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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1328195
審判番号 不服2015-20730  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-20 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2014-544979「インターリーブを実行するためのシステム,方法,およびデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日国際公開,WO2013/082604,平成27年 3月 5日国内公表,特表2015-507390〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年12月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年12月2日 米国,2011年12月7日 米国,2012年3月28日 米国,2012年8月15日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年8月28日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年11月20日に拒絶査定不服審判が請求がされ,同時に手続補正がされたものである。



第2 補正の却下の決定
[結論]
平成27年11月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
平成27年11月20日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成27年7月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「符号化データをインターリーブし,一連のインターリーブされたビットを出力するように構成されたインターリーバであって,前記インターリーバが,第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応する複数のストリームインターリーバを備え,前記複数のストリームインターリーバが,
ブロックサイズ24と,
インターリーバ深度8と,
前記第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応するインターリーブされたローテーションインデックス0,2,1,3と,
ベースサブキャリアローテション2と,
に基づいてインターリーブを実行するように,ここにおいて,前記インターリーブに関する前記第1,第2,第3,および第4の空間ストリームのサブキャリア回転がそれぞれ0,4,2,および6である,
構成された,インターリーバと,
前記4つの空間ストリーム中に含まれる前記インターリーブされたビットを送信するように構成された送信モジュールと
を備えるワイヤレス通信装置。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「符号化データをインターリーブし,一連のインターリーブされたビットを出力するように構成されたインターリーバであって,前記インターリーバが,第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応する複数のストリームインターリーバを備え,前記複数のストリームインターリーバが,
ブロックサイズ24と,
インターリーバ深度8と,
前記第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応するインターリーブされたローテーションインデックス0,2,1,3と,
ベースサブキャリアローテション2と,
に基づいてインターリーブを実行するように,ここにおいて,前記インターリーブに関する前記第1,第2,第3,および第4の空間ストリームのサブキャリア回転がそれぞれ0,4,2,および6である,
構成された,インターリーバと,
前記4つの空間ストリーム中に含まれる前記インターリーブされたビットを送信するように構成された送信モジュール,ここにおいて,送信される前記ビットはBPSK1/2変調方式,QPSK1/2変調方式,16QAM1/2変調方式又は64QAM2/3変調方式を含む変調方式で変調される,と
を備えるワイヤレス通信装置。」([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。


2 補正の適否
(1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
請求項1についての上記補正は,本願発明の「送信」される「ビット」について,「ここにおいて,送信される前記ビットはBPSK1/2変調方式,QPSK1/2変調方式,16QAM1/2変調方式又は64QAM2/3変調方式を含む変調方式で変調される」との限定を付して,特許請求の範囲を減縮するものであるから,当該補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。
独立請求項である請求項9,17?19,25,32?34,36についての補正も,請求項1についての上記補正と同様である。
また,これらの補正は,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。

(2)独立特許要件
請求項1についての上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。

ア 補正後の発明
(ア)補正後の発明
補正後の発明は,上記「1 本願発明と補正後の発明」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。

(イ)補正後の発明の優先日について
補正後の発明は,「ベースサブキャリアローテション2と,」なる発明特定事項を備えるものである。そして,当該事項は,発明の詳細な説明の【0072】の「24個のデータトーンの場合,ベースサブキャリアローテションN_(ROT)は,floor(24/4)=6,floor(24/5)=4,floor(24/3)=8などであり得る。24個のデータトーンについて最適化されるために,回転N_(ROT)は,値2,3,4,5,6,7,8,および9のグループから選定され得る。」等の記載を根拠とするものである。
しかしながら,2011年12月2日の優先権主張に係る米国仮出願61/566,582には,その[0075]に「For 24 data tones, the base subcarrier rotation N_(ROT) may be the floor(24/4)=6, floor(24/5)=4, floor(24/3)=8 and so on. To be optimized for 24 data tones the rotation N_(ROT) may be chosen from the group of values 3, 4, 5, 6, 7, 8, and 9. 」と記載されているように,N_(ROT)=2は除外されている。[0081],[0082],FIG.7,FIG.8にも同様に記載があり,いずれもN_(ROT)=2は除外されており,N_(ROT)=2の根拠となる記載は存在しない。
また,2011年12月7日の優先権主張に係る米国仮出願61/568,083にも,その[0088],[00108],[00109],FIG.19,FIG.20に,上記米国仮出願61/566,582と同様の記載があり,いずれもN_(ROT)=2は除外されており,N_(ROT)=2の根拠となる記載は存在しない。
一方,2012年3月28日の優先権主張に係る米国仮出願61/616,686にはその[0084]に「For 24 data tones, the base subcarrier rotation N_(ROT) may be the floor(24/4)=6, floor(24/5)=4, floor(24/3)=8 and so on. To be optimized for 24 data tones the rotation N_(ROT) may be chosen from the group of values 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, and 9. 」と記載され,[00101],[00102],FIG.14,FIG.15にも「・・・a block size of twenty four, an interleaver depth of eight, interleaved rotation indexes of 0, 2, 1, 3 corresponding to up to four spatial streams, and a base subcarrier rotation of two.」と記載され,N_(ROT)=2の根拠となる記載が存在する。
したがって,「ベースサブキャリアローテション2と,」なる発明特定事項を備える補正後の発明には,2011年12月2日及び2011年12月7日の優先権は認められず,その最先の優先日は2012年3月28日と認める。

