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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63B
管理番号 1327884
異議申立番号 異議2016-700374  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-28 
確定日 2017-04-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5804334号発明「速度測定装置およびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5804334号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕について訂正することを認める。 特許第5804334号の請求項1、5ないし8に係る特許を維持する。 特許第5804334号の請求項2ないし4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5804334号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成22年1月27日に出願した特願2010-15938号(以下「親出願」という。)の一部を平成26年3月27日に新たな特許出願としたものであって、平成27年9月11日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について特許異議申立人久門享により特許異議の申立てがされ、平成28年6月10日付けで特許異議申立人久門享により上申書が提出され、平成28年7月28日付けで取消理由が通知され、同年9月23日付けで意見書の提出があり、同年11月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成29年1月27日付けで訂正請求書が提出され、その訂正請求に対して、同年3月10日付けで異議申立人久門享より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示すために当審にて付した。)。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の
「センサの検出結果に基づいて測定対象のスポーツにおける所定の一動作単位における表示用情報を生成して表示手段に表示させる機能を備える装置であって、
測定対象を切り替える機能と、
測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能とを備え、
三脚を使用した設置と三脚を使用しない設置が可能な構成としたこと
を特徴とする装置。」
の記載を、
「センサの検出結果に基づいて測定対象のスポーツにおける所定の一動作単位における表示用情報を生成して表示手段に表示させる機能を備える装置であって、
測定対象を切り替える機能と、
測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能とを備え、
三脚を使用した設置と三脚を使用しない設置が可能な構成とし、
前記センサを測定対象に向けて測定する装置であって、
前記異なる方向として、前記表示手段の前記センサ側が画面の上側になるものと、前記表示手段の前記センサ側が前記表示手段の画面の下側になるものとを備え、
前記測定対象として、ゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象と、ピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象と、を備え、
第一の測定対象と第二の測定対象との間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能を備え、
前記測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能として、前記測定対象がゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の下側とし、前記測定対象がピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の上側とする機能を備えることを特徴とする装置。」
と訂正し、合わせて請求項1を引用する請求項5ないし8についても訂正する。

(2)訂正事項2
請求項2ないし4を削除する。

(3)訂正事項3
請求項5の「請求項1から4のいずれかに記載の装置。」の記載を「請求項1に記載の装置。」と訂正し、合わせて請求項5を引用する請求項6ないし8についても訂正し、また、請求項6の「請求項1から5のいずれかに記載の装置。」の記載を「請求項1または5に記載の装置。」と訂正し、合わせて請求項6を引用する請求項7、8についても訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、請求項1に
「前記センサを測定対象に向けて測定する装置であって、
前記異なる方向として、前記表示手段の前記センサ側が画面の上側になるものと、前記表示手段の前記センサ側が前記表示手段の画面の下側になるものとを備え」ることの事項(以下、「訂正事項1-1」という。)と、
「前記測定対象として、ゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象と、ピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象と、を備え、
第一の測定対象と第二の測定対象との間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能を備え」ることの事項(以下、「訂正事項1-2」という。)と、
「前記測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能として、前記測定対象がゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の下側とし、前記測定対象がピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の上側とする機能を備えること」の事項(以下、「訂正事項1-3」という。)を追加するものである。
訂正事項1-1は、センサを測定対象に向けて測定するものに限定し、また、表示用情報の表示手段への表示方向の異なる方向を限定するものである。訂正事項1-2は、表示用情報の表示手段への表示方向を異なる方向とする測定対象を限定するものである。訂正事項1-3は、測定対象とセンサに対する表示手段の表示方向との関係を限定するものである。したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的としている。

イ 新規事項の有無
上記の訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3及び請求項2に記載されているから、新規な事項ではない。
訂正事項1-3について検討すると、明細書及び訂正前の特許請求の範囲には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同様。)。

(ア)「測定対象として、ゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象と、ピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象と、を備え、第一の測定対象と第二の測定対象との間で表示用情報の表示手段への表示方向を異なる方向とする機能を備えること」(特許請求の範囲の請求項2)

(イ)「ピッチングモードは、野球やソフトボール、サッカー、テニス、バレーボール、ハンドボールなどの球速を測定するために特化したモードであり、制御部13は、ボールの初速度、ボールの終速度、初速度と終速度との測定された地点間の距離である初速終速間距離を求め、これらを表示部14に表示させる」(明細書【0047】段落)

(ウ)「バッティングモードは、野球やソフトボールのバッティングの速度を測定するために特化したモードであり、制御部13は、バットスイング速度、打球の初速度、打球の推定飛距離を求め、これらを表示部14に表示させる」(明細書【0048】段落)

(エ)「ゴルフモードは、ゴルフクラブスイングに関する速度を測定するために特化したモードであり、制御部13は、ゴルフクラブのヘッドスピード、ヘッドの打撃によって打ち出されたボールスピード、ボールの推定飛距離、ミート率を求め、表示部14に表示させる。」(明細書【0049】段落)

(オ)「短距離走モードは、陸上競技の100m走や走り幅跳びの助走などの速度を測定するために特化したモードであり、制御部13は、瞬時速度、最高速、最高速到達距離、最高速保持距離を求め、瞬時速度の時系列の変化をグラフとして、また最高速度、最高速度到達距離、最高速度保持距離を数値データとして、表示部14に表示させる」(明細書【0050】段落)

