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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1327714
審判番号 不服2015-2934  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-16 
確定日 2017-05-24 
事件の表示 特願2012- 38419「映像選択を強化するためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月28日出願公開、特開2012-124948、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2005年(平成17年)4月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年4月7日、米国、2005年3月15日、米国)を国際出願日とする特願2007-507453号の一部を平成24年2月24日に新たな特許出願としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 : 平成25年6月25日(起案日)
手続補正 : 平成26年1月6日
拒絶理由通知(最後) : 平成26年1月23日(起案日)
手続補正 : 平成26年7月28日
補正の却下の決定 : 平成26年10月2日(起案日)
拒絶査定 : 平成26年10月2日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 : 平成27年2月16日
手続補正 : 平成27年2月16日
前置報告 : 平成27年4月15日
拒絶理由通知(当審) : 平成28年2月29日(起案日)
手続補正 : 平成28年9月1日
拒絶理由通知(当審) : 平成28年9月23日(起案日)
手続補正 : 平成29年3月27日

第2 本願発明

本願請求項1-18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明18」という。)は、平成29年3月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

(本願発明1)
「【請求項1】視聴する所望の映像資産を選択するユーザを助けるシステムにおける多チャンネルビデオヘッドエンドコンピュータであって、
第1の映像資産をユーザに提示するよう構成され、ここで第1の映像資産は、前記第1の映像資産に関する、メタデータデータベースに記憶されているメタデータを含んでおり、
複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源から利用可能な複数の映像資産に含まれるメタデータカテゴリについての要求をクライアント装置から受け取るよう構成され、ここで、要求された前記複数の映像資産のそれぞれのメタデータは、所望のメタデータカテゴリを含んでおり、前記所望のメタデータカテゴリは、第1の映像資産に関連するメタデータカテゴリの組から選択されたものであり、前記要求における前記メタデータカテゴリに対応し、
前記多チャンネルビデオヘッドエンドコンピュータにおいて、前記所望のメタデータカテゴリに基づき、前記複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源を探し、探した前記コンテンツプロバイダ供給源から前記要求された複数の映像資産を決定するよう構成され、
前記要求された複数の映像資産のそれぞれに関連するメタデータを取得するよう構成され、
パーソナル化サーバから、少なくとも加入者データ及び第三者からの外部データを含むパーソナル化データを取得するよう構成され、ここで、前記パーソナル化データが前記ユーザに関連する個人的プロフィールに記憶されており、
前記要求された複数の映像資産に関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つを前記パーソナル化データに基づいてクリップ/静止画像データベースから検索するよう構成され、ここで、前記検索されたクリップ又は静止画像が前記パーソナル化データによって示される少なくとも一つのユーザプリファレンスにしたがって前記要求された複数の映像資産を示し、
前記要求された複数の映像資産に関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つを含むパーソナル化されたユーザ・インタフェースを提示するよう構成され、ここで、2以上のクリップ又は静止画像が映像資産ごとに用意され、前記クリップ又は静止画像は、前記ユーザプリファレンスにしたがって選択され、前記映像資産の異なる側面を強調すること
を特徴とするシステム。」

(本願発明2)
「【請求項2】前記要求された複数の映像資産のそれぞれに関連する前記クリップ又は静止画像の少なくとも一つは、前記複数の映像資産のそれぞれに関連する少なくとも1つの画像を含んでいる、請求項1に記載のシステム。」

(本願発明3)
「【請求項3】前記所望のメタデータカテゴリには、俳優、監督、ジャンル、スポーツ、リーグ、チーム、選手、又は学校が含まれている請求項1に記載のシステム。」

(本願発明4)
「【請求項4】複数のコンテンツプロバイダ供給源には、VOD、PVR、放送映像、又はインターネット・プロトコール・ネットワークが含まれる、請求項1に記載のシステム。」

(本願発明5)
「【請求項5】前記所望の映像資産は将来の放送映像であり、前記多チャンネルビデオヘッドエンドコンピュータは、前記映像資産を視聴することができる最も近い時間に前記ユーザに通知する警報を設定するオプションをユーザに与えるよう構成されている、請求項4に記載のシステム。

