• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1327683
審判番号 不服2016-2842  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-25 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2012-544754「汚染物質制御デバイス用の多層装着マット」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月14日国際公開、WO2011/084475、平成25年 4月25日国内公表、特表2013-514495〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年12月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年12月17日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年6月14日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面とともに特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成25年11月15日に手続補正書とともに上申書が提出された後、平成26年12月25日付けで拒絶理由が通知され、平成27年5月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年10月26日付けで拒絶査定がされ、平成28年2月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書を補正する手続補正書が提出され、さらに、平成28年7月14日に上申書が提出されたものである。

2.本願発明
平成28年2月25日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、明細書の段落【0095】に、平成24年6月14日提出の請求の範囲の翻訳文の請求項1ないし20の内容を実施形態として加筆するものであるから、特許法第17条の2第3項の要件を満たすものであり、本件補正は適法になされたものである。
そして、本願の請求項1ないし12に係る発明は、本件補正後の明細書、平成27年5月7日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
(i)耐高温性の無機繊維、又は
(ii)耐高温性の無機繊維及び少なくとも一つの有機バインダ及び/又は膨張性材料、
を備える排気ガス処理デバイス用の多層装着マットであって、
前記マットが、ウェットレイドされた繊維シートの複数のプライから形成され、
複数のウェットレイドされた繊維シートの前記複数のプライのそれぞれにおける繊維の大部分が、それぞれの繊維シートのx-y平面内に配向され、且つ
前記繊維のわずかな部分が、ウェットニードリング、ドライニードリング、水交絡、又はプレス加工のうちの少なくとも1つによって、前記多層装着マット内で物理的に交絡されている、
多層装着マット。」

3.引用文献
3.1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-61433号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「セラミック触媒コンバータ」に関し、図面とともに次の記載がある。

(ア)「【0001】
【技術分野】本発明は,自動車等の車両用エンジンの排気経路中に配置されるセラミック触媒コンバータに関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0019】なお,上記効果を有する保持材の具体例としては,請求項4の発明のように,Al_(2) O_(3) ・SiO_(2) 組成のアルミナ繊維からなり,該アルミナ繊維に対するAl_(2) O_(3) の含有率が70?95重量%であるものを挙げることができる。
【0020】上記アルミナ繊維は,1000℃という高温雰囲気においても,相変態しない,また結晶構造も変化しない,安定した物質である(後述の図12,図13参照)。従って,高温雰囲気において,上記アルミナ繊維は面圧が大きく減少することもない(後述の図14参照)。よって,上記アルミナ繊維よりなる保持材は,広い温度範囲にわたり,安定かつ確実に,セラミック製触媒担体を外筒の内部に保持することができる。」

(ウ)【0024】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるセラミック触媒コンバータにつき,図1?図9を用いて説明する。図1?図8に示すごとく,本例のセラミック触媒コンバータ1は,エンジン85の排気経路中に配置され,セル表面121に触媒層を形成したセラミック製触媒担体12と,該セラミック製触媒担体12を収納する外筒13と,上記外筒13と上記セラミック製触媒担体12の外周面120との間の空隙において上記セラミック製触媒担体12の外周面120に配置された保持材11とからなる。
【0025】図5,図7,図8に示すごとく,上記保持材11は,上記セラミック製触媒担体12の外周面120に対し二次元的に平行な方向において二次元的に絡み合った各繊維層が多数積層された状態にある。また,上記保持材11は,上記セラミック製触媒担体12の排気ガス流れ方向の下流側端面129から突出した突出部111を有し,該突出部111は,ストッパに当接して上記セラミック製触媒担体12の下流側端面129に接触するように断面略L字形状に変形している。なお,本例において上記ストッパは,後述するフランジ152が兼ねている。
…(中略)…
【0027】また,上記セラミック製触媒担体12の通気セル121には,排気ガス中の有害成分を浄化させるための白金触媒が担持されている。なお,上記触媒の担持は以下に示すごとく行う。上記セラミック製触媒担体12をγ-Al_(2) O_(3) 含有スラリー中に含浸,その後これを焼成,焼成体となす。その後,Ptを溶解した水溶液中に上記焼成体を含浸,その後これを再度焼成する。
【0028】上記保持材11について説明する。図2に示すごとく,上記保持材11は,Al_(2) O_(3) が72重量%,SiO_(2) が28重量%よりなるアルミナ繊維よりなり,保持材11の耐熱性を低下させる原因となる加熱膨張物質は含まれていない。そして,図2(a),(b)に示すごとく,上記保持材11は,上記アルミナ繊維118が二次元的に絡み合うことにより一枚の繊維層119を形成し,該繊維層119が多数積層された状態にある。そして,図8に示すごとく,上記繊維層119が上記セラミック触媒担体12の外周面120に対し平行となるよう,上記保持材11は配置されてある。
【0029】また,上記保持材11の耐熱温度は1800℃である(実施形態例3参照)。従って,排気浄化時におけるセラミック製触媒担体12の外周部120の外周温度(略900℃)において相変態しない。また,上記保持材11を構成する各繊維1本の繊維径は2?4μmである。また,上記保持材11の組付け前の厚さは15mm,かさ密度は0.08g/cm^(3) である。」(段落【0024】ないし【0029】)

