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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 産業上利用性 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1327815
審判番号 不服2016-10840  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-19 
確定日 2017-05-23 
事件の表示 特願2014-549538「レーザ走査顕微鏡を備えた測定システムによる試料の3次元測定方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/098567、平成27年 4月30日国内公表、特表2015-513065、請求項の数(26)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年1月5日(パリ条約による優先権主張 2011年12月28日、ハンガリー)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月6日付けで、国際出願翻訳文及び特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され、平成27年7月28日付けで拒絶理由が通知され、平成27年10月23日付けで手続補正がなされたが、平成28年3月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年7月19日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年3月8日付け拒絶査定)の概要は、次の1.?3.のとおりである(なお、請求項の項番は、平成27年10月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された請求項の項番である。)。

1.理由2(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項22,23には「波長」と記載されているが、何の波長であるのか明瞭でない。

2.理由3(産業上の利用可能性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
請求項1、6、7、段落0037、0038の記載より、請求項1-18に係る発明には、人間の手術、治療、診断等の医療行為が含まれていると解釈せざるを得ない。
したがって、請求項1-18に係る発明は「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当する。
よって、請求項1-18に係る発明は特許法第29条第1項柱書でいう産業上利用することができる発明に該当しないから、同項柱書に規定する要件を満たしていない。

3.理由4(進歩性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-3,19-26
・引用文献等 1-4
・備考
引用例1にはレーザ走査顕微鏡を用いる旨の記載はないが、レーザ走査顕微鏡は、引用例2(要約欄等)、引用例3(要約欄等)、引用例4(要約欄等)に記載されているように当業者に周知のものであり、音響光学素子等の走査手段も周知であるから、当該周知のものを引用例1記載の発明に適用することにより本願発明を想到することは、当業者が容易になし得たことである。

・請求項 4-11
・引用文献等 1-5
引用例5の段落0003には、「得られた三次元形状は、一般的には対象物表面の各計測点の3次元位置座標の集合として表され、該集合はポイントフォグと呼ばれる。」と記載されている。

