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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1327559
審判番号 不服2016-6823  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-09 
確定日 2017-04-27 
事件の表示 特願2014-528244「ユーザ端末、プロセッサ、及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日国際公開、WO2014/021463〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2013年(平成25年)8月2日(優先権主張 2012年(平成24年)8月3日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年10月29日付けで拒絶理由が通知され,同年12月28日付けで意見書とともに手続補正書が提出され,平成28年2月1日付けで拒絶査定され,同年5月9日に拒絶査定不服審判の請求がされるのと同時に手続補正されたものである。


第2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年5月9日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
平成28年5月9日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,特許請求の範囲について,以下の[本件補正前]のとおりであったのを,[本件補正後]のように補正することを含むものである。

[本件補正前]
【請求項1】
Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末であって、
GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機と、
ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェイスと、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保つ制御部と、を備え、
前記制御部は、前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにした場合には、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続することを特徴とするユーザ端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記GNSS位置情報を利用可能にするよう前記ネットワークから要求された場合において、前記Immediate MDT測定処理用途以外に前記GNSS位置情報が必要とされていなくても、前記GNSS受信機がオン状態である間は、前記GNSS受信機の能力に応じたGNSS測定を継続することを特徴とする請求項1に記載のユーザ端末。
【請求項3】
前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報は、前記GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報である請求項1又は2に記載のユーザ端末。
【請求項4】
GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機と、ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェイスと、を含み、Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末を制御するプロセッサであって、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保ち、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにした場合には、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続することを特徴とするプロセッサ。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記GNSS位置情報を利用可能にするよう前記ネットワークから要求された場合において、前記Immediate MDT測定処理用途以外に前記GNSS位置情報が必要とされていなくても、前記GNSS受信機がオン状態である間は、前記GNSS受信機の能力に応じたGNSS測定を継続することを特徴とする請求項4に記載のプロセッサ。
【請求項6】
GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機と、ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェイスと、を含み、Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末において用いられる方法であって、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保つステップと、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにした場合には、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続するステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
前記GNSS位置情報を利用可能にするよう前記ネットワークから要求された場合において、前記Immediate MDT測定処理用途以外に前記GNSS位置情報が必要とされていなくても、前記GNSS受信機がオン状態である間は、前記GNSS受信機の能力に応じたGNSS測定を継続するステップをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の方法。

[本件補正後]
【請求項1】
Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末であって、
GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機と、
ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェイスと、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保つ制御部と、を備え、
前記制御部は、前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにすると、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続し、
前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報は、前記GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報であることを特徴とするユーザ端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記GNSS位置情報を利用可能にするよう前記ネットワークから要求された場合において、前記Immediate MDT測定処理用途以外に前記GNSS位置情報が必要とされていなくても、前記GNSS受信機がオン状態である間は、前記GNSS受信機の能力に応じたGNSS測定を継続することを特徴とする請求項1に記載のユーザ端末。
【請求項3】
GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機と、ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェイスと、を含み、Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末を制御するプロセッサであって、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保ち、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにすると、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続し、
前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報は、前記GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報であることを特徴とするプロセッサ。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記GNSS位置情報を利用可能にするよう前記ネットワークから要求された場合において、前記Immediate MDT測定処理用途以外に前記GNSS位置情報が必要とされていなくても、前記GNSS受信機がオン状態である間は、前記GNSS受信機の能力に応じたGNSS測定を継続することを特徴とする請求項3に記載のプロセッサ。
【請求項5】
GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機と、ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェイスと、を含み、Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末において用いられる方法であって、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保つステップと、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにすると、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続するステップと、を有し、
前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報は、前記GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報であることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記GNSS位置情報を利用可能にするよう前記ネットワークから要求された場合において、前記Immediate MDT測定処理用途以外に前記GNSS位置情報が必要とされていなくても、前記GNSS受信機がオン状態である間は、前記GNSS受信機の能力に応じたGNSS測定を継続するステップをさらに有することを特徴とする請求項5に記載の方法。

2.本願補正発明
本願の請求項1に係る発明についてみるに,本件補正前における「前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報」に対し,本件補正後においては,更に「前記GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報である」との限定が附されたものであると解される。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)(以下「独立特許要件」という。)について検討する。
ここで,本件補正後の請求項1の記載を再掲する。

【請求項1】
Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末であって、
GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機と、
ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェイスと、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保つ制御部と、を備え、
前記制御部は、前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにすると、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続し、
前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報は、前記GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報であることを特徴とするユーザ端末。

3.引用文献及び記載事項
原査定の理由では,「引用文献1」として2012年(平成24年)3月20日に公開された「3GPP TSG-RAN WG2#77bis R2-121785」,及び「引用文献2」として2012年(平成24年)5月15日に公開された「3GPP TSG-RAN WG2#78 R2-122787」が引用された。
そして,引用文献1及び引用文献2には,それぞれ次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1) 引用文献1記載事項
ア 記載事項1
1 Introduction
In the previous RAN2#76 meeting, it was agreed to enhance the availability of accurate location information for Immediate MDT and Logged MDT. On-demand positioning mechanism is being considered to be good means that can satisfy the objective of the enhanced availability of accurate information [1]. This paper tries to build out the basic requirements to apply for designing the on-demand positioning mechanism for further works.
(当審訳
1 はじめに
前回のRAN2#76会議では,即時型MDT(Immediate MDT)及び記録型MDT(Logged MDT)のため,利用できる正確な位置情報に拡張することが合意された。オンデマンド測位機構が,拡張された利用できる正確な情報の目的を満たすことができる良い手段であると考えられている[1]。この論文では,さらなる研究のため,オンデマンド測位機構を設計するのに適用する基本的要件を構築することを試みる。)


イ 記載事項2
2.2 Requirements and basic mechanism for on-demand positioning
On-demand positioning for Immediate MDT
In general, there are two possible approaches for on-demand positioning. Figure 1 shows two approaches.

