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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1327408
審判番号 不服2016-8030  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-01 
確定日 2017-04-13 
事件の表示 特願2011-175867「サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月28日出願公開、特開2013- 41633〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月11日の出願であって、平成27年7月15日付けで拒絶理由が通知され、平成27年9月18日付けで手続補正がなされ、平成28年3月1日付けで拒絶査定(謄本送達日平成28年3月8日)がなされ、これに対して平成28年6月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成27年9月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1から10までに記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記絶縁層上にビア接続用配線層が形成され、
前記ビア接続用配線層が、前記絶縁層の開口部に形成されたビア部によって、前記金属支持基板と電気的に接続され、
前記金属支持基板の前記絶縁層側の表面に、底部および壁部から構成され、かつ、前記壁部が平面視上、前記絶縁層の開口部より外側に位置する凹部が形成され、
前記ビア部が、前記凹部を充填するように形成されていることを特徴とするサスペンション用基板。」

第3 引用文献
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、国際公開第2008/007439号(国際公開日:2008年1月17日、以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。

(1)「請求の範囲
[1] ばね性を有する金属薄板上に磁気ヘッドと制御回路基板とを接続するための複数本の配線が絶縁層を介して一体的に形成されてなる磁気ヘッドサスペンションにおいて、配線と同じ金属層からなる金属パットを配線とは独立して形成し、その金属パットの一部から絶縁層を貫通して金属薄板に至る開口を設け、その開口に金属めっきによる導通部分を設けることにより、金属パットと金属薄板とを電気的に接続したことを特徴とする磁気ヘッドサスペンション。」

(2)「[0028] 以上、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの2つの実施形態について述べたが、それらを製造する方法は基本的に同じである。以下、図5?図7の工程図によりその製造工程について説明する。なお、この図5?図7では、右半分で配線を形成すると共に左半分で金属パットを形成する様子を示している。
[0029] 図5(a)に示す積層板、すなわち、ばね性を有する金属薄板11としてのSUS、絶縁層12としてのポリイミド、導電層13としてのCuからなる積層板を準備し、まず最初に金属部分である金属薄板11と導電層13をエッチングによりパターニングする。すなわち、図5(b)に示すように、積層体の両面にドライフィルム等のレジストを設けてそれらを所定形状にパターニングした後、図5(c)に示すように両面からそれぞれエッチング加工を施し、次いで図5(d)に示す如くレジスト14,15を剥離する。」

図7の記載は以下のとおりである。


ここで、上記記載(2)の「ばね性を有する金属薄板11としてのSUS、絶縁層12としてのポリイミド、導電層13としてのCuからなる積層板」は、「磁気ヘッドサスペンション」用の基板であるから、「ばね性を有する金属薄板11と、絶縁層12と、導電層13とからなるサスペンション用基板」といえる。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ばね性を有する金属薄板11と、絶縁層12と、導電層13とからなるサスペンション用基板であって、
配線と同じ金属層からなる金属パットが配線とは独立して形成され、
その金属パットの一部から絶縁層を貫通して金属薄板に至る開口を設け、その開口に金属めっきによる導通部分を設けることにより、金属パットと金属薄板とが電気的に接続された、サスペンション用基板」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、特開平4-320092号公報(公開日:平成4年11月10日、以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。

(1)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の多層プリント基板Bにおいては、プリント基板の高密度化に伴って、ブラインドスルーホール13の径が小さくなって、銅箔11bとの接続面積が小さくなると、銅箔11bと銅めっき層14との密着強度が低下して、その後の半田付け等による熱ストレスにより、剥離し易くなり、結果的に回路の断線不良を引き起こすという不都合がある。
【0006】
即ち、上記従来の多層プリント基板Bに、半田付け時の熱がかかった場合、絶縁性基材(例えば12a)は熱膨張するが、銅箔(例えば11b)は、一般に絶縁性基材12aに比べ熱膨張率が小さいため、銅めっき層14と銅箔11bとの界面aにおいて、銅めっき層14と銅箔11bとを絶縁性基材12aの厚み方向に沿って引き剥そうとする力が働く。図示の例では、上記界面aにおいて銅同士が接合した形となっているが、実際は銅めっき処理によって銅箔11b上に銅が析出した構造になっているため、ブラインドスルーホール13の径が上記のように小さくなって、接続面積が非常に小さくなると、銅めっき層14が簡単に銅箔11bから剥離してしまい、界面aでの断線事故が発生し易いという不都合がある。」

