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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06F
管理番号 1327873
異議申立番号 異議2016-700930  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-29 
確定日 2017-04-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5895021号発明「計算機およびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5895021号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔7?9,17,18〕,〔19?23〕について訂正することを認める。 特許第5895021号の請求項1?6,8?23に係る特許を維持する。 特許第5895021号の請求項7に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5895021号の請求項1?18に係る特許についての出願は,平成26年5月19日に特許出願され,平成28年3月4日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許について,特許異議申立人矢島幸恵(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,平成28年12月26日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である平成29年3月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下,「本件訂正請求」という。)があったものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下,「本件訂正」という。)の内容は以下のア?エのとおりである。

ア 訂正事項1
請求項7を削除する。

イ 訂正事項2
請求項8,17,18のうち,請求項7を引用する部分を削除する。

ウ 訂正事項3
(ア)請求項7を引用する請求項8を独立形式にして請求項19とする。
(イ)請求項7を引用する請求項17を独立形式にして請求項22とする。

エ 訂正事項4
(ア)請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を請求項20とする。
(イ)「請求項7を引用する請求項8を引用する請求項17」,又は「請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項17」を請求項21とする。
(ウ)請求項7を引用する請求項8(請求項19に相当),請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9(請求項20に相当),請求項7を引用する請求項8を引用する請求項17(請求項21に相当),請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項17(請求項21に相当),及び請求項7を引用する請求項17(請求項22に相当)の何れか1項を引用する請求項18を請求項23とする。

(2)訂正の目的

ア 訂正事項1について
訂正事項1は,訂正前の請求項7を削除するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2?4について
(ア)訂正事項2において,請求項8,17,18のうち,請求項7を引用する部分を削除することにより,
a 請求項7を引用する請求項8
b 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9
c 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項17
d 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項17
e 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項18
f 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項18
g 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項17を引用する請求項18
h 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項17を引用する請求項18
i 請求項7を引用する請求項17
j 請求項7を引用する請求項17を引用する請求項18
k 請求項7を引用する請求項18
は削除された。

(イ)訂正事項3により,
上記(ア)のa?kのうち,
「a 請求項7を引用する請求項8」は独立形式として訂正後の請求項19とされ,
「i 請求項7を引用する請求項17」は独立形式として訂正後の請求項22とされた。

(ウ)訂正事項4により,
上記(ア)のa?kのうち,
「b 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9」は訂正後の「請求項19を引用する請求項20」とされ,
「c 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項17」は訂正後の「請求項19を引用する請求項20を引用する請求項21」とされ,
「d 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項17」は訂正後の「請求項19を引用する請求項21」とされ,
「e 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項18」は訂正後の「請求項19を引用する請求項23」とされ,
「f 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項18」は訂正後の「請求項19を引用する請求項20を引用する請求項23」とされ,
「g 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項17を引用する請求項18」は訂正後の「請求項19を引用する請求項20を引用する請求項21を引用する請求項23」とされ,
「h 請求項7を引用する請求項8を引用する請求項17を引用する請求項18」は訂正後の「請求項19を引用する請求項21を引用する請求項23」とされ,
「j 請求項7を引用する請求項17を引用する請求項18」は訂正後の「請求項22を引用する請求項23」とされた。

(エ)上記(ア)?(ウ)の検討から,訂正事項2?4を総合すると,上記(ア)のa?kのうち,「k 請求項7を引用する請求項18」のみを削除し,その他のa?jについては,訂正事項2によって削除した内容と同じ内容を訂正後の請求項19,22及びこれらを引用する請求項20,21,23において再度記載したものであるから,上記訂正事項2?4は,全体としてみると,特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(引用関係の解消)を目的とするものに該当する。

(3)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張,変更の存否
訂正事項1?4は,いずれも,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)一群の請求項について
訂正事項1?4に係る訂正前の請求項7?9,17,18は,訂正前の請求項8,9,17,18が訂正前の請求項7を直接又は間接に引用するものであるので,訂正前の請求項7?9,17,18に対応する訂正後の請求項7?9,17?23は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって,本件訂正請求は,一群の請求項ごとにされたものである。

(5)小括
以上のとおりであるから,本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項7?9,17?23について訂正を認める。
訂正後の請求項19?23に係る訂正事項3,4は,引用関係の解消を目的とする訂正であって,その訂正は認められるものである。そして,特許権者から,訂正後の請求項19?23について訂正が認められるときは請求項8,9,17及び18とは別途訂正することの求めがあったことから,訂正後の請求項〔7?9,17,18〕,〔19?23〕について訂正することを認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記「2.訂正の適否についての判断」のとおり,本件訂正請求についての訂正は認められるので,本件訂正請求による訂正後の請求項1?6,8?23に係る発明は,その訂正特許請求の範囲の請求項1?6,8?23に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,請求項1,10,19,及び22に係る発明は,次のとおりのものである。

ア 請求項1に係る発明(以下,「本件発明1」という。)
「【請求項1】
第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理する演算処理部と,
前記第1演算の結果を表示する表示部と
を備える計算機であって,
前記演算処理部は,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1),及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求めるとともに,
前記第1剰余D_(1)が0でない場合に,前記第1整商C_(1)を1繰り上げた第2整商E_(1)=C_(1)+1,及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第2整商E_(1)との積を減じて得られる第2剰余F_(1)=D_(1)-B_(1)とを求め,
前記表示部は,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1),並びに前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)を前記第1演算の結果として表示することを特徴とする計算機。」

イ 請求項10に係る発明(以下,「本件発明10」という。)
「【請求項10】
0以上の数である被除数A_(1)と,n個(nは2以上の整数)の正の除数(B_(1),B_(2),…,B_(n)(ただし,2からnまでの整数kについて,B_(k-1)>B_(k)))の組である除数群B_(G)とを入力するための入力部と,
入力された前記被除数A_(1)および前記除数群B_(G)について,被除数A_(1)を,B_(1)×C_(1)+B_(2)×C_(2)+…+B_(n)×C_(n)+D_(n)と表現することのできるn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))の組である整商群C_(G)及び剰余D_(n)を算出する演算処理部と,
前記演算処理部が算出した整商群C_(G)に属するn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))と剰余D_(n)を表示する表示部と
を備える計算機。」

ウ 請求項19に係る発明(以下,「本件発明19」という。)
「【請求項19】
第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理して,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1),及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求める演算処理部と,
前記第1演算の結果として,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を表示する表示部と,
前記第1剰余D_(1)を,前記第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A_(2)として使用するための剰余利用キーを備え,
前記表示部は,前記第1演算の結果を,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示することを特徴とする計算機。」

エ 請求項22に係る発明(以下,「本件発明22」という。)
「【請求項22】
第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理して,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1),及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求める演算処理部と,
前記第1演算の結果として,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を表示する表示部と,
前記第1剰余D_(1)を,前記第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A_(2)として使用するための剰余利用キーを備え,
前記第1剰余D_(1)が0でない場合に端数を切り上げてC_(1)+1を表示させるための入力キーをさらに備えることを特徴とする計算機。」

(2)取消理由通知に記載した取消理由について

ア 訂正前の請求項7及び請求項7を引用する請求項18に係る特許に対して平成28年12月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。

イ 請求項7に係る発明は,甲第5号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり,また,請求項7に係る発明は,甲第5号証に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,請求項7に係る特許は,取り消されるべきものである。

ウ 請求項7を引用する請求項18に係る発明は,甲第5号証に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,請求項7を引用する請求項18に係る特許は,取り消されるべきものである。

エ 上記「2.訂正の適否についての判断」の「(2)訂正の目的」で検討したように,特許権者は,本件訂正により,請求項7,及び請求項7を引用する請求項18を削除した。

オ 小括
したがって,本件訂正により,取消理由は解消した。

(3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

ア 申立理由の概要

(ア)特許法第29条第2項について
特許異議申立人は,証拠として,
(a)甲第1号証:特開2003-167859号公報
(b)甲第2号証:特開昭53-53225号公報
(c)甲第3号証:電卓取扱説明書(DV-220W/JV-220W/MV-220W)
(d)甲第4号証:YouTube動画 「わり算(5)わり算のたしかめ」(当審注:丸付き数字は,括弧付き数字で表記した。以下,同様。)
(e)甲第5号証:関数電卓使用説明書(X Mark I Pro)
(f)甲第6号証:特開平3-119457号公報
(g)甲第7号証:教科書ワーク 数と計算 5年
(h)甲第8号証:特開2004-206359号公報
(i)甲第9号証:特開平1-214994号公報
を提出し,請求項1?18に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1?18に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
具体的には,異議申立書の第15?17頁によれば,
請求項1(本件発明1に相当)は,甲第1号証,第第2号証から容易であり,
請求項10(本件発明10に相当)は,甲第8号証,甲第9号証から容易であり,
請求項8(本件発明19に相当)は,甲第5号証,甲第3号証,甲第2号証,甲第6号証,甲第4号証,甲第7号証から容易であり,
請求項17(本件発明22に相当)は,甲第5号証,甲第3号証,甲第2号証,甲第6号証,甲第1号証から容易であると主張している。

