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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
管理番号 1327469
審判番号 不服2015-13483  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-16 
確定日 2017-04-20 
事件の表示 特願2012- 51688「透明化核剤入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気低減方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-207211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年3月8日(優先権主張 平成23年3月11日)の出願であって、平成27年1月7日付けで拒絶理由が通知され、同年2月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月10日付けで拒絶査定がなされたが、これに対し、同年7月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年8月18日付けで前置報告がされ、同年9月15日に上申書が提出され、当審において、平成28年12月15日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成29年1月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
下記一般式(1)で示される透明化核剤(D)入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気を低減させる方法であって、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物に、ラウリルジエタノールアミン又はステアリルジエタノールアミンである塩基性の含窒素有機化合物(B)及びグリセリルモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレエート、又はジグリセリンステアレートペンタエリスリトールである塩基性の含酸素有機化合物(C)からなる群のうち少なくとも一種を用い、かつ前記ポリプロピレン系樹脂組成物を150℃で10分間加熱して発生した芳香族アルデヒド発生量が樹脂組成物重量に対して0.11ppm以下であることを特徴とする臭気低減方法。
【化1】


[但し、nは、0?2の整数であり、R^(1)?R^(5)は、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1?20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基またはフェニル基であり、R^(6)は、炭素数が1?20のアルキル基である。]

2 引用文献に記載された事項
(1)平成28年12月15日付け拒絶理由通知書において引用された特開2009-120821号公報(以下「引用文献1」という。)には、次のとおり記載されている(下線は、当審による。)。

(1-ア)
「【請求項1】
プロピレン系重合体100重量部に対し、下記化学構造式(1)で示される透明化核剤(A)を0.01?2.0重量部配合することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
【化1】


[但し、nは、0?2の整数であり、R^(1)?R^(5)は、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1?20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、R^(6)は、炭素数が1?20のアルキル基である。]」

(1-イ)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物およびその成形品に関し、特に透明性、臭気及び成形加工性に優れたプロピレン系樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体は、成形加工性、剛性に優れ、またリサイクル性や耐熱性にも優れていることから、各種の方法で成形加工され、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の他の樹脂と同様に食品容器・・・等の各種用途に幅広く使用されている。これらの用途では、プロピレン系重合体もしくはその組成物に対して、より優れた透明性と成形加工性が強く求められる。
・・・
【0004】
このため、プロピレン系重合体の改質だけではなく、プロピレン系重合体に対する透明化核剤の活用による透明性と成形加工性の改良が幅広く試みられてきた。透明化核剤としては、有機リン酸塩系核剤(例えば、特許文献1参照。)やジメチルベンジリデンソルビトール系核剤(例えば、特許文献2参照。)等が最も一般的に使用されている。
【0005】
しかしながら、これらの既存の透明化核剤を使用しても、透明性の改良幅は必ずしも十分ではなく、ポリスチレン等の他の樹脂の透明性には及ばない。また、成形加工時の過熱によって、芳香族アルデヒド等の揮発成分が発生し、臭気を悪化させるという問題があった。さらに、成形加工性も一定の改良は見られるもの、その効果は十分とは言えない。このため、新たな手法により、透明性と臭気と成形加工性とを同時に改良することが強く望まれていた。」

(1-ウ)
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、透明性、臭気及び成形加工性に優れたプロピレン系樹脂組成物及び該樹脂組成物から成形されてなる成形品を提供することにある。」

(1-エ)
「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プロピレン系重合体に対し、特定の透明化核剤を用いることにより、透明性、臭気、成形加工性、耐熱性、剛性、耐衝撃性に優れたプロピレン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系重合体100重量部に対し、下記化学構造式(1)で示される透明化核剤(A)を0.01?2.0重量部配合することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。」

(1-オ)
「【発明の効果】
【0014】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体に対し、前記化学構造式(1)に示される新規な透明化核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物であり、このような新規な核剤を使用することにより、従来のプロピレン系樹脂組成物では実現しえなかった優れた透明性、成形加工性、耐熱性、剛性、耐衝撃性を、臭気を悪化させることなく得ることができる。」