(本願発明6)
「【請求項6】前記少なくとも1つの画像には、静止クリップ、映像クリップ、予告編、又はこれらの組み合わせが含まれる、請求項2に記載のシステム。」

(本願発明7)
「【請求項7】前記多チャンネルビデオヘッドエンドコンピュータは、前記所望の映像資産を視聴するにはフォーマット変換が必要であることをユーザに表示するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。」

(本願発明8)
「【請求項8】前記多チャンネルビデオヘッドエンドコンピュータは、どの映像資産供給源から所望の映像資産を供給するかを判断するために、ユーザに選択設定を与えるよう構成されている、請求項1に記載のシステム。」

(本願発明9)
「【請求項9】前記多チャンネルビデオヘッドエンドコンピュータは、1又は2以上のリンクが張られたフィールドを有するグラフィカル・ユーザ・インターフェースをユーザに提供するよう構成され、ここでリンクが張られたフィールドは、前記要求を表している、請求項1に記載のシステム。」

(本願発明10)
「【請求項10】前記要求は、キーボードは使わずに、リモートコントロールを使用するユーザによって開始される、請求項1に記載のシステム。」

(本願発明11)
「【請求項11】前記要求された複数の映像資産は、3又はそれより多くの異なるコンテンツプロバイダ供給源から利用可能である、請求項1に記載のシステム。」

(本願発明12)
「【請求項12】視聴する所望の映像資産を選択するユーザを助ける方法であって、
第1の映像資産をユーザに提示する段階と、ここで前記第1の映像資産は前記第1の映像資産に関するメタデータを含んでおり、
複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源から利用可能な複数の映像資産に含まれるメタデータカテゴリについての要求をクライアント装置から受け取る段階と、ここで、要求された前記複数の映像資産それぞれのメタデータは、所望のメタデータカテゴリを含んでおり、前記所望のメタデータカテゴリは、第1の映像資産に関連するメタデータカテゴリの組から選択されたものであり、前記要求における前記メタデータカテゴリに対応し、
前記所望のメタデータカテゴリに基づき、前記複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源を探し、探した前記コンテンツプロバイダ供給源から前記要求された複数の映像資産を決定する段階と、
前記要求された複数の映像資産のそれぞれに関連するメタデータを取得する段階と、
パーソナル化サーバから、少なくとも加入者データ及び第三者からの外部データを含むパーソナル化データを取得する段階と、ここで、前記パーソナル化データが前記ユーザに関連する個人的プロフィールに記憶されており、
前記要求された複数の映像資産のそれぞれに関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つを前記パーソナル化データに基づいて検索する段階と、ここで、前記検索されたクリップ又は静止画像が前記パーソナル化データによって示される少なくとも一つのユーザプリファレンスにしたがって前記要求された複数の映像資産を示し、
前記要求された複数の映像資産に関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つを含むパーソナル化されたユーザ・インタフェースを提示する段階と、ここで、2以上のクリップ又は静止画像が映像資産ごとに用意され、前記クリップ又は静止画像は、前記ユーザプリファレンスにしたがって選択され、前記映像資産の異なる側面を強調する、
を含むことを特徴とする方法。」

(本願発明13)
「【請求項13】前記要求された複数の映像資産のそれぞれに関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つは、複数の映像資産のそれぞれに関連する少なくとも1つの画像を含んでいる、請求項12に記載の方法。」

(本願発明14)
「【請求項14】前記所望のメタデータカテゴリには、俳優、監督、ジャンル、スポーツ、リーグ、チーム、選手、又は学校が含まれている請求項12に記載の方法。」

(本願発明15)
「【請求項15】複数のコンテンツプロバイダ供給源には、VOD、PVR、放送映像が含まれる、請求項12に記載の方法。」

(本願発明16)
「【請求項16】前記要求された複数の映像資産は、3又はそれより多くの異なるコンテンツプロバイダ供給源から利用可能である、請求項12に記載の方法。」

