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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1327508
審判番号 不服2016-13651  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-12 
確定日 2017-05-09 
事件の表示 特願2014-131461「触覚フィードバックによる形状変化ディスプレイの形成方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月27日出願公開、特開2014-222521、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年(平成21年)5月7日、米国 2009年(平成21年)8月6日、米国)を国際出願日とする特願2012-510020号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年6月26日に新たな出願としたものであって、平成27年9月7日付けで拒絶理由が通知され、平成27年12月15日付けで手続補正がされ、平成28年4月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年9月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年4月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2012-526331号公報
2.特開2005-328270号公報


第3 本願発明
本願請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年9月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項3】
プロセッサと、
前記プロセッサに接続され形状入力を受信する通信モジュールと、
前記通信モジュールを収容して変形可能部を含む筐体と、を備え、
前記変形可能部は、該変形可能部の形を外側にたわむように変えるために構成される変形アクチュエータを備え、
前記プロセッサは、運動感覚効果を模倣するために、前記筐体を変形する前記形状入力に応じて前記変形アクチュエータに信号を送信し、
触覚デバイスは、ゲーム装置であり、
前記運動感覚効果は、ゲーム環境においてユーザーの手で仮想的に保持される様々なツールの幾何学的形態に近づけるように前記筐体を変形させるとともに、前記ツールに応じたゲーム環境を与えることが可能な様々な触覚刺激が提供されるような効果である
触覚デバイス。」


第4 引用文献、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

1.「【0018】
図1は本発明の実施例1に係る触覚刺激通信装置の構成を示すブロック図である。図示の触覚刺激通信装置1は、触覚刺激出力手段2、刺激方法指示手段3、通信手段4、それらを制御する制御手段5および図示されていない電源とを含んで構成されている。触覚刺激出力手段2は、接触した対象物に後述する機構によって触覚刺激を与える。刺激方法指示手段3は、使用者が指などによって行う指示を後述する機構によって取得し、電気信号に変換して制御手段5に伝達する。制御手段5は、伝達された電気信号に基づいて刺激方法指示情報を生成し、通信手段4へ伝達する。通信手段4は、刺激方法指示手段3から伝達された刺激方法指示情報を他の触覚刺激通信装置1へ送信し、他の触覚刺激通信装置1からの刺激方法指示情報を受信して前記制御手段5へ伝達する。制御手段5は伝達された刺激方法指示情報を触覚刺激出力手段2に対する駆動信号に変換して触覚刺激出力手段2に出力する。触覚刺激出力手段2は、伝達された駆動信号に従って接触している対象物に触覚刺激を出力する。制御手段5はまた、触覚刺激出力手段2、刺激方法指示手段3および通信手段4の動作を制御する。
【0019】
このようにして、例えば使用者甲が指示した刺激方法が使用者乙に対して出力され、使用者乙が指示した刺激方法が使用者甲に対して出力される。
【0020】
図2は実施例1に係る触覚刺激通信装置を示す斜視図である。図2に示す触覚刺激通信装置は、軸方向両端を塞いだ楕円柱形状の筐体6と、この筐体6に内装された触覚刺激出力手段2、刺激方法指示手段3、通信手段4、制御手段5および電源10と、を含んでいる。触覚刺激出力手段2と刺激方法指示手段3は、筐体6のそれぞれ軸方向の概略反対の面に配置されている。そして、筐体6は概略手のひらに載る大きさとしてある。
【0021】
この構成によれば、一方の手の手のひらで触覚刺激を受けつつ、他方の手の指で刺激方法を指示するという使用方法が実現できる。即ち、図5に示すように、触覚刺激出力手段2が手のひらに接するように手7の上に筐体6を載せて、触覚刺激出力手段2と概略反対の面にある刺激方法指示手段3上で他方の手の指8を動かすことにより刺激方法を指示する使用方法が可能である。
【0022】
図2に示す触覚刺激通信装置では、通信手段4と電源10を筐体6に内蔵している。この場合、使用者は筐体6単体で使用できるので携帯性に優れる。通信手段4と電源10は外部に設けてもよいし既存の外部機器を利用してもよい。その場合、手の上に載せる筐体6を小さく軽くすることができるので使用中に手に掛かる負担を少なくできる。」(段落【0018】-【0022】。下線は当審で付した。以下同様。)