イ 引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用されたHongyuan Zhang (Marvell), et al.,11ah Data Transmission Flow([当審仮訳]:11ah データ送信フロー),IEEE802.11-11/1484r1,2011年11月8日(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「11ah Data Transmission Flow
Date: 2011-11-07
(中略)
Abstract
This presentation proposes the data transmission flows for 11ah PPDUs, including 1MHz, 2MHz, and 4/8/16MHz packets.

Overview
・TGah decided to have 2/4/8/16MHz signals that are basically down clocked versions of 11ac 20 /40/80/160 MHz, also an 1MHz signal based on 32FFT was introduced.
-Both 2MHz and 1MHz receptions are mandatory.
・We propose the 11ah data transmission flow in this presentation.
-Flow for regular MCS.
-Flow for a new MCS0- 2x Repetition mode for range extension.

I. Transmission Flow for Regular MCSs
・Apply the same Tx flow as in 11ac in the data tones.



Discussions
・Each block is the same as or similar to the corresponding part of 11ac.
・Up to 4 space-time streams (refer to [3]).
・Regular MCS table is the same as 11ac, therefore 256QAM rates are optionally supported (MCS 8, 9 in 11ac).
(中略)

」(スライド1?5,9)
([当審仮訳]:
11ah データ送信フロー
日付:2011年11月7日
(中略)
要約
この説明は,1MHz,2MHz及び4/8/16MHzパケットを含む,11ahのPPDUsのためのデータ送信フローを提案する。

大要
・TGahは,基本的に11acの20/40/80/160MHzのクロックが低減されたバージョンである2/4/8/16MHz信号を持つことを決定し,また32FFTに基づく1MHz信号も導入された。
- 2MHz及び1MHzの受信はともに必須。
・本説明では11ahデータ送信フローを提案する。
- 通常のMCSのためのフロー
- 範囲拡大のための新たなMCS0-2x受信モードのためのフロー

I.通常のMCSのための送信フロー
・データトーンにおいて11acと同様の送信フローを適用する。
(図は省略。)

検討事項
・各ブロックは,11acの対応する部分と同一又は類似。
・4空間-時間ストリームまで( [3]参照。)
・通常のMCSテーブルは11acと同じ。そのため,256QAMレートはオプションでサポートされる(11acのMCS8,9)。
(中略)
(シミュレーション結果のグラフは省略。) )

上記(ア)の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると,
a 引用例は無線LANの仕様であるIEEE802.11ahに係る提案文書であり,引用例の図にはワイヤレス通信装置の送信フローが描かれていることは自明である。

b 引用例の図から,FECエンコーダにより符号化された符号化データが,複数のインターリーバでインターリーブされることが見てとれる。そして,インターリーバが,一連のインターリーブされたビットを出力することは,明らかである。
したがって,引用例には「符号化データをインターリーブし,一連のインターリーブされたビットを出力するように構成された複数のインターリーバ」が記載されていると認められる。

c 上記(ア)の記載によれば,引用例の図に示されたものは32FFTに基づく1MHz信号を送信し得るものと認められる。そして,引用例のシミュレーション結果のグラフは,データトーン数24,インターリーバにおけるN_(COL)が8の場合を仮定していることが見てとれる。
ここで,インターリーバのブロックサイズは,N_(COL)とN_(ROW)とにより規定されるビット数に対応するところ,これはデータトーン数*N_(BPSC)(データトーン当たりの符号化されたビットの数)と表現できることは明らかであるから,引用例のインターリーバはデータトーン数24に対応するサイズを有しているといえる。

d 引用例の図の「Constellation mapper」,「IDFT」,「Insert GI and Window」,「Analog and RF」等は,「インターリーブされたビットを送信するように構成された送信モジュール」といえる。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「符号化データをインターリーブし,一連のインターリーブされたビットを出力するように構成された複数のインターリーバを備え,前記複数のインターリーバが,
データトーン数24に対応するサイズと,
N_(COL)8と,
に基づいてインターリーブを実行するように,構成された,インターリーバと,
前記インターリーブされたビットを送信するように構成された送信モジュール
を備えるワイヤレス通信装置。」


