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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04Q |
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管理番号 | 1327532 |
審判番号 | 不服2016-2983 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-29 |
確定日 | 2017-05-09 |
事件の表示 | 特願2012- 12265「無線通信装置、無線通信方法、及び無線通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-199905、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年1月24日(優先権主張 平成23年3月8日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年 9月11日付け 拒絶理由の通知 平成27年11月16日 意見書、手続補正書の提出 平成28年 1月26日付け 拒絶査定 平成28年 2月29日 審判請求書、手続補正書の提出 平成28年 5月31日 前置報告 平成29年 3月 7日付け 当審における拒絶理由の通知 平成29年 3月15日 意見書、手続補正書の提出 第2 本願の請求項1-8 平成29年3月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-8の記載は以下のとおりである(以下、補正後の請求項1に記載された発明を、「本願発明」という。なお、下線は、平成29年3月15日付け手続補正書で審判請求人により付されたものである。)。 「【請求項1】 他の無線通信装置と無線通信が可能な通信部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接するかをセンサによる検出結果に基づいて判定する判定部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定された場合に、前記通信部と前記他の無線通信装置との認証手続きを行う制御部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接することに応じて、前記認証手続きを含む接続手続きが行われていることの通知を行う通知部と、 を備え、 前記判定部は、前記通信部が前記他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上であり、かつ、前記無線通信装置に設けられた前記センサにより所定の検知結果が得られた場合に前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定する、無線通信装置。 【請求項2】 前記他の無線通信装置は、前記通信部に近接することを接続許可条件とした接続手続きが可能である場合には、その旨を示す近接による接続手続き可能情報を含めた無線信号を送信し、 前記判定部は、前記無線信号に前記近接による接続手続き可能情報が含まれるかを判定し、 前記制御部は、前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定され、かつ、前記無線信号に前記近接による接続手続き可能情報が含まれると判定された場合に、前記通信部と前記他の無線通信装置との接続手続きを行う、請求項1記載の無線通信装置。 【請求項3】 前記他の無線通信装置は、親機に接続された一または複数の子機のうち、いずれかの子機を構成し、 前記通信部は、前記親機から前記子機の一覧情報を取得し、 前記判定部は、前記通信部が取得した前記一覧情報に基づいて、前記他の無線通信装置を発見し、前記通信部が当該発見された前記他の無線通信装置に近接するかを判定する、 請求項1記載の無線通信装置。 【請求項4】 前記接続手続きは、少なくともWPS exchange又は4way-handshakeに関する処理のいずれか一つを含む請求項1?3のいずれかの無線通信装置。 【請求項5】 他の無線通信装置と無線通信が可能な通信部が前記他の無線通信装置に近接するかをセンサによる検出結果に基づいて判定するステップと、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定された場合に、前記通信部と前記他の無線通信装置との認証手続きを行うステップと、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接することに応じて、前記認証手続きを含む接続手続きが行われている場合、前記接続手続きが行われていることの通知を行うステップとを含み、 前記判定するステップでは、前記通信部が前記他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上であり、かつ、前記無線通信装置に設けられた前記センサにより所定の検知結果が得られた場合に前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定される、無線通信方法。 