Figure 1(a) shows the one approach where on-demand positioning request is embedded in Immediate MDT configuration. When reporting condition for Immediate MDT (e.g. A2) is met, UE attaches the location information in measurement report. UE may activate the positioning measurements as soon as it receives Immediate MDT configuration including on-demand positioning request. This 'early' activation of positioning measurements will make the location available all the time, but the UE battery consumption will be highly increased.

Figure 1(b) shows another approach where on-demand positioning request is sent towards UE after UE sent measurement report. Since positioning measurements are activated only when there is an explicit request, UE battery can be saved, compared to the approach in Figure1 (a). The drawback of the second approach however is that since location is provided some time after measurement report, the reported location cannot exactly reflect the exact position of the radio measurements included in the measurement report for MDT. Only for low speed UEs, such time lag can be acceptable.

Figure1. Examples of on-demand positioning for Immediate MDT

Proposal 2 RAN2 discuss two approaches shown in Figure 1 for on-demand mechanism.
The use case of on-demand positioning is different for event-based MDT report and for periodicity based MDT report. For Rel-11, we see the benefit of supporting the on-demand positioning for both cases.

Proposal 3 On-demand positioning for Immediate MDT supports both case 1) the UE is requested to report one shot positioning (i.e. single location) and case 2) the UE is requested to report the positioning results of consecutive multiple locations
(当審訳
2.2 オンデマンド測位のための基本機構及び要件
即時型MDTのためのオンデマンド測位
一般に,オンデマンド測位のための2つの可能な取組方(approach)が存在する。図1には2つの取組方が示されている。

図1(a)は1つの取組方を示している,ここで,オンデマンド測位要求が即時型MDT配置(configuration)に埋め込まれている。即時型MDT(例えば,A2)のため,報告条件が満たされた場合,UEは測定報告に位置情報を添付する。UEは,オンデマンド測位要求を含む即時型MDT配置を受信するとすぐに測位測定を有効にする(activate)ことができる。測位測定を「早期に」有効にすることは,いつでもその位置を利用できるようにするが,UEのバッテリー消費量は非常に増加する。

図1(b)は別の取組方を示す,ここで,オンデマンド測位要求がUEに向けて送信されるのは,UEが測定報告を送信した後である。図1(a)の取組方と比較し,測位測定は,明示的な要求がある場合にのみ有効になるため,UEのバッテリーを節約することができる。しかし,測定報告から,ある程度の時間後,位置を提供するので,報告された位置は,MDTの測定報告に含まれる無線測定値の正確な測位地(position)を正確に反映できなことが,第2のアプローチの欠点である。低速UEの場合にのみ,そのようなタイムラグは許容可能である。

図1 即時型MDTのためのオンデマンド測位の例

提案2 RAN2は,オンデマンド機構のため,図1に示した二つの取組方を議論する。

イベントベースのMDTレポートと周期ベースのMDTレポートでは,オンデマンド測位の使用例が異なる。Rel-11の場合,両方のケースでオンデマンド測位をサポートする利点がある。

提案3 即時型MDTのオンデマンド測位は,例1)UEは,1回限りの測位(すなわち,一つの位置)を報告するように要求すること,そして,例2)UEは,連続する複数の位置の測位結果を報告するように要求されることの両方をサポートする。)

ウ 記載事項3
Requirement on user consent
In Rel-10, it was assumed in RAN2 that user consent to MDT is a priori provided to network before configuring the UE with MDT. So far we did not identify any reason to change this principle even with the introduction of on-demand positioning in Rel-11.

Proposal 6 Within the same MDT session, the user consent to MDT is interpreted as the user consent to providing positioning data.

Note that the user may intervene the on-going positioning e.g. by turning off the standalone GPS in the UE. It is our view that the user's intervention should be able to preside over the on-demand request from network. This requires that on-demand positioning for MDT may be suspended by user's intervention or other causes.

Proposal 7 On-demand positioning for MDT can be suspended by some causes e.g. user interruption

On the other hand, even when the positioning becomes (temporarily) unavailable due to e.g. user's intervention (e.g. GPS switched off), it should not be interpreted such that the user consent to MDT or user consent to providing location is revoked. The user consent should remain unchanged irrespective of the availability of positioning at the point in time.

Proposal 8 If positioning that is activated by network is (temporarily) unavailable, it should not change user consent to MDT/providing accurate location.
(当審訳
ユーザ同意に関する要件
Rel-10では,MDTを備えたUEを構成する前に,MDTへのユーザの同意はネットワークに先験的に提供されることがRAN2で想定された。これまでのところ,Rel-11にオンデマンド測位を導入した場合でも,この原則を変更する理由を特定しなかった。

提案6 同じMDTセッション内で,MDTへのユーザ同意は,ポジショニングデータを提供することへのユーザの同意として解釈される。

例えば,UE内のスタンドアロンGPSをオフにすることによって,ユーザは,進行中の測位に介入することができることに注意せよ。ユーザの介入は,ネットワークからのオンデマンド要求を統轄できなければなならないことが我々の見解である。これには,MDTのオンデマンド測位を,ユーザの介入又はその他の原因によって中断することができることが必要である。

提案7 MDTのオンデマンド測位は,いくつかの原因,例えば,ユーザの中断によって中断することができる

一方,例えば,ユーザの介入(例えば,GPSスイッチオフ)に起因し,測位が一時的に利用できなくなっても,MDTへのユーザ同意又は位置を提供することに対するユーザ同意が取り消されるように解釈されるべきではない。ユーザ同意は,その時点で,利用できる測位に関係なく,変更されない。

