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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1328289
審判番号 不服2015-20157  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-10 
確定日 2017-05-11 
事件の表示 特願2011- 14034号「食品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月16日出願公開、特開2012-152138号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年1月26日を出願日とする特許出願であって、平成27年8月4日付けで拒絶査定され、平成27年11月10日に拒絶査定不服審判が請求された後、平成28年10月4日付けで当審の拒絶理由が通知され、平成28年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年12月12日付け手続補正書によって補正された明細書および特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)および請求項5に係る発明(以下「本願発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1および請求項5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

(本願発明1)
「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)が含まれているヤギホエーを凍結乾燥してなる成分と、賦形剤とを含有する錠剤の固形サプリメントであって、
前記ヤギホエーを凍結乾燥してなる成分を10質量%以上、40質量%以下含有し、
前記上皮細胞増殖因子(EGF)の含有量が、2.0μg/g以下であることを特徴とする食品組成物(ただし、育児用人工乳を除く)。」

(本願発明5)
「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)が含まれているヤギホエーを凍結乾燥してなる成分と、他の栄養素または食品成分として、ヒアルロン酸もしくはその塩、コラーゲン、または、コエンザイムQ10を含有するドリンク剤であって、
前記ヤギホエーを凍結乾燥してなる成分を0.5質量%以上、20質量%以下含有し、
前記上皮細胞増殖因子(EGF)の含有量が、0.1μg/mL以下であることを特徴とする食品組成物(ただし、育児用人工乳を除く)。」

3 刊行物
(1) 当審の拒絶理由に引用した、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2009-234980号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)及び/又は繊維芽細胞成長因子(以下、FGFと云う)を含む細胞・組織成長・増殖因子(以下、細胞成長因子類と云う)にN-アセチルノイラミン酸(シアル酸)、及び/又はノイラミン酸及び/又はプラセンタ成分を配合してなることを特徴とする、美容組成物。
【請求項2】
前記N-アセチルノイラミン酸及びノイラミン酸(以下、ノイラミン酸類と云う)は卵、牛乳、プラセンタ及びアナツバメの巣エキス(以下、燕窩と云う)由来のもので、その1種又は2種以上の組み合わせよりなることを特徴とする、請求項1に記載の美容組成物。
【請求項3】
前記ノイラミン酸類は、卵、牛乳及び燕窩を酸又はカチオン型イオン交換樹脂による加熱・加水分解して得られた単糖類であり、これらの原料に含まれるたんぱく質の加水分解によるアミノ酸を随伴するものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の美容組成物。
【請求項4】
前記美容組成物は、化粧料及び美容健康食品(液状、粒状・顆粒状・粉末状、カプセル状のものを含む)であることを特徴とする、請求項1?3の何れかに記載の美容組成物。
【請求項5】
前記細胞成長因子類にノイラミン酸類、プラセンタ、コラーゲン、発酵熟成コラーゲン(以下、LCPと云う)の内、1種以上の成分を配合してなることを特徴とする、請求項1?4の何れかに記載の美容組成物。
【請求項6】
前記細胞成長因子類にプラセンタエキス、果糖ブドウ糖液糖、精製蜂蜜、LCP、トレハロース、ピーチ果汁、シルクペプチド、オリゴペプチド、ローヤルゼリー、ガラナ抽出液、ショウガ抽出液、ノイラミン酸類、イワベンケイ根エキス、ムコ多糖体、酸味料、増粘多糖類、香料、ビタミンC、甘味料(スクラロース)、ビタミンB群、ヒアルロン酸の内1種以上の成分を配合してなることを特徴とする、請求項1?5の何れかに記載の美容健康ドリンク。」

(イ) 「【0005】
上皮細胞成長因子(正式名称:上皮細胞成長因子または表皮成長因子)の英語名は Epidermal Growth Factor (EGF)であり、人間および哺乳動物の体内に存在するものであり、アメリカのコーエン博士は1962年、初めて上皮細胞再生因子を発見し、1985年にノーベル生理学賞を受賞している。」

(ウ)
「【0011】
本発明が解決しようとする課題は、使用する化粧料成分や美容健康飲料成分を特定することにより、より効果的な美容作用を図り、またその成分の活性化、収率向上を図るものである。
殊に、細胞成長因子類を活性化するためにノイラミン酸類を配合し、またプラセンタ中のノイラミン酸類を強化することを目的とし、酸分解或いは又カチオン型イオン交換樹脂を使用するものである。これにより、本発明は美容組成物に極めて重要であり不可欠であるアミノ酸類を、原料に含まれるたんぱく質の加水分解により得るものである。
そもそもシアル酸は生体にとって極めて重要な物質であり、従来多くの研究がなされてきた。シアル酸は前記のごとくN-アセチルノイラミン酸の別名であり、脱アセチル化されたノイラミン酸も重要な化合物として知られている。これらのノイラミン酸類は単糖類の形態で存在するのではなく、個々が重合したオリゴ糖の形で存在している。燕窩を酵素分解して可溶化する試みがなされ、前記のように特許公報に記載されているが、可溶化の目的は果たせてもノイラミン酸類を単糖類として存在させることはできないのである。
本発明者はこの点に鑑み種々検討を重ねた結果、燕窩を酸で加熱・加水分解させることにより目的のノイラミン酸類を遊離させることに成功し目的を達成したのである。」

(エ) 「【0013】
上記目的は、本発明によれば前記細胞成長因子類にノイラミン酸類及び/又はプラセンタ成分を配合してなることを特徴とする美容組成物により達成される。
本発明においては、前記細胞成長因子類にノイラミン酸類及び/又はプラセンタ成分を配合してなるので、細胞成長因子類やノイラミン酸類の作用効果がより相乗的に発揮される。」

(オ) 「【0016】
また、本発明によれば前記美容組成物は、化粧料及び美容健康食品(液状・粒状・顆粒状・粉末状・カプセル状のものを含む)により達成される。」

(カ) 「【0021】
以下、この発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0022】
以下に、本発明に使用するEGFの作用と生物学的反応を示す。なお、上述のように、詳細は本出願人の特許出願に係る特願2006-312745を参照されたい。
EGFは多機能の細胞再生因子で、細胞膜のEGF受容体と結合し、新しい細胞の生産を促進する。EGFの受容体は一種の糖タンパクで、細胞膜の表面に存在する。EGFと細胞膜上のEGF受容体の結合は、飽和性と高度の敏感性を備えている。つまり、EGFは微量で細胞に作用し、しかもいったんEGFと受容体が結合すれば、その他のEGF分子と細胞上のