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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G04C
管理番号 1327931
異議申立番号 異議2017-700057  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-23 
確定日 2017-05-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第5962252号発明「太陽電池付電子時計」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5962252号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5962252号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成24年6月25日の出願であって、平成28年7月8日に特許の設定登録がされ、平成29年1月20日にその特許に対して、特許異議申立人土屋篤志により特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許発明
特許第5962252号の請求項1ないし4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものである(以下、請求項1、・・・・・・、4の特許に係る発明を、それぞれ、「本件特許発明1」、・・・・・・、「本件特許発明4」という。)。

「【請求項1】
導電性材料により形成された外装ケースと、
前記外装ケースに収容される太陽電池ユニットと、
電気エネルギーを蓄積する蓄電体とを有し、
前記太陽電池ユニットは、フィルム製の基材を用いた太陽電池と、当該太陽電池の基材の裏面に形成された正極および負極と、前記基材の裏面に接着された導電性の太陽電池案内板と、を有し、
前記太陽電池の正極は、前記蓄電体の正極に導通され、
前記太陽電池の負極は、前記蓄電体の負極に導通され、
前記太陽電池案内板は、前記蓄電体の正極と負極のうちグランド電極に設定された電極に導通される
ことを特徴とする太陽電池付電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池付電子時計において、
前記太陽電池ユニットと前記蓄電体の電極とを導通する導通部材を備え、
前記導通部材は、
前記太陽電池の正極を前記蓄電体の正極に導通する正極コイルばねと、
前記太陽電池の負極を前記蓄電体の負極に導通する負極コイルばねと、
前記太陽電池案内板を前記蓄電体の正極と負極のうちグランド電極に設定された電極に導通する案内板導通コイルばねと、を有する
ことを特徴とする太陽電池付電子時計。
【請求項3】
請求項2に記載の太陽電池付電子時計において、
前記太陽電池案内板は、ムーブメントに固定可能な固定部を備え、
前記固定部は、前記太陽電池案内板の中心を挟んで配置され、
前記正極コイルばねは、前記固定部のうち一方側に設けられ、
前記負極コイルばねは、前記固定部のうち他方側に設けられ、
前記案内板導通コイルばねは、前記正極コイルばねと前記負極コイルばねのうちグランド電極に導通されるコイルばね側に設けられる
ことを特徴とする太陽電池付電子時計。
【請求項4】
請求項1に記載の太陽電池付電子時計において、
前記太陽電池ユニットと前記蓄電体の電極とを導通する導通部材を備え、
前記導通部材は、
前記太陽電池の正極を前記蓄電体の正極に導通する正極コイルばねと、
前記太陽電池の負極を前記蓄電体の負極に導通する負極コイルばねと、を有し、
前記蓄電体の正極と負極のうちグランド電極に設定された電極に導通する前記正極コイルばねまたは前記負極コイルばねの一方は、前記太陽電池案内板にも導通する
ことを特徴とする太陽電池付電子時計。」

第3 申立理由の概要
1 特許異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証を提出し、請求項1ないし4に係る特許は第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである旨主張している。

2 特許異議申立人は、主たる証拠として甲第2号証及び従たる証拠として甲第3号証ないし甲第4号証を提出し、請求項1ないし4に係る特許は第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである旨主張している。

<証拠方法>
甲第1号証:実願昭61-48705号(実開昭62-160392号)のマイクロフィルム
甲第2号証:国際公開第00/03310号
甲第3号証:特公平5-72703号公報
甲第4号証:特開昭58-95280号公報

第4 申立理由について
1 甲第1号証?甲第4号証の記載事項
(1)甲第1号証には、以下のように記載されている。(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)

a 「〔産業上の利用分野〕
本考案は、太陽電池付電子時計の太陽電池とムーブメントの電気的導通と固定構造に関するものである。」(第1頁第13?16行)

b 「また回路ブロックへの導通構造としてコイルバネを使用していた為電気的に不安定であり部品点数が多くなってしまうという欠点を有していた。」(第3頁第7?10行)

c 「光電変換部材を形成する為の金属基板を直接陽極又は陰極とする」(第3頁第12?14行)

