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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
管理番号 1328163
審判番号 不服2014-21144  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-17 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2011-531149「HPMA-ドセタキセルまたはゲムシタビンコンジュゲートおよびその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月15日国際公開、WO2010/042638、平成24年 3月 1日国内公表、特表2012-505228〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成21年10月7日(パリ条約に基づく優先権主張 平成20年10月7日,アメリカ合衆国)にされたとみなされる特許出願であって,平成26年6月12日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年10月17日に拒絶査定不服審判が請求され,平成27年10月27日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由1」という。)が通知され,さらに平成28年4月19日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由2」という。)が通知されたものである。

第2 本願発明及び本件拒絶理由について
本願の請求項1?9に係る発明は,平成28年3月31日に補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
また,本件拒絶理由1及び本件拒絶理由2の内容は,本審決末尾に掲記のとおりである。

第3 むすび
請求人は,本件拒絶理由2に対して,指定期間内に特許法159条2項で準用する同法50条所定の意見書を提出するなどの反論を何らしていない。そして,本件拒絶理由2及び本件拒絶理由1中の理由3を覆すに足りる根拠は見いだせず,本願はこれら拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

以下,本件拒絶理由1及び本件拒絶理由2の内容を掲記する(本件拒絶理由通知1については,理由3に係る部分のみを抜粋する。)。

【本件拒絶理由1】

3)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第1 本願発明
この出願の請求項1?13に係る発明は,平成26年10月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(以下,「本願発明1?13」という)。…

第4 理由3/本願発明1?13
刊行物1:Proceeding of the American Association for Cancer Research Annual Meeting,2008年4月,Vol.49,p.84-85(Abstract#369)(前置報告書の引用文献A)
刊行物2:特開昭61-243026号公報

「第3 理由2」があることから,「第2のリンカー」は,HPMAと標的指向化リガンドとの間のリンカーを意味することを前提として判断する。

1 本願発明1,12,13
刊行物1には,転移性前立腺癌用の新たなポリマーコンジュゲートとして,HPMAコポリマー-アレンドロネート-ドセタキセルが記載されているものと認められる(特に,84頁下から14行?85頁5行参照。)。
また,抗癌剤(医薬)において,HPMAとリンカーとを共有結合させると共に,当該リンカーと抗癌剤とを共有結合させる技術は周知である(例えば,刊行物2)。
そうであれば,刊行物1記載の発明において,上記周知技術に基づき,HPMAコポリマーとリンカーとを共有結合させると共に,当該リンカーと抗癌剤であるドセタキセルとを共有結合させることに格別な困難性があるとは認められない。(側鎖にOH基を有するHPMAを,COOH基等を有さないがOH基を有する医薬の坦体分子とする場合,両者を共有結合させることは困難であることから,GFLG等のリンカーを使用して,HPMA-GFLGのCOOH基等と,薬剤のOH基とをエステル結合等で共有結合させるのが通常である。)
また,投与量は,具体化に際して適宜調整するものである。
そして,本願明細書等をみても,HPMA-ドセタキセルとの比較は記載されておらず,本願発明1,12,13の効果は格別でない。

2 本願発明2?11
リンカー,第2のリンカーの種類については,刊行物2参照。
また,医薬の担体分子に使用されるポリHPMAの分子量としては,100,000ダルトンから170,000ダルトンは通常の分子量である。
さらに,医薬組成物としては,薬学的に許容される担体又は希釈剤は通常の成分である。


【本件拒絶理由2】
1)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

1.本願発明
この出願の請求項1?9に係る発明は,平成28年3月31日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(以下,「本願発明1?9」という。)。

