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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B23C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B23C
管理番号 1327910
異議申立番号 異議2016-701007  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-20 
確定日 2017-05-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第5908188号発明「端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5908188号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5908188号の請求項1?9に係る特許についての出願は、2015年4月23日(優先権主張 2014年4月24日(2件) 日本国(JP))を国際出願日として国際特許出願がされ、平成28年4月1日にその特許権の設定登録がされ、同年4月26日にその特許公報が発行され、その後同年10月20日に特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年1月6日付けで取消理由を通知し、同年3月13日付けで意見書が提出され、同年同月22日付で上申書が提出されたものである。

第2 本件発明
特許第5908188号の請求項1?9に係る発明(以下「本件発明1?9」ともいう。)は、それぞれ、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含有し、端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品であって、前記炭素繊維は、前記炭素繊維強化樹脂加工品中で一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向しており、前記端面に不規則形状部分が無いものであり、前記端面の面粗度(Rz)が5μm以上50μm以下の範囲である、端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。
【請求項2】
前記端面は切削加工面である、請求項1に記載の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。
【請求項3】
前記切削加工面は切断面である、請求項2に記載の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。
【請求項4】
前記端面の面粗度(Rz)が15μm以上50μm以下の範囲である、請求項1?3のいずれか1項に記載の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。
【請求項5】
前記炭素繊維は、不連続繊維であって、平均繊維長が1mm以上である、請求項1?4のいずれか1項に記載の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。
【請求項6】
前記炭素繊維は、不連続繊維であって、平均繊維長が1?100mmの範囲である、請求項1?5のいずれか1項に記載の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。
【請求項7】
前記炭素繊維は、前記炭素繊維強化樹脂加工品中で二次元方向にランダムに配向している、請求項1?6のいずれか1項に記載の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。
【請求項8】
前記端面の高さが30mm以下である請求項1?7のいずれか1項に記載の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。
【請求項9】
前記炭素繊維強化樹脂加工品に含まれる炭素繊維の体積割合(Vf)が55体積%以下である請求項1?8のいずれか1項に記載の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。」

第3 取消理由
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人は、特許異議申立書において、
(1)
ア 本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する旨、

イ 本件発明2?8は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する旨

(2)
ア 本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明に基づいて、また、甲第3号証に記載された発明に甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明を組み合わせることで当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない旨、

イ 本件発明2?4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、また、甲第3号証に記載された発明を甲第1号証に記載された発明と組み合わせることで当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない旨、

ウ 本件発明5?8は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない旨、

エ 本件発明9は甲第1号証に記載された発明に適宜設計的事項を適用することにより、また、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証又は甲第6号証に記載された発明を組み合わせることにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない旨主張する。

甲第1号証:特開2012-162647号公報
甲第2号証:特開2004-195890号公報
甲第3号証:東北経済産業局 平成24年度次世代ものづくり基盤加工技術調査事業 次世代ものづくり基盤加工技術調査 加工データ集(http://www.tohoku.meti.go.jp/s_sangi/topics/130709.htmlより入手可能)、表紙、1頁、41?51頁
甲第3号証の2:経済産業省東北経済産業局ウェブサイト(http://www.tohoku.meti.go.jp/s_sangi/topics/130709.html)、2013年7月8日
甲第4号証:国際公開第2006/062038号
甲第5号証:社団法人日本化学会編、「化学便覧 基礎編 改訂5版」、丸善株式会社、平成16年2月20日発行、I-716頁
甲第6号証:国際公開第2013/031860号
甲第7号証:ダイヤモンドホイール・ダイヤモンド砥石・CBN工具・CBN砥石と研削研磨の情報サイト、「表面粗さ記号の換算表について:Ra、Rz、Rmax(Rzjis)」(http://www.toishi.info/faq/question-seven/ra-rz-rmax-rzjis.html)、2009年9月14日更新

2 当審が通知した取消理由の概要
当審において通知した取消理由の概要は、
「本件特許の請求項1?9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、上記請求項に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。」
というものであり、本件発明1?9の各発明についての取消理由は以下のとおりである。

(1)本件発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1に記載された発明及び同刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、又は本件特許の出願前に日本国内又は外国において、電子的技術情報2に基づき電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(以下「電子的技術情報2に係る発明」という。)並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本件発明2は、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」

(3)本件発明3は、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、又は電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5、6は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び刊行物4に記載された技術的事項に基づいて、又は電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明7は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された技術的事項に基づいて、又は電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明8は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された技術的事項に基づいて、又は電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)本件発明9は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された技術的事項に基づいて、又は電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

刊行物1:特開2004-195890号公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証)
電子的技術情報2:東北経済産業局 平成24年度次世代ものづくり基盤加工技術調査事業 次世代ものづくり基盤加工技術調査 加工データ集(http://www.tohoku.meti.go.jp/s_sangi/topics/130709.htmlより入手可能)、表紙、1頁、41?51頁(特許異議申立人が提出した甲第3号証)
刊行物3:特開2012-162647号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物4:国際公開第2013/031860号(特許異議申立人が提出した甲第6号証)
参考資料1:経済産業省東北経済産業局ウェブサイト(http://www.tohoku.meti.go.jp/s_sangi/topics/130709.html)、2013年7月8日(特許異議申立人が提出した甲第3号証の2)
参考資料2:ダイヤモンドホイール・ダイヤモンド砥石・CBN工具・CBN砥石と研削研磨の情報サイト、「表面粗さ記号の換算表について:Ra、Rz、Rmax(Rzjis)」(http://www.toishi.info/faq/question-seven/ra-rz-rmax-rzjis.html)、2009年9月14日更新(特許異議申立人が提出した甲第7号証)
参考資料3:社団法人日本化学会編、「化学便覧 基礎編 改訂5版」、丸善株式会社、平成16年2月20日発行、I-716頁(特許異議申立人が提出した甲第5号証)

