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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01G
管理番号 1327827
審判番号 不服2016-11572  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-02 
確定日 2017-05-23 
事件の表示 特願2015-20927「積層セラミックコンデンサおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年6月11日出願公開、特開2015-109475、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年3月14日(優先権主張2013年3月19日、日本国)を国際出願日とする出願である特願2014-544273号の一部を平成27年2月5日に新たな特許出願としたものであって、同年10月8日付けで拒絶理由が通知され、同年12月9日付けで手続補正がなされたが、平成28年5月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月2日に拒絶査定不服の審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1.本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2010-50263号公報

第3 審判請求時の手続補正について
審判請求時(平成28年8月2日付け)の手続補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1及び2に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
以上のとおりであるから、審判請求時の手続補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第4 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、審判請求時の手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は次のとおりのものである。なお、下線は、審判請求人が補正箇所を明示するために付したものである。

「 【請求項1】
積層された複数の内層用セラミック層と、前記内層用セラミック層どうしの界面のうちの複数の界面に配設された複数の内部電極とを有する内層部と、
前記内層部に対して挟むように上下に配設した外層用セラミック層で構成された外層部とを備えたセラミック本体、および
前記セラミック本体の外表面に形成され、かつ前記内部電極に電気的に接続される外部電極を含む積層セラミックコンデンサであって、
前記内層用セラミック層は、ABO_(3)(ここでAはBa,Sr,Caの1種以上を含み、BはTi,Zr,Hfの1種以上を含み、Oは酸素)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつ希土類元素を含有し、
少なくとも1つの前記外層部のうち、該外層部の少なくとも最表面を含む最外層部は、A’B’O_(3)(ここでA’はBa,Sr,Caの1種以上を含み、B’はTi,Zr,Hfの1種以上を含み、Oは酸素)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、
前記内層用セラミック層に含まれる希土類元素濃度(C_(R))と、前記最外層部に含まれる希土類元素濃度(C_(r))を比較したとき、C_(R)>C_(r)(C_(r)=0を含む)であり、
前記内層部のうち側面に露出している前記内層用セラミック層の前記Bの合計量100モル部に対する希土類元素の添加量が0.3モル部以上含まれている場合、前記最外層部のうち主面に露出している外層用セラミック層の前記B’の合計量100モル部に対する希土類元素の添加量は0.28モル部以下であり、
前記内層用セラミック層および前記最外層部の希土類元素以外の金属元素成分の含有モル量は、略同量であることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
ABO_(3)(ここでAはBa,Sr,Caの1種以上を含み、BはTi,Zr,Hfの1種以上を含み、Oは酸素)で表されるペロブスカイト型化合物を含む粉末に、希土類元素を含む化合物を添加して混合し、スラリー化することによって内層用セラミックスラリーを調製する工程と、
A’B’O_(3)(ここでA’はBa,Sr,Caの1種以上を含み、B’はTi,Zr,Hfの1種以上を含み、Oは酸素)で表されるペロブスカイト型化合物を含む粉末をスラリー化することによって外層用セラミックスラリーを調製する工程と、
前記内層用セラミックスラリーをシート状に成形して、内層用グリーンシートを得る工程と、
前記外層用セラミックスラリーをシート状に成形して、外層用グリーンシートを得る工程と、
前記内層用グリーンシート上に導電性ペーストを塗布することによって、内部電極となる導電性ペースト膜を形成する工程と、
前記導電性ペースト膜が形成された複数の前記内層用グリーンシートを積層し、さらに、積層された内層用グリーンシートの積層方向における上側および下側のうち少なくとも一方の側に前記外層用グリーンシートを積層することによって、未焼成のセラミック本体を得る工程と、
前記未焼成のセラミック本体を焼成する工程と、
を備え、
前記内層用セラミックスラリーに含まれる希土類元素濃度(C_(R))と、前記未焼成のセラミック本体の最外層に積層される前記外層用グリーンシートとなる前記外層用セラミックスラリーに含まれる希土類元素濃度(C_(r))を比較したとき、C_(R)>C_(r)(C_(r)=0を含む)であり、
前記内層部のうち側面に露出している前記内層用セラミックスラリーの前記Bの合計量100モル部に対する希土類元素の添加量が0.3モル部以上含まれている場合、前記最外層部のうち主面に露出している外層用セラミックスラリーの前記B’の合計量100モル部に対する希土類元素の添加量は0.28モル部以下であり、
前記内層用セラミックスラリーおよび前記最外層部に積層される前記外層用グリーンシートとなる前記外層用セラミックスラリーの希土類元素以外の金属元素成分の含有モル量は、略同量であることを特徴とする、積層セラミックコンデンサの製造方法。」