(1-カ)
「【0025】
本発明に用いられる透明化核剤(A)は、得られる成形品に、従来の透明化核剤では実現が不可能なほどの非常に優れた透明性を与えることができる。また、従来の透明化核剤よりも結晶化効果が高いため、併せて成形加工性の改良を実現することができる。さらに、加熱しても芳香族アルデヒドの発生が極めて少ないため、臭気の悪化がほとんどないという特長がある。」

(1-キ)
「【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行い、プロピレン系重合体、透明化核剤及び他の添加剤(酸化防止剤、中和剤など)としては以下のものを使用した。
・・・
【0047】
(4)臭気
ペレット80gを容量300mlの清潔な共栓付三角フラスコに封入し、80℃に昇温・保持された熱風循環乾燥機内で2時間加熱した後、パネラーによる官能評価を行った。パネラーは事前テストにより選定された5名とした。臭気の判定基準は下記の6段階とし、5人の平均値で表した。
0級 無臭
1級 やっと感じられる
2級 感じられる(臭いの質が分かる)
3級 かなり臭う(楽に感じる)
4級 強く臭う
5級 激しく臭う(耐えられないほど強烈)
【0048】
(5)芳香族アルデヒド発生量
ペレット20mgを200℃に加熱し10分間熱抽出した後、ガスクロマトグラフ(GC)注入口で冷却捕集した成分を気化させてGCカラムに導入し、GC-MS測定により発生した芳香族アルデヒドの定量を行った。
・・・
【0051】
(2)透明化核剤
(i)ミラッドNX8000(ミリケン・アンド・カンパニー社製):透明化核剤(A)相当品で、下記化学構造式(7)で表される化合物
【0052】
【化7】


【0053】
(ii)アデカスタブNA21((株)ADEKA社製):有機リン酸金属塩化合物系透明化核剤:透明化核剤(A)に相当しない透明化核剤
(iii)ゲルオールMD(新日本理化(株)社製):ジメチルベンジリデンソルビトール系透明化核剤:透明化核剤(A)に相当しない透明化核剤
【0054】
(3)酸化防止剤
(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:イルガノックス1010(IR1010;チバ社製);テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン
(ii)リン系酸化防止剤:イルガフォス168(IF168;チバ社製);トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)フォスファイト
【0055】
(4)中和剤
(i)ステアリン酸カルシウム(CAST;日本油脂(株)社製)
【0056】
(実施例1?6、比較例1?9)
プロピレン系重合体、透明化核剤及び他の添加剤(酸化防止剤、中和剤)を表1に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度200℃でダイから押し出しペレット化し、得られたペレットを用いて物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】




(1-ク)
「【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のプロピレン系樹脂組成物及びその成形品は、従来の透明化核剤では達成ができなかった優れた透明性及び成形加工性を有しているため、公知の成形方法によって、容易に透明性の優れる成形品を提供することができる。また、本発明のプロピレン系樹脂組成物及びその成形品は、芳香族アルデヒド発生量が少なく臭気にも優れており、これらの特徴から、食品容器、キャップ、医療用器具、医療用容器、包装用フィルム、文具向けシート、衣装ケース、日用品、自動車部品、電気部品等の用途に極めて有用である。」

(2)平成28年12月15日付け拒絶理由通知書において引用された特開昭62-4289号公報(以下「引用文献2」という。)には、次のとおり記載されている(下線は、当審による。)。

(2-ア)
「次の一般式(I)で示されるソルビトール誘導体100重量部に対し、非芳香族有機アミン化合物0.05?10重量部を添加して成る熱安定性の改良されたソルビトール誘導体組成物。


(式中、Rは水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。)」(特許請求の範囲)

(2-イ)
「〔産業上の利用分野〕
本発明は熱安定性の改良されたジベンジリデンソルビトール誘導体組成物に関する。
〔従来の技術および問題点〕
ジベンジリデンソルビトール類は、ポリオレフイン樹脂、特にポリエチレン又はポリプロピレンに少量添加することにより樹脂の透明性を向上させる効果を有しており、特に透明性が要求される各種容器等の分野の樹脂用添加剤として有用な化合物である。
しかしながら、ジベンジリデンソルビトール類は比較的熱安定性に乏しく、加熱により分解しベンズアルデヒド類を遊離する傾向がある。
このため、ジベンジリデンソルビトール類をポリオレフインに添加し、加熱加工する場合に、ポリオレフインに不快なアルデヒド臭がつくとともに着色を与える場合もあり、ジベンジリデンソルビトール類を前記用途に用いる場合の大きな障害となっていた。」(第1頁左欄下から3行?右欄第16行)