第4 刊行物等、それらの記載事項及び刊行物等に記載された発明
1 刊行物等に記載された事項
刊行物等には、以下の記載がある。

(1)刊行物1(甲第2号証):
1a)「【請求項1】
熱可塑性樹脂と強化繊維とを含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、その表面に次の(A)?(C)の条件を同時に満足するシボ状凹凸面が形成されていることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(A)JIS B0601で定義される十点平均粗さがRz15?50μmの範囲内であること。
(B)JIS Z8741で定義される鏡面光沢度Gs(60゜)が1.8?5.0の範囲内であること。
(C)成形品表面の耐擦傷性がJIS K5400で定義される鉛筆引っかき値がH以上であること。
・・・
【請求項7】
前記強化繊維が炭素繊維であることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項8】
前記繊維強化熱可塑性樹脂中の強化繊維量が5?45重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
・・・
【請求項10】
前記強化繊維の重量平均繊維長が、0.2?1.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。」

1b)「【0021】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品シボ表面の上記耐擦傷性とウエルド外観を満足させるためのシボ形状としては、JIS B0601(1994)で定義される十点平均粗さ(以下、Rzという)が15?50μmであり、好ましくは30?40μmである。Rzが15μm未満であるとウエルド隠蔽性が十分でなく、Rzが50μmを越えると耐擦傷性に劣る。」

1c)「【0026】
また、炭素繊維を用いる場合、該炭素繊維の密度は、1.65?1.95のものが好ましく、さらには1.70?1.85のものがより好ましい。また炭素繊維の太さ(直径)は、一本当たり5?8μmのものが好ましく、さらには6.5?7.5μmのものが最も好ましい。なお、強化繊維の用い方においても、射出成形品中に含まれる繊維長によりその最終製品特性が一般に異なる。そのため射出成形前のペレットは、少なくともペレットと実質的に同一長さの炭素繊維を含む長繊維含有ペレットであるのが好ましい。長繊維含有ペレットとすることで、さらに射出成形品としたときの機械特性を向上させることができる。本発明者らの各種知見によれば、機械特性ならびに耐衝撃特性などの点から、射出成形品中の重量平均繊維長は0.2?1.0mmであることが望ましい。」

1d)「【0033】
このようにして得られる成形品には、成形品の外形寸法は、縦約10?約5,000mm、横約10?約5,000mm、高さ約0.2?約1,000mmが好適である。
【0034】
本発明の成形品の用途としては、強度、剛性、耐衝撃性に加えて成形品外観が求められる電子・電気機器用部品、特に携帯用の電子・電気機器のハウジング、ケーシングなどに好ましく用いることができる。より具体的には、ノート型パソコン、携帯用電話機、PHS、PDA、ビデオカメラ、デジタルカメラ、液晶プロジェクター、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのハウジング、ケーシングなどに最適に用いられ得るものである。」

1e)「【0037】
実施例1
長繊維タイプ炭素繊維強化ポリアミド樹脂として炭素繊維15重量%品(東レ株式会社製:TLP1136)を使用し、株式会社日本製鋼所製350トン射出成形機(J350EIISP、シリンダ径:φ46mm、使用スクリュー:汎用フルフライトタイプ)、ノートパソコンLCDカバー金型(サイズ:W300×L250×H11×t1.0mm、ゲート:14点ピンゲート)を使用し、シリンダ温度280℃、金型温度70℃にて射出成形を行い、繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得た。
【0038】
成形品表面に形成されるシボ形状としては、金型中にRz35μ、Sm0.6mmの梨地シボ加工を施したキャビティーを配置することにより十点平均粗さRzが32μm、Gsが3.5、Smが0.6mmとした。同成形品の重量平均繊維長を前述の溶剤による樹脂成分除去、顕微鏡観察により、成形品表面の鉛筆引っかき値を引っかき試験機で測定したところ、それぞれ0.5mm、2Hであった。」

(2)電子的技術情報2(甲第3号証;なお、電子的技術情報2のリンク元である参考資料1(甲第3号証の2;下記摘示5参照)からみて、電子的技術情報2の公知日は2013年7月8日である。):
2a)「複合材料(CFRP)及び耐熱合金の切削加工技術
秋田県産業技術センター・・・」(41頁1?2行)

2b)「1.緒言
複合材料であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)は・・・。しかしながら、CFRPの切削加工(穴あけ、トリム等)では、工具摩耗が激しいこと、バリやデラミネーション(層間剥離)等が発生することが課題となっており、高能率・高品質に加工することが求められている。また、CFRPはその成形方法の相違によって特性に違いがあり、加工形態にも相違が見られる材料である。
・・・今年度は、数種類のルーターやエンドミルを用いて、トリム加工(取り除き加工)実験を行い、工具摩耗やCFRPの加工状態について調査したので報告する。」(41頁3?15行)

2c)「2-1 CFRPの特性
CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)は、炭素繊維に合成樹脂(一般的にはエポキシ樹脂)を含浸した後、硬化させて成形した複合材料(Composite)である。」(41頁下から12?6行)