(カ)「なお、図11上段に示すように、ゴルフモードでの表示部14への表示は他のモード(センサ11側が画面の上側となる)とは異なりセンサ11側が画面の下側になるよう、画面の上下を反転して表示する処理を行う。」(明細書【0065】段落)

上記(ア)の「第一の測定対象と第二の測定対象との間で表示用情報の表示手段への表示方向を異なる方向とする機能」として、上記(カ)の記載から、ゴルフモードのとき表示部のセンサ側が画面の下側とし、他のモードである上記(イ)のピッチングモード、上記(ウ)のバッティングモード、上記(オ)の短距離走モードのとき、表示部のセンサ側が画面の上側とする機能を備えているといえる。
また、上記(エ)より、「ゴルフモード」の測定対象は、上記(ア)の「ゴルフクラブのヘッドまたはヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象」であり、上記(イ)、(ウ)、(オ)より、「ピッチングモード」、「バッティングモード」、「短距離走モード」の測定対象は、それぞれ上記(ア)に記載の「ピッチングのボール」、「バッティングのバット若しくはバッティングされたボール」、「走者」であって、すなわち「第二の測定対象」であるといえる。
また、上記(ア)の「第一の測定対象と第二の測定対象との間」は、「測定対象間」であるといえる。
したがって、上記(ア)ないし(カ)より、明細書及び訂正前の特許請求の範囲には、
「測定対象間で表示用情報の表示手段への表示方向を異なる方向とする機能として、測定対象がゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象であるとき、表示部のセンサ側が画面の下側とし、測定対象がピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、走者である第二の測定対象のとき、表示部のセンサ側が画面の上側とする機能を備えていること。」
の事項が記載されているといえるから、上記訂正事項1-3は新規な事項ではない。
よって、訂正事項1は、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項2は、上記アのとおりであるから、新規事項を追加するものではない。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正事項2の請求項2ないし4の削除により不合理な記載が生じないよう、引用する請求項を訂正したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項3は、訂正事項2の請求項2ないし4の削除したものであるから、新規事項を追加するものではない。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正前の請求項1ないし8は、請求項2ないし8が訂正前の請求項1を引用するから、一群の請求項に該当するものである。したがって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。また、訂正後の請求項1ないし8は一群の請求項である。

3 訂正の適否のむすび
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とし、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし8について、訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについての判断
1 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1、5ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明5」ないし「本件特許発明8」という。) は、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
センサの検出結果に基づいて測定対象のスポーツにおける所定の一動作単位における表示用情報を生成して表示手段に表示させる機能を備える装置であって、
測定対象を切り替える機能と、
測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能とを備え、
三脚を使用した設置と三脚を使用しない設置が可能な構成とし、
前記センサを測定対象に向けて測定する装置であって、
前記異なる方向として、前記表示手段の前記センサ側が画面の上側になるものと、前記表示手段の前記センサ側が前記表示手段の画面の下側になるものとを備え、
前記測定対象として、ゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象と、ピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象と、を備え、
第一の測定対象と第二の測定対象との間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能を備え、
前記測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能として、前記測定対象がゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の下側とし、前記測定対象がピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の上側とする機能を備えること
を特徴とする装置。
【請求項5】
前記測定対象を示す情報を前記表示手段に表示させる機能を備えること
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記一動作単位における前記表示用情報を生成して終了する処理モードと、前記一動作単位における前記表示用情報の生成が完了したら、再度次の一動作単位における前記表示用情報の生成を行う処理モードとを備えること
を特徴とする請求項1または5に記載の装置。
【請求項7】
前記表示手段に表示する情報をパソコンに対して送信する機能を備えること
を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の装置における機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。

2 取消理由の概要
(1)平成28年7月28日付けで通知した取消理由の概要
平成28年7月28日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりのものである。

ア 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。


・請求項1ないし8
・甲第1号証:「マルチスピードテスター REDEYES POCKET」カタログ、横浜ゴム株式会社
・甲第2号証:特開2004-121592号公報
・甲第3号証の1:「デジタルフォースゲージ」カタログ、株式会社イマダ
・甲第3号証の2:「総合製品カタログ」、株式会社イマダ
・甲第4号証:特開平10-340073号公報
・甲第5号証:特開平11-196397号公報
・甲第6号証:特開2000-332866号公報
・甲第7号証:特開2004-226715号公報
・甲第8号証:特開2006-313313号公報
・甲第9号証:特開2008-90345号公報
・甲第10号証:特開2008-161217号公報
・甲第11号証の1:「SRA3000」カタログ、Sports Radar Ltd.

