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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1328278
審判番号 不服2016-10055  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-04 
確定日 2017-05-12 
事件の表示 特願2015- 10424「作業車両搭載用のエンジン装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日出願公開、特開2015-121229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年3月16日に出願した特願2009-62907号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年5月16日に新たな特許出願(特願2013-104097号)とし、さらにその一部を平成26年3月26日に新たな特許出願(特願2014-64799号)とし、さらにその一部を平成27年1月22日に新たな特許出願としたものであって、平成27年10月23日付けで拒絶理由が通知され、平成27年12月21日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年3月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成28年7月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されものである。

第2 平成28年7月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年7月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年7月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年12月21日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1及び2の記載を下記の(2)に示す請求項1の記載に補正するものである。

(1) 本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
エンジンルームの上方に配置された運転座席を走行機体の左右中心に対して機体横外側に偏倚させた状態で有した運転部を備えた作業車両に搭載されるディーゼルエンジンが、前記エンジンルームに内装されているエンジン装置であって、
前記ディーゼルエンジンの排気マニホールドからの排気ガスにて駆動する過給機を備えており、
前記ディーゼルエンジンの排気ガスを導入して排気ガスの浄化処理を行う排気ガス浄化装置を、前記ディーゼルエンジンのフライホイール上方であって前記運転座席に対して機体横内側となる位置で前記ディーゼルエンジンと支持脚体を介して連結するとともに、
前記排気ガス浄化装置の長手方向一端側に設けた排気ガス入口管を前記過給機のタービンケースの排気ガス排出側と連通させて、前記排気ガス浄化装置を前記排気マニホールドに連結していることを特徴とする作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項2】
前記作業車両は、走行機体に昇降操作自在に連結された刈取装置を備えており、該刈取装置に刈り取った刈取り穀稈を後方に搬送する穀稈搬送装置を設けるとともに、前記穀稈搬送装置を前記運転部の横側に位置させており、
前記排気ガス浄化装置が前記運転座席に対して前記穀稈搬送装置側に位置するように、前記ディーゼルエンジンに前記排気ガス浄化装置を支持させたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両搭載用のエンジン装置。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
エンジンルームの上方に配置された運転座席を走行機体の左右中心に対して機体横外側に偏倚させた状態で有した運転部を備えた作業車両に搭載されるディーゼルエンジンが、前記エンジンルームに内装されているエンジン装置であって、
前記ディーゼルエンジンの排気マニホールドからの排気ガスにて駆動する過給機を備えており、
前記ディーゼルエンジンの排気ガスを導入して排気ガスの浄化処理を行う排気ガス浄化装置の中央部を、前記ディーゼルエンジンのフライホイール上方であって前記運転座席に対して機体横内側となる位置で前記ディーゼルエンジンと支持脚体を介して連結して、前記ディーゼルエンジンのエンジン出力軸に直交する方向に長い姿勢で前記排気ガス浄化装置が配置されるとともに、
前記排気ガス浄化装置の長手方向一端側に設けた排気ガス入口管を前記過給機のタービンケースの排気ガス排出側と連通させて、前記排気ガス浄化装置を前記排気マニホールドに連結しており、
前記作業車両は、走行機体に昇降操作自在に連結された刈取装置を備えており、該刈取装置に刈り取った刈取り穀稈を後方に搬送する穀稈搬送装置を設けるとともに、前記穀稈搬送装置を前記運転部の横側に位置させており、
前記エンジン出力軸が前記走行機体の左右方向に沿うように前記ディーゼルエンジンが配置されるとともに、前記排気ガス浄化装置が前記運転座席に対して前記穀稈搬送装置側に位置するように支持されていることを特徴とする作業車両搭載用のエンジン装置。」(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を削除して、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2を本件補正後の特許請求の範囲の請求項1とするとともに、本件補正前の「前記ディーゼルエンジンの排気ガスを導入して排気ガスの浄化処理を行う排気ガス浄化装置を、前記ディーゼルエンジンのフライホイール上方であって前記運転座席に対して機体横内側となる位置で前記ディーゼルエンジンと支持脚体を介して連結する」の記載を本件補正後に「前記ディーゼルエンジンの排気ガスを導入して排気ガスの浄化処理を行う排気ガス浄化装置の中央部を、前記ディーゼルエンジンのフライホイール上方であって前記運転座席に対して機体横内側となる位置で前記ディーゼルエンジンと支持脚体を介して連結して、前記ディーゼルエンジンのエンジン出力軸に直交する方向に長い姿勢で前記排気ガス浄化装置が配置される」の記載とし、同様に、「前記排気ガス浄化装置が前記運転座席に対して前記穀稈搬送装置側に位置するように、前記ディーゼルエンジンに前記排気ガス浄化装置を支持させた」の記載を「前記エンジン出力軸が前記走行機体の左右方向に沿うように前記ディーゼルエンジンが配置されるとともに、前記排気ガス浄化装置が前記運転座席に対して前記穀稈搬送装置側に位置するように支持されている」の記載とするものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2に係る発明の発明特定事項である排気ガス浄化装置の配置について限定するものであって、本件補正前の請求項1を引用する請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除及び特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1) 刊行物
(1-1) 刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-33973号公報(出願公開平成21年2月19日。以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。」(段落【0001】)

