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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62H
管理番号 1328204
審判番号 不服2016-2523  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-19 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2013-533164号「二輪車用転倒防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日国際公開、WO2012/049103、平成25年10月28日国内公表、特表2013-539733号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年10月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年10月15日、フランス)を国際出願日とする出願であって、平成27年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年7月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成28年2月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年2月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年2月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成28年2月19日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであり、補正前後の請求項1の記載は次のとおりである。
なお、下線部は補正箇所を示す。

ア 本件補正前の請求項1の記載
「【請求項1】
タイヤを備えた二輪車(1)用の転倒防止装置(2)であって、
前記二輪車の重心(G)は、中心O及び半径Rの円形軌道に沿って速度Vで動き、前記重心(G)を含む前記二輪車の中間平面(P)は、前記軌道に接する垂直面(XG)とキャンバ角(C)をなし、前記キャンバ角(C)は、前記二輪車の速度Vにつれて増大すると共にゼロ角度と前記二輪車を転倒させる前記タイヤの横方向グリップの失われる下限としての制限角度(C_(lim))との間で可変であり、前記転倒防止装置(2)は、前記軌道に対して前記二輪車の内側に側方に取り付けられ、前記速度Vが増大すると、前記キャンバ角(C)を厳密に前記制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に制限する転倒防止装置(2)において、
前記転倒防止装置(2)は、中心(G_(1))をもつ安全ホイール(3)を有し、前記安全ホイールの中間平面(P_(1))は、路面の上方に位置し前記最大角度(C_(max))とは最大5°まで異なる角度(a)をなす直線に沿って前記二輪車の前記中間平面(P)と交差し、前記転倒防止装置(2)は、前記最大角度(C_(max))を調節する手段(4)及び前記安全ホイール(3)と前記二輪車(1)との間のリンク手段(5)を更に備え、
前記転倒防止装置(2)は、前記二輪車の前記中間平面(P)に対する前記キャンバ角(C)が厳密に前記制限角度(C_(lim))よりも大きい前記最大角度(C_(max))に制限されるように、前記安全ホイール(3)が前記二輪車に対して設けられている、
ことを特徴とする二輪車(1)用転倒防止装置(2)。」

イ 本件補正後の請求項1の記載
「【請求項1】
タイヤを備えた二輪車(1)用の転倒防止装置(2)であって、
前記二輪車の重心(G)は、中心O及び半径Rの円形軌道に沿って速度Vで動き、前記重心(G)を含む前記二輪車の中間平面(P)は、前記軌道に接する垂直面(XG)とキャンバ角(C)をなし、前記キャンバ角(C)は、前記二輪車の速度Vにつれて増大すると共にゼロ角度と前記二輪車を転倒させる前記タイヤの横方向グリップの失われる下限としての制限角度(C_(lim))との間で可変であり、前記転倒防止装置(2)は、前記軌道に対して前記二輪車の内側に側方に取り付けられ、前記速度Vが増大すると、前記キャンバ角(C)を厳密に前記制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に制限する転倒防止装置(2)において、
前記転倒防止装置(2)は、中心(G_(1))をもつ安全ホイール(3)を有し、前記安全ホイールの中間平面(P_(1))は、路面の上方に位置し前記最大角度(C_(max))とは最大5°まで異なる角度(a)をなす直線に沿って前記二輪車の前記中間平面(P)と交差し、前記転倒防止装置(2)は、前記最大角度(C_(max))を調節する手段(4)及び前記安全ホイール(3)と前記二輪車(1)との間のリンク手段(5)を更に備え、
前記転倒防止装置(2)は、前記二輪車の前記中間平面(P)に対する前記キャンバ角(C)が厳密に前記制限角度(C_(lim))よりも大きい前記最大角度(C_(max))に制限されるように、前記安全ホイール(3)が前記二輪車に対して設けられ、
前記転倒防止装置(2)は、前記制限角度(C_(lim))を測定するために利用されるものである、
ことを特徴とする二輪車(1)用転倒防止装置(2)。

