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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12Q
管理番号 1327391
審判番号 不服2015-13069  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-09 
確定日 2017-04-18 
事件の表示 特願2011-541165「1型の血液細胞成分の同定のためのエピジェネティックマーカー」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月24日国際公開、WO2010/069499、平成24年 5月31日国内公表、特表2012-511917〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年12月8日(パリ条約による優先権主張 平成20年12月16日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年4月17日付け拒絶理由通知に対して、同年9月11日付けで意見書および手続補正書が提出され、平成27年3月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月9日に拒絶査定不服審判が請求され、平成28年6月7日付けで当審より最後の拒絶理由が通知され、同年11月2日付けで意見書および手続補正書が提出されたものである。


第2 平成28年11月 2日付け手続補正についての補正却下の決定
[結 論]
平成28年11月 2日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1.補正の内容
平成28年11月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、当審による平成28年6月7日付けの<<最後の拒絶理由>>通知に対してなされたものであって、補正前と補正後の請求項1の記載は、それぞれ次のとおりである。

補正前:
「【請求項1】
細胞を含む哺乳動物由来の試料においてCD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球を同定する方法であって、
a)哺乳動物から得られたT細胞を含む哺乳動物由来の試料を準備する工程、
b)前記試料からDNAを単離する工程、
c)配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域における、少なくとも1つのCpG位置のメチル化状態を分析する工程、
d)CD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球を前記メチル化状態に基づいて同定する工程であって、c)で特定した領域の少なくとも1つのCpG位置の少なくとも90%の脱メチル化を、CD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球の指標とする工程、を含む方法。」

補正後:
「【請求項1】
細胞を含む哺乳動物由来の試料においてCD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球を同定する方法であって、
a)哺乳動物から得られたT細胞を含む哺乳動物由来の試料を準備する工程、
b)前記試料からDNAを単離する工程、
c)配列番号2?配列番号5のいずれかのオリゴマーに基いて設計された少なくとも1つのプライマーペアでの増幅を含む、増幅産物の少なくとも1つのCpG位置のメチル化状態を分析する工程、
d)CD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球を前記メチル化状態に基づいて同定する工程であって、c)で特定した領域の少なくとも1つのCpG位置の少なくとも90%の脱メチル化を、CD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球の指標とする工程、を含む方法。」(下線部は補正前からの補正箇所を示す。)

2.補正の適否
本件補正によって、CpG位置のメチル化状態を分析する、c)工程について補正された。
そして、本件補正は、c)工程における分析対象について、補正前の「配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域」を、「配列番号2?配列番号5のいずれかのオリゴマーに基いて設計された少なくとも1つのプライマーペアでの増幅を含む、増幅産物」とするものである。
しかし、分析対象を「領域」から「増幅産物」とすることは、分析対象を変更するものである。
また、補正後の「配列番号2?配列番号5のいずれかのオリゴマーに基いて設計された少なくとも1つのプライマーペアでの増幅を含む、増幅産物」は、例えば配列番号2と配列番号3のプライマーペアの増幅産物や、配列番号4と配列番号5のプライマーペアの増幅産物などを包含するが、これらの増幅産物の塩基配列は、補正前の「配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域」の塩基配列と同じものではないから、本件補正によって、分析対象の塩基配列が拡張されていると認められる。
さらに、本件補正により、c)工程でメチル化状態を分析するCpG位置の数についても、補正前の「領域における」少なくとも1つから、補正後は「増幅産物」の少なくと1つに変更された。
以上のとおり、補正後のc)工程の特定は、補正前のc)工程を限定するものではない。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また、本件補正は、誤記の訂正、明瞭でない記載に釈明にも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものとも認められない。

3.小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?17に係る発明は、平成26年9月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載の事項により特定される発明であると認める。

2.当審の最後の拒絶理由
当審が通知した最後の拒絶理由は、平成26年9月11日付けでした手続補正は、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。