原査定の拒絶の理由に引用された,補正後の発明の最先の優先日である2012年3月28日より前に公知となったRon Porat (Broadcom) et al.,IEEE802.11-12/0369r0,32FFT-MIMO-Interleaver([当審仮訳]:32FFT-MIMO-インターリーバ),2012年3月12日(以下,「公知例」という。)には,以下の事項が記載されている。

(イ)「32FFT MIMO Interleaver
Date: 2012-03-12
(中略)
Outline
・The value of Ncol used for one spatial stream in the 32FFT interleaver was accepted in contribution 11-12-0113-00-00ah-32FFT-Interleaver.pptx
・In this contribution we provide simulation results for determining the value of Nrot used for MIMO spatial multiplexing
(中略)
Simulation Assumptions
・5000 channel realizations
・256byte packet, ideal receiver, 2x2 with 2 spatial streams and 4x4 with 4 spatial streams configurations
・Nrot=1:13
・Ncol=8
・2 channel models
-SCM Urban Micro, SCM Urban Macro
(中略)
MCS7
・Gaps between good Nrot values and bad are larger in this case.
・Nrot=2 best option
(中略)
Conclusions
Several values possible, Nrot=2 is the best choice for the important case of MCS7 enabling spatial multiplexing at high SNR 」(スライド1,4,5,9,10)
([当審仮訳]:
32FFT MIMO インターリーバ
日付:2012年3月12日
(中略)
大要
・32FFTインターリーバにおいて1つの空間ストリームのために使用されるN_(COL)の値は,11-12-0113-00-00ah-32FFT-Interleaver.pptxの寄稿において承認された。
・本寄稿では,MIMO空間多重化のために使用されるN_(ROT)の値を決定するためのシミュレーション結果を提供する。
(中略)
シミュレーションの仮定
・5000チャネルの実現
・256バイトパケット,理想的な受信機,2つの空間ストリームの2×2及び4つの空間ストリームの4×4構成
・N_(ROT)=1:13
・N_(COL)=8
・2チャネルモデル
-SCMSアーバンマイクロ,CMアーバンマクロ
(中略)
MCS7
・本ケースでは,良好なN_(ROT)の値と良くないN_(ROT)の値とのギャップが大きい
・N_(ROT)=2が最も良い
(中略)
結論
いくつかの値が可能であり,N_(ROT)=2は,高SNRで空間多重化を可能とするMCS7の重要なケースにとって最良の選択である。」(2?3頁)

上記(イ)の記載及びこの分野の技術常識を考慮すると,
「様々ケースにおけるシミュレーション結果に基づいてN_(ROT)等のパラメータの値を決定すること。」は普通に行われていることであり,公知例には,「32FFTインターリーバにおいて1つの空間ストリームのために使用されるN_(COL)の値が8であるとき,所定の条件ではN_(ROT)=2は最良となることがある。」ことが記載されていると認められる。


補正後の発明の最先の優先日である2012年3月28日より前の2009年に策定された,MIMO-OFDMを用いる無線LANの仕様であるIEEE802.11n(以下,「周知例1」という。)には,以下の事項が記載されている。

(ウ)「20.3.11.7.3 Frequency interleaver
(中略)

」(294,295ページ頁)
([当審仮訳]:
20.3.11.7.3 周波数インターリーバ
(中略)
17節のインターリーバに基づく操作が適用された後,1つ以上の空間ストリームが存在する場合,追加の空間ストリームに対して周波数ローテーションと呼ばれる第3の操作が適用される。周波数ローテーションのためのパラメータはN_(ROT)である。
インターリービングは3つの置換を用いて定義される。第2の置換は(20-46)式に示される規則により定義される。
((20-46)式は省略。)
第2の置換は(20-47)式に示される規則により定義される。
((20-47)式は省略。)
s(i_(SS)) の値は,(20-48)式に示されるように,サブキャリア当たりの符号化されたビットの数により決定される。
((20-48)式は省略。)
1つ以上の空間ストリームが存在する場合,(20-49)式に示されるように,第2の置換の出力に周波数ローテーションが適用される。
((20-49)式は省略。)
ここで,i_(SS)=1,2,・・・,N_(SS)は,このインターリーバが操作する空間ストリームのインデックスである。)


