1 Transmission」?「Rank-4 Transmission」の各送信ランクにおいて、物理/バーチャルアンテナ0、即ち、レイヤ0に対してサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を用い、その他のレイヤに対して該サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を基に所定のルールに従ったサイクリックシフト値(例えば、n^((2))_(DMRS)+3、n^((2))_(DMRS)+6、n^((2))_(DMRS)+9等)を用いて、各レイヤのDM-RSを構成することが開示されている。

そこで、上記(ア)から(ウ)の記載から引用文献1には、

「DCI(ダウンリンク制御情報)において、ただ1つのサイクリックシフトインデックスがUEへ送られ、送られたサイクリックシフトインデックスから対応づけられたサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)はレイヤー0のDM-RSのために使用され、他のレイヤーのためのサイクリックシフト値は予め決められたルールに従ってn^((2))_(DMRS)から得られ、
最初の送信の場合、サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を受け取った後、送信ランクRを決定し、該送信ランクRにおけるレイヤ0に対して該サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を用い、該送信ランクRにおける他のレイヤに対して該サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を基に所定のルールに従ったサイクリックシフト値を用いて、各レイヤのDM-RSを構成し、
PHICH-トリガされる再送信の場合、n^((2))_(DMRS) を決定する最も最近の指示に従い、該送信ランクRを決定し、該送信ランクRにおけるレイヤ0に対して最も最近のサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を用い、該送信ランクRにおける他のレイヤに対して該最も最近のサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を基に所定のルールに従ったサイクリックシフト値を用いて、各レイヤのDM-RSを構成する、
DM-RSを構成する方法。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。


2.また、当審において平成28年3月22日付けで通知した拒絶理由にて引用した、「ZTE,"Precoding for UL SU-MIMO in PHICH-triggered retransmission",3GPP TSG-RAN WG1#61bis R1-103606,2010.06.22,pp.1-3」(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(エ)「4 Determination of DMRS cyclic shifts

For UL non-adaptive HARQ, if only one codeword is decoded successfully in the initial two codewords transmission, and the transmission rank is changed by PHICH signalling in retransmission, since the UL DMRS is precoded in UL SU-MIMO, there is a question of determining the DMRS cyclic shift for retransmitted codeword in PHICH-triggered retransmissions. Possible solutions are given below.

Alternative 1 : uses the cyclic shifts which was originally used by the retransmitted CW.

Alternative 2 : the cyclic shifts of first N layers which were used in the previous transmission are selected as the cyclic shifts for the current retransmitted CW (N is the number of transmission rank in the current transmission).

Alternative 3 : redefine N cyclic shifts according to the principle of maximizing the spacing between cyclic shifts. e.g., if(0,3,6,9) are the cyclic shift each layer in the previous transmission, then redefine(0,6) as the cyclic shifts for the current retransmitted CW.

・・・(以下省略)・・・

」(「4 Determination of DMRS cyclic shifts」参照。)

(仮訳:4.DMRSサイクリックシフトの決定

UL非適応HARQについて、もし最初の2つのコードワード送信において、1つのコードワードのみうまくデコードされ、そして送信ランクが再送信においてPHICHシグナリングによって変化された場合、UL DMRSはUL SU-MIMOにおいてプレコードされるため、PHICH-トリガされる再送信において再送信されるコードワードのためのDMRSサイクリックシフトを決定することに関して解決すべき問題がある。可能な解決策は以下に与えられる。

選択肢1:CW再送信においては初期に用いられたサイクリックシフトを用いる。

選択肢2:前の送信において利用された最初のNレイヤのサイクリックシフトが、現在の再送信されるCWのためのサイクリックシフトとして選択される(Nは現在の送信における送信ランクの数)。

選択肢3:サイクリックシフト間の間隔を最大にするとの原則に従ってN個のサイクリックシフトを再定義する。例えば、前の送信におけるそれぞれのレイヤーのサイクリックシフトが(0,3,6,9)ならば、現在のCW再送信ためのサイクリックシフトとして(0,6)を再定義する。

・・・(以下省略)・・・ )

そこで、上記(エ)の記載から引用文献2には、

「PHICH-トリガされる再送信におけるDMRSサイクリックシフトを決定する場合、
選択肢1:初期に用いられたサイクリックシフトを用いる、
選択肢2:前の送信において利用された最初のNレイヤのサイクリックシフトを、現在の再送信されるCWのためのサイクリックシフトとして選択する(Nは現在の送信における送信ランクの数)、
選択肢3:サイクリックシフト間の間隔を最大にするとの原則に従ってN個のサイクリックシフトを再定義する、
との方法。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。


