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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1328213
審判番号 不服2016-4831  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-04 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2014-542897「掃引光源光干渉断層撮影のための装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月27日国際公開、WO2013/092697、平成26年12月15日国内公表、特表2014-533837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月19日(パリ条約による優先権主張 平成23年12月21日 米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、平成27年3月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月3日付けで拒絶査定されたところ、平成28年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年5月11日付けで前置報告書が作成され、同年7月14日に上申書が提出されたものである。


第2 平成28年4月4日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
本件補正は、補正前の請求項1、10を削除するとともに、補正前の請求項1を引用する請求項2、補正前の請求項10を引用する請求項11を、独立項である、補正後の請求項1、9に補正するものである。また、それに伴い、補正後の請求項2ないし8、10ないし16に対して引用関係を整合させる補正もなされている。
してみると、本件補正は、特許請求の範囲についてする補正であり、請求項の削除を目的としたものであるといえる。
また、このような本件補正が、新規事項を追加するものでもシフト補正に該当するものでもないことは明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するものである。


第3 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうちの本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
掃引光源光干渉断層撮影のための装置(10)であって、
可干渉光を放射するための、スペクトルをチューニング可能な光源(14)と、
前記光源の前記可干渉光で照射された物体(12)からの後方散乱光を参照光に重畳させた干渉光の強度を取得するための検出器(34)と、
前記光源(14)をチューニングしながら、前記検出器(34)が強度を決められた測定数に従って取得するように、前記光源(14)と前記検出器(34)を制御するための制御装置(16)とを有する装置であって、
前記光干渉断層撮影の測定深度及び軸方向の分解能の少なくとも一方を変更するために、前記制御装置が、前記検出器(34)がスペクトル測定帯域幅内で前記強度を取得する際の該スペクトル測定帯域幅と前記決められた測定数の少なくとも一方を変更するように構成されたものであり、
前記制御装置(16)は、前記測定深度及び前記軸方向の分解能の少なくとも一方において互いに異なる、少なくとも二つ以上の予め決められた動作モードを切り替えるように構成されたものであり、
前記装置は、前記制御装置(16)と連結された、使用者により誘発信号が入力されることを可能とするユーザーインターフェース装置を有し、
前記制御装置(16)は、前記誘発信号が入力されたときに第1の動作モードでは前記物体の第1の断層画像を自動で生成し、又、該第1の動作モードとは異なる第2の動作モードでは前記物体の第2の断層画像を自動で生成するように構成されたものであり、
前記動作モードの一つが別の前記動作モードよりも高い軸方向の分解能及び短い測定深度を有するものであることを特徴とする装置。」


第4 引用例及びその記載事項
1 本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-117723号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。

(1)「【請求項1】
波長を一定の周期で掃引させながら光を射出する光源ユニットと、
該光源ユニットから射出された前記光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
前記光分割手段により分割された前記測定光が測定対象に照射されたときの該測定対象からの反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、
該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光検出手段と、
該干渉光検出手段により検出された前記干渉光を周波数解析することにより前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段とを有する光断層画像化装置において、
第1の波長分解能で前記干渉光を検出する第1検出モードと、前記第1の波長分解能よりも高い波長分解能である第2の波長分解能で前記干渉光を検出する第2検出モードとを切り替える検出モード制御手段を備えていることを特徴とする光断層画像化装置。
【請求項2】
前記光源ユニットが、波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅が切り替え可能な光源であり、
前記検出モード制御手段が、波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が小さくなるように前記光源ユニットを制御するものであることを特徴とする請求項1記載の光断層画像化装置。
【請求項3】
前記干渉光検出手段が、前記干渉光を所定のサンプリング周波数でサンプリングすることにより、前記干渉光を検出するものであり、
前記検出モード制御手段が、前記干渉光を検出する際の前記サンプリング周波数が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が高くなるように前記干渉光検出手段を制御するものであることを特徴とする請求項1または2記載の光断層画像化装置。」

(2)「【0007】
ここで、SS-OCT計測により断層画像の取得が可能な測定可能範囲(測定深度)は光源の単位時間当たりの波長変動幅に反比例し、断層画像を取得する際の光軸方向の分解能は波長変動幅が大きいほど高くなる。このため、所定時間内で、高分解能な断層画像を取得する場合には測定可能範囲(測定深度)は狭いものとなる。したがって、高分解能な断層画像を取得するSS-OCT装置において、測定開始位置を調整するために断層画像を取得する際、測定可能範囲(測定深度)が狭く測定光と参照光の光路長差を測定範囲内に追い込むのに手間がかかってしまうという問題がある。同様に、例えば胃壁などの層構成を観察したいような場合にも、所望の測定可能範囲(測定深度)により断層画像を取得することができないという問題もある。」