d 「第3図は、外装を導電部材として用いた一例を示す。光電変換部材4bが太陽電池基板4aに形成され、それと同一面に形成される陽極部6bが外装の側11と接触して電気的導通が成され、前記側11は裏蓋18と導通され、この裏蓋18と導通をとる為のバネ部材16により回路ブロック8へ陽極側の電気的導通を行っている。また太陽電池基板4aは、太陽電池の陰極としての機能を持たせる。この場合直に接する地板13が金属であり電位が陽極である為絶縁板17を介在させ地板13と太陽電池基板4aの絶縁を行っている。またその絶縁板の一部は穴が明いていてその穴の部分にコイルバネ7を配して回路ブロックへの導通を行うものである。」(第5頁第6?19行)

e 第3図から、外装に、太陽電池を収容し、太陽電池基板4aの裏面にコイルバネ7が接触していること、及び、陽極6bの上面が外装の側11と接触していることが見て取れる。

ア 上記aの記載から、甲第1号証には、「太陽電池付電子時計」が記載されている。

イ 上記dの記載から、甲第1号証には、「導電部材である外装」が記載されている。

ウ 上記eの記載から、甲第1号証には、「外装に収容される太陽電池」が記載さている。

エ 上記c、d及びeの記載から、甲第1号証には、「太陽電池は、光電変換部材4bが金属基板である太陽電池基板4aに形成され、それと同一面に形成される陽極部6bがその上面で外装の側11と接触して電気的導通が成され、前記側11は裏蓋18と導通され、この裏蓋18と導通をとる為のバネ部材16により回路ブロック8へ陽極側の電気的導通を行っており、太陽電池基板4aは、太陽電池の陰極としての機能を持たせ、地板13が金属であり電位が陽極である為絶縁板17を介在させ地板13と太陽電池基板4aの絶縁を行って」いることが記載されている。

オ 上記d及びeの記載から、甲第1号証には、「その絶縁板の一部は穴が明いていてその穴の部分にコイルバネ7を配し、太陽電池基板4aの裏面に接触して、回路ブロックへの導通を行う」ことが記載されている。

したがって、上記ア?オの記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。
「導電部材である外装と、
外装に収容される太陽電池とを有し、
太陽電池は、光電変換部材4bが金属基板である太陽電池基板4aに形成され、それと同一面に形成される陽極部6bがその上面で外装の側11と接触して電気的導通が成され、前記側11は裏蓋18と導通され、この裏蓋18と導通をとる為のバネ部材16により回路ブロック8へ陽極側の電気的導通を行っており、
太陽電池基板4aは、太陽電池の陰極としての機能を持たせ、地板13が金属であり電位が陽極である為絶縁板17を介在させ地板13と太陽電池基板4aの絶縁を行っており、
その絶縁板の一部は穴が明いていてその穴の部分にコイルバネ7を配し、太陽電池基板4aの裏面に接触して、回路ブロックへの導通を行う太陽電池付電子時計。」

(2)甲第2号証には、以下のように記載されている。
a 「背景技術
近年、環境問題を反映しクリーンなエネルギとして太陽電池が注目されている。時計においても、太陽電池により発電したエネルギを、二次電池やキャパシタ等の蓄電体に充電して、針を駆動させるものが市販されている。」(第1頁第6?9行)

b 「本発明の目的は上記問題を解決し、光発電手段やELなどの受発光手段を有する時計において、見切り部を自由に設定でき、多種にわたるデザイン要望の対応が可能な時計ムーブメント固定構造を有する時計を得るところにある。」(第3頁第22?24行)

c 「第9図は本発明の第2の実施形態にかかる時計の平面図、第10図は第9図のIII-III方向断面図である。
第9図及び第10図において、時計ムーブメント51は図示のように樽型形状に形成されている。時計ムーブメント51は、秒針51a,分針51b,時針51cを有する。太陽電池57は本実施形態においてはフィルム基板上に製膜形成され、外形は第9図のように時計ムーブメント51とほぼ同形の樽型形状に形成される。太陽電池57はフィルム基板なので、切断することによって外形を比較的簡単に自由な形状にすることができる。
また、太陽電池57は、先の実施形態と同様に両面テープ53により太陽電池受板52に粘着固定される。太陽電池受板52は時計ムーブメント51にフック部52aを係合させて保持されている。太陽電池57の出力電流は、コイルバネ54を介して回路基板56に流され、時計ムーブメント51内の各駆動部を駆動させる電源となる。」(第8頁第14?26行)