(イ)特許法第36条第6項第1号について
請求項1?18に係る特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから,請求項1?18に係る特許を取り消すべきものである。

イ 甲各号証の記載

(ア)甲第1号証(特開2003-167859号公報)には,図面とともに以下の記載がある。(下線は当審で付したものである。)

A 「【0012】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。図1は,この発明に係わる移動通信端末の一実施形態である携帯電話機の機能構成を示すブロック図である。この携帯電話機は,基地局との間の無線アクセス方式としてCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用したものである。」

B 「【0024】ところで,制御部12は制御モジュールとして機能するもので,例えばマイクロコンピュータを主制御部として備えている。この制御部12は,発着信に応じて無線接続制御を実行して音声通信やメール等のデータ通信を可能にする通信制御機能や,位置登録制御機能,ハンドオフ制御機能等の携帯電話機本来の制御機能を備え,さらにこの発明に係わる新たな制御機能として,割り勘演算制御機能12aと,ゴチ割り演算制御機能12bとを備えている。
【0025】なお,「割り勘」とは割り前勘定の略称であり,ここでは各人の分担比率が一定の場合の精算形態として定義する。また「ゴチ割り」とは,各人の分担比率を任意に設定して割り前勘定を行う場合の精算形態として定義する。
【0026】割り勘演算制御機能12aは,演算用のサブメニューとして「割り勘」が選択された場合に,入力画面を表示して割り勘対象の金額と人数をユーザに入力させる。そして,この入力された金額と人数とをもとに一人あたりの分担額を算出し,この算出された一人あたりの分担額と余り或いは不足額を表示部15に表示する。」

C 「【0028】また上記割り勘演算制御機能12a及びゴチ割り演算制御機能12bはいずれも,余りを発生させる第1の演算モードと,不足額を発生させる第2の演算モードとを備え,ユーザのモード切り替え操作に応じてこれらの演算モードを選択的に実行する機能も有している。」

D 「【0030】次に,以上のように構成された携帯電話機による割り勘演算動作を説明する。図2は,この演算動作を実現するために制御部12において実行されるプログラムの制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
(途中省略)
【0034】これに対しユーザが入力部14のテンキーを操作して金額と人数を入力したとする。そうすると制御部12は,この入力された数値データをステップ2gで取り込んで上記割り勘演算用の入力画面に図3(b)に示すように表示する。そして,この数値データの入力受付状態を保持しながら,ステップ2eによる「戻る」の操作と,ステップ2hによる「決定」の操作をそれぞれ監視する。
【0035】さて,上記金額及び人数を入力し終わったユーザが「決定」の操作を行うと,制御部12はステップ2hからステップ2iに移行して,ここで上記入力された金額と人数をもとに一定比率の割り勘演算処理を実行する。そして,この演算処理により算出された一人あたりの分担額を計算結果表示画面に表示させる。またこのとき,割り切れずに余りが発生した場合には,この余り額を上記分担額と共に表示させる。図3(c)にこの計算結果表示画面の一例を示す。
【0036】そして,この計算結果表示画面が表示された状態で制御部12は,ステップ2kで演算モードの切り替え操作を監視すると共に,ステップ2m及びステップ2nでそれぞれ「OK」及び「戻る」の操作を監視する。
【0037】この状態で,ユーザが余りが発生する計算結果ではなく不足額が発生する計算結果を望んでおり,演算モードを切り替えるための操作を行ったとする。そうすると制御部12は,ステップ2kからステップ2iに戻り,ここで演算モードを余りが発生する第1の演算モードから不足額が発生する第2の演算モードに切り替えたのち,上記入力された金額と人数をもとに再度一定比率の割り勘演算処理を実行する。そして,この演算処理により算出された一人あたりの分担額と不足額を計算結果表示画面に表示させる。なお,上記演算モードは次にユーザが切り替え操作を行うまでそのまま保持される。
【0038】そうして所望の計算結果が得られ,ユーザが「OK」操作を行うと,制御部12は計算処理を終了する。なお,上記割り勘演算をやり直す場合や引き続き別の計算を行うためにユーザが「戻る」を操作すると,制御部12はステップ2aに戻る。」

E 「【図2】



F 「【図3】



以上の記載によれば,甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「マイクロコンピュータを主制御部として備える制御部12と,表示部15とを備えた携帯電話機であって,
制御部12は,割り勘演算制御機能12aを備えており,
ここで,「割り勘」とは,各人の分担比率が一定の場合の精算形態として定義され,
割り勘演算制御機能12aは,割り勘対象の金額と人数をユーザに入力させ,入力された金額と人数とをもとに一人あたりの分担額を算出し,この算出された一人あたりの分担額と余り或いは不足額を表示部15に表示し,
割り勘演算制御機能12aは,余りを発生させる第1の演算モードと,不足額を発生させる第2の演算モードとを備え,ユーザのモード切り替え操作に応じてこれらの演算モードを選択的に実行する機能を有しており,
ユーザが入力部14のテンキーを操作して金額と人数を入力すると,制御部12は入力された金額と人数をもとに一定比率の割り勘演算処理を実行し,演算処理により算出された一人あたりの分担額を計算結果表示画面に表示させ,また,割り切れずに余りが発生した場合には,この余り額を上記分担額と共に表示させ,
計算結果表示画面が表示された状態で制御部12は,演算モードの切り替え操作を監視し,
ユーザが,演算モードを切り替えるための操作を行うと,制御部12は,演算モードを余りが発生する第1の演算モードから不足額が発生する第2の演算モードに切り替え,入力された金額と人数をもとに再度一定比率の割り勘演算処理を実行し,この演算処理により算出された一人あたりの分担額と不足額を計算結果表示画面に表示させ,
上記演算モードは次にユーザが切り替え操作を行うまでそのまま保持される,
携帯電話機。」

(イ)甲第2号証(特開昭53-53225号公報)には,図面とともに以下の記載がある。

G 「第1図は本発明による計算器の外観図である。NKは計算器に数値データを入力するキー,FKは計算器に四則演算命令及び実行命令を入力するキー,Cは計算器の内部状態を初期状態に設定するキー,RKは除算時の余りを表示させるキーである。
上述の各キーの操作に応答し,表示装置DPl,DP2にデータ及び処理結果のデータが表示される。
第2図は第1図に示す計算器のブロック図である。同図に於いて,KIは第1図に示す各キーを備え,計算器にデータ命令等を入力する入力回路である。
CPUは入力回路にKIから信号を受け,制御手順を記憶しているメモリROMより印加される信号でキ-操作を判別し,各キーに応じた処理を行なう処理回路である。
RA,RB,RC,RDはレジスタで,例えば6桁のデータを収容できる。AG1?AG5はゲートで,そのゲートに印加される信号に応じ,オアゲートOGl,OG2を介してレジスタのデータを表示レジスタDR1,DR2に送る。表示レジスタDR1,DR2の内容は表示装置Disp1,Disp2で表示され,該装置はそれぞれ第1図の表示装置DP1,DP2に対応する。IA,IBはインバータ,IRは命令レジスタで,F1はフラッグレジスタである。」(第1頁右下欄3行?第2頁左上欄11行)

H 「ここで,余りを表示させる必要があるならば,余りキーRKが操作され,処理回路CPUが該信号を判別し,信号線S_(3)よりHレベルの信号を出力し,アントゲートAG5を開成し,レジスタRDの余りデータをレジスタDR2に転送し,商データと共に第3図の(e)の如く表示される。余りキーRKが操作されたとき,第3図の(e)に示す如く余りを意味するRをメモリROMより発生させレジスタに入力するように構成する。なお,モード選択スイッチARが第2図に示す如く設けられ,上記スイッチARが余り表示の側にセットされている場合演算実行の「=」キーの操作により商データと余りデータを表示せしめることができる。
即ち,スイッチARが余り表示側にセットされているとき,処理回路CPUの信号線S_(2)よりHレベルの信号が出力され,前述の演算実行が終了したとき,信号線S_(1)より得られるHレベルと前述の信号線S_(2)のHレベル信号で開成されるアンドゲートAG4を介してレジスタRDの余りデータがレジスタDR2に送られ,第6図の(d)の如く表示される。この場合,余りの記号は演算終了時にメモリROMよりレジスタRDに入力させるように構成する。
上記実施例に於いて,商データとして整数部のみ求める例を示したが,もちろん小数点をも含む商データを求める場合も上記実施例に基づいて容易に考えられるものである。
また余りキーRKが操作されたとき,余りデータと商データとを処理回路を介して入れかえ,商データを表示装置Disp1で,余りデータを表示装置Disp2に供給して表示しても良い。」(第3頁右上欄3行?同頁右下欄1行)

