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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47J
管理番号 1328234
審判番号 不服2015-6328  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-03 
確定日 2017-05-08 
事件の表示 特願2012-516012号「飲料成分を容れるためのカプセル」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 2日国際公開、WO2010/137956、平成24年12月 6日国内公表、特表2012-530529号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年12月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月17日、欧州特許庁、2009年6月17日、欧州特許庁、2009年6月17日、欧州特許庁、2009年6月19日、欧州特許庁、2009年8月13日、欧州特許庁、2009年9月17日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月28日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成27年4月3日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審により平成28年4月13日付けで拒絶理由が通知され、平成28年10月14日に意見書と手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成28年10月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める(以下「本願発明」という。)。

「飲料成分を容れるためのカプセルであって、該カプセルは、飲料製造器具に挿入されるようにデザインされており、該飲料製造器具の中では圧力下の液体が該カプセルに入り、該カプセルから飲料が流れ出る、
ここで、該カプセルは、外周第一壁と、第1の端部で該外周第一壁を閉じている第二壁と、および該第二壁と反対側の第2の開放の端部で該外周第一壁を閉じている第三壁とを備え、該第一、第二および第三壁は、飲料成分を備える内部空間を取り囲み、該カプセルは、該第三壁が接続されるところの外向きに延在する半径方向フランジを備え、
該カプセルは、飲料製造器具と共に封止効果を達成するための封止部材を備え、該封止部材は、円形のリング状であり且つ該第一壁の方を向いた外向きに延在する該半径方向フランジの外表面の少なくとも一部分を被覆している該カプセルにおいて、
該封止部材の少なくとも外表面は、封止効果を達成するために、該飲料製造器具内で飲料を製造する間、水を吸収するように構成されるところの繊維質及び/又は紙様の材料で構成されていること、
を特徴とする、上記カプセル。」

2 引用例
(1) 引用例
当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開2007/113100号明細書(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、日本語訳は、対応する日本出願特表2009-531099号公報を参照した。)

(ア)「The present invention generally relates to capsules for containing beverage ingredients, to a beverage producing system comprising such capsules as well as to methods for producing beverages on the basis of ingredients contained in such capsules.」(1頁3?7行)
(【0001】
本発明は、一般に、飲料の原料を含むカプセル、このようなカプセルを備える飲料生成システム、ならびにこのようなカプセルに含まれる原料によって飲料を生成する方法に関する。)

(イ)「Fig. 2 shows a state in which such a capsule has been placed on a capsule holder 13, the foil member 5 resting on the relief element 12 side of the capsule holder 13 and the cup-like base body 4 of the capsule 1 being already partly surrounded by the circumferential wall 25 of an enclosing member 9 of the beverage production device. The shown enclosing member has the shape of a bell. Other shapes are viable, wherein the design of the interior contours (recess) of the enclosing member is generally adapted to substantially match the contours of the capsule 1.」(12頁11?21行)
(【0043】
図2は、このようなカプセルがカプセルホルダ13上に位置する状態を示しており、フォイル部材5はカプセルホルダ13の突出部材12面上に載っており、このときカプセル1のカップ状の本体4は飲料生成装置の封入部材9の周囲壁25により部分的に取り囲まれている。図示されている封入部材はベル形状を有する。他の形状も有効であり、封入部材の内部形状(凹部)の設計は一般に、カプセル1の外形と実質的に一致するように適応されている。)

(ウ)「The enclosing (bell) member 9 furthermore comprises an annular support skirt 18, the function of which will be explained later, an external thread 19 for mounting the bell member in a beverage production device and a water inlet opening 20 for feeding a liquid such as for example hot water under pressure to a water injector 14 which is releasable mounted (screwed) to the bell member 9.」(13頁1?7行)
(【0046】
封入(ベル)部材9はさらに、環状の支持体端部18、特徴は後に説明される、飲料生成装置内にベル部材を取り付けるための外部ねじ19、および、例えば、ベル部材9に取外し可能に取り付けられる(ねじ込む)注水器14に高温の加圧水のような液体を供給するための注水開口20を備える。)