d 「上記構成により、時計ムーブメント51は第1の時計ムーブメント保持部材である文字板受板66と第2の時計ムーブメント保持部材である補助リング69とで挟持されて、ケース体67内で位置決め固定される。」(第9頁第18?20行)

e 「第12図は本発明の第3の実施形態である充電式太陽電池時計の平面図、第13図は第12図のIV-IV方向断面図である。
第12図および第13図にしたがってこの実施形態の構造を詳述する。なお、この実施形態の基本形態は先の第2の実施形態と同じであるので、同一部位、同一部材には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
・・・太陽電池77は両面テープ53により金属製の太陽電池受板52に貼付固定される。」(第10頁第23行?第11頁第3行)

f 「以上の説明で明らかなように、本発明による充電式太陽電池時計の時計ムーブメント構造を用いれば、文字板と文字板固定枠の変更のみにて見切り部を自由に設定でき、多種多様なデザインに対応可能なこととともに、それを低コストにて実現することができる。」(第12頁第28行?第13頁第1行)

g 「また本発明による時計では、上記構成の時計ムーブメント固定構造により、金属板と太陽電池の間にある接着部材が絶縁層となるので、金属板が導電性を有するとしても太陽電池とは導通せず、太陽電池がケースなどの部材と接触したとしても時計機能に障害を引き起こすことはない。」(第13頁第2?5行)

h 第10図から、太陽電池57の裏面にコイルバネ54が接触していることが見て取れる。

ア 上記a及びfの記載から、甲第2号証には、「発電したエネルギを、蓄電体に充電する充電式太陽電池時計」が記載されている。

イ 上記c及びeの記載から、甲第2号証には、「太陽電池57はフィルム基板上に製膜形成され、太陽電池57は両面テープ53により金属製の太陽電池受板52に粘着固定され、太陽電池受板52は時計ムーブメント51にフック部52aを係合させて保持されている」ことが記載されている。

ウ 上記dの記載から、甲第2号証には、「時計ムーブメント51は、ケース体67内で位置決め固定される」ことが記載されている。

エ 上記c及びhの記載から、甲第2号証には、「太陽電池57の裏面にコイルバネ54が接触し、太陽電池57の出力電流は、コイルバネ54を介して回路基板56に流され」ることが記載されている。

したがって、上記ア?エの記載事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。)。
「太陽電池57はフィルム基板上に製膜形成され、
太陽電池57は両面テープ53により金属製の太陽電池受板52に粘着固定され、
太陽電池受板52は時計ムーブメント51にフック部52aを係合させて保持され、時計ムーブメント51は、ケース体67内で位置決め固定されており、
太陽電池57の裏面にコイルバネ54が接触し、
太陽電池57の出力電流は、コイルバネ54を介して回路基板56に流され、
発電したエネルギを、蓄電体に充電する充電式太陽電池時計。」

上記cから、甲第2号証には、次の周知技術が記載されている。
「太陽電池をフィルム基板上に製膜形成し、両面テープによリ太陽電池受板に粘着固定する技術。」

(3)甲第3号証には、以下のように記載されている。
「本発明の重要な特徴によれば、舌片8が穴4の中央部で裏蓋3に向けて起こされている点である。この舌片8はバツテリーをハウジングに入れたときバツテリー10の面9に載る。このようにバツテリーは、後述のように、クランプと時計の裏蓋3とによりそのまゝ上向きに保持される。バツテリーの面9は接地電極に対向する電極であり、この接地電極は地板、クランプ、および裏蓋と弾性接触している。」(第4欄第18?26行)

(4)甲第4号証には、以下のように記載されている。
「2.特許請求の範囲
電源の基準電位が印加されている金属材料よりなる地板と、磁性材料よりなるヨーク及びコイル巻芯とにより構成される変換機を有する電子時計に於て、前記コイル巻芯にコイルが直接巻回されていると共に前記ヨーク及びコイル巻芯、又は前記コイル巻芯のみが前記地板と電気的に絶縁されている構造をとることを特徴とする電子時計。」(第1頁左下欄第4?11行)