イ 本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項4の「測定対象は、前記測定対象の者と前記表示用情報を見る者が異なるものと、前記測定対象の者または前記測定対象の物を動かす者が前記表示用情報を見る者にもなるもの」との記載は、明確でないから、請求項4に係る発明は明確でない。請求項4を引用する請求項5ないし8に係る発明についても同様である。

(2)平成28年11月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
ア 特許法第29条第2項について
請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び「表示手段を備える装置が、見る人が見やすいようにするため、表示手段への表示方向を異なる方向とする機能を備えること」の周知事項1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載の発明、甲第11号証の1に記載の発明、及び周知事項1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載の発明、周知事項1、及び「各種装置が情報をパソコンに対して送信する機能を備えること」の周知事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び周知事項1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ 特許法第36条第6項第2号について
請求項4の「測定対象は、前記測定対象の者と前記表示用情報を見る者が異なるものと、前記測定対象の者または前記測定対象の物を動かす者が前記表示用情報を見る者にもなるものを備え」という記載について、意味を明確に理解できないから、請求項4に係る発明は明確でない。請求項4を引用する請求項5ないし8に係る発明についても同様である。

3 甲号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

ア 「練習場、ゴルフ場などで手軽にヘッドスピード、ボールスピードが測れます。」(第3枚目左側第5行ないし第6行)

イ 「ヘッドスピードとボールスピードを同時に表示します。」(第3枚目右側第2行)

ウ 「マルチスピードテスター『レッドアイズ・ポケット』は、ゴルフの他、野球のバットスイング、ボールスピード、サッカーのシュートスピードも計測できます。」(第5枚目左側第3行ないし第5行)

エ 「マイクロ波センサ 発信周波数:24GHz」(第6枚目左側第2行)

オ 「09年10月発行。」(第6枚目右側第41行)

また、甲第1号証の各図から、以下の点が見て取れる。

カ 第2枚目右の図、第3枚目左下の図、第5枚目右の図及び左の図のいずれにおいて、「レッドアイズ・ポケット」の「画面」の上側を測定対象に向けて計測していることが見て取れる。

キ 第2枚目右の図から、「レッドアイズ・ポケット」を三脚を使用しない設置が可能な構成としたことが見て取れる。

ク 第5枚目の各図から、「レッドアイズ・ポケット」は「三脚」を使用した設置が可能な構成としたことが見て取れる。

ケ 第5枚目の各図から、野球のバットスピード、ボールスピード、サッカーのシュートスピードが表示されることが見て取れる。

コ 第5枚目左側の図から、野球のバットスピードを計測したときにバットの形が表示されることが見て取れる。また、第5枚目右側の図から、野球のボールスピード、サッカーのシュートスピードを計測したときにボールの形が表示されることが見て取れる。

上記甲第1号証の記載及び甲第1号証の各図から、以下の点は自明である。

サ 上記エの「マイクロ波センサ」の検出結果に基づいて、上記ア、ウ記載のゴルフのヘッドスピード、ボールスピード、野球のバットスピード、ボールスピード、サッカーのシュートスピードが計測されること。

シ 上記ア、ウの記載より、「レッドアイズ・ポケット」は測定対象を切り替える機能を備えていること。

ス 上記イおよびケの記載より、「レッドアイズ・ポケット」は、ゴルフのヘッドスピードとボールスピード、野球のバットスピード、ボールスピード、サッカーのシュートスピードを表示するための表示情報を生成して表示手段に表示させる機能を備えること。

セ 「レッドアイズ・ポケット」は「装置」であること。

ソ プログラムにより装置の各機能をコンピュータに実現させることは通常行われるものであるから、「レッドアイズ・ポケット」は、各機能をコンピュータに実現させるためのプログラムを備えていること。

タ 上記オの記載より、甲第1号証は親出願の出願日より前の平成21年10月に頒布されたこと。

以上のアないしタを総合すると、親出願の出願日より前の平成21年10月に頒布された甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「ゴルフのヘッドスピード、ボールスピードが測れ、
野球などのバットスイング、ボールスピード、サッカーのシュートスピードも計測でき、
マイクロ波センサを備え、
画面の上側を測定対象に向けて計測し、
三脚を使用した設置と三脚を使用しない設置が可能な構成とし、
野球のバットスピードを計測したときにバットの形が表示され、
野球のボールスピード、サッカーのシュートスピードを計測したときにボールの形が表示され、
ゴルフのヘッドスピード、ボールスピード、野球のバットスピード、ボールスピード、サッカーのシュートスピードは、マイクロ波センサの検出結果に基づいて測定され、
測定対象を切り替える機能を備え、
ゴルフのヘッドスピードとボールスピード、野球のバットスピード、ボールスピード、サッカーのシュートスピードを表示するための表示情報を生成して表示手段に表示させる機能を備える、
装置、
および当該装置の各機能をコンピュータにより実現させるためのプログラム。」

(2)甲第2号証
親出願の出願日より前の平成16年4月22日に頒布された甲第2号証には、以下の記載がある。
「【0039】
なお、図2に示したトレーニング装置1は、主に利用者の足のトレーニングを行うためのものであるが、これ以外に、足に障害を有し、車椅子を使用している利用者も利用できる図5のようなトレーニング装置1aも考えられる。このトレーニング装置1aは、車椅子を使用している利用者の主に腕力のトレーニングを行うためのものである。このトレーニング装置1aにおいて、利用者は、ハンドル10を矢印B方向に回転させることにより、腕力を鍛えることができる。なお、このトレーニング装置1aでは、ハンドル10の総回転数や単位時間当たりの回転数などを回転計測部9a(移動検出手段)が計測するようになっている。また、トレーニング装置1aでは、画像表示部4や音声出力部5を反転できるようになっているとともに、画像表示部4を反転させたときに表示が上下逆転するようになっている。」