2d)「一般的なCFRP成形では、材料としてエポキシ樹脂マトリックスのプリプレグシート(一般的な厚みは0.1mmから0.3mm程度)を用いる。プリプレグシートには、一方向のみに炭素繊維を引き揃えたUD材と、縦・横に炭素繊維を織り込んだクロス材がある。成形品はUD材を同じ方向に積層して成形した場合と、縦と横に方向を変えて積層して成形した場合では、成形品の性能が大きく変化する。」(42頁3?7行)

2e)「2-2 CFRPのトリム加工技術
2-2-1 実験内容
市販のCFRP材(穴織カーボン製:100×100×厚さ10mm、UD+表層クロスタイプ、表面つや有り)を対象に、ルータータイプのダイヤモンドコーティング工具3種類、エンドミルタイプのタイヤモンドコーティング工具3種類、DLCコーティングエンドミル1種類、超硬ソリッドエンドミル1種類、ハイス母材のTiN系コーティングエンドミル1種類の計3社9種類の工具を用いて、マニシングセンタ(日立精機製 VKC45II)で片削りによるトリム加工実験を行った。CFRP材はバイスに挟んで固定し、各工具とも時間の関係上、切削長1m(10パス)まで加工した。切削加工条件を表2に示す。
評価として工具摩耗と加工面状態をマイクロスコープ(ハイロックス製 KH-2700)で観察し、CFRPの加工面粗さを表面粗さ測定機(東京精密製サーフコム 3000A-3DF)で測定した。」(43頁1?24行)

2f)「

」(43頁、表2)

2g)「2-2-2 実験結果
2-2-2-1 工具摩耗状態について
・・・

2-2-2-2 CFRP材の加工状態について
図3に1m切削後のCFRP材の加工状態を示す。左側が全面で、中央が表面部、右側が裏面部の拡大した様子である。○1(当審注:○の中に1。以下同様。)?○6のダイヤモンドコーティング工具は切削面の見た目も良好で、表面・裏面ともバリは見られなかった。・・・一方、○7のDLCコーティング工具は、表面のクロス織り部で若干のバリが観察された。○8の超硬ソリッド工具は同様の箇所で○7よりも更に大きいバリが観察された。○9のハイス母材TiNコーティング工具は、全面でカーボン繊維がむしれた状態になっており、表面もクロス繊維の切り残しが観察された。
・・・
2-2-2-3
図4に、CFRP加工面の厚さ方向の加工面粗さを示す。表面粗さはそれぞれ3箇所測定した平均値であるが、○9の工具については加工面がむしれ面であったため測定不能であった。○1の工具が著しく加工面の粗さが悪く、○2、○3の工具は逆に最も加工面粗さが良かった。○4?○6の工具はほぼ同様の加工面粗さであった。・・・ルータータイプでもエンドミルタイプより加工面粗さが良いものがあることがわかった。○7と○8の工具は○2?○6のダイヤモンドコーティング工具に比べて若干加工面粗さが悪化した。・・・。また、工具形状はねじれ角の小さい多刃工具が有効であると思われる。

」(43頁25行?46頁)

(3)刊行物3(甲第1号証):
3a)「【請求項1】
少なくともガラス繊維を強化繊維とし、マトリックス樹脂に顔料を含む繊維強化プラスチック成形品において、成形品の切断面における算術平均粗さ(Ra)が、0.30μm以下であることを特徴とする繊維強化プラスチック成形品。
【請求項2】
前記切断面を研磨加工していることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形品。
【請求項3】
前記研磨加工が湿式研磨であることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化プラスチック成形品。」

3b)「【0009】
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の課題は、繊維強化プラスチック成形品の切断面を、塗料などにより塗装することなく平滑性を持たせて乱反射光線を防ぎ、マトリックス樹脂に含ませた顔料とほぼ同一の樹脂色を切断面で得ることで、表面品位を向上させた繊維強化プラスチック成形品を提供することにある。」

3c)「【0011】
・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくともガラス繊維を含む繊維強化プラスチック成形品の切断面が平滑性を有するため、乱反射光線を防ぎ、マトリックス樹脂に含ませた顔料とほぼ同一の樹脂色を切断面で得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
・・・
【図4】(a)繊維強化プラスチック成形品の切断面研磨後における模式図である。(b)繊維強化プラスチック成形品の切断面に透光性を有する樹脂を塗布した場合における切断面の模式図である。」

3d)「【0015】
本発明は、少なくともガラス繊維を含む1種類以上の強化繊維を組み合わせて成形した繊維強化プラスチック成形品20に関するものである。繊維強化プラスチック成形品20は、ガラス繊維以外の強化繊維を含む繊維強化プラスチック層1とガラス繊維強化プラスチック層2とから構成され、例えば図1に示すように、ガラス繊維強化プラスチック層2の両側を繊維強化プラスチック層1で挟んだ構成とすることができる。ガラス繊維以外の強化繊維の種類は特に限定されず、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維等の高強度、高弾性率補強繊維や、これらの組合せからなる、ロービング、クロス、マット、不織布等が挙げられ、これらは単独でも使用できるし併用しても良い。さらに繊維長についても特に限定はされず、連続繊維や不連続繊維のいずれを使用しても良い。なかでも、炭素繊維は軽量かつ高強度、高弾性を発現できる強化繊維として好適であり、ポリアクリルニトリル(PAN)系炭素繊維やピッチ系炭素繊維を使用することができる。」