(3)「【0016】
波長を一定の周期で掃引させながら光を射出する光源ユニットと、該光源ユニットから射出された前記光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、前記光分割手段により分割された前記測定光が前記測定対象に照射されたときの該測定対象からの前記反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光検出手段と、該干渉光検出手段により検出された前記干渉光を周波数解析することにより前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段とを有する光断層画像化装置において、測定可能範囲(測定深度)は、干渉光を検出する際の波長分解能が高ければ大きく、波長分解能が低ければ小さくなるので、第1の波長分解能で前記干渉光を検出する第1検出モードと、前記第1の波長分解能よりも高い波長分解能である第2の波長分解能で前記干渉光を検出する第2検出モードとを切り換え可能に構成されることにより、使用者は使用目的に応じて測定可能範囲(測定深度)を切り換えることができ、光断層画像化装置の利便性が向上する。
【0017】
また、波長を掃引させたときの光の単位時間当たりの波長変動幅が第1検出モード時よりも第2検出モード時の方が小さくなるように、光源ユニットを制御して、第2検出モード時の波長分解能を高くするものであれば、容易に測定可能範囲(測定深度)を切り換えることができる。
【0018】
干渉光を検出する際のサンプリング周波数が第1検出モード時よりも第2検出モード時の方が高くなるように干渉光検出手段を制御して、第2検出モード時の波長分解能を高くするものであれば、断層画像を取得するための取得時間を増加させることなく、測定可能範囲(測定深度)を切り換えることができる。
【0019】
前記第1検出モードが、前記測定対象の断層画像を取得する画像取得モードであり、前記第2検出モードが前記測定対象の深さ方向について断層画像信号を得る位置を調整する測定開始位置調整モードであれば、測定開始位置調整モード時には波長分解能を高くして測定可能範囲(測定深度)を広げ測定対象を発見しやすくすることができるため、測定開始位置調整モード時に測定対象が断層画像として取得されやすくなり、効率的に測定開始位置の調整を行うことができる。」

(4)「【0034】
ところで、上述したSS-OCT計測において、測定光L1と参照光L2光路長差が大きくなってしまうと空間周波数の拡大、サンプリング周期の関係等により画質が劣化してしまうおそれがある。このため、測定光と参照光との光路長が略一致するように光路長の調整を行う必要がある。ここで、測定可能範囲(測定深度)はレーザ光Lの波長変動幅ΔΛに反比例し、断層画像を取得する際の分解能は波長変動幅ΔΛが大きいほど高くなる(図2参照)。すなわち、高分解能な断層画像を取得する場合には測定可能範囲は狭いものとなる。したがって、高分解能な断層画像を取得するSS-OCT装置において、測定開始位置を調整するために断層画像を取得する際、測定可能範囲(測定深度)が狭く測定光と参照光の光路長差を測定範囲内に追い込むのに手間がかかってしまうという問題がある。
【0035】
そこで、図1の光断層画像化装置1には、測定対象Sの深さ方向における測定開始位置を調整する測定開始位置調整モードと、測定対象Sの断層画像を取得する画像取得モードとを切り替える制御手段70が設けられており、制御手段70は、測定開始位置調整モード時の波長分解能が画像取得モード時の波長分解能よりも高くなるように、光源ユニット10もしくは干渉光検出手段40を制御する。
【0036】
すなわち、測定開始位置調整モード時に干渉を検出する際の波長分解能を向上させる方法として、波長を掃引させたときの光の単位時間当たりの波長変動幅が、測定開始位置調整モードの場合には画像取得モード時よりも小さくなるように、光源ユニット10を制御して波長分解能を高くする方法と、干渉光を検出する際のサンプリング周波数が画像取得モード時よりも測定開始位置調整モード時の方が高くなるように干渉光検出手段を制御して波長分解能を高くする方法とがある。以下詳細に説明する。」

