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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1327551
審判番号 不服2016-780  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-18 
確定日 2017-04-27 
事件の表示 特願2014-143354「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 6372〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成22年7月27日に出願された特願2010-168341号の一部を平成26年7月11日に新たな特許出願としたものであって,平成27年7月29日付けで拒絶理由が通知され,それに対し,同年10月1日に意見書及び手続補正書が提出され,同年10月15日付けで拒絶査定され,これに対し,平成28年1月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同日付けで手続補正がなされ,当審において,同年12月8日付けで拒絶理由が通知され,これに対し平成29年2月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
平成29年2月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
遊技領域の略中央にセンターケースが,それ以外の部分に図柄始動手段を含む複数の遊技球検出手段が夫々配置され,
発射手段によって前記遊技領域の上部側に打ち込まれた遊技球は前記センターケースの左側の左流下経路と右側の右流下経路との何れかを流下するように構成され,
前記図柄始動手段が遊技球を検出することに基づいて,所定の画像表示手段で演出図柄を複数種類の変動パターンの何れかに従って変動表示する演出図柄表示制御手段と,
前記演出図柄が変動後に所定態様で停止した場合に特別利益状態を発生させる特別利益状態発生手段と,
前記左流下経路と前記右流下経路との何れかを狙って遊技球を発射することが遊技者に有利となる所定遊技状態の場合に,前記左流下経路と前記右流下経路との何れを狙うのが遊技者にとって有利かに関する発射誘導情報を前記画像表示手段に表示させる発射誘導情報制御手段とを備え,
前記所定遊技状態には,
前記左流下経路と前記右流下経路のうち一方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な通常遊技状態と,
前記左流下経路と前記右流下経路のうち他方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な前記特別利益状態と,
前記特別利益状態の終了後の所定期間に発生して前記他方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な特別遊技状態とがあり,
前記発射誘導情報制御手段は,
前記特別利益状態の開始で前記他方側流下経路へと誘導する第1発射誘導情報を,
前記特別遊技状態の開始で前記他方側流下経路へと誘導する第2発射誘導情報を,
前記特別遊技状態の終了後の前記通常遊技状態の開始で前記一方側流下経路へと誘導する第3発射誘導情報を夫々前記画像表示手段に表示させ,
前記演出図柄が特定の変動パターンで変動する特定演出中には,前記画像表示手段に前記第2発射誘導情報,前記第3発射誘導情報を表示させない
ことを特徴とする弾球遊技機。」

3.当審における拒絶理由
当審における平成28年12月8日付けの拒絶理由の概要は次のとおりである。

(1)本願の請求項1に係る発明は,その出願遡及日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

(2)本願の請求項1に係る発明は,その出願遡及日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物:特開2009-240339号公報

4.刊行物
当審における平成28年12月8日付けの拒絶理由において刊行物として引用した特開2009-240339号公報(以下,「刊行物」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0018】
図1に示すように,パチンコ機1の上半分の部分には,発射ハンドル7の操作により図示外の発射機から発射された遊技媒体としての遊技球が流下する遊技盤2が設けられている。この遊技盤2は略正方形であり(図2参照),透明なガラス板を保持した前面枠13で保護されている。遊技盤2の下方部には,発射機に遊技球を供給し,且つ賞品球を受ける上皿5が設けられている。そして,上皿5の直下には賞品球を受ける下皿6が設けられ,下皿6の右横には遊技球の発射を調整する発射ハンドル7が設けられている。また,前面枠13の上部には,左右方向の略全長に亘って前側に膨出するように照明装置35が形成されている。さらに,前面枠13の上部における左右の角にはスピーカ48,48がそれぞれ設けられている。また,パチンコ機1の前面には,演出用の電飾ランプが多数設けられている。
【0019】
また,図2に示すように,遊技盤2の前面にはガイドレール3で囲まれた略円形の遊技領域4が設けられている。この遊技領域4の略中央には,LCDにより構成された表示画面28,各種ランプ,LED等を備えた図柄表示装置8と,遊技球を用いた演出を行う役物装置30とが配設されている。そして,図柄表示装置8の下方には第一始動口15が,表示画面28の上方には第一大入賞口18が設けられており,第一始動口15への遊技球の入賞を起因として大当たり遊技が実行される場合には,この第一大入賞口18が動作する。
【0020】
また,表示画面28の直下には第二始動口16が設けられている。ここで,この第二始動口16への遊技球の入賞頻度は,第一始動口15への入賞頻度に比べて大幅に少なくなるように構成されている。また,第一始動口15の下方には開閉部材を備えた第二始動電動役物17が設けられており,第一始動口15の右方には普通図柄始動ゲート12が,さらにその右側上方には第二大入賞口19が設けられている。そして,第二始動口16及び第二始動電動役物17のいずれかに遊技球が入賞して大当たり遊技が実行される場合には,第二大入賞口19が動作する。」