原査定にて引用されたSudhir Srinivasa (Marvell) et al.,11ac 80MHz Transmission Flow([当審仮訳]:11ac 80MHz送信フロー),IEEE802.11-10/0548r2,2010年5月17日(以下,「周知例2」という。)には,以下の事項が記載されている。

(エ)「11ac 80MHz Transmission Flow
Date: 2010-05-17
(中略)
Frequency Interleaver for 80MHz
・Same interleaver structure as 11n, i.e. 3 permutations (characterized by three parameters N_(ROW), N_(COL) and N_(ROT))
(中略)
・We also propose to define N_(ROT) as below:
-When N_(SS) <=4: N_(ROT) = floor(234/4)=58, so cyclic shift [0, 2N_(ROT)*N_(BPSCS), N_(ROT)*N_(BPSCS), 3N_(ROT)*N_(BPSCS)]) for N_(SS)=1,2,3,4 respectively.
(中略)
Conclusions
(中略)
・Summarizing our proposed parameters:
-Encoder Parser with 1 bit round-robin, equal number of bits per encoder.
-Same stream parser as in 11n
-Interleaver: N_(COL)=26; for N_(ss<)=4, N_(ROT)= 58 and [0 2 1 3]* N_(ROT) cyclic permutation is applied for each stream, as in 11n.
(中略)
・Do you support adding the following to the specification framework document (11-09/0992, Section 3.2.4.x (VHT Data Field)):
(中略)
-The cyclic shifts applied on the different streams are given by [0 2 1 3]* N_(ROT), identical to 11n 」(スライド1,8,9,12)
([当審仮訳]:
11ac 80MHz送信フロー
日付:2010年5月17日
(中略)
80MHzのための周波数インターリーバ
・11nと同様のインターリーバ構造,すなわち,3つの置換(3つのパラメータN_(ROW),N_(COL)及びN_(ROT)により特徴付けられる。)
(中略)
・N_(ROT)を次のように定義することも提案する。
-N_(SS)<=4の場合:N_(ROT)=floor(234/4)=58,そしてN_(ss)=1,2,3,4のそれぞれに対して,巡回置換[0,2N_(ROT)*N_(BPSCS),N_(ROT)*N_(BPSCS),3N_(ROT)*N_(BPSCS)]
(中略)
結論
(中略)
・提案されたパラメータを要約すると,
-1ビットラウンドロビンで,エンコーダ当たり同じ数のビットとする,エンコーダパーサ
-11nと同一のストリームパーサ
-インターリーバ;11nと同様に,N_(COL)=26,N_(SS)<=4のためにN_(ROT)=58及び各ストリームに対して[0 2 1 3]*N_(ROT)の巡回置換が適用される。
・次の仕様フレームワーク文書(11-09/0992, Section 3.2.4.x (VHT Data Field))が追加されることを指示しますか?
-異なるストリームに適用されるサイクリックシフトは,11nと同じく,[0 2 1 3]*N_(ROT)で与えられる。

上記(ウ),(エ)の記載及びこの分野の技術常識を考慮すると,「MIMO-OFDMを用いる無線LANでは,インターリーバにおいて,周波数ローテーションを第3の置換とする3つの置換操作がなされる。」ことは技術常識である。なお,本願明細書【0068】?【0070】に開示された【数1】?【数3】は,当該3つの置換を定義する周知例1の各数式と同一である。
そして,第3の置換である周波数ローテーションを定義する数式中の「(j-(((i_(SS)-1)×2)mod3+3×floor((i_(SS)-1)/3)))」は,i_(SS)=1では0,i_(SS)=2では2,i_(SS)=3では1,i_(SS)=4では3となり,これを「[0 2 1 3]」と表現していることがみてとれる。したがって,周波数ローテーションを定義する数式全体によれば,「4つの各ストリームに適用されるサイクリックシフトが[0 2 1 3]*N_(ROT)となる。」ことも技術常識である。


同じく補正後の発明の最先の優先日である2012年3月28日より前に公知となったRobert Stacey et al.,Specification Framework for TGac,IEEE 802.11-09/0992r21,2011年1月(以下,「周知例3」という。)には,以下の事項が記載されている。