3e)「【0018】
本発明に用いられる繊維強化プラスチック成形品のマトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を使用する場合、熱硬化性樹脂の種類については熱または光や電子線などの外部からのエネルギーによって硬化し、少なくとも部分的に硬化物を形成する樹脂であれば特に限定されず、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0019】
また本発明に用いられる繊維強化プラスチック成形品のマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合、熱可塑性樹脂の種類については特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂や液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂やポリブチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の他、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン・アクリルニトリル共重合体樹脂、アクリルニトリル・ブタジエンスチレン共重合体樹脂、アクリレート・スチレン・アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメチレンメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等を使用することができ、特にポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂が好適に用いられる。また、これらの共重合体、変成体および2種類以上のブレンドした樹脂も使用することができる。また、更に耐衝撃性向上のために、上記樹脂にエラストマーもしくはゴム成分を添加した樹脂も使用することができる。」

3f)「【0022】
・・・また研磨時間や研磨紙の粒度などの研磨条件も特に限定されないが、研磨後の表面粗さがJISB 0651(2001)に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.3μm以下、好ましくは0.2μmとなるように適宜条件を設定して行うことが望ましい。」

3g)「【0025】
(実施例1)
ガラス繊維(セントラル硝子株式会社製のガラス繊維ストランド、ERS2310-821)と組み合わせる強化繊維としてPAN系炭素繊維(東レ株式会社製の炭素繊維“トレカ”(登録商標)S300-48KとT700SC-24Kのストランド)を使用し、顔料としてカーボンブラックを混入したビニルエステル樹脂をマトリックス樹脂として使用し、引抜成形法で繊維強化プラスチック成形品を成形した。
【0026】
具体的な手順としては、上記の繊維基材を、硬化剤が混合された未硬化の熱硬化性樹脂に同時に浸漬させ、スクイズを通して前記繊維基材を種類別に分配ならびに余剰に含浸させた樹脂を掻き取った後、成形方向の中央部を145℃に保持した金型空間を通過させつつ加熱・硬化させて、連続的に引き抜くことにより、幅:20mm、高さ:9mmの矩形断面を持つ棒状の繊維強化プラスチック成形品を得た。この際、成形後の棒状部材の断面において、各強化繊維プラスチック層内に単一種の繊維が均一に分散されていた。
【0027】
この棒状の繊維強化プラスチック成形品を繊維の配向方向となす角が90°となるようにダイヤモンドカッターで切断した。切断面を見ると、ガラス繊維が含まれている繊維強化プラスチック層の樹脂色は白色となっていた。
【0028】
得られた棒状の繊維強化プラスチック成形品についてさらに長手方向に10?20mmの長さに切断した成形品20の切断面を、リファインテック株式会社製の湿式自動ディスク研磨機リファイン・ポリッシャー,HV(型式:RPO-228KR)を使用して湿式研磨した。湿式研磨に用いる研磨紙としては、リファインテック株式会社製カーボマック・ペーパーの粒度Pが400のものを選択して、研磨紙を研磨用ディスクに貼り付けた。研磨紙が貼り付けられた研磨用ディスクを200rpmで回転させ切断面をディスクに30秒間押し当てることによって切断面を研磨した。
【0029】
この成形体の研磨した後の切断面の表面粗さをJIS B 0651(2001)に基づいて株式会社東京精密製の表面粗さ形状測定機“サーフコム”(商標登録)480Aを用いて測定したところ、算術平均粗さ(Ra)が0.217μmであった。
【0030】
この成形品における切断面の樹脂色は、ガラス繊維層を含めてほぼ均一な黒色顔料の樹脂色となっていることが確認出来た。」

3h)「【0033】
(比較例1)
実施例1?3のそれぞれの成形方法で得られた棒状の繊維強化プラスチック成形品について、さらに長手方向に10?20mmの長さに切断した繊維強化プラスチック成形品20の切断面に対して、実施例1?3いずれの表面処理方法も施さない繊維強化プラスチック成形品を得た。これらの切断面の表面粗さをJISB 0651(2001)に基づいて測定したところ、算術平均粗さ(Ra)が0.534μmであった。この成形体における切断面の樹脂色を観察すると、図5に示すように、ガラス繊維層の樹脂色が白色となり、炭素繊維層の黒色とのコントラストが大きい成形部材となった。」

3i)「【図4】

」(10頁)

(4)刊行物4(甲第6号証):
4a)「[請求項1] 平均繊維長が5mm以上100mm以下の強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む繊維強化複合材料から構成される成形体であって、
強化繊維体積含有率が5?80%であり、
基準面(S)と基準面に対し45度以上90度以下の面(B)(以下、立ち面と称する)を有し、
基準面(S)の面積に対する、立ち面(B)の面積の比は0.5?100であり、
該成形体を構成する繊維強化複合材料中、下記式(1)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)の強化繊維全量に対する割合が20Vol%以上99Vol%以下であることを特徴とする成形体。
臨界単糸数=600/D (1)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)。
・・・
[請求項10] 強化繊維が炭素繊維、ガラス繊維、およびアラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の成形体。」(請求の範囲)

4b)「[0012] 以下、本発明の実施の形態について順次説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
平均繊維長が5mm以上100mm以下の強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む繊維強化複合材料から構成される成形体であって、
強化繊維体積含有率が5?80%であり、 ・・・。
[0013]
・・・上記の強化繊維体積含有率としては20?60%であるとより好ましい。」

(5)参考資料1(甲第3号証の2):
5)「平成24年度次世代ものづくり基盤加工技術調査事業
報告書(加工データ集)の公表について
2013.07.08 東北経済産業局
1.調査イメージ
・・・
2.次世代ものづくり基盤加工技術調査事業報告書
・・・
秋田県産業技術センター
テーマ名「複合材料(CFRP)及び耐熱合金の切削加工技術」・・・