以上より、甲第2号証には次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「画像表示部を反転できるようになっているとともに、画像表示部を反転させたときに表示が上下逆転するようになっている、トレーニング装置。」

(3)甲第3号証の1および2
ア 甲第3号証の1には、以下の記載がある。
「デジタルフォースゲージ」(第1頁)
「ZP(USBモデル)」(第1頁)
「引張、圧縮を一軸にて計測、デジタル表示」(第1頁)
「テストスタンド取り付け用表示反転機能」(第1頁)
「株式会社 イマダ」、「2004/4/22」(第1頁ないし第3頁)
「上下反転表示機能」(第2頁)

上記記載のうち、「2004/4/22」の記載から、甲第3号証の1は平成16年4月22日に公知となったものといえる。

イ 甲第3号証の2には、以下の記載がある。
「デジタルフォースゲージ
引張強度・圧縮強度などの各種荷重測定を容易に行うことができます。デジタルならではの多彩な機能と、コンピュータ上のデータ管理を簡素化できます。」
「ZP Series」
「USB接続により容易なデータ管理」
「株式会社 イマダ」
「2007.6」
また、甲第3号証の2より、「デジタルフォースゲージ ZP Series」は、「電動計測スタンド」に上下反転して取り付けられる際には「デジタルフォースゲージ ZP Series」に対して表示画面で表示される数値が上下反転し、上下方向で見やすい向きに表示されることが見て取れる。
上記記載のうち、「2007.6」の記載から、甲第3号証の2は平成19年6月に公知となったものといえる。

そして、甲第3号証の1と甲第3号証の2とは、共に「株式会社 イマダ」の「デジタルフォースゲージ ZP Series」について記載しているから、上記ア及び上記イを合わせれば、親出願の出願日前の平成19年6月に次の事項(以下「甲3公知事項」という。)が公然知られていたといえる。
「デジタルフォースゲージ ZP(USBモデル) Seriesは、引張、圧縮を一軸にて計測、デジタル表示し、テストスタンド取り付け用表示上下反転機能を有し、引張強度・圧縮強度などの各種荷重測定を容易に行うことができ、USB接続によりコンピュータ上のデータ管理を簡素化でき、電動計測スタンドに上下反転して取り付けられる際には、デジタルフォースゲージ ZP Seriesに対して表示が上下反転し、上下方向で見やすい向きに表示される、デジタルフォースゲージ。」

(4)甲第4号証
親出願の出願日より前の平成10年12月22日に頒布された甲第4号証には以下の記載がある。
「【0039】ここで、図3および図4は、複合機器の使用形態を示す模式図である。当該複合機器は、その使用用途に応じて、その用途で最も使用しやすいように、把持形態を変えるようになっている。例えば、当該複合機器を電子スチルカメラとして使用する場合には、図3(a)に示すように、横長になるように把持するようになっている。このとき、LCD13は、使用者から見て、図示する矢印が上下方向となる。使用者は、上記モード切替スイッチ31を下側に投入し、図4(a)に示すように、図示する矢印が上下方向となるように、LCD13における表示領域の方向を設定する。すなわち、縦横比がn:nのLCD13に対し、1:n(n>1)の縦横比を有する表示領域で、撮影した映像や、記録した映像等を表示するようになっている。この場合、機器は横長になるように把持されているので、LCD13の上下部分は、表示領域外の部分、すなわち非表示領域となる。
【0040】一方、PHS端末として使用する場合には、スピーカ19を耳に当て、マイク20を口元にもってくるようにしなければならないので、図3(b)に示すように、縦長になるように把持するようになっている。このとき、LCD13は、使用者から見て、図示する矢印が上下方向となるので、電子スチルカメラ使用時に対して90゜回転させて表示すればよい。そこで、使用者は、上記モード切替スイッチ31を上側に投入し、図4(b)に示すように、図示する矢印が上下方向になるように、LCD13における表示領域の方向を設定する。すなわち、電子スチルカメラ使用時に対して、LCD13における表示領域を90゜回転させた状態で、ダイヤルキーや、電話番号等を表示する。この場合、機器は縦長になるように把持されているので、LCD13の上下部分(電子スチルカメラ使用時における左右)は、表示領域外の部分、すなわち非表示領域となる。」

以上より、甲第4号証には次の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。
「複合機器を電子スチルカメラとして使用する場合には、横長になるように把持するようになっており、使用者は、モード切替スイッチを下側に投入し、LCDにおける表示領域の方向を設定し、PHS端末として使用する場合には、縦長になるように把持するようになっており、LCDは、使用者から見て、電子スチルカメラ使用時に対して90゜回転させて表示し、そこで、使用者は、上記モード切替スイッチを上側に投入し、LCDにおける表示領域の方向を設定し、すなわち、電子スチルカメラ使用時に対して、LCDにおける表示領域を90゜回転させた状態で、ダイヤルキーや、電話番号等を表示する、複合機器。」