(オ)「Specification Framework for TGac
Date: 2011-01-19
(中略)
3.3 Modulation and coding scheme (MCS)
(中略)


」(1,25ページ)
([当審仮訳]:TGacのための仕様フレームワーク
日付:2011年1月19日
(中略)
3.3 変調及び符号化スキーム(MCS)
(中略)
(表は省略。) )

引用例の上記(ア)には「MCSテーブルは11acと同じ」と記載されているところ,例えば上記(オ)にも示されているように,本件優先日において検討中であったIEEE802.11acにおけるMCSには,BPSK1/2変調方式(MCS0),QPSK1/2変調方式(MCS1),16QAM1/2変調方式(MCS3),64QAM2/3変調方式(MCS5)が含まれることは技術常識である。

ウ 対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると,
(ア)引用例の図には4つのインターリーバが記載されているから,引用発明の「複数のインターリーバ」を「インターリーバが第1,第2,第3,および第4の複数のインターリーバを備える」と称することは任意である。したがって,補正後の発明と引用発明のインターリーバとは,下記の相違点1は別として,「符号化データをインターリーブし,一連のインターリーブされたビットを出力するように構成されたインターリーバであって,前記インターリーバが,第1,第2,第3,および第4の複数のインターリーバを備える」点で共通している。

(イ)本願明細書の【0006】,【0059】,【0065】,【0072】,【0075】,【0076】等の記載を参酌すると,補正後の発明は,1MHz内で32個の直交サブキャリアが利用可能であり,その中の24個のサブキャリア(データトーン)がデータを送信するために使用され得る,1MHzOFDM-MIMO送信を前提としているものと理解され,当該理解は請求項1を引用する請求項4,5の構成に整合するものである。そして,インターリーバのブロックサイズはN_(COL)とN_(ROW)とにより規定されるビット数に対応するところ,これはデータトーン数*N_(BPSC)と表現できることは明らかであることに鑑みれば,補正後の発明の「ブロックサイズ24」は「データトーン数24」を含んでいることは明らかである。してみると,補正後の発明の「ブロックサイズ24」と引用発明の「データトーン数24に対応するサイズ」とは,表現が異なるのみであって差異は無い。
また,本願明細書の【0061】の「N_(COL):インターリーバ列の数またはインターリーブ深さ(I_(DEPTH))」との記載によれば,補正後の発明の「インターリーバ深度8」と引用発明の「N_(COL)8」とは,表現が異なるのみであって差異は無い。

(ウ)本願の請求項1を引用する請求項4を参酌すると,補正後の発明の「送信モジュール」は,1MHzMIMO-OFDM送信をするように構成されたものを含むものであり,また,本願明細書の【0103】によれば,「送信モジュール」は,コンスタレーションマッパー,変調器,IDFT,デジタルアナログ変換器,増幅器,アンテナおよび他の構成要素を含み得るものである。
一方,引用発明の「送信モジュール」は,引用例の記載によれば,IEEE802.11ahの1MHz送信を行うものであり,「Constellation mapper」,「IDFT」,「Insert GI and Window」,「Analog and RF」等からなるものである。
したがって,引用例の「送信モジュール」は,補正後の発明の「送信モジュール」に相当する。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「符号化データをインターリーブし,一連のインターリーブされたビットを出力するように構成されたインターリーバであって,前記インターリーバが,第1,第2,第3,および第4の複数のインターリーバを備え,前記複数のストリームインターリーバが,
データトーン数24と,
インターリーバ深度8と,
である,
構成された,インターリーバと,
前記インターリーブされたビットを送信するように構成された送信モジュールと
を備えるワイヤレス通信装置。」

(相違点1)
一致点の「符号化データをインターリーブし,一連のインターリーブされたビットを出力するように構成されたインターリーバであって,前記インターリーバが,第1,第2,第3,および第4の複数のインターリーバを備え」に関し,補正後の発明のインターリーバは「第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応する複数のストリームインターリーバ」であるのに対し,引用発明の「複数のインターリーバ」は「第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応する」ことが明らかでない点。

(相違点2)
補正後の発明は「前記第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応するインターリーブされたローテーションインデックス0,2,1,3と,ベースサブキャリアローテション2と,に基づいてインターリーブを実行するように,ここにおいて,前記インターリーブに関する前記第1,第2,第3,および第4の空間ストリームのサブキャリア回転がそれぞれ0,4,2,および6である」との構成を有するのに対し,引用発明は当該構成が明らかでない点。