(6)参考資料2(甲第7号証):
6)「表面粗さ記号の換算表について:Ra、Rz、Rmax (Rzjis)
2009年9月14日更新
粗さ曲線に基づく表面粗さ記号ですが、旧規格の記号と新規格が錯綜としており、なかでも図面によって使われる粗さ記号が異なるケースも見受けられます。この場合、使われている表面粗さ記号を比較し換算する必要性が出てくる場合があります。断面曲線のうち、旧規格のRa、Rz、Rmaxは異なる部分からとった値であり、厳密には換算することは難しいのですが、概ね下記の換算が成り立ちます。なお、最新のJIS B 0601:2001ではRmaxがRzに、RzがRzjisに変わっているので注意が必要です。



(7)参考資料3(甲第5号証):
7)「



(8)甲第4号証:
8)「[0004] しかしながら、成形後の後加工の一つとして知られている得られた成形体の外縁に生じる強固なバリなどの不要部分の削除には、ウォータ-ジット加工やNC機械加工などを必要としていた。」

2 引用発明
(1)引用発明1
摘示1a?1e、特に摘示1eからみて、刊行物1には、実施例に記載された発明として、「長繊維タイプ炭素繊維強化ポリアミド樹脂として炭素繊維15重量%品(東レ株式会社製:TLP1136)を使用し、株式会社日本製鋼所製350トン射出成形機(J350EIISP、シリンダ径:φ46mm、使用スクリュー:汎用フルフライトタイプ)、ノートパソコンLCDカバー金型(サイズ:W300×L250×H11×t1.0mm、ゲート:14点ピンゲート)を使用し、シリンダ温度280℃、金型温度70℃にて射出成形を行うことにより得られ、成形品表面に形成されるシボ形状としては、金型中にRz35μ、Sm0.6mmの梨地シボ加工を施したキャビティーを配置することにより十点平均粗さRzが32μm、Gsが3.5、Smが0.6mmであり、同成形品の重量平均繊維長を前述の溶剤による樹脂成分除去、顕微鏡観察により、成形品表面の鉛筆引っかき値を引っかき試験機で測定したところ、それぞれ0.5mm、2Hである、繊維強化熱可塑性樹脂成形品」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

(2)引用発明2
摘示2a?2g、特に摘示2e?2gからみて、電子的技術情報2に基づき、「市販のCFRP材(穴織カーボン製:100×100×厚さ10mm、UD+表層クロスタイプ、表面つや有り)を対象に、ルータータイプのダイヤモンドコーティング工具3種類、エンドミルタイプのタイヤモンドコーティング工具3種類の工具を用いて、マニシングセンタ(日立精機製 VKC45II)で片削りによるトリム加工され、加工はCFRP材はバイスに挟んで固定し、各工具とも時間の関係上、切削長1m(10パス)まで行われ、切削加工条件が摘示2fにある表2に示すとおりであり、表面粗さ測定機(東京精密製サーフコム 3000A-3DF)で測定した加工面粗さが摘示2gにある図4の○1?○6に示されたとおりである切削加工されたCFRP材」の発明(以下「引用発明2」という。)が電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっていると認める。

(3)引用発明3
摘示3a?3i、特に摘示3gからみて、刊行物3には、実施例の発明として、「ガラス繊維(セントラル硝子株式会社製のガラス繊維ストランド、ERS2310-821)、強化繊維としてPAN系炭素繊維(東レ株式会社製の炭素繊維“トレカ”(登録商標)S300-48KとT700SC-24Kのストランド)、顔料としてカーボンブラックを混入したビニルエステル樹脂をマトリックス樹脂として使用し、上記の繊維基材を、硬化剤が混合された未硬化の熱硬化性樹脂に同時に浸漬させ、スクイズを通して前記繊維基材を種類別に分配ならびに余剰に含浸させた樹脂を掻き取った後、成形方向の中央部を145℃に保持した金型空間を通過させつつ加熱・硬化させて、連続的に引き抜く、引抜成形法で、幅:20mm、高さ:9mmの矩形断面を持ち、成形後の棒状部材の断面において、各強化繊維プラスチック層内に単一種の繊維が均一に分散されている、棒状の繊維強化プラスチック成形品を得、この棒状の繊維強化プラスチック成形品を繊維の配向方向となす角が90°となるようにダイヤモンドカッターで切断し、切断面のガラス繊維が含まれている繊維強化プラスチック層の樹脂色は白色となっている、得られた棒状の繊維強化プラスチック成形品についてさらに長手方向に10?20mmの長さに切断した繊維強化プラスチック成形品。」の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認める。

第5 当審の判断
1 当審において通知した取消理由について
(1)本件発明1について
ア 引用発明1を主引用例とした場合の検討
引用発明1のポリアミド樹脂は本件発明1の熱可塑性樹脂に相当する。また、引用発明1の成形品はサイズがW300×L250×H11×t1.0mmである金型により製造される成形品であるから、主たる面とは別のより小さい面が存在することは明らかであって、該小さい面は本件発明1の端面に相当する。さらに、引用発明1の繊維強化熱可塑性樹脂成形品には炭素繊維が用いられているから、該成形品は本件発明1の炭素繊維強化樹脂加工品に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、「炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含有し、端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本件発明1では、炭素繊維は、前記炭素繊維強化樹脂加工品中で一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向しており、端面に不規則形状部分が無いものであり、前記端面の面粗度(Rz)が5μm以上50μm以下の範囲であるのに対し、引用発明1では、炭素繊維の配向が不明であり、端面の不規則形状部分については特定されておらず、成形品表面の十点平均粗さRzが32μmであるものの端面の面粗度(Rz)が明らかでない点