(イ)「【0023】
また,図柄表示装置8は中央に表示画面28を備えている。この表示画面28には動画やメッセージ等様々な映像が表示されるが,特に第一大当たり判定及び第二大当たり判定の結果を表示するために,表示画面28にはデモ図柄を表示するための3つのデモ図柄表示部が設けられている。そして,これらのデモ図柄表示部は,遊技者の目を惹くように特別図柄表示部25,26よりも広い領域を占めている。また,表示画面28には,詳細は後述するが,時短状態が終了して非時短状態へ移行した後,デモ図柄の変動演出が5回行われるまでの間,遊技球の適正な発射強度を示す画像である適正強度画像を表示する適正強度画像表示部101がデモ図柄の変動開始から所定時間形成される(図17参照)。
【0024】
ここで,本実施の形態のパチンコ機1における遊技の概要について説明する。パチンコ機1では時短状態を生起させることができる。この時短状態中には,通常(非時短状態中)に比べて普通図柄表示部24の普通図柄の変動時間が短縮され,「普通当たり」と判定される確率が高くなり,さらに第二始動電動役物17の開放時間が長くなる。よって,第二始動電動役物17へ遊技球が入賞する割合が,非時短状態中よりも大幅に高くなる。また,第一大当たり判定及び第二大当たり判定によって「大当たり」と判定される確率が通常(非確率変動状態中)よりも高くなる確率変動状態を生起させることもできる。従って,パチンコ機1ではこれらの組み合わせにより「確率変動時短状態」,「非確率変動非時短状態(通常状態)」,「確率変動非時短状態」,「非確率変動時短状態」の4つの遊技状態を生起させることができる。
【0025】
また,パチンコ機1では,第一始動口15へ遊技球が入賞すると,「大当たり」及び「はずれ」のいずれであるかを判定する第一大当たり判定が行われる。この第一大当たり判定により「大当たり」と判定されると,第一大入賞口18が動作する第一大当たり遊技が実行される。そして,第一始動口15へ遊技球を入賞させる場合,遊技盤2の左側を遊技球が流下するように発射ハンドル7を調整した方が入賞する割合は高くなる。よって,第二始動電動役物17が開放される割合が低い非時短状態中は,遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる。
【0026】
また,普通図柄始動ゲート12を遊技球が通過すると普通当たり判定が行われ,「普通当たり」と判定されると,第二始動電動役物17が所定時間開放される普通当たり遊技が実行される。さらに,第二始動口16又は開放された第二始動電動役物17へ遊技球が入賞すると,「大当たり」及び「はずれ」のいずれであるかを判定する第二大当たり判定が行われる。この第二大当たり判定により「大当たり」と判定されると,第二大入賞口19が動作する第二大当たり遊技が実行される。そして,普通図柄始動ゲート12及び第二始動電動役物17は遊技盤2の右側に配設されており,第二始動電動役物17へは,遊技盤2の右側を流下した遊技球,及び左側を流下した遊技球のいずれも入賞可能となっている。よって,第二始動電動役物17が開放される割合が通常よりも高い時短状態中は,遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる。
【0027】
このような構成のもと,パチンコ機1では,第二大当たり判定により「大当たり」と判定されると,第二大当たり遊技の終了後には必ず時短状態(「確率変動時短状態」又は「非確率変動時短状態」)が生起される。そして,時短状態中は非時短状態中に比べて遊技球が減少する割合が小さいため,時短状態を介して大当たり遊技が連続すると,遊技者は大当たり遊技の合間に遊技球を大幅に減少させることなく,多数の遊技球を獲得することができる。パチンコ機1では,通常状態中であっても第二大当たり判定が稀に実行される構成とすることで,通常状態中の遊技者の期待感を高めることを実現している。さらに,第一特別図柄作動保留球数及び第二特別図柄作動保留球数が共にゼロでない場合には,遊技者にとって有利な時短状態へ移行する契機となる第二大当たり判定から優先して行われる。よって,遊技者がより強い期待感を抱く第二大当たり判定の結果を後回しにすることなく遊技者に報知し,遊技者の興趣を惹き付けることができる。さらに,時短状態中には,遊技盤2の上部に設けられた第一大入賞口18が開放される割合が低下するため,遊技者は第二始動電動役物17及び第二大入賞口19が配設された遊技盤2の右側を狙い続けるだけで,遊技球の発射強度を変更することなく多数の遊技球を獲得することができる。
【0028】
そして,「非確率変動時短状態」は,第一大当たり判定及び第二大当たり判定によって50回連続して「はずれ」と判定されると終了し,「通常状態」へ移行する。また,「確率変動時短状態」は,10000回連続して「はずれ」と判定されると「通常状態」へ移行する。そして,遊技者は時短状態が終了することに伴い,遊技球の発射目標を遊技盤2の右側から左側へ変更しなければ不利益を被ることとなる。ここで,大当たり遊技終了後に遊技球の適正発射強度が変化する場合には,大入賞口18,19の開閉動作が終了してから次に大当たり判定が行われるまでの間に適正発射強度を遊技者に通知することができる。しかし,大当たり遊技を経ずに適正発射強度が変化する場合には,大当たり判定の結果を報知するためのデモ図柄の変動演出を妨げることなく,適切に適正発射強度を遊技者に報知することは,従来の遊技機では困難であった。そこで,パチンコ機1では,「通常状態」へ移行した後5回の大当たり判定の結果が表示されるまでの間,デモ図柄の変動開始から5秒間,遊技球の適正な発射強度を示す画像である適正強度画像を表示する。これにより,デモ図柄の変動演出を妨げることなく,変化した適切な遊技球の発射強度を効率よく遊技者に報知することができる。この詳細は図面を参照して後述する。」

(ウ)「【0040】
次いで,大当たり判定回数計数カウンタについて説明する。パチンコ機1における非確率変動時短状態は,第一大当たり判定及び第二大当たり判定の判定回数の和が50回に達すると終了し,遊技状態は通常状態へ移行する。また,確率変動時短状態では,大当たり判定回数の和が10000回に達すると,遊技状態は通常状態へ移行する。そこで,本実施の形態では,大当たり遊技終了後に実行された第一大当たり判定及び第二大当たり判定の判定回数を大当たり判定回数計数カウンタによって計数し,計数された値に応じて遊技状態を制御している。この詳細は,図13を参照して後述する。尚,判定回数が規定回数に到達する前に大当たりと判定された場合には,時短状態及び確率変動状態はその時点で終了し,大当たり遊技が実行される。そして,大当たり遊技終了後に再び新たな遊技状態が生起される。」

(エ)「【0048】
次に,パチンコ機1の主基板41による動作の詳細について,図8乃至図13を参照して説明する。図8は,主基板41におけるメイン処理のフローチャートであり,図9乃至図11は,メイン処理の中で行われる特別図柄処理のサブルーチンのフローチャートである。また,図12は,図11に示す特別図柄処理の中で行われる大当たり種別判定処理のサブルーチンのフローチャートであり,図13は,図10に示す特別図柄処理の中で行われる遊技状態移行処理のサブルーチンのフローチャートである。以下,フローチャートの各ステップについて「S」と略記する。」