I 「



J 「



K 「



L 「



(ウ)甲第3号証(電卓取扱説明書(DV-220W/JV-220W/MV-220W),カシオ計算機株式会社,2011年7月)には,図面とともに以下の記載がある。

M 「

」(2/4頁の左図)

N 「

」(2/4頁の中図)

O 「

」(2/4頁の右図)

P 「便利な機能
・計算結果をメモすることができます。
・2つの画面で別々に計算することができます。
・メイン画面とサブ画面で異なる計算結果を表示できます。」(4/4頁左欄「ツイン液晶画面でできること」の項)

Q 「電卓における次の配置図が記載されている。メイン画面,サブ画面,計算切替キー(計算画面切り替えきー),及びメモ(コピー)キー。」(4/4頁左欄「ツイン液晶画面でできること」の項)

R 「CUT・・・・「切り捨て」して,指定した小数位まで,答えを求めます。」(4/4頁左欄「小数を端数処理するには(JV-220W,DV-220W)」の項)

(エ)甲第4号証(YouTube動画“わり算(5)わり算のたしかめ”,[online],2012年6月23日,[平成29年3月21日検索],インターネット,<URL:https://www.youtube.com/watch?v=qvXU4yMMFCw>)には,以下の記載がある。

S 「21÷4=5あまり1 4×5+1=21」(1/2頁1行)

(オ)甲第5号証(関数電卓使用説明書(X Mark I Pro),キヤノンマーケティングジャパン株式会社,2012年11月1日)には,図面とともに以下の記載がある。

T 「商および剰余
■“商”(Q)とは,割り算の結果のことです。“剰余”(r)とは,整数の割り算で割り切れなかった値を言います。
■計算で得られた商(Q)の値と剰余(r)の値は変数メモリ“C”とメモリ“D”に自動的に保存されます。」(3/7頁1?5行)

U 「

」(3/7頁中段)

以上の記載によれば,甲第5号証には以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「関数電卓であって,
35÷10という割り算を実行すると,
割り算の結果である商(Q)=3と剰余(r)=5が表示されるとともに,
商(Q)と剰余(r)の値が,変数メモリに自動的に保存され,
「RCL」キー及び「D」キーを押すと,
変数メモリに保存された剰余(r)の値を呼び出すことができる,
関数電卓。」

(カ)甲第6号証(特開平3-119457号公報)には,図面とともに以下の記載がある。

V 「本発明は電子計算機に関し,特に,電子卓上計算機等の電子計算機に於ける商・余り計算機能に関する。」(第1頁右下欄8?10行)

W 「商・余り計算を行うことができる従来の電卓の一例を第5図に示す。第5図の電卓は,表示装置51,キーボード52及びスライドスイッチ53を備えている。キーボード52は,数値を入力するための置数キー52a,除算又は商・余り計算を指定するための除算キー52b,除算等の演算を実行するための[=]キー52c及び商・余り計算の実行後に余りを求めるための[REM]キー52dを有している。スライドスイッチ53は,演算のモードを選択するためのスイッチである。スライドスイッチ53によって選択される演算モードは,商・余り計算を行うためのREM(REMaInder)モード,演算結果を表示可能な最大桁数まで求めるFモード,並びに演算結果の小数点以下4桁目,3桁目及び1桁目を四捨五入し,小数点以下をそれぞれ3桁,2桁及び0桁に丸める3モード,2モード及び0モードである。これらの演算モードの内で,商・余り計算を行うことのできるのはREMモードだけである。
第5図の電卓に於ける除算及び商・余り計算の計算手順の例及び表示結果を第6図に示す。第6図のA欄?B欄は,除算の手順を示している。先ず,演算結果を表示可能な最大桁数まで求めるために,スライドスイッチ53を操作してFモードを選択する(第6図A欄)。第6図B欄に示すようにキーを操作すると,除算が行われる。第6図C欄?E欄に商・余り計算の手順を示す。最初にスライドスイッチ53を操作してREMモードを選択する(第6図C欄)。次に第6図D欄に示すようにキーを操作すると,商・余り計算で得られる商が先ず計算され,表示される。第6図D欄のキー操作は第6図B欄に示した除算に於けるものと同一であるが,選択されている演算モードが異なるため,異なる演算結果が得られる。次に[REM]キー52dを押下すると,余りが求められ,表示される。」(第1頁右下欄20行?第2頁右上欄15行)

X 「商・余り計算部22は,[QUOT/REM]キー検出回路21の出力及び除算検出回路23の出力が共に「1」となった場合に,被除数レジスタ24及び除数レジスタ25の内容を用いて商・余り計算を実行し,得られた商及び余りを商レジスタ26及び余りレジスタ27にそれぞれ格納する。商・余り計算部22はまた,商・余り計算を実行する際に除算検出回路23をリセットする。商・余り計算部22は,好ましくはソフトウェアで構成される。このような構成により,除算の実行後に[QUOT/REM]キー検出回路21が最初に「1」を出力したときに商・余り計算が行われる。
第3図に商・余り計算の計算結果を表示するための構成を示す。[QUOT/REM]キー検出回路21は,第2図に示したものと同様の回路であり,その出力は,ANDゲート32の一方の入力端子及びANDゲート33の一方の入力端子に与えられている。ANDゲート32の出力はフリップフロップ31のセット端子に与えられ,ANDゲート33の出力はフリップフロップ31のリセット端子に与えられている。ANDゲート32の他方の入力端子にはフリップフロップ31の出力がインバータ34を介して与えられ,ANDゲート33の他方の入力端子にはフリップフロップ31の出力が与えられている。従って,フリップフロップ31の出力は,[QUOT/REM]キー検出回路21から「1」が出力される度に,「0」から「1」へ,又は「l」から「0」へ切り替わる。ゲート35は,フリップフロップ31の出力が「l」である場合に商レジスタ26の内容を表示レジスタ38へ送る。ゲート36にはインバータ37を介してフリップフロップ31の出力が与えられているため,ゲート36はフリップフロップ31の出力が「0」である場合に余りレジスタ27の内容を表示レジスタ38へ送る。表示制御部39は,表示レジスタ38の内容をLCD1に表示する。」(第3頁右上欄5行?同頁右下欄2行)

Y 「第4図に本実施例の操作例及び表示結果を示す。第4図A欄に示すようにキー操作を行うと,除算が行われ,結果が表示される。次に,第4図B欄に示すように[2ndF]キー2b及び[QUOT/REM]キー2eを連続して押下すると,前述の除算の実行時に入力された被除数(10)及び除数(3)を用いて商・余り計算が実行され,計算結果の内の商(3)が表示される。次に[2ndF]キー2b及び[QUOT/REM]キー2eを連続して押下すると,第4図C欄に示すように,商に代わって余り(1)が表示される。その後は,第4図D欄?E欄に示すように,[2ndF]キー2b及び[QUOT/REM]キー2eを押下する度に,商及び余りが交互に表示される。」(第4頁左上欄2?16行)

Z 「



AA 「



AB 「



AC 「



AD 「



(キ)甲第7号証(教科書ワーク 数と計算 5年,(株)文理,2011年3月10日)には,図面とともに以下の記載がある。

AE 「84.3÷7の筆算をして,商は一の位まで求めて,あまりもだしましょう。
(途中省略)
<検算>
7 × 12+0.3=84.3
わる数 商 あまり わられる数」(2/8頁「やってみよう」の枠内)

(ク)甲第8号証(特開2004-206359号公報)には,図面とともに以下の記載がある。(下線は当審で付したものである。)

AF 「【0016】
図1は本発明の実施の形態による情報処理装置1の外観図である。この情報処理装置1は海外旅行の旅行者が携帯して使用することを前提としており,後述する如く日本語と英語双方向の翻訳処理,任意の文をメモとして記録するメモ帳処理,および任意の対象国の任意の対象金額を指定して金種別枚数計算を行う金種計算処理等を実行することができる。これらの処理を実行するために情報処理装置1はドットマトリクスタイプの液晶表示装置2を備え,後述する各種の演算処理はテンキー3,カーソルキー4及びファンクションキーである切替キー5,変更キー6,確定キー7による入力操作に従って行われる。また,音声入力はマイク部8,音声出力はスピーカ部9により行われる。
【0017】
次に図2のブロック図を参照して,情報処理装置1の回路構成を説明する。情報処理装置1はCPU20により演算と処理の制御を行う。入力装置としては上述した各種キー3乃至7を備えたキー入力装置22とそのキー入力インターフェス21及び音声入力のための前記マイク部8に設けられたマイク24とその音声入力インターフェス23を備える。(以下省略)」