(イ) 「【0009】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
コンバイン1の走行車台2の上側に走行装置3を設け、この走行車台3の前側に設けた刈取装置4で立毛穀稈を刈取り、この刈取り穀稈の供給を受け、脱穀、及び選別等を行う脱穀装置5を該走行車台3の上側に、この脱穀装置5のフィードチェン7a、及び挟持杆7bを左側にして載置すると共に、該脱穀装置5の右側に脱穀済みで選別済みの穀粒を、この脱穀装置5から供給を受け、一時貯留する穀粒貯留タンク6を載置している。
【0010】
前記脱穀装置5には、穀稈を脱穀する扱胴8を回転自在に軸支する脱穀室9を設け、該脱穀室9の右側下部には、還元される未脱穀処理の二番処理物を再脱穀処理する二番処理胴10を回転自在に軸支する二番処理室11を設け、この二番処理室11の右外側下部には、後二番処理室(通気室)12を設けて二重構成にすると共に、エンジン17のマフラー18から排出される排気風は、該後二番処理室12の移送側から送風して、排出側へ排風すべく設けている。該後二番処理室12を形成すべく設け、又、後二番処理室用後側板(通気室外側壁)13を着脱自在に設けた構成である。該二番処理室11、及び該後二番処理室12等を主に図示して説明する。
【0011】
前記コンバイン1の走行車台3の下側には、図9で示すように、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ2aを張設した走行装置2を配設し、該走行車台3の上側面に脱穀装置5を載置している。該走行車台3の前方部の刈取装置4で立毛穀稈を刈り取りして、後方上部に移送し、該脱穀装置5のフィードチェン7aと、挟持杆7bとで引継いで挟持移送しながら脱穀する。脱穀済みで選別済み穀粒は、該脱穀装置5の右横側へ配設した穀粒貯留タンク6内へ供給され、一時貯留される。
【0012】
前記脱穀装置5のフィードチェン7a、及び挟持杆7bが、走行車台3の上側の左側に位置する状態に載置し、この状態で該脱穀装置5を説明する。
前記脱穀装置5は、図1?図3で示すように、この脱穀装置5の上部には、穀稈を脱穀する多種類で多数本の扱歯8aを外径部に植設した扱胴8を、扱胴軸8bで回転自在に、脱穀室9内に軸支して設けている。この扱胴8の各扱歯8aの回転外周の下側には、脱穀処理した穀粒と、一部の藁屑と、しこう付着粒等とを漏下させる扱室網8cを、図7で示すように、張設している。」(段落【0009】ないし【0012】)

(ウ) 「【0015】
前記二番処理室11の一方側である右側には、図1?図5で示すように、後二番処理室12を設け、これら二番処理室11と、後二番処理室12とで二重構成に形成している。該後二番処理室12は右側に設けた後二番処理室用後側板13によって形成すると共に、この後二番処理用後側板13は、ボルト等によって締付けし、このボルト等の取り外しにより、着脱自在に設けた構成である。又、走行車台3の上側面にエンジン17を載置して設け、このエンジン17に設けたマフラー18から排出される排気風は、該後二番処理室12の移送側から送風して、排出側へ排風すべく設けている。排出側に設けた略L字形状の二番室排出パイプ11aを経て、この二番室パイプ11aを挿入した二番排出パイプ11bから機外へ排出される構成である。」(段落【0015】)

