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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01G |
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管理番号 | 1327436 |
審判番号 | 不服2016-10688 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-14 |
確定日 | 2017-05-09 |
事件の表示 | 特願2013-209928「積層セラミックキャパシタ及びその実装基板」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月22日出願公開、特開2015- 15446、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月7日(パリ条約による優先権主張 2013年7月5日 韓国(KR))に出願したものであって、手続きの概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成27年 4月30日(起案日) 意見書 :平成27年 9月 9日 手続補正 :平成27年 9月 9日 拒絶査定 :平成28年 3月 8日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成28年 7月14日 手続補正 :平成28年 7月14日 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年7月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 複数の誘電体層を含み、対向する厚さ方向の第1及び第2の主面、長さ方向の第3及び第4の端面、及び幅方向の第5及び第6の側面を有するセラミック本体と、 前記セラミック本体内で前記誘電体層を介して前記第3及び第4の端面から交互に露出するように配置された複数の第1及び第2の内部電極と、 前記セラミック本体の長さ‐厚さ方向の断面に形成され、前記第1及び第2の内部電極と電気的に連結された第1及び第2の外部電極と、 を含み、 前記第1又は第2の外部電極の幅をA、前記セラミック本体の長さ方向のマージン部をBとしたとき、前記第1又は第2の外部電極の幅と前記セラミック本体の長さ方向のマージン部との比A/Bが2.5≦A/B≦3.3の範囲を満たし、 前記第1及び第2の外部電極の幅は前記セラミック本体の幅より短く形成される、積層セラミックキャパシタ。」 第3 原査定の理由の概要 本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 請求項1ないし4に対して引用文献1ないし3 引用文献1:特開平6-163311号公報 引用文献2:特開平11-186092号公報 引用文献3:特開2012-248581号公報 第4 当審の判断 1.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1(平成6年6月10日公開)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は積層セラミックコンデンサに関するものである。」 (2)「【0009】 【実施例】 (実施例1)以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1?図3において、1は複数のセラミックシートを積層して形成した誘電体である。2a,2bは第1,第2の複数の内部電極で、銀,パラジウム等の材料よりなり、厚みは約3ミクロンであり、厚み約15ミクロンのセラミックシートを介して交互に積層されている。3a,3bは第1,第2の外部電極で、誘電体1の端面部に位置し、それぞれ第1,第2の内部電極2a,2bに電気的に接続されている。更に第1,第2の外部電極3a,3bに続いて使用時のプリント基板へのはんだ付け接続、固定のための下面外部電極4a,4bが形成されている。」 (3)「【0010】全体の大きさは約3.2mm×1.6mm×高さ(厚み)1.2mmである。このうち、両端面の外部電極3a,3b間の距離Wに相当するのは3.2mmである。また、第1の内部電極2aの第2の外部電極3b方向への長さL2は2.2mm、第2の下面外部電極4bの第1の外部電極3a方向への長さR2は0.5mmであり、L2とR2との和は2.7mmであり、Wの3.2mmよりも短くなっている。同様に、第2の内部電極2bの第1の外部電極3a方向への長さR1は2.2mm、第1の下面外部電極4aの第2の外部電極3b方向への長さL1は0.5mmであり、L1とR1との和は2.7mmでありWの3.2mmよりも短くなっている。」 上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)引用文献1には、「積層セラミックコンデンサ」が記載されている(摘示事項(1))。 (b)「積層セラミックコンデンサ」は、複数のセラミックシートを積層して形成した誘電体1と、セラミックシートを介して交互に積層されている第1,第2の複数の内部電極2a,2bと、誘電体1の端面部に位置し、それぞれ第1,第2の内部電極2a,2bに電気的に接続されている第1,第2の外部電極3a,3bとを有する(摘示事項(2))。 (c)誘電体1は、対向する厚さ方向の上面及び下面、長さ方向の両端面、及び幅方向の両側面を有する(図1)。 (d)第1,第2の外部電極3a,3bは、誘電体1の長さ-厚さ方向の断面に形成されている(図3)。 (e)全体の大きさは約3.2mm×1.6mm×高さ(厚み)1.2mmである。このうち、両端面の外部電極3a,3b間の距離Wに相当するのは3.2mmである。また、第1の内部電極2aの第2の外部電極3b方向への長さL2は2.2mmであり、同様に、第2の内部電極2bの第1の外部電極3a方向への長さR1は2.2mmである(摘示事項(3))。第1,第2の外部電極3a,3bの幅は、誘電体1の幅に等しく(図2)、1.6mmである。誘電体1の長さ方向のマージン部は、誘電体1の長さと第1の内部電極2aの第2の外部電極3b方向への長さL2若しくは第2の内部電極2bの第1の外部電極3a方向への長さR1との差に等しく(図2,3)、1.0mmである。したがって、第1,第2の外部電極3a,3bの幅と誘電体1の長さ方向のマージン部との比は1.6である。 以上を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「積層セラミックコンデンサであって、 複数のセラミックシートを積層して形成した誘電体1と、セラミックシートを介して交互に積層されている第1,第2の複数の内部電極2a,2bと、誘電体1の端面部に位置し、それぞれ第1,第2の内部電極2a,2bに電気的に接続されている第1,第2の外部電極3a,3bとを有し、 誘電体1は、対向する厚さ方向の上面及び下面、長さ方向の両端面、及び幅方向の両側面を有し、 第1,第2の外部電極3a,3bは、誘電体1の長さ-厚さ方向の断面に形成され、 第1,第2の外部電極3a,3bの幅と誘電体1の長さ方向のマージン部との比は1.6であり、 第1,第2の外部電極3a,3bの幅は、誘電体1の幅に等しい積層セラミックコンデンサ。」 