(5)甲第5号証
親出願の出願日より前の平成11年7月21日に頒布された甲第5号証には、以下の記載がある。
ア 「【0038】上述のようなマイコン108の制御により、表示回路103では、装置が如何なる保持状態であっても、その表示エリア1032 の傾きが重力方向Gに対して常に一定に保たれる。これにより、装置を片手で保持して使用する場合等に、装置の重力方向に対する傾きが不安定になっても、使用者は、常に良好な状態で表示回路103で画面表示される画像を観察することができる。特に、使用者は、装置の持ち方が制限されることなく、自由な持ち方で快適に使用することができる。」

イ 「【0057】ここで、一般的に、携帯型テレビ電話機500は、図10(A)及び(B)に示すように、右手R又は左手Lで装置を保持して、耳(図示せず)にスピーカ505を近づけ、表示部513の画面を見ながら通話するようになされている。このため、従来の携帯型テレビ電話機500では、装置を右手Rで保持する場合(上記図10(A))には、表示部513に適正な方向で映像が表示されるが、装置を右手Lで保持する場合(上記図10(B))、表示部513に表示される映像が180°回転した状態となってしまっていた。」

ウ 「【0061】マイコン216は、姿勢検出部217a及び姿勢検出部217bから出力された各検出信号を、姿勢検出制御回路218を介して取り込み、それらの各検出信号により、装置が右手Rで保持されているか、左手Lで保持されているかを判別する。そして、マイコン216は、その判別により、装置が右手Rで保持されている場合には、図12(A)に示すように、表示画面の向きを変えずに通常の向きで画面表示するように、表示制御回路214を介して表示回路213を制御する。また、上述の判別の結果、装置が左手Lで保持されている場合、マイコン216は、上記図12(B)に示すように、表示画面の向きが上記図12(A)での表示向きに対して180°回転した向きで画面表示するように、表示制御回路214を介して表示回路213を制御する。」

上記アないしウより、甲第5号証には、次の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。
「装置が如何なる保持状態であっても、その表示エリアの傾きが重力方向に対して常に一定に保たれ、使用者は、常に良好な状態で表示回路で画面表示される画像を観察することができる装置、
及び、
従来の携帯型テレビ電話機では、装置を右手で保持する場合には、表示部に適正な方向で映像が表示されるが、装置を右手で保持する場合、表示部に表示される映像が180°回転した状態となってしまっていたため、装置が右手で保持されているか、左手で保持されているかを判別し、装置が右手で保持されている場合には、表示画面の向きを変えずに通常の向きで画面表示し、装置が左手で保持されている場合、180°回転した向きで画面表示する、携帯型テレビ電話機。」

(6)甲第6号証
親出願の出願日より前の平成12年11月30日に頒布された甲第6号証には、以下の記載がある。
「【請求項1】 端末本体の所定位置に文字などの情報を表示するための表示装置を設けた表示装置付携帯端末において、
前記端末本体の姿勢を検知する検知手段と、
この検知手段が検知した前記端末本体の姿勢に応じて前記表示装置に表示する情報の配列方向を適正な状態に変更する表示制御手段とを備えたことを特徴とする表示装置付携帯端末。
【請求項2】 前記表示制御手段は、自動モードへ選択的に切換可能に構成され、当該自動モードに切換えられた状態でのみ前記表示情報の配列方向の変更制御を行うことを特徴とする請求項1記載の表示装置付携帯端末。
【請求項3】 請求項2記載の表示装置付携帯端末において、
前記表示制御手段は、手動モードへ選択的に切換可能に構成され、当該手動モードに切換えられた状態では、外部操作される毎に表示装置による情報配列方向を90°ずつ変更する制御を行うことを特徴とする表示装置付携帯端末。
【請求項4】 前記検知手段は、重力センサにより構成されたものであることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の表示装置付携帯端末。」

以上より、甲第6号証には、次の事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されている。
「端末本体の所定位置に文字などの情報を表示するための表示装置を設けた表示装置付携帯端末において、
前記端末本体の姿勢を検知する検知手段と、
この検知手段が検知した前記端末本体の姿勢に応じて前記表示装置に表示する情報の配列方向を適正な状態に変更する表示制御手段とを備えた表示装置付携帯端末であって、
前記表示制御手段は、自動モードへ選択的に切換可能に構成され、当該自動モードに切換えられた状態でのみ前記表示情報の配列方向の変更制御を行い、
前記表示制御手段は、手動モードへ選択的に切換可能に構成され、当該手動モードに切換えられた状態では、外部操作される毎に表示装置による情報配列方向を90°ずつ変更する制御を行い、
前記検知手段は、重力センサにより構成されたものである、
表示装置付携帯端末。」

(7)甲第7号証
親出願の出願日より前の平成16年8月12日に頒布された甲第7号証には、以下の記載がある。

「【請求項1】
筐体の傾きによる姿勢変化に合わせて、表示の情報表示方向を制御する天地表示制御部と、自動天地表示制御を実施するか否かの情報を天地表示制御部からの要求に基づき設定・通知する表示モード記憶部と、現在の情報表示方向の情報を天地表示制御部からの要求に基づき設定・通知する表示状態記憶部と、傾斜方向変更判断を決定付けるためのインターバル時間を作成する機能を有し、天地表示制御部からの要求に基づき、インターバル時間を設定・通知するタイマ制御部と、筐体の天地方向に対する傾きによる姿勢変化を検出する傾斜測定機と、傾斜測定機からの入力情報を制御し、天地表示制御部からの要求に基づき情報を通知する傾斜測定機制御部と、天地表示制御部からの要求に基づき背面液晶表示等のデータ表示を行う表示処理部とを備え、筐体の天地方向に対する傾斜方向を傾斜測定機により検出し、検出した天地方向に対する傾斜方向よって決定される上下方向に合わせた画面表示を行うことを特徴とする自動天地表示制御システム。」