(2)引用文献1記載の事項
上記(1)(ア)ないし(ウ)及び図1ないし9の記載から、以下の事項が分かる。

(カ)上記(1)(ア)ないし(ウ)及び図1ないし9の記載から、引用文献1には、セラミック触媒コンバータに用いる保持材11が記載されていることが分かる。

(キ)上記(1)(イ)の記載から、引用文献1に記載されたセラミック触媒コンバータに用いる保持材11は、1000℃という高温雰囲気においても、相変態しない、また結晶構造も変化しない、安定した物質であるアルミナ繊維よりなることが分かる。

(ク)上記(1)(ウ)及び図2の記載から、引用文献1に記載されたセラミック触媒コンバータに用いる保持材11は、繊維層119が多数積層されて形成されることが分かる。

(ケ)上記(1)(ウ)及び図2の記載から、引用文献1に記載されたセラミック触媒コンバータに用いる保持材11において、各繊維層119は、二次元的に平行な方向において二次元的に絡み合ったものであることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1ないし9の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「1000℃という高温雰囲気においても、相変態しない、また結晶構造も変化しない、安定した物質であるアルミナ繊維118よりなるセラミック触媒コンバータに用いる保持材11であって、前記保持材11は、繊維層119が多数積層されて形成され、
各繊維層119は、アルミナ繊維118が二次元的に平行な方向において二次元的に絡み合った保持材11。」

3.2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2008-523267号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「取付け用マットおよびそれを使用した汚染制御機器」に関し、図面とともに次の記載がある。

(ア)「【0001】
本発明は、汚染制御機器において使用するのに好適な材料、特に、汚染制御要素を汚染制御機器の中に取付けるためのマット、さらに詳しくは、そのような材料を含む汚染制御機器に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染制御機器は、大気汚染を低減させるために、自動車に使用される。そのような汚染制御機器には、ハウジングの中に取付けられた1種または複数の汚染制御要素が含まれる。現在のところ、二つのタイプの機器、すなわち触媒コンバーターおよびディーゼル排気微粒子フィルターまたはトラップが広く使用されている。…(後略)…」(段落【0001】及び【0002】)

(イ)「【0036】
2.繊維
本発明の組成物には、以下において説明するような1種または複数のタイプの繊維が含まれる。
【0037】
a.生体溶解性繊維
本発明の組成物には生体溶解性繊維が含まれる。本明細書で使用するとき、「生体溶解性繊維(biosoluble fiber)」という用語は、生理学的媒体または模擬的な生理学的媒体の中で分解すること可能な繊維を指す。生理学的媒体としては、典型的には気道、たとえば動物またはヒトの肺に見出される体液のようなものが挙げられるが、これに限定される訳ではない。
…(中略)…
【0041】
本発明の一つの望ましい実施態様においては、生体溶解性繊維には生体溶解性無機繊維が含まれる。本発明において使用するのに適した生体溶解性無機繊維には、典型的には、シリカと併せて、無機酸化物たとえば、Na_(2)O、K_(2)O、CaO、MgO、P_(2)O_(5)、Li_(2)O、BaO、またはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定される訳ではない。」(段落【0036】ないし【0041】)

(ウ)「【0062】
その取付け用マットが湿式レイド法または改良製紙法を用いて製造されている場合には、ポリマー系またはその他の有機バインダーが特に有用であるが、乾式レイド法で製造されたマットでも、そのようなバインダーを組み入れればメリットがある。…(後略)…」(段落【0062】)

(エ)「【0079】
本発明の組成物から調製されたシート材料は、たとえば、製紙プロセスのような各種適切な技術などを使用して、成形することができる。製紙で使用される方法の一つの実施態様においては、バインダー材料を水に添加することによって、無機またはポリマーバインダーを調製する。その濃度と温度はいずれも、広い範囲で変化させることができる。…(後略)…」(段落【0079】)