・請求項 12-18
・引用文献等 1-6
裸眼立体ディスプレイは周知である(例えば引用例6要約欄等参照。)。

<引用文献等一覧>
1.特表2008-500624号公報
2.国際公開第2010/007452号(周知技術を示す文献)
3.特開2010-266461号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-266709号公報
5.特開2006-72873号公報
6.特開2011-215176号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正について、本件補正前の請求項1、19に記載された「レーザ走査顕微鏡」に「その3次元測定空間で動作する」という事項を追加する補正、及び、本件補正前の請求項1、19に記載された「オペレーション」に「(人間の手術を除く)」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」まで、及び「第7 原査定について」「1.」「2.」に示すように、補正後の請求項1?26に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1?26に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明26」という。)は、平成28年7月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
3次元測定空間を有するとともに、その3次元測定空間で動作するレーザ走査顕微鏡を備えた測定システムによる、試料の3次元測定のための方法であって、
3次元仮想現実装置を前記測定システムに設けることと、
前記測定空間から離隔した実空間領域内に、前記3次元仮想現実装置を用いて、前記測定空間の3次元仮想空間を作成することと、
オペレーション(人間の手術を除く)を選択するための3次元入力装置を前記3次元仮想現実装置に設けることと、
前記3次元入力装置の空間位置が仮想3次元入力装置の空間位置と一致するか、または、それに対して所定の空間ベクトルでオフセットするように、前記3次元仮想現実装置を用いて前記仮想3次元入力装置を作成することと、
前記3次元入力装置の実空間位置を追跡し、前記仮想3次元入力装置を前記仮想空間の対応する位置に表示し、前記仮想3次元入力装置によって前記仮想空間でオペレーションを選択することを許可することと、
前記仮想空間で選択されたオペレーションが前記測定空間で実行されて、前記測定空間で測定されたデータが前記仮想空間でリアルタイムに表示されるように、前記測定空間と前記仮想空間との間に双方向のリアルタイム接続を提供すること、とを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記レーザ走査顕微鏡の測定空間内に配置された試料または試料の一部を3次元で走査することと、
走査された前記試料を前記仮想空間に表示することと、
少なくとも1つの点及び/または曲線及び/または領域を含む仮想コンフィギュレーションを選択することを許可することと、
前記仮想コンフィギュレーションに対応する前記測定空間の座標を算出することと、
前記測定空間の座標に基づいて、前記仮想コンフィギュレーションに従って前記試料を走査するとともに走査の最中に前記試料で測定及び/またはインタラクションを実行するように、前記レーザ走査顕微鏡を制御することと、とを有する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料の前記3次元走査の過程で、前記レーザ走査顕微鏡の光軸と直交または交差する複数の平面において前記試料を走査することと、
走査された前記平面を前記仮想空間に表示することと、とを有する 請求項2に記載の方法。
【請求項4】
走査された前記試料またはその一部を、前記仮想空間に空間フォグとして表示する 請求項3に記載の方法。
【請求項5】
走査された前記試料またはその一部を、前記仮想空間に空間的表面要素として表示することと、3次元効果を高めるために1つ以上の模擬光源を使用することと、とを有する 請求項3に記載の方法。
【請求項6】
物理的オペレーションを実行するように機能するオペレーション装置であって、測定用レーザ光線と同時に作動し得るオペレーション装置を、前記測定システムに設けることと、
前記測定空間における前記オペレーション装置のオペレーションを、前記仮想空間で選択することと、
前記仮想空間で選択された前記オペレーションを、前記測定空間において前記オペレーション装置により実行することと、とを有する
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記物理的オペレーションは、物理的インタラクション、または物理パラメータの測定であり、前記物理的オペレーションを実行するように機能する前記オペレーション装置は、レーザアブレーション装置、超音波凝固器、レーザ凝固器、マイクロインジェクタ、真空吸引装置、光ケーブル、プリズム、グリッドレンズ、電気刺激装置、試料に挿入される電極である測定装置、パッチクランプ法のためのマイクロピペット、細胞外記録用電極、内視鏡装置、電気泳動装置である
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
3次元入力装置が3次元マーカである
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
その座標系が前記仮想空間と同期されているとともに、オペレーションを選択するための3次元空間曲線及び点を描画及び選択するのに適した、3次元マウスまたは機械的アームを、前記3次元仮想現実装置に設ける
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
オペレーションを選択するために設けられた前記3次元入力装置のポインティングデバイスの空間位置は、該装置に属する仮想マーカの空間位置と一致しているか、または、それに対して所定の空間ベクトルでオフセットしている
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
3次元入力装置及び(該入力装置により駆動される)そのオプションの3次元仮想マーカの所与の局所仮想環境における仮想現実の光学コントラストまたは視認性を変更することで、インタラクションをより良好に表示するためにコントラストを高める
請求項6ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記測定空間で測定されたデータを表示するために、裸眼立体ディスプレイである3次元表示装置を、前記3次元仮想現実装置内に設ける
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記測定空間で測定されたデータを表示するために、立体ディスプレイである3次元表示装置と、眼鏡である能動型または受動型の立体視ユーザデバイスとを、前記3次元仮想現実装置に設ける
請求項1ないし12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記3次元仮想現実装置内で頭部位置追跡を提供することと、ユーザの頭部の位置に応じて前記3次元表示装置により前記仮想空間を表示することと、とを有する
請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
複数の3次元仮想現実装置を、前記測定システムに設けることと、
複数のユーザのために、前記測定空間の複数の3次元仮想空間を、前記複数の3次元仮想現実装置により作成することと、とを有する
請求項1ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記複数の3次元仮想現実装置と前記測定システムとの間に、ローカルネットワークまたはグローバルネットワークを介したリアルタイム接続を提供する
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
複数の測定システムのための共通の3次元仮想現実装置を設けることと、該複数の測定空間の共通の3次元仮想空間を前記共通の3次元仮想現実装置により作成することと、とを有する
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記測定システムは、2光子レーザ走査顕微鏡または共焦点レーザ走査顕微鏡を備える 請求項1ないし17のいずれかに記載の方法
【請求項19】
試料の3次元測定のための測定システムであって、該測定システムは、3次元測定空間を有するとともに、その3次元測定空間で動作するレーザ走査顕微鏡を備え、
前記測定空間から離隔した実空間領域内に前記測定空間の3次元仮想空間を表示するための3次元仮想現実装置をさらに備え、前記レーザ走査顕微鏡と前記3次元仮想現実装置との間に双方向のリアルタイム接続が提供され、
オペレーション(人間の手術を除く)を選択するための3次元入力装置が前記3次元仮想現実装置に設けられ、
前記3次元入力装置の空間位置が仮想3次元入力装置の空間位置と一致するか、または、それに対して所定の空間ベクトルでオフセットするように、前記3次元仮想現実装置を用いて前記仮想3次元入力装置が作成され、
前記3次元入力装置の実空間位置を追跡し、前記仮想3次元入力装置を前記仮想空間の対応する位置に表示し、前記仮想3次元入力装置によって前記仮想空間でオペレーションを選択することを許可され、
前記仮想空間で選択されたオペレーションが前記測定空間で実行されて、前記測定空間で測定されたデータが前記仮想空間でリアルタイムに表示される
ことを特徴とする測定システム。
【請求項20】
物理的オペレーションを実行するためのオペレーション装置を備え、前記オペレーション装置と前記3次元仮想現実装置との間に単方向または双方向のリアルタイム接続が提供される
請求項19に記載の測定システム。
【請求項21】
試料の3次元測定のための測定システムであって、該測定システムは、3次元測定空間を有するとともに、レーザ走査顕微鏡及びオプションとして他のオペレーション装置を備え、さらに制御システムが設けられていて、
請求項1ないし18のいずれかに記載の方法を実行するために、前記制御システムとの双方向のリアルタイム接続を有する3次元仮想現実装置を備える
ことを特徴とする測定システム。
【請求項22】
前記3次元測定を前記レーザ走査顕微鏡の複数の周波数で同時または略同時に行う
請求項1ないし18のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記レーザ走査顕微鏡の複数の周波数で測定することと、同時または略同時に複数の周波数で物理的オペレーションを実行することと、とを有する
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記3次元レーザ走査顕微鏡での機械的変位により、z焦点合わせ及び/またはxy走査を提供する 請求項18に記載の方法。
【請求項25】
空間走査の過程で実現される物理的変位と、測定するために選択されたコンフィギュレーションとの間の誤差を、前記3次元仮想空間に表示することと、測定の空間的誤差を減少させるように3次元入力装置を用いて空間軌道を修正することと、とを有する
請求項1ないし18のいずれかに記載の方法及び測定システム。
【請求項26】
音響光学偏向システムを有するか、またはホログラフィック・スキャナユニットを有する3次元レーザ走査顕微鏡を用いること、または時空間多重化により(すなわち、空間インパルス分離により)3次元走査を実行する3次元レーザ走査顕微鏡を用いること、または機械的に変位可能なレンズを電界で制御することにより3次元走査を実行する3次元レーザ走査顕微鏡を用いること、とを有する
請求項18に記載の方法及び測定システム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由4に引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【請求項50】
仮想3次元空間内でオペレーションを実行する方法において、
仮想3次元空間(16)を視覚化するステップと、
前記仮想3次元空間(16)内で実行されるべきオペレーションの位置(P_(1))を、実3次元空間(10)内で位置決めすることにより、マーキングするステップと、
前記実3次元空間(10)の前記位置(P_(1))を前記仮想3次元空間(16)の位置(P^(*)_(1))にマッピングするステップと、
前記仮想3次元空間(16)内の前記マッピングされた位置(P^(*)_(1))で前記オペレーションを実行するステップと、
を備え、
前記実3次元空間(10)内で位置決めするステップが、
位置決め手段(135)に固定された少なくとも1台の信号源を前記実3次元空間(10)の選択された位置(P_(1))へ移動するステップ、
前記選択された位置(P_(1))にある前記少なくとも1台の信号源によって放出された信号を、少なくとも2台のイメージセンサによって、検出するステップと、
前記イメージセンサによって生成された前記信号及び前記イメージセンサの互いに相対的な空間ロケーションに基づいて、前記イメージセンサと相対的な前記位置決め手段(135)の実空間位置(P_(1))を決定するステップと、
を備えることを特徴とする方法。」