2.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)積層セラミックキャパシタ 引用発明は「積層セラミックコンデンサ」であるから、本願発明と引用発明とは、「積層セラミックキャパシタ」である点で一致する。 (2)セラミック本体 引用発明は、複数のセラミックシートを積層して形成した誘電体1を有し、誘電体1は、対向する厚さ方向の上面及び下面、長さ方向の両端面、及び幅方向の両側面を有するから、本願発明と引用発明とは、「複数の誘電体層を含み、対向する厚さ方向の第1及び第2の主面、長さ方向の第3及び第4の端面、及び幅方向の第5及び第6の側面を有するセラミック本体」を含む点で一致する。 (3)内部電極 引用発明は、セラミックシートを介して交互に積層されている第1,第2の複数の内部電極2a,2bを有する。第1,第2の内部電極2a,2bは、誘電体1の端面部において、それぞれ第1,第2の外部電極3a,3bに電気的に接続されているから、誘電体1の端面部から交互に露出するように配置されているといえる。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記セラミック本体内で前記誘電体層を介して前記第3及び第4の端面から交互に露出するように配置された複数の第1及び第2の内部電極」を含む点で一致する。 (4)外部電極 引用発明は、誘電体1の端面部に位置し、それぞれ第1,第2の内部電極2a,2bに電気的に接続されている第1,第2の外部電極3a,3bを有し、第1,第2の外部電極3a,3bは、誘電体1の長さ-厚さ方向の断面に形成されるから、本願発明と引用発明とは、「前記セラミック本体の長さ‐厚さ方向の断面に形成され、前記第1及び第2の内部電極と電気的に連結された第1及び第2の外部電極」を含む点で一致する。 (5)外部電極の幅とセラミック本体の長さ方向のマージン部との比 本願発明の「前記第1又は第2の外部電極の幅をA、前記セラミック本体の長さ方向のマージン部をBとしたときの、前記第1又は第2の外部電極の幅と前記セラミック本体の長さ方向のマージン部との比A/B」と、引用発明の「第1,第2の外部電極3a,3bの幅と誘電体1の長さ方向のマージン部との比」とは、同じパラメータである。 もっとも、「前記第1又は第2の外部電極の幅をA、前記セラミック本体の長さ方向のマージン部をBとしたときの、前記第1又は第2の外部電極の幅と前記セラミック本体の長さ方向のマージン部との比A/B」について、本願発明は、「2.5≦A/B≦3.3の範囲を満たす」のに対し、引用発明は、「1.6である」点で相違する。 (6)外部電極の幅 「前記第1及び第2の外部電極の幅」について、本願発明は、「前記セラミック本体の幅より短く形成される」のに対し、引用発明は、「誘電体1の幅に等しい」点で相違する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「複数の誘電体層を含み、対向する厚さ方向の第1及び第2の主面、長さ方向の第3及び第4の端面、及び幅方向の第5及び第6の側面を有するセラミック本体と、 前記セラミック本体内で前記誘電体層を介して前記第3及び第4の端面から交互に露出するように配置された複数の第1及び第2の内部電極と、 前記セラミック本体の長さ‐厚さ方向の断面に形成され、前記第1及び第2の内部電極と電気的に連結された第1及び第2の外部電極と、 を含む、 積層セラミックキャパシタ。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> (1)「前記第1又は第2の外部電極の幅をA、前記セラミック本体の長さ方向のマージン部をBとしたときの、前記第1又は第2の外部電極の幅と前記セラミック本体の長さ方向のマージン部との比A/B」について、本願発明は、「2.5≦A/B≦3.3の範囲を満たす」のに対し、引用発明は、「1.6である」点。 (2)「前記第1及び第2の外部電極の幅」について、本願発明は、「前記セラミック本体の幅より短く形成される」のに対し、引用発明は、「誘電体1の幅に等しい」点。 3.判断 そこで、上記相違点(1)について検討する。 引用文献1には、「第1,第2の外部電極3a,3bの幅と誘電体1の長さ方向のマージン部との比」についての記載はなく、引用発明における「第1,第2の外部電極3a,3bの幅と誘電体1の長さ方向のマージン部との比」の値は、引用文献1に記載された誘電体1の幅と、誘電体1の長さと第1の内部電極2aの第2の外部電極3b方向への長さL2若しくは第2の内部電極2bの第1の外部電極3a方向への長さR1との差と、から算出したものである。 したがって、引用発明において、「第1,第2の外部電極3a,3bの幅と誘電体1の長さ方向のマージン部との比」を「1.6」に特定する何らかの技術思想があるわけではないから、その値を「1.6」から「2.5ないし3.3」に変更する動機付けもない。 引用文献2は、幅方向の両側面から間隔を隔てて形成されている外部電極に関するものであり、引用文献3は、回路基板のランドパターンの端部と素体端面とを面一にして実装することにより、素体端面のはんだフィレットが減少し、音鳴きを低減できることに関するものであって、外部電極の幅と誘電体の長さ方向のマージン部との比についての記載はなく、引用文献2、3に記載された事項を参酌したとしても、引用発明において、「第1,第2の外部電極3a,3bの幅と誘電体1の長さ方向のマージン部との比」の値を「1.6」から「2.5ないし3.3」に変更する動機付けを得ることはできない。 したがって、上記相違点(2)について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 請求項3、4に係る発明は、「積層セラミックキャパシタの実装基板」であって、それぞれ、本願発明、請求項2に係る発明と同じ「積層セラミックキャパシタ」を含むものであるので、本願発明、請求項2に係る発明と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 上記のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-04-24 |
出願番号 | 特願2013-209928(P2013-209928) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐久 聖子、柴垣 俊男 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
酒井 朋広 関谷 隆一 |
発明の名称 | 積層セラミックキャパシタ及びその実装基板 |
代理人 | 加藤 公延 |