提案8 ネットワークによって有効にされた測位が(一時的に)利用できない場合,正確な位置を提供することへのユーザ同意/MDTへのユーザ同意を変更するべきではない。)

エ 引用文献1記載発明
上記した引用文献1における記載事項によると,引用文献1には次の発明(以下「引用文献1記載発明」という。)が記載されているといえる。

UEは,オンデマンド測位要求を含む即時型MDT配置を受信するとすぐに測位測定を有効にする(activate)ことができるUEであり,
UE内のスタンドアロンGPSをオフにすることによって,ユーザは,進行中の測位に介入することができ,
MDTのオンデマンド測位を,ユーザの介入又はその他の原因によって中断することができ,
ユーザの介入(GPSスイッチオフ)に起因し,測位が一時的に利用できなくなっても,MDTへのユーザ同意又は位置を提供することに対するユーザ同意が取り消されるように解釈されるべきではなく,ユーザ同意は,その時点で,利用できる測位に関係なく,変更されない
UE。

(2) 引用文献2記載事項
ア 記載事項1
1. Introduction
The necessity of detailed location information associated with MDT measurements is addressed in the Rel-11 MDT WI [1]. Based on the results of the running stage 2[1], RAN2 reached the following agreements:

1. Standalone GNSS is used as the default baseline

2. For immediate MDT the eNB can request the UE to attempt to make GNSS location information available (use of SUPL is not prohibited).

3. For immediate MDT the RNC can already today request the UE to make location information available (not only via GNSS). This functionality can be reused for MDT.

4. eNB may use E-Cell ID mechanism. It would be possible for the eNB to forward the raw E-Cell ID specific measurements to the TCE or to compute the location information in the eNB and to forward that information to the TCE. It is FFS whether we would need a UE capability for RX-TX time difference to use this efficiently.

This contribution provides further details for Requested Location Information from RNC/eNB.
(当審訳
1.はじめに
MDT測定値に関連する詳細な位置情報の必要性は,Rel-11 MDT WI [1]に記載されている。実行ステージ2の結果[1]に基づいて,RAN2は以下の合意に達した。

1.スタンドアロンGNSSがデフォルトのベースラインとして使用される。

2.即時MDTの場合,eNBは,GNSSの位置情報を利用可能にするように試みることをUEに要求することができる(SUPLの使用は禁止されていない)。

3.即時MDTの場合,RNCは,現在,位置情報を利用可能にすることをUEに,既に要求することができる(GNSSだけでなく)。この機能をMDTに再利用できる。

4.eNBは,E-Cell ID機構を使用することができる。eNBは,未処理のE-Cell ID固有の測定値をTCEに転送すること,又はeNB内で位置情報を計算すること,そしてその情報をTCEに転送することができる。これを効率的に使用するために,RX-TX時間差のためのUE能力が必要かどうかは,さらなる検討課題(FFS)である。

この寄稿は,RNC/eNBからの要求された位置情報(Requested Location Information)の詳細を提供する。)

イ 記載事項2
2. Discussion
2.1. UE selection for Requested Location Information

For Requested Location Information we should further consider the UE's responsibility for providing location information (GNSS or E-CID). According to the Rel-11 MDT WID, the motivation to introduce enhanced availability of detailed location information is to avoid MDT measurements that do not have detailed location information available. It was agreed in the previous meeting that the RNC/eNB may request the UE to perform GNSS measurement in order to obtain detailed location information. However, it isn't clear whether this agreement is only applicable to UEs with GNSS already active or whether it also includes UEs that do not have GNSS already turned on. In the former case, the UE will continue to keep GNSS active while the latter case will require that the UE turns on its GNSS receiver.

UE selection for RNC/eNB requests to make GNSS location information available should be carefully planned. A user may decide to turn off the UE's GNSS receiver when the UE's battery condition is low. In some cases the user is even advised to turn off the GNSS whenever possible to save battery power. There could be cases when the UE's battery level is depleted to the point that calls, including emergency calls, cannot be completed successfully. Therefore, UE requested to make GNSS location information available by the RNC/eNB should be restricted to be selected among the positioning system already active in order to provide a good user experience. And RAN2 should consider the desired UE behaviour in case the UE receives the RNC's/eNB's request to perform GNSS measurements when its GNSS receiver was previously turned off. We believe UEs with GNSS initially inactive should be allowed to continue Immediate MDT with only E-CID location information.

If the UE's MDT measurement response comes back with GNSS location information, RNC/eNB will know that the UE already has GNSS turned on. At which point the RNC/eNB may request that the UE continues to perform GNSS measurement. If the report from the UE indicates no GNSS location information the RNC/eNB will have the option to stop the MDT for this UE or at least not mandate that the UE performs MDT with GNSS measurements. This procedure would probably work only for Immediate MDT since the RNC/eNB won't get immediate feedback from the UE for the Logged MDT. Mandates for GNSS location information for Logged MDT will be feasible if the RNC/eNB is able to determine the UE's GNSS status prior to MDT configuration. Since RAN2 has already decided that the Availability of location information will not be requested by the RNC/eNB or sent by the UE, the UE's GNSS status information will not be readily available to the RNC/eNB. Therefore RAN2 should not adopt the Requested Location Information for Logged MDT.

Proposal 1: RNC's/eNB's request for UEs to perform GNSS measurements for MDT purpose should be restricted to UEs with GNSS already active.

Proposal 2: RAN2 should discuss the desired UE behaviour in case the UE receives a request to perform GNSS measurements when its GNSS receiver was previously turned off. It is FFS whether UEs with GNSS initially inactive should be allowed to continue with Immediate MDT using only E-CID location information.