(本願発明17)
「【請求項17】1又は2以上のリンクが張られたフィールドを有するグラフィカル・ユーザ・インターフェースをユーザに提供する段階をさらに含み、ここでリンクが張られたフィールドは、前記要求を表している、請求項12に記載の方法。」

(本願発明18)
「【請求項18】前記クライアント装置からの要求は、キーボードは使わずに、リモートコントロールを使用するユーザによって開始される、請求項12に記載の方法。」

第3 引用文献、引用発明等

1.引用文献1の記載、及び、引用発明1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2002-157269号公報)には、「映像ポータルシステム及び映像提供方法」(発明の名称)として、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審により付与した。)。

ア.「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、提供された映像コンテンツを端末の利用者に提供する映像ポータルシステム及び映像提供方法に関する。
【0002】(略)
【0003】【発明が解決しようとする課題】インターネット等のネットワークを介した映像情報の配信は、将来、回線の広帯域化にともなって需要が急増し、またコンテンツの提供量も格段に増大することが予想される。とりわけ、インターネット放送などでは、配信設備に対する投資額が従来の放送設備に比べて少ないため、地方ローカル局よりもさらに小規模な放送局が次々と登場し、供給される映像コンテンツの数やそのコンテンツの内容のバリエーションも現在より格段に増加することが容易に予想される。また、このようなマルチキャスト型の放送に限らず、蓄積コンテンツに対するオンデマンドな供給サービスにおいても同様である。
【0004】(略)
【0005】したがって、本発明は、利用者に映像コンテンツを提供する場合、利用者が所望の映像コンテンツを容易にアクセスできるような状態で提供することを目的とする。」

イ.「【0006】(前略)本発明は、コンテンツプロバイダ(インターネット放送局などのような映像情報提供者)より提供される複数のコア映像コンテンツの情報を記録するコア映像コンテンツ格納部と、広告提供者(広告主あるいは広告代理店など)より提供される複数の広告映像コンテンツの情報を記録する広告映像コンテンツ格納部と、コア映像コンテンツ格納部に格納されている複数のコア映像コンテンツ及び広告映像コンテンツ格納部に格納されている複数の広告映像コンテンツ各々の間の関連の度合いを全ての映像コンテンツ(コア映像コンテンツ+広告映像コンテンツ)から算出し、コア映像コンテンツ格納部に格納された複数のコア映像コンテンツと広告映像コンテンツ格納部に格納された複数の広告映像コンテンツとが算出した関連の度合いが反映された状態で閲覧できる表示データを作成する関連付けエンジンと、この関連付けエンジンより算出された関連付けの度合いが反映され、かつ、電子的なネットワークを介して接続された複数の端末からのコア映像コンテンツ格納部に格納されている複数のコア映像コンテンツに対する要求状態が反映されたログ表示データを作成する操作ログ解析部とを備え、複数のコア映像コンテンツのいずれか、あるいは複数の広告映像コンテンツのいずれかを要求した端末に対し、要求されたコア映像コンテンツあるいは要求された広告映像コンテンツを含む表示データを送信し、ログ表示データは、ネットワークを介してコンテンツプロバイダおよび広告提供者が取り出し可能な状態としたものである。これにより、端末には複数のコア映像コンテンツが関連する広告映像コンテンツととともに表示可能な状態で送信される。」

ウ.「【0010】(前略)図1は、本発明に係る映像ポータルシステムの構成を示すブロック図である。本システムは図1に示すように、インターネットなどのネットワーク101に、コンテンツ配信サーバ102を設け、コンテンツプロバイダ103から提供される映像コンテンツ及び、広告提供者104から配信される映像コンテンツを、コンテンツ配信サーバ102を介して利用者端末105に提供するようにしたものである。ここで、配信された映像コンテンツは、例えば、利用者端末105の表示部106により閲覧することができる。
【0011】(略)
【0012】以上のように各映像コンテンツを備えたコンテンツ配信サーバ102は、利用者端末105からのリクエストにより、所望とされる映像コンテンツを利用者端末105に送信する。この結果、利用者端末105を操作している利用者は、コンテンツ配信サーバ102に用意されている映像コンテンツを、表示部106に表示することなどにより閲覧することができる。」

エ.「【0015】まず、コンテンツに付随する文書部分(例えば、映像コンテンツに対する関連ホームページの文書や、映像コンテンツに付随して配信される文字放送における文書)全てを形態素解析し、名詞を抽出する。次いで、全ての文書にわたって出現頻度の高いN個の名詞を、上位から選び出す。次いで、各々の文書において、選び出したN個の名詞各々の出現頻度を表すN次元のキーワードベクトルを、選び出した各々の名詞に組み合わせ、つぎに示すようなコンテンツプロファイルを作成する。」

オ.「【0020】利用者端末105からのリクエストに応じてコンテンツ配信サーバ102から利用者端末105に対してコンテンツを送信している状況において、この時点から遡り過去M個の送信済みコンテンツにおけるコンテンツプロファイルの要素毎の平均値を各要素とするようなN次元のベクトルを構成し、これをユーザプロファイル(要求特性)とする。(後略)」

カ.「【0022】(前略)以上のことにより、現時点におけるユーザプロファイルを求めたら、関連付けエンジン123は、求めたユーザプロファイルと、コンテンツ配信サーバ102に用意されているコンテンツプロファイルとの間の類似度をつぎに示す計算により求め興味の推定を行う(ステップS105)。」

キ.「【0025】以上説明したことにより、ユーザプロファイルとコンテンツプロファイルとの間の類似度を求めたら、関連付けエンジン123は、まず、関連度合いを多次元尺度構成を用いて2次元表面上の距離尺度として表現し、2次元平面上における配置座標を計算した各コンテンツを、この配置座標を反映させた状態で表示される表示データを作成し(ステップS106)、これを利用者端末105において表示可能な状態として提供する(ステップS107)。
【0026】上記表示データは、コア映像コンテンツ、或いは広告映像コンテンツであり、例えばHTTP(Hypertext Transfer Protocol)による利用者端末105からのリクエストにより、利用者端末105に送信され、図1に示すように、表示部106のWebブラウザが表示されるウインド161に表示される。ウインド161には、各コンテンツのサムネイル163が、関連度合いに応じ、関連の大きいコンテンツのサムネイル同士は互いに近くに配置されて表示され、関連の薄いコンテンツのサムネイルは互いに離れて表示される。なお、サムネイルとしては、図1に示すように、映像コンテンツに含まれる代表画像フレームや関連ホームページの代表画像などを用いるようにすればよい。
【0027】また、表示データにおいては、上記類似度を反映させて、類似度の高いものほど利用者の興味・指向に近いコンテンツとし、このコンテンツのサムネイルが、VRML(Virtual Reality Modeling Language)などのような3次元的な表示手段を用い、ウインド162のより手前に表示されるようにする。なお、図1において、表示部106には、ウインド161内でマウスカーソルにより選択されたサムネイル163について、ウインド161の右側の詳細欄164にコンテンツに関するホームページが表示され、ポップアップウインド165には選択されたサムネイルに対応するコア映像コンテンツ、或いは広告映像コンテンツが提示されている状態を示している。以上の結果、利用者端末105の表示部106には、利用者の興味が反映された状態で、利用者の興味に適したコア映像コンテンツや広告映像コンテンツが表示される。」

上記ア.?キ.の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮して引用文献1の記載事項を検討する。

(i)引用文献1には、上記ア.?ウ.にあるように、コンテンツプロバイダから供給される映像コンテンツを提供する配信サーバを備えた映像ポータルシステムであって、利用者が所望の映像コンテンツに容易にアクセスできるような状態で提供するシステムが記載されている。

(ii)上記エ.及びオ.には、映像コンテンツと関連するホームページや文字放送等の文書情報から、コンテンツプロファイルを作成すること、また、利用者に対して送信したコンテンツのコンテンツプロファイルから、利用者の要求特性であるユーザプロファイルを作成することが記載されている。

