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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C12G 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C12G |
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管理番号 | 1327903 |
異議申立番号 | 異議2016-701086 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-11-24 |
確定日 | 2017-04-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5922253号発明「アルミニウム容器にパッケージされたワイン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5922253号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5922253号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成24年12月24日(優先権主張2011年12月23日、2012年3月15日、オーストラリア国)に国際特許出願され、平成28年4月22日にその特許権の設定登録がされた。 その後、その特許について、特許異議申立人飯田進により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年1月4日付けで取消理由を通知し、平成29年4月10日付けで意見書が提出されたものである。 2.本件発明 【請求項1】 アルミニウム容器にワインを充填する方法であって、ワインが充填前に精密ろ過され、そしてアルミニウム容器の充填工程を通して溶存酸素レベルが最大で0.5mg/Lまでに維持され、そして最終的な溶存CO_(2)レベルが、アルミニウム容器の充填前に、白ワイン及びスパークリングワインに関して少なくとも50ppm及び赤ワインに関して50ppm?400ppmであり、充填されたアルミニウム容器中のワインが0.4?0.8mg/Lの間の二酸化硫黄分子含量を有する、前記方法。 【請求項2】 多段精密ろ過処理が使用される、請求項1に記載のアルミニウム容器にワインを充填する方法。 【請求項3】 前記多段精密ろ過処理が2段精密ろ過処理である、請求項2に記載のアルミニウム容器にワインを充填する方法。 【請求項4】 ろ過孔径が、第一段ろ過ハウジングにおいて1.0μm以下であり、そして少なくとも1つの後段ろ過ハウジングにおいて0.30μm?0.45μmの間である、請求項2又は3に記載のアルミニウム容器にワインを充填する方法。 【請求項5】 前記ろ過孔径が、第一段ろ過ハウジングにおいて少なくとも0.60μmである、請求項4に記載のアルミニウム容器にワインを充填する方法。 【請求項6】 アルコール含量が9v/v%未満であり、ここでソルビン酸が90mg/L超のレベルで添加される、請求項1?5のいずれか1項に記載のアルミニウム容器にワインを充填する方法。 【請求項7】 前記溶存CO_(2)レベルが、無発泡性白ワインに関して、50ppm?1200ppmである、請求項1?6のいずれか1項に記載のアルミニウム容器にワインを充填する方法。 【請求項8】 請求項1?7のいずれか1項に記載のアルミニウム容器にワインを充填する方法を含む、ワインを含有する充填アルミニウム容器の製造方法。 3.取消理由の概要 当審において、請求項1ないし8に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 甲1.国際公開第2006/026801号 甲2.Vince O’Brienほか ”Managing oxygen ingress at bottling” Wine Industry Journal,Vol24,No1,2009年1/2月,p24-29 甲3.Tim Patterson ”Carbon Dioxide in Wine:It’s a Gas!” WINES & VINES,2011年5月 甲4.”Review of Basics on Sulfur Dioxide” Enology Briefs,Vol1,No1,1982年3月 甲5.A.TROMPほか ”Sorbic Acid as a Wine Preservative-Its Efficacy and Organoleptic Threshold”S.Afr.J.Enol.Vitic.,Vol2,No1,1981年 ・請求項1?5、7,8に対し 甲1発明と同一、又は甲1発明に甲2?5を適用し容易想到。 ・請求項6に対し 甲1発明に甲2?5を適用し容易想到。 4.甲1の記載、甲1発明 甲1?5は、外国語文書であり、取調べを求める部分についての訳文(部分訳)が申立書の「3 申立ての理由」の(D)の「イ.甲号証の説明」中に記載されている。 