上記記載より、甲第7号証には、以下の事項(以下「甲7記載事項」という。)が記載されている。
「筐体の傾きによる姿勢変化に合わせて、表示の情報表示方向を制御する天地表示制御部を備え、筐体の天地方向に対する傾斜方向を傾斜測定機により検出し、検出した天地方向に対する傾斜方向よって決定される上下方向に合わせた画面表示を行う自動天地表示制御システム。」

(8)甲第8号証
親出願の出願日より前の平成18年11月16日に頒布された甲第8号証には、以下の記載がある。
「【0031】
このように携帯オーディオプレーヤ1に表示される画像データは、絶対座標で考えた場合に、絶対座標の座標領域が変化しないように、制御回路47によって画像データが処理される。ディスプレイ23に表示される画像データは無数のドットの集合によって表示されている。制御回路47は携帯型オーディオプレーヤ1を基準とした相対座標におけるドットの位置を表す座標を座標変換する。なおこの際、重力加速度方向を基準とした絶対座標から見た文字や画像の向きは変更されることがないように、画像データの処理が行われる。このようなドットの座標変換といった作業は、CPUパワーがかかるため電力消費が極めて大きい。このように、制御回路47は姿勢検出信号S33bの示す携帯型オーディオプレーヤ1の姿勢に対応する向きになるように画像データを処理する。」

上記記載より、甲第8号証には次の事項(以下「甲8記載事項」という。)が記載されている。
「携帯オーディオプレーヤに表示される画像データは、絶対座標で考えた場合に、絶対座標の座標領域が変化しないように、制御回路によって画像データが処理され、重力加速度方向を基準とした絶対座標から見た文字や画像の向きは変更されることがないように、画像データの処理が行われる、携帯オーディオプレーヤ。」

(9)甲第9号証
親出願の出願日より前の平成20年4月17日に頒布された甲第9号証には、以下の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
パーソナル・コンピュータ(以後PCという)の中で、液晶ディスプレイ(以後単にディスプレイという)に対してペン入力で操作できる薄型のものをタブレットPCという。タブレットPCは、ノートブック型PC(以後ノートPCという)と同等の機能を、キーボードを使用しなくてもペン入力で操作することができる。タブレットPCには、大きく分けてコンバーチブル型とピュアタブレット型の2種類がある。コンバーチブル型は、キーボードを内蔵したノートPCのディスプレイの方向を変えて、タブレットPCとしても利用できる構造のものである。ピュアタブレット型は、キーボードを内蔵せず、標準ではペン入力による操作のみを行う構造のものである。図14は、人間がタブレットPC501を手に持って操作するときの体勢について示す概念図である。ユーザ503は、タブレットPC501を片手で持ち、残る片手でディスプレイ505にタッチペン507で触って操作する。この体勢では、タブレットPC501の外周のうち一辺509が、ユーザ503の身体の胸部または腹部などに接触または接近している。タブレットPC501の縁部には表示方向回転ボタン511があり、このボタンを1回押すごとにディスプレイ505に表示される画面の方向が90度ずつ回転する。また、タブレットPC501は無線モジュール(図示せず)およびアンテナ513を装備し、無線LAN(Wireless Local Area Network)などを介してネットワークに接続することができる。アンテナ513は、取り付け場所の制約や電波の送受信感度などの理由で、通常はディスプレイ505外周のうち一辺に配置される。」

上記記載より、甲第9号証には次の事項(以下「甲9記載事項」という。)が記載されている。
「タブレットPCの縁部には表示方向回転ボタンがあり、このボタンを1回押すごとにディスプレイに表示される画面の方向が90度ずつ回転する、タブレットPC。」

(10)甲第10号証
親出願の出願日より前の平成20年7月17日に頒布された甲第10号証には、次の事項(以下「甲10記載事項」という。)が記載されている。
「【請求項1】
電気治療装置本体と、
前記電気治療装置本体に設けられた画像表示部と、
前記電気治療装置本体の鉛直方向に対する傾きを検出する傾斜検出部と、
前記傾斜検出部からの検出信号に基づいて、前記画像表示部に表示されている画像を上下方向に反転して表示する表示切替部と
を備えることを特徴とする電気治療装置。」

(11)甲第11号証の1ないし5
ア 甲第11号証の1には、以下の記載がある。

(ア) 「The SRA3000 Radar Gun tracks the speed of just about anything that moves: balls, clubs, bats, runners, cars and more. The SRA3000 Radar Gun is designed for ease of use. For most applications, just run it on, point and pull the trigger. For the advanced user, the Tracer has options only found in the top sports guns. A continuous read mode and tripod mounting allow for hands-free operations.」(第1枚目左下第3行ないし第12行)
(SRA3000レーダーガンは、動くものなら何でも速度を追跡します。ボール、クラブ、バット、ランナー、車等々です。SRA3000レーダーガンは、使い易さを求めて設計されています。ほとんどの場合、単に、電源を入れて、狙いを定め、そして引き金を引くだけです。上級使用者向けには、Tracerは、最上級のスポーツガンだけが備えるオプションを有しております。連続計測モードと三脚台のおかげで両手が自由に使えます。) (抄訳文第3行ないし第9行)