2.理由1
(1)本願発明1
本願発明1の「1回に,5?30mg/kg体重の化合物が投与されるように用いられる」という特定について,「1回に,・・・投与されるように用いられる」の意味内容が不明であるから,不明確である。
この点に関して,本願明細書の【0075】には,「E.用量 化合物の投与のための用量範囲は,送達が行われる所望の効果を十分にもたらす大きさのものである。用量は,望ましくない交差反応,アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほどの大きさであるべきではない。一般に,用量は,患者における年齢,状態,性別および疾患の程度によって変わり,当業者によって決定することができる。用量は,任意の使用禁忌の事象において個別の医師によって調整することができる。用量は,1日または数日間,1日1回または複数回の用量投与で約1mg/kgから30mg/kgまで変わり得る。」と記載されている。
上記特定の「1回」とは,1日1回を意味するのか,1日複数回における各回毎を意味するのか,その他を意味するのかが不明である。(その他を意味するなら,その意味内容が不明である。以下同様。)
そして,上記特定の「5?30mg/kg体重の化合物」の化合物は,化合物の一部の構成要素であるドセタキセルではなく,本願発明1の化合物(ポリHPMA-GFLG-ドセタキセル)を意味すると解されるが,上記特定は,1日1回,5?30mg/kg体重の本願発明1の化合物が投与されるように用いられることを意味するのか,1日複数回,各回毎に5?30mg/kg体重の本願発明1の化合物が投与されるように用いられることを意味するのか,その他を意味するのかが不明である。
したがって,本願明細書の記載を参酌しても,本願発明1の上記特定は不明確である。

(2)本願発明2?9
上記(1)で述べたのと同様の理由で,本願発明1を引用する本願発明2?9は不明確である。

3.理由2
(1)本願発明1
上記2.で指摘したように本願発明1の内容は不明確であるが,本願明細書の下記ア.?ウ.の記載が不明確であると共に,当該記載と本願発明1との関係も不明確であるから,本願明細書には,本願発明1が明確且つ十分に記載されているとはいえない。
ア.【0075】
本願発明1の化合物の用量について,「用量は,1日または数日間,1日1回または複数回の用量投与で約1mg/kgから30mg/kgまで変わり得る。」と記載されているから,「1日または数日間,1日1回または複数回」のうちのどの頻度で投与するとしても,総量で1mg/kgから30mg/kgであるということか,その他か。[用量の上限と下限は,それぞれ毒性,活性(【0016】等)と関係すると解されることに留意されたい。]
イ.実施例2
使用されているHPMA-GFLG-ドセタキセル及びHPMA-GFLG-ドセタキセル-葉酸におけるドセタキセル含有量が不明である。(表1のものを使用したとは記載されていない。また,表1ではHPMA-GFLG-ドセタキセルは2種類記載されている。)
また,表2の薬物当量のIC50(μM)のHPMA-GFLG-ドセタキセル及びHPMA-GFLG-ドセタキセル-葉酸の値は,ドセタキセルとしての値ではなく,HPMA-GFLG-ドセタキセル及びHPMA-GFLG-ドセタキセル-葉酸としての値ということか。
ウ.実施例3
使用されているHPMA-GFLG-ドセタキセル(【0017】参照)におけるドセタキセル含有量が不明である。
また,「マウスにリン酸緩衝食塩水(PBS)のみまたは本発明の薬物コンジュゲートを4?5日毎に静脈内注射した。」(【0125】)と記載され,図1,2で5?20mg/kg HPMA-DOC等の結果が示されているが,その結果が,HPMA-GFLG-ドセタキセルの4?5日毎の用量が総量で5?20mg/kgであることによる結果か,HPMA-GFLG-ドセタキセルの4?5日毎の用量が各回で5?20mg/kgであることによる結果か,その他による結果であるのかが不明である。

(2)本願発明2?9
上記(1)で述べたのと同様の理由で,本願明細書には,本願発明1を引用する本願発明2?9が明確且つ十分に記載されているとはいえない。

[付記]
1.上記理由1,2があることから,平成27年10月27日付け拒絶理由通知書の理由3(特許法第29条第2項)の判断は保留しています。[平成28年3月31日付け意見書で参考資料が示されていますが,参考資料ではポリHPMA-GFLG-ドセタキセルとポリHPMA-ドセタキセル(刊行物1参照)との比較は示されていません。]
 
審理終結日 2016-11-30 
結審通知日 2016-12-06 
審決日 2016-12-19 
出願番号 特願2011-531149(P2011-531149)
審決分類 P 1 8・ 121- WZF (A61K)
P 1 8・ 537- WZF (A61K)
P 1 8・ 536- WZF (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 樹理  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 須藤 康洋
小川 慶子
発明の名称 HPMA-ドセタキセルまたはゲムシタビンコンジュゲートおよびその使用  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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