(2-ウ)
「〔問題点を解決するための手段〕
本発明者等は、上記の現状に鑑み、ジベンジリデンソルビトール類の熱安定性を改良すべく鋭意検討を重ねた結果、ジベンジリデンソルビトール類に少量の非芳香族有機アミン化合物を添加することによつて、熱安定性の改良されたジベンジリデンソルビトール類が得られることを見い出した。
即ち、本発明は次の一般式(I)で示されるソルビトール誘導体100重量部に対し、非芳香族有機アミン化合物0.05?10重量部を添加することにより熱安定性の改良されたソルビトール誘導体組成物を提供するものである。」(第2頁左上欄第9行?右上欄第1行)

(2-エ)
「本発明で用いる非芳香族有機アミン化合物としては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリ-n-プロパノールアミン等のトリアルカノールアミン;ジエタノール・脂肪族アミン、シジイソプロパノール・脂肪族アミン、ジ-n-プロパノール・脂肪族アミン等のジアルカノール・脂肪族アミン(具体的にはジエタノール・ドデシルアミン、ジエタノール・オクタデシルアミン、ジエタノール・牛脂アルキルアミン、ジエタノール・大豆アルキルアミン、ジエタノール・オレイルアミン、ジエタノール・オクチルアミン、ジエタノール・ヤシアルキルアミン、ジエタノール・硬化牛脂アミン、ジエタノール・ヘキサデシルアミン等);・・・等のジアルカノールアミン;・・・等の複素環式アミン;・・・等アミンオキシド;・・・等のアミノ酸アルカノールアミン等が挙げられる。」(第2頁左下欄第12行?右下欄第18行)

(2-オ)
「実施例1
エタノール200mlに所定量のアミン化合物(表-1)を加え、攪拌した後、市販のソルビトール誘導体(表-1)20gを加え、40?50℃で1時間攪拌した。次いで、エタノールを留去した後乾燥し、試料を調製した。


この試料及び、アミン化合物無添加のソルビトール誘導体を240℃で加熱した場合の揮発減量を測定した。
結果を表-2に示す。


」(第3頁左上欄第16行?第4頁左上欄)

(2-カ)
「実施例2
表-1のビス(2-ヒドロキシエチルオクタデシルアミンを添加したビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトールNo.1、No.2,No.3を使用し、次の配合で250℃押出し機でペレツトを作成した。
(配合)
ポリプロピレン(Profax 6501) 100重量部
ペンタエリスリトール・テトラ(3,
5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキ
シフエニルプロピオネート) 0.1 〃
ジラウリルチオジプロピオネート 0.2 〃
ビス(p-メチルベンジリデン)ソ
ルビトール(試料) 0.3 〃

次いで、得られたポリプロピレンペレツト100gを1lガラスビンに採取し、密栓し、70℃で15時間加熱後、臭気に鋭敏な者20人による臭気確認を行つた。
得られた結果を表-3に示す。


」(第4頁右上欄第1行?左下欄)

3 引用発明
摘示(1-ア)?(1-ク)、特に(1-ア)によれば、引用文献1には、次のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「プロピレン系重合体100重量部に対し、下記化学構造式(1)で示される透明化核剤(A)を0.01?2.0重量部配合することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
【化1】


[但し、nは、0?2の整数であり、R^(1)?R^(5)は、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1?20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、R^(6)は、炭素数が1?20のアルキル基である。]」

4 対比・判断
(1)対比
本願発明のうち、塩基性の含窒素有機化合物(B)の選択肢の1つであるステアリルジエタノールアミンを用いる発明について、以下検討する。
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「構造式(1)で示される透明化核剤(A)」は、本願発明の「一般式(1)で示される透明化核剤(D)」に相当する。
したがって、両発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「下記一般式(1)(注:構造式は省略)で示される透明化核剤(D)入りポリプロピレン系樹脂組成物。」