第5 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-50263号公報)には、「積層セラミック電子部品」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

1.「【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミック電子部品に関するもので、特に、低背化された積層セラミック電子部品のクラック抑制のための改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミックからなる積層された複数のセラミック層をもって構成されるセラミック積層体を備えている。セラミック積層体は、通常、対向する第1および第2の主面と相対向する第1および第2の側面と相対向する第1および第2の端面とを有する直方体状をなしている。
・・・(中略)・・・
【0005】
このような積層セラミックコンデンサは、小型化、特に薄型化すなわち低背化を図ることが要望されている。しかしながら、積層セラミックコンデンサが低背化されると、機械的強度が低下し、たとえば実装時の衝撃などにより、クラックが発生することがある。したがって、積層セラミックコンデンサにとって、上記のような実装時の衝撃などを考慮すると、機械的強度の確保が必要である。」

2.「【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、セラミック積層体の外表面を規定する表層部における、外部電極によって覆われている部分と覆われていない部分との境目を少なくとも含む領域を与える保護層において、焼成工程での焼結が本体部に比べて遅れるため、本体部からのSiが流入し、Si濃度が高められる。特に保護層の表層およびその近傍にSiがより多く分布する。したがって、このSiの作用により、外部電極を形成するための焼き付け工程において、外部電極から保護層へガラス成分が浸潤することが抑制される。その結果、外部電極に覆われている部分と覆われていない部分との境目近傍において応力集中が生じることが防止され、結果として、クラックを生じさせにくくすることができる。」

3.「【0028】
積層セラミックコンデンサ1は、誘電体セラミックからなる積層された複数のセラミック層2をもって構成されるセラミック積層体3を備えている。このセラミック積層体3の外観が図3に斜視図で示されている。セラミック積層体3は、相対向する第1および第2の主面4および5と相対向する第1および第2の側面6および7と相対向する第1および第2の端面8および9とを有する直方体状をなしている。
【0029】
セラミック積層体3の内部において、セラミック層2間の特定の界面に沿って、複数の内部電極10および11が形成されている。内部電極10および11の積層方向に隣り合うものは、セラミック層2を介して互いに対向し、それによって、静電容量を形成している。
【0030】
セラミック積層体3の第1および第2の端面8および9上には、それぞれ、第1および第2の外部電極12および13が形成される。内部電極10および11は、第1の外部電極12に接続される第1の内部電極10と第2の外部電極13に電気的に接続される第2の内部電極11とがあり、これら第1および第2の内部電極10および11は、積層方向に関して交互に配置されている。
【0031】
積層セラミックコンデンサ1を製造するにあたり、セラミック積層体3は焼成工程を経て得られるものである。また、外部電極12および13は、導電性ペーストを塗布し、焼き付けることによって形成される。この導電性ペーストの塗布工程に起因して、通常、第1の外部電極12は、セラミック積層体3の第1の端面を覆うばかりでなく、第1の端面8に隣接する主面4および5ならびに側面6および7の各一部をも覆うように形成される。同様に、第2の外部電極13は、セラミック積層体3の第2の端面9を覆うばかりでなく、第2の端面9に隣接する主面4および5ならびに側面6および7の各一部をも覆うように形成される。」

4.「【0032】
セラミック積層体3の外表面を規定する表層部における、外部電極12および13の各々によって覆われている部分と覆われていない部分との境目を少なくとも含む領域は、後述する機能を有する保護層14によって与えられる。この実施形態では、保護層14は、セラミック積層体3の第1および第2の主面4および5ならびに第1および第2の側面6および7に沿って形成されている。」

5.「【0033】
上記保護層14およびセラミック積層体3における保護層14以外の本体部15を構成するセラミックは、ABO_(3)(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつSiを副成分として含む組成を共通して有している。
【0034】
しかしながら、保護層14の組成と本体部15の組成とは、後述するように異ならされ、それによって、保護層14が、本体部15に比べて、焼成工程での焼結が遅れるようにされる。そのため、Si成分が、本体部15から保護層14へ移行し、その結果、保護層14でのSi濃度が高められる。Si濃度は、保護層14の中でも、特に表層およびその近傍においてより高くなる。
・・・(中略)・・・
【0038】
第3の実施態様では、保護層14の組成が、本体部15の組成に比べて、希土類元素含有量が多くされる。希土類元素含有量をどの程度多くすることが好ましいかについては、後述する実験例において明らかにする。」