(iii)上記カ.及び、キ.には、利用者端末からのリクエストにより、ユーザプロファイルとコンテンツプロファイルとの間の類似度を求め、各コンテンツのサムネイルを、類似度の高いものほど利用者の興味・嗜好に近いコンテンツとして、より手前に表示されるように、3次元的に表示させることにより、複数の映像コンテンツを、利用者の興味が反映された状態で利用者端末に表示することが記載されている。また、表示されるサムネイルは、映像コンテンツに含まれる代表画像フレームや関連ホームページの代表画像である。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「利用者が所望の映像コンテンツに容易にアクセスできるような状態で提供するシステムにおける配信サーバであって、
コンテンツプロバイダから利用可能な複数の映像コンテンツについてのリクエストを利用者端末から受け取るよう構成され、
利用者の要求特性であるユーザプロファイルを作成するよう構成され、
ユーザプロファイルに基づいて、リクエストされた複数の映像コンテンツに含まれる代表画像フレームや関連ホームページの代表画像を、利用者の興味が反映された状態で利用者端末に表示するシステム。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2003-61000号公報)には、「制御装置、およびプログラム」(発明の名称)として図面とともに次の事項が記載されている。

ク.「【0002】【従来の技術】近年、デジタル放送の開始に伴い、番組情報の一覧(いわゆる電子番組表、EPG)を蓄積する受信機が提供されている。このような受信機に対して、視聴者は、番組情報の一覧から所望の番組を指定する。受信機は、指定された番組の情報を表示し、あるいは番組の予約を行う。
【0003】また蓄積・保持されている番組情報の一覧に含まれる情報を利用して特定の情報に関連した番組を検出し、そのような番組に関する情報の表示あるいは予約を行う機能も想定されている。
【0004】?【0010】(略)
【0011】(前略)本発明の課題は、視聴者が番組内容に関する情報を持っていなくても、視聴中の番組内容に関連する番組について容易に情報の獲得・視聴・予約を行える機能を提供することである。」

ケ.「【0031】番組情報保持装置2は、記憶装置に番組情報データベース23を保持する。この番組情報データベース23は、様々な手順により構成することができる。例えば、放送電波に多重化されたものを記憶装置に蓄積してもよい。また、他の媒体、例えばインターネットを介してダウンロードし、蓄積してもよい。また、CD-ROM等のリムーバルディスクを介して入力してもよい。
【0032】この番組情報データベース23に保持されている番組情報には、番組名・放送日時・放送局などの放送情報と、出演者・制作関連者・団体・ジャンル・出演役名などの内容情報などが含まれている。番組情報保持装置2は、番組情報データベース23において、指定の情報に関連した番組を特定する。この指定の情報は、一般的には文字情報を含む。」

コ.「【0036】今、表示装置6においては、二人の登場人物が表示され、「ポンド、生きていたのか」という音声が出力されると仮定する。ただし、「ポンド、生きていたのか」という字幕表示がされていてもよい。このような番組視聴中に、視聴者がリモコンの”関連番組”ボタンを押下すると、受信機の関連番組検索機能が開始する。
【0037】図3に、関連番組検索機能実行後の画面イメージを示す。この画面では、「ポンド、生きていたのか」という音声または字幕の文字から、まず、”ポンド”という名詞が抽出される。そして、その名詞、例えば、配役名”ポンド”およびその配役としての出演者名”ジョーン・コネリー”により関連番組の一覧が検索され、表示装置6に表示されている。また、その関連番組の一覧上で現在のカーソル位置が太枠で表示されている。」

上記ク.?コ.の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮して引用文献2の記載事項を検討すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「番組名・放送日時・放送局などの放送情報と、出演者・制作関連者・団体・ジャンル・出演役名などの内容情報などを含む番組情報を、番組情報データベースに保持しておき、視聴者の指示により、視聴中の番組の出演者名などに基づいて、番組情報データベースを検索して、視聴中の番組と関連する番組を一覧表示する受信機。」