【請求項6】 前記接続手続きは、少なくともWPS exchange又は4way-handshakeに関する処理のいずれか一つを含む請求項5の無線通信方法。 【請求項7】 無線通信が可能な第1の無線通信装置及び第2の無線通信装置を備える無線通信システムであって、 前記第1の無線通信装置は、 前記第2の無線通信装置と無線通信が可能な通信部と、 前記通信部が前記第2の無線通信装置に近接するかをセンサによる検出結果に基づいて判定する判定部と、 前記通信部が前記第2の無線通信装置に近接すると判定された場合に、前記通信部と前記第2の無線通信装置との認証手続きを行う制御部と、 前記通信部が前記第2の無線通信装置に近接することに応じて、前記認証手続きを含む接続手続きが行われている場合、前記接続手続きが行われていることの通知を行う通知部と、 を備え、 前記判定部は、前記通信部が前記第2の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上であり、かつ、前記第1の無線通信装置に設けられた前記センサにより所定の検知結果が得られた場合に前記通信部が前記第2の無線通信装置に近接すると判定する、無線通信システム。 【請求項8】 前記接続手続きは、少なくともWPS exchange又は4way-handshakeに関する処理のいずれか一つを含む請求項7の無線通信システム。」 第3 当審における拒絶理由及び原査定の理由の概要 1 当審における拒絶理由 「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1の「近接センサ」が何を意味するのかが明確でなく、補正の根拠とする段落169の記載との関係も明確でない。 他の請求項についても同様である。 (2)請求項1では「近接センサによる検出結果に基づいて」としているが、補正の根拠とする段落169には「センサと、測定された受信強度との組み合わせにより近接を判定してもよい」と記載されており、対応関係が不明確である。 他の請求項(請求項4及びその従属項を除く。)についても同様である。」 2 原査定の理由の概要 原査定の理由は、この出願の請求項1-12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1-3、5-6に記載された発明及び下記の引用文献7-8に示される周知の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 <引用文献等一覧> 1.特開2007-89159号公報 2.特開2001-197069号公報 3.国際公開第2008/119150号 5.特開2007-60029号公報 6.特開2004-254311号公報 7.特開2010-87922号公報(周知技術を示す文献) 8.特開2003-229808号公報(周知技術を示す文献) なお、平成27年9月11日付け拒絶理由の引用文献4(特開2004-15558号公報)は、原査定の理由では引用していない。 また、本願発明に関連する事項として、原査定の理由及び平成27年9月11日付け拒絶理由には、以下の事項が記載されている。 (1)原査定の理由(抜粋) 「・請求項 1、4、9、11 ・引用文献等 1、7、8 先に通知した引用文献1には、第1ホスト、第2ホスト及び移動デバイスを含むネットワークシステムであって、移動デバイスと第1ホストとが接近した場合、第1ホストまたは移動デバイスの一方は、第1ホストと移動デバイスとの離隔距離を測定し、第1ホストは、第1ホストが移動デバイスとの離隔距離を測定する場合、第1ホストが測定した離隔距離が所定の閾値より小さいならば、移動デバイスに向けてユーザの接続意図があるかどうかを確認することを要請する信号を伝送し、移動デバイスは、第1ホストが移動デバイスとの離隔距離を測定する場合、測定した離隔距離が所定の閾値より小さいならば、第1ホストから接続意図の確認要請信号を受け取り、移動デバイスは、ユーザの第1ホストへの接続意図の確認を行い、第1ホストへ所定のキーを伝送し、接続確立動作を開始し、前記離隔距離は、受信した信号強度を用いて測定される、ネットワークシステム及び、ホスト、デバイス、及び媒介装置を含むネットワークシステムであって、媒介装置は、ユーザによってデバイスとホストとの間で移動される携帯端末であって、デバイスは、媒介装置がデバイスの近傍に移動すると、媒介装置との離隔距離を測定する、ネットワークシステムが記載されている(特に段落[0010]、[0024]-[0029]、[0038]、[0040]、[0042]を参照されたい。)。 平成27年11月16日付け手続補正書による補正後の請求項1、4に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は次の点で相違する。 [相違点1] 他の無線通信装置に近接すると判定された場合に、本願発明1、4の無線通信装置は他の無線通信装置との認証手続を行い、他の無線通信装置に近接することに応じて、認証手続を含む接続手続きが行われていることの通知を行うのに対して、引用文献1に記載された発明においては、他の無線通信装置に近接すると判定された場合に、無線通信装置は他の無線通信装置との接続手続き(引用文献1の「第1ホストへ所定のキーを伝送し、接続確立動作を開始」)を行うものの、認証手続き及び、他の無線通信装置に近接することに応じて、認証手続を含む接続手続きが行われていることの通知を行う構成を有さない点。 上記相違点1について検討すると、引用文献7(特に図3及び図4を参照されたい。)や引用文献8(特に図2、図4及び段落[0032]を参照されたい。)において開示されるように、接続手続きにおいて、認証手続きを行い、認証手続きの実行に係る情報を表示部や画面に示し、ユーザに対して認証手続を含む接続手続が行われていることの通知を行うことは、周知の事項である。 したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明において、前記周知の事項を適用することによって得られるものに過ぎない。 なお、出願人は、平成27年11月16日付け意見書において「また、本願発明は、このような特有の構成を備えているため、ユーザは、認証手続きを含む接続手続きが開始された時点で、無線通信装置を、他の無線通信装置から離すことが可能となります。従って、引用文献1に記載の発明に引用文献4に記載の技術を適用しても、補正後の本願発明には至りません。」旨、主張している。 しかし、「ユーザは、認証手続きを含む接続手続きが開始された時点で、無線通信装置を、他の無線通信装置から離すことが可能とな」ることは、予想される範囲の効果に過ぎない。 よって、出願人の主張は、採用できない。 したがって、請求項1、4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び、引用文献7、8に示される周知の事項に基づいて当業者であれば容易に想到し得るものである。 請求項9、11に係る発明についても同様である。」 (2)平成27年9月11日付け拒絶理由(抜粋) 「・請求項 2、8 ・引用文献等 1-2 ・備考 特開2001-197069号公報(以下、「引用文献2」という。)(特に請求項1及び段落[0025]を参照されたい。)には、親機20と特権子機40を含む複数の子機とにより構成された無線LAN装置であって、特権子機40は、受信電力値が一定の閾値を超えると、親機20と特権子機40の距離が十分に接近していると判断する、無線LAN装置、が記載されている。 本願の請求項2、8に係る発明(以下、「本願発明2、8」という。)と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は上記(あ)-(え)に記載した一致点を有し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明2、8の「判定部」は、通信部が他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上である場合に、通信部が他の無線通信装置に近接すると判断するのに対し、引用文献1に記載された発明はそのような構成を有さない点。 上記相違点1について検討すると、引用文献2に記載された発明の、受信電力値が所定の値を超えると距離が十分に近接していると判断する、とは、受信信号の強度を活用して通信装置間の距離に関する情報を得ることといえる。 そして、引用文献2に記載された発明の「受信電力値」は無線信号の受信強度といえ、「一定の閾値」は所定値といえる。 引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された発明とは、通信装置間の接続の確立に関する技術分野に属し、通信装置間の距離を考慮した接続の確立を実現するという共通の課題を有する。 したがって、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明の、受信電力値が所定の値を超えると距離が十分に近接していると判断する構成に基づいて「通信部が他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上である場合に、通信部が他の無線通信装置に近接すると判断する」構成を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 よって、本願の請求項2、8に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明に基づいて容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 第4 当審の判断 1 当審における拒絶理由について 平成29年3月15日付け手続補正により、補正前の請求項1の「近接センサ」が、補正後の請求項1の「センサ」に補正されるとともに、「判定部」が、「前記通信部が前記他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上であり、かつ、前記無線通信装置に設けられた前記センサにより所定の検知結果が得られた場合に前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定」するものであることが特定された。 