(オ)「【0063】
図9に示すように,メイン処理の特別図柄処理が開始されると,第一始動口15へ遊技球が入賞しているか否かが判断される(S21)。第一始動口15に設けられた第一始動口スイッチ65が遊技球の入賞を検出した場合には,メイン処理のスイッチ読込処理(S11,図8参照)において,入賞球フラグ記憶エリア5202の第一始動口スイッチ65に対応するフラグが「ON」とされている。そこで,S21では,このフラグが「ON」であるか否かの判断が行われる。「ON」でない場合には(S21:NO),第一始動口15に遊技球は入賞していないので,そのままS25の判断へ移行する。
【0064】
第一始動口スイッチ65に対応するフラグが「ON」である場合には(S21:YES),第一始動口15に遊技球が入賞しているので,その遊技球についての乱数が取得され,第一大当たり関係情報記憶エリア5205(図5参照)に記憶される。しかし,乱数を取得して記憶することができる第一特別図柄作動保留球の数は4個である。そこで,第一特別図柄作動保留球数記憶エリア5206の値が「4」であるか否かの判断が行われる(S22)。第一特別図柄作動保留球数記憶エリア5206の値が「4」である場合には(S22:YES),この遊技球についての乱数は記憶できないので,そのままS25の判断へ移行する。
【0065】
第一特別図柄作動保留球数記憶エリア5206の値が「4」でない場合,すなわち「0」?「3」のいずれかである場合には(S22:NO),第一特別図柄作動保留球数記憶エリア5206の値に「1」が加算される(S23)。そして,第一大当たり関係情報記憶エリア5205の第一?第四記憶エリアのうち,第一特別図柄作動保留球数記憶エリア5206の値に対応する番号の記憶エリアに乱数が記憶される(S24)。具体的には,第一大当たり乱数欄には第一大当たり判定カウンタの値が記憶され,第一大当たり特別図柄決定乱数欄には第一大当たり特別図柄作成カウンタの値が記憶され,第一変動パターン決定乱数欄には第一変動パターン決定カウンタの値が記憶される。
【0066】
次いで,第二始動口16及び第二始動電動役物17への遊技球の入賞に関する処理が行われる。まず,第二始動口16及び第二始動電動役物17のいずれかに遊技球が入賞しているか否かが判断される(S25)。第二始動口16に設けられた第二始動口スイッチ66に対応するフラグ,及び第二始動電動役物17に設けられた第二始動電動役物スイッチ67に対応するフラグが共に「OFF」となっており,遊技球が入賞していないと判断された場合には(S25:NO),そのままS31(図10参照)の判断へ移行する。第二始動口16及び第二始動電動役物17のいずれかに遊技球が入賞していると判断された場合には(S25:YES),第二特別図柄作動保留球数記憶エリア5208の値が「4」であるか否かの判断が行われる(S26)。「4」である場合には(S26:YES),この遊技球についての乱数は記憶できないので,そのままS31の判断へ移行する。
【0067】
第二特別図柄作動保留球数記憶エリア5208の値が「4」でない場合には(S26:NO),第二特別図柄作動保留球数記憶エリア5208の値に「1」が加算される(S27)。そして,第二大当たり関係情報記憶エリア5207の記憶エリアに各種乱数が記憶されて(S28),S31の判断へ移行する。」

(カ)「【0073】
次いで,変動パターンを決定する処理,及び第一特別図柄を決定する処理が行われる。まず,第一大当たり判定の結果が「大当たり」であるか否かが判断される(S50)。「大当たり」であれば(S50:YES),当たり変動パターン決定処理(S51)において,第一大当たりを示す第一特別図柄の変動パターンが決定されると共に,決定された変動パターンをサブ統合基板58に指示する変動パターン指定コマンドがコマンド関係記憶エリア5209に記憶される。ここで,変動パターンを決定する処理は,第一大当たり関係情報記憶エリア5205(図5参照)の第一変動パターン決定乱数欄に記憶されている値により,テーブルが参照されて行われる。尚,サブ統合基板58では,変動パターン指定コマンドの受信を契機として,表示画面28内のデモ図柄及び第一特別図柄表示部25の変動が開始される。
・・・
【0075】
また,第二大当たり判定でも,第一大当たり判定と同様の流れで各種処理が行われる。・・・」

(キ)「【0088】
次に,遊技状態移行処理について,図13を参照して説明する。遊技状態移行処理では,第一大入賞口18を開放させる第一大当たり遊技を実行させるためのフラグの制御と,第二大入賞口19を開放させる第二大当たり遊技を実行するためのフラグの制御と,時短状態及び確率変動状態を終了させる制御とが行われる。」

(ク)「【0093】
以上説明したように,遊技球が始動口へ入賞すると(S21:YES,又はS25:YES),各種乱数が取得され(S24,S28),取得された乱数に基づいて第一大当たり判定及び第二大当たり判定が行われる(S48,S49,S64,S65)。この大当たり判定は,第一大当たり判定よりも第二大当たり判定を優先して行われ(S41,S42),判定の結果が大当たりであれば,大当たり種別とその時点での遊技状態とに応じて大当たり遊技終了後の遊技状態が決定される(図12参照)。そして,時短状態中に大当たりと判定された場合には,大当たり種別に関わらず,大当たり遊技終了後に必ず時短状態が生起されるため,大当たり遊技と時短状態とが交互に生起されることとなり,多数の遊技球が払い出される。また,非確率変動時短状態は,大当たり判定によって50回連続して「はずれ」と判定されると終了し,確率変動時短状態は,連続して10000回「はずれ」と判定されると終了する。時短状態が終了すると,遊技者は,遊技球の発射目標を遊技盤2の右側から左側へ変更しなければ,大当たり判定が行われる頻度が低下して不利益を被ることとなる。
【0094】
次に,サブ統合基板58における処理について,図14乃至図17を参照して説明する。図14は,サブ統合基板58のRAM582の記憶エリアを示す概念図であり,図15は,サブ統合基板58におけるサブ統合基板処理のフローチャートである。また,図16は,サブ統合基板処理の中で行われる変動演出開始処理のサブルーチンのフローチャートであり,図17は,適正強度画像表示部101が形成されている表示画面28の一例を示す図である。サブ統合基板処理では,主基板41から送信されるコマンドに従って,表示画面28やスピーカ48,特別図柄表示部25,26等を制御する処理が行われる。すなわち,大当たり判定の結果を示すデモ図柄の変動演出を制御したり,大当たり遊技中の演出を制御したりする処理が行われる。特に,時短状態終了後,5回の大当たり判定の結果が表示されるまでの間,デモ図柄の変動開始から5秒間,遊技球の適正な発射強度を示す画像である適正強度画像を表示画面28に表示する処理が行われる。」