「【請求項58】
位置決めするステップが前記実3次元空間(10)内で点状ロケーションをマーキングする工程を備える、請求項50?57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
位置決めするステップが前記実3次元空間(10)内で連続的なセクションをマーキングする工程を備える、請求項50?57のいずれか一項に記載の方法。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想3D空間内で動作するシステム及び方法と、視覚化システムを介して、実行されるべきオペレーションを選択するシステムと方法に関する。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明による仮想3Dマニピュレーションシステムの機能ブロック図が図1に示されている。」

「【0037】
位置決め手段の位置P_(1)及び姿勢O_(1)は、位置追跡システム12によって、処理手段W_(0)へ転送され、処理手段W_(0)は、実空間10の位置P_(1)及び実空間姿勢O_(1)を仮想3次元空間16内の位置P^(*)_(1)及び姿勢O^(*)_(1)にマッピングする。実空間10及び仮想空間16が一致するならば、すなわち、仮想空間16が実空間10に対して較正されるならば、位置P1は位置P^(*)_(1)と一致し、姿勢O_(1)は姿勢O^(*)_(1)と一致し、よって、実空間10内で作業を実行するのと同じように、仮想空間16内で作業可能である。」

「【0049】
3D視覚化システムによって視覚化された仮想3次元空間を、オペレーションを測位するため使用される実3次元空間と正確に一致させるため、3D視覚化システムを較正しなければならない。」