上記相違点について検討する。
<炭素繊維の配向について>
引用発明1の繊維は、炭素繊維を含有するポリアミド樹脂を射出成形により成形して成形品を得るものであるところ、射出成形により成形した炭素繊維を含有するポリアミド樹脂の炭素繊維が一方向又は二次元方向にランダムに配向しているという技術的根拠はなく、そのように配向しているとはいえない。
また、刊行物3に記載されるとおり(摘示3a?3e)、繊維として炭素繊維を、樹脂としてポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を用い得る繊維強化プラスチックの繊維として、不織布等を用い得ることは公知である。しかしながら、引用発明1は、炭素繊維を含有するポリアミド樹脂を射出成形により成形して成形品を得るものであり、不織布を含有する熱可塑性樹脂を射出成形により成形できることは刊行物3、刊行物1、4、電子的技術情報2、参考資料1?3、甲第4号証のいずれにも示されていない。したがって、引用発明1において炭素繊維として不織布を用いることは当業者が容易に行うことであるとはいえず、炭素繊維が、前記炭素繊維強化樹脂加工品中で一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向しているものとすることも当業者が容易に行うことであるとはいえない。したがって、この点について当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
よって、その余の点を検討するまでもなく、本件発明1は刊行物1に記載された発明及び同刊行物3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 引用発明2を主引用例とした場合の検討
引用発明2のCFRP材は炭素繊維と樹脂とを含有するものであり、100×100×厚さ10mmの材料であって、トリム加工されるものであるから、本件発明1の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品に相当する。したがって、本件発明1と引用発明2とは、「炭素繊維と樹脂とを含有し、端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本件発明1では樹脂が熱可塑性樹脂であり、炭素繊維は、炭素繊維強化樹脂加工品中で一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向しており、端面に不規則形状部分が無いものであり、前記端面の面粗度(Rz)が5μm以上50μm以下の範囲であるのに対し、引用発明2では樹脂の種類が不明であり、繊維の配向について、UD+表層クロスタイプ、すなわち、一方向のみに炭素繊維を引き揃えたものと、表層として繊維がクロスしたものとが積層しているとされ、端面の不規則形状部分については特定されておらず、端面の面粗度(Rz)に相当する表面粗さ測定機(東京精密製サーフコム 3000A-3DF)で測定した加工面粗さが摘示2gにある図4の○1?○6に示されたとおりであるとされている点

なお、端面の不規則形状部分、面粗度について、摘示2gにある、「○1?○6のダイヤモンドコーティング工具は切削面の見た目も良好で、表面・裏面ともバリは見られなかった」、「加工面粗さが良かった」等の記載、同じく図3の記載からみて、引用発明2のCFRP材はその端面に不規則形状部分が無いものといえ、また、摘示2gにある図4の○1?○6からみて、引用発明2の端面の面粗度(Rz)は5μm以上50μm以下のものといえるが、CFRPは成形方法、積層の仕方によってその特性、性能に違いがある(摘示2b、2d)と認められ、樹脂の種類、繊維の状態によっても成形状態が異なると考えられるから、樹脂の種類及び繊維の配向と切り離して不規則形状部分及び面粗度の一致・不一致を判断することは適切ではない。したがって、一致点・相違点を上記のとおり認定した。

上記相違点について検討する。
<樹脂の種類について>
刊行物1、3に記載されるとおり(摘示1a、1c、1e、3a?3e)、炭素繊維を用いる繊維強化樹脂成形品の樹脂として熱可塑性樹脂を用いることは公知である。しかし、電子技術情報2は、数種類のルーターやエンドミルを用いて、トリム加工実験を行い、各々の工具摩耗やCFRPの加工状態について調査し、工具の性能等を比較したもの(摘示2b、2e、2g)に過ぎず、CFRPに用いる樹脂は一般的にはエポキシ樹脂であることが記載される(摘示2c)のみであって、その他の各種樹脂を用いたCFRP材における工具摩耗やCFRPの加工状態を調査しようとするものとはいえないから、引用発明2のCFRPに用いる樹脂として熱可塑性樹脂を用いる動機付けがあるとはいえない。したがって、この点について当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

<炭素繊維の配向について>
引用発明2はUD+表層クロスタイプ、すなわち、一方向のみに炭素繊維を引き揃えたものと、表層として繊維がクロスしたものとが積層しているものを用いるものであるところ、電子技術情報2は、数種類のルーターやエンドミルを用いて、トリム加工実験を行い、各々の工具摩耗やCFRPの加工状態について調査し、工具の性能等を比較したもの(摘示2b、2e、2g)に過ぎず、各種繊維を用いたCFRP材における工具摩耗やCFRPの加工状態を調査しようとするものとはいえないから、炭素繊維が炭素繊維強化樹脂加工品中で一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向しているものに変更する動機付けがあるとはいえない。
また、刊行物3に記載されるとおり(摘示3a?3e)、繊維として炭素繊維を、樹脂としてポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を用い得る繊維強化プラスチックの繊維として、不織布等を用い得ることは公知であり、不織布は繊維が一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向していると認められが、上記と同様の理由により、引用発明2のCFRP材に用いられている炭素繊維を不織布とする動機付けがあるとはいえず、炭素繊維が、前記炭素繊維強化樹脂加工品中で一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向しているものとする動機付けがあるともいえない。
したがって、この点について当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