(エ) 「【0027】
前記脱穀済み穀粒を前記脱穀装置5から供給を受けて、一時貯留する穀粒貯留タンク6を、該脱穀装置5の右横側で走行車台3の上側面に、図14?図17で示すように設けた構成である。
【0028】
前記穀粒貯留タンク6は、図14、及び図15で示すように、左右両側の左・右側壁板6a、6bと、左・右底壁板6c、6dとは二重構造に形成し、左・右空間部6e、6fと、底部空間部6hとを設け、エンジン17のマフラー18から排出される、所定温度の排気風は、該マフラー18と、該底部空間部6hとを排熱パイプ19で接続して設けている。該エンジン17の該マフラー18から排出される排気風は、該底部空間部6hと、該左・右空間部6e、6fを経て、該穀粒貯留タンク6の上部から排出する構成であり、該左・右側壁板6a、6b、及び左・右底壁板6c、6dを熱して乾燥させて、貯留穀粒の流下の向上を図る構成である。
【0029】
これにより、前記穀粒貯留タンク6の内部がエンジン17のマフラー18から排出される所定温度の排気風により、熱せられて乾燥されることにより、貯留穀粒の流れが良好になり、穀粒の詰りを防止することができる。
【0030】
図18?図20で示すように、前記脱穀装置5の左・右側壁板5b、5aには、揺動選別装置23の前後方向略中央部位置に長孔を設け、この長孔部に回転軸20を設け、この回転軸20の一方側の端部にプーリ20aを軸支し、このプーリ20aと、穀粒を移送する移送螺旋軸22の一方側端部に軸支した螺旋用プーリ22aとには、ベルト22bを掛け渡すと共に、テンション装置22cを設け、該回転軸20を回転駆動する構成である。このテンション装置22cの「入」-「切」操作により、この回転軸20を駆動、及び停止操作する構成である。
【0031】
前記回転軸20の左・右側壁板5b、5aの外側面には、円形状の内・外摩擦板20b、20cを軸支して設けると共に、該外摩擦板20cの外側には、スプリング20dを軸支して設け、該スプリング20dの外側には、ギャー20eを軸支して設け、抜け止めを施した構成である。該内・外摩擦板20b、20cが回転駆動し、摩擦熱が発生し、該左・右側壁板5b、5aが熱せられる構成である。
【0032】
前記左・右側壁板5b、5aの外側面で、回転軸20の後側部には、所定間隔に各支持軸21を軸支して設け、この各支持軸21には、該内・外摩擦板20b、20cと、該スプリング20dと、ギャー21aとを軸支して設け、抜け止めを施した構成であり、該各内・外摩擦板20b、20cが回転駆動し、摩擦熱が発生し、該左・右側壁板5b、5aが熱せられる構成である。又、該内・外摩擦盤20b、20cは、図18?図20で示すように、揺動選別装置23の各揺動棚シーブ23aの下側近傍部に設けている。更に、摩擦熱の発生の駆動源は、脱穀装置5の移送螺旋軸22を駆動源とした構成である。
【0033】
これにより、前記内・外摩擦板20b、20cから発生する摩擦熱により、脱穀装置5の左・右側壁板5b、5aが熱せられることにより、該脱穀装置5内の脱穀処理物の水分を蒸発させることができ、このために、該脱穀装置5内での脱穀処理物の詰り防止ができると共に、選別性能の向上を図ることができる。又、条件適応性が向上する。
【0034】
複数個の前記内・外摩擦板20b、20cは、図18、及び図19で示すように、単一の駆動入力源で複数個の駆動をギャー20eと、各ギャー21aとを用いて行う構成である。又、螺旋用プーリ22a部には、変速装置22dと変速レバー22eとを設け、この変速レバー22eの操作により、内・外摩擦板20b、20cの回転速度を変更し、発生する発熱量を変更できる構成である。
【0035】
これにより、広い範囲にわたり、狭いスペースでも前記脱穀装置5の左・右側壁板5b、5aを加熱が可能である。又、作業条件により、発熱量を変更できて、詰り等の発生を防止できる。
【0036】
前記穀粒貯留タンク6は、図21、及び図22で示すように、上部の長方形状のタンク部24aと、下部のV字形状の漏斗部24bとに二分割した構成である。
前記漏斗部24bの一方側底板24cの外側面には、コ字形状の受箱体26を設け、この受箱体26内には、マフラー18を設け、このマフラー18と、エンジン17とは、マフラーパイプ18aで接続すると共に、後側には、後マフラーパイプ18bを機体1aの後端近傍部まで延長して設けている。
【0037】
前記穀粒貯留タンク6の漏斗部24bの一方側の外側面に設けた受箱体26部側には、回動自在に受軸25aを軸支して設け、この受軸25aには、流下板25bを設けると共に、該受軸25aの一方側の外端部には、ハンドル25dを設け、このハンドル25dの回動操作により、該流下板25b上を穀粒が流下する流下角度を調節可能に設け、該流下板25bと、該漏斗部24bを形成する底板24cとの間の空間部25cの広さを可変自在に設け、空気層の巾を変更可能に構成している。
【0038】
これにより、前記穀粒貯留タンク6下部の漏斗部24bを形成する底板24cの一方側に、回動自在に流下板25bを設け、この流下板25bを間接的に加熱することにより、穀粒のすべりを向上させて、穀粒の排出時間を短縮できる。又、穀粒を直接加熱することがないことにより、穀粒の食味を損なうことなく乾燥を促進できる。空気層の巾を変更により、穀粒の流下状態を変更できる。
【0039】
図21、及び図23で示すように、エンジン17から排風される所定温度の排気風は、マフラーパイプ18aからマフラー18、及び接合マフラーパイプ18cを経て、穀粒貯留タンク6の漏斗部24b一方側の底板24c外側面に設けた、コ字形状の受箱体26の前側面から、この受箱体26内へ送風されて、この受箱体26の後側面に設けた後マフラーパイプ18bから排風される。
【0040】
前記受箱体26内を所定温度の排気風が送風されることにより、穀粒貯留タンク6の漏斗部24bの底板24cが熱せられる構成である。
これにより、前記穀粒貯留タンク6の該漏斗部24bの底板24cが熱せられて、乾燥することにより、高水値の穀粒であっても、すべり性が向上することにより、穀粒の詰りを防止できる。又、穀粒が直接加熱されることがないので食味の低下を防止できる。
【0041】
図24、及び図25で示すように、前記穀粒貯留タンク6の下部の漏斗部24bの底板24cの左右両側の外側面には、受箱体26を個別に設け、エンジン17から排出される所定温度の排気風は、該エンジン17からマフラーパイプ18aと、マフラー18と、後マフラーパイプ18bを経て、一方側の受箱体26内へ送風される。又、一方側の該受箱体26と、他方側の該受箱体26とは、接続パイプ18dで接続した構成であり、一方側の該受箱体26内へ送風された所定温度の排気風は、この受箱体26内から該接続パイプ18dを経て、他方側の該受箱体26内へ送風され、該底板24cの左右両外側面を乾燥させて、穀粒流下の向上を図った構成である。」(段落【0027】ないし【0041】)