「【0055】
仮想3次元空間及び実3次元空間が本発明による仮想3Dマニピュレーションシステム内で一致するならば、視覚化システムを介して所望のオペレーションを選択することが可能である。このようなシステムを実施するため、視覚化システムによって視覚化された画像は、各フィールドが所定の機能を有するアクティブ化可能なフィールドを含むべきである。視覚化システムは3次元画像を視覚化する能力があるので、実行されるべきオペレーションは、視覚化された仮想空間内で点状のフィールド、2次元フィールド、又は、3次元フィールドをマーキング(例えば、接近、接触、交差など)することによって選択され得る。したがって、視覚化システムを介してオペレーションを選択するシステムは、所定の機能をもつアクティブ化可能なフィールドを有する画像を視覚化するシステムと、少なくとも1台の光源が設けられた位置決め手段、位置決め手段の少なくとも1台の光源によって放出された光信号を検出する複数台のイメージセンサ、及び、イメージセンサによって生成された信号と互いに相対的なイメージセンサの位置に基づいてイメージセンサと相対的な位置決め手段の実空間位置を決定する処理手段W1(図1に示されている)を含む位置追跡システムと、を備える。オペレーションを選択するシステムは、視覚化システムによって視覚化された画像内でマーキングされた位置と関連付けられたフィールドをアクティブ化する処理手段W5(図1に示されている)をさらに備え、「フィールドをアクティブ化する」という用語は、そのフィールドに割り当てられたオペレーションを実行することを意味する。処理手段W1及びW5は、好ましくは、同じプロセッサ上で起動するコンピュータプログラムである。上記のシステムを用いることにより、3D視覚化システムを利用して、仮想3次元空間内に1個以上の平面又は空間セグメントを定めることを可能にする空間「タッチスクリーン」が作成され得、各セグメントは、所定の機能が各フィールドに割り当てられた1個以上の点状及び/又は2次元及び/又は3次元のアクティブ化可能なフィールドを有する。例えば、図5は、仮想3次元空間内に平面の形式で複数のユーザインターフェイス210を表示する3次元タッチスクリーン200を示し、ユーザインターフェイス210は、周辺にアクティブ化可能なフィールド220(図5では薄い灰色で埋められている)を備える。選択されたオペレーション又は機能に関連付けられたマーキングされたフィールド222(図5では濃い灰色で埋められている)は、仮想3次元空間内で位置決め手段135を用いてそのフィールドに接近又は接触することによってアクティブ化され得る。」

「【0058】
上記の仮想3Dタッチスクリーン(又は、特殊なケースの2Dタッチスクリーン)は、位置決め手段によって、表示場所又は表示に近い環境だけでなく、離れた場所において、表示された画像のアクティブ化可能フィールドのマーキングを可能にする。このような状況では、位置追跡のため使用される実3次元空間と3D又は2D画像を視覚化する場所が物理的に別個であることは自明である。画像のアクティブ化可能フィールドを遠隔的にアクティブ化するため、位置決め手段は、高信頼性画像センシングのため、複数台の光源、好ましくは、4台の光源を備える。処理手段W1は、イメージセンサと相対的な位置決め手段の実空間位置と実空間姿勢の両方を計算し、処理手段W5は、その位置及び姿勢に対応する画像のフィールドをアクティブ化する。このような遠隔マーキングは、例えば、遠方からプレゼンテーションの観客のため投影された画像を操作すること、又は、インターネットを介して離れた場所に表示された画像を操作することを可能にさせる。遠隔マーキングの場合、視覚化システムを較正することが必然的に要求され、その較正中に選択された視覚化システムの基準点が位置追跡のため使用される空間のそれぞれの基準点に割り当てられるべきであることに注意すべきである。」