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無について
本件補正による請求項1に係る補正は、補正前の請求項1に係る発明に「前記転倒防止装置(2)は、前記制限角度(C_(lim))を測定するために利用されるものである」との事項を付加し、転倒防止装置の用途を特定するものであり、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、上記の補正により付加された事項は、明細書(翻訳文。以下、単に「明細書」という。)の段落【0012】に記載されているので、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3.独立特許要件について
上記のとおり、本件補正の請求項1に関する補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.イ」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。

(2)引用文献に記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願平4-90491号(実開平7-43132号)のCD-ROM(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。

「【要約】
【目的】 オートバイの運転訓練に必要な「転倒」を安全に体験させるため、車体の左右に取り付ける補助輪装置である。
【構成】 車体のほぼ中心、エンジン部の外側に左右対称に取り付ける。車体に取り付けられたフレームに、アームとダンパーを可動軸で接続させ、アームの先端の車輪が接地した時にライダーとオートバイを支える構造にした。ダンパーとアーム部の接続金具は可動式で、オートバイの保持角度を目的に応じて変えられる。」

「【図面の簡単な説明】
【図1】 この考案の斜視図(一対の片側)である。
【図2】 この考案をオートバイへ装着し、走行中の図である。
【図3】 転倒状態になって、この考案が作動している状態の図である。」

「【考案の詳細な説明】
この考案はオートバイの転倒防止のための装置に関するものである。
従来、オートバイ(原動機付二輪車・自動二輪車)の安全な運転方法を体得するために、「転倒」を体験することは有効な方法の一つである、という一般的な認識はあったが、負傷等の危険が伴うために実施は困難であった。
この考案は、オートバイが転倒する状態になっても、車体に取り付けられ左右に張り出したフレーム(1)とアーム(2)、その先端に付けた車輪(4)によって転倒を防げるようにした。フレームに装着したダンパー(3)(またはスプリング)によって衝撃を吸収し、ライダーと車体への影響を軽減させた。又、アームとダンパーの接続金具(5)の位置で、オートバイの傾斜保持角度を調節可能にした。
この考案の装置を付けたオートバイを走行させ、転倒するような条件を「意識的」に与えることにより、ライダーは様々な条件による転倒の瞬間を「安全に」体験することができる。また、この考案を使用した訓練により、ブレーキの調節や体勢の立て直し方で転倒を防ぐ、安全運転技術を修得することができる。
この考案を次のような場でオートバイの訓練に使用することにより、交通事故防止及び安全運転技術向上の効果を上げることができる。
◇普通路面での制動訓練
◇スキッド(スリップ)し易い路面での制動やカーブの訓練
◇低速での安定走行の訓練
◇カーブの種類に合った体重移動の訓練
◇初心者の走行訓練」

以上の記載事項からみて、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
〔引用発明〕
「オートバイの運転訓練に必要な転倒を安全に体験させるための、車体の左右に取り付ける補助輪装置であって、
車体に取り付けられ左右に張り出したフレーム1に、アーム2とダンパー3を可動軸で接続させ、アーム2の先端に車輪4を付け、
アーム2とダンパー3の接続金具5の位置で、オートバイの傾斜保持角度を調節可能にし、
オートバイが転倒する状態になっても車輪4がライダーとオートバイを支えるようにした、
カーブの訓練に使用可能な、補助輪装置。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。

なお、本願補正発明の第4段落の「前記二輪車の前記中間平面(P)に対する前記キャンバ角(C)」との事項は、第2段落の「前記重心(G)を含む前記二輪車の中間平面(P)は、前記軌道に接する垂直面(XG)とキャンバ角(C)をなし」との事項と整合するように、「前記軌道に接する垂直面(XG)に対する前記キャンバ角(C)」、あるいは単に「前記キャンバ角(C)」と理解して検討する。
後記「第3」で検討する本願発明についても同様である。


後者の「オートバイ」は、前者の「タイヤを備えた二輪車」に相当する。

後者の「オートバイの運転訓練に必要な転倒を安全に体験させるための、車体の左右に取り付ける補助輪装置」は、オートバイが転倒する状態になっても車輪4がライダーとオートバイを支えるようにしたものであり、転倒した状態となるのを防ぐものであるので、前者の「タイヤを備えた二輪車用の転倒防止装置」に相当する。