(オ) 「【0046】
前記走行車台3の前方部には、図9で示すように、刈取装置4を設け、該刈取装置4は前方部より、立毛穀稈を分離する上下に各ナローガイド30a、及び分草体30bと、立毛穀稈を引起す引起装置31と、引起された穀稈を掻込みする穀稈掻込移送装置32の各掻込装置32aと、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置33と、刈取りされた穀稈を挟持移送して脱穀装置5のフィードチェン7aと、挟持杆7bとへ受渡しする該穀稈掻込移送装置32の根元・穂先移送装置32b・32c等からなる該刈取装置4を設けている。該刈取装置4は、油圧駆動による伸縮シリンダ33aにより、土壌面に対して昇降する。」(段落【0046】)

(カ) 「【0049】
前記穀粒貯留タンク6側の前部には、図9で示すように、コンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う操作装置35aと、操縦席35bとを設け、この操縦席35bの下側にエンジン17を載置している。」(段落【0049】)

イ 上記ア及び図面(特に、図9、図15ないし図17、図23、図25及び図31)の記載から分かること
(ア) 上記ア(イ)及び(ウ)の特に、段落【0009】、【0011】及び【0015】等並びに図9等によると、走行装置の符号、走行車台の符号、両者に位置関係についての説明が必ずしも整合的ではないが、段落【0011】の「前記コンバイン1の走行車台3の下側には、図9で示すように、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ2aを張設した走行装置2を配設し、該走行車台3の上側面に脱穀装置5を載置している。」等の記載、通常の語義及び技術常識等からみて、図9の符号3が指す構成要素は走行車台であり、符号2が指す構成要素は走行装置であり、走行車台の下方に走行装置が設けられていることが分かる。

(イ) 上記ア(ウ)及び(カ)の特に、段落【0015】及び【0049】等並びに図9及び図31等によると、コンバイン1は、エンジン装置を構成するエンジン17等を内装するエンジンルームを有し、エンジンルームの上方に配置された操作装置35a及び操縦席35bを備え、エンジン17が操縦席35bの下側に載置されるとともに、走行車台の上側面に載置されていることが分かる。

(ウ) 図15、図23、図25、図31等をみると、エンジン17の排気ガスを導入するマフラー18を、エンジン17のエンジン出力軸の内側端部側に設け、エンジン17のエンジン出力軸に直交する方向に長い態勢で配置していることが看取できる。

イ 刊行物1発明
上記ア及びイ並びに図面(特に、図9、図15ないし図17、図23、図25及び図31)の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

<刊行物1発明>
「エンジンルームの上方に配置された操作装置35a及び操縦席35bを備えたコンバイン1に搭載され、走行車台3の左右中心に対して走行車台3の外側に偏倚した状態で設けられた操縦席35bの下側に載置されるとともに、走行車台3の上側面に載置されるエンジン17が、エンジンルームに内装されているエンジン装置であって、
エンジン17の排気ガスを導入するマフラー18を、エンジン17のエンジン出力軸の内側端部側に設け、エンジン17のエンジン出力軸に直交する方向に長い態勢で配置するとともに、
マフラー18を排気マニホールドに連結しており、
コンバイン1は、走行車台3に昇降操作自在に連結された刈取装置4を備えており、該刈取装置4に刈り取った刈取り穀稈を後方に搬送する穀稈掻込移送装置32を設けるとともに、穀稈掻込移送装置32をエンジンルームの略横側に位置させており、
エンジン出力軸が走行車台3の左右方向に沿うようにエンジン17が配置されるとともに、マフラー18が操縦席35bに対して穀稈掻込移送装置32側に位置するように支持されているコンバイン1搭載用のエンジン装置。」