(イ) 「Trigger or Continuous Modes」(第2枚目左上第6行)
(トリガーモードまたは連続モード) (抄訳文第16行)

(ウ) 「2006 Sports Radar Ltd.」

イ 甲第11号証の2(「Tracer INSTRUCTION MANUAL Tracer Radar Gun」と題するカタログ、Sports Radar Ltd.)には、以下の事項が記載されている。
「Tracer Radar Gun」(第1頁右上)
(トレーサーレーダーガン)(抄訳文第3行)
「Sports Radar Ltd.」(第1頁右上、及び第2頁右上)
「The trigger mode will register a speed when the trigger is pulled. In the continuous mode speeds will be registered without the need to pull the trigger.」(第1枚目左下)
(トリガーモードは、引き金が引かれた時に当該速度を測定します。連続モードの場合は、引き金を引く必要なしに諸速度が測定されます。)(抄訳文第4行ないし第5行)
「FCC ID JPFSRA3000」(第2枚目右下)
(連邦通信委員会(原文:FCC) ID JPFSRA3000)(抄訳文第21行)

ウ 甲第11号証の3(「OET Authoriation Search Results」、連邦通信委員会のウェブサイト)には、以下の事項が記載されている。
「Federal Communication Commission」(右上)
(連邦通信委員会)(抄訳文右上)
「FCC ID JPFSRA3000」
「Final Action Date 09/21/1992」
(登録日 09/21/1992)(抄訳文右上)

エ 甲第11号証の4(「DynaWEB 商品カタログ SRA3000 スポーツレーダー・トレーサー」と題するウェブページ)には、以下の事項が記載されている。
「SRA3000スポーツレーダー・トレーサー」(第1頁)
「自動計測モード:計測結果を自動的に表示する機能。スイッチを自動計測に切り替えておけば、繰り返しねらったところを通る動く物体の速度を自動計測・表示できます。但し測定の間隔を3秒以上取る必要があります。
ここがポイント 自動計測モードでカメラ用三脚に取り付けて測定位置を固定しておけば、同じ条件下でより正確に測定できます。
同じ動きを繰り返し計測するとき、手動計測モードの場合、トリガーを引くタイミングや手持ちの角度などにより計測ポイントがずれ数値に微妙な揺らぎが出ますが、自動計測を利用すれば同条件で繰り返し公平な計測が可能になります。トリガーモードではプレーヤー以外に計測者が必要ですが、自動計測モードではプレーヤーだけで計測することが可能になります。」(第2頁「機能特徴」欄)

「米国スポーツレーダー社」(第6頁左上)

オ 甲第11号証の5(「INTERNET ARCHIVE WayBackMachine」と題するウェブサイト)には、以下の事項が記載されている。
「SRA3000 スポーツレーダー・トレーサー」(第1頁中央上部)
「自動計測モード = カメラ三脚に取り付けてフリーハンドで自動計測」(第1頁中央上部)
「INTERNET ARCHIVE WayBackMachine 17 7 06 - 25 12 08」(第1頁左上)

カ 甲第11号証の1、2、4、5のレーダーガンの外観は全て同じであることが見て取れる。

上記イの「FCC ID JPFSRA3000」の記載は、製品が「SRA3000」であることを示唆しているから、上記アないしエより、甲第11号証の1、2、4、5は「SRA3000」について記載している点で共通している。また、甲第11号証の1、2、3はいずれも「Sports Radar Ltd.」あるいは「米国スポーツレーダー社」の製品である点で共通している。これらに加え、上記カについても合わせれば、甲第11号証の1、2、4、5はいずれも「Sports Radar Ltd.」製の「SRA3000」について記載しているものといえる。そして、甲第11号証の1の「2006 Sports Radar Ltd.」の記載からすれば、「Sports Radar Ltd.」製の「SRA3000」は親出願の出願日より前の平成18年末時点で公然知られていたものといえる。
したがって、上記ア、イ、エ、オの記載を合わせれば、親出願の出願日より前の平成18年末時点で次の事項(以下「甲11公知事項」という。)が公然知られていたものといえる。
「SRA3000レーダーガンは、動くものなら何でも速度を追跡し、ボール、クラブ、バット、ランナー、車等々であり、
トリガーモードまたは連続モードを有し、
連続モードの場合は、引き金を引く必要なしに諸速度が測定され、
繰り返しねらったところを通る動く物体の速度を自動計測・表示でき、
カメラ用三脚に取り付けて測定位置を固定しておけば、同じ条件下でより正確に測定でき、
プレーヤーだけで計測することが可能になる、SRA3000レーダーガン。」