(5)「【0040】
画像取得モード時には、画質の良い断層画像を取得する必要がある。このためには、前述したように、波長変動幅ΔΛを大きくして測定分解能を高くすることが好ましい。また、所定の時間内で断層画像を取得する必要があり、波長掃引の周期τは小さいことが好ましい。さらにサンプリング周波数を大きくすると、サンプリング一回毎のサンプリング時間が少なくなり、干渉光検出手段40により検出される干渉光の光量が少ない場合には、十分な検出光量を確保できず、断層画像のS/Nが劣化する虞がある。このため、サンプリング周波数をあまり大きくすることは好ましくない。これらの条件を考慮して、画像取得モード時の波長変動幅ΔΛ、波長掃引の周期τ、サンプリング周波数等が決められている。このため、通常、断層画像が取得できる測定可能範囲(測定深度)はあまり大きくはない。よって、たとえば測定可能範囲が数十μmであって、プローブ30から測定対象までの距離が数百μm離れている場合、断層画像を取得しても測定対象Sの位置を認識することができない。
【0041】
本実施の形態では、制御手段70は、例えば、測定開始位置調整モードのときの回転多面鏡16の回転速度を画像取得モードのときの回転多面鏡16の回転速度の1/2にする。すると、波長掃引の周期τは2倍になり、図5に示すように、光源ユニット10からは単位時間当たりの波長変動幅ΔΛ/τが1/2になったレーザ光Lが射出される。このように、単位時間当たりの波長変動幅ΔΛ/τを小さく(τ/ΔΛを大きく)すると、干渉光検出手段40でのサンプリング毎の波長変動幅が小さくなる。すなわち、干渉光検出手段40における見かけ上の波長分解能が高くなる。本実施例においては、式(4)に示す取得可能範囲Δl_(lim)が2倍となる。これにより、測定可能範囲(測定深度)が2倍になった断層画像を取得でき、測定対象Sが断層画像内に映し出しやすくなる。使用者はこの断層画像を観察しながら、測定開始位置の調整を迅速かつ簡便に行うことができる。」

(6)「【0044】
あるいは、制御手段70は測定開始位置調整モードのときに、画像取得モードよりもサンプリング間隔Δtが小さくなるように、すなわちサンプリング周波数(1/Δt)が大きくなるように、干渉光検出手段40を制御してもよい。干渉光検出手段40のサンプリング周波数を高くすることにより、すなわち、干渉光検出手段40における波長分解能を高くすることにより、測定可能範囲Δl_(lim)が大きくなり(式(4)参照)、測定可能範囲(測定深度)が大きくなった断層画像を取得できる。このため、測定対象Sが断層画像内に映し出しやすくなり、使用者はこの断層画像を観察しながら、測定開始位置の調整を迅速かつ簡便に行うことができる。なお、サンプリング周波数を高くしてしまうと、干渉光検出手段40において十分な光量を得ることができず画質の劣化を引き起こす場合があるが、測定開始位置の調整作業においては、断層画像の画質は測定対象Sの存在がわかるものであればよく、高画質である必要はない。また、サンプリング周波数(1/Δt)を大きくする場合には、1枚の断層画像を取得するための取得時間が増加することはなく、迅速に測定開始位置の調整を行なうことができる。」

(7)図1


(8)図2


2 引用例1に記載された発明について
(1)上記1(2)【0007】の「SS-OCT計測により断層画像の取得が可能な測定可能範囲(測定深度)は光源の単位時間当たりの波長変動幅に反比例し、断層画像を取得する際の光軸方向の分解能は波長変動幅が大きいほど高くなる。」との記載に鑑みると、上記1(1)【請求項2】の「前記検出モード制御手段が、波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が小さくなるように前記光源ユニットを制御する」との制御を行ったときには、「第1検出モード時は、第2検出モード時よりも、断層画像を取得する際の光軸方向の分解能が相対的に高く、測定可能範囲(測定深度)が相対的に小さくなる。」と認められる。

(2)上記(1)を踏まえつつ、上記1(1)ないし(8)の記載を総合すると、つぎの発明が記載されていると認められる。

「波長を一定の周期で掃引させながら光を射出する光源ユニットと、
該光源ユニットから射出された前記光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
前記光分割手段により分割された前記測定光が測定対象に照射されたときの該測定対象からの反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、
該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光検出手段と、
該干渉光検出手段により検出された前記干渉光を周波数解析することにより前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段とを有する光断層画像化装置において、

第1の波長分解能で前記干渉光を検出する第1検出モードと、前記第1の波長分解能よりも高い波長分解能である第2の波長分解能で前記干渉光を検出する第2検出モードとを切り替える検出モード制御手段を備えており、
前記光源ユニットが、波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅が切り替え可能な光源であり、
前記干渉光検出手段が、前記干渉光を所定のサンプリング周波数でサンプリングすることにより、前記干渉光を検出するものであり、
前記第1検出モード時は、前記第2検出モード時よりも、断層画像を取得する際の光軸方向の分解能が相対的に高く、測定可能範囲(測定深度)が相対的に小さくなるようにするために、前記検出モード制御手段が、波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が小さくなるように前記光源ユニットを制御し、前記干渉光を検出する際の前記サンプリング周波数が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が高くなるように前記干渉光検出手段を制御するものである、光断層画像化装置。」(以下、引用発明という。)