6.「【0041】
図4に示した第2の実施形態では、保護層14は、セラミック積層体3aの第1および第2の主面4および5に沿って形成される。」

7.「【0046】
(A)誘電体原料配合物の作製
まず、主成分ABO_(3)として、BaTiO_(3)粉末を用意した。他方、副成分として、Dy_(2)O_(3)、MgCO_(3)、MnCO_(3)およびSiO_(2)の各粉末を用意した。そして、これらを、
組成式:100BaTiO_(3)+1.0DyO_(3/2)+0.5MnO+1.0MgO+1.5SiO_(2)
で表される組成となるように秤量し、基本原料配合物を得た。」

8.「【0087】
[実験例5]
実験例5では、希土類元素含有量の本体部と保護層とでの差がクラックや信頼性に与える影響を調べた。
【0088】
(A)誘電体原料配合物の作製
実験例1の場合と同様の操作を経て、BaTiO_(3)100モル部に対するDyO_(3/2)のモル部を表9に示すように変更したことを除いて、実験例1における基本原料配合物と同様の組成を有する本体部用の誘電体原料配合物および保護層用の誘電体原料配合物を得た。表9には、本体部用の誘電体原料配合物における希土類元素含有量である「本体部のR」、および保護層用の誘電体原料配合物における希土類元素含有量である「保護層のR」に加えて、「保護層のR」-「本体部のR」である「ΔR」も示されている。
【0089】
(B)積層セラミックコンデンサの作製
保護層の厚みを5μmに固定しながら、実験例1の場合と同様にして、各試料に係る積層セラミックコンデンサを得た。
【0090】
(C)特性評価
実験例1の場合と同様に、特性評価を行なった。その結果が表9に示されている。
【0091】
【表9】

【0092】
表9において、試料番号に*を付したものは、この発明の範囲外の比較例である。
【0093】
ΔRが0を超える試料においては、0または0以下の試料に比べて、クラック発生数の大幅な低減が見られた。また、ΔRをより大きくすることにより、発生数を0にすることができた。また、クラック発生数が0になった試料においては、MTTFも良好なことがわかった。」

そして、上記1.によれば、低背化された積層セラミック電子部品のクラック抑制のための改良に関するものであって、上記積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサの機械的強度を確保することによってクラックの発生を抑制するものである。
上記3.によれば、積層セラミックコンデンサ1は、積層された複数のセラミック層2をもって構成されるセラミック積層体3を備えており、上記セラミック層2間の特定の界面に沿って、複数の内部電極10および11が形成されている。また、セラミック積層体3の第1および第2の端面8および9と、上記第1および第2の端面8および9に隣接する主面4および5ならびに側面6および7の各一部とを覆うように第1および第2の外部電極12および13が形成され、上記第1および第2の外部電極12および13は上記内部電極10および11にそれぞれ接続される。
上記4.及び6.によれば、セラミック積層体3の外表面を規定する表層部において、保護層14が、セラミック積層体3の第1および第2の主面4および5に沿って形成される。
上記5.によれば、保護層14およびセラミック積層体3における保護層14以外の本体部15を構成するセラミックは、ABO_(3)(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分としており、保護層14の組成は、本体部15の組成に比べて、希土類元素含有量が多くされる。
上記7.及び8.によれば、保護層14の誘電体原料配合物の組成と本体部15の誘電体原料配合物の組成は、DyO_(3/2)のモル部、すなわち、希土類元素含有量(R)のみが異なり、それ以外は同じである。
そして、上記8.によれば、「保護層のR」-「本体部のR」である「ΔR」が、0を超える試料においては、クラック発生数の大幅な低減が見られ、また、ΔRをより大きくすることにより、発生数を0にすることができた。すなわち、保護層のRを本体部のRよりも大きくすることによって、上記2.に記載のようにクラックを生じさせにくくするという効果を奏する。

したがって、上記1.ないし8.の記載事項と図面の記載とを総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「積層された複数のセラミック層2と、上記セラミック層2間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極10および11とを有する本体部15と、
第1および第2の主面4および5に沿って形成された保護層14とを備えたセラミック積層体3、および、
上記セラミック積層体3の第1および第2の端面8および9と、上記第1および第2の端面8および9に隣接する主面4および5ならびに側面6および7の各一部とを覆うよう形成され、上記内部電極10および11にそれぞれ接続された第1および第2の外部電極12および13を含む積層セラミックコンデンサ1であって、
上記本体部15および上記保護層14を構成するセラミックは、ABO_(3)(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつ希土類元素を含有し、
上記保護層14の組成は、上記本体部15の組成に比べて、希土類元素含有量が多くされ、
上記本体部15及び上記保護層14の誘電体原料配合物の組成は希土類元素以外は同じである、積層セラミックコンデンサ1。」