3.当審の判断
平成26年9月11日付け手続補正により、請求項1に係る発明は、
補正前:
「【請求項1】
哺乳動物に由来する試料においてTリンパ球を同定する方法であって、
CD3γ、CD3δ及びCD3ε、又はSLA2、CHRNA3、C16orf24、LCK、FASLG、CD7、SIT1、IL32、CXCR6、UBASH3A、GRAP2、ITGB7若しくはTXKの遺伝子の1つ又は複数における少なくとも1つのCpG位置のメチル化状態を分析することを含み、
前記試料における少なくとも1つのCpG位置の少なくとも90%の脱メチル化が、CD3^(+)Tリンパ球細胞、又はCD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球細胞及び/又はCD3^(+)CD8^(+)Tリンパ球細胞の指標となる、方法。」から、
補正後:
「【請求項1】
細胞を含む哺乳動物由来の試料においてCD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球を同定する方法であって、
a)哺乳動物から得られたT細胞を含む哺乳動物由来の試料を準備する工程、
b)前記試料からDNAを単離する工程、
c)配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域における、少なくとも1つのCpG位置のメチル化状態を分析する工程、
d)CD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球を前記メチル化状態に基づいて同定する工程であって、c)で特定した領域の少なくとも1つのCpG位置の少なくとも90%の脱メチル化を、CD3^(+)CD4^(+)Tリンパ球、及び/又はCD3^(+)CD8^(+)ナイーブTリンパ球、及び/又は記憶Tリンパ球の指標とする工程、を含む方法。」に補正された。
すなわち、請求項1に係る発明は「c)配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域における、少なくとも1つのCpG位置のメチル化状態を分析する工程」を含むものであることが特定された。
これに対し、発明の詳細な説明には、「配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域」についてCpG位置のメチル化状態を分析することは記載されていない。また、配列番号1の塩基配列に、配列番号2と相補的な塩基配列や配列番号5の塩基配列と一致する塩基配列が含まれているとは認められない。
発明の詳細な説明の段落【0022】には「この概念は、CD3陽性Tリンパ球におけるCD3領域の特異的な脱メチル化に基づく。本発明者らは、単純かつ正確な定量PCR方法を用いて、CD3脱メチル化が血液又は組織中のTリンパ球数の代理マーカーとなることを示す。本発明者らはこのようにして、CD3陽性Tリンパ球の存在に機能的に関与するか、又は無条件に(mandatory)関連するCD3遺伝子内の特定の領域を同定した。好ましい一実施の形態では、非常に良好な領域は、そのプロモーター、又は例えば配列番号1に記載のヌクレオチド配列、及び例えばバイサルファイトシークエンシング方法を使用する場合、CD4^(+)細胞又はCD8^(+)細胞のいずれかにおいてCD3を発現する細胞を、CD3を発現しない他の全ての細胞と比較した際に、差次的(differential)メチル化状態を示す多くのCpGモチーフを含有する他のヌクレオチド配列を有するTLSDRである。」と記載されており、配列番号1の配列がCD3遺伝子のプロモーター領域であることが理解される。
また、段落【0029】には「本発明による方法の別の好ましい実施の形態では、上記少なくとも1つのCpG位置は、CD3遺伝子内の転写開始部位、プロモーター領域、イントロン、及び/又はエクソン/イントロン境界より上流の5’領域に存在する。本発明はまた、CD3遺伝子の特に好ましい領域、いわゆる「TLSDR」(Tリンパ球特異的脱メチル化領域)においてCpGモチーフがほぼ完全に(すなわち90%超、好ましくは91%、好ましくは92%超、最も好ましくは95%超)脱メチル化されている一方で、全ての非Tリンパ球においては同じモチーフが完全にメチル化されているという驚くべき発見を提供する。したがって、この領域及びその診断用途は、本発明による診断分析に対して有益かつ確実な手段を提供するものでもある。本発明によるTLSDRは、1405番の増幅産物(amplicon)(AMP1405)(配列番号6)、1406番の増幅産物(AMP1406)(配列番号7)及び/又は1408番の増幅産物(AMP1408)(配列番号8)に位置する。これらの増幅産物は全て、配列番号1に示す本発明の対象とする全領域の一部である。」と記載されており、CD3遺伝子内の特定の領域「TLSDR」(Tリンパ球特異的脱メチル化領域)についてのメチル化状態を調べたこと、該「TLSDR」は、1405番の増幅産物(配列番号6)、1406番の増幅産物(配列番号7)及び/又は1408番の増幅産物(配列番号8)が位置する領域であること、これら増幅産物の位置する領域は、配列番号1の一部であることは理解されるが、これら増幅産物の位置する領域が、請求項1に特定される「配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域」に相当する領域であるとは認められない。
さらに、段落【0030】には「本発明による方法の好ましい実施の形態では、上記メチル化状態の分析は、配列番号1に基づいて好適に設計することのできる好適なプライマー対の少なくとも1つのプライマー、好ましくは配列番号2?配列番号5のいずれかに記載のオリゴマーを用いた増幅を含む。」と記載され、段落【0048】には「配列番号2?配列番号5及び配列番号9は、CD3γ及びCD3δ及びCD3εに対するIllumina Chip-Fragmentアッセイに使用したオリゴヌクレオチドの配列を示す。」と記載され、段落【0057】?【0059】には、
「CD3γ
cg15880738(配列番号2)
(+1)AGCTGCTGCACAGGCTGGCTGGCTGGCTGGCTGCTAAGGGCTGCTCCACG
cg07545925(配列番号3)
(+1)CGGAAAAACAAAAGGCATCTGCACCTGCAGCCCTGCTGAGGCCCCTGCTG
【0058】
CD3δ
cg24841244(配列番号4)
(-1)ACCCAGGCTGATAGTTCGGTGACCTGGCTTTATCTACTGGATGAGTTCCG
cg07728874(配列番号5)
(-1)TGGAACATAGCACGTTTCTCTCTGGCCTGGTACTGGCTACCCTTCTCTCG
【0059】
CD3ε
cg24612198(配列番号9)
AGTCATCTGTTTTGCTTTTTTTCCAGAAGTAGTAAGTCTGCTGGCCTCCG」と記載されているが、これらの記載から「c)配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域における、少なくとも1つのCpG位置のメチル化状態を分析する工程」という工程が自明であるとは認められない。
そうすると、請求項1に係る発明が「c)配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域における、少なくとも1つのCpG位置のメチル化状態を分析する工程」を含むことを特定する上記手続補正は、新規事項を追加するものである。