<相違点1>
本願発明は、「ステアリルジエタノールアミンを用い」る「臭気低減方法」であるのに対し、引用発明は、ステアリルジエタノールアミンを添加することは特定されていないポリプロピレン系樹脂組成物であって、臭気低減方法ではない点。
<相違点2>
本願発明は、「ポリプロピレン系樹脂組成物を150℃で10分間加熱して発生した芳香族アルデヒド発生量が樹脂組成物重量に対して0.11ppm以下である」のに対して、引用発明は、芳香族アルデヒド発生量は特定されていない点。

(2)判断
ア 相違点1について
(ア)引用発明は、既存の透明化核剤は、透明性の改良幅は必ずしも十分ではなく、また、成形加工時の過熱によって芳香族アルデヒド等の揮発成分が発生し、臭気を悪化させるという問題点に鑑み(摘示(1-イ))、透明性、臭気及び成形加工性に優れたプロピレン系樹脂組成物を提供することを課題とし(摘示(1-ウ))、その課題を解決するために、構造式(1)で示される透明化核剤(A)を0.01?2.0重量部配合するという手段を採用したものであり(摘示(1-エ))、加熱しても芳香族アルデヒドの発生が極めて少ないため、臭気の悪化がほとんどないという特長がある(摘示(1-カ))。
また、引用文献1の実施例・比較例において(摘示(1-キ))、プロピレン系樹脂組成物のペレットについて臭気試験(80℃で2時間加熱後の臭気)と芳香族アルデヒド発生量の測定(200℃に加熱し10分間熱抽出した場合)を行ったところ、既存のジメチルベンジリデンソルビトール系透明化核剤(ゲルオールMD(注:構造式(1)においてR^(6)が水素である化合物に相当))を添加した比較例3、6、9は、「5級 激しく臭う(耐えられないほど強烈)」であり、芳香族アルデヒド発生量は3.8ppm又は3.9ppmであるのに対し、構造式(1)で示される透明化核剤(A)を添加した実施例1?6は、「1級 やっと感じられる」又は「2級 感じられる(臭いの質が分かる)」であり、芳香族アルデヒド発生量は0.1?0.3ppmであったことが記載されている。
引用文献1の実施例1?6において、その臭気は比較例3、6、9に比べれば顕著に低くなっているものの、臭気の原因とされている芳香族アルデヒドは、極めて少ないものの0.1ppm?0.3ppm発生しており、これは、既存のジメチルベンジリデンソルビトール系透明化核剤と同様に、構造式(1)で示される透明化核剤(A)が加熱により分解されて発生したものであると解される。
そうすると、引用発明における構造式(1)で示される透明化核剤(A)は、加熱により分解されて芳香族アルデヒドを少量ながら発生するものであり、引用発明を、段落【0059】に記載された食品容器などの臭気が特に影響する用途に用いる場合には、当該芳香族アルデヒド発生量をさらに低減させるという課題が存在することを、当業者であれば認識するといえる。

(イ)他方、引用文献2には、ポリプロピレンの透明性を向上させる成分、すなわち透明化核剤であるジベンジリデンソルビトール類は、比較的安定性に乏しく、加熱により分解しベンズアルデヒド類(注:「芳香族アルデヒド」に含まれる。)を遊離する傾向があり、このため、ジベンジリデンソルビトール類をポリオレフィンに添加し、加熱加工する場合に、ポリオレフィンに不快なアルデヒド臭がつくという課題を(摘示(2-イ))、一般式(I)で示されるソルビトール誘導体(摘示(2-ア))に対し、ジエタノール・オクタデシルアミンなどの非芳香族有機アミン化合物を添加することにより解決することが記載されている(摘示(2-ウ)、(2-エ))。
そして、引用文献2の実施例1(摘示(2-オ))には、ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン(注:「ステアリルジエタノールアミン」に相当)を、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール又はジベンジリデンソルビトールに添加すると(試料:No.1、6、8)、これらのソルビトール誘導体を240℃で10分ないし40分加熱した場合の揮発減量が減少したことが記載されており、ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタデシルアミンは、上記3種のソルビトール誘導体の加熱による分解を抑制し熱安定性が向上したことが確認されている。
また、引用文献2の実施例2(摘示(2-カ))には、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトールを含むポリプロピレンペレットにおいて、ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタデシルアミンを添加したものは(試料:No.1)、70℃で15時間加熱した後のアルデヒド臭が、当該アミンを添加しない場合に比べてより弱いと感じる人数が多くなったことが示されている。
したがって、引用文献2の記載から、ステアリルジエタノールアミンは、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトールなどの一般式(I)で示されるソルビトール誘導体の加熱による分解を抑制し、当該ソルビトール誘導体を含むプロピレン系樹脂組成物の臭気を低減させることができることを、当業者は理解することができる。