(エ)「The water injector 14 can also comprise a perforation element (blade, pin, etc.) 24 designed to produce an opening in the top wall 17 of the capsule 1 when the capsule holder 13 and the bell member 9 are moved close together e.g. by a manually operated or a automatic mechanism. A channel (not shown in the drawings) traverses the perforation element 24 such that water can be fed to the interior of the capsule 1 once the perforation element 14 protrudes into the interior of the capsule 1.
The capsule 1 comprises said top wall 17, a side wall 7 and a flange-like rim 6, wherein the foil member 5 is sealed to said flange-like rim 6 to close-off hermetically the cup-like base body 4 of the capsule 1. Again, other designs for the capsule are possible as long as the capsule can be sealed and contain the mentioned ingredients .
According to the present invention the outer surface of the capsule 1 presents a dedicated sealing member (sealing material) 8. The sealing member 8 can be resilient due to the material used and/or due to the geometrical shape of the sealing member 8.
Further on, the sealing member 8 can be integral to the capsule 1 or a separate piece. In the latter case the sealing member can be mounted releasably to the base body 4 or fixed thereto e. g. by welding or by means of an adhesive .」(13頁14?14頁12行)
(【0049】
注水器14はまた、カプセルホルダ13およびベル部材9が、例えば手動操作または自動機構により一緒に閉じるように移動されると、カプセル1の上部壁17に開口を形成するように設計される、貫通部材(ブレード、ピン他)24を備える。チャネル(図示されず)は、貫通部材14がカプセル1の内部に突き出ると、水がカプセル1の内部に供給されるように、貫通部材24を移動する。
【0050】
カプセル1は上部壁17、側壁7およびフランジ状のリム6を備え、フォイル部材5は上記フランジ状のリム6に対して密閉され、カプセル1のカップ状の本体4を密封して閉鎖する。上述のとおり、カプセルの他の設計は、カプセルを密封でき、上述の原料を収容できる限り可能である。
【0051】
本発明によれば、カプセル1の外側面は専用の密封部材(密封材料)8である。密封部材8は、使用される材料および/または密封部材8の幾何形状によって弾性体であってもよい。
【0052】
さらに、密封部材8はカプセル1と一体部品または分離部品にできる。分離部品である場合、密封部材は本体4に取外し可能に取り付け、あるいは溶接または接着剤により固定できる。)

(オ)「In figure 15 sealing material 8 having no defined initial shape is present at the outer surface of the capsule 1, while in the example of figure 16 sealing material is present with defined shape such as e.g. in the shape of an 0-ring .」(21頁7?11行)
(【0082】
図15では、画成されていない初期形状を有する密封材料8がカプセル1の外側面に提示され、図16の例では、密封材料は例えばOリングの形状といった画成された形状で提示されている。)

(カ)「In any case, without having the sealing material 8, water (s. arrows in Fig. 15b and 16b) penetrating under pressure into the space between the capsule wall and one of the enclosing members 9 would leak from the capsule enclosure space essentially without encountering a major flow resistance. Under these conditions, most likely a pressure inside the capsule sufficient for assisting in a perforation of the foil member 5 would never be achieved or at most would lead to a partial, imperfect opening of the foil member and to quality issue of the beverage released (e.g., coffee with insufficient coffee yield or no crema) .」(22頁下から4行?23頁8行)
(【0091】
いずれの場合においても、密封材料8を有さない場合、カプセルの壁と封入部材9の1つとの間の空間部に圧力を受けて浸透する水(図15のbおよび図16のbの矢印)は、実質的に大きな流動抵抗を受けることなくカプセルの封入空間部から漏れ出す。これらの状態では、フォイル部材5の貫通を支援するのに十分であるカプセル内部の圧力には到達しないと予測され、またはせいぜいフォイル部材の部分的に不十分な開放をもたらし、放出される飲料の品質問題(例えば不十分なコーヒー量または焙煎をもたらす)を生じると予測される。)

(キ)「In the closed position the sealing material 8 can be at least partially pinched between one of the enclosure members 9, 13 and the rim portion 6 and/or the side walls 7 of the capsule 1」(21頁下から2行?22頁2行)
(【0087】
閉鎖位置では、密封材料8は、封入部材9、13の1つとカプセル1のリム部分6および/または側壁7との間に少なくとも部分的に挟まれる。)