前者の「二輪車の重心(G)は、中心O及び半径Rの円形軌道に沿って速度Vで動き、前記重心(G)を含む前記二輪車の中間平面(P)は、前記軌道に接する垂直面(XG)とキャンバ角(C)をなし、前記キャンバ角(C)は、前記二輪車の速度Vにつれて増大すると共にゼロ角度と前記二輪車を転倒させる前記タイヤの横方向グリップの失われる下限としての制限角度(C_(lim))との間で可変であ」ることは、通常の二輪車のカーブでの旋回の状況を述べたに過ぎず、技術常識といえる。
そうすると、後者の「オートバイ」も、前者の上記事項を備えているといえる。

後者の「補助輪装置」を「車体の左右に取り付ける」ことは、前者の「転倒防止装置は、前記軌道に対して二輪車の内側に側方に取り付けられ」ることと、「転倒防止装置は、二輪車の側方に取り付けられ」る限りにおいて一致する。

後者の「オートバイの運転訓練に必要な転倒を安全に体験させるための」「補助輪装置」は、オートバイが転倒する状態になっても車輪4がライダーとオートバイを支えるものであり、「カーブの訓練に使用可能」である。
上記ウで述べたと同様に、オートバイがカーブで旋回する際、旋回速度に応じて車体を傾けキャンバ角を増していったときに、タイヤがグリップ力を保てる限界のキャンバ角の角度である「制限角度(C_(lim))」があることは技術常識であり、後者の「カーブの訓練に使用可能」な「補助輪装置」は、制限角度(C_(lim))を超えて傾いた状況にあるライダーとオートバイとを特定の「支持角度」で支え、それ以上オートバイが傾くことを防止するものといえる。
そうすると、後者の「オートバイの運転訓練に必要な転倒を安全に体験させるための」「補助輪装置」は、前者の「速度Vが増大すると、キャンバ角(C)を厳密に制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に制限する転倒防止装置」と、「速度Vが増大すると、キャンバ角(C)を制限角度(C_(lim))よりも大きい支持角度に制限する転倒防止装置」である限りにおいて一致する。

後者の「車輪4」は、車輪であるので回転中心をもつことは明らかであり、前者の「中心(G_(1))をもつ安全ホイール」に相当する。
また、上記オの対比と併せて、後者の「オートバイの運転訓練に必要な転倒を安全に体験させるための」「補助輪装置」は、前者の「二輪車の中間平面(P)に対するキャンバ角(C)が厳密に制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に制限されるように、安全ホイールが二輪車に対して設けられ」た「転倒防止装置」と、「二輪車の中間平面(P)に対するキャンバ角(C)が制限角度(C_(lim))よりも大きい支持角度に制限されるように、安全ホイールが二輪車に対して設けられ」た「転倒防止装置」である限りにおいて一致する。

後者の「フレーム1」とこれに「可動軸で接続させ」た「アーム2とダンパー3」とは、前者の「安全ホイールと二輪車との間のリンク手段」に相当する。

後者の「アーム2とダンパー3の接続金具5の位置で、オートバイの傾斜保持角度を調節可能」な構成は、引用文献の【図1】を併せみれば、オートバイが転倒する状態になってもライダーとオートバイを車輪4が支えるように、アーム2とダンパー3の接続金具の位置を調節するものであり、上記オでいうところの、キャンバ角の制限角度(C_(lim))よりも大きい支持角度を調節するものといえる。
そうすると、後者の「アーム2とダンパー3の接続金具5の位置で、オートバイの傾斜保持角度を調節可能」な構成は、前者の「最大角度(C_(max))を調節する手段」と、「支持角度を調節する手段」である限りにおいて一致する。