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 甲第1号証を主たる証拠とした場合
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明の「導電部材」、「外装」、「陽極部6b」、「陰極」は、それぞれ、本件特許発明1の「導電性材料」、「外装ケース」、「正極」、「陰極」に相当する。

b 甲1発明の「導電部材である外装」は、本件特許発明1の「導電性材料により形成された外装ケース」に相当する。

c 甲1発明の「外装に収容される太陽電池」と、本件特許発明1の「前記外装ケースに収容される太陽電池ユニット」とは、「前記外装ケースに収容される太陽電池」である点で共通する。

d
(a)本件特許発明1の「フィルム製の基材を用いた太陽電池」について、本件明細書の発明の詳細な説明に「太陽電池40は、平面視略円形状の基材41と、基材41の表面側に形成された受光部42と、一対の電極43,44とを備える。」(段落【0025】)と記載されているので、
甲1発明の「光電変換部材4bが金属基板である太陽電池基板4aに形成され」た「太陽電池」と、本件特許発明1の「フィルム製の基材を用いた太陽電池」とは、「基材を用いた太陽電池」である点で共通する。

(b)甲1発明は、「太陽電池基板4aは、太陽電池の陰極としての機能を持たせ」「コイルバネ7を配し、太陽電池基板4aの裏面に接触して、回路ブロックへの導通を行」っているので、「太陽電池基板4a」の「裏面」に「陰極としての機能を持たせ」ているといえる。
よって、甲1発明の「太陽電池基板4a」の「裏面」である「陰極」と、本件特許発明1の「当該太陽電池の基材の裏面に形成された」「負極」とは、「太陽電池の基材の裏面に形成された負極」である点で共通する。

(c)甲1発明の「陽極部6b」は、「光電変換部材4bが金属基板である太陽電池基板4aに形成され、それと同一面に形成される陽極部6b」であるので、「陽極部6b」は、「太陽電池基板4a」の「光電変換部材4bが」「形成され」ており、
甲1発明の「光電変換部材4bが金属基板である太陽電池基板4aに形成され、それと同一面に形成される陽極部6b」と、本件特許発明1の「当該太陽電池の基材の裏面に形成された正極」とは、「太陽電池の基材に形成された正極」である点で共通する。

(d) (a)?(c)を踏まえると、甲1発明の「太陽電池は、光電変換部材4bが金属基板である太陽電池基板4aに形成され、それと同一面に形成される陽極部6b」を有し、「太陽電池基板4aは、太陽電池の陰極としての機能を持たせ」「コイルバネ7を配し、太陽電池基板4aの裏面に接触して、回路ブロックへの導通を行う」ことと、本件特許発明1の「前記太陽電池ユニットは、フィルム製の基材を用いた太陽電池と、当該太陽電池の基材の裏面に形成された正極および負極と」「を有」することとは、「太陽電池は、基材を用いた太陽電池と、太陽電池の基材の裏面に形成された負極と、太陽電池の基材に形成された正極と、を有」する点で共通する。

e 本件特許発明1の「蓄電体の正極」及び「蓄電体の負極」について、本件明細書の発明の詳細な説明に「制御回路241のVDD端子およびVSS端子は、二次電池23の正極(VDD)および負極(VSS)に接続され」(段落【0022】)と記載されていることを踏まえると、二次電池23(本件特許発明1の「蓄電体」に相当)の正極、負極と、制御回路241のVDD端子(正極)、VSS端子(負極)とは、それぞれ導通しているといえる。
よって、甲1発明の「陽極部6bが」「回路ブロック8へ陽極側の電気的導通を行」うことと、本件特許発明1の「前記太陽電池の正極は、前記蓄電体の正極に導通され」ることとは、「前記太陽電池の正極は、回路の正極に導通され」る点で共通し、
甲1発明の「太陽電池基板4aは、太陽電池の陰極としての機能を持たせ」「コイルバネ7を配し、太陽電池基板4aの裏面に接触して、回路ブロックへの導通を行う」うことと、本件特許発明1の「前記太陽電池の負極は、前記蓄電体の負極に導通され」ることとは、「前記太陽電池の負極は、回路の負極に導通され」る点で共通する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「導電性材料により形成された外装ケースと、
前記外装ケースに収容される太陽電池とを有し、
太陽電池は、基材を用いた太陽電池と、太陽電池の基材の裏面に形成された負極と、太陽電池の基材に形成された正極と、を有し、
前記太陽電池の正極は、回路の正極に導通され、
前記太陽電池の負極は、回路の負極に導通される
太陽電池付電子時計。」