(オ)「【0087】
公知の技術を用いて、シート材料の形態の中の1層または複数の単一層の組成物を他の同一、類似または異なった層と組み合わせて、多層物品を形成させてもよい。たとえば、そのシート材料の外側面の上に追加の層をコーティングしてもよい。さらに、先にも述べたように、任意成分の接着剤を使用して、シート材料の複数の層または他の層を交互に積層してもよい。材料の複数の層を組み合わせて多層物品を形成させるその他の機械的な方法としては、ニードルパンチ法やステッチ法などが上げられるが、それらに限定される訳ではない。」(段落【0087】)

(2)引用文献2記載技術
上記(1)(ア)ないし(オ)の記載から、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載技術」という。)が記載されているといえる。

「排気ガス処理装置用の取付け用マットにおいて、湿式レイドされた無機繊維を含むシートの複数の層を、ニードルパンチやステッチ法などの機械的な方法により組み合わせて多層物品を形成する技術。」

3.3 引用文献3
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-44149号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「無配向ノン・ウーブン・フアブリツクおよびその製造方法」に関し、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は音楽ホールの吸音材、スピーカーボックス用吸音材、あるいは電磁波吸収材として特に優れている無配向のノン・ウーブン・ファブリック(以下NWFと略記する。)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】NWF製造法としては、乾式法として長繊維を梳面機またはガーネット機にかけてウエブを作り、これを平行または交差させて積み重ねたもの、または空気流利用による不規則な配列のウエブを用い、これを接着液に浸漬またはスプレーし、乾燥、熱処理により製造する方法が一般的であるが、繊維の配向は部分的に偏りが避けられず、更に方向性(平面方向に繊維が配向している。)があるので、無配向のNWFが必要な時は湿式抄紙法によることが多い。
【0003】この方法は主に約20mm以下の短繊維を用い、アクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、トロロアオイ等の水溶液中に短繊維を分散させ、抄紙して脱水し、乾燥、加熱処理をする方法、あるいは水溶性高分子を溶解させておくか熱軟化性繊維を混抄し、熱処理して固定する方法などが知られている。この方法によって乾式法に見られる繊維の配向の部分的な偏りは克服できるが、やはり平面的な配向が主であって、立体的にも無配向のNWFが得られなかった。」(段落【0001】ないし【0003】)

3.4 引用文献4
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-61885号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「清掃用シート」に関し、図面とともに次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

「【0061】また、前記各実施形態の清掃用シート1は、エアレイ法以外に湿式抄紙法によって製造することができる。例えば、第1の実施形態の清掃用シートは、熱融着性の太径熱可塑性繊維とパルプ等のセルロース系繊維との混合原料に湿潤紙力向上剤(ポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂等)を所定量添加撹拌した後、公知の抄紙法によってウェブを形成し、乾燥機にて乾燥させると共に太径熱可塑性繊維同士の交点を熱融着させることで得ることができる。高融点の太径熱可塑性繊維を用いる場合には、エアレイ法と同様にバインダーを添加することにより、繊維の脱落が防止された高強度の清掃用シートを得ることができる。湿式抄紙法にて製造される第1の実施形態の清掃用シートの模式図を図5に示す。エアレイ法で製造されたもの(図1参照)と比較して、太径熱可塑性繊維は平面方向に配向しやすい傾向となる。」(段落【0061】)