「【0059】
本発明による仮想3Dマニピュレーションシステムは、仮想空間内でのオペレーションが必要とされるか、又は、好ましい分野、例えば、芸術、科学、教育、娯楽などにおいて、ならびに、物体を設計し、さらに成形し、又は、回転する際に、特に使用され得るので特に有利である。仮想3次元空間では、あらゆる種類の平面的な表面又は空間的な表面は自由に成形され得、木、石、プラスティシーン、粘土、金属などを含み得る表面の仮想的な材料が選択され得、成形プロセス中に、仮想的な材料が変更されることさえある。本発明によるシステムの別の利点は、システムの実施及びオペレーションが著しく低コストであり、かつ、簡単であるということである。本発明による仮想3Dマニピュレーションシステムは、例えば、形状のアニメーション、形状の測定、テストの実行などを可能にする。さらに、創造的な作業は、平面的なプランを準備し、次に、そのプランを3次元に変換することを必要とすることなく、所望の形状を空間的に製作することで直ぐに始まり得る。したがって、創造的な作業に要する時間とコストは実質的に削減される。一般に、本発明によるシステムは、仮想空間内でのオペレーションの実行が役立つすべての分野において有利である。
【0060】
本発明による仮想3Dマニピュレーションシステムを、技術的プロセスにおいて使用されるロボットアーム、自動機器、工作機械、又は、手術用マニピュレータなどのような実3Dマニピュレーションシステムと共に使用することは特に有利である。これらのアプリケーションでは、実空間で実行されるべきオペレーションは、最初に仮想空間で実行され得、仮想空間における結果に満足できるならば、実3Dマニピュレーションシステムのアクチュエータが実際にオペレーションを実行するように指令され得る。例えば、ワークピースが最適な形状になるように加工されるべきであるならば、仮想空間内のシミュレータプログラムによって複数の3次元形状が準備されテストされ得、最適な形状が見つけられたならば、対応する指令を旋盤に送信した後、最適な形状をもつ実際のワークピースが旋盤によって直ちに製作され得る。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「仮想3次元空間内でオペレーションを実行する方法において、
仮想3次元空間(16)を視覚化するステップと、
前記仮想3次元空間(16)内で実行されるべきオペレーションの位置(P1)を、実3次元空間(10)内で位置決めすることにより、マーキングするステップと、
前記実3次元空間(10)の前記位置(P_(1))を前記仮想3次元空間(16)の位置(P^(*)_(1))にマッピングするステップと、
前記仮想3次元空間(16)内の前記マッピングされた位置(P^(*)_(1))で前記オペレーションを実行するステップと、
を備え、
前記実3次元空間(10)内で位置決めするステップが、
位置決め手段(135)の実空間位置(P_(1))を決定するステップと(【請求項50】より)、前記実3次元空間(10)内で点状ロケーション、または連続的なセクションををマーキングする工程を備え(【請求項58】、【請求項59】より)、
位置決め手段の位置P_(1)及び姿勢O_(1)は、位置追跡システム12によって、処理手段W0へ転送され、処理手段W_(0)は、実空間10の位置P_(1)及び実空間姿勢O_(1)を仮想3次元空間16内の位置P^(*)_(1)及び姿勢O^(*)_(1)にマッピングし、実空間10及び仮想空間16が一致するならば、位置P_(1)は位置P^(*)_(1)と一致し、姿勢O_(1)は姿勢O^(*)_(1)と一致し(段落【0037】より)、
実行されるべきオペレーションは、視覚化された仮想空間内で点状のフィールド、2次元フィールド、又は、3次元フィールドをマーキング(例えば、接近、接触、交差など)することによって選択され得(段落【0055】より)、
オペレーションを選択するシステムは、視覚化システムによって視覚化された画像内でマーキングされた位置と関連付けられたフィールドをアクティブ化する処理手段W5をさらに備え、「フィールドをアクティブ化する」という用語は、そのフィールドに割り当てられたオペレーションを実行することを意味する(段落【0055】より)、
方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由4において、周知技術を示す文献として引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【要約】
The invention relates to a laser scanning microscope (10) having: focusing means (15) having a focal plane (29) and comprising at least one optical element for focusing a laser beam (13); drive means (18) for displacing the at least one optical element of the focusing means (15) for changing the position of the focal plane (29), and deflecting means (14) for deflecting the laser beam (13). The microscope comprises a control system (32) configured to carry out the steps of: providing a periodical drive signal for the drive means (18); obtaining time dependant displacement data of the at least one optical element of the focusing means (15) in response to the periodical drive signal of the drive means (18); providing a response function (z(t)) using the time dependant displacement data, calculating a drive signal for the deflecting means (14) using the response function (z(t)) to move the focal volume (30) of the laser beam (13) along a given 3D trajectory (48) within a sample to be examined. The invention further relates to a method for carrying out such a scanning operation along a 3D trajectory (48). 」(当審訳:【要約】
本発明は、次のものを有するレーザー走査顕微鏡(10)に関連します: 焦点平面(29)を有し、レーザービーム(13)の焦点を合わせるための少なくとも一つの光学要素からなる、合焦手段(15); 合焦手段(15)における少なくとも1つの光学要素を移動手段を移動させ、焦点平面(29)の位置を変化させるための駆動手段(18)、及び、レーザビーム(13)を反射するための反射手段。顕微鏡は、次のステップを実行するよう設計された制御システム(32)から構成されています。 駆動手段(18)に周期的な駆動信号を供給する; 駆動手段(18)の周期的な駆動信号に応答して、合焦手段(15)の少なくとも1つの光学要素の時間に依存した変位データを取得する。; 時間に依存した変位データを用いて、応答関数(z(t))を提供すること、検査する試料内の所与の3D軌跡(48)に沿ってレーザビーム(13)の焦点容量(30)を移動させるために、応答関数(z(t))を用いて、反射手段(14)のための駆動信号を計算すること。 本発明はさらに3D軌跡(48)に沿ってこのような走査のオペレーションを実行するための方法に関連しています。)