4 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「マイクロ波センサ」は本件特許発明1の「センサ」に相当する。
甲1発明の「ゴルフ」、「野球」、「サッカー」は、本件特許発明1の「測定対象のスポーツ」に相当する。
甲1発明の「マイクロ波センサの検出結果に基づいて測定され」た「ゴルフのヘッドスピード、ボールスピード、野球のバットスピード、ボールスピード、サッカーのシュートスピードを表示するための表示情報を生成して表示手段に表示させる機能」は、本件特許発明1の「センサの検出結果に基づいて測定対象のスポーツにおける所定の一動作単位における表示用情報を生成して表示手段に表示させる機能」に相当する。
甲1発明の「画面の上側を測定対象に向けて計測」することは、本件特許発明1の「センサを測定対象に向けて測定する」ことに相当する。
甲1発明の「ゴルフのヘッドスピード、ボールスピード」を計測するときの「ゴルフのヘッド」、「ボール」は、本件特許発明1の「ゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象」に相当する。
甲1発明の「野球のバットスイング、ボールスピード」を計測するときの「バット」、「ボール」は、本件特許得発明2の「ピッチングのボール、バッティングのバット」である「第二の測定対象」に相当する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、
「センサの検出結果に基づいて測定対象のスポーツにおける所定の一動作単位における表示用情報を生成して表示手段に表示させる機能を備える装置であって、
測定対象を切り替える機能を備え、
三脚を使用した設置と三脚を使用しない設置が可能な構成とし、
前記センサを測定対象に向けて測定する装置であって、
前記測定対象として、ゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象と、ピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象と、を備える装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本件特許発明1は、「測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能とを備え」、「異なる方向として、表示手段のセンサ側が画面の上側になるものと、前記表示手段の前記センサ側が前記表示手段の画面の下側になるものとを備え」、「第一の測定対象と第二の測定対象との間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能を備え、前記測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能として、前記測定対象がゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の下側とし、前記測定対象がピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の上側とする機能を備える」のに対し、本件特許発明1は、上記機能を備えているか明らかでない点。

5 判断
上記相違点について検討すると、甲2記載事項ないし甲11公知事項は、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えていない。
また、甲2記載事項ないし甲10記載事項より、「装置の利用状況に応じて、利用者に対して適正は方向(すなわち利用者と正対する方向)に表示画面を切り替えること」(特許異議申立書第47頁第27行ないし第48頁第1行)、「表示を見やすくするために、表示用情報の表示手段への表示方向を異なる方向とする機能」(平成28年7月28日付け取消理由通知書)は、当業者に周知の事項であるといえ、平成28年11月22日付け取消理由通知書(決定の予告)の「第4 1(1)イ」のとおり、甲2記載事項、甲4記載事項、甲9記載事項より、「表示手段を備える装置が、見る人が見やすいようにするため、表示手段の表示方向を異なる方向とする機能を備えること」は、当業者に周知の事項であるといえる。
しかしながら、これらの周知事項から、「測定対象がゴルフクラブのヘッドまたはヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象であるとき表示手段のセンサ側が画面の下側とし、前記測定対象がピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の上側とする機能を備える」ことは、当業者といえども導き出すことはできない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明、及び甲2記載事項ないし甲11公知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件特許発明5ないし8は、本件特許発明1を引用し、本件特許発明1を更に限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明、及び甲2記載事項ないし甲11公知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

6 特許法第36条第6項第2号について
平成28年7月28日付け取消理由通知、及び平成28年11月22日付けで取消理由通知(決定の予告)で通知した特許法第36条第6項第2号の規定による取消理由については、本件訂正により、請求項4が削除されたため、解消した。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、5ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、5ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項2ないし4に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項2ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサの検出結果に基づいて測定対象のスポーツにおける所定の一動作単位における表示用情報を生成して表示手段に表示させる機能を備える装置であって、
測定対象を切り替える機能と、
測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能とを備え、
三脚を使用した設置と三脚を使用しない設置が可能な構成とし、
前記センサを測定対象に向けて測定する装置であって、
前記異なる方向として、前記表示手段の前記センサ側が画面の上側になるものと、前記表示手段の前記センサ側が前記表示手段の画面の下側になるものとを備え、
前記測定対象として、ゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象と、ピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測定対象と、を備え、
第一の測定対象と第二の測定対象との間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能を備え、
前記測定対象間で前記表示用情報の前記表示手段への表示方向を異なる方向とする機能として、前記測定対象がゴルフクラブのヘッドまたは前記ヘッドの打撃によって打ち出されたボールである第一の測定対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の下側とし、前記測定対象がピッチングのボール、バッティングのバット若しくはバッティングされたボール、又は、走者である第二の測対象であるとき前記表示手段の前記センサ側が画面の上側とする機能を備えること
を特徴とする装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記測定対象を示す情報を前記表示手段に表示させる機能を備えること
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記一動作単位における前記表示用情報を生成して終了する処理モードと、前記一動作単位における前記表示用情報の生成が完了したら、再度次の一動作単位における前記表示用情報の生成を行う処理モードとを備えること
を特徴とする請求項1または5に記載の装置。
【請求項7】
前記表示手段に表示する情報をパソコンに対して送信する機能を備えること
を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の装置における機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-27 
出願番号 特願2014-65057(P2014-65057)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A63B)
P 1 651・ 121- YAA (A63B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 祐一佐藤 海  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
植田 高盛
登録日 2015-09-11 
登録番号 特許第5804334号(P5804334)
権利者 株式会社ユピテル
発明の名称 速度測定装置およびプログラム  

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