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「アルミナ繊維118」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「無機繊維」に相当し、以下同様に、「セラミック触媒コンバータ」は「排気ガス処理デバイス」に、「保持材11」は「多層装着マット」及び「マット」に、それぞれ相当する。
また、引用発明において「アルミナ繊維118」が「1000℃という高温雰囲気においても、相変態しない、また結晶構造も変化しない、安定した物質である」ということは、高温に対する耐性を有するといえるから、引用発明における「1000℃という高温雰囲気においても、相変態しない、また結晶構造も変化しない、安定した物質であるアルミナ繊維118」は、その技術的意義からみて、本願発明における「耐高温性の無機繊維」に相当する。
そして、引用発明において「セラミック触媒コンバータに用いる保持材11」が「1000℃という高温雰囲気においても、相変態しない、また結晶構造も変化しない、安定した物質であるアルミナ繊維118よりなる」ということは、本願発明において「排気ガス処理デバイス用の多層装着マット」が「(i)耐高温性の無機繊維、又は(ii)耐高温性の無機繊維及び少なくとも一つの有機バインダ及び/又は膨張性材料、を備える」ことに相当する。
さらに、引用発明において「保持材11は、繊維層119が多数積層されて形成され」ることは、その構成からみて、本願発明において「マットが」「繊維シートの複数のプライから形成され」ることに相当する。したがって、「マットが、繊維シートの複数のプライから形成され」るという限りにおいて、引用発明において「保持材11は、繊維層119が多数積層されて形成され、各繊維層119は、アルミナ繊維118が二次元的に平行な方向において二次元的に絡み合」うことは、本願発明において「マットがウェットレイドされた繊維シートの複数のプライから形成され、複数のウェットレイドされた繊維シートの複数のプライのそれぞれにおける繊維の大部分が、それぞれの繊維シートのx-y平面内に配向され」ることに相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「(i)耐高温性の無機繊維、又は
(ii)耐高温性の無機繊維及び少なくとも一つの有機バインダ及び/又は膨張性材料、
を備える排気ガス処理デバイス用の多層装着マットであって、
前記マットが、繊維シートの複数のプライから形成された多層装着マット。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
(a)「マットが、繊維シートの複数のプライから形成され」ることに関し、本願発明においては「マットが、ウェットレイドされた繊維シートの複数のプライから形成され、複数のウェットレイドされた繊維シートの複数のプライのそれぞれにおける繊維の大部分が、それぞれの繊維シートのx-y平面内に配向され」るのに対し、引用発明においては「保持材11は、繊維層119が多数積層されて形成され、各繊維層119は、アルミナ繊維118が二次元的に平行な方向において二次元的に絡み合」う点(以下、「相違点1」という。)。
(b)本願発明においては、繊維のわずかな部分が、ウェットニードリング、ドライニードリング、水交絡、又はプレス加工のうちの少なくとも1つによって、多層装着マット内で物理的に交絡されているのに対し、引用発明においては、各繊維層119が保持材11内で物理的に交絡されているか不明である点(以下、「相違点2」という。)。

5.判断
まず、上記相違点1について検討すれば、本願発明において繊維シートの複数のプライのそれぞれにおける繊維の大部分が、繊維シートのx-y平面内に配向されることと、引用発明において、保持材11の各繊維層119はアルミナ繊維118が二次元的に平行な方向において二次元的に絡み合ったものであることとの間に、実質的な違いはない。
そして、引用発明と技術分野が共通する引用文献2記載技術は、排気ガス処理装置の取付け用マットにおいて、該マットを構成する無機繊維を含むシートを湿式レイド、すなわちウェットレイドにより形成するものであり、また、一般にウェットレイドにより形成された繊維シートの繊維の配向方向が主に該シートの平面内となることは、引用文献3及び4等に記載される(上記3.3及び3.4参照。)ように技術常識(以下、「技術常識」という。)である。したがって、引用発明において、アルミナ繊維118が二次元的に平行な方向において二次元的に絡み合った繊維層119を形成するためにウェットレイド法を選択することは、当業者が普通に考えることである。
以上から、引用発明において、上記技術常識を参酌しつつ引用文献2記載技術を適用することにより、保持材11をウェットレイドされた繊維層119を多数積層することにより形成し、複数のウェットレイドされた繊維層119のそれぞれにおける繊維の大部分が、それぞれの繊維層119のx-y平面内に配向されるようにして、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

次に、上記相違点2について検討すれば、ウェットニードリング、ドライニードリング、水交絡及びプレス加工は、繊維相互間を物理的に交絡するための方法として、一般に広く用いられている。
そして、引用文献2記載技術において、ニードルパンチ法やステッチ法は、積層された繊維層間を物理的に交絡する方法として例示的に示されたものであるところ、シートの複数の層を組み合わせて多層物品を形成する機械的な方法として、ウェットニードリング、ドライニードリング、水交絡及びプレス加工のいずれかを用いることができることは明らかである。
また、交絡をどの程度行うかは、繊維層間の結合の必要度合いに応じて設計上適宜決められる事項である。
したがって、上記したように引用発明において引用文献2記載技術を適用するにあたり、積層された繊維層間を物理的に交絡する方法として、一般的に用いられているウェットニードリング、ドライニードリング、水交絡及びプレス加工のうちの一つを用い、繊維層間の結合の必要度合いに応じて、保持材11内で繊維層119のわずかな部分が物理的に交絡されるようにして、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明並びに引用文献2記載技術及び技術常識から予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏するものではない。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用文献2記載技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび

上記のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-25 
結審通知日 2016-11-28 
審決日 2016-12-12 
出願番号 特願2012-544754(P2012-544754)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 正義  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 中村 達之
三島木 英宏
発明の名称 汚染物質制御デバイス用の多層装着マット  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 西島 孝喜  
代理人 箱田 篤  
代理人 浅井 賢治  
代理人 市川 さつき  
代理人 山崎 一夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