2.「【0044】
次に、触覚刺激出力手段2の構成例について説明する。
(触覚刺激出力手段2の第1の例)
図9は本発明の実施例1に係る触覚刺激通信装置における触覚刺激出力手段2の第1の例の平面配置を示す。図9に示す触覚刺激出力手段2は、円形の触覚刺激子支持板41と、この触覚刺激子支持板41に支えられ、それぞれ独立して動く複数の触覚刺激子42と、を含んで構成されている。触覚刺激子42の配置間隔は4mm以下であると、使用者になでられる感覚をかなりリアルに与えることが可能である。
【0045】
図10に実施例1に係る触覚刺激出力手段2の第1の例の断面図を示す。図10に示す第1の例では、触覚刺激子支持板41は、触覚刺激を受ける手のひら43に沿うように凸形状となっている。触覚刺激子支持板41は触覚刺激を受ける手のひら43に接して支持される。言い換えると、筐体6を手のひら43に乗せたとき、触覚刺激子支持板41の下面全体に接するように、触覚刺激子支持板41の凸形状に合わせて手のひらを窪ませる。そして、触覚刺激子42が、後述する駆動手段によって触覚刺激子支持板41の穴から突出することで触覚刺激出力手段を保持している手のひら43に接触し、触覚刺激を与える。触覚刺激を与えないときは触覚刺激子42は触覚刺激子支持板41より内側にあり手のひら43に接触しない。駆動手段の駆動力が強ければ圧覚刺激を与えることも可能である。触覚刺激子支持板41が凸形状となっているので、触覚刺激子42は、触覚刺激子支持板41内の位置に関係なく、同程度の突出量で同程度の刺激を手のひら43に与えることが可能である。」(段落【0044】-【0045】)

3.「【0051】
上記実施例1では、刺激方法指示手段3に入力された動作を触覚刺激出力手段2で出力するが、触覚刺激出力手段2を計算機で生成した刺激方法指示情報の出力手段として用いてもよい。例えばパソコンやゲーム機で刺激方法指示情報を生成し触覚刺激出力手段2で出力すれば、従来は画面に視覚的に出力しているような文字情報を触覚的に出力することが可能である。また、画面に仮想キャラクタを表示しながら触覚刺激出力手段2から触覚刺激を出力すれば、まるで仮想キャラクタに触られているような感覚を与えることもできる。」(段落【0051】)

また、上記1.の段落【0018】の「他の触覚刺激通信装置1からの刺激方法指示情報を受信して前記制御手段5へ伝達する」「通信手段4」は、上記3.の「ゲーム機で刺激方法指示情報を生成し触覚刺激出力手段2で出力」する場合には、「ゲーム機からの刺激方法指示情報を受信して前記制御手段5へ伝達する通信手段4」になるといえる。

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「制御手段5と、
ゲーム機からの刺激方法指示情報を受信して前記制御手段5へ伝達する通信手段4と、
通信手段4と触覚刺激出力手段2を含む筐体6と、を備え、
前記触覚刺激出力手段2は、触覚刺激子支持板41と、この触覚刺激子支持板41に支えられ、それぞれ独立して動く複数の触覚刺激子42と、を含んで構成され、前記触覚刺激子42が、駆動手段によって触覚刺激子支持板41の穴から突出することで触覚刺激出力手段を保持している手のひら43に接触し、触覚刺激を与えることで、従来は画面に視覚的に出力しているような文字情報を触覚的に出力し、
前記制御手段5は、伝達された刺激方法指示情報を触覚刺激出力手段2に対する駆動信号に変換して触覚刺激出力手段2に出力する、
触覚刺激通信装置1。」


第5 当審の判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「制御手段5」及び「通信手段4」は、本願発明のそれぞれ「プロセッサ」及び「通信モジュール」に相当する。

イ.引用発明において、「通信手段4」は、「ゲーム機からの刺激方法指示情報を受信」するものであって、当該刺激方法指示情報は、最終的に触覚刺激出力手段2において、「従来は画面に視覚的に出力しているような文字情報を触覚的に出力」するためのもの、すなわち文字の形状を手のひら43に感知せしめるためのものであるから、当該「通信手段4」は、「形状入力を受信する」ものといえる。

ウ.また、引用発明の「通信手段4」は、受信した情報を「制御手段5へ伝達する」ものであるから、「制御手段5」に接続されているといえる。

エ.上記イ.及びウ.から、本願発明と引用発明とは、「前記プロセッサに接続され形状入力を受信する通信モジュール」を有する点で一致する。

オ.引用発明の「筐体6」は、本願発明の「筐体」に相当する。

カ.また、引用発明の「触覚刺激出力手段2」は、「触覚刺激子42」を含んでおり、「触覚刺激子42が、駆動手段によって触覚刺激子支持板41の穴から突出する」機構を有しているから、変形可能な部材、すなわち変形可能部といえる。