(ケ)「【0107】
次に,本実施の形態のパチンコ機1における強度表示画像の表示態様及びその効果について,図18を参照して説明する。図18は,時短状態終了後に表示画面28に表示される画像の表示態様の一例を時間経過に応じて示した説明図である。
【0108】
図18に示す例では,非確率変動時短状態中に大当たり判定の回数が50回に到達し,遊技状態が非確率変動非時短状態(通常状態)へ移行する。すると,51回目の大当たり判定の結果を示すデモ図柄の変動演出が開始されると同時に,表示画面28内に適正強度画像表示部101が形成され,「右打ちを終了してください」のメッセージが表示される(図17参照)。この適正強度画像の表示は最大で5秒間行われるが,図18に示す時短状態終了後1回目の変動演出は,変動開始から確定表示までの時間が4秒となっている。この場合,次のデモ図柄の変動が開始される前に適正強度画像の表示が終了する。従って,適正強度画像の表示をデモ図柄の変動に同期させることができ,違和感を与えることなく適正発射強度を遊技者に報知することができる。尚,変動演出の時間が5秒未満である場合には,本実施の形態のように,デモ図柄の確定表示と共に適正強度画像の表示を終了させることが望ましい。これにより,確定表示されてから次の変動が開始されるまでの間(停止表示中)に,確定表示されたデモ図柄の組み合わせを遊技者に把握させることができる。
【0109】
次いで,時短状態終了後2回目,及び3回目のデモ図柄の変動演出が行われるが,ここでも,デモ図柄の変動開始と同時に適正強度画像が表示される。2回目及び3回目の変動演出の時間は,共に5秒よりも長いため,デモ図柄が確定表示される前に適正強度画像の表示は終了する。よって,遊技者は,適正発射強度を認識しつつ,確定表示されたデモ図柄の組み合わせを容易に把握することができる。
【0110】
次いで,4回目のデモ図柄の変動演出が行われるが,4回目の変動演出ではリーチ演出が行われる。このリーチ演出とは,3つのデモ図柄のうちの2つが同一となって行われる演出であり,デモ図柄の変動が開始してから,2つのデモ図柄が停止した後で実行される。このリーチ演出を経て3つのデモ図柄が全て同一となると,遊技者に有利な大当たり遊技が実行されるため,遊技者はリーチ演出に強い興味を抱くこととなる。ここで,本実施の形態によると,適正強度画像の表示はデモ図柄の変動開始から5秒後に終了するため,適正強度画像がリーチ演出の妨げとなることがない。従って,リーチ演出に対する遊技者の興趣を損なうことなく,適正発射強度を認識させることができる。そして,5回目のデモ図柄の変動演出中にも適正強度画像が表示され,6回目以降は適正強度画像を伴わない通常の変動演出が行われることとなる。
【0111】
以上説明したように,本実施の形態のパチンコ機1によると,時短状態から通常状態へ遊技状態が移行し,遊技球の適正発射強度が変化すると,デモ図柄の変動演出が5回行われる間,デモ図柄の変動開始から最大で5秒間,「右打ちを終了して下さい」というメッセージである適正強度画像を表示させることができる。従って,適正強度画像を必要以上に表示させて遊技者に煩わしさを感じさせることなく,また,リーチ演出等の他の演出を妨げることなく,遊技者が適正発射強度の変化に気付かないまま遊技を行う虞を低下させることができる。ここで,大当たり遊技終了後に適正発射強度が変化する場合には,大当たり遊技の最後に適正強度画像を表示させることができるが,時短状態終了時には概ね特別図柄作動保留球が記憶されており,すぐに次のデモ図柄の変動演出を実行しなければならない。しかし,本発明によると,適正発射強度が変更された後にすぐにデモ図柄の変動が開始される場合であっても,デモ図柄の変動演出中に効率よく適正発射強度を遊技者に報知することができる。また,通常状態中のデモ図柄の変動演出の平均時間は,時短状態中の変動演出の平均時間よりも長いため,適正強度画像を表示するための十分な時間を確保することができる。
・・・
【0114】
尚,本発明は,以上詳述した実施の形態に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能であることは勿論である。まず,本実施の形態では,遊技状態が時短状態から通常状態へ移行した後のデモ図柄の変動演出中に,適正強度画像を表示させている。しかし,適正強度画像を表示させるタイミングはこれに限られず,遊技機の特性に合わせて適宜変更が可能である。例えば,本実施の形態では,遊技盤2の右側を発射目標とする時短状態中であってもまれに第一始動口15へ遊技球が入賞し,第一大入賞口18が開放する第一大当たり遊技が実行される場合がある。この場合,第一大当たり遊技中には第一大入賞口18を遊技球の発射目標とし,大当たり遊技が終了すると,遊技盤2の右側に発射目標を変更しなければならない。このように,大当たり遊技の終了に伴って遊技球の適正発射強度が変化する場合にも,本発明を適用してもよい。この場合,「右打ちしてください」等の適正強度画像を新たに用意し,大当たり遊技が終了した際に,この適正強度画像を表示させるための強度表示フラグを「ON」とする処理を行えばよい。
・・・
【0118】
また,「右打ちを終了して下さい」という適正強度画像の表示内容も変更が可能であり,「左側を狙って下さい」等の他のメッセージに変更してもよいし,遊技球の目標とする発射方向を矢印等で遊技者に報知してもよい。また,適切な発射強度となる発射ハンドル7の角度をボリューム表示等を用いて遊技者に報知してもよい。また,発射強度と同様に,強度通知音声の態様も適宜変更でき,音声を発生させずに適正強度画像のみを用いて適正発射強度を遊技者に通知することも可能である。さらに,適正強度画像の表示に同期させて照明装置35や電飾ランプ等を発光させてもよい。」