3 本願の優先権主張日前に頒布された特開2010-42182号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。

(1)「【0064】
オートモードは、挿入部16を血管内12に挿入した後の操作を、術者の開始操作を契機に全て自動で行う動作モードである。例えば、術者がコンソール38から、断層画像取得の開始操作をすると、プローブユニット22を自動的に掃引して、断層画像72を取得する。また、治療範囲を指定した後に、治療の開始操作をすると、指定した治療範囲内で病変17を自動的に認識して、病変17にレーザを照射し、治療を行う。」


第5 対比及び判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「射出」、「光」、「光源ユニット」、「波長を一定の周期で掃引」することは、それぞれ、本願発明の「放射」、「可干渉光」、「光源(14)」、「スペクトルをチューニング」することに相当する。
してみると、引用発明の「波長を一定の周期で掃引させながら光を射出する光源ユニット」は、本願発明の「可干渉光を放射するための、スペクトルをチューニング可能な光源(14)」に相当する。

(2)引用発明の「反射光」、「参照光」、「重畳させた干渉光」、「干渉光検出手段」は、それぞれ、本願発明の「後方散乱光」、「参照光」、「干渉光」、「検出器(34)」に相当する。
また、一般に、光検出手段は、光の「強度」を検出するものであることは技術常識であるから、引用発明の「干渉光検出手段」は「干渉光」の「強度」を検出するものといえる。
してみると、引用発明の「該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光検出手段」は、本願発明の「前記光源の前記可干渉光で照射された物体(12)からの後方散乱光を参照光に重畳させた干渉光の強度を取得するための検出器(34)」に相当する。

(3)引用発明の「光断層画像化装置」は、「光源ユニット」で波長を掃引しながら射出された光を、干渉させ、「干渉光検出手段」で検出して、「断層情報取得手段」により画像化するものであるから、
本願発明の「掃引光源光干渉断層撮影のための装置(10)」に相当する。

(4)引用発明の「検出モード制御手段」、「掃引」、は、それぞれ、本願発明の「制御装置(16)」、「チューニング」に相当する。
また、上記(2)で説示したとおり、引用発明の「干渉光検出手段」は「干渉光」の「強度」を検出するものといえる。
さらに、所定の「サンプリング周波数」で検出するということは、すなわち、単位時間当たり、一定の「サンプリング回数」で検出をすることであるから、引用発明の所定の「サンプリング周波数」で検出することは、本願発明の「決められた測定数に従って」「強度を」「取得」することに他ならない。
してみると、引用発明の「波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が小さくなるように前記光源ユニットを制御し、前記干渉光を検出する際の前記サンプリング周波数が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が高くなるように前記干渉光検出手段を制御する」「前記検出モード制御手段」は、本願発明の「前記光源(14)をチューニングしながら、前記検出器(34)が強度を決められた測定数に従って取得するように、前記光源(14)と前記検出器(34)を制御するための制御装置(16)」に相当する。

(5)引用発明の「波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅」、「測定可能範囲(測定深度)」、「断層画像を取得する際の光軸方向の分解能」は、本願発明の「スペクトル測定帯域幅」、「測定深度」、「軸方向の分解能」に相当する。
上記(4)の説示と同様の理由で、引用発明の所定の「サンプリング周波数」を制御することは、本願発明の「測定数」を制御することに当たる。
引用発明の「検出モード制御手段」は、第1検出モードと第2検出モードの「測定可能範囲(測定深度)」と「断層画像を取得する際の光軸方向の分解能」の相対的な大小関係を変えるために、「波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅」及び「サンプリング周波数」を制御するものである。

してみると、引用発明の「前記第1検出モード時は、前記第2検出モード時よりも、断層画像を取得する際の光軸方向の分解能が相対的に高く、測定可能範囲(測定深度)が相対的に小さくなるようにするために、波長を掃引させたときの単位時間当たりの波長変動幅が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が小さくなるように前記光源ユニットを制御し、前記干渉光を検出する際の前記サンプリング周波数が前記第1検出モード時よりも前記第2検出モード時の方が高くなるように前記干渉光検出手段を制御する」「前記検出モード制御手段」は、
本願発明の「前記光干渉断層撮影の測定深度及び軸方向の分解能の少なくとも一方を変更するために、」「前記検出器(34)がスペクトル測定帯域幅内で前記強度を取得する際の該スペクトル測定帯域幅と前記決められた測定数の少なくとも一方を変更するように構成された」「前記制御装置」に相当する。