AG 「【0030】
しかして,まず,S101で図10の液晶表示装置2に示すような国の一覧選択画面を表示し,次のS102で表示された国の一覧の中からカーソルキー4と確定キー7によって国を選択する。ここで例えば国名ドイツが選択された場合は,選択された“ドイツ”という国の値を対象国メモリ61に格納する(S103)。
S104で金額入力フラグ65の値が「1」状態であればS105の金額の入力処理に進むが,「0」状態であればS107に進む。
S105ではテンキー3による金額の入力がなされたか否かを判断し,ここで例えば“125.9”の金額が入力されたら入力された金額を対象金額メモリ62に格納する(S106)。
【0031】
S107では図11の液晶表示装置2の領域2Aに示すように“入力金額”という文字列と共に対象金額メモリ62に格納された入力金額“125.9”,対象国メモリ61に格納された対象国名“ドイツ”を表示する。また,対象国メモリ61に格納された国名“ドイツ”を用いて金種テーブル54をサーチし,国名“ドイツ”に対応する単位名メモリ546に記憶されている単位“ユーロ”を読み出して表示する。この場合,金額入力は必ず上位単位で入力されるものとし,例えば75セントといった場合には“0.75”と入力するものとする。尚,入力金額だけは大きな文字で表示する。
【0032】
S108では,入力された国名“ドイツ”が同一通貨国テーブル55の国メモリ551に有るか否かを判断し(この場合「有る」),有る場合には,対応する同一通貨メモリ552に記憶されている同一通貨“ユーロ”を用いて金種テーブル54の国又は同一通貨メモリ541をサーチする。そして,国又は同一通貨メモリ541に“ユーロ”が記憶されている領域のデータ(貨幣コード,額面,種別,単位記号,単位名,換算定数,画像小,画像大)を読み出して金種計算メモリ63の対応する領域に記憶させる。
続けて国名“ドイツ”を用いて金種テーブル54の国または同一通貨メモリ541をサーチし,“ドイツ” が記憶されている領域のデータを同様に読み出して金種計算メモリ63の対応する領域に記憶させる。そして,これらの金種計算メモリ63に記憶されたデータを額面順に並び替え,最も金額の高いデータから順に番号を付して再度記憶させる。
【0033】
このS108の処理の結果,金種計算メモリ63の値は入力された国がドイツの場合,金種テーブル54の国又は同一通貨メモリ541に“ユーロ”及び“ドイツ”が記憶されている領域に対応するデータ(54X乃至54Y)が図6に示すようにNo.メモリ631に番号「1」から順次番号付けがなされて記憶されることになる。
次のS109ではS106で対象金額メモリ62に記憶された入力金額の値を合計金額メモリ64の演算金額メモリ641に記憶させ,枚数選択値メモリ66に「1」を設定し,次の対象金額の金種別枚数計算処理(S200)を行う。
【0034】
金種別枚数計算処理(S200)の詳細を図12を参照して説明する。
まず,以下のS201?S203の初期化処理を行う。
金種計算メモリ63の対象枚数メモリ63B(以降記憶されるデータをN1と記す),変更枚数メモリ63C(以降記憶されるデータをN2と記す)及び差額枚数メモリ63D(以降記憶されるデータをN3と記す)を全て「0」にし(S201),金種計算メモリ63のレコードの連番を示すNo.メモリ631の最大値をMaxレコードNo.メモリ67に設定し(S202),レコードカウンタ68(以降記憶されるデータをNと記す)に「1」を設定する(S203)。
【0035】
次に,額面の降順に並んだ金種計算メモリ63のレコードを順次読み込んで金種別枚数を計算するS204?S212の処理を行う。
S204では金種計算メモリ63のレコードの連番を示すNo.メモリ631の値がNと等しいレコードを読み出す。
S205で演算金額メモリ641の値(以降Mと記す)と読み出した金種計算メモリ63の額面メモリ634の値及び換算定数メモリ638の値との乗算結果を比較し,Mの方が小であれば減算できないのでNを+「1」カウントアップして次のレコードを読むためにS204に戻る(S206)。
S205でMの方が大きいか等しい場合は,Mから額面メモリ634の値及び換算定数メモリ638の値との乗算結果を減算し,その結果をMに格納する(S207)。
【0036】
そしてS208?S211で枚数選択値メモリ66の値によりN1,N2,N3のいずれかを+「1」カウントアップする。
S208では枚数選択値メモリ66の値を判別し,枚数選択値メモリ66の値が「1」ならば,N1を+「1」カウントアップし(S209),枚数選択値メモリ66の値が「2」ならば,N2を+「1」カウントアップし(S210),枚数選択値メモリ66の値が「3」ならば,N3を+「1」カウントアップする(S211)。
S212でMが「0」でないと判定されればS204に戻り次のレコードを読んで金種別枚数計算を繰り返し,Mが「0」と判定された場合は金種別枚数計算処理(S200)を終了する。
以上が金種別枚数計算処理(S200)の詳細である。
(途中省略)
【0040】
・・・即ち,金種別枚数表示処理(S300)のS305及びS307の処理によって,図11に示すように125.9ユーロに相当する金種の縮小画像と対応する枚数が表示されるもので紙幣は表面を表示し,硬貨は表面と裏面の両方を表示している。枚数は100ユーロが1枚,20ユーロが1枚,5ユーロが1枚,50セントが1枚,及び20セントが2枚となっている。」

AH 「【図1】



AI 「【図2】



AJ 「【図3】



AK 「【図11】



AL 「【図12】



以上の記載によれば,甲第8号証には以下の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。

「任意の対象金額を指定して金種別枚数計算を行う金種計算処理等を実行することができる情報処理装置1であって,
情報処理装置1は,演算と処理の制御を行うCPU20と,液晶表示装置2と,各種キー3乃至7を備えたキー入力装置22とを備え,
金種テーブル54のデータを読み出して金種計算メモリ63に記憶させ,金種計算メモリ63に記憶されたデータを額面順に並び替え,
テンキー3により,“125.9”の金額が入力されると,
額面の降順に並んだ金種計算メモリ63のレコードを順次読み込んで金種別枚数を計算し,
125.9ユーロに相当する金種の縮小画像と対応する枚数,すなわち,100ユーロが1枚,20ユーロが1枚,5ユーロが1枚,50セントが1枚,及び20セントが2枚を表示する,
情報処理装置1。」

(ケ)甲第9号証(特開平1-214994号公報)には,図面とともに以下の記載がある。

AM 「(産業上の利用分野)
本発明は,金融機関等において現金の支払い等を行なう場合の金種計算を行なう金融端末装置に関する。」(第1頁左下欄16?18行)

AN 「第1図は本発明の装置の実施例を示すブロック図である。
図においてこの装置には,金額入力手段1と,金種枚数入力手段2と,金種計算手段3と,表示手段4及び記憶手段5とが設けられている。
上記金額入力手段1及び金種枚数入力手段2は,いずれも通常の情報処理装置においてよく使用されているキーボード等から構成される。この実施例では,いずれもそのいわゆるテンキーを使用してデータの入力が行なわれる。
金額入力手段1からは,顧客に支払われるべき支払い合計金額が入力される。この値をMとする。又,金種枚数入力手段2においては,図に示したように,10,000円紙幣,5,000円紙幣,l,000円紙幣,500円硬貨,100円硬貨,50円硬貨,10円硬貨,5円硬貨,1円硬貨というように,全部で9種類の金種について,それぞれ例えば顧客の指定した支払い枚数を入力するよう構成されている。これらの枚数を,それぞれI_(0)?I_(8)というように定めるものとする。又,金種計算手段3はマイクロプロセッサ等から構成され,後で説明するような方法によって機種を計算する。」(第2頁左下欄7行?同頁右下欄8行)

AO 「表示手段4は,金種計算手段3による金種計算の結果求められた,10,000円紙幣枚数,5,000円紙幣枚数,l,000円紙幣枚数,500円硬貨枚数,100円硬貨枚数,50円硬貨枚数,10円硬貨枚数,5円硬貨枚数,1円硬貨枚数を,それぞれ必要に応じて選択して表示するデイスプレィ等から構成されている。」(第2頁右下欄17行?第3頁左上欄3行)

AP 「以上の処理によって,予め特定の金種について特定の枚数を指定した場合,残りの金額をそれ以外の金種によって最小使用枚数で支払う金種計算が実行された。」(第4頁左上欄14?17行)