Proposal 3: If the RNC/eNB requests GNSS location measurements from the UEs, UE with GNSS already active should keep the GNSS active during MDT measurements (e.g., at periodical intervals).
Proposal 4: RAN2 should not adopt the Requested Location Information for Logged MDT.
(当審訳
2.検討
2.1.要求された位置情報のためのUE選択
要求された位置情報について,(GNSS又はE-CID)位置情報を提供するため,UEの信頼性を更に考慮する必要がある。Rel-11 MDT WIDによると,拡張された利用できる詳細な位置情報導入しようとする動機は,利用可能な詳細な位置情報がないMDT測定値を避けるためである。前回の会合で,RNC/eNBは,詳細な位置情報を取得するために,GNSS測定を行うことをUEに要求できることに合意した。しかしながら,この合意が既にアクティブなGNSSを持つUEにのみ適用可能かどうか,又は,まだGNSSがオンになっていないUEを含むかどうかは明らかではない。前者の場合,UEはGNSSを有効に保ち続けるが,後者の場合はUEがそのGNSS受信機をオンにすることを必要とする。

GNSS位置情報を利用できるようにするRNC/eNB要求のため,UE選択は注意深く計画されるべきである。ユーザは,UEのバッテリー状態が低い場合,UEのGNSS受信機をオフにすることを決定できる。場合によっては,ユーザは,可能な限りバッテリーの電力を節約するためにGNSSをオフにすることも勧められる。UEのバッテリーレベルが,緊急呼を含む呼が正常に完了することはできないポイントまでなくなる場合がある。このため,RNC/eNBによってGNSS位置情報を利用できるようにすることを要求されたUEは,良好なユーザ経験を提供するために,既に有効な測位システムの中で,選択されるように制限されるべきである。そして,GNSS受信機が前もってオフになっていた場合,RAN2は,UEがGNSS測定を実行するためのRNC/eNBの要求を受信した場合の所望のUEの挙動を考慮する必要がある。最初に非アクティブなGNSSを備えたUEには,E-CID位置情報のみを有する即時型MDTを続行することが許可されるべきと我々は信じている。

UEのMDT測定応答がGNSS位置情報で戻ってきた場合,RNC/eNBは,UEが既にGNSSをオンにしていることを知る。この時点で,RNC/eNBは,UEがGNSS測定を行うことを継続することを要求することができる。UEからの報告がGNSS位置情報を示さない場合,RNC/eNBには,このUEのMDTを停止するか,又は,UEがGNSS測定値を有するMDTを行うことを少なくとも命令しないかのオプションがある。この手順は恐らく即時MDTのために働くだろう,なぜなら,RNC/eNBは,記録型MDTに対してUEからの即時のフィードバックを得ないからである。RNC/eNBがMDT構成の前にUEのGNSS状態を判定できる場合に,記録型MDTのGNSSの位置情報のための命令は実行できる。RAN2は,位置情報の利用可能性は,RNC/eNBによって要求されない,又はUEによって送信されないことを既に決定しているので,UEのGNSS状態情報は,RNC/eNBが容易に利用することができない。したがって,RAN2は,記録型MDTに対して要求された位置情報(Requested Location Information)を採用すべきではない。

提案1: MDT目的のためのGNSS測定を行うUEに対するRNC/eNBの要求は,GNSSが既にアクティブであるUEに限定されるべきである。

提案2: RAN2は,GNSS受信機が前もってオフになっていたときに,UEがGNSS測定を実行する要求を受信した場合の所望のUEの挙動を検討する必要がある。最初に非アクティブであるGNSSを有するUEが,E-CID位置情報のみを使用する即時型MDTを続行することが許可されるべきかどうかは,さらなる検討課題(FFS)である。

提案3: RNC/eNBがUEからGNSS位置測定値を要求する場合,既にアクティブなGNSSを有するUEは,(例えば,定期的な間隔で)MDT測定期間中はGNSSをアクティブに保つべきである。

提案4: RAN2は,記録型MDTに対して要求された位置情報(Requested Location Information)を採用するべきではない。)

ウ 引用文献2記載発明
上記した引用文献2における記載事項によると,引用文献2には次の発明(以下「引用文献2記載発明」という。)が記載されているといえる。

ユーザは,UEのバッテリー状態が低い場合,UEのGNSS受信機をオフにすることを決定でき,場合によっては,ユーザは,可能な限りバッテリーの電力を節約するためにGNSSをオフにすることも勧められ,
GNSS受信機が前もってオフになっていた場合,UEがGNSS測定を実行するためのRNC/eNBの要求を受信した場合の所望のUEの挙動を考慮する必要があり,最初に非アクティブなGNSSを備えたUEには,E-CID位置情報のみを有する即時型MDTを続行することが許可されるべき
UE。

(3) 「E-CID」に関する補説
本願に係る明細書及び引用文献2には,「E-CID」の記載がある。
ここで,「E-CID」について確認のため,3GPPの技術仕様書の記載を摘記することで補説とする。

「E-CID」に関連する事項ついて,3GPPの技術仕様書「TS 36.305 V10.0.0 (2010-12)」及び「TS 36.214 V10.0.0 (2010-12)」では,次のように記されている。

ア TS36.305 V10.0.0 (2010-12)における記載事項

(ア) 8 Positioning methods and Supporting Procedures
8.3 Enhanced cell ID positioning methods
8.3.1 General
In the Cell ID (CID)-based method, the UE position is estimated with the knowledge of the geographical coordinates of its serving eNodeB. Enhanced Cell ID (E-CID) positioning refers to techniques which use additional UE and/or E-UTRAN radio resource related measurements to improve the UE location estimate. For E-UTRAN access, these measurements may include [20, 21]:
UE measurements ([20], [21]):
- Reference signal received power (RSRP);
- Reference Signal Received Quality (RSRQ);
- UE Rx - Tx time difference.
E-UTRAN measurements ([20], [21]):
- eNB Rx - Tx time difference
- Timing Advance (T_(ADV)):
- Type1: T_(ADV) = (eNB Rx - Tx time difference) + (UE Rx - Tx time difference)
- Type2: T_(ADV) = eNB Rx - Tx time difference;
- Angle of Arrival (AoA).