(1-2) 刊行物2
ア 刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-31955号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「【0001】
この発明は、ディーゼルエンジンに関し、主として作業車両等に搭載するディーゼルエンジンの排気浄化装置の分野に属する。」(段落【0001】)

(イ) 「【0011】
作業車両等のエンジンルーム1に搭載格納したディーゼルエンジン2におけるマフラー3を、該エンジン2の本体上方側に近接配置させると共に、このマフラー3に酸化触媒4とディーゼルパティキュレートフィルタ5を、又はディーゼルパティキュレートフィルタ5のみを内装して設ける。また、該マフラー3本体の外周近接位置を下部側を開放させたマフラーカバー6によって覆うと共に、このマフラーカバー6により、更にマフラー3本体から突出させたテールパイプ7の全長又は適宜長の外周近接位置をも覆うべく延設する。」(段落【0011】)

(ウ) 「【0019】
また、前記の作業車両としてのトラクタやコンバイン等のエンジンルーム1に搭載格納したディーゼルエンジン2において、図3に示す如く、該エンジン2の本体上方側に近接位置するよう配置したマフラー3本体と、該エンジン2のターボチャージャ16とを接続させるL字型のヘッドパイプ17の適宜位置にDOC4を内装すると共に、マフラー3本体側にDPF5を内装して構成させる。」(段落【0019】)

(1-3) 刊行物
ア 刊行物3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-196315号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「【0001】
この発明は、ディーゼルエンジンに関し、主としてディーゼルエンジンの排気中に存在する粒子状物質浄化用のディーゼルパティキュレートフィルタの配設位置に関する。」(段落【0001】)

(イ) 「【0024】
図3(a),(b)に示す如く、ディーゼルエンジン1は、多気筒形態のコモンレール式でシリンダブロック23の上部にシリンダヘッド2を、下部にオイルパン24を配設すると共に、前部にギヤケース25とラジエータファン26を、後部にフライホイル27を各々配設させる。28はクランク軸である。
【0025】
該シリンダヘッド2は、排気側にターボ過給機29を連結させると共に、フライホイル27側の端部を外方に張り出し延出させた延出部2aを設け、この延出部2aに、排気中に存在する粒子状物質(以後PMという)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ3(以後DPFという)を内装し、このDPF3の入口側とターボ過給機29のタービン29a側とを排気管30aによって連結配設させる。
【0026】
このような構成により、該DPF3をシリンダヘッド2の延出部2aに内装していることにより、DPF3を排気管30a等に内装する必要がないから、配管部品も少なく低コストとなり強度不足や異常振動による破損や脱落・火災等の危険性がなくなると共に、該エンジン1からの排気を余り温度の低下がなくDPF3内を通過させることができ、DPF3により排気中に存在するPMを捕集して良好に浄化再生することが可能である。
【0027】
また、前記図3に示す如きディーゼルエンジン1において、図4(a),(b)に示す
如く、該シリンダヘッド2の延出部2aに、該DPF3を多気筒形態に対応して複数個並列に内装して構成させることにより、DPF3を排気管30a等に内装する必要がないから、配管部品も少なく低コストとなり強度不足や異常振動による破損や脱落・火災等の危険性がなくなると共に、該エンジン1からの排気を余り温度の低下がなくDPF3内を通過させることができ、DPF3により排気中に存在するPMを捕集して良好に浄化再生することが可能である。
【0028】
また、前記図3に示す如きディーゼルエンジン1において、図5(a),(b)に示す如く、該シリンダブロック23の後端部位置でフライホイル27の上方側を、必要部位のみ外方に張り出し延出させた延出部23aを設け、この延出部23aにDPF3を内装し、このDPF3の入口側とターボ過給機29のタービン29a側とを排気管30bによって連結配設させる。
【0029】
このような構成により、該DPF3をシリンダブロック23の延出部23aに内装していることにより、DPF3を排気管30b等に内装する必要がないから、配管部品も少なく低コストとなり強度不足や異常振動による破損や脱落・火災等の危険性がなくなると共に、該エンジン1からの排気を余り温度の低下がなくDPF3内を通過させることができ、DPF3により排気中に存在するPMを捕集して良好に浄化再生することが可能である。」(段落【0024】ないし【0029】)