(相違点3)
補正後の発明は,「送信される前記ビットはBPSK1/2変調方式,QPSK1/2変調方式,16QAM1/2変調方式又は64QAM2/3変調方式を含む変調方式で変調される」との構成を有するのに対し,引用発明は当該構成が明らかでない点。

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1)について
引用例の図には,「Constellation mapper」と「IDFT」との間に時空間符号化(STBC)に係る「STBC」,「CSD」,「Spatial Mapping」が描かれている。しかしながら,引用例には当該図に関して「データトーンにおいて11acと同様の送信フローを適用する。」とも記載されている(上記イ(ア)参照。)ところ,本件優先日当時検討中の802.11acではSTBCはオプションであることは当業者における技術常識であるから,時空間符号化(STBC)に係る構成を省略して,「インターリーバ」が,「第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応する複数のストリームインターリーバを備え」るようにすることは,当業者が容易になし得ることである。
そして,それに伴い,「送信モジュール」が「前記4つの空間ストリーム中に含まれる前記インターリーブされたビットを送信するように構成され」ることも,自ずと導出されることにすぎない。

(相違点2)について
上記イで述べたとおり,「MIMO-OFDMを用いる無線LANでは,インターリーバにおいて,周波数ローテーションを第3の置換とする3つの置換操作がなされる。」ことは技術常識であり,周波数ローテーションはパラメータN_(ROT)により特徴付けられるところ,第3の置換の定義式から「4つの各ストリームに適用されるサイクリックシフトが[0 2 1 3]*N_(ROT)となる。」ことも技術常識である。
そして,公知例にも示されるように,「様々ケースにおけるシミュレーション結果に基づいてN_(ROT)等のパラメータの値を決定すること。」は普通に行われていることであるところ,「32FFTインターリーバにおいて1つの空間ストリームのために使用されるN_(COL)の値が8であるとき,所定の条件ではN_(ROT)=2は最良となることがある。」ことが公知である。
してみれば,パラメータを決定するために種々のケースにおけるシミュレーションを行うことは当業者における通常の創作の発揮にすぎず,その結果に基づいてN_(ROT)を2とすることは,格別困難なことでなく適宜なし得ることに過ぎない。
そして,上述のように「4つの各ストリームに適用されるサイクリックシフトが[0 2 1 3]*N_(ROT)となる。」ことが技術常識であるから,N_(ROT)が2の場合,「前記第1,第2,第3,および第4の4つの空間ストリームに対応するインターリーブされたローテーションインデックス0,2,1,3と,ベースサブキャリアローテション2と,に基づいてインターリーブを実行するように,ここにおいて,前記インターリーブに関する前記第1,第2,第3,および第4の空間ストリームのサブキャリア回転がそれぞれ0,4,2,および6である」となることは,当然のことにすぎない。

(相違点3)について
引用例に「通常のMCSテーブルは11acと同じ。」と記載されているところ,「本件優先日において検討中であったIEEE802.11acにおけるMCSには,BPSK1/2変調方式(MCS0),QPSK1/2変調方式(MCS1),16QAM1/2変調方式(MCS3),64QAM2/3変調方式(MCS5)が含まれる。」ことは技術常識であるから,引用発明もこれらのMCSを想定していると解するのが自然であるし,「送信される前記ビットはBPSK1/2変調方式,QPSK1/2変調方式,16QAM1/2変調方式又は64QAM2/3変調方式を含む変調方式で変調される」ようにすることは容易になし得ることである。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明及び公知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり,補正後の発明は,引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3 結語
したがって,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1 本願発明
(ア)本願発明
平成27年11月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

(イ)本願発明の優先日について
本願発明は,「ベースサブキャリアローテション2と,」なる発明特定事項を備えるものであるから,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ア 補正後の発明」の項中の「(イ)補正後の発明の優先日について」にて述べた理由と同様の理由で,本願発明には,2011年12月2日及び2011年12月7日の優先権は認められず,その最先の優先日は2012年3月28日と認める。


2 引用発明
引用発明及び周知事項は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用発明等」の項で認定したとおりである。


3 対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び公知技術に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。


4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-05 
結審通知日 2016-12-06 
審決日 2016-12-20 
出願番号 特願2014-544979(P2014-544979)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 575- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 速水 雄太藤江 大望  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 菅原 道晴
萩原 義則
発明の名称 インターリーブを実行するためのシステム、方法、およびデバイス  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 奥村 元宏  
代理人 福原 淑弘  

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