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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 G21F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G21F
管理番号 1328130
審判番号 不服2016-11671  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-04 
確定日 2017-05-29 
事件の表示 特願2015- 37486「放射線遮蔽混合体及び放射線遮蔽材料」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日出願公開、特開2016-166739、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月26日の出願であって、同年12月3日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月4日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年4月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対して、同年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成29年3月3日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年3月15日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成29年3月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】吸水性ポリマーを主体とし、二水石膏(硫酸カルシウム)が混在せしめられている事を特徴とする放射線遮蔽混合体。」
なお、本願発明2ないし5は、いずれも、本願発明1をさらに減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 原査定において拡大された先願の地位を有する出願として引用された、特願2014-247263号(特開2015-129745号)の願書に最初に添付した明細書等には次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は放射線遮蔽材に関する。特に、公害面で問題がない材料を組み合わせた、充填性に優れ、且つ、γ線等の放射線の遮蔽性能を有する放射線遮蔽材に関する。」
「【0011】
本発明は、放射線遮蔽材に関する。本発明の放射線遮蔽材は、水と粘土鉱物粉末と硫酸バリウム粉末を少なくとも含む。」
「【0018】
放射線遮蔽材は、必要に応じて、高分子ポリマーや分散剤等の有機化合物、または石灰石、石膏、砂利等のコンクリート材やモルタル材等をさらに含んでいてもよい。但し、有機化合物は、長期間の使用においてはバクテリアなどによって分解し、製造直後の特性から変化することが懸念されるため、使用期間に注意する必要がある。」
「【0025】
また、放射線遮蔽材は、場合によって、さらに水中での分離を防ぐために、必要に応じて、メチルセルロース、グアガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アクリルアミド高分子化合物、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸高分子化合物の高分子化合物を加えてもよい。特に、アクリルアミド高分子化合物、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸高分子化合物は、耐温度、耐塩水機能に優れていることから好ましい。これらの配合量は、水100質量部に対し、好ましくは0.03?1.0質量部、より好ましくは0.1?0.5質量部である。0.03質量部より少ないと、有効な水中不分離機能を発揮できない場合がある。1.0質量部より多いと、粘性が高くなり過ぎて、容器への充填や打設することが困難となる場合がある。」

2 したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「水と粘土鉱物粉末と硫酸バリウム粉末を少なくとも含む放射線遮蔽材であって、必要に応じて、高分子ポリマーや分散剤等の有機化合物、または石灰石、石膏、砂利等のコンクリート材やモルタル材等をさらに含み、上記の高分子ポリマーは、メチルセルロース、グアガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アクリルアミド高分子化合物、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸高分子化合物のいずれかである放射線遮蔽材。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「カルボキシメチルセルロース」「アクリルアミド高分子化合物」などの「高分子ポリマー」が、本願発明1の「吸水性ポリマー」に相当し、引用発明の「石膏」と本願発明1の「二水石膏(硫酸カルシウム)」は、「石膏」である点で一致し、また、引用発明の「水と粘土鉱物粉末と硫酸バリウム粉末を少なくとも含」み「必要に応じて、高分子ポリマーや分散剤等の有機化合物、または石灰石、石膏、砂利等のコンクリート材やモルタル材等をさらに含」む「放射線遮蔽材」が、本願発明1の「放射線遮蔽混合体」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には次の一致点、相違点がある。
(一致点)
「吸水性ポリマー、及び石膏が混在せしめられている放射線遮蔽混合体。」
(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「吸水ポリマー」を「主体」としているのに対し、引用発明においては、「カルボキシメチルセルロース」「アクリルアミド高分子化合物」などの「高分子ポリマー」(本願発明1の「吸水ポリマー」に相当)を、必要に応じて含むものであり、これらを主体とするものではない点。
(相違点2)石膏が、本願発明1では「二水石膏(硫酸カルシウム)」であるのに対し、引用発明ではその点が明確でない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1について検討すると、ある成分が、部材において主体として含まれるか、必要に応じて含まれるかは、当該成分のその部材における技術的意味が全く異なるものであり、その違いが、単なる設計事項に基づくものといえないことは明らかであるから、上記の「吸水性ポリマーを主体とし」ているという発明特定事項を備えた本願発明1が実質的に引用発明と同一であるということはできない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、実質的に引用発明と同一であるということはできない。

2 本願発明2ないし5について
また、本願発明2ないし5についても、上記の相違点1に係る本願発明1の「吸水性ポリマーを主体とし」ているという発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様に、本願発明2ないし5は、実質的に引用発明と同一であるということはできない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし9に係る発明について、上記の特願2014-247263号(特開2015-129745号)の明細書等に記載された発明(すなわち、上記の引用発明)と実質的に同一であるから特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年3月15日付けの手続補正で補正された請求項1ないし5に係る発明(本願発明1ないし5)は、いずれも、「吸水性ポリマーを主体とし」ているという発明特定事項を備えるものとなっており、実質的に上記の特願2014-247263号(特開2015-129745号)の明細書等に記載された発明(引用発明)と同一であるということはできない。したがって、原査定を維持することができない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1ないし5の「吸水性ポリマー・・・・が混在せしめられ」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年3月15日付けの手続補正において、「吸水ポリマーを主体とし・・・混在せしめられ」(下線は補正箇所を示す)と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1ないし5の「組成物」の記載について、通常用いられる意味と異なる意味で用いられているため、請求項1ないし5に係る発明は明確でないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年3月15日付けの手続補正において、「混合体」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおりであり、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2015-37486(P2015-37486)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G21F)
P 1 8・ 16- WY (G21F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 孝平  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 昌哉
発明の名称 放射線遮蔽混合体及び放射線遮蔽材料  
代理人 畑 泰之  

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