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由4において、周知技術を示す文献として引用された、引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【要約】 (修正有)
【課題】観察試料の表面形状を直感的で判りやすく表示することができ、3次元情報取得の操作性を格段に向上することが可能な走査型共焦点顕微鏡を提供すること。
【解決手段】対物レンズの集光位置と試料の相対的な位置を集束光の光軸方向に治って離散的に繰り返し往復動作させて光強度情報を取得し、抽出した光強度情報に適合する変化曲線上の最大値と相対位置を推定し、輝度情報と高さ情報として取得し、移動機構の反転動作から次の反転動作までの間に取得される各相対位置での試料からの光強度情報を光強度情報群として取り扱い、試料からの非共焦点画像情報を光強度情報とは別に取得し、移動機構の反転動作位置から次の反転動作位置の間に得られる試料の高さ情報を、取得した非共焦点画像情報とともに同一画面上に、移動機構が反転動作位置から次の反転動作位置に移動する毎に試料形状の3D画像、非共焦点画像を更新して表示する。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由4に引用された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【課題】少ないリソースで、有効な解析を行うことができるようにする。
【解決手段】まず、設定されたXYZ走査領域A_(XYZ)をプレビュー走査して(S12)、プレビュー画像I_(P1)ないしI_(Pn)を取得し(S13)、クロップ領域A_(C1)ないしA_(Cn)を設定する(S15ないしS18)。次に、設定されたクロップ領域A_(C1)ないしA_(Cn)に基づいて算出した本走査を行う際の各Zステップにおけるクロップ領域A_(C1)ないしA_(Cm)を本走査して(S19,S20)、クロップ画像I_(C1)ないしI_(Cm)を取得する。そして、取得したクロップ画像I_(C1)ないしI_(Cm)から3次元画像を生成することで、少ないリソースで有効な解析を行うことができる。本発明は、例えば、試料Sの3次元データを取得するコンフォーカル顕微鏡に適用できる。」

「【0037】
ここで、クロップ領域A_(C)とは、元になる画像のうち必要な部分のみを切り出す(クロップ:Crop)走査であるクロップ走査を行う領域を意味する。このクロップ走査では、必要な部分を画像化する方式と異なり、元の画像の分解能と走査速度を落とさずに必要な部分を走査するので、データを短時間で取得することが可能となる。クロップ領域A_(C)の設定には、領域の中心となる座標と、その座標を中心とする領域のX,Y方向のピクセル数の設定が必要となり、以下に、本実施の形態におけるクロップ領域A_(C)の設定手順を、図5を参照しながら説明する。
【0038】
図5aには、プレビュー走査によって得られたプレビュー画像I_(P1)ないしI_(Pn)が、図示されている。これらのプレビュー画像I_(P1)ないしI_(Pn)には、試料Sの観察対象となる細胞の断面像と観察対象外の細胞の断面像とが表示されているが、これは、例えば、脳組織の神経細胞などでは、1つのプレビュー領域A_(P)内に複数の神経軸策が存在することが多くあるため、観察対象の細胞の近くに他の細胞があると、それらの観察対象ではない細胞までプレビュー画像I_(P)に表示されることになる。そのため、本実施の形態では、プレビュー画像I_(P)に表示された複数の細胞の像の中から観察対象となる細胞のみ含むクロップ領域A_(C)を設定するようにしている。
【0039】
例えば、図5bに示すように、プレビュー画像I_(P1)からクロップ領域A_(C)をユーザの操作により設定するには、試料Sの断面像のうち、クロップ領域A_(C)として切り出す領域の中心点をユーザがマウス等の入力装置13を操作して指定し、その点を中心とするクロップ領域A_(C1)をマウス等のドラッグ操作により選択する、又はその点を中心とする領域のX,Y方向の各ピクセル数をキーボードで入力することにより選択すると、ステップS15において、そのユーザの操作入力に応じたクロップ領域A_(C1)が、走査領域設定部101によって設定される。」

「【0047】
そして、クロップ領域A_(C)の設定が確定されると、処理は、ステップS19に進む。ステップS19において、走査領域設定部101は、プレビュー画像I_(P)にて設定された複数のクロップ領域A_(C1)ないしA_(Cn)に基づいて、本走査を行う際の各Zステップにおけるクロップ領域の中心座標とクロップ領域を算出する。
【0048】
本実施の形態では、対物レンズ41及びステージ42は、ピエゾ駆動装置(不図示)によりZ方向(光軸方向)に駆動されるので、例えば、対物レンズ41を、25nmずつ段階的にZ方向に移動させることが可能である。つまり、本走査では、トップ位置からボトム位置までの間を、プレビュー走査よりも細かい間隔で段階的に移動しながら、各Zステップにおけるクロップ領域ACを走査することになる。」

よって、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「クロップ領域A_(C)とは、元になる画像のうち必要な部分のみを切り出す(クロップ:Crop)走査であるクロップ走査を行う領域を意味し(段落【0037】)、プレビュー画像I_(P)に表示された像の中からクロップ領域A_(C)を設定する(段落【0038】より)が、プレビュー画像I_(P1)からクロップ領域A_(C)をユーザの操作により設定するには、ユーザがマウス等の入力装置13を操作して指定、選択し(段落【0039】より)、クロップ領域ACの設定が確定されると、プレビュー画像I_(P)にて設定された複数のクロップ領域A_(C1)ないしA_(Cn)に基づいて、本走査を行う(段落【0047】より)が、本走査では、プレビュー走査よりも細かい間隔で段階的に移動しながら、各Zステップにおけるクロップ領域A_(C)を走査する(段落【0048】より)、クロップ走査(段落【0037】より)技術。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1における「仮想3次元空間(16)」、「実空間10」が、それぞれ、本願発明1における「3次元仮想空間」、「実空間領域」に相当する。