Various techniques exist to use these measurements to estimate the location of the UE. The specific techniques are beyond the scope of this specification.
(当審訳
8 測位方法と支援手順
8.3 拡張されたセルIDの測位方法
8.3.1 一般
セルID(CID)ベースの方法では,そのサービングeNodeBの地理的座標の知識を用いてUE位置が推定される。
拡張されたセルID(Enhanced Cell ID)(E-CID)の測位は,UEの位置推定値を改善するために,追加のUE及び/又はE-UTRAN無線リソース関連測定値を使用する技術に関連する。E-UTRANアクセスの場合,
これらの測定値は次のものを含むことができる:
UE測定値([20],[21]):
- 基準信号受信電力(RSRP)。
- 基準信号受信品質(RSRQ);
- UE Rx - Tx時間差。
E-UTRAN測定値([20],[21]):
- eNB Rx - Tx時間差
- タイミングアドバンス(T_(ADV)):
- ・タイプ1:T_(ADV)=(eNB Rx-Tx時間差)+(UE Rx-Tx時間差)
- タイプ2:T_(ADV)=eNB Rx-Tx時間差;
- 到達角度(AoA)。

UEの場所を推定するためのこれら測定値を使用するため,さまざまな技術が存在する。具体的な手法は,この仕様の範囲を超えている。)

ここで,上記の[20]及び[21]については,「2.References」(「2.参照文献」)に,[20]が「3GPP TS36.214」を意味し,[21]が「3GPP 36.302」を意味することが記されている。

イ TS36.214 V10.0.0 (2010-12)における記載事項

(ア) 5.1.1 Reference Signal Received Power (RSRP)

Reference signal received power (RSRP), is defined as the linear average over the power contributions (in [W]) of the resource elements that carry cell-specific reference signals within the considered measurement frequency bandwidth.
For RSRP determination the cell-specific reference signals R0 according TS 36.211 [3] shall be used. If the UE can reliably detect that R1 is available it may use R1 in addition to R0 to determine RSRP.

The reference point for the RSRP shall be the antenna connector of the UE.

If receiver diversity is in use by the UE, the reported value shall not be lower than the corresponding RSRP of any of the individual diversity branches.
(当審訳
5.1.1 基準信号受信電力(RSRP)

基準信号受信電力(RSRP(は,考慮された測定周波数帯域内でセル固有の基準信号を搬送するリソース要素の電力の貢献([W]単位)に対する線形平均として定義される。
RSRP決定のためには,TS 36.211[3]に従ったセル固有の参照信号R0を使用しなければならない。RSRP決定のためには,TS 36.211[3]に従ったセル固有の参照信号R0を使用しなければならない。UEが,R1は利用できることを確実に検出できる場合,RSRPを決定するためにR0に加えてR1を使用することができる。

RSRPの参照点は,UEのアンテナコネクタでなければならない。

受信機ダイバーシティがUEによって使用されている場合,報告される値は,個々のダイバーシチブランチのどれでも,対応するRSRPより低くてはならない。)

(イ) 5.1.3 Reference Signal Received Quality (RSRQ)

Reference Signal Received Quality (RSRQ) is defined as the ratio N×RSRP/(E-UTRA carrier RSSI), where N is the number of RB's of the E-UTRA carrier RSSI measurement bandwidth. The measurements in the numerator and denominator shall be made over the same set of resource blocks.

E-UTRA Carrier Received Signal Strength Indicator (RSSI), comprises the linear average of the total received power (in [W]) observed only in OFDM symbols containing reference symbols for antenna port 0, in the measurement bandwidth, over N number of resource blocks by the UE from all sources, including co-channel serving and non-serving cells, adjacent channel interference, thermal noise etc.

The reference point for the RSRQ shall be the antenna connector of the UE.

If receiver diversity is in use by the UE, the reported value shall not be lower than the corresponding RSRQ of any of the individual diversity branches.
(当審訳
5.1.3 参照信号受信品質(RSRQ)

基準信号受信品質(RSRQ)は、比率N×RSRP/(E-UTRAキャリアRSSI)として定義され、ここで、Nは、E-UTRA搬送波のRSSI測定帯域幅のRBの数である。分子と分母における測定値は、同じセットのリソースブロックに対して行われなければならない。

E-UTRAキャリア受信信号強度インジケータ(RSSI)は、アンテナポート0についての基準シンボルを含むOFDMシンボルにおいてのみ観測される総受信電力([W]単位)の線形平均を含むものであり、測定帯域幅におけるものであり、すべてのソースからのUEによるN個のリソースブロックにわたるものであり、同一チャネルサービングおよび非サービングセル、隣接チャネル干渉、熱雑音などを含むものである。

RSRQの基準点は、UEのアンテナコネクタとする。

受信ダイバーシティがUEによって使用されている場合、報告される値は、個々のダイバーシチブランチのどれもが、対応するRSRQより低くてはならない。)

(ウ) 5.2.4 Timing advance (T_(ADV))

Type1:
Timing advance (T_(ADV)) type 1 is defined as the time difference

T_(ADV) = (eNB Rx - Tx time difference) + (UE Rx - Tx time difference),
where the eNB Rx - Tx time difference corresponds to the same UE that reports the UE Rx - Tx time difference.