(6)引用発明の「第1検出モード」と「第2検出モード」とは、「測定可能範囲(測定深度)」と「断層画像を取得する際の光軸方向の分解能」の大小関係がそれぞれ異なっているものである。
よって、引用発明の「前記第1検出モード時は、前記第2検出モード時よりも、断層画像を取得する際の光軸方向の分解能が相対的に高く、測定可能範囲(測定深度)が相対的に小さくなるようにする」ものであって、「第1の波長分解能で前記干渉光を検出する第1検出モードと、前記第1の波長分解能よりも高い波長分解能である第2の波長分解能で前記干渉光を検出する第2検出モードとを切り替える検出モード制御手段」は、
本願発明の「前記測定深度及び前記軸方向の分解能の少なくとも一方において互いに異なる、少なくとも二つ以上の予め決められた動作モードを切り替えるように構成された」「前記制御装置(16)」に相当する。

(7)引用発明の「前記第1検出モード時は、前記第2検出モード時よりも、断層画像を取得する際の光軸方向の分解能が相対的に高く、測定可能範囲(測定深度)が相対的に小さくなる」ことは、
本願発明の「前記動作モードの一つが別の前記動作モードよりも高い軸方向の分解能及び短い測定深度を有するものであること」に相当する。

(8)以上のとおりであるから、引用発明と本願発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「掃引光源光干渉断層撮影のための装置であって、
可干渉光を放射するための、スペクトルをチューニング可能な光源と、
前記光源の前記可干渉光で照射された物体からの後方散乱光を参照光に重畳させた干渉光の強度を取得するための検出器と、
前記光源をチューニングしながら、前記検出器が強度を決められた測定数に従って取得するように、前記光源と前記検出器を制御するための制御装置とを有する装置であって、
前記光干渉断層撮影の測定深度及び軸方向の分解能の少なくとも一方を変更するために、前記制御装置が、前記検出器がスペクトル測定帯域幅内で前記強度を取得する際の該スペクトル測定帯域幅と前記決められた測定数の少なくとも一方を変更するように構成されたものであり、
前記制御装置は、前記測定深度及び前記軸方向の分解能の少なくとも一方において互いに異なる、少なくとも二つ以上の予め決められた動作モードを切り替えるように構成されたものであり、
前記動作モードの一つが別の前記動作モードよりも高い軸方向の分解能及び短い測定深度を有するものである装置。」

<相違点>
制御装置について、本願発明は、「前記装置は、前記制御装置(16)と連結された、使用者により誘発信号が入力されることを可能とするユーザーインターフェース装置を有し、前記制御装置(16)は、前記誘発信号が入力されたときに第1の動作モードでは前記物体の第1の断層画像を自動で生成し、又、該第1の動作モードとは異なる第2の動作モードでは前記物体の第2の断層画像を自動で生成するように構成されたものであ」るのに対して、
引用発明は、本願発明のような「ユーザーインターフェース装置」を有さず、「検出モード制御手段」も本願発明のような制御を行うように構成されていない点

2 当審の判断
(1) 相違点についての検討
ユーザの入力装置の操作を契機として各種処理を自動で実行することは、様々な分野で広く行われる慣用技術である。また、上記第4の3で例示した引用例2のように、光干渉断層撮影の分野においても、そのような自動処理は、周知技術に過ぎない。
そして、自動化は自明の課題であり、引用発明においても同様の課題を有するといえるから、上記周知・慣用技術を参考に、引用発明にユーザの操作指示を受け付ける入力装置を設けるとともに、「検出モード制御手段」において、入力装置からのユーザの操作指示に従って、第1検出モードと第2検出モードにおける断層画像化を自動で行う制御を行うように構成することは、当業者が適宜なし得ることであると言わざるを得ない。

(2) 本願発明の効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明、上記周知・慣用技術から予測される範囲内であって、格別なものでない。

3 小活
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び上記周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第6 むすび
上記で検討したとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明ついて論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

なお、上申書において事後的に補正案が提示されているが、本願発明を減縮するものというよりは、発明の内容を大幅にシフト、変更するものであるところ、再度の先行技術調査、各種特許要件の再検討を要するものであるため、当審において判断すべきものとはいえない。
 
審理終結日 2016-12-02 
結審通知日 2016-12-06 
審決日 2016-12-19 
出願番号 特願2014-542897(P2014-542897)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 龍松谷 洋平比嘉 翔一  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
小川 亮
発明の名称 掃引光源光干渉断層撮影のための装置及び方法  
代理人 青木 篤  
代理人 前島 一夫  
代理人 三橋 真二  
代理人 廣瀬 繁樹  
代理人 島田 哲郎  

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