イ 引用発明1における「仮想3次元空間(16)を視覚化する」装置により、「実空間10及び仮想空間16が一致する」ようにすることと、本願発明1における「前記測定空間から離隔した実空間領域内に、前記3次元仮想現実装置を用いて、前記測定空間の3次元仮想空間をを作成すること」とは、「前記測定空間から離隔した実空間領域内に、前記3次元仮想現実装置を用いて、前記測定空間の3次元仮想空間を作成すること」の点で共通する。

ウ 引用発明1における「位置決め手段」は、「実3次元空間(10)内で点状ロケーション、または連続的なセクションをマーキングする」ことで、「実行されるべきオペレーション」を「選択」するものであるから、本願発明1における「オペレーション(人間の手術を除く)を選択するための3次元入力装置」に相当する。

エ 引用発明1では、「位置決め手段の位置P_(1)及び姿勢O_(1)」について、「実空間10の位置P_(1)及び実空間姿勢O1を仮想3次元空間16内の位置P^(*)_(1)及び姿勢O^(*)_(1)にマッピングし、実空間10及び仮想空間16が一致するならば、位置P_(1)は位置P^(*)_(1)と一致し、姿勢O_(1)は姿勢O^(*)_(1)と一致」するようにしているから、引用発明1において「仮想3次元空間(16)を視覚化する」装置が、「位置決め手段」の「実空間10の位置P_(1)及び実空間姿勢O_(1)」が「仮想3次元空間16内の位置P^(*)_(1)及び姿勢O^(*)_(1)」と「一致」するようにしていることが、本願発明1における「前記3次元入力装置の空間位置が仮想3次元入力装置の空間位置と一致するか、または、それに対して所定の空間ベクトルでオフセットするように、前記3次元仮想現実装置を用いて前記仮想3次元入力装置を作成すること」に相当する。

オ 引用発明1において、「位置決め手段の位置P_(1)及び姿勢O_(1)は、位置追跡システム12によって」追跡され、「位置決め手段」によって「実3次元空間(10)内で点状ロケーション、または連続的なセクションをマーキングする」ことで、「実行されるべきオペレーション」を「選択」することと、本願発明1における「前記3次元入力装置の実空間位置を追跡し、前記仮想3次元入力装置を前記仮想空間の対応する位置に表示し、前記仮想3次元入力装置によって前記仮想空間でオペレーションを選択することを許可すること」とは、「前記3次元入力装置の実空間位置を追跡し、前記仮想3次元入力装置を前記仮想空間の対応する位置に表示し、前記仮想3次元入力装置によって前記仮想空間でオペレーションを選択することを許可すること」の点で共通する。

カ 引用発明1では、「「フィールドをアクティブ化する」という用語は、そのフィールドに割り当てられたオペレーションを実行することを意味する」から、引用発明1において、「オペレーションを選択するシステムは、視覚化システムによって視覚化された画像内でマーキングされた位置と関連付けられたフィールドをアクティブ化する処理手段W5をさらに備え」ることと、本願発明1における「前記仮想空間で選択されたオペレーションが前記測定空間で実行されて、前記測定空間で測定されたデータが前記仮想空間でリアルタイムに表示されるように、前記測定空間と前記仮想空間との間に双方向のリアルタイム接続を提供すること」とは、「前記仮想空間で選択されたオペレーションが前記測定空間で実行され」る点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「3次元仮想現実装置を前記測定システムに設けることと、
実空間領域内に、前記3次元仮想現実装置を用いて、3次元仮想空間を作成することと、
オペレーション(人間の手術を除く)を選択するための3次元入力装置を前記3次元仮想現実装置に設けることと、
前記3次元入力装置の空間位置が仮想3次元入力装置の空間位置と一致するか、または、それに対して所定の空間ベクトルでオフセットするように、前記3次元仮想現実装置を用いて前記仮想3次元入力装置を作成することと、
前記3次元入力装置の実空間位置を追跡し、前記仮想3次元入力装置によって前記仮想空間でオペレーションを選択することを許可することと、
前記仮想空間で選択されたオペレーションが前記測定空間で実行されること、
とを有することを特徴とする方法。」