(コ)図18には,時短状態終了後の4回目のデモ図柄の変動中において,「リーチ演出中は強度表示されない(リーチ演出の妨げとならない)」と記載されている。

(サ)上記(ア)の段落【0019】には,遊技盤2の前面には遊技領域4が設けられ,この遊技領域4の略中央には,図柄表示装置8が配設され,図柄表示装置8の下方には第一始動口15が設けられる点,段落【0020】には,第一始動口15の下方には開閉部材を備えた第二始動電動役物17が設けられる点が記載されているから,刊行物には,遊技盤2の遊技領域4の略中央には図柄表示装置8が,図柄表示装置8の下方には第一始動口15及び第二始動電動役物17が設けられることが記載されている。

(シ)上記(ア)の段落【0018】には,発射機から発射された遊技球が流下する遊技盤2が設けられる点,上記(イ)の段落【0026】には,遊技盤2の右側を流下した遊技球,及び左側を流下した遊技球,とが記載されており,図2からも明らかなように,遊技盤2の右側は図柄表示装置8の右側であり,遊技盤2の左側は図柄表示装置8の左側であるから,刊行物には,発射機から発射された遊技球が図柄表示装置8の右側か左側を流下するように構成されることが記載されている。

(ス)上記(イ)の段落【0023】には,図柄表示装置8は表示画面28を備え,デモ図柄の変動演出が行われる点,段落【0025】には,第一始動口15へ遊技球が入賞すると,第一大当たり判定が行われる点,段落【0026】には,第二始動電動役物17へ遊技球が入賞すると,第二大当たり判定が行われる点,上記(オ)の段落【0063】?【0065】には,第一始動口15に設けられた第一始動口スイッチ65が遊技球の入賞を検出した場合には,その遊技球についての乱数が取得され,第一大当たり関係情報記憶エリア5205に記憶され,第一大当たり関係情報記憶エリア5205の第一変動パターン決定乱数欄には第一変動パターン決定カウンタの値が記憶される点,段落【0066】?【0067】には,第二始動電動役物17に遊技球が入賞していると判断された場合には,第二大当たり関係情報記憶エリア5207の記憶エリアに各種乱数が記憶される点,上記(カ)の段落【0073】には,変動パターンを決定する処理は,第一大当たり関係情報記憶エリア5205の第一変動パターン決定乱数欄に記憶されている値により,テーブルが参照されて行われる点,決定された変動パターンをサブ統合基板58に指示する変動パターン指定コマンドがコマンド関係記憶エリア5209に記憶される点,サブ統合基板58では,変動パターン指定コマンドの受信を契機として,表示画面28内のデモ図柄の変動が開始される点,段落【0075】には,第二大当たり判定でも,第一大当たり判定と同様の流れで各種処理が行われる点が記載されているから,刊行物には,第一始動口15または第二始動電動役物17への遊技球の入賞が検出された場合,図柄表示装置8の表示画面28での変動パターンに応じたデモ図柄の変動演出を制御するサブ統合基板58が記載されているといえる。

(セ)上記(エ)の段落【0048】には,主基板41における遊技状態移行処理,上記(キ)の段落【0088】には,遊技状態移行処理では,第一大当たり遊技を実行させるためのフラグの制御と,第二大当たり遊技を実行するためのフラグの制御とが行われる点,上記(ケ)の段落【0110】には,デモ図柄の変動が開始してから,3つのデモ図柄が全て同一となると,遊技者に有利な大当たり遊技が実行される点が記載されているから,刊行物には,デモ図柄の変動が開始してから3つのデモ図柄が全て同一となると,遊技者に有利な大当たり遊技を実行させるためのフラグを制御する遊技状態移行処理を行う主基板41が記載されているといえる。

(ソ)上記(イ)の段落【0025】には,非時短状態中は,遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる点,上記(ケ)の段落【0111】には,時短状態から通常状態へ遊技状態が移行すると,「右打ちを終了して下さい」という適正強度画像を表示させる点,上記(ケ)の段落【0118】には,「右打ちを終了して下さい」という適正強度画像の表示内容も変更が可能であり,「左側を狙って下さい」に変更してもよい点が記載されており,通常状態は非時短状態であるから,刊行物には,遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる通常状態中に「左側を狙って下さい」という適正強度画像を表示させることが記載されている。
また,上記(イ)の段落【0026】には,時短状態中は,遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる点,上記(ウ)の段落【0040】には,非確率変動時短状態は,第一大当たり判定及び第二大当たり判定の判定回数の和が50回に達すると終了し,遊技状態は通常状態へ移行し,確率変動時短状態では,大当たり判定回数の和が10000回に達すると,遊技状態は通常状態へ移行する点,上記(ク)の段落【0093】には,時短状態中に大当たりと判定された場合には,大当たり遊技終了後に必ず時短状態が生起される点,上記(ケ)の段落【0114】には,時短状態中に第一大当たり遊技が実行される場合であって,第一大当たり遊技中には第一大入賞口18を遊技球の発射目標とし,大当たり遊技が終了すると,遊技盤2の右側に発射目標を変更しなければならない場合に,「右打ちしてください」の適正強度画像を表示させる点が記載されていることから,刊行物には,遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる,大当たり遊技の終了後に生起され,大当たり判定回数の和が所定回数に達すると終了する時短状態中に「右打ちしてください」という適正強度画像を表示させることが記載されているといえる。
以上のことと,上記(ク)の段落【0094】には,サブ統合基板58における処理として適正強度画像を表示画面28に表示する処理が行われる点が記載されているから,刊行物には,遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる通常状態中に「左側を狙って下さい」という適正強度画像を,遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる,大当たり遊技の終了後に生起され,大当たり判定回数の和が所定回数に達すると終了する時短状態中に「右打ちしてください」という適正強度画像を,表示画面28に表示可能なサブ統合基板58が記載されているといえる。