Type2:
Timing advance (T_(ADV)) type 2 is defined as the time difference

T_(ADV) = (eNB Rx - Tx time difference),
where the eNB Rx - Tx time difference corresponds to a received uplink radio frame containing PRACH from the respective UE.
(当審訳
5.2.4 タイミングアドバンス(T_(ADV))

タイプ1:
タイミングアドバンス(T_(ADV))タイプ1は,時間差として次のように定義される。

T_(ADV)=(eNB Rx-Tx時間差)+(UE Rx-Tx時間差),
ここで,eNB Rx-Tx時間差は,UE Rx-Txの時間差を報告するのと同じUEに対応する。

タイプ2:
タイミングアドバンス(T_(ADV))タイプ2は,時間差として次のように定義される。

T_(ADV)=(eNB Rx-Tx時間差),
ここで,eNB Rx-Tx時間差は,各UEからのPRACHを含む受信アップリンク無線フレームに対応する。)

(エ) 5.2.5 eNB Rx - Tx time difference

The eNB Rx - Tx time difference is defined as T eNB-RX - T eNB-TX

Where:
T eNB-RX is the eNB received timing of uplink radio frame #i, defined by the first detected path in time.
The reference point for TeNB-RX shall be the Rx antenna connector.
T eNB-TX is the eNB transmit timing of downlink radio frame #i.
The reference point for TeNB-TX shall be the Tx antenna connector.
(当審訳
5.2.5 eNB Rx-Tx時間差

eNB Rx-Tx時間差は,T_(eNB-RX)-T_(eNB-TX)として定義される。

ここで:
T_(eNB-RX)は,アップリンク無線フレーム#iのeNB受信タイミングであり,最初に検出されるパスによって定義される。
T_(eNB-RX)の基準点は,受信アンテナコネクタでなければならない。
T_(eNB-TX)は,ダウンリンク無線フレーム#iのeNB送信タイミングである。
T_(eNB-TX)の基準点は,送信アンテナコネクタでなければならない。)

(オ) 5.2.7 Angle of Arrival (AoA)

AoA defines the estimated angle of a user with respect to a reference direction. The reference direction for this measurement shall be the geographical North, positive in a counter-clockwise direction.
The AoA is determined at the eNB antenna for an UL channel corresponding to this UE.
(当審訳
5.2.7 到達角度(AoA)

AoAは,基準方向に関するユーザの推定角度を定義する。この測定の基準方向は,地理的北であり,反時計回り方向に正でなければならない。
AoAは,このUEに対応するULチャネル用のeNBアンテナで決定される。)

4.独立特許要件についての当審の判断
(1) 対比
本願補正発明と引用文献1記載発明を比較すると次のことがいえる。

ア 引用文献1記載発明における「UE」は「User Eequipment」であるから,「ユーザ端末」といえる。

引用文献1記載発明においては,「UE内のスタンドアロンGPSをオフにすることによって,ユーザは,進行中の測位に介入することができる」のであるから,引用文献1記載発明に係る「UE」が,該「GPS」を「オフにする」ため,「ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェース」を備えることは自明である。

引用文献1記載発明における「即時型MDT」は本願補正発明における「Immediate MDT」に相当する。

引用文献1記載発明における「GPS」は,本願補正発明における「GNSS」に含まれるシステムであって,GPS衛星からの信号を基に測位を行い得るシステムであることは,例を示すまでもなく周知である。
そうすると,引用文献1記載発明における「UE」が「GPS受信機」を備えているということができる。
したがって,引用文献1記載発明は,本願補正発明における「GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機」を備える構成を開示しているということができる。

イ 引用文献1記載発明における「UE」は,「オンデマンド測位要求を含む即時型MDT配置を受信するとすぐに測位測定を有効にする(activate)ことができる」のであるから,該「UE」も本願補正発明のように「Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末」ということができる。

ウ 引用文献1記載発明において,「UE」が受信する「即時型MDT配置」が「ネットワーク」から送信されたものであることは明らかである(引用文献1の図1等参照。)。
そうすると,該「即時型MDT配置」は,本願補正発明における「GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから」の要求に相当するものであるということができる。
また,引用文献1記載発明において,「測位測定を有効にすること」が「GPS」を「オン状態にすること」を技術的に意味することは,引用文献1記載発明の構成全体から明らかである。
そして,引用文献1記載発明では,「測位」を「ユーザの介入又はその他の原因によって中断することができる」。
このことを換言するならば,引用文献1記載発明には,「ユーザの介入又はその他の原因」がない限りは,「即時型MDT処理のためにGPS受信機をオン状態に保つ」構成が開示されているということができる。
以上のことを総合すると,引用文献1記載発明と本願補正発明はともに,「GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、GNSS受信機をオフにしない限りは、Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保つ」構成を備える点で共通するということができる。
そして,上記のように「オン状態に保つ」ための「制御部」を「UE」に備えるようにすることは適宜なし得る程度の事項であり,また格別な技術的困難もない。

エ 上記アからウより,本願補正発明と引用文献1記載発明は次の点で一致し,相違するといえる。

[一致点]
Immediate MDT測定処理をサポートするユーザ端末であって、
GNSS位置情報を得るためのGNSS受信機と、
ユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェイスと、
前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保つ制御部と、を備えることを特徴とするユーザ端末。

[相違点]
(ア) 本願補正発明における「制御部」が「GNSS受信機をオン状態に保つ」のが,「GNSS受信機をオフ」に「ユーザ」がしない限りであるのに対し,引用文献1記載発明では「ユーザ」がしない限りではなく,「ユーザ又はその他の原因」である点で相違する。(相違点1)

(イ) 本願補正発明における「制御部」は,「前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにすると、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続」するのに対して,引用文献1記載発明においては,「前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにすると」,「測位が一時的に利用できなくなり」,本願補正発明のように「前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続」することの特定がない点で相違する。(相違点2)

そして,この相違により,本願補正発明における「GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報」は、「前記GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報である」との特定が,引用文献1記載発明にはない点で相違する。(相違点3)