第4.本件発明と引用発明の対比

1.引用発明1に係る「サイクリックシフトインデックス」は、「サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)と対応づけられ、レイヤー0のDM-RSのために使用され」ること、及び、「最初の送信の場合、サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を受け取った後、送信ランクRを決定し、該送信ランクRにおけるレイヤ0に対して該サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を用い、」るものであり、そして、前記「レイヤー0」が本件発明でいうところの『最初のレイヤ』に対応することは自明であるから、本件発明でいうところの『循環シフト・インジケータCSIは、初期送信に関する最初のレイヤの復調基準信号の構成を示す、』ものに対応するといえる。
また、前記「サイクリックシフトインデックス」は、「DCI(ダウンリンク制御情報)において、UEへ送られ」るのであるから、引用発明1は、本件発明でいうところの『ダウンリンク制御情報DCI内で循環シフト・インジケータCSIを受信するステップ』を備えているといえる。

2.引用発明1でいう「所定のルール」は、上記「第3.引用文献 1.(ウ)」で言及した4つの表を参照すると、PDCCHスケジュールされた最初の送信の場合、対応するPDCCHから受け取ったサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS) を基に、各送信ランクのレイヤ0以外の他のレイヤのCS値を設定している(例えば、「Rank-2 Transmission」では、レイヤ1のCS値をn^((2))_(DMRS)+6に、「Rank3- Transmission」では、レイヤ1のCS値をn^((2))_(DMRS)+3に、レイヤ2のCS値をn^((2))_(DMRS)+6にそれぞれ設定している。)から、該「所定のルール」は、「最初の送信」に関する「ルール」であるといえる。
してみると、引用発明1において、他のレイヤーのDM-RSは、「予め決められたルールに従ってn^((2))_(DMRS)から得られ、」ること、及び、「最初の送信の場合、サイクリックシフト値n(2)DMRSを受け取った後、送信ランクRを決定し、該送信ランクRにおけるレイヤ0に対して該サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を用い、該送信ランクRにおける他のレイヤに対して該サイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を基に所定のルールに従ったサイクリックシフト値を用いて、各レイヤのDM-RSを構成」されるのであるから、引用発明1は、本件発明でいうところの『受信された前記循環シフト・インジケータCSIに基づいて、前記初期送信に関する所定のルールに従って前記初期送信の残りのレイヤ(1つまたは複数)の復調基準信号の構成を導出するステップ』を備えているといえる。

3.当該技術分野において「PHICH」は、PUSCHに対するACK又はNACKの送達確認情報を伝送するチャネルであることは技術常識であるから、引用発明1において「PHICH-トリガされる再送信」とは、PHICHで伝送されるNACKに応答してトリガされる再送信」であることは明らかである。
してみると、引用発明1でいうところの「PHICH-トリガされる再送信の場合、 n^((2))_(DMRS) を決定する最も最近の指示に従い、該送信Rを決定し、該送信ランクRにおけるレイヤ0に対して最も最近のサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を用い、該送信ランクRにおける他のレイヤに対して該最も最近のサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を基に所定のルールに従ったサイクリックシフト値を用いて、各レイヤのDM-RSを構成する」は、本件発明でいうところの『再送信要求に応答して、再送信に関するアップリンクUL復調基準信号DM-RSを構成するステップ』に対応するといえる。

4.引用発明1には、PHICH?トリガされる再送信の場合におけるDM-RSを構成する方法が記載されているのであるから、引用発明1が「再送信で使用される方法」を含むことは明らかである。

上記1.?4.の事項を踏まえると、本件発明と引用発明1とは、

「ダウンリンク制御情報DCI内で循環シフト・インジケータCSIを受信するステップであって、前記循環シフト・インジケータCSIは、初期送信に関する最初のレイヤの復調基準信号の構成を示す、ステップと、
受信された前記循環シフト・インジケータCSIに基づいて、前記初期送信に関する所定のルールに従って前記初期送信の残りのレイヤ(1つまたは複数)の復調基準信号の構成を導出するステップと、
再送信要求に応答して、再送信に関するアップリンクUL復調基準信号DM-RSを構成するステップと
を含む、再送信で使用される方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

[相違点1]
本件発明においては、再送信要求に応答して、再送信に関するアップリンクUL復調基準信号DM-RSを構成するステップに関し、『受信された前記循環シフト・インジケータCSIに基づいて、前記初期送信において符号語が正しく受信されなかったレイヤの前記復調基準信号と同一になるように、前記復調基準信号DM-RSを構成するステップを含む』のに対して、引用発明1にはその旨特定されていない点。