請求項5及び7についても同様である。 上記補正により、当審における拒絶理由は解消した。 2 原査定の理由について (1)引用文献1に記載された発明 特開2007-89159号公報(原査定の引用文献1。以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。 ア 「【0007】 したがって、本発明の目的は、セキュリティを維持しつつ、ネットワークシステムにおけるデバイス間の接続を容易に行うことができるネットワークシステム、その接続方法、ネットワークシステムを構成するホスト及び媒介装置を提供することにある。」 イ 「【0024】 [第1実施形態] 図3Aは、デバイスが移動可能な場合における本発明の第1実施形態に係るネットワークシステムを示す図面である。 図3Aに示すように、本実施形態に係るネットワークシステムは、第1ホスト110、第2ホスト150及び移動デバイス130を含む。移動デバイス130は、最初に第2ホスト150に接続された状態で動作し、ユーザの必要に応じて第1ホスト110への接続及びそれに伴う動作を行う。 【0025】 図3Bは、デバイスが移動可能な場合における本実施形態に係るネットワークシステムの接続方法を説明するフローチャートである。 図3A及び図3Bに基づいて、デバイスが移動可能な場合における本実施形態に係るネットワークシステムの接続方法について説明する。 先ず、移動デバイス130が第1ホスト110へと接近した場合、第1ホスト110は移動デバイス130との離隔距離を測定する(S200)。 【0026】 第1ホスト110が測定した離隔距離が所定の閾値より小さい場合には、第1ホスト110は移動デバイス130にユーザが接続の意図があるかどうかを確認することを要請する信号を伝送する(S210)。 ここでの閾値は、通信環境に応じて適応的に設定することができ、本実施形態の場合には、0?5cm程度が好ましい。 なお、本実施形態の接続方法において、S200段階は移動デバイス130にて実行することもでき、この場合は前記のS210段階は不要になる。 【0027】 一方、第1ホスト110から接続意図の確認要請信号を受け取った移動デバイス130は、ユーザに第1ホスト100への接続を要請するか否かの選択を問う内容を図示しない表示部に表示する。 これに対し、例えば、ユーザが移動デバイス130上のボタンを押す動作を通じて、第1ホスト100への接続を要請すると、移動デバイス130には接続の要請信号が入力され、それによりユーザの第1ホスト110への接続意図の確認がなされる(S220)。 【0028】 その後、移動デバイス130は、第1ホスト110へ所定のキーを伝送する(S230)。ここでの所定のキーは、秘密情報を伝送するために必要なキーであって、本実施形態においては、所定のキーにはFSK又は公開鍵などを適用することができる。 【0029】 そして、第1ホスト110が所定のキーを受け取ると、第1ホスト110は移動デバイス130に情報(コネクションコンテクスト)を伝送することで、接続が確立される(S240)。」 ウ 「【0038】 一方、本実施形態において、前記のように直接的な方法によって離隔距離を計算することもできるが、無線信号の特性情報を用いて離隔距離を測定することもできる。 この特性情報として、受信した信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)、リンクの品質(LQI:Link Quality Indicator)、又はパケットエラー率(PER:Packet Error Rate)などを適用することができ、これらのうち2つ以上を複合させて適用することもできる。」 エ 「【0039】 [第2実施形態] 以下、ネットワークにおけるホストへの接続を行うデバイスの状態が、移動不可能な場合である、本発明の第2実施形態について説明する。 【0040】 図5Aは、デバイスが移動不可能な場合における本実施形態に係るネットワークシステムを示す図面である。図5Aに示すネットワークシステムは、ホスト310、デバイス350、及び媒介装置(Introducer)330を含み、ここで、媒介装置330は、ユーザによってデバイス350とホスト310との間で移動され、一般のユーザが容易に携帯可能な携帯電話等の携帯端末を用いることができる。 図5Bは、デバイスが移動不可能な場合における本実施形態に係るネットワークシステムの接続方法を説明するフローチャートである。 【0041】 媒介装置330がデバイス350の近傍に移動すると、媒介装置330はデバイス350との離隔距離を測定する(S400)。このために媒介装置330には、図示しない測定部を備える必要がある。本実施形態において、媒介装置330が携帯電話としての機能を備えている場合、媒介装置330への離隔距離の測定のための動作開始信号をユーザが入力することにより測定部が動作を開始することが好ましい。 そして、媒介装置330は、測定した離隔距離が所定の閾値よりも小さい場合、ユーザに接続を要請するか否かの選択を問う内容を媒介装置330上の図示しない表示部に表示する。 