(2) 検討
ア 相違点1について
「MDT」が,従来オペレータが行っていた電波測定を,ネットワークで移動局UEからの無線品質の測定結果を収集する技術であることは,例を示すまでもなく周知(以下「周知技術1」という。)である。
ここで,周知技術1と引用文献1記載発明が「MDT」に係る発明であることとを併せてみると,引用文献1記載発明が,測位測定値とともに無線品質の測定結果を,ネットワークに送信することを予定した発明であると解することができる。
そうすると,引用文献1記載発明において,「MDTへのユーザ同意」が有る場合,「無線品質の測定結果」とともに「測位測定値」をUEからネットワークに送信するために,本願補正発明のように「制御部」が「GNSS受信機をオン状態に保つ」のが,「GNSS受信機をオフ」に「ユーザ」がしない限りとすることは当業者が適宜なしえた事項,つまり,「制御部」を「前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された場合において、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにしない限りは、前記Immediate MDT測定処理のために前記GNSS受信機をオン状態に保つ」ようにすることは,当業者が適宜なしえた事項であるといえる。

したがって,引用文献1記載発明及び周知技術1に基づいて,相違点1のように構成することは,当業者が適宜なしえた事項であるといえる。

イ 相違点2及び3について
(ア) 引用文献1記載発明は,「ユーザの介入(GPSスイッチオフ)に起因し,測位が一時的に利用できなくなっても,MDTへのユーザ同意又は位置を提供することに対するユーザ同意が取り消されるように解釈されるべきではない」ことを開示している。
該開示は,「ユーザ」が「GPS」を「オフ」にした場合でも,「GPS」による「測位報告」を一時的に中断しその後再開し提供するか,若しくは代替の方法で「測位報告」を提供するか等は別とし,ユーザが同意した「即時型MDT」は継続されることを予定していると解することができる。
このことから,引用文献1記載発明にも,「GNSS受信機」を「オフ」しても「即時型MDTを続行する」ことが開示されているということができる。

(イ) 上記(ア)に述べたとおり,「ユーザ」が「GPS」を「オフ」にするのであるから,引用文献1記載発明においては,該「GPS」が,前もって「オン」状態となっていたことは当然である。
そして,「GPS」を用いたオンデマンド測位を開始する契機の一つが,「オンデマンド測位要求を含む即時型MDT配置」の「UE」による「受信」であることは,引用文献1記載発明の構成から明らかである。
これらのことは,引用文献1記載発明には,「GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後」に、「ユーザが前記GNSS受信機をオフにする」場合が開示若しくは示唆されているということができる。

(ウ) 一方,引用文献2記載発明においては,UEのバッテリー状態が低いため,若しくはバッテリーの節約のため,ユーザがGNSS測定の前に,GNSS受信機をオフにする場合,つまり「GNSS受信機が前もってオフになっていた場合」でも「E-CID位置情報のみを有する即時型MDTを続行することが許可されるべき」UEが開示されている。
ここで,「E-CID位置情報」については,「詳細位置情報」であるということができ,さらに,「GNSS位置情報」と異なる位置情報であり,「E-CID」が「測位方法」であることは,例を示すまでもなく周知(以下「周知技術2」という。)である。

(エ) 上記(ア)にも述べたように,引用文献1記載発明は,「ユーザによってGNSS受信機をオフにした場合でも,「即時型MDT」を続行,つまり「測位測定値」をUEからネットワークに提供することを続行しようとする」発明である。
一方,上記(イ)にも述べたことから,引用文献1記載発明も引用文献2記載発明も,ユーザによってGNSS受信機をオフにした場合でも,「即時型MDT」を続行しようとする点で共通する。
ところで,引用文献2記載発明においては,「GNSS受信機をオフ」にするのが,要するに,UEのバッテリーを節約することを目的としているのに対し,引用文献1記載発明には,そのような目的について特定はない。
しかし,引用文献1記載発明における「UE」に関しても,バッテリー消費の低減をはかるようにすることは当然であり,そのために,GNSS受信機等オフにしうる機能を「オフにする」ことは,当業者が容易に想起しうる程度の技術的事項に過ぎない。
そして,上記のような共通点を,引用文献1記載発明及び引用文献2記載発明は有するところ,引用文献1記載発明及び引用文献2記載発明に接した当業者ならば,上記(ウ)にも述べたような開示から,「即時型MDTを続行する」のに「GNSS受信機」が「オフ」であっても「E-CID」による測位方法が採用できるとの知見を獲得し,引用文献1記載発明のように,「GNSS受信機」が「オフ」であっても「即時型MDTを続行する」ため,「E-CID」による測位方法を採用しようとすることは,容易に想起し得る事項であるといえる。

(オ) 以上のことから,引用文献1記載発明,引用文献2記載発明及び周知技術に基づいて,相違点2及び3のように構成することは,当業者が適宜なしえたものであるといえる。

ウ 請求人の主張について
当審は,上記ア及びイのように判断するところ,請求人は,審判請求書の「(4)本願発明と引用発明との対比」において,次のように主張する。(下線は請求書記載のとおり。)
ここで,該主張について補足的に検討する。

(ア) 本願請求項1に係る発明(本願発明1)は、「制御部は、前記GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、前記ユーザが前記GNSS受信機をオフにすると、前記GNSS位置情報とは異なる情報であって前記ユーザ端末の位置を判断するための情報(前記GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報)を測定報告に含めることにより前記Immediate MDT測定処理を継続」する、という特徴的な構成を有します。
一方で、引用発明1は、GPSのスイッチがオフにされたことにより測位が利用不可能になっているとき、MDTに対するユーザの同意が取り消されない(MDTを継続する(Measurement Report(MR)の送信を継続する))ものであって、MRに加えて、GPSとは異なる他の測位方法により取得した位置情報(accurate location)を送信するものではなく、上記特徴的な構成を有するものではありません。
また、引用発明2は、UEが、事前にGNSS受信機をオフにしている場合において、RNC/eNBからGNSS測定の実行の要求を受信すると、E-CID位置情報のみを含むImmediate MDTを継続するものであって、RNC/eNBからGNSS測定の実行の要求を受信した後にGNSS受信機をオフにすると、E-CID位置情報のみを含むImmediate MDTを継続するものではなく、上記特徴的な構成を有するものではありません。