甲1には、申立書記載の訳文(1-1)?(1-9)の記載からみて、以下の発明(甲1発明)が記載されている。 アルミニウム容器に非発泡性ワインをパッケージングする方法であって、ワインが充填前に殺菌フィルターによりろ過され、ワイン中の酸素の溶解レベルは1ppm未満であり、缶入りの非発泡性ワインで溶解二酸化炭素レベルが0.8g/リットル未満であり、遊離SO_(2)が35ppm未満である、前記方法。 5.判断 (1)請求項1 本件特許明細書には、以下の記載がある。 【0001】 本発明は、ワインを充填されたアルミニウム容器に関する。本発明はまた、ワイン及びワイン製品をアルミニウム容器にパッケージする方法に関する。 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明の目的は、アルミニウム容器中でワインの品質が、貯蔵や輸送で大きく悪化せず、貯蔵寿命が最大2年以上安定したままであるように、アルミニウム容器にワインをパッケージすることである。 【0013】 本発明は、ワインの溶存CO_(2)レベルを制御することが、ワインの品種特性を維持するのに必須であるという発見に基づく。溶存CO_(2)の推奨される最小レベルはワインの酸素含量を低下させ、ワイナリーからアルミニウム製容器への充填機へのバルクワインの輸送中の酸化からワインを防御することを支援する。無発泡性白ワインについて、好適な溶存CO_(2)は50ppm?1200ppmである。 【0014】 本発明はまた、ワイン中の酸素制御が、ワインの品質と完全性を維持するために考慮すべき重要な因子であるという認識に基づいている。溶存酸素レベルは、ワイン製造工程中の任意の時点でワインが保持する酸素通気の量である。驚くべきことに、缶詰ワイン中の溶存酸素(DO)レベル0.5mg/L未満の維持を最小の溶解CO_(2)と組み合わせることが、製品の品質、安定性および寿命を達成するのに重要であることが見出された。 すなわち、本件発明は、アルミニウム容器中でワインの品質が悪化せず、貯蔵寿命が2年以上安定したものとするため、ワインの溶存CO_(2)レベル、溶存酸素レベルを所定範囲としたものである。 請求項1に係る発明(本件発明1)と甲1発明とを対比する。 溶存酸素レベルについて、本件発明1は「充填工程を通して溶存酸素レベルが最大で0.5mg/Lまでに維持」されるのに対し、甲1発明は「酸素の溶解レベルは1ppm未満」ではあるが、「充填工程を通して」については明らかでない。 この点は、実質的相違点であるから、本件発明1が甲1発明であるとすることはできない。 次に、容易想到性について検討する。 「充填工程を通して」について、本件発明1は、段落0014のとおり、「ワイン製造工程中の任意の時点で」、溶存酸素レベルが、常に維持されるものであり、これにより、「貯蔵寿命が2年以上安定したもの」という効果を奏する。 しかし、甲1は、この点について記載も示唆もない。甲4、甲5についても同様である。 甲2、甲3には、ワインのプロセスにおける酸素管理について記載されているが、甲2、甲3は、いずれもワインの「瓶詰め」に関するものである。 瓶と缶とでは、容器が異なり、保存に関して生じる状況も異なる(乙1、甲1の(1-5))ことから、甲2、甲3を、甲1発明に適用することは容易とは言えない。 したがって、本件発明1は、甲1発明から容易想到ではない。 (2)請求項2?8 請求項2?8に係る発明は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を全て含むことから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明であるとも、甲1発明から容易想到であるとも言えない。 6.むすび したがって、請求項1ないし8に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-04-19 |
出願番号 | 特願2014-547638(P2014-547638) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(C12G)
P 1 651・ 121- Y (C12G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 西堀 宏之、豊島 唯、田中 佑果、植前 津子 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
千葉 成就 谿花 正由輝 |
登録日 | 2016-04-22 |
登録番号 | 特許第5922253号(P5922253) |
権利者 | バロークス プロプライアタリー リミテッド |
発明の名称 | アルミニウム容器にパッケージされたワイン |
代理人 | 中島 勝 |
代理人 | 池田 達則 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 渡辺 陽一 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 福本 積 |