4.審判請求人の主張について
審判請求人は平成28年11月2日付け意見書において、「本願明細書段落0030の記載から、イ)メチル化状態の分析のために増幅がプライマーで実行されること、ロ)該プライマーは配列番号2?配列番号5のいずれかに記載のオリゴマーに基いて好適に設計されること、すなわち、バイサルファイト変換後の配列に適合するように設計されるものであることがわかります。
もう少し具体的に説明します。本願発明に関して、増幅はバイサルファイト処理後に行われます(実施例1等参照)。したがって、本願発明の増幅で使用されるプライマーの配列は、ゲノム配列を示す配列番号1、又は配列番号2?5に示される配列そのものではなく、バイサルファイト処理後の配列に対応させる調節がなされた配列であることが当業者に理解できます。」と述べており、審判請求人の主張からも、本願の発明の詳細な説明に、「配列番号1に記載の塩基配列のうち配列番号2と相補的な配列と配列番号5に記載の配列との間に挟まれる領域」についてCpG位置のメチル化状態を分析することが記載されているとは認められない。

5.小活
したがって、上記手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は同法第49条第1号の規定により拒絶すべきものである。


第4 むすび
以上のとおり、他の要件について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-22 
結審通知日 2016-11-24 
審決日 2016-12-06 
出願番号 特願2011-541165(P2011-541165)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (C12Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 晋也  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 山本 匡子
高堀 栄二
発明の名称 1型の血液細胞成分の同定のためのエピジェネティックマーカー  
代理人 庄司 隆  
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