(タ)上記(ソ)で検討したように,刊行物には,遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる時短状態中に「右打ちしてください」という適正強度画像を表示させることが記載されているといえ,また,時短状態中とは時短状態の開始で移行するといえるから,刊行物には,時短状態の開始で「右打ちしてください」という適正強度画像を表示させることが記載されているといえる。

(チ)上記(イ)の段落【0028】には,時短状態は終了し通常状態へ移行し,通常状態へ移行した後,デモ図柄の変動開始から適正強度画像を表示すること,上記(ケ)の段落【0111】には,時短状態から通常状態へ遊技状態が移行すると,「右打ちを終了して下さい」という適正強度画像を表示させる点,段落【0118】には,「右打ちを終了して下さい」という適正強度画像の表示内容も変更が可能であり,「左側を狙って下さい」に変更してもよい点が記載されているから,刊行物には,時短状態が終了し通常状態の開始で「左側を狙って下さい」という適正強度画像を表示させることが記載されているといえる。

(ツ)上記(ク)の段落【0094】には,適正強度画像を表示画面28に表示する点,上記(ケ)の段落【0109】?【0110】には,リーチ演出とは,3つのデモ図柄のうちの2つが同一となって行われる演出である点,時短状態終了後の4回目の変動演出でリーチ演出が行われる場合に,適正強度画像の表示は適正強度画像がリーチ演出の妨げとなることがない点,上記(コ)の図18には,時短状態終了後のデモ図柄の変動中において,リーチ演出中は強度表示されない(リーチ演出の妨げとならない)点が記載されており,上記(チ)で検討したとおり,時短状態終了後の通常状態の開始で「左側を狙って下さい」という適正強度画像を表示させることから,刊行物には,時短状態終了後の通常状態でのデモ図柄の変動中におけるリーチ演出中は,「左側を狙って下さい」という適正強度画像が表示画面28内に表示されないことが記載されているといえる。

したがって,上記(ア)?(ケ)の記載事項及び上記(コ)?(ツ)の認定事項を総合すると,刊行物には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「遊技盤2の遊技領域4の略中央には図柄表示装置8が,図柄表示装置8の下方には第一始動口15及び第二始動電動役物17が設けられ,
発射機から発射された遊技球が図柄表示装置8の右側か左側を流下するように構成され,
第一始動口15または第二始動電動役物17への遊技球の入賞が検出された場合,図柄表示装置8の表示画面28での変動パターンに応じたデモ図柄の変動演出を制御するサブ統合基板58と,
デモ図柄の変動が開始してから3つのデモ図柄が全て同一となると,遊技者に有利な大当たり遊技を実行させるためのフラグを制御する遊技状態移行処理を行う主基板41と,
遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる通常状態中に「左側を狙って下さい」という適正強度画像を,遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる,大当たり遊技の終了後に生起され,大当たり判定回数の和が所定回数に達すると終了する時短状態中に「右打ちしてください」という適正強度画像を,表示画面28に表示可能なサブ統合基板58と,を備え,
時短状態の開始で「右打ちしてください」という適正強度画像を表示させ,
時短状態が終了し通常状態の開始で「左側を狙って下さい」という適正強度画像を表示させ,
時短状態終了後の通常状態でのデモ図柄の変動中におけるリーチ演出中は,「左側を狙って下さい」という適正強度画像が表示画面28内に表示されない,
パチンコ機1。」

5.対比
本願発明と引用発明とを比較する。

(a)引用発明の「遊技領域4」は,本願発明の「遊技領域」に相当する。
また,引用発明の「図柄表示装置8」は,表示画面28だけでなく,各種ランプ,LED等を備えた装置である(段落【0019】)から,本願発明「センターケース」に相当するといえる。
さらに,引用発明の「第一始動口15及び第二始動電動役物17」は,第一始動口15に入賞した遊技球を検出する第一始動口スイッチ65及び第二始動電動役物17に入賞した遊技球を検出する第二始動電動役物スイッチ67を含むものである(段落【0063】,【0066】)から,本願発明の「図柄始動手段を含む複数の遊技球検出手段」に相当する。
そして,引用発明の「図柄表示装置8の下方」に設けられる「第一始動口15及び第二始動電動役物17」は,図2からも図柄表示装置8以外の部分に配置されていることは明らかであるから,引用発明の「図柄表示装置8の下方」は本願発明「センターケース」の「それ以外の部分」に含まれる。
したがって,引用発明の「遊技盤2の遊技領域4の略中央には図柄表示装置8が,図柄表示装置8の下方には第一始動口15及び第二始動電動役物17が設けられ」ることは,本願発明「遊技領域の略中央にセンターケースが,それ以外の部分に図柄始動手段を含む複数の遊技球検出手段が夫々配置され」ることに相当する。