【0042】 なお、S400段階における距離測定はデバイス350において行うこともでき、この場合、デバイス350は媒介装置330にユーザが接続する意図があるか否かを確認することを要請する信号を伝送し、それに応じて、媒介装置330は、ユーザに接続を要請するか否かの選択を問う内容を、前記の表示部に表示する。 ここでの離隔距離の測定原理及び所定の閾値の設定については前記の通りである。 【0043】 次に、例えば、ユーザが媒介装置330上のボタンを押すことにより、接続要請信号が媒介装置330に入力されると、媒介装置330はデバイス350に所定のキーを要求する信号を伝送する(S410)。 そして、媒介装置330から所定のキーを要求する信号を受け取ったデバイス350は、所定のキーを媒介装置330に送信する(S420)。ここで、所定のキーとしては、前記のようにFSK又は公開鍵のいずれかを用いることができる。 【0044】 次に、媒介装置330がホスト310の近傍に移動すると、媒介装置330はホスト310との離隔距離を測定する(S430)。 媒介装置330は、測定した離隔距離が所定の閾値より小さい場合、ユーザに接続を要請するか否かの選択を問う内容を媒介装置330上の表示部に表示する。 【0045】 なお、S430段階における距離測定はホスト310において行うこともでき、この場合、ホスト310は媒介装置330にユーザが接続する意図があるか否かを確認することを要請する信号を伝送し(S450)、それに応じて、媒介装置330はユーザに接続を要請するか否かの選択を問う内容を媒介装置330上の表示部に表示する。 また、ここでの離隔距離の測定原理及び所定の閾値の設定についても前記の通りである。 【0046】 次に、例えば、ユーザが媒介装置330上のボタンを押すことにより、接続要請信号が媒介装置330に入力されると、媒介装置330はホスト310に前記の所定のキーを伝送する(S440)。その結果、ホスト310は情報(コネクションコンテクスト)をデバイス350に伝送し、それにより、デバイス350のホスト310への接続手順(アソシエーション)は完了する。 なお、図3Aに示した移動デバイス130が、図5Aに示した媒介装置330として動作する構成としてもよい。」 そうすると、引用文献1に記載された発明のうち、第1実施形態として記載された発明(以下、「引用発明A」という。)及び第2実施形態として記載された発明(以下、「引用発明B」という。)は、それぞれ以下のとおりである。 <引用発明A> 「最初に第2ホスト150に接続された状態で動作し、ユーザの必要に応じて第1ホスト110への接続及びそれに伴う動作を行う、移動デバイス130であって、 移動デバイス130が第1ホスト110へと接近した場合、第1ホスト110は移動デバイス130との離隔距離を測定し(S200)、 直接的な方法によって離隔距離を計算することもできるが、無線信号の特性情報を用いて離隔距離を測定することもでき、この特性情報として、受信した信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)、リンクの品質(LQI:Link Quality Indicator)、又はパケットエラー率(PER:Packet Error Rate)などを適用することができ、 第1ホスト110が測定した離隔距離が所定の閾値より小さい場合には、第1ホスト110は移動デバイス130にユーザが接続の意図があるかどうかを確認することを要請する信号を伝送し(S210)、 S200段階は移動デバイス130にて実行することもでき、この場合は前記のS210段階は不要になり、 第1ホスト110から接続意図の確認要請信号を受け取ると、ユーザに第1ホスト100への接続を要請するか否かの選択を問う内容を表示部に表示し、 ユーザが移動デバイス130上のボタンを押す動作を通じて、第1ホスト100への接続を要請すると、移動デバイス130には接続の要請信号が入力され、それによりユーザの第1ホスト110への接続意図の確認がなされ(S220)、 第1ホスト110へ所定のキーを伝送し(S230)、ここでの所定のキーは、秘密情報を伝送するために必要なキーであって、所定のキーにはFSK又は公開鍵などを適用することができ、 第1ホスト110が所定のキーを受け取ると、第1ホスト110は移動デバイス130に情報(コネクションコンテクスト)を伝送することで、接続が確立される(S240)、移動デバイス130。」 <引用発明B> 「ユーザによってデバイス350とホスト310との間で移動される媒介装置330であって、 デバイス350の近傍に移動すると、デバイス350との離隔距離を測定し(S400)、このために測定部を備え、 携帯電話としての機能を備えている場合、離隔距離の測定のための動作開始信号をユーザが入力することにより測定部が動作を開始し、 測定した離隔距離が所定の閾値よりも小さい場合、ユーザに接続を要請するか否かの選択を問う内容を媒介装置330上の表示部に表示し、 ユーザが媒介装置330上のボタンを押すことにより、接続要請信号が媒介装置330に入力されると、媒介装置330はデバイス350に所定のキーを要求する信号を伝送し(S410)、 