(2)「【0013】
次に、図1Bに示すように、上層の銅箔1a上に、ブラインドスルーホール3と対応する箇所に開口4aを有するレジストマスク4を形成したのち、塩化第2鉄液又は塩化第2銅液等のエッチング液による等方性のウェットエッチング処理(多層プリント基板を上記エッチング液内に浸漬する)を行って、ブラインドスルーホール3から露出する下層の銅箔1bの表面をエッチング除去する。上記エッチング処理はエッチング液による等方性エッチングであるため、銅箔1bはブラインドスルーホール3から露出する表面のほか、その横方向にもエッチングが進み(サイドエッチング)、ブラインドスルーホール3の底部において横方向に広がる空洞5が形成される。尚、図1Aでは図示しなかったが、サンドブラストによるブラインドスルーホール3の穿設にマスクが用いられるが、このマスクが上記エッチング液に耐える性質のものであれば、上記レジストマスク4として共用してもよい。
【0014】
その後、図1Cに示すように、無電解めっき処理及び銅めっき処理を施して、多層プリント基板Aの上面及び下面に銅めっき層6を形成することにより、ブラインドスルーホール3が導電加工された本例に係る多層プリント基板Aを得る。このとき、上記ブラインドスルーホール3内にも銅めっき層6が形成されるため、この銅めっき層6によって最上層の銅箔1aとその下層の銅箔1bとが電気的に接続される。また、この銅めっき層6は、ブラインドスルーホール3の底部に形成された上記空洞5を埋めるようにフランジ状に形成される。この場合、銅めっき層のフランジ状の部分6aは、絶縁性基材2aと下層の銅箔1bにて挟持された形となる。
【0015】
上述の如く、本例によれば、銅めっき層6を、ブラインドスルーホール3の底部において下層の銅箔1bに沿ってフランジ状に形成して、下層の銅箔1bと電気的に接続するようにしたので、銅めっき層6中、フランジ状に形成された部分6aが一種の係止部の機能を果たし、絶縁性基材2aと銅の熱膨張率の違いから発生する半田付け等での熱ストレスによる絶縁性基材2aの厚み方向の引き剥し力を、上記フランジ状に形成された部分6aを介して絶縁性基材2a側に分散させることができる。」

図1の記載は以下のとおりである。


上記記載(2)及び図1によれば、銅めっき層6が形成されて導電加工された「ブラインドスルーホール3」、「最上層の銅箔1a」、「絶縁性基材2a」及び「下層の銅箔1b」は、それぞれ「ビア部」、「上層にある導体層」、「絶縁層」及び「下層にある導体層」といえ、「多層プリント基板A」は、「積層板」といえる。
また、銅箔1bは、ブラインドスルーホール3から露出する表面のほか、その横方向にもエッチングが進み、ブラインドスルーホール3の底部において横方向に広がる空洞5が形成され、銅めっき層6は、ブラインドスルーホール3の底部において下層の銅箔1bに沿ってフランジ状に形成されるから、銅箔1bに形成された空洞5は、「下層にある導体層の絶縁層側の表面に、底部および壁部から構成され、かつ、前記壁部が平面視上、前記絶縁層の開口部より外側に位置する凹部」といえ、上記ブラインドスルーホール3の銅メッキ層6は、該空洞5にフランジ状に形成されているから、「前記ビア部が、前記凹部を充填するように形成されている」といえる。

そうすると、引用文献2には、ビア部を有する積層板において、ビア部の径が小さくなると、接続面積が小さくなるため、熱ストレスにより、ビア部と下層にある導体層とを絶縁層の厚み方向に沿って引き剥がそうとする力が働いて、回路の断線不良を引き起こすという課題(以下、「課題A」という。)に対し、
「ビア部を有する積層板において、下層にある導体層の絶縁層側の表面に、底部および壁部から構成され、かつ、前記壁部が平面視上、前記絶縁層の開口部より外側に位置する凹部を形成し、ビア部を、前記凹部を充填するように形成すること」(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。)により、一種の係止部の機能を持たせることが記載されているといえる。

第4 対比(一致点、相違点の認定)
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ばね性を有する金属薄板11」、「絶縁層12」、「導電層13」、「配線と同じ金属層からなる金属パット」及び「導通部分」は、それぞれ本願発明にいう「金属支持基板」、「絶縁層」、「配線層」、「ビア接続用配線層」及び「ビア部」に相当する。
そして、引用発明も、「金属パットの一部から絶縁層を貫通して金属薄板に至る開口を設け、その開口に金属めっきによる導通部分を設け」ているから、本願発明にいう「前記ビア接続用配線層が、前記絶縁層の開口部に形成されたビア部によって、前記金属支持基板と電気的に接続され」たものといえる。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記絶縁層上にビア接続用配線層が形成され、
前記ビア接続用配線層が、前記絶縁層の開口部に形成されたビア部によって、前記金属支持基板と電気的に接続されていることを特徴とするサスペンション用基板。」

[相違点]
本願発明では、「前記金属支持基板の前記絶縁層側の表面に、底部および壁部から構成され、かつ、前記壁部が平面視上、前記絶縁層の開口部より外側に位置する凹部が形成され」、「前記ビア部が、前記凹部を充填するよう
に形成されている」のに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

第5 判断
引用発明は、サスペンション用基板の発明であって、本願発明と同様、HDDの高機能化に伴い、サスペンション用基板に必要とされる配線層の数が増加傾向にあり、ビア部のサイズを小さくすることが求められていることは自明の事項である。
そして、引用発明のサスペンション用基板は、ビア部を有する積層板の一種であって、ビア部のサイズを小さくすると、上記「課題A」が生じることも、引用発明と同様にビア部を有する積層板に関する引用文献2に記載されている。
したがって、引用発明において、その課題解決のために、上記引用文献2に記載の技術事項を採用して相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、これによる効果も当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-10 
結審通知日 2017-02-14 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2011-175867(P2011-175867)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 北岡 浩
山本 章裕
発明の名称 サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法  
代理人 山下 昭彦  

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