(b)引用発明の「発射機」は,本願発明の「発射手段」に相当する。
また,引用発明の「発射された遊技球」は,図柄表示装置8の右側か左側に流下する場合には,流下する前に遊技領域の上部に打ち込まれていることは自明であるから,「遊技領域の上部側に打ち込まれた遊技球」に相当する。
そして,引用発明の「図柄表示装置8の右側か左側」は,遊技球が流下することが可能な経路であるといえるから,本願発明の「センターケースの左側の左流下経路と右側の右流下経路」に相当する。
したがって,引用発明の「発射機から発射された遊技球が図柄表示装置8の右側か左側を流下するように構成され」ることは,本願発明の「発射手段によって前記遊技領域の上部側に打ち込まれた遊技球は前記センターケースの左側の左流下経路と右側の右流下経路との何れかを流下するように構成され」ることに相当する。

(c)引用発明の「表示画面28」,「変動パターン」,「デモ図柄」及び「サブ統合基板58」は,それぞれ本願発明の「画像表示手段」,「変動パターン」,「演出図柄」及び「演出図柄表示制御手段」に相当する。
これらのことから,引用発明の「第一始動口15または第二始動電動役物17への遊技球の入賞が検出された場合,図柄表示装置8の表示画面28での変動パターンに応じたデモ図柄の変動演出を制御するサブ統合基板58」は,変動パターンが複数種類あることは自明であるから,本願発明の「前記図柄始動手段が遊技球を検出することに基づいて,所定の画像表示手段で演出図柄を複数種類の変動パターンの何れかに従って変動表示する演出図柄表示制御手段」に相当する。

(d)引用発明の「デモ図柄の変動が開始してから3つのデモ図柄が全て同一となる」場合は,デモ図柄が変動後に3つ全てが同一となるという態様で停止したことに他ならないから,本願発明の「演出図柄が変動後に所定態様で停止した場合」に相当する。
また,引用発明の「遊技者に有利な大当たり遊技」が実行される状態は,本願発明の「特別利益状態」に相当する。さらに,引用発明の「主基板41」は,本願発明の「特別利益状態発生手段」を備えていることは,明らかである。
そして,引用発明の「遊技者に有利な大当たり遊技を実行させるためのフラグを制御する遊技状態移行処理」は,フラグが制御されることで大当たり遊技が実行される状態が発生する処理であるから,本願発明の「特別利益状態を発生させる」処理に相当するといえる。
したがって,引用発明の「デモ図柄の変動が開始してから3つのデモ図柄が全て同一となると,遊技者に有利な大当たり遊技を実行させるためのフラグを制御する遊技状態移行処理を行う主基板41」は,本願発明の「前記演出図柄が変動後に所定態様で停止した場合に特別利益状態を発生させる特別利益状態発生手段」を備えている。

(e)引用発明の「遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる通常状態中」及び「遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる時短状態中」は,本願発明の「前記左流下経路と前記右流下経路との何れかを狙って遊技球を発射することが遊技者に有利となる所定遊技状態の場合」に相当する。
また,引用発明の「「左側を狙って下さい」という適正強度画像」及び「「右打ちしてください」という適正強度画像」は,本願発明の「前記左流下経路と前記右流下経路との何れを狙うのが遊技者にとって有利かに関する発射誘導情報」に相当する。
さらに,引用発明の「サブ統合基板58」は,本願発明の「発射誘導情報制御手段」を備えていることは明らかである。
したがって,引用発明の「遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる非時短状態中に「左側を狙って下さい」という適正強度画像を,遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる時短状態中に「右打ちしてください」という適正強度画像を,表示画面28に表示可能なサブ統合基板58」は,本願発明の「前記左流下経路と前記右流下経路との何れかを狙って遊技球を発射することが遊技者に有利となる所定遊技状態の場合に,前記左流下経路と前記右流下経路との何れを狙うのが遊技者にとって有利かに関する発射誘導情報を前記画像表示手段に表示させる発射誘導情報制御手段」を備えている。

(f)引用発明の「遊技盤2の左側」及び「遊技盤2の右側」は,遊技球が流下することが可能な経路であるといえるから,それぞれ本願発明の「前記左流下経路と前記右流下経路のうち一方側流下通路」及び「前記左流下経路と前記右流下経路のうち他方側流下通路」に相当する。
また,引用発明の「遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる通常状態」は,本願発明の「前記左流下経路と前記右流下経路のうち一方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な通常遊技状態」に相当する。
そして,上記(d)で検討したとおり,引用発明の「遊技者に有利な大当たり遊技」が実行される状態は,本願発明の「特別利益状態」に相当し,引用発明の「遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる,大当たり遊技の終了後に生起され,大当たり判定回数の和が所定回数に達すると終了する時短状態」は,本願発明の「前記特別利益状態の終了後の所定期間に発生して前記他方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な特別遊技状態」に相当する。
したがって,引用発明の適正強度画像を表示させる状態として「遊技盤2の左側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者にとって有利となる通常状態」と「遊技盤2の右側を狙って遊技球を発射させた方が遊技者に有利となる,大当たり遊技の終了後に生起され,大当たり判定回数の和が所定回数に達すると終了する時短状態」とがあることは,本願発明と,「前記所定遊技状態には,前記左流下経路と前記右流下経路のうち一方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な通常遊技状態と,」「前記特別利益状態の終了後の所定期間に発生して前記他方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な特別遊技状態とがあ」る点で共通する。

(g)引用発明の「時短状態の開始で「右打ちしてください」という適正強度画像を表示させ」ることは,本願発明の「前記特別遊技状態の開始で前記他方側流下経路へと誘導する第2発射誘導情報」を表示させることに相当する。
引用発明の「時短状態が終了し通常状態の開始で「左側を狙って下さい」という適正強度画像を表示させ」ることは,本願発明の「前記特別遊技状態の終了後の前記通常遊技状態の開始で前記一方側流下経路へと誘導する第3発射誘導情報」を表示させることに相当する。
したがって,引用発明のサブ統合基板58が表示画面28に「時短状態の開始で「右打ちしてください」という適正強度画像を表示させ,時短状態が終了し通常状態の開始で「左側を狙って下さい」という適正強度画像を表示させ」ることは,本願発明と,「前記発射誘導情報制御手段は,」「前記特別遊技状態の開始で前記他方側流下経路へと誘導する第2発射誘導情報を,前記特別遊技状態の終了後の前記通常遊技状態の開始で前記一方側流下経路へと誘導する第3発射誘導情報を夫々前記画像表示手段に表示させ」る点で共通する。