(ウ)引用文献2には、そのようなステアリルジエタノールアミンの効果が期待されるソルビトール誘導体として、一般式(I)で示されるソルビトール誘導体は記載されているが、引用発明に係る構造式(1)で示される透明化核剤(A)は記載されていない。
しかし、引用発明に係る構造式(1)で示される透明化核剤(A)と引用文献2に記載された一般式(I)で示されるソルビトール誘導体とは、加熱により分解されて芳香族アルデヒドを発生するソルビトール系透明化核剤である点で共通しており、引用発明に係る構造式(1)のR^(6)に相当する基が、前者が炭素数1?20のアルキル基であり、後者が水素であるとの違いはあるものの、基本骨格は共通している。
そうすると、引用文献2に記載されたステアリルジエタノールアミンを用いれば、引用発明に係る構造式(1)で示される透明化核剤(A)に対しても、加熱による分解を抑制し、芳香族アルデヒド発生量を低減させて芳香族アルデヒドに由来する臭気を低減することができることを、当業者であれば容易に予測することができたものといえる。

(エ)したがって、引用発明において、芳香族アルデヒド発生量をさらに低減させるという課題を認識する当業者であれば、芳香族アルデヒドをさらに低減させるために、引用発明において、引用文献2に記載されたステアリルジエタノールアミンを添加して、芳香族アルデヒドに由来する臭気を低減させることは、当業者が容易に想到することができたものである。

イ 相違点2について
引用文献1には、実施例1?6において、ペレットを「200℃に加熱し10分間熱抽出」した場合の芳香族アルデヒド量は、0.1ppm?0.3ppmであることが記載されている(摘示(1-キ))。
上記アのとおり、引用発明において、引用文献2に記載されたステアリルジエタノールアミンを添加することにより、芳香族アルデヒド発生量はさらに低減されるといえるから、引用文献1に記載の「200℃に加熱し10分間熱抽出」よりも穏和な条件である本願発明の「150℃で10分間加熱」した場合の芳香族アルデヒド発生量を、引用文献1の実施例1?6の下限値である0.1ppmと同程度の0.11ppm、又はそれよりも低い値とすることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

ウ 効果について
本願明細書には、ステアリルジエタノールアミンを添加した実施例3は、当該化合物を添加していない比較例3に比べ、芳香族アルデヒド発生量(150℃、10分)は1/10に低減され、「3(普通に臭いを感じる。)」から「2(かすかに臭いを感じる。)」まで臭気も低減されたことが記載されている。
しかし、上記ア及びイのとおり、引用発明において、ステアリルジエタノールアミンを添加すると、芳香族アルデヒド発生量はさらに低減され、芳香族アルデヒドに由来する臭気が低減されることは、引用文献1及び2に記載された事項から当業者が予測可能であるといえるから、本願発明の効果が、当業者が予測できない格別顕著なものということはできない。

エ 小括
以上によれば、本願発明は、引用発明及び引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-14 
結審通知日 2017-02-21 
審決日 2017-03-06 
出願番号 特願2012-51688(P2012-51688)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 周史  
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 西山 義之
藤原 浩子
発明の名称 透明化核剤入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気低減方法  
代理人 金山 賢教  
代理人 重森 一輝  
代理人 小野 誠  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 城山 康文  
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