(相違点1)
太陽電池が、本件特許発明1は、「フィルム製の基材を用いた太陽電池と」「前記基材の裏面に接着された導電性の太陽電池案内板と、を有」する「太陽電池ユニット」であるのに対し、甲1発明は、このような特定がない点。
(相違点2)
太陽電池の正極が、本件特許発明1は、「太陽電池の基材の裏面に形成された正極」であるのに対して、甲1発明は、「光電変換部材4bが」「太陽電池基板4aに形成され」た「面に形成される陽極部6b」である点。
(相違点3)
本件特許発明1は、「電気エネルギーを蓄積する蓄電体とを有」するのに対し、甲1発明は、このような特定がない点。
(相違点4)
本件特許発明1は、「前記太陽電池の正極は、前記蓄電体の正極に導通され、前記太陽電池の負極は、前記蓄電体の負極に導通され」るのに対して、甲1発明は、このような特定がない点。
(相違点5)
本件特許発明1は、「前記太陽電池案内板は、前記蓄電体の正極と負極のうちグランド電極に設定された電極に導通される」のに対して、甲1発明は、このような特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明の「陽極部6b」は、「光電変換部材4bが」「太陽電池基板4aに形成され、それと同一面に形成され」たものであり、「太陽電池基板4a」の裏面に形成されたものではない。さらに、甲第1号証には、「陽極部6b」を「太陽電池の陰極としての機能を持たせ」た「太陽電池基板4a」の裏面に形成することへの記載も示唆もない。
そして、甲1発明は「陽極部6bがその上面で外装の側11と接触して電気的導通が成され」ているので、
甲1発明において、「陽極部6b」を「太陽電池基板4a」の裏面に形成することは、裏面において「陽極部6b」に接触して、回路ブロックへの導通を行うための新たなコイルバネが必要になり、甲1発明の「コイルバネを使用していた為電気的に不安定であり部品点数が多くなってしまうという欠点」(上記「1 (1)b」)をなくするという課題に反することでもあり、想定できないといえる。

また、甲第2号証には、フィルム基板上の太陽電池は記載されているが(上記「1 (2)」)、太陽電池の基材の裏面に形成された正極および負極は記載されていない。

したがって、本件特許発明1は、本件の出願前に当業者が甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、容易になし得たものとすることができない。

なお、甲第3号証及び甲第4号証の記載を見ても、太陽電池の基材の裏面に形成された正極および負極について記載されていない。

また、異議申立人は、異議申立書第12頁第16?25行において、
「また、前記構成1E?1Gの一部である、太陽電池の基材が「フィルム製」であること、当該太陽電池の正極および負極が「両方とも基材の裏面に」形成されていること、並びに導電性の太陽電池案内板が「前記基材の裏面に接着」されていることは、制御回路に電気的影響が生じることを防ぐという前記課題を解決することとは無関係の単なる周知慣用技術を選択したに過ぎず、太陽電池のうち安価なフィルムを用いた甲第2号証の太陽電池を選択し、前記太陽電池の正極および負極の設置位置を前記基材の裏面にし、フィルムを用いた太陽電池を固定するために前記太陽電池案内板をフィルムの裏面に接着することは、単なる設計事項である。」
と主張している。

しかしながら、上記のように甲1発明において、「陽極部6b」を「太陽電池基板4a」の裏面に形成することの特定はなく、甲第2号証にも、太陽電池の正極および負極が「両方とも基材の裏面に」形成されていることは記載されていないから、「当該太陽電池の正極および負極が「両方とも基材の裏面に」形成されていること」は、「単なる周知慣用技術を選択したに過ぎず」との主張を採用することはできない。