(ク)「The sealing material 8 when used in a configuration as shown in figures 15 and 16 can be made from any (foodgrade) material, such as for example plasties, metal, fibers, paper/vegetable fibers, textile, foam or even a viscous paste or combinations.」(24頁4?8行)
(【0094】
密封部材8は、図15および16で示される構成で使用される場合、例えば、プラスチック、金属、ファイバ、紙/植物繊維、繊維素材、発泡またはさらに粘性ペースト、あるいはこれらの組み合わせといった、任意の材料(食品等級)から形成できる。)

(ケ)図15




(コ)上記摘記事項(エ)の密封部材の作用を参酌すると、カプセル及び封入部材9の形状から、密封部材8は円形のリング状であって、図15から、密封部材8はリム部分6のフォイル部材5とは反対側の面に固定されていることが看取できる。

(2) 引用例に記載された発明の認定
上記記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「飲料の原料を含むカプセル1であって、カプセル1は、カプセルホルダ13上に位置し、カプセル1のカップ状の本体4は飲料生成装置の封入部材(ベル部材9)の周囲壁25により部分的に取り囲まれており、
飲料生成装置内にベル部材9を取り付け、ベル部材9に取り付けられる注水器14に高温の加圧水のような液体を供給するための注水開口20を備え、
注水器14は、カプセルホルダ13およびベル部材9が、一緒に閉じるように移動されると、カプセル1の上部壁17に開口を形成するように設計される、貫通部材24を備え、貫通部材24がカプセル1の内部に突き出ると、水がカプセル1の内部に供給される、
ここで、カプセル1は上部壁17、側壁7およびフランジ状のリム6を備え、フォイル部材5は上記フランジ状のリム6に対して密閉され、カプセル1のカップ状の本体4を密封して閉鎖し、
カプセル1の外側面に密封部材8を備え、密封部材8は、円形のリング状であって、リム部分6のフォイル部材5とは反対側の面に固定されているカプセル1において、
閉鎖位置では、密封材料8は、封入部材(ベル部材9)とカプセル1のリム部分6との間に少なくとも部分的に挟まれ、
密封部材8は、ファイバ、紙/植物繊維、繊維素材、またはこれらの組み合わせといった、任意の材料(食品等級)から形成される、カプセル1。」

3 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「飲料の原料」は、その機能から、本願発明の「飲料成分」に相当する。以下、同様にそれぞれ、「飲料の原料を含むカプセル1」は「飲料成分を容れるためのカプセル」に、「飲料生成装置」は「飲料製造器具」に、「側壁7」は「外周第一壁」に、「上部壁17」は「第二壁」に、「フォイル部材5」は「第三壁」に、「フランジ状のリム6」は「半径方向フランジ」に、「密封材料8」は「封止部材」に相当する。

(イ)引用発明の「カプセル1は、カプセルホルダ13上に位置し、カプセル1のカップ状の本体4は飲料生成装置の封入部材(ベル部材9)の周囲壁25により部分的に取り囲まれており、飲料生成装置内にベル部材9を取り付け、ベル部材9に取り付けられる注水器14に高温の加圧水のような液体を供給するための注水開口20を備え、注水器14は、カプセルホルダ13およびベル部材9が、一緒に閉じるように移動されると、カプセル1の上部壁17に開口を形成するように設計される、貫通部材24を備え、貫通部材24がカプセル1の内部に突き出ると、水がカプセル1の内部に供給される」ことは、カプセル1が飲料生成装置内のカプセルホルダ13とベル部材9とで囲まれる空間に入れられ、注入器14より加圧水がカプセル1の内部に供給され、カプセル1から飲料が流れ出ることであるから、本願発明の「該カプセルは、飲料製造器具に挿入されるようにデザインされており、該飲料製造器具の中では圧力下の液体が該カプセルに入り、該カプセルから飲料が流れ出る」ことに相当する。