そうすると、両者は、
「タイヤを備えた二輪車用の転倒防止装置であって、
前記二輪車の重心(G)は、中心O及び半径Rの円形軌道に沿って速度Vで動き、前記重心(G)を含む前記二輪車の中間平面(P)は、前記軌道に接する垂直面(XG)とキャンバ角(C)をなし、前記キャンバ角(C)は、前記二輪車の速度Vにつれて増大すると共にゼロ角度と前記二輪車を転倒させる前記タイヤの横方向グリップの失われる下限としての制限角度(C_(lim))との間で可変であり、
前記転倒防止装置は、前記二輪車の側方に取り付けられ、
前記速度Vが増大すると、前記キャンバ角(C)を前記制限角度(C_(lim))よりも大きい支持角度に制限する転倒防止装置において、
前記転倒防止装置は、中心(G_(1))をもつ安全ホイールを有し、
前記転倒防止装置は、前記支持角度を調節する手段及び前記安全ホイールと前記二輪車との間のリンク手段を更に備え、
前記転倒防止装置は、前記二輪車の前記中間平面(P)に対する前記キャンバ角(C)が前記制限角度(C_(lim))よりも大きい支持角度に制限されるように、前記安全ホイールが前記二輪車に対して設けられた、
二輪車用転倒防止装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕
本願補正発明は、転倒防止装置が「軌道に対して二輪車の内側に」取り付けられるものであるのに対して、引用発明は、補助輪装置が車体の左右に取り付けるものである点。
〔相違点2〕
本願補正発明は、転倒防止装置が「キャンバ角(C)を厳密に制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に制限する」ものであり、転倒防止装置は「キャンバ角(C)が厳密に制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に制限される」ように、安全ホイールが二輪車に対して設けられるものであるのに対して、引用発明は、補助輪装置がオートバイが転倒する状態になって車輪4がライダーとオートバイを支えるようにしたものであるものの、前記のような「厳密に」との特定がなされていない点。
〔相違点3〕
本願補正発明は、「安全ホイールの中間平面(P_(1))は、路面の上方に位置し最大角度(C_(max))とは最大5°まで異なる角度(a)をなす直線に沿って二輪車の中間平面(P)と交差し」との事項を有しているのに対して、引用発明は、車輪4がそのようなものか明らかでない点。
〔相違点4〕
本願補正発明は、「転倒防止装置は、制限角度(C_(lim))を測定するために利用されるものである」との事項を有しているのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

上記各相違点について以下検討する。
〔相違点1について〕
オートバイがカーブを旋回するときに、旋回方向に応じて車体の左右のいずれかが旋回軌道の内側となることは明らかであり、引用発明の補助輪装置は、左右どちらに旋回するときでもその軌道に対して車体の内側に取付けられているといえ、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
また、相違点1に係る本願補正発明の構成が、車体の片側を意図するものであったとしても、引用発明において旋回方向を左右どちらかの一方に定め、補助輪装置を車体の片側のみに取り付け、相違点1に係る本願補正発明のように構成することは、使用形態に応じて当業者が適宜になし得ることといえる。

〔相違点2について〕
相違点2の「厳密に」との事項について、2とおりの解釈ができるので、それぞれについて検討する。


相違点2の「厳密に制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に制限する」ことについて、文言どおりに解釈すれば、制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に「厳密に制限する」ことと理解でき、引用発明の補助輪装置も、オートバイが転倒する状態になっても車輪4がライダーとオートバイを支えるものであり、オートバイのキャンバ角を厳密に制限しているといえ、相違点2は実質的な相違点とはいえない。


相違点2の「厳密に」との用語に関して、本願の明細書には次の記載がある。
「【0012】
最大キャンバ角をグリップ制限角度よりも厳密に大きくするという原理により、試験の際、この制限角度を測定することができる。というのは、この制限角度は、許容キャンバ角の範囲内に収まるからである。グリップが失われた後にキャンバ角を固定するという原理は、キャンバ角がグリップ限度に達する前に固定されるようになった従来型安全装置には適していない。」
上記段落中の「最大キャンバ角をグリップ制限角度よりも厳密に大きくする」との記載に基づいて、相違点2の「厳密に制限角度(C_(lim))よりも大きい最大角度(C_(max))に制限する」ことは、制限角度(C_(lim))よりも「厳密に大きい」最大角度(C_(max))に制限すること理解できる。
また、「厳密に大きい」とは、上記段落中の「試験の際、この制限角度を測定することができる」との記載の主旨から、制限角度(C_(lim))と最大角度(C_(max))とが大きく異ならないことと理解できる。
引用発明において、カーブの訓練時には、オートバイのキャンバ角の制限角度で転倒し始め、車輪4がライダーとオートバイを支える状態までキャンバ角の角度が増すものであり、キャンバ角の制限角度から車輪4がオートバイ等を支える角度までの増加分が大きければ大きいほど、ライダーとオートバイに及ぼす衝撃が大きくなることは明らかであり、引用発明がオートバイの運転訓練に用いられるものであることに鑑みれば、安全性の観点から前記のような衝撃を最小限に抑えるべく、前記キャンバ角の角度の増加分を小さくすることは当業者が容易に想到し得ることといえる。
そうすると、引用発明を相違点2に係る本願補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。