なお、引用文献1の表9(上記8.参照)には、試料番号5-1として、本体部の希土類元素含有量Rが1.0で保護層の希土類元素含有量Rが0.0である試料が記載されているが、段落【0092】(上記8.参照)に明記されているように、上記試料番号5-1は「発明の範囲外の比較例」にすぎず、そのような組成を採用したとしてもクラックの発生を抑制することができないことは、上記表9に示される特性評価の結果からみて明らかである。
そうすると、引用文献1には、積層セラミックコンデンサにおいて、クラックの発生を抑制するために、本体部の希土類元素含有量Rが1.0で保護層の希土類元素含有量Rが0.0とする発明は記載されていない。
さらに、試料番号5-1は単なる比較例としての数値が記載されているだけであり、本体部の希土類元素含有量Rが1.0で保護層の希土類元素含有量Rが0.0とすることによって解決される課題や効果については、何ら記載も示唆もされていないから、積層セラミックコンデンサにおいて、本体部の希土類元素含有量Rが1.0で保護層の希土類元素含有量Rが0.0とすることに、当業者といえども技術上の意義を見いだすことはできない。
したがって、引用文献1には、積層セラミックコンデンサにおいて、本体部の希土類元素含有量Rが1.0で保護層の希土類元素含有量Rが0.0とする「発明」が記載されているということはできない。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「積層セラミックコンデンサ1」に含まれる「セラミック積層体3」及び「第1および第2の外部電極12および13」は、本願発明1における「積層セラミックコンデンサ」に含まれる「セラミック本体」及び「外部電極」に相当する。そして、上記「第1および第2の外部電極12および13」は、上記セラミック積層体3の「第1および第2の端面8および9」と「上記第1および第2の端面8および9に隣接する主面4および5ならびに側面6および7の各一部」とを覆うよう形成されているから、上記セラミック積層体3の「外表面」に形成されているということができる。
イ.引用発明における上記セラミック積層体3に含まれる「保護層14」は、第1および第2の主面4および5に沿って形成されていることからみて、上記セラミック積層体3に含まれる「本体部15」を挟むように上下に配設されており、上記「本体部15」及び上記「保護層14」の位置関係からみて、それらは「内層部」及び「外層部」ということができる。そうすると、引用発明における上記本体部15が有する「セラミック層2」及び「内部電極10および11」は、本願発明1における「内層用セラミック層」及び「内部電極」にそれぞれ相当する。
ウ.引用発明における上記「セラミック層2」は、「ABO_(3)(ここでAはBa,Sr,Caの1種以上を含み、BはTi,Zr,Hfの1種以上を含み、Oは酸素)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつ希土類元素を含有し」ている点で、本願発明1の「内層用セラミック層」と共通しており、引用発明における上記「保護層14」は、「A’B’O_(3)(ここでA’はBa,Sr,Caの1種以上を含み、B’はTi,Zr,Hfの1種以上を含み、Oは酸素)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし」ている点で、本願発明1の「外層部のうち、該外層部の少なくとも最表面を含む最外層部」と共通している。
エ.引用発明における上記本体部15及び上記保護層14の誘電体原料配合物の組成は希土類元素以外は同じであることからみて、上記本体部のセラミック層2及び上記保護層14の希土類元素以外の金属元素成分の含有モル量は、本願発明1と同様に「略同量である」ということができる。
オ.ただし、本願発明1においては、「前記内層用セラミック層に含まれる希土類元素濃度(C_(R))と、前記最外層部に含まれる希土類元素濃度(C_(r))を比較したとき、C_(R)>C_(r)(C_(r)=0を含む)であ」るのに対して、引用発明においては、「保護層14の組成は、本体部15の組成に比べて、希土類元素含有量が多くされ」ているから、本願発明1とは大小関係が全く逆(C_(R)<C_(r))である点で相違する。より具体的には、本願発明1においては、「前記内層部のうち側面に露出している前記内層用セラミック層の前記Bの合計量100モル部に対する希土類元素の添加量が0.3モル部以上含まれている場合、前記最外層部のうち主面に露出している外層用セラミック層の前記B’の合計量100モル部に対する希土類元素の添加量は0.28モル部以下であ」るのに対して、引用発明1においては、そのような希土類元素の添加量ではない点で相違する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「積層された複数の内層用セラミック層と、前記内層用セラミック層どうしの界面のうちの複数の界面に配設された複数の内部電極とを有する内層部と、
前記内層部に対して挟むように上下に配設した外層用セラミック層で構成された外層部とを備えたセラミック本体、および
前記セラミック本体の外表面に形成され、かつ前記内部電極に電気的に接続される外部電極を含む積層セラミックコンデンサであって、
前記内層用セラミック層は、ABO_(3)(ここでAはBa,Sr,Caの1種以上を含み、BはTi,Zr,Hfの1種以上を含み、Oは酸素)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつ希土類元素を含有し、
少なくとも1つの前記外層部のうち、該外層部の少なくとも最表面を含む最外層部は、A’B’O_(3)(ここでA’はBa,Sr,Caの1種以上を含み、B’はTi,Zr,Hfの1種以上を含み、Oは酸素)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、
前記内層用セラミック層および前記最外層部の希土類元素以外の金属元素成分の含有モル量は、略同量である、積層セラミックコンデンサ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明1においては、「前記内層用セラミック層に含まれる希土類元素濃度(C_(R))と、前記最外層部に含まれる希土類元素濃度(C_(r))を比較したとき、C_(R)>C_(r)(C_(r)=0を含む)であ」るとともに、「前記内層部のうち側面に露出している前記内層用セラミック層の前記Bの合計量100モル部に対する希土類元素の添加量が0.3モル部以上含まれている場合、前記最外層部のうち主面に露出している外層用セラミック層の前記B’の合計量100モル部に対する希土類元素の添加量は0.28モル部以下であ」るのに対して、引用発明においては、「外層部(保護層14)の組成は、内層用セラミック層(本体部15)の組成に比べて、希土類元素含有量が多くされ」ている点。