AQ 「



AR 「



AS 「



ウ 判断

(ア)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。

a 甲1発明の「制御部12」(前者)と
本件発明1の「第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理する演算処理部」(後者)
とを対比すると,
甲1発明の制御部12は,「割り勘演算制御機能12aを備えており」,当該「割り勘演算制御機能12a」は,「割り勘対象の金額と人数をユーザに入力させ,入力された金額と人数とをもとに一人あたりの分担額を算出」するものであり,
甲1発明の「割り勘対象の金額」は割られる数であるから本件発明1の「第1入力値A_(1)」に相当し,甲1発明の「人数」は割る数であるから本件発明1の「正の数である第2入力値B_(1)」に相当するので,
前者と後者とは,
「第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理する演算処理部」
の点で一致する。

b 甲1発明の「算出された一人あたりの分担額と余り或いは不足額」を表示する「表示部15」が本件発明1の「前記第1演算の結果を表示する表示部」に相当する。

c 甲1発明の「携帯電話機」は,マイクロコンピュータを主制御部として備える制御部12を備えており,計算機であるといえるから,甲1発明の「携帯電話機」が本件発明1の「計算機」に相当する。

d 甲1発明の割り勘演算制御機能12aは,「余りを発生させる第1の演算モードと,不足額を発生させる第2の演算モードとを備え,ユーザのモード切り替え操作に応じてこれらの演算モードを選択的に実行する機能を有して」いるところ,図3の計算例をみると,「余りを発生させる第1の演算モード」では,16000円を6人で割ると,一人あたりの分担額が2700円で,合計16200円が集まり,16000円を支払うと,200円が余るという計算となっている。
一方,「不足額を発生させる第2の演算モード」の具体例は記載がないものの,例えば,16000円を6人で割ると,一人あたりの分担額が2600円で,合計15600円が集まり,16000円を支払うためには400円不足するという計算が想定される。
そして,甲1発明では,「ユーザが,演算モードを切り替えるための操作を行うと,・・・上記演算モードは次にユーザが切り替え操作を行うまでそのまま保持される」ものであるから,演算モードとして,「不足額を発生させる第2の演算モード」が選択されて保持されている状態である場合,
「ユーザが入力部14のテンキーを操作して金額と人数を入力すると,制御部12は入力された金額と人数をもとに一定比率の割り勘演算処理を実行し,演算処理により算出された一人あたりの分担額を計算結果表示画面に表示させ,また,割り切れずに“不足”が発生した場合には,この“不足額”を上記分担額と共に表示させ」るように動作するものと認められ,この動作(前者)と
本件発明1の「前記演算処理部は,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1),及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求める」(後者)
とを対比すると,
甲1発明の「一人あたりの分担額」は,割り算の商であるから,本件発明1の「整数である第1整商C_(1)」に相当し,
「不足額を発生させる第2の演算モード」の場合,一人あたりの分担額(2600円)は,人数(6人)との積が割り勘対象の金額(16000円)を超えない整数(15600円)となるから,甲1発明の「不足額を発生させる第2の演算モード」における「一人あたりの分担額」と本件発明1の「前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1)」とは,「前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない整数である第1整商C_(1)」である点で共通し,
甲1発明の「不足額」が本件発明1の「第1剰余D_(1)」に相当するから,
前者と後者とは,
「前記演算処理部は,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない整数である第1整商C_(1),及び第1剰余D_(1)を求める」
点で共通する。

e 上記dで検討したように,甲1発明において,演算モードとして,「不足額を発生させる第2の演算モード」が選択されて保持されている状態から,「ユーザが,演算モードを切り替えるための操作を行うと」,「余りが発生する第1の演算モード」に切り替わり,この状態において実行される,
甲1発明の「ユーザが入力部14のテンキーを操作して金額と人数を入力すると,制御部12は入力された金額と人数をもとに一定比率の割り勘演算処理を実行し,演算処理により算出された一人あたりの分担額を計算結果表示画面に表示させ,また,割り切れずに余りが発生した場合には,この余り額を上記分担額と共に表示させ」(前者)と
本件発明1の「前記第1剰余D_(1)が0でない場合に,前記第1整商C_(1)を1繰り上げた第2整商E_(1)=C_(1)+1,及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第2整商E_(1)との積を減じて得られる第2剰余F_(1)=D_(1)-B_(1)とを求め」(後者)
とを対比すると,
甲1発明の「余りが発生する第1の演算モード」では,例えば,16000円を6人で割ると,一人あたりの分担額が2700円で,合計16200円が集まり,16000円を支払うと,200円が余るという計算が実行されるところ,甲1発明の「一人あたりの分担額(2700円)」は,第1整商C_(1)(2600円)より大きい「整商」である点で,本件発明1の「第2整商E_(1)」と共通し,甲1発明の「余り(200円)」は,割り算の剰余という観点からみると負の値である点で本件発明1の「第2剰余F_(1)」と共通するから,
前者と後者とは,
「第2整商E_(1),及び第2剰余F_(1)とを求め」
る点で共通している。

f 甲1発明の「演算処理により算出された一人あたりの分担額を計算結果表示画面に表示させ,また,割り切れずに余りが発生した場合には,この余り額を上記分担額と共に表示させ,・・・この演算処理により算出された一人あたりの分担額と不足額を計算結果表示画面に表示させ」(前者)と
本件発明1の「前記表示部は,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1),並びに前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)を前記第1演算の結果として表示する」(後者)
とを対比すると,
甲1発明の「計算結果表示画面」「(第2演算モードの)一人あたりの分担額」「不足額」「(第1演算モードの)一人あたりの分担額」「余り額」が本件発明1の「表示部」「第1整商C_(1)」「第1剰余D_(1)」「第2整商E_(1)」「第2剰余F_(1)」にそれぞれ相当するから,
前者と後者とは,
「前記表示部は,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1),並びに前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)を前記第1演算の結果として表示する」
点で一致する。

そうすると,本件発明1と甲1発明とは,

「第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理する演算処理部と,
前記第1演算の結果を表示する表示部と
を備える計算機であって,
前記演算処理部は,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない整数である第1整商C_(1),及び第1剰余D_(1)を求めるとともに,
第2整商E_(1),及び第2剰余F_(1)とを求め,
前記表示部は,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1),並びに前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)を前記第1演算の結果として表示することを特徴とする計算機。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
第1整商C_(1)に関して,
本件発明1では,第1整商C_(1)は,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない「最大の」整数であるのに対して,
甲1発明では,「第2の演算モード」における「一人あたりの分担額」は例示がないものの,例えば上記で想定した「一人あたりの分担額(2600円)」は,人数(6人)との積が15600であるから,割り勘対象の金額(16000円)を超えない「最大の」整数とはいえない点。

[相違点2]
第1剰余D_(1)に関して,
本件発明1では,第1剰余D_(1)は,「前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる」のに対して,
甲1発明では,「不足額」がどのようにして求められているのかは不明である点。

[相違点3]
第2整商E_(1)及び第2剰余F_(1)に関して,
本件発明1では,「前記第1剰余D_(1)が0でない場合に,前記第1整商C_(1)を1繰り上げた第2整商E_(1)=C_(1)+1」を求め,さらに,「前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第2整商E_(1)との積を減じて得られる第2剰余F_(1)=D_(1)-B_(1)」を求めているのに対して,
甲1発明では,「余りが発生する第1の演算モード」の「一人あたりの分担額」,及び「余り額」がどのようにして求められているのかは不明である点。

上記相違点について検討する。

[相違点1]について
不足額を発生させる割り勘の計算において,計算単位を1円単位とすることは,普通に想定されることであり,この場合には,16000円を6人で割ると,一人あたりの分担額が2666円で,合計15996円が集まり,16000円を支払うためには4円不足するという計算が行われ,「一人あたりの分担額(2666円)」は,人数(6人)との積が割り勘対象の金額(16000円)を超えない「最大の」整数となる。
してみれば,計算単位を1円単位とすることにより,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
剰余を求める際に,単純に割り算をして商の小数点以下を切り捨てた整商と割る数との積を割られる数から差し引くような計算はごくありふれた計算方法であるから,甲1発明において,そのような計算方法を採用して,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
甲1発明では,ユーザが,演算モードを切り替えるための操作を行うと,演算モードが「余りが発生する第1の演算モード」から「不足額が発生する第2の演算モード」に切り替わり,或いは,「不足額が発生する第2の演算モード」から「余りが発生する第1の演算モード」に切り替わるものである。
そうすると,甲1発明では,演算モードとして,「不足額が発生する第2の演算モード」が選択されている場合には,「不足額が発生する第2の演算モード」の「一人あたりの分担額」及び「不足額」が計算されるだけであり,ユーザが演算モードを切り替えるための操作を行わない限り,「余りが発生する第1の演算モード」の「一人あたりの分担額」は計算されないものであるから,甲1発明は,「不足額が発生する第2の演算モード」の「一人あたりの分担額」を計算した際,剰余,すなわち「不足額」が「0でない場合」に,“必ず”,「余りが発生する第1の演算モード」の「一人あたりの分担額」を計算するというものではない。
また,甲1発明では,各演算モード毎に,「(第2の演算モードの)一人あたりの分担額」と「不足額」,あるいは「(第1の演算モードの)一人あたりの分担額」と「余り額」を“独立”に「計算しているだけであり,各演算モードの演算結果を相互に利用するというような技術思想は記載されていないから,上記「[相違点1]について」で検討したように,計算を仮に1円単位で実行したとしても,「不足額が発生する第2の演算モード」の「一人あたりの分担額」を1繰り上げることによって,「余り額が発生する第2の演算モード」の「一人あたりの分担額」を求めるような計算を行うことの動機付けはなく,そのような計算を行うことが容易であるともいえない。