イ 甲第2号証を主たる証拠とした場合
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
a 甲2発明の「ケース体67」、「フィルム基板」、「太陽電池受板52」、「充電式太陽電池時計」は、それぞれ、「外装ケース」、「基材」、「太陽電池案内板」、「太陽電池付電子時計」に相当する。

b 甲2発明の「ケース体67」と、本件特許発明1の「導電性材料により形成された外装ケース」とは、「外装ケース」である点で共通する。

c 甲2発明は、「太陽電池57は両面テープ53により金属製の太陽電池受板52に粘着固定され、太陽電池受板52は時計ムーブメント51にフック部52aを係合させて保持され、時計ムーブメント51は、ケース体67内で位置決め固定されて」いるので、「太陽電池57」と「太陽電池受板52」は、「ケース体67内で位置決め固定されて」いるといえる。
そして、甲2発明は、「太陽電池57」と「太陽電池受板52」は、粘着固定されているので、一まとまりの太陽電池部品であるといえるので、
甲2発明の「ケース体67内で位置決め固定され」た、一まとまりの太陽電池部品である「太陽電池57」及び「太陽電池受板52」は、本件特許発明1の「前記外装ケースに収容される太陽電池ユニット」に相当する。

d 甲2発明の「蓄電体」は、「発電したエネルギを、」「充電する」ので、本件特許発明1の「電気エネルギーを蓄積する蓄電体」に相当する。

e
(a)甲2発明の「フィルム基板上に製膜形成され」た「太陽電池57」は、本件特許発明1の「フィルム製の基材を用いた太陽電池」に相当する。

(b)甲2発明の「太陽電池57」は「フィルム基板上」に形成されており、「太陽電池57の裏面にコイルバネ54が接触し、太陽電池57の出力電流は、コイルバネ54を介して回路基板56に流され」ているので、「太陽電池57」の「フィルム基板」の「裏面」に電極が形成されているといえ、
甲2発明の「太陽電池57の裏面にコイルバネ54が接触し、太陽電池57の出力電流は、コイルバネ54を介して回路基板56に流され」ていることと、本件特許発明1の「当該太陽電池の基材の裏面に形成された正極および負極」とは、「当該太陽電池の基材の裏面に形成された電極」である点で共通する。

(c)甲2発明の「太陽電池57」は「フィルム基板上」に形成されており、「太陽電池57は両面テープ53により金属製の太陽電池受板52に粘着固定され」ているので、「太陽電池受板52」は、「太陽電池57」の「フィルム基板」の裏面に「両面テープ53により」「粘着固定され」ているといえ、甲2発明の「金属製の太陽電池受板52」は、本件特許発明1の「前記基材の裏面に接着された導電性の太陽電池案内板」に相当する。

(d)甲2発明は、「太陽電池57」と「太陽電池受板52」は、粘着固定されているので、一まとまりの太陽電池部品であるといえ、上記(a)?(c)を踏まえると、
甲2発明の「太陽電池57はフィルム基板上に製膜形成され、太陽電池57は両面テープ53により金属製の太陽電池受板52に粘着固定され」「太陽電池57の裏面にコイルバネ54が接触し、太陽電池57の出力電流は、コイルバネ54を介して回路基板56に流され」たものと、本件特許発明1の「前記太陽電池ユニットは、フィルム製の基材を用いた太陽電池と、当該太陽電池の基材の裏面に形成された正極および負極と、前記基材の裏面に接着された導電性の太陽電池案内板と、を有し」とは、「前記太陽電池ユニットは、フィルム製の基材を用いた太陽電池と、当該太陽電池の基材の裏面に形成された電極と、前記基材の裏面に接着された導電性の太陽電池案内板と、を有」する点で共通する。

f 甲2発明は、「発電したエネルギを、蓄電体に充電」しているので、「太陽電池57」の電極は、「蓄電体」の電極に導通されている。
したがって、甲2発明の「発電したエネルギを、蓄電体に充電する」ことと、本件特許発明1の「前記太陽電池の正極は、前記蓄電体の正極に導通され、前記太陽電池の負極は、前記蓄電体の負極に導通され」とは、「前記太陽電池の電極は、前記蓄電体の電極に導通され」る点で共通する。

したがって、本件特許発明1と甲2発明とは、次の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「外装ケースと、
前記外装ケースに収容される太陽電池ユニットと、
電気エネルギーを蓄積する蓄電体とを有し、
前記太陽電池ユニットは、フィルム製の基材を用いた太陽電池と、当該太陽電池の基材の裏面に形成された電極と、前記基材の裏面に接着された導電性の太陽電池案内板と、を有し、
前記太陽電池の電極は、前記蓄電体の電極に導通される
太陽電池付電子時計。」