(2)判断
本願発明1は、引用発明に対して、上記(1)で説示した相違点で相違するから、本願発明1は引用発明であるということはできない。
また、引用発明は、クラックの発生を抑制するために、外層部(保護層14)の希土類元素含有量を内層用セラミック層(本体部15)の希土類元素含有量よりも意図的に多くする発明であり、希土類元素含有量の大小関係が逆となる試料5-1、5-2、5-12、5-13については、特性評価の結果においてクラックの発生は抑制されておらず(表9参照)、かつ、それらは「発明の範囲外」であると明記されている(【0092参照】)ことからみても、引用発明において、上記大小関係を逆にしようとする動機付けとなりうるものは全く存在しない。
また、はんだ付けに用いられる水溶性フラックス中に含まれる有機酸へのセラミック成分の溶出を抑制するという本願発明の課題や、その課題を解決するために外層部及び内層用セラミック層の希土類元素濃度を調整するという技術事項を記載又は示唆する他の公知文献等もない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2.本願発明2について
本願発明2は「積層セラミックコンデンサの製造方法」の発明であって、本願発明1と同様に
「前記内層用セラミックスラリーに含まれる希土類元素濃度(C_(R))と、前記未焼成のセラミック本体の最外層に積層される前記外層用グリーンシートとなる前記外層用セラミックスラリーに含まれる希土類元素濃度(C_(r))を比較したとき、C_(R)>C_(r)(C_(r)=0を含む)であり、
前記内層部のうち側面に露出している前記内層用セラミックスラリーの前記Bの合計量100モル部に対する希土類元素の添加量が0.3モル部以上含まれている場合、前記最外層部のうち主面に露出している外層用セラミックスラリーの前記B’の合計量100モル部に対する希土類元素の添加量は0.28モル部以下であり、」
という発明特定事項を備えているから、本願発明2と引用発明とは、少なくとも上記相違点で相違する。
そうすると、本願発明2も本願発明1と同様に、引用発明であるということはできず、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第7 原査定について
1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
上記「第6 対比・判断」で説示したとおり、本願発明1及び本願発明2は、原査定で引用された引用文献1に記載された発明(引用発明)であるということはできない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
上記「第6 対比・判断」で説示したとおり、本願発明1及び本願発明2は、原査定で引用された引用文献1に記載された発明(引用発明)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-08 
出願番号 特願2015-20927(P2015-20927)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01G)
P 1 8・ 113- WY (H01G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐久 聖子柴垣 俊男  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 國分 直樹
関谷 隆一
発明の名称 積層セラミックコンデンサおよびその製造方法  
代理人 岡田 全啓  

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