また,甲第2号証には,計算器において,モード選択スイッチを「余り表示」にしておくと,「被除数」,「÷キー」,「除数」,「=」の順にキー入力したときに,割り算を実行して,商と余りを表示することは記載されているものの,甲1発明に甲第2号証のこの記載内容を加味したとしても,上記相違点3についての判断がくつがえるものではない。

したがって,本件発明1は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(イ)請求項2?6,8,9,及び17に係る発明について
請求項2?6,8,9,及び17に係る発明は,本件発明1を更に減縮したものであるから,上記本件発明1についての判断と同様の理由により,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(ウ)本件発明10について

本件発明10と甲8発明とを対比する。

a 甲8発明の「各種キー3乃至7を備えたキー入力装置22」(前者)と
本件発明10の「0以上の数である被除数A_(1)と,n個(nは2以上の整数)の正の除数(B_(1),B_(2),…,B_(n)(ただし,2からnまでの整数kについて,B_(k-1)>B_(k)))の組である除数群B_(G)とを入力するための入力部」(後者)
とを対比すると,
甲8発明の「テンキー3」が本件発明10の「入力部」に相当し,
甲8発明の,テンキー3により入力される「“125.9”の金額」が本件発明10の「0以上の数である被除数A_(1)」に相当し,
甲8発明の「額面の降順に並んだ金種計算メモリ63のレコード」の「額面」が本件発明10の「n個(nは2以上の整数)の正の除数(B_(1),B_(2),…,B_(n)(ただし,2からnまでの整数kについて,B_(k-1)>B_(k)))」に相当し,
甲8発明の「金種計算メモリ63」と本件発明10の「入力部」とは,演算のためのデータの「データ源」である点で共通するから,
前者と後者とは,
「0以上の数である被除数A_(1)を入力するための入力部と,n個(nは2以上の整数)の正の除数(B_(1),B_(2),…,B_(n)(ただし,2からnまでの整数kについて,B_(k-1)>B_(k)))の組である除数群B_(G)を入力するためのデータ源」
である点で共通する。

b 甲8発明の「演算と処理の制御を行うCPU20」(前者)と
本件発明10の「入力された前記被除数A_(1)および前記除数群B_(G)について,被除数A_(1)を,B_(1)×C_(1)+B_(2)×C_(2)+…+B_(n)×C_(n)+D_(n)と表現することのできるn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))の組である整商群C_(G)及び剰余D_(n)を算出する演算処理部」(後者)
とを対比すると,
甲8発明の「125.9ユーロに相当する金種の縮小画像と対応する枚数,すなわち,100ユーロが1枚,20ユーロが1枚,5ユーロが1枚,50セントが1枚,及び20セントが2枚」が本件発明10の「入力された前記被除数A_(1)および前記除数群B_(G)について,被除数A_(1)を,B_(1)×C_(1)+B_(2)×C_(2)+…+B_(n)×C_(n)と表現することのできるn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))の組である整商群C_(G)」に相当し,
甲8発明の「CPU20」が本件発明10の「演算処理部」に相当するから,
前者と後者とは,
「入力された前記被除数A_(1)および前記除数群B_(G)について,被除数A_(1)を,B_(1)×C_(1)+B_(2)×C_(2)+…+B_(n)×C_(n)と表現することのできるn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))の組である整商群C_(G)を算出する演算処理部」
である点で共通する。

c 甲8発明の「液晶表示装置2」(前者)と
本件発明10の「前記演算処理部が算出した整商群C_(G)に属するn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))と剰余D_(n)を表示する表示部」(後者)
とを対比すると,
甲8発明の「125.9ユーロに相当する金種の縮小画像と対応する枚数,すなわち,100ユーロが1枚,20ユーロが1枚,5ユーロが1枚,50セントが1枚,及び20セントが2枚」が本件発明10の「前記演算処理部が算出した整商群C_(G)に属するn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))」に相当し,
甲8発明の「液晶表示装置2」が本件発明10の「表示部」に相当するから,
前者と後者とは,
「前記演算処理部が算出した整商群C_(G)に属するn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))を表示する表示部」
である点で共通する。

d 甲8発明の「情報処理装置1」が本件発明10の「計算機」に相当する。

そうすると,本件発明10と甲8発明とは,

「0以上の数である被除数A_(1)を入力するための入力部と,
n個(nは2以上の整数)の正の除数(B_(1),B_(2),…,B_(n)(ただし,2からnまでの整数kについて,B_(k-1)>B_(k)))の組である除数群B_(G)を入力するためのデータ源と,
入力された前記被除数A_(1)および前記除数群B_(G)について,被除数A_(1)を,B_(1)×C_(1)+B_(2)×C_(2)+…+B_(n)×C_(n)と表現することのできるn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))の組である整商群C_(G)を算出する演算処理部と,
前記演算処理部が算出した整商群C_(G)に属するn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))を表示する表示部と
を備える計算機。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点4]
除数群B_(G)を入力するためのデータ源に関し,
本件発明10では,除数群B_(G)を「入力部」により入力しているのに対して,
甲8発明では,金種計算メモリ63から読み込んでいる点。

[相違点5]
本件発明10では,演算処理部が「剰余D_(n)」を算出し,表示部が,「剰余D_(n)」を表示しているのに対して,
甲8発明では,剰余を算出して表示することは記載されていない点。

上記相違点について検討する。

[相違点4]について
計算機に演算させるための演算対象データをどのような手段を用いて供給するかは,当業者が適宜選択しうる設計的事項にすぎない。

[相違点5]について
甲8発明の除数群は,紙幣や硬貨の額面であり,これらの額面のうちの最小単位としての「1セント」は,通貨の最小単位と等しいものである。
そして,甲8発明では,この「1セント」硬貨の枚数までカウントしているのであるから,甲8発明において,「剰余」を発生することを目的としていない。
してみれば,甲8発明において,演算処理部が剰余D_(n)を算出し,表示部が,算出された剰余D_(n)を表示するように構成する動機付けはなく,そのような構成は,当業者が容易になし得るものではない。

また,甲第9号証にも甲8発明とほぼ同様の発明が記載されているが,この記載内容を甲8発明に加味したとしても,上記相違点5についての判断がくつがえるものではない。

したがって,本件発明10は,甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

なお,異議申立人は,異議申立書の第76頁において「硬貨の枚数が剰余に相当する」旨を主張しているが,上記で判断したとおり,入力された対象金額は,通貨の最小単位の額面まで割り算すれば必ず割り切れるものであるから,「剰余」という概念が発生する余地はない。また,甲8発明では,紙幣にも硬貨にもそれぞれに額面があり,当該額面×換算定数で割り算をして,枚数をカウントしている点で紙幣と硬貨の間には何らの差異もないことから,紙幣の枚数を商とする一方で,硬貨の枚数を剰余とする旨の主張は根拠がないものである。

(エ)請求項11?16に係る発明について
請求項11?16に係る発明は,本件発明10を更に減縮したものであるから,上記本件発明10についての判断と同様の理由により,甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(オ)請求項18に係る発明について
請求項18に係る発明は,請求項1?6,8,9,10?16,又は17に係る発明をプログラムの発明として記載したものであるから,上記(ア)?(エ)における判断と同様の理由により,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,又は甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(カ)本件発明19について

本件発明19と甲5発明とを対比する。

a 甲5発明の「35÷10という割り算」が本件発明19の「第1入力値A1を正の数である第2入力値B1で除算する第1演算」に相当する。

b 甲5発明の「商(Q)=3」が本件発明19の「第2入力値B1との積が前記第1入力値A1を超えない最大の整数である第1整商C1」に相当する。

c 甲5発明の「剰余(r)=5」が本件発明19の「第1入力値A1から前記第2入力値B1と第1整商C1との積を減じて得られる第1剰余D1」に相当する。

d 甲5発明の関数電卓が,割り算を実行する「演算処理部」と演算結果を表示する「表示部」を備えていることは自明のことである。

e 甲5発明の「変数メモリに保存された剰余(r)の値」は,これを呼び出すことで,次の演算における“第1入力値”として利用できるものであることは明らかであるから,甲5発明の“変数メモリに保存された剰余(r)の値を呼び出すことができる”“「RCL」キー及び「D」キー”が本件発明19の「第1剰余D1を,第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A2として使用するための剰余利用キー」に相当する。

f 甲5発明の「割り算の結果である商(Q)=3と剰余(r)=5が表示される」と, 本件発明19の「前記表示部は,前記第1演算の結果を,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示する」とは,
「前記表示部は,前記第1演算の結果を表示する」点で共通する。

g 甲5発明の「関数電卓」が本件発明19の「計算機」に相当する。

そうすると,本件発明19と甲5発明とは,
「第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理して,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1),及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求める演算処理部と,
前記第1演算の結果として,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を表示する表示部と,
前記第1剰余D_(1)を,前記第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A_(2)として使用するための剰余利用キーを備え,
前記表示部は,前記第1演算の結果を表示する計算機。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点6]
表示部が表示する第1演算の結果に関し,
本件発明19では,「第1演算の結果を,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示する」のに対して,
甲5発明では,単に第1整商C_(1)および第1剰余D_(1)を個別に表示している点。