(相違点1)
外装ケースが、本件特許発明1は、「導電性材料により形成された外装ケース」であるのに対して、甲2発明は、このような特定がない点。
(相違点2)
太陽電池の基材の裏面に形成された電極が、本件特許発明1は、「正極および負極」であるのに対して、甲2発明は、このような特定がない点。
(相違点3)
太陽電池の電極が、蓄電体の電極に導通されることに関して、本件特許発明1は、「前記太陽電池の正極は、前記蓄電体の正極に導通され、前記太陽電池の負極は、前記蓄電体の負極に導通され」るのに対して、甲2発明は、このような特定がない点。
(相違点4)
本件特許発明1は、「前記太陽電池案内板は、前記蓄電体の正極と負極のうちグランド電極に設定された電極に導通される」のに対して、甲2発明は、このような特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
甲2発明において「太陽電池受板52」は「金属製」であることは記載されているが、甲第2号証には、「太陽電池受板52」と「太陽電池27」を導通すること、及び「太陽電池受板52」と「蓄電体」を導通することは記載されていない。
そして、甲2発明の目的は、見切り部を自由に設定し、多種にわたるデザイン要望の対応が可能な時計ムーブメント固定構造を有する時計を得ることであるから(上記「1 (2)b」、「1 (2)f」)、甲2発明において、「金属製の太陽電池受板52」と「蓄電体」を導通させる動機はない。
さらに、甲第2号証に「金属板と太陽電池の間にある接着部材が絶縁層となるので、金属板が導電性を有するとしても太陽電池とは導通せず、太陽電池がケースなどの部材と接触したとしても時計機能に障害を引き起こすことはない。」(上記「1 (2)g」)とあり、この「金属板」は「金属製の太陽電池受板52」に対応するものといえるから、むしろ、「金属製の太陽電池受板52」を、太陽電池の電極に接続される「蓄電体」の電極に導通させることは、想定できないといえる。

甲第3号証及び甲第4号証には、電位が浮いてしまい得る部材を導通させて接地電位とさせることが記載されているだけであって(上記「1 (3)」、「1 (4)」)、甲第3号証及び甲第4号証にも、太陽電池案内板を、蓄電体の正極と負極のうちグランド電極に設定された電極に導通されることは記載されていない。

したがって、本件特許発明1は、本件の出願前に当業者が甲2発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、容易になし得たものとすることができない。

なお、甲第1号証にも、太陽電池案内板を、蓄電体の正極と負極のうちグランド電極に設定された電極に導通されることは記載されていない。

また、異議申立人は、異議申立書第13頁第10?17行において、
「甲第2号証には、内部に、「フィルム」太陽電池を用い、前記「コンデンサー構造」を有する電子式の時計に係る甲2発明が記載されており(第10図等参照)、以下のとおり、本件特許発明1の構成1A?1Iが記載されている。そして、構成1Jについて明示の記載はないものの、かかる構成1Jは、甲第3号証又は甲第4号証に記載のように、電位が浮いてしまい得る部材を導通させて接地電位とさせる単なる周知慣用技術に過ぎず、かかる周知慣用技術を甲2発明において採用することは当業者にとって単なる設計的事項にすぎず、容易になし得たことである。」
と主張している。

しかしながら、上記のように甲2発明において、「金属製の太陽電池受板52」と「蓄電体」を導通するとの特定はなく、「金属製の太陽電池受板52」を、太陽電池の電極に接続される「蓄電体」の電極に導通させることは、想定できないので、異議申立人が分節した「構成1J」において「前記太陽電池案内板は、前記蓄電体の・・・電極に導通される」ことは、容易になし得たものとすることはできない。よって、異議申立人の前記主張を採用することはできない。

ウ 小括
よって、本件特許発明1は、本件の出願前に当業者が、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、容易になし得たものとすることができず、また、甲2発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、容易になし得たものとすることができない。

(2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1をさらに減縮したものであるから、本件の出願前に当業者が、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、容易になし得たものとすることができず、また、甲2発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、容易になし得たものとすることができない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし4は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということができず、同法第113条第2号により取り消すことができない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-05-09 
出願番号 特願2012-141723(P2012-141723)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G04C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 櫻井 仁  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 須原 宏光
関根 洋之
登録日 2016-07-08 
登録番号 特許第5962252号(P5962252)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 太陽電池付電子時計  
代理人 廣田 浩一  
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