(h)引用発明の「デモ図柄の変動中におけるリーチ演出中」は,デモ図柄の変動が変動パターンに応じて行われることから,本願発明の「演出図柄が特定の変動パターンで変動する特定演出中」に相当する。
したがって,引用発明の「デモ図柄の変動中におけるリーチ演出中は,「左側を狙って下さい」という適正強度画像が表示画面28内に表示されない」構成は,本願発明と,「前記演出図柄が特定の変動パターンで変動する特定演出中には,前記画像表示手段に」「前記第3発射誘導情報を表示させない」点で共通する。

(i)引用発明の「パチンコ機1」は,本願発明の「弾球遊技機」に相当する。

上記(a)?(i)により,本願発明と引用発明とは,
「遊技領域の略中央にセンターケースが,それ以外の部分に図柄始動手段を含む複数の遊技球検出手段が夫々配置され,
発射手段によって前記遊技領域の上部側に打ち込まれた遊技球は前記センターケースの左側の左流下経路と右側の右流下経路との何れかを流下するように構成され,
前記図柄始動手段が遊技球を検出することに基づいて,所定の画像表示手段で演出図柄を複数種類の変動パターンの何れかに従って変動表示する演出図柄表示制御手段と,
前記演出図柄が変動後に所定態様で停止した場合に特別利益状態を発生させる特別利益状態発生手段と,
前記左流下経路と前記右流下経路との何れかを狙って遊技球を発射することが遊技者に有利となる所定遊技状態の場合に,前記左流下経路と前記右流下経路との何れを狙うのが遊技者にとって有利かに関する発射誘導情報を前記画像表示手段に表示させる発射誘導情報制御手段とを備え,
前記所定遊技状態には,
前記左流下経路と前記右流下経路のうち一方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な通常遊技状態と,
前記特別利益状態の終了後の所定期間に発生して前記他方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な特別遊技状態とがあり,
前記発射誘導情報制御手段は,
前記特別遊技状態の開始で前記他方側流下経路へと誘導する第2発射誘導情報を,
前記特別遊技状態の終了後の前記通常遊技状態の開始で前記一方側流下経路へと誘導する第3発射誘導情報を夫々前記画像表示手段に表示させ,
前記演出図柄が特定の変動パターンで変動する特定演出中には,前記画像表示手段に前記第3発射誘導情報を表示させない
ことを特徴とする弾球遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
発射誘導情報制御手段において,所定遊技状態で表示させる発射誘導情報として,本願発明は「前記左流下経路と前記右流下経路のうち他方側流下通路を狙って遊技球を発射する方が有利な前記特別利益状態」「の開始で」表示させる「前記他方側流下経路へと誘導する第1発射誘導情報」を特定しているのに対し,引用発明はそのような特定がされていない点。

[相違点2]
演出図柄が特定の変動パターンで変動する特定演出中に,本願発明は画像表示手段に「第2発射誘導情報」を表示させないのに対し,引用発明はそのような発射誘導情報を特定していない点。

6.判断
上記相違点について,検討する。

[相違点1について]
本願の出願遡及日前の遊技機の分野において,大当り遊技が実行される状態の開始で,表示画面に右打ちを推奨する画像を表示する構成は周知技術(特開2009-178432号公報の段落【0021】,【0039】,図3には,大当り遊技状態へ移行されると,液晶ディスプレイの表示画面に,「右打ちして下さい!」旨の装飾図柄による視覚的な報知が行われることが記載されている。特開2003-71010号公報の段落【0056】,【0058】,図23には,大当り権利発生中における遊技者にとって有利な遊技法(右打ち)を示唆する画像を表示することが記載されている。)である。
そして,引用発明も周知技術も共に,所定の遊技状態の開始で表示画面に右打ちを推奨する画像を表示する点で共通しているから,引用発明の時短状態の開始で「右打ちしてください」という適正強度画像を表示させる構成に,周知技術に基づき,大当り遊技が実行される状態(「特別利益状態」)の開始においても右打ちを推奨する画像を表示する構成を付加し,前記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2について]
引用発明の「時短状態終了後の通常状態でのデモ図柄の変動中におけるリーチ演出中は,「左側を狙って下さい」という適正強度画像が表示画面28内に表示されない」構成は,刊行物の段落【0110】に記載されるように,リーチ演出に対する遊技者の興趣を損なわせないために,リーチ演出の妨げとならないようにする構成である。
そうすると,時短状態終了後の通常状態以外の遊技状態においても,リーチ演出中に適正強度画像が表示されて,リーチ演出に対する遊技者の興趣が損なわれないように,上記構成と同様に,適正強度画像を表示されないようにすることは,当業者が適宜実施できることである。また,リーチ演出において,例えば発展型であると,遊技者は遊技球の発射を止めて,リーチ終了まで待つことは,遊技状態に関わらず一般的なことであり,適正強度画像を表示する必要性がない。
したがって,引用発明における時短状態の開始での「右打ちしてください」という適正強度画像(「第2発射誘導情報」)についても,時短状態が終了し通常状態の開始での「左側を狙って下さい」という適正強度画像と同様に,演出図柄が特定の変動パターンで変動する特定演出中(リーチ演出中)に表示させないようにし,前記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,引用発明及び刊行物に記載された事項により,当業者が容易に想到し得たものである。

そして,本願発明の作用効果は,引用発明,刊行物に記載された事項及び周知技術からみて格別なものではない。
よって,本願発明は,引用発明,刊行物に記載された事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
したがって,本願は拒絶すべきである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-23 
結審通知日 2017-02-28 
審決日 2017-03-13 
出願番号 特願2014-143354(P2014-143354)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 小島 寛史
加舎 理紅子
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  

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