(ウ) 「【0043】
また、農作業機としてのコンバインにおいて、主体の刈取作業ではエンジンの出力をフルに使うため該DPF再生に必要な高温の排気温度が期待できるが、籾排出時は刈取時に比べ負荷が低くDPF再生に必要な排気温度が期待できないため、再生に最適となるよう温度を上昇させる必要がある。」(段落【0043】)

(2) 対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における「操縦席35b」は本願補正発明における「運転座席」に相当し、同様に、「走行車台3」は「走行機体」に、「操作装置35a及び操縦席35b」は「運転部」に、「コンバイン1」は「作業車両」に相当し、したがって、刊行物1発明における「エンジンルームの上方に配置された操作装置35a及び操縦席35bを備えたコンバイン1に搭載され、走行車台3の左右中心に対して走行車台3の外側に偏倚した状態で設けられた操縦席35bの下側に載置されるとともに、走行車台3の上側面に載置されるエンジン17が、エンジンルームに内装されているエンジン装置」と本願補正発明における「エンジンルームの上方に配置された運転座席を走行機体の左右中心に対して機体横外側に偏倚させた状態で有した運転部を備えた作業車両に搭載されるディーゼルエンジンが、前記エンジンルームに内装されているエンジン装置」は、「エンジンルームの上方に配置された運転座席を走行機体の左右中心に対して機体横外側に偏倚させた状態で有した運転部を備えた作業車両に搭載されるエンジンが、前記エンジンルームに内装されているエンジン装置」という限りにおいて一致する。
また、刊行物1発明における「マフラー18」と本願補正発明における「排気ガスの浄化処理を行う排気ガス浄化装置」は「排気ガス処理装置」という限りにおいて一致する。
また、刊行物1発明において、「エンジン17」は「操縦席35bの下側に載置される」から、刊行物1発明における「エンジン17のエンジン出力軸の内側端部側」は本願補正発明における「運転座席に対して機体横内側となる位置」に相当するので、刊行物1発明における「エンジン17の排気ガスを導入するマフラー18を、エンジン17のエンジン出力軸の内側端部側に設け、エンジン17のエンジン出力軸に直交する方向に長い態勢で配置する」と本願補正発明における「前記ディーゼルエンジンの排気ガスを導入して排気ガスの浄化処理を行う排気ガス浄化装置の中央部を、前記ディーゼルエンジンのフライホイール上方であって前記運転座席に対して機体横内側となる位置で前記ディーゼルエンジンと支持脚体を介して連結して、前記ディーゼルエンジンのエンジン出力軸に直交する方向に長い姿勢で前記排気ガス浄化装置が配置される」は、「前記エンジンの排気ガスを導入して排気ガスの処理を行う排気ガス処理装置は、前記運転座席に対して機体横内側となる位置で、前記エンジンのエンジン出力軸に直交する方向に長い姿勢で配置される」という限りにおいて一致する。
また、刊行物1発明における「マフラー18を排気マニホールドに連結しており」と本願補正発明における「前記排気ガス浄化装置の長手方向一端側に設けた排気ガス入口管を前記過給機のタービンケースの排気ガス排出側と連通させて、前記排気ガス浄化装置を前記排気マニホールドに連結しており」は、「排気ガス処理装置を排気マニホールドに連結しており」という限りにおいて一致する。
また、刊行物1発明における「刈取装置4」及び「穀稈掻込移送装置32」は、それぞれ、本願補正発明における「刈取装置」及び「穀稈搬送装置」に相当する。
また、刊行物1発明において、「エンジン17」は「操縦席35bの下側に載置され」、「マフラー18を、エンジン17のエンジン出力軸の内側端部側に設け」ているから、刊行物1発明における「エンジン出力軸が走行車台3の左右方向に沿うようにエンジン17が配置されるとともに、マフラー18が操縦席35bに対して穀稈掻込移送装置32側に位置するように支持されている」と本願補正発明における「前記エンジン出力軸が前記走行機体の左右方向に沿うように前記ディーゼルエンジンが配置されるとともに、前記排気ガス浄化装置が前記運転座席に対して前記穀稈搬送装置側に位置するように支持されている」は、「前記エンジン出力軸が前記走行機体の左右方向に沿うように前記エンジンが配置されるとともに、前記排気ガス処理装置が前記運転座席に対して前記穀稈搬送装置側に位置するように支持されている」という限りにおいて一致する。