<不規則形状部分及び面粗度について>
上述のとおり、引用発明2は、端面に不規則形状部分が無いものといえ、端面の面粗度(Rz)は5μm以上50μm以下のものであるといえるが、CFRPは成形方法、積層の仕方によってその特性、性質に違いがある(摘示2b、2d)と認められ、樹脂の種類、繊維の状態によっても成形状態が異なると考えられるから、仮に樹脂の種類、繊維の配向について、本件発明1のものを採用した場合に、少なくとも、端面のRzが5μm以上50μm以下となるかは不明である。
そして、電子的技術情報2には、加工面粗さの良し悪しについて記載があるものの(摘示2g)、当該電子的技術情報2は数種類のルーターやエンドミルについて、各々の工具摩耗やCFRP材の加工状態について調査し、工具の性能等を比較したもの(摘示2b、2e、2g)たものに過ぎず、端面のRzが5μm以上50μm以下のCFRP材が望ましいものとしているものでもないから、端面のRzを5μm以上50μm以下とすることが動機付けられるものということはできない。
したがって、この点について当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

よって、本件発明1は電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、刊行物1に記載された発明及び同刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1について、「前記端面は切削加工面である」と特定するものであるから、本件発明1と同様の理由により、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはえいない。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明2について、「前記切削加工面は切断面である」と特定するものであるから、本件発明2と同様の理由により、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1?3について、「前記端面の面粗度(Rz)が15μm以上50μm以下の範囲である」と特定するものであるから、本件発明1?3と同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明5、6について
本件発明5は、本件発明1?4について、「前記炭素繊維は、不連続繊維であって、平均繊維長が1mm以上である」と特定するものであり、本件発明6は、本件発明1?5について、「前記炭素繊維は、不連続繊維であって、平均繊維長が1?100mmの範囲である」と特定するものである。
刊行物4に記載のとおり、平均繊維長が5mm以上100mm以下の炭素繊維等の強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む繊維強化複合材料から構成される成形体は公知である(摘示4a)。
しかし、不連続繊維であること、平均繊維長についての特定がない本件発明1?4が上述のとおり、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、不連続繊維であること、平均繊維長についての特定がされた本件発明5、6は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び刊行物4に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1?6について、「前記炭素繊維は、前記炭素繊維強化樹脂加工品中で二次元方向にランダムに配向している」と特定するものであるから、本件発明1?6と同様の理由により、本件発明7は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1?7について、「前記端面の高さが30mm以下である」と特定するものであるから、本件発明1?7と同様の理由により、本件発明8は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(8)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1?8について、「前記炭素繊維強化樹脂加工品に含まれる炭素繊維の体積割合(Vf)が55体積%以下である」と特定するものである。
刊行物4に記載のとおり、炭素繊維等の強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む繊維強化複合材料から構成される成形体において、強化繊維体積含有率を5?80%又は20?60%とすることは公知であり(摘示4a、4b)、該含有率は本件発明9で特定される範囲と相当部分において重複する。
しかし、炭素繊維強化樹脂加工品に含まれる炭素繊維の体積割合についての特定がない本件発明1?8が上述のとおり、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、炭素繊維強化樹脂加工品に含まれる炭素繊維の体積割合についての特定がされた本件発明9は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及び3に記載された技術的事項に基づいて、刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 特許異議申立人の申し立てた理由についての検討
(1)上記第3の1の(1)(新規性)について
ア 上記第3の1の(1)のアについて
(ア)甲第1号証(刊行物3)について
甲第1号証に記載された発明は上記第4の2の(3)に示した引用発明3であるところ、引用発明3の成形品に含まれる「PAN系炭素繊維」と「プラスチック」、「ビニルエステル樹脂」は本件発明1の「炭素繊維」と「樹脂」に相当し、引用発明3の成形品はダイヤモンドカッターで切断されたものであるから、端面を有することは明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明3とは、
「炭素繊維と樹脂とを含有し、端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本件発明1では、樹脂が熱可塑性樹脂であり、炭素繊維は、前記炭素繊維強化樹脂加工品中で一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向しており、端面に不規則形状部分が無いものであり、前記端面の面粗度(Rz)が5μm以上50μm以下の範囲であるのに対し、引用発明3では、樹脂がビニルエステル樹脂であり(なお、ビニルエステル樹脂は熱硬化性樹脂であるとされている(摘示3e))、炭素繊維は、配向方向が存在するものではあるものの、炭素繊維強化樹脂加工品中で一方向に配向しているか、又は二次元方向にランダムに配向しているとはされておらず、端面の不規則形状部分、端面の面粗度(Rz)が不明である点で相違する。

そして、少なくとも樹脂の種類については実質的に相違するものではないということはできないから、その他の点について検討するまでもなく、本件発明1は甲第1号証に記載された発明とはいえない。

(イ)甲第2号証(刊行物1)、甲第3号証(甲第2号証)について
甲第2号証、甲第3号証に記載された発明は、それぞれ、上記第4の2の(1)、(2)に示した引用発明1、2であるところ、上記1の(1)のア、イで示したとおり、本件発明1とはそれぞれ相違点を有し、引用発明1については、炭素繊維の配向の点、引用発明2については、樹脂の種類の点、炭素繊維の配向の点については実質的に相違するものではないということはできないから、その他の点について検討するまでもなく、本件発明1は甲第2号証、甲第3号証に記載された発明とはいえない。