媒介装置330から所定のキーを要求する信号を受け取ったデバイス350は、所定のキーを媒介装置330に送信し(S420)、ここで、所定のキーとしては、前記のようにFSK又は公開鍵のいずれかを用いることができ、 ホスト310の近傍に移動すると、ホスト310との離隔距離を測定し(S430)、 測定した離隔距離が所定の閾値より小さい場合、ユーザに接続を要請するか否かの選択を問う内容を媒介装置330上の表示部に表示し、 ユーザが媒介装置330上のボタンを押すことにより、接続要請信号が媒介装置330に入力されると、ホスト310に前記の所定のキーを伝送し(S440)、その結果、ホスト310は情報(コネクションコンテクスト)をデバイス350に伝送し、それにより、デバイス350のホスト310への接続手順(アソシエーション)が完了する、媒介装置330」 (2)引用文献2に記載された発明 特開2001-197069号公報(原査定の引用文献2。以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。 「【0024】 具体的には、親機20と通信している特権子機40では、受信電力検出回路4cにより親機20からの受信電力値を検出し、特権子機制御回路9cがこの受信電力値に基づいて接近状態を判断している。すなわち、特権子機制御回路9cが接近状態判断手段として機能している。 なお、実施例1では、特権子機40の受信電力検出回路4cにおいて、親機20からの受信電力値を常時検出するが、これ以外に、一定間隔で親機20からの受信電力値を検出したり、特権子機制御回路9cに対して、ユーザインターフェース回路10cもしくは無線制御回路5cを介して親機20のネットワーク設定変更の要求が行われた場合にのみ、親機20からの受信電力値を検出するように構成してもよい。 【0025】 ここで、受信電力値が、親機20と特権子機40の距離が十分に接近しているとみなされる一定の閾値を超えると、特権子機制御回路9cは、親機20と特権子機40とが接近した旨の信号を無線制御回路5c、送信機2c、アンテナ1cを介して親機20に送信する。 親機20において、特権子機40からの信号を、アンテナ1a、受信機3aを介して無線制御回路5aに伝へ、ネットワーク制御回路6によりこの信号を確認する。そして、ネットワーク制御回路6は、記憶装置11に対して、各種設定情報7における情報内容の書き換え属性を許可状態に設定する。この許可状態は、親機20と特権子機40が離れることにより、特権子機40における受信電力値が所定の閾値を下回ったり、所定時間が経過することにより、自動的に拒否状態に推移する。 また、書き換え属性が拒否状態である場合には、ネットワーク制御回路6が各種設定情報7の情報内容を書き換えることはできない。」 そうすると、「特権子機40」の「受信電力検出回路4c」、「親機20」及び「受信電力値」は、それぞれ「通信部」、「他の無線通信装置」及び「無線信号の受信強度」といえ、引用文献2には、「通信部が他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上である場合に前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定する」という発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 (3)対比 ア 本願発明と引用発明Aとの対比 (ア)引用発明Aは、最初に第2ホスト150に接続された状態で動作し、ユーザの必要に応じて「第1ホスト110」に接続される「移動デバイス130」であって、「第1ホスト110」が「移動デバイス130」との離隔距離を測定する際、無線信号の特性情報を用いて測定することもでき、この特性情報として、受信した信号強度(RSSI)、リンクの品質(LQI)、又はパケットエラー率(PER)などを適用することができるとしている。 そうすると、引用発明Aは「無線通信装置」といえ、引用発明Aの「第1ホスト110」は、本願発明にいう「他の無線通信装置」に相当し、引用発明Aは、「他の無線通信装置と無線通信が可能な通信部」を有しているといえる。 (イ)引用発明Aでは、S200段階は移動デバイス130にて実行することもでき、この場合は前記のS210段階は不要になるとしているところ、引用発明AがS200段階を実行する場合には、引用発明A側で、第1ホスト110との離隔距離が所定の閾値より小さいかどうかを判断するものと解することができ、該判断によって引用発明Aの「通信部」が「第1ホスト100」に近接するかを判定しているといえるから、本願発明と引用発明Aとは、「前記通信部が前記他の無線通信装置に近接するかを判定する判定部」を備えるといえる点で共通する。 (ウ)引用発明Aでは、ユーザに第1ホスト100への接続を要請するか否かの選択を問う内容を表示部に表示し、ユーザが移動デバイス130上のボタンを押す動作を通じて、ユーザの第1ホスト110への接続意図の確認がなされ(S220)、第1ホスト110へFSK又は公開鍵などの秘密情報を伝送するために必要なキーを伝送し、第1ホスト110から移動デバイス130に情報(コネクションコンテクスト)が伝送され、接続が確立される。 