(ウ)引用発明の「カプセル1は上部壁17、側壁7およびフランジ状のリム6を備え、フォイル部材5は上記フランジ状のリム6に対して密閉され、カプセル1のカップ状の本体4を密封して閉鎖する」ことは、側壁7の一方の端部を上部壁17が閉じ、その反対側の端部をフォイル部材5が閉じることでカプセル1が形成されており、側壁7、上部壁17及びフォイル部材5で形成されるカプセル1の内部空間に飲料の原料を備え、リム6が側壁7に接続され、外向きに延在しているから、本願発明の「該カプセルは、外周第一壁と、第1の端部で該外周第一壁を閉じている第二壁と、および該第二壁と反対側の第2の開放の端部で該外周第一壁を閉じている第三壁とを備え、該第一、第二および第三壁は、飲料成分を備える内部空間を取り囲み、該カプセルは、該第三壁が接続されるところの外向きに延在する半径方向フランジを備え」ることに相当する。

(エ)引用発明の「カプセル1の外側面に密封部材8を備え、」「閉鎖位置では、密封材料8は、封入部材(ベル部材9)とカプセル1のリム部分6との間に少なくとも部分的に挟まれ」ることは、密封部材8が飲料生成装置の封入部材(ベル部材9)とカプセル1のリム部分6との間を封止していることであるから、本願発明の「該カプセルは、飲料製造器具と共に封止効果を達成するための封止部材を備え」ることに相当する。

(オ)引用発明の「リム部分6のフォイル部材5とは反対側の面」は、リム部分6の外表面のうち側壁7の方を向いた面と表現でき、リム部分6が外向きに延在していることは明らかであるから、引用発明の「密封部材8は、円形のリング状であって、リム部分6のフォイル部材5とは反対側の面に固定されている」ことは、本願発明の「該封止部材は、円形のリング状であり且つ該第一壁の方を向いた外向きに延在する該半径方向フランジの外表面の少なくとも一部分を被覆している」ことに相当する。

(カ)引用発明の飲料生成装置は、上記摘記事項(カ)の「密封材料8を有さない場合、カプセルの壁と封入部材9の1つとの間の空間部に圧力を受けて浸透する水(図15のbおよび図16のbの矢印)は、実質的に大きな流動抵抗を受けることなくカプセルの封入空間部から漏れ出す。」との記載を参酌すると、その構造から、カプセルの壁とベル部材(封入部材9)との間の空間部は、圧力を受けて水の浸透する構造であることは明らかであって、「ファイバ、紙/植物繊維、繊維素材、またはこれらの組み合わせといった、任意の材料(食品等級)から形成される」「密封部材8」は、水を吸収することは明らかである。
したがって、引用発明の「密封部材8は、ファイバ、紙/植物繊維、繊維素材、またはこれらの組み合わせといった、任意の材料(食品等級)から形成される」ことは、本願発明の「該封止部材の少なくとも外表面は、封止効果を達成するために、該飲料製造器具内で飲料を製造する間、水を吸収するように構成されるところの繊維質及び/又は紙様の材料で構成されている」ことに相当する。

したがって、両者の間に相違するところはなく、本願発明は引用発明である。

(2) 請求人の主張について
請求人は、平成28年10月14日の意見書で、請求項1の「該封止部材の少なくとも外表面は、封止効果を達成するために、該飲料製造器具内で飲料を製造する間、水を吸収するように構成されるところの繊維質及び/又は紙様の材料で構成されていること」は、引用例1?3のいずれにも記載されていない旨、主張する。
しかし、上記(1)(カ)のとおり、引用発明の密封部材8は、圧力を受けて水が浸透する箇所に設けられており、「ファイバ、紙/植物繊維、繊維素材、またはこれらの組み合わせといった、任意の材料(食品等級)から形成される」「密封部材8」は、その構造から、飲料を製造する際に圧力を受けて浸透する水を吸収するように構成されているといえるから、請求人の主張は採用できない。

3 むすび
ゆえに、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。


第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-06 
結審通知日 2016-12-09 
審決日 2016-12-20 
出願番号 特願2012-516012(P2012-516012)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 大山 広人
佐々木 正章
発明の名称 飲料成分を容れるためのカプセル  
代理人 松井 光夫  
代理人 村上 博司  

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