したがって、本願補正発明の記載に倣って整理すると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「エンジンルームの上方に配置された運転座席を走行機体の左右中心に対して機体横外側に偏倚させた状態で有した運転部を備えた作業車両に搭載されるエンジンが、前記エンジンルームに内装されているエンジン装置であって、
前記エンジンの排気ガスを導入して排気ガスの処理を行う排気ガス処理装置は、前記運転座席に対して機体横内側となる位置で、前記エンジンのエンジン出力軸に直交する方向に長い姿勢で配置されるとともに、
排気ガス処理装置を排気マニホールドに連結しており、
前記作業車両は、走行機体に昇降操作自在に連結された刈取装置を備えており、該刈取装置に刈り取った刈取り穀稈を後方に搬送する穀稈搬送装置を設けるとともに、前記穀稈搬送装置を前記運転部の横側に位置させており、
前記エンジン出力軸が前記走行機体の左右方向に沿うように前記エンジンが配置されるとともに、前記排気ガス処理装置が前記運転座席に対して前記穀稈搬送装置側に位置するように支持されている作業車両搭載用のエンジン装置。」点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明においては、エンジン装置として「ディーゼルエンジン」を備えるのに対し、
刊行物1発明においては、エンジン装置として「エンジン17」を備える点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
本願補正発明においては、「前記ディーゼルエンジンの排気ガスを導入して排気ガスの浄化処理を行う排気ガス浄化装置」を備え、「排気ガス浄化装置の中央部」を、「前記ディーゼルエンジンのフライホイール上方であって前記運転座席に対して機体横内側となる位置で前記ディーゼルエンジンと支持脚体を介して連結して、前記ディーゼルエンジンのエンジン出力軸に直交する方向に長い姿勢で前記排気ガス浄化装置が配置され」、「前記排気ガス浄化装置が前記運転座席に対して前記穀稈搬送装置側に位置するように支持されている」のに対し、
刊行物1発明においては、「エンジン17の排気ガスを導入するマフラー18」を備え、「マフラー18を、エンジン17の出力軸の内側端部側に設け、エンジン17のエンジン出力軸に直交する方向に長い態勢で配置」し、「マフラー18が操縦席35bに対して穀稈掻込移送装置32側に位置するように支持されている」点(以下、「相違点2」という。)。

<相違点3>
本願補正発明においては、「前記ディーゼルエンジンの排気マニホールドからの排気ガスにて駆動する過給機を備えており」、「前記排気ガス浄化装置の長手方向一端側に設けた排気ガス入口管を前記過給機のタービンケースの排気ガス排出側と連通させて、前記排気ガス浄化装置を前記排気マニホールドに連結して」いるのに対し、
刊行物1発明においては、「マフラー18を排気マニホールドに連結して」いるものの、そのような過給機を備えているかどうか、明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

上記相違点について検討する。
<相違点1>について
刊行物1発明のエンジン17としてディーゼルエンジンを採用することは適宜の設計的事項にすぎない。なお、コンバイン等の作業車両のエンジンは、一般に、ディーゼルエンジンである。

<相違点2>について
まず、刊行物1発明においても排気ガスを浄化する装置を設けることが、例えば環境対策上ないし法的規制上、望ましいことはいうまでもない。このような装置として、刊行物2には、コンバイン等の作業車両等のエンジンルーム1に搭載格納したディーゼルエンジン2におけるマフラー3に酸化触媒4ないしディーゼルパティキュレートフィルタ5を設けること(以下、「刊行物2技術」という。)が示されている。
そうすると、刊行物1発明のマフラー18に刊行物2技術を適用することはごく自然ないし必然的な設計であり、格別の困難性はない。
次に、刊行物1発明においては、マフラー18を、エンジン17のエンジン出力軸の内側端部側に設けている(刊行物1の図15、図23及び図25等。)一方で、エンジン17のエンジン出力軸の内側端部側にフライホイールが設けられているかどうかは必ずしも明らかではないが、刊行物3(特に、段落【0025】及び【0026】並びに図3)には、コンバイン等の作業車両等において、振動等を考慮して、ディーゼルエンジン1のシリンダヘッド2に、フライホイル27側の端部を外方に張り出し延出させた延出部2aを設け、この延出部2aにディーゼルパティキュレートフィルタ3を内装し、ディーゼルパティキュレートフィルタ3の略中央部分がフライホイル27の略上方に位置するようにしたもの(以下、「刊行物3技術」という。)が示されている。
ここで、刊行物3技術における延出部3aの構造や製作工程については、必ずしも明らかではないが、ディーゼルパティキュレートフィルタ3は、少なくとも、延出部3aのシリンダヘッド2側の部分を介してシリンダヘッド2に支持・連結されているといえる。一方、本願補正発明では支持脚体の具体的構成は特に限定されておらず、その限りでは、延出部3aのシリンダヘッド2側の一部が本願補正発明における支持脚体に比肩するとみることもできる。また、ディーゼルパティキュレートフィルタ等の排気ガス浄化装置に生じる振動等を考慮して、排気ガス浄化装置をボルトやブラケットを介してシリンダヘッドに取り付けることは、例えば、特開2003-120277号公報(特に、段落【0005】、【0006】、【0020】及び【0045】)に示されているように、原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。
してみると、刊行物1発明において、刊行物3技術及び周知技術1を適用して、マフラー18等を、支持脚体を介してシリンダヘッドに取り付けることは、振動低減等の点からみて、至極妥当な合理的設計であり、格別の困難性はない。