〔相違点3について〕
相違点3に係る本願補正発明の構成について、本願の明細書には次のとおり記載されている。
「【0044】
・・・転倒防止装置2の安全ホイール3の中間平面P_(1)は、車両1の中間平面Pと角度aをなし、安全ホイール3が路面に接触すると、安全ホイールは、垂直方向ZZ′と5°未満の角度bをなし、即ち、安全ホイール3は、路面に対して実質的に垂直に位置決めされる。・・・」
当該記載によれば、相違点3に係る本願補正発明の構成は、安全ホイールが接地時に路面に対して実質的に垂直に位置決めされる構成を特定するものといえる。

引用文献の【図3】には、「転倒状態になって、この考案が作動している状態」(上記「(2)イ」を参照)であり、車輪4が接地した状況が示されており、当該状況は、オートバイがカーブでの旋回時においては、限界のキャンバ角を超えた状況といえる。
そして、同図からは、車輪4の回転軸に垂直な平面が、接地時に路面に対してほぼ垂直になっていることも看取できる。
引用発明は、運転訓練の走行中に転倒する状態に陥った時に車輪4によりライダーとオートバイを支えるものであるが、車輪4は接地した際にそれまで走行していてある程度の速度で移動していた車体を引き続き安定して支持する必要性があることは、運転訓練に用いられることに鑑みれば当然に考慮されるべきことであり、そのために車輪4自体を安定して回転するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、引用発明の車輪4が安定して回転するために、接地時にその回転軸を路面に水平に、すなわち回転軸に垂直な平面が路面に対してほぼ垂直になるようにすることは、技術常識ともいえるし、また、上述のとおり【図3】からもそのような構成が示唆されているといえる。
そうすると、引用発明を相違点3に係る本願補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。

〔相違点4について〕
引用発明は、オートバイの運転訓練の走行中に転倒する状態に陥った時に車輪4によりライダーとオートバイを支えられるように、「アーム2とダンパー3の接続金具5の位置で、オートバイの傾斜保持角度を調節可能にし」たものであり、カーブの訓練においては、オートバイの傾斜保持角度はタイヤがグリップ力を失い転倒し始めるキャンバ角の制限角度を超えた角度に調節されるものといえる。
タイヤがグリップ力を失い転倒し始めるキャンバ角の制限角度は、タイヤの種類や状況によって変化することは明らかであり、その変化に対応するために、引用発明においては「アーム2とダンパー3の接続金具5の位置で、オートバイの傾斜保持角度を調節」することは当業者が適宜になし得ることといえ、そしてそのような角度調節の行為は、キャンバ角の制限角度を探り当てそれを超えた角度に調節することにほかならないので、実質的にキャンバ角の制限角度を探り当てる行為といえる。
そうすると、引用発明を、キャンバ角の限界の角度、すなわち本願補正発明の「制限角度(C_(lim))」を、探り当てるために専ら用いるようにすることは、その通常の使用形態から当業者が容易に想到し得ることといえ、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年2月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?13に係る発明は、平成27年7月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1.ア」に記載されたとおりのものである。

2.引用文献に記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献に記載の事項及び引用発明は、前記「第2 3.(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2 3.」で検討した本願補正発明から「前記転倒防止装置(2)は、前記制限角度(C_(lim))を測定するために利用されるものである」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、前記「第2 3.(3)」で検討したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-05 
結審通知日 2016-12-12 
審決日 2016-12-26 
出願番号 特願2013-533164(P2013-533164)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62H)
P 1 8・ 575- Z (B62H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 健一  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 平田 信勝
一ノ瀬 覚
発明の名称 二輪車用転倒防止装置  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 松下 満  
代理人 西島 孝喜  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 井野 砂里  
代理人 井野 砂里  
代理人 松下 満  
代理人 弟子丸 健  
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