また、上述した通り、引用発明2は、GNSS受信機をオフにした後に、RNC/eNBからGNSS測定の実行の要求を受信した場合の動作であるから、引用発明1とは前提条件が真逆であって、引用発明2から恣意的に「E-CID位置情報のみを含むImmediate MDTを継続する」という抽象化した概念のみを、引用発明1に適用するとしたら、そのような組合せの論理付けは引用発明2における前提条件を含む技術思想を無視した後知恵に該当します。
さらに、引用発明1は、前述したように、MRの送信を継続することによって、既にMDTに対するユーザ同意を実現しているため、拒絶査定において審査官殿が述べている「ユーザ同意を実現するために、引用文献2に記載された発明の代替の測位方法を適用する」ことは必要ないばかりか引用発明1の目的を逸脱するものであるから、引用発明1に引用発明2を適用する動機付けが存在しないため、上記論理付けは失当です。

一方で、本願発明1は、引用発明1及び2に対して、上記特徴的な構成を有することにより、GNSS位置情報を利用可能にするようネットワークから要求された後に、GNSS受信機をオフにした場合であっても、GNSS受信機による測位方法とは異なる測位方法により取得した詳細位置情報を測定報告に含めることで、ネットワークが、よりユーザ端末の詳細な位置を把握することが容易になる、という格別の効果を奏します。

従って、本願発明1は、引用発明1及び2から当業者が容易に想到し得たものではありません。

(イ) 上記のように請求人は主張するが,上記「イ」の(ア)にも述べたように,引用文献1記載発明は,「GNSS受信機」が「オフ」であっても,「即時型MDTを続行する」発明ということもできるものである。
ここで,引用文献1記載発明に接した当業者ならば,その「即時型MDTを続行する」ために,<イ-1>「オフ」となった「GNSS受信機」を「オン」にする,つまり「再起動」して「続行する」か,又は,<イ-2>「オフ」となった「GNSS受信機」を使用しない測位法を採用して「続行する」かといった技術的事項を検討することは,当然のことであるというべきである。
このような状況において,上記「イ」の(ウ)に述べたような開示をする引用文献2記載発明に,当業者が接したならば,該開示から,「GNSS受信機」が「オフ」であっても「E-CID」による測位方法により「即時型MDTを続行する」ことができるとの知見を獲得し,上記<イ-1>又は<イ-2>といったような検討課題を解決する手段として,該知見を,引用文献1記載発明に導入しようとすることは,当業者が適宜なしえた事項であったといわざるを得ない。
また,「E-CID」は,「測位方法」として例を示すまでもなく周知であって,UEが備える「GPS受信機」といった「GNSS受信機」を使用しない測位方法であることは技術常識でもある。(「E-CID」に係る技術については,上記「3.」の「(3) 「E-CID」に関する補説」参照。)

以上のことを総合すると,引用文献2に,「GNSS受信機をオフにした後に、RNC/eNBからGNSS測定の実行の要求を受信した場合の動作」としての記載であって,引用文献1記載発明と前提条件が真逆である記載があったとしても,「E-CID位置情報のみを有する即時型MDTを続行することが許可されるべき」との記載もあるのだから,上記のように,引用文献2記載発明から獲得した知見を,引用文献1記載発明に導入しようとすることを阻害する要因が,引用文献2に記載されているとまではいうべきでない。

(ウ) したがって,請求人の主張を採用することはできない。

エ 請求人の主張も踏まえた相違点2及び3についてのまとめ
よって,GNSSがオフの場合でも,即時型MDTを続行するために,引用文献1記載発明,引用文献2記載発明及び周知技術から,相違点2及び3のように構成することは,当業者が適宜なしえた事項であるということができる。

5.独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであり,本願補正発明のように構成したことによる効果も,引用文献1記載発明,引用文献2記載発明及び周知技術から予測できる範囲のものである。

したがって,本願補正発明は,引用文献1記載発明,引用文献2記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた発明であるということができる。
これにより,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって,本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明及び引用文献記載発明

1.本願発明
上記第2のとおり,本件補正は却下された。したがって,本願の請求項1に係る発明は,平成27年12月28日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記第2 1.[本件補正前]の請求項1参照。)。

2.引用文献及び引用文献記載発明
引用文献及び引用文献記載発明については,上記第2 3.に記載した「引用文献1」,「引用文献1記載事項」及び「引用文献1記載発明」,そして,同じく「引用文献2」,「引用文献2記載事項」及び「引用文献2記載発明」を参照。


第4 当審の判断

本願補正発明は,本願発明を特定する事項を全て備え,更に,該「特定する事項」に限定を附した発明であって,本願補正発明が,引用文献1記載発明,引用文献2記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであることは,上記第2に述べたとおりである。

つまり,本願発明は,本願補正発明から,附された限定を省いた発明であるということができる。
そうしてみると,本願補正発明と同様に,本願発明が,引用文献1記載発明,引用文献2記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるといえることは当然である。

したがって,本願発明は,特許法第29条第2項に規定する発明に該当する。


第5 むすび

以上のとおりであるから,本願は,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-27 
結審通知日 2017-02-28 
審決日 2017-03-13 
出願番号 特願2014-528244(P2014-528244)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 紀之三枝 保裕阿部 圭子  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 北岡 浩
近藤 聡
発明の名称 ユーザ端末、プロセッサ、及び方法  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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