上記相違点について検討する。

[相違点6]について
甲第4号証には,「21÷4=5あまり1」という割り算の計算結果が正しいか否かをたしかめるための計算として,「4×5+1=21」という計算を行うことが記載されている。
しかしながら,このたしかめるため計算における「4×5+1=21」という数式は,あくまでも,たしかめるため計算の内容を示すだけのものであって,「第1演算(割り算)の結果を,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示する」ためのものではない。
また,甲第7号証には,「84.3÷7の筆算をして,商は一の位まで求めて,あまりもだ」すという計算の結果を「検算」するための計算式として「7(わる数) × 12(商)+0.3(あまり)=84.3(わられる数)」という数式が記載されているものの,当該数式も,割り算の結果を「検算」するための計算の内容を示すだけのものであって,「第1演算(割り算)の結果を,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示する」ためのものではない。
また,甲第2号証,甲第3号証,及び甲第6号証の記載をみても,「第1演算(割り算)の結果を,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示する」ことは記載も示唆もされておらず,また,そのように表示することが周知技術であるという証拠もない。
してみれば,第1演算(割り算)の結果を,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示するように構成すること,すなわち,上記相違点6に係る構成とすることは,当業者が容易になし得るものではない。

したがって,本件発明19は,甲第5号証,甲第3号証,甲第2号証,甲第6号証,甲第4号証,及び甲第7号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(キ)請求項20?21に係る発明について
請求項20?21に係る発明は,本件発明19を更に減縮したものであるから,上記本件発明19についての判断と同様の理由により,甲第5号証,甲第3号証,甲第2号証,甲第6号証,甲第4号証,及び甲第7号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(ク)本件発明22について

本件発明22と甲5発明とを対比する。

a 甲5発明の「35÷10という割り算」が本件発明22の「第1入力値A1を正の数である第2入力値B1で除算する第1演算」に相当する。

b 甲5発明の「商(Q)=3」が本件発明22の「第2入力値B1との積が前記第1入力値A1を超えない最大の整数である第1整商C1」に相当する。

c 甲5発明の「剰余(r)=5」が本件発明22の「第1入力値A1から前記第2入力値B1と第1整商C1との積を減じて得られる第1剰余D1」に相当する。

d 甲5発明の関数電卓が,割り算を実行する「演算処理部」と演算結果を表示する「表示部」を備えていることは自明のことである。

e 甲5発明の「変数メモリに保存された剰余(r)の値」は,これを呼び出すことで,次の演算における“第1入力値”として利用できるものであることは明らかであるから,甲5発明の“変数メモリに保存された剰余(r)の値を呼び出すことができる”“「RCL」キー及び「D」キー”が本件発明22の「第1剰余D1を,第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A2として使用するための剰余利用キー」に相当する。

f 甲5発明の「関数電卓」が本件発明22の「計算機」に相当する。

そうすると,本件発明22と甲5発明とは,
「第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理して,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1),及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求める演算処理部と,
前記第1演算の結果として,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を表示する表示部と,
前記第1剰余D_(1)を,前記第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A_(2)として使用するための剰余利用キーを備える計算機。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点7]
本件発明22は,「前記第1剰余D_(1)が0でない場合に端数を切り上げてC1+1を表示させるための入力キーをさらに備える」のに対して,
甲5発明は,そのようなキーを備えていない点。

上記相違点について検討する。

[相違点7]について
上記「3.特許異議の申立てについて」の「(3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について」の「イ 甲各号証の記載」の「(ア)」によれば,
甲第1号証には,
「割り勘演算制御機能12aは,余りを発生させる第1の演算モードと,不足額を発生させる第2の演算モードとを備え,ユーザのモード切り替え操作に応じてこれらの演算モードを選択的に実行する機能を有」すること
が記載されている。
ここで,甲第1号証において,「不足額を発生させる第2の演算モード」から「余りを発生させる第1の演算モード」に切り替えるために「ユーザのモード切り替え操作」を行うことと,本件発明22における,「端数を切り上げてC_(1)+1を表示させるため」の操作とは,正の剰余の計算から負の剰余の計算へ切り替えている点で対応してはいるものの,甲第1号証には,ユーザが「モード切り替え操作」を行うための「キー」を設けることは記載も示唆もされておらず,また,そのような「キー」を設けることが周知技術であるという証拠もない。
また,甲第2号証,甲第3号証,及び甲第6号証の記載をみても,正の剰余の計算から負の剰余の計算へ切り替える操作を行うための「キー」を設けることは記載も示唆もされていない。
してみれば,甲5発明に,甲第1号証に記載の技術を適用して,前記第1剰余D_(1)が0でない場合に端数を切り上げてC_(1)+1を表示させるための入力キーをさらに備えるように構成すること,すなわち,上記相違点7に係る構成とすることは,当業者が容易になし得るものではない。

したがって,本件発明22は,甲第5号証,甲第3号証,甲第2号証,甲第6号証,及び甲第1号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(ケ)請求項23に係る発明について
請求項23に係る発明は,請求項19?21に係る発明,又は請求項22に係る発明をプログラムの発明として記載したものであるから,上記(カ)?(ク)における判断と同様の理由により,甲第5号証,甲第3号証,甲第2号証,甲第6号証,甲第4号証,及び甲第7号証に記載された発明,又は甲第5号証,甲第3号証,甲第2号証,甲第6号証,及び甲第1号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(コ)以上のとおりであるから,請求項1?6,8?23に係る発明は,甲第1号証?甲第9号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(サ)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
特許異議申立人は,異議申立書(85?88頁)において,
「本件特許発明の計算機100は,CPU等の演算処理部140がプログラムを実行することによって計算機能等が実現されるものであるから,明細書においては,少なくともフローチャートの類は必須の開示事項であるところ,本件特許明細書には,フローチャートが一切開示されていないから,本件特許発明は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
旨を主張している。
しかしながら,特許法には,CPU等の演算処理部140がプログラムを実行することによって計算機能等が実現される場合に,この計算機能を説明するためのフローチャートを明細書に記載することが必須であるということは規定されていない。
また,例えば本件発明1の
A 「第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理する演算処理部」
B 「前記第1演算の結果を表示する表示部」
C 「前記演算処理部は,前記第1演算の結果として,前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1),及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求める」
D 「前記第1剰余D_(1)が0でない場合に,前記第1整商C_(1)を1繰り上げた第2整商E_(1)=C_(1)+1,及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第2整商E_(1)との積を減じて得られる第2剰余F_(1)=D_(1)-B_(1)とを求め」
E 「前記表示部は,前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1),並びに前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)を前記第1演算の結果として表示する」
との構成は,
本件特許明細書の段落【0028】の「続いて,数値入力キー131で,1,0,0を押して第1入力値として100を入力し,次に剰余演算キー133を押して剰余演算を指示する。続いて,数値入力キー131で,4,2を押して第2入力値として42を入力し,解答キー136を押すことで計算結果を得る。数値入力キー131を押すことにより入力された第1入力値,第2入力値,および剰余演算キー133を押すことにより入力された演算指示は,記憶部150に記憶されるとともに表示部120に表示される。さらに,解答キー136を押すと,入力に基づいた演算が実行され,除数との積が被除数以下で最大となる整数の商(以下,第1整商という)と,被除数から除数と第1整商との積を減じた剰余(以下,第1剰余という)とが求められる。計算の結果は記憶部150に記憶されるとともに,表示部120に表示される。本例の場合,表示部120には,「2…16」と表示される。」との記載,
段落【0034】の「さて,本発明の課題で説明した通り,実際に所定の数を作る場合には,前述のような加算型の計算方法ではなく,減算型の計算方法もあり得る。つまり,除算に余りがある場合に,第1整商に1加えた数(以下,第2整商という)と除算の除数との積から,余分な数を差し引くという考え方である。第2整商を採用した場合の剰余(以下第2剰余という)は,被除数から除数と第2整商との積を差し引いた値に相当し,この値は負の値となることから差し引くべき数を知ることができる。なお,第2剰余を求める演算は第1剰余から除数を減算するという演算に簡単化できる。減算型の計算方法を本例に適用すると次のような計算になる。
100=(42×3)+(16-42)=42×3+(-26)
これは,100包の薬剤を準備するときに,42包入りの箱を3箱用意し,その1つの箱から26包を抜き取ればよいことを意味する。」との記載,及び
段落【0036】の「実際の利用場面では,加算型の計算結果が適しているか,減算型の計算結果が適しているかは,状況により異なるため,計算機100は,両方の計算結果を確認できるように構成されてもよい。例えば,加算型の計算結果である(42×2)+16と,減算型の計算結果である(42×3)-26とを,表示切替キー137を押すことで,表示の切り替えができるように構成するとよい。具体的には,上述の商・剰余による表現と数式による表現のそれぞれに,加算型と減算型の計算結果を組み合わせて,4通りの表現を切り替えるようにしてもよい。加算型と減算型の表示を切り替えるキーを,商・剰余による表現と式による表現とを切り替えるキーとは別に設けてもよい。あるいは,この加算型の計算結果(すなわち第1整商と第1剰余)と減算型の計算結果(すなわち第2整商と第2剰余)を,表示部120に同時に表示させるように構成してもよい。」との記載をみれば,フローチャートによる説明がなくても十分に理解することができるものである。
してみれば,フローチャートが記載されていないことをもって,サポート要件違反であるという異議申立人の主張には,理由がない。