イ 上記第3の1の(1)のイについて
本件発明2?8はいずれも本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明とはいえない。

(2)上記第3の1の(2)(進歩性)について
ア 第3の1の(2)のアについて
(ア)甲第1号証(刊行物3)単独での本件発明1の特許法第29条第2項に関する判断について
本件発明1と引用発明3との相違点は、上記(1)のアの(ア)に示したとおりである。
端面の面粗度(Rz)について、刊行物3には、成形品の切断面における算術平均粗さ(Ra)が0.30μm以下であること(摘示3a)、成形品の切断面研磨後における模式図及び成形品の切断面に透光性を有する樹脂を塗布した場合における切断面の模式図が記載されており(摘示3c、3i)、引用発明3は、成形品の切断面に透光性を有する樹脂を塗布した場合(摘示3i、図4(b))の、該塗布前の成形品に相当するといえる。しかし、当該図からは、当該塗布前の成形品の端面のRzは不明であり、端面のRzが5μm以上50μm以下であるとはいえない。
仮に、参考資料2を参照してRzはRaの4倍程度の値であるといえるとしても、刊行物3には、成形品を切断しただけの切断面のRaが0.534μmである例が記載されており(摘示3h)、上記の換算によれば、Rzが2.1μm程度であり、Rzが5μm以上50μm以下ではない。そして、刊行物3には、「そこで本発明の課題は、繊維強化プラスチック成形品の切断面を、塗料などにより塗装することなく平滑性を持たせて乱反射光線を防ぎ、マトリックス樹脂に含ませた顔料とほぼ同一の樹脂色を切断面で得ることで、表面品位を向上させた繊維強化プラスチック成形品を提供することにある。」、「本発明によれば、少なくともガラス繊維を含む繊維強化プラスチック成形品の切断面が平滑性を有するため、乱反射光線を防ぎ、マトリックス樹脂に含ませた顔料とほぼ同一の樹脂色を切断面で得ることが出来る。」と記載されていることから(摘示3b、3c)、刊行物3に記載された発明は、切断面が平滑性を有する成形品を得ることを目的として切断面のRaを0.30μm以下としているといえ、そのために例えば研磨を行っていると解されるところ(摘示3g)、当該研磨前の成形品の切断面の粗さについては特に特定するところがなく、研磨等をした後の成形品の切断面のRaを上記と同様にしてRzに換算すると1.2μm以下であるから、いずれにしても、端面のRzを5μm以上50μm以下とすることを当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明1は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)甲第2号証(刊行物1)単独、甲第3号証(電子的技術情報2)単独、甲第3号証(電子的技術情報2)に記載された発明に甲第1号証(刊行物3)又は甲第2号証(刊行物1)に記載された技術的事項を組み合わせた場合の本件発明1の特許法第29条第2項に関する判断について
本件発明1は、刊行物1に記載された発明及び同刊行物3に記載された技術的事項に基づいて、また、電子的技術情報2に係る発明並びに刊行物1及3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは、上記第5の1の(1)のア?ウで述べたとおりであるから、本件発明1は、甲第2号証単独、甲第3号証単独、甲第3号証に記載された発明に甲第1号証又は甲第2号証に記載された技術的事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 第3の1の(2)のイについて
(ア)甲第1号証(刊行物3)単独での本件発明2?4の特許法第29条第2項に関する判断について
本件発明2?4は、本件発明1について、端面、端面の面粗度をさらに特定したものである。
しかし、かかる特定のない本件発明1が、上記アの(ア)で述べたとおり、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2?4も同様である。

(イ)甲第1号証(刊行物3)に記載された発明に甲第3号証(電子的技術情報2)に記載された技術的事項を組み合わせた場合の本件発明2?4の特許法第29条第2項に関する判断について
上記アの(ア)で述べたことから、単に端面のRzが5μm以上50μm以下であるといえるCFRP材が記載されているに過ぎない甲第3号証の記載をみても、甲第1号証に記載された発明において端面のRzを5μm以上50μm以下とすることは動機付けられるとはいえないから、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された技術的事項を組み合わせることで本件発明2?4を当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 第3の1の(2)のウについて
(甲第1号証(刊行物3)単独での本件発明5?8の特許法第29条第2項に関する判断について)
本件発明5?8は本件発明1をさらに特定したものであるところ、上記アの(ア)で述べたとおり、かかる特定のない本件発明1が甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件発明5?8も同様である。

エ 第3の1の(2)のエについて
(甲第1号証(刊行物3)に記載された発明に適宜設計的事項を加えた場合、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証又は甲第6号証に記載された技術的事項を組み合わせた場合の本件発明9の特許法第29条第2項に関する判断について)
特許異議申立人の主張は、甲第2号証及び甲第6号証に炭素繊維の体積割合が記載されているということに基づくものであると認められるが、炭素繊維の体積割合の特定のない本件発明1が甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは、上記アの(ア)で述べたとおりであるから、本件発明9も同様の理由により、甲第1号証に記載された発明に適宜設計的事項を加えることにより、また、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証又は甲第6号証に記載された技術的事項を組み合わせることで当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

第6 むすび
したがって、本件発明1?9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-04-20 
出願番号 特願2015-545557(P2015-545557)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B23C)
P 1 651・ 113- Y (B23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 芦原 ゆりか  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 木村 敏康
冨永 保
登録日 2016-04-01 
登録番号 特許第5908188号(P5908188)
権利者 帝人株式会社
発明の名称 端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品  
代理人 高松 猛  
代理人 尾澤 俊之  

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