<相違点3>について
ディーゼルエンジン等のエンジンにおいて、エンジンと排気ガス浄化装置との間に過給機を備えることは、例えば、刊行物2(特に、段落【0019】)、刊行物3(特に、段落【0025】及び【0028】)に示されているように、原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)であり、刊行物1発明において周知技術2を適用することに格別の困難性はない。その際、マフラー18等の長手方向一端側に設けた排気ガスの入口管を過給機のタービンケースの排気ガスの排出側と連通させることは、スペースの有効利用等の点から、適宜の設計的事項にすぎない。

以上からすると、刊行物1発明において、刊行物2技術、刊行物3技術、周知技術1及び2を適用して、相違点1ないし3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
そして、本願補正発明は、全体としてみても、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術、周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

以上に関して、請求人は、審判請求書において、「(3).引用文献との対比 引用文献3のように、シリンダヘッド内に排気ガス浄化装置を支持させた場合、排気ガス浄化装置を高温に維持できますが、排気ガス浄化装置の温度上昇が異常となった場合、シリンダヘッド内の別部品への影響が大きくなります。」(引用文献3は本審決の刊行物3である。)と主張する。刊行物3では、DPF3をシリンダヘッド2の延出部2aに内装しており、シリンダヘッド2自体に設けているものではないが、それはひとまず措くとして、延出部2aの具体的構造・寸法等は必ずしも明らかではない。一方、本願明細書には、例えば「【0062】・・・。図7及び図8に詳細に示すように、DPF65の長手方向中央部は、支持脚体としての剛体構造の支持ブロック体131を介してシリンダヘッド60に連結されている。・・・」と記載されており、支持脚体の例として「剛体構造の支持ブロック体131」が示されており、相当程度の寸法・質量が想定されている。してみると、排気ガス浄化装置の温度上昇が異常となった場合の熱伝導等の熱影響について、定量的にどの程度の差異があるのか、必ずしも一概にいうことはできない。
また、「本願発明は、(1)排気ガス浄化装置をシリンダヘッドに連結する点と、(2)排気マニホールド上方に過給機を配置するとともに、タービンケースの排気ガス排出側に排気ガス浄化装置の排気ガス入口を連通する点とを特徴として備えることにより、引用文献3のような支持構造でなくても、重量物となる排気ガス浄化装置をエンジン上方で高剛性に支持できるため、シリンダヘッド内の別部品への排気ガス浄化装置による熱的影響を低減させるものとなります。更に、本願発明によるコンバインは、発熱体となる排気ガス浄化装置をシリンダヘッド外部となるエンジン上方に設置して穀稈搬送装置側に配置でき、排気ガス浄化装置の放熱効果により脱穀装置に投入する穀稈を乾燥させるといった特有の効果をも奏します。」と主張する。排気マニホールド上方に過給機を配置すること、及び排気ガス浄化装置をエンジン上方に設置することが本願補正発明の発明特定事項ではあるとは理解し難いが、それはひとまず措くとして、排気マニホールド上方に過給機を配置することは、例えば刊行物3(特に、図3)に示されているように、また、排気ガス浄化装置をエンジン上方に設置することは、例えば刊行物2(特に、図1ないし3)、刊行物3(特に、図3)に示されているように、いずれも原出願の出願前に広く知られている。また、ディーゼルパティキュレートフィルタ等の排気ガス浄化装置に生じる振動等を考慮して、排気ガス浄化装置を支持脚体を介してシリンダヘッドに取り付けることが広く知られていることは上述したとおりである。

(3) まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年7月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成27年12月21日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1を引用する請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に示した請求項1及び2に記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に頒布されたに頒布された刊行物1ないし3には、図面とともに、上記第2[理由]3に摘記したとおりの事項及び発明が記載されている。

3 対比・判断
上記第2の[理由]の2で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項を限定したものである。そして、本願発明の発明特定事項を限定した本願補正発明が上記第2[理由]3(2)のとおり、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、実質的に同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-24 
結審通知日 2017-03-01 
審決日 2017-03-29 
出願番号 特願2015-10424(P2015-10424)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子菅家 裕輔  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 槙原 進
伊藤 元人
発明の名称 作業車両搭載用のエンジン装置  
代理人 渡辺 隆一  

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