第4 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明1における「映像コンテンツ」、「コンテンツプロバイダ」、「映像コンテンツについてのリクエスト」、「利用者端末」、「ユーザプロファイル」、「映像コンテンツに含まれる代表画像フレームや関連ホームページの代表画像」は、本願発明1における「映像資産」、「コンテンツプロバイダ供給源」、「映像資産についての要求」、「クライアント装置」、「パーソナル化データ」、「映像資産に関連する静止画像」に相当する。
また、引用発明1の「配信サーバ」と、本願発明1の「多チャンネルヘッドエンドコンピュータ」とは、いずれも「コンピュータ」である点で共通し、引用発明1の「リクエストされた複数の映像コンテンツに含まれる代表画像フレームや関連ホームページの代表画像を、利用者の興味が反映された状態で利用者端末に表示する」ことと、本願発明1の「クリップ又は静止画像が前記パーソナル化データによって示される少なくとも一つのユーザプリファレンスにしたがって前記要求された複数の映像資産を示し、前記要求された複数の映像資産に関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つを含むパーソナル化されたユーザ・インタフェースを提示する」こととは、いずれも「要求された複数の映像資産に関連する静止画像を含むパーソナル化されたユーザ・インタフェースを提示する」ものである点で共通する。そして、引用発明1の「利用者が所望の映像コンテンツに容易にアクセスできるような状態で提供する」ことは、本願発明1の「視聴する所望の映像資産を選択するユーザを助ける」作用を有しているといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>

「視聴する所望の映像資産を選択するユーザを助けるシステムにおけるコンピュータであって、
コンテンツプロバイダ供給源から利用可能な複数の映像資産についての要求をクライアント装置から受け取るよう構成され、
前記コンピュータにおいて、前記要求された複数の映像資産を決定するよう構成され、
要求された複数の映像資産に関連する静止画像を含むパーソナル化されたユーザ・インタフェースを提示するよう構成されたシステム。」

<相違点>

(相違点1)システムを構成する「コンピュータ」に関して、本願発明1が「多チャンネルビデオヘッドエンドコンピュータ」であるのに対し、引用発明1は「配信サーバ」である点。

(相違点2)「映像資産」に関して、本願発明1では、「複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源」からのものであり、「映像資産に関するメタデータ」を含み、当該メタデータは、「メタデータデータベースに記憶され」ており、「メタデータカテゴリ」を含むのに対し、引用発明1では、そのように構成されているか不明な点。

(相違点3)本願発明1のシステムでは、クライアント装置から「メタデータカテゴリの組から選択されたもの」である「メタデータカテゴリについての要求」を受け取り、「メタデータカテゴリに基づき、複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源を探し、探した前記コンテンツプロバイダ供給源から要求された複数の映像資産を決定する」のに対し、引用発明1では、そのように構成されていない点。

(相違点4)本願発明1のシステムでは、「要求された複数の映像資産のそれぞれに関連するメタデータを取得するよう構成され」ているのに対し、引用発明1では、そのように構成されているか不明な点。

(相違点5)本願発明1のシステムでは、「パーソナル化サーバから、少なくとも加入者データ及び第三者からの外部データを含むパーソナル化データを取得するよう構成され、ここで、前記パーソナル化データがユーザに関連する個人的プロフィールに記憶されて」いるのに対し、引用発明1では、そのように構成されていない点。