[相違点2]
本件発明は、「非適応」再送信であるの対し、引用発明1は、「非適応」について記載されていない点。


第5.当審の判断

上記相違点について検討する。

●[相違点1]について
引用発明2には、PHICH?トリガされる再送信におけるDMRSサイクリックシフトを決定する場合、選択肢1:初期に用いられたサイクリックシフトを用いる、選択肢2:前の送信において利用された最初のNレイヤのサイクリックシフトを、現在の再送信されるCWのためのサイクリックシフトとして選択する(Nは現在の送信における送信ランクの数)、選択肢3:サイクリックシフト間の間隔を最大にするとの原則に従ってN個のサイクリックシフトを再定義する、の様な方法が記載されている。

つまり、本件特許出願の優先権主張日前において、再送信要求に応答して再送信に関するアップリンクUL復調基準信号DM-RSを構成する方法として、引用発明1で開示されている「 n^((2))_(DMRS) を決定する最も最近の指示に従い、該送信ランクRを決定し、該送信ランクRにおけるレイヤ0に対して最も最近のサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を用い、該送信ランクRにおける他のレイヤに対して該最も最近のサイクリックシフト値n^((2))_(DMRS)を基に所定のルールに従ったサイクリックシフト値を用いて、各レイヤのDM-RSを構成する」方法、及び、引用発明2で開示されている「選択肢1:初期に用いられたサイクリックシフトを用いる、選択肢2:前の送信において利用された最初のNレイヤのサイクリックシフトを、現在の再送信されるCWのためのサイクリックシフトとして選択する(Nは現在の送信における送信ランクの数)、選択肢3:サイクリックシフト間の間隔を最大にするとの原則に従ってN個のサイクリックシフトを再定義する、」方法のいずれも、当業者にとっては公知の方法であるといえる。

そして、本件発明は平成28年9月15日付け手続補正書により「初期送信において符号語が正しく受信されなかったレイヤの前記復調基準信号と同一になるように」と補正することにより、復調基準信号DM-RSの構成が補正前よりもより具体的に限定されたものの、引用発明2には、PHICH?トリガされる再送信におけるDMRSサイクリックシフトを決定する方法として「初期に用いられたサイクリックシフトを用いる」との方法が開示されている。

してみると、引用発明1で開示されている方法に代えて引用発明2に選択肢1として開示されている公知の方法を採用し、相違点1の様にすることは、当業者にとって適宜選択し得る事項と認められる。

なお、引用発明2に選択肢1として開示されている方法は「初期に用いられたサイクリックシフトを用いる」のであるから、本件発明で特定している『初期送信において符号語が正しく受信されなかったレイヤの前記復調基準信号と同一になるように、』との要件を満たすことは明らかである。

●[相違点2]について
上記「第3.引用文献」の「2.(エ)」で言及した様に、引用発明2は、「UL非適応HARQ」における「再送信」に関するものであるから、上記[相違点1]で論じた様に、引用発明1に引用発明2を適用したことによって、「再送信で使用される方法」であった引用発明1が、相違点2の様に「非適応再送信で使用される方法」となることは当然である。

したがって、本件発明は、引用発明1、及び、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本件発明のように構成したことによる効果も引用発明1、及び、引用発明2から予測できる範囲のものである。


第6 平成28年9月15日提出の意見書の主張について

1.審判請求人は、平成28年3月22日付け拒絶理由通知書に対する平成28年9月15日提出の意見書において、以下の様に主張している。

「このように、引用文献1及び引用文献2は、少なくとも、請求項1に係る本発明の方法の一つの特徴である「再送信要求に応答して、再送信に関するアップリンクUL復調基準信号DM-RSを構成するステップであって、受信された前記循環シフト・インジケータCSIに基づいて、前記初期送信において符号語が正しく受信されなかったレイヤの前記復調基準信号と同一になるように、前記復調基準信号DM-RSを構成するステップを含むステップ」を含む、非適応再送信で使用される方法について、開示も示唆もするものではありません。
したがって、請求項1に係る本発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではありません。」

2.審判請求人の上記主張について検討する。
審判請求人は、「再送信要求に応答して、再送信に関するアップリンクUL復調基準信号DM-RSを構成するステップであって、受信された前記循環シフト・インジケータCSIに基づいて、前記初期送信において符号語が正しく受信されなかったレイヤの前記復調基準信号と同一になるように、前記復調基準信号DM-RSを構成するステップを含むステップを含む点について、引用文献1及び引用文献2には開示も示唆もされていない」旨主張しているが、その点については、上記「第5.当審の判断」の[相違点1]で言及したとおりである。


第7.むすび

以上のとおり、本件発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-25 
結審通知日 2016-11-29 
審決日 2016-12-12 
出願番号 特願2013-524494(P2013-524494)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉本 敦史  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 吉田 隆之
佐藤 智康
発明の名称 非適応再送信の方法および装置  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