(相違点1)
本願発明1では、「3次元測定空間を有するとともに、その3次元測定空間で動作するレーザ走査顕微鏡を備えた測定システムによる、試料の3次元測定のための方法であって、3次元仮想現実装置を前記測定システムに設け」、実空間領域は、「前記測定空間から離隔」しており、3次元仮想空間は「前記測定空間」の3次元仮想空間であり、「前記測定空間で測定されたデータが前記仮想空間でリアルタイムに表示されるように、前記測定空間と前記仮想空間との間に双方向のリアルタイム接続を提供」しているのに対し、引用発明1は、「仮想3次元空間内でオペレーションを実行する方法」であって、仮想3次元空間(16)と実3次元空間(10)とを備えているものの、3次元測定空間を有するものではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「仮想3次元入力装置を前記仮想空間の対応する位置に表示」しているのに対し、引用発明1では、位置決め手段(135)を仮想3次元空間(16)に表示することは示されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用文献2?4には、試料の3次元測定のためのレーザ走査顕微鏡が記載されているものの、レーザ走査顕微鏡による3次元測定空間で測定されたデータが、これとは離間した3次元仮想空間にリアルタイムに表示されるようにすることは、何ら記載されていない。

また、引用発明1において、引用文献1の段落【0058】に記載されているように「上記の仮想3Dタッチスクリーン(又は、特殊なケースの2Dタッチスクリーン)」が「位置決め手段によって」、「離れた場所において、表示された画像のアクティブ化可能フィールドのマーキングを可能に」したとしても、レーザ走査顕微鏡による3次元測定空間で測定されたデータが、これとは離間した3次元仮想空間にリアルタイムに表示される構成とはならない。

さらに、引用発明1において、引用文献1の段落【0059】、【0060】に記載されているように、「物体を設計し、さらに成形し、又は、回転する」など、「技術的プロセスにおいて使用されるロボットアーム、自動機器、工作機械、又は、手術用マニピュレータなどのような実3Dマニピュレーションシステムと共に使用する」としても、該使用について、引用文献1の段落【0060】には、「これらのアプリケーションでは、実空間で実行されるべきオペレーションは、最初に仮想空間で実行され得、仮想空間における結果に満足できるならば、実3Dマニピュレーションシステムのアクチュエータが実際にオペレーションを実行するように指令され得る。」と記載されているのであるから、引用発明1を「実3Dマニピュレーションシステムと共に使用する」ようにしたとしても、やはり、レーザ走査顕微鏡による3次元測定空間で測定されたデータが、これとは離間した3次元仮想空間にリアルタイムに表示される構成とはならない。

(3)小括
よって、相違点2について判断するまでもなく、引用文献1の【0058】?【0060】に記載された事項を参酌しても、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2?18、21?26について
本願発明2?18、21?26も、上記「1.」「(1)対比」に記載した、相違点1に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明19?20について
本願発明19と引用発明1とを対比すると、両者は、少なくとも、次の点で相違する。

(相違点A)
本願発明19では、「3次元測定空間を有するとともに、その3次元測定空間で動作するレーザ走査顕微鏡を備えた測定システムによる、試料の3次元測定のための方法であって、3次元仮想現実装置を前記測定システムに設け」、実空間領域は、「前記測定空間から離隔」しており、3次元仮想空間は「前記測定空間」の3次元仮想空間であり、「前記測定空間で測定されたデータが前記仮想空間でリアルタイムに表示されるように、前記測定空間と前記仮想空間との間にリアルタイム接続を提供」しているのに対し、引用発明1は、「仮想3次元空間内でオペレーションを実行する方法」であって、仮想3次元空間(16)と実3次元空間(10)とを備えているものの、3次元測定空間を有するものではない点。

そこで検討すると、上記相違点Aは、上記「1.」「(2)相違点についての判断」で述べたとおり、引用文献1の段落【0058】?【0060】に記載された事項を参酌しても、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たことではない。

よって、本願発明19は、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、本願発明20も、上記相違点Aに係る本願発明19と同一の構成を備えるものであるから、本願発明19と同じ理由により、引用発明1及び引用文献2?4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について
1.理由2(明確性)について
(1)本件補正により、請求項22は、「前記3次元測定を前記レーザ走査顕微鏡の複数の周波数で同時または略同時に行う」と補正され、請求項23は、「前記レーザ走査顕微鏡の複数の周波数で測定すること」と補正された。
これにより周波数が「レーザ走査顕微鏡」の周波数であることが明確になった。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

2.理由3(産業上の利用可能性)について
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に記載された「オペレーション」については、「オペレーション(人間の手術を除く)」補正され、請求項1?18に係る発明について、選択される「オペレーション」から、人間に対する医療行為が排除された。
したがって、原査定の理由3を維持することはできない。

3.理由4(進歩性)について
上記のとおり、本願発明1?26は、引用発明1及び引用文献2?6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由4を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-09 
出願番号 特願2014-549538(P2014-549538)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01B)
P 1 8・ 14- WY (G01B)
P 1 8・ 537- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 健一  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清水 稔
関根 洋之
発明の名称 レーザ走査顕微鏡を備えた測定システムによる試料の3次元測定方法及びシステム  
代理人 新保 斉  

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