(相違点6)本願発明1のシステムが「要求された複数の映像資産に関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つをパーソナル化データに基づいてクリップ/静止画像データベースから検索するよう構成」され、「2以上のクリップ又は静止画像が映像資産ごとに用意され」ており、「クリップ又は静止画像は、ユーザプリファレンスにしたがって選択され、映像資産の異なる側面を強調する」ユーザ・インタフェースを提示するのに対し、引用発明1は、そのように構成されていない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑みて、上記相違点6について検討するに、上記第3において検討したとおり、引用文献2には、「番組名・放送日時・放送局などの放送情報と、出演者・制作関連者・団体・ジャンル・出演役名などの内容情報などを含む番組情報を、番組情報データベースに保持しておき、視聴者の指示により、視聴中の番組の出演者名などに基づいて、番組情報データベースを検索して、視聴中の番組と関連する番組を一覧表示する受信機。」との発明が記載されており、番組の検索に用いる情報と、検索指示の内容と手順、検索結果の表示についての開示はあるものの、相違点6に係る「一の映像資産の異なる側面を強調するために、2以上のクリップ又は静止画像を映像資産ごとに用意し、ユーザプリファレンスにしたがって選択し、ユーザに提供する」構成は、記載も示唆もされていない。また、当該構成が、本願出願前において、周知技術であるとも認められない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-11について
本願発明2-11は、本願発明1を引用しており、いずれも、先に検討した相違点6に係る構成を備えた発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明12-18について
本願発明12-18は、それぞれ本願発明1-4、11、9、10に対応する方法の発明であり、実質的にカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は、請求項1-18について上記引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、上記第3及び第4にて検討したとおり、平成29年3月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載の、本願発明1-18は、上記引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について

1.平成28年9月23日付け当審拒絶理由の概要

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1-18について
(A)「複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源から利用可能な複数の映像資産についての要求をクライアント装置から受け取るよう構成され、ここで、要求された前記複数の映像資産のそれぞれのメタデータは、所望のメタデータカテゴリを含んでおり、前記所望のメタデータカテゴリは、第1の映像資産に関連するメタデータカテゴリの組から選択されたものであり、」について、上記の「映像資産についての要求」とメタデータとの関係が不明である。
(B)「前記複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源を探し、前記要求された複数の映像資産を決定するよう構成され」との記載の意味が明確でない。
(C)「ユーザプリファレンス」という記載の意味が明確でない。
(D)「前記要求された複数の映像資産に関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つを含むパーソナル化されたユーザ・インタフェースを提示するよう構成され、ここで、前記クリップ又は静止画像が前記ユーザプリファレンスにしたがって前記映像資産の異なる側面を強調する」の記載の意味が明確でない。

2.当審拒絶理由についての判断

指摘事項(A)については、平成29年3月27日付け手続補正書によって、「複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源から利用可能な複数の映像資産に含まれるメタデータカテゴリについての要求をクライアント装置から受け取るよう構成され、ここで、要求された前記複数の映像資産のそれぞれのメタデータは、所望のメタデータカテゴリを含んでおり、前記所望のメタデータカテゴリは、第1の映像資産に関連するメタデータカテゴリの組から選択されたものであり、前記要求における前記メタデータカテゴリに対応し、」と補正された。
同(B)については、「前記多チャンネルビデオヘッドエンドコンピュータにおいて、前記所望のメタデータカテゴリに基づき、前記複数の異なるコンテンツプロバイダ供給源を探し、探した前記コンテンツプロバイダ供給源から前記要求された複数の映像資産を決定するよう構成され、」と補正された。
同(D)については、「前記要求された複数の映像資産に関連するクリップ又は静止画像の少なくとも一つを含むパーソナル化されたユーザ・インタフェースを提示するよう構成され、ここで、2以上のクリップ又は静止画像が映像資産ごとに用意され、前記クリップ又は静止画像は、前記ユーザプリファレンスにしたがって選択され、前記映像資産の異なる側面を強調する」と補正された。
また、指摘事項(C)については、平成29年3月27日付けの意見書における釈明により、「ユーザプリファレンス」という記載は、発明の詳細な説明の記載から「消費者の個人的な好み又は履歴」、「過去のVOD購入行動」などを意味することが明らかとなった。

これにより、請求項1乃至18に係る発明は明確となり、当審拒絶理由は解消した。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明1-18は、当業者が引用文献1、2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-12 
出願番号 特願2012-38419(P2012-38419)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
P 1 8・ 537- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 赤穂 州一郎竹中 辰利  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 篠原 功一
藤井 浩
発明の名称 映像選択を強化するためのシステム及び方法  
代理人 近藤 直樹  
代理人 辻居 幸一  
代理人 上杉 浩  
代理人 須田 洋之  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 山崎 貴明  
代理人 大塚 文昭  

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