そうすると、本願発明と引用発明Aとは、表示部による表示内容が何であるかは別として、「前記通信部が前記他の無線通信装置に近接することに応じて、通知を行う通知部」を有する点で共通するといえる。 また、引用発明Aでは、移動デバイス130と第1ホスト110との間の接続手続きが「認証手続きを含む」といえるかどうか定かではなく、ユーザのボタン操作(接続意図の確認)も接続手続きを開始する条件としているものの、本願発明と引用発明Aとは、「前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定された場合に、前記通信部と前記他の無線通信装置との所定の手続きを行う制御部」を有するといえる点で共通するといえる。 よって、本願発明と引用発明Aとの一致点、相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「他の無線通信装置と無線通信が可能な通信部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接するかを判定する判定部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定された場合に、前記通信部と前記他の無線通信装置との所定の手続きを行う制御部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接することに応じて、通知を行う通知部と、 を備える、無線通信装置。」 [相違点A1] 本願発明では、「判定部」が、「センサによる検出結果に基づいて」判定するものであり、「前記通信部が前記他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上であり、かつ、前記無線通信装置に設けられた前記センサにより所定の検知結果が得られた場合」に近接すると判定して、「制御部」が所定の手続きを行うのに対し、引用発明Aでは、「判定部」が、測定した離隔距離が所定の閾値より小さい場合に近接すると判定し、「表示部」がユーザに第1ホスト100への接続を要請するか否かの選択を問う内容を表示し、ユーザのボタン操作(接続意図の確認)も接続手続きを開始する条件として、「制御部」が所定の手続きを行う点。 [相違点A2] 本願発明では、所定の手続きは「認証手続き」であり、「通知部」は「前記認証手続きを含む接続手続きが行われていること」の通知を行うのに対し、引用発明Aでは、所定の手続きが「認証手続き」であることの特定はなく、ユーザのボタン操作を経て所定の手続きが開始されるものであって、「通知部」が「前記認証手続きを含む接続手続きが行われていること」の通知を行うことについて特定がない点 イ 本願発明と引用発明Bとの対比 (ア)引用発明Bは、携帯電話としての機能を備えた「媒介装置330」であって、ホスト310に前記の所定のキーを伝送するものであるから、引用発明Bは「無線通信装置」といえ、引用発明Bにいう「ホスト310」は、本願発明にいう「他の無線通信装置」に相当し、本願発明と同様、「他の無線通信装置と無線通信が可能な通信部」を有するものといえる。 (イ)引用発明Bは、ホスト310の近傍に移動すると、ホスト310との離隔距離を測定し(S430)、測定した離隔距離が所定の閾値より小さいかどうかを判断するものであり、これにより「媒介装置330」の「通信部」が「ホスト310」に近接するかを判定しているといえるから、本願発明と引用発明Bとは、「前記通信部が前記他の無線通信装置に近接するかを判定する判定部」を備えるといえる点で共通する。 (ウ)引用発明Bは、測定した離隔距離が所定の閾値より小さい場合、ユーザに接続を要請するか否かの選択を問う内容を媒介装置330上の表示部に表示し、ユーザが媒介装置330上のボタンを押すことにより、接続要請信号が媒介装置330に入力されると、ホスト310に前記の所定のキーを伝送し(S440)、その結果、ホスト310とデバイス350との間で接続手続きが行われるといえる。 そして、引用発明Bの所定のキーを伝送することと、本願発明の「認証手続き」を行うこととは、いずれも「所定の手続きを行う」ことといえ、引用発明Bでは、ユーザのボタン操作(接続要請)も所定の手続きを行うための条件としているものの、本願発明と引用発明Bとは、「前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定された場合に、前記通信部と前記他の無線通信装置との所定の手続きを行う制御部」を有するといえる点で共通するといえる。 また、本願発明と引用発明Bとは、表示部による表示内容が何であるかは別として、「前記通信部が前記他の無線通信装置に近接することに応じて、通知を行う通知部」を有するといえる点で共通する。 よって、本願発明と引用発明Bとの一致点、相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「他の無線通信装置と無線通信が可能な通信部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接するかを判定する判定部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接すると判定された場合に、前記通信部と前記他の無線通信装置との所定の手続きを行う制御部と、 前記通信部が前記他の無線通信装置に近接することに応じて、通知を行う通知部と、 を備える、無線通信装置。」 [相違点B1] 本願発明では、「判定部」が、「センサによる検出結果に基づいて」判定するものであり、「前記通信部が前記他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上であり、かつ、前記無線通信装置に設けられた前記センサにより所定の検知結果が得られた場合」に近接すると判定して、「制御部」が所定の手続きを行うのに対し、引用発明Bでは、「判定部」が、測定した離隔距離が所定の閾値より小さい場合に近接すると判定し、「表示部」がユーザに接続を要請するか否かの選択を問う内容を表示し、ユーザのボタン操作(接続要請)も条件として、「制御部」が所定の手続きを行う点。 [相違点B2] 本願発明では、所定の手続きは「認証手続き」であり、「通知部」は「前記認証手続きを含む接続手続きが行われていること」の通知を行うのに対し、引用発明Bでは、所定の手続きはユーザのボタン操作も条件として行われる所定のキーの伝送であり、その結果、ホスト310とデバイス350との間で接続手続きが行われ、「通知部」が「前記認証手続きを含む接続手続きが行われていること」の通知を行うことについては特定がない点。 (4)判断 ア 本願発明について 本願発明と引用発明Aとの上記相違点A1及びA2について検討する。 本願発明は、(i)他の無線通信装置から受信した無線信号の受信強度が所定値以上であること、かつ、(ii)センサにより所定の検知結果が得られること、を満たす場合に、ユーザによる接続意図の確認を行うことなく、認証手続きを行うものであるところ、引用発明Aに上記引用発明2を組み合わせたとしても、相違点A1に係る構成が導き出せるとはいえない。 また、引用文献3、5-6のいずれにも、相違点A1に係る構成は記載も示唆もない。 そして、本願発明は、相違点A1に係る構成を前提するもの(ユーザによる接続意図の確認を行うことなく、認証手続きを行うもの)において、「通知部」が「前記認証手続きを含む接続手続きが行われていること」の通知を行うこと(相違点A2)により、「従来は、接続手続きが開始されたことをユーザに通知していなかったので、ユーザは、どのタイミングで接続手続きが開始されたのかを知ることができず、結果として、接続手続きが終了するまで無線通信装置どうしを近接させておく必要があった」のに対し、「ユーザは、接続手続きが開始されたことを確認する事ができ」、「接続手続きの開始を確認した後、無線通信装置30との通信圏内で無線通信装置20を無線通信装置30から離すことができ」、「無線通信装置同士を接続する際にユーザに掛かる手間を従来よりも低減することができる」という効果を奏するものである(本願明細書の段落118参照)。 よって、本願発明は、当業者が引用発明A、引用文献2-3、5-6に記載された発明及び引用文献7-8に示される周知の事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願発明と引用発明Bとの上記相違点B1及びB2に係る構成についても、同様に、引用文献2-3、5-6に記載も示唆もないから、本願発明は、当業者が引用発明B、引用文献2-3、5-6に記載された発明及び引用文献7-8に示される周知の事項に基いて容易に発明をすることができたともいえない。 したがって、本願発明は、当業者が引用文献1-3、5-6に記載された発明及び引用文献7-8に示される周知の事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 請求項2-8に係る発明について 請求項5及び7に係る発明は、いずれも上記相違点A1及びA2に係る構成と同様の構成を備える発明であるから、本願発明と同様、当業者が引用文献1-3、5-6に記載された発明及び引用文献7-8に示される周知の事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2-4に係る発明、請求項5を引用する請求項6に係る発明、請求項7を引用する請求項8に係る発明についても、同様である。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-8に係る発明は、いずれも、当業者が引用文献1-3、5-6に記載された発明及び引用文献7-8に示される周知の事項に基いて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-04-24 |
出願番号 | 特願2012-12265(P2012-12265) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04Q)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 真之、松本 光平、東 昌秋、遠山 敬彦 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 北岡 浩 |
発明の名称 | 無線通信装置、無線通信方法、及び無線通信システム |
代理人 | 亀谷 美明 |