キ.上記オ.及びカ.から、引用発明の「通信手段4と触覚刺激出力手段2を含む筐体6」は、本願発明の「前記通信モジュールを収容して変形可能部を含む筐体」に相当する。

ク.上記カ.のとおり、引用発明の「触覚刺激出力手段2」は、「触覚刺激子42」を含んでおり、「触覚刺激子42が、駆動手段によって触覚刺激子支持板41の穴から突出する」機構を有している。ここで、触覚刺激子42は、触覚刺激出力手段2を変形させるものであって、入力されたエネルギーを物理的運動に変換する、いわゆるアクチュエータであるといえる。

ケ.したがって、本願発明の「変形可能部は、該変形可能部の形を外側にたわむように変えるために構成される変形アクチュエータを備え」る構成と、引用発明の「触覚刺激出力手段2は、触覚刺激子支持板41と、この触覚刺激子支持板41に支えられ、それぞれ独立して動く複数の触覚刺激子42と、を含んで構成され、前記触覚刺激子42が、駆動手段によって触覚刺激子支持板41の穴から突出する」構成とは、「前記変形可能部は、該変形可能部の形を変えるために構成される変形アクチュエータを備え」る点で一致する。

コ.引用発明において、「制御手段5」は、「伝達された刺激方法指示情報を触覚刺激出力手段2に対する駆動信号に変換して触覚刺激出力手段2に出力する」ものであって、より具体的には、触覚刺激出力手段2に含まれる触覚刺激子42に駆動信号を出力するものである。

サ.したがって、本願発明の「プロセッサは、運動感覚効果を模倣するために、前記筐体を変形する前記形状入力に応じて前記変形アクチュエータに信号を送信」する構成と、引用発明の「制御手段5は、伝達された刺激方法指示情報を触覚刺激出力手段2に対する駆動信号に変換して触覚刺激出力手段2に出力する」構成とは、「前記プロセッサは、前記形状入力に応じて前記変形アクチュエータに信号を送信」する点で一致する。

シ.引用発明の「触覚刺激通信装置1」は、後述する相違点を除き、本願発明の「触覚デバイス」に相当し、また、ゲーム機と関連する装置であるから、ゲーム装置の一種といえる。

以上を総合すると、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「プロセッサと、
前記プロセッサに接続され形状入力を受信する通信モジュールと、
前記通信モジュールを収容して変形可能部を含む筐体と、を備え、
前記変形可能部は、該変形可能部の形を変えるために構成される変形アクチュエータを備え、
前記プロセッサは、前記形状入力に応じて前記変形アクチュエータに信号を送信し、
触覚デバイスは、ゲーム装置である
触覚デバイス。」

(相違点1)
上記一致点の「前記変形可能部は、該変形可能部の形を変えるために構成される変形アクチュエータを備え」る点に関し、本願発明は「変形可能部の形を外側にたわむように変える」のに対し、引用発明は「触覚刺激子42が、駆動手段によって触覚刺激子支持板41の穴から突出する」ものである点。

(相違点2)
上記一致点の「前記プロセッサは、前記形状入力に応じて前記変形アクチュエータに信号を送信」する点に関し、本願発明は「運動感覚効果を模倣するために、前記筐体を変形する」との構成を有しているのに対し、引用発明は運動感覚効果の模倣についても、筐体6そのものの変形についても特定していない点。

(相違点3)
本願発明が、「前記運動感覚効果は、ゲーム環境においてユーザーの手で仮想的に保持される様々なツールの幾何学的形態に近づけるように前記筐体を変形させるとともに、前記ツールに応じたゲーム環境を与えることが可能な様々な触覚刺激が提供されるような効果である」との構成を有するのに対し、引用発明は当該構成を特定していない点。


2.相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
上述のとおり、相違点3に係る本願発明の構成は、引用文献2に記載されておらず、示唆もされていない。また、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明は、引用発明ではなく、また、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


第6 原査定について
審判請求時の補正により、補正後の本願発明は、上記「第5 当審の判断」で述べた相違点3に係る構成を有するものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献2に記載された発明ではなく、また、当業者であっても引用文献2に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとは認められない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2014-131461(P2014-131461)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 尊志  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 土谷 慎吾
山田 正文
発明の名称 触覚フィードバックによる形状変化ディスプレイの形成方法及び装置  
代理人 藤田 和子  

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