(シ)付記
特許異議申立人は,特許異議申立書において意見書の提出を希望しているが,特許法第120条の5第5項ただし書によれば,特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときは,意見書を提出する機会を与えなくてもよいとされている。

そこで,本件についてみるに,上記「2.訂正の適否についての判断」で述べたとおり,本件訂正の訂正事項1は,請求項7を削除するものであり,本件訂正の訂正事項2?4は,請求項7を引用する請求項18を削除し,これに伴って,引用関係の解消をする訂正であるから,本件訂正は,請求項7,及び請求項7を引用する請求項18を削除するものであって,実質的な内容の変更を伴うものではなく,また,本件訂正の内容は,本件特許異議の申立てについての判断に影響を与えるものでもないから,上記「特別の事情」に該当するものである。

よって,特許異議申立人に,意見書を提出する機会を与えないものとする(特許法第120条の5第5項ただし書,審判便覧67-05.4参照。)。

4.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1?6,8?23に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1?6,8?23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項7に係る特許は,訂正により,削除されたため,本件特許の請求項7に対して,特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理する演算処理部と、
前記第1演算の結果を表示する表示部と
を備える計算機であって、
前記演算処理部は、前記第1演算の結果として、前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1)、及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求めるとともに、
前記第1剰余D_(1)が0でない場合に、前記第1整商C_(1)を1繰り上げた第2整商E_(1)=C_(1)+1、及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第2整商E_(1)との積を減じて得られる第2剰余F_(1)=D_(1)-B_(1)とを求め、
前記表示部は、前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)、並びに前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)を前記第1演算の結果として表示することを特徴とする計算機。
【請求項2】
前記第1剰余D_(1)を、前記第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A_(2)として使用するための剰余利用キーを備えることを特徴とする請求項1に記載の計算機。
【請求項3】
前記表示部は、前記第1演算の結果として、前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)と、前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)とを切り替えて表示することを特徴とする請求項1または2に記載の計算機。
【請求項4】
前記表示部は、前記第1演算の結果として、前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)と、前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)の両方を同時に表示することを特徴とする請求項1または2に記載の計算機。
【請求項5】
前記表示部は、前記第1演算の結果を、前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式、または前記第2整商E_(1)および前記第2剰余F_(1)を含む数式として表示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の計算機。
【請求項6】
前記表示部は、前記第1演算の結果を、A_(1)=B_(1)×C_(1)+D_(1)の形式、またはA_(1)=B_(1)×E_(1)+(F_(1))の形式で表示することを特徴とする請求項5に記載の計算機。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
前記表示部は、前記第1演算の結果を、前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の計算機。
【請求項9】
前記表示部は、前記第1演算の結果を、A_(1)=B_(1)×C_(1)+D_(1)の形式で表示することを特徴とする請求項8に記載の計算機。
【請求項10】
0以上の数である被除数A_(1)と、n個(nは2以上の整数)の正の除数(B_(1),B_(2),…,B_(n)(ただし、2からnまでの整数kについて、B_(k-1)>B_(k)))の組である除数群B_(G)とを入力するための入力部と、
入力された前記被除数A_(1)および前記除数群B_(G)について、被除数A_(1)を、B_(1)×C_(1)+B_(2)×C_(2)+…+B_(n)×C_(n)+D_(n)と表現することのできるn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))の組である整商群C_(G)及び剰余D_(n)を算出する演算処理部と、
前記演算処理部が算出した整商群C_(G)に属するn個の整商(C_(1),C_(2),…,C_(n))と剰余D_(n)を表示する表示部と
を備える計算機。
【請求項11】
前記演算処理部は、mを1からnまでの整数として、m=1からm=nまで順次、B_(m)との積がA_(m)を超えない最大の整数である整商C_(m)、及びA_(m)からB_(m)とC_(m)との積を減じて得られる剰余D_(m)を求めるとともに、D_(m)をA_(m+1)として後続の演算に用い、
前記表示部は、整商群C_(G)とm=nのときの剰余D_(n)を表示することを特徴とする請求項10に記載の計算機。
【請求項12】
前記入力部は、前記除数群B_(G)を一括して入力可能に構成されることを特徴とする請求項10または11に記載の計算機。
【請求項13】
前記入力部は、所定の前記除数群B_(G)を割り当てたプリセットキーを備え、当該プリセットキーへの入力操作により除数群B_(G)を一括して入力可能とすることを特徴とする請求項12に記載の計算機。
【請求項14】
前記表示部は、前記整商群C_(G)を構成するn個の整商と、前記剰余D_(n)とを視覚的に区別可能に表示することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の計算機。
【請求項15】
前記表示部は、前記整商群C_(G)を構成するn個の整商を所定の区切り記号により区切って表示するとともに、前記整商群C_(G)と前記剰余D_(n)とを前記所定の区切り記号とは異なる区切り記号により区切って表示することを特徴とする請求項14に記載の計算機。
【請求項16】
前記表示部は、前記整商群C_(G)を構成するn個の整商と、前記剰余D_(n)とを異なる書式の文字で表示することを特徴とする請求項14または15に記載の計算機。
【請求項17】
前記第1剰余D_(1)が0でない場合に端数を切り上げてC_(1)+1を表示させるための入力キーをさらに備えることを特徴とする請求項1から6、並びに請求項8及び9のいずれか1項に記載の計算機。
【請求項18】
コンピュータを請求項1から6、及び請求項8から17のいずれか1項に記載の計算機として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項19】
第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理して、前記第1演算の結果として、前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1)、及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求める演算処理部と、
前記第1演算の結果として、前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を表示する表示部と、
前記第1剰余D_(1)を、前記第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A_(2)として使用するための剰余利用キーを備え、
前記表示部は、前記第1演算の結果を、前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を含む数式として表示することを特徴とする計算機。
【請求項20】
前記表示部は、前記第1演算の結果を、A_(1)=B_(1)×C_(1)+D_(1)の形式で表示することを特徴とする請求項19に記載の計算機。
【請求項21】
前記第1剰余D_(1)が0でない場合に端数を切り上げてC_(1)+1を表示させるための入力キーをさらに備えることを特徴とする請求項19又は20に記載の計算機。
【請求項22】
第1入力値A_(1)を正の数である第2入力値B_(1)で除算する第1演算を処理して、前記第1演算の結果として、前記第2入力値B_(1)との積が前記第1入力値A_(1)を超えない最大の整数である第1整商C_(1)、及び前記第1入力値A_(1)から前記第2入力値B_(1)と第1整商C_(1)との積を減じて得られる第1剰余D_(1)を求める演算処理と、
前記第1演算の結果として、前記第1整商C_(1)および前記第1剰余D_(1)を表示する表示部と、
前記第1剰余D_(1)を、前記第1演算の次に実行する第2演算における第1入力値A_(2)として使用するための剰余利用キーを備え、
前記第1剰余D_(1)が0でない場合に端数を切り上げてC_(1)+1を表示させるための入力キーをさらに備えることを特徴とする計算機。
【請求項23】
コンピュータを請求項19から22のいずれか1項に記載の計算機として機能させることを特徴とするプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-31 
出願番号 特願2014-102952(P2014-102952)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G06F)
P 1 651・ 121- YAA (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 幸雄  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 辻本 泰隆
須田 勝巳
登録日 2016-03-04 
登録番号 特許第5895021号(P5895021)
権利者 久保 瑞起
発明の名称 計算機およびプログラム  
代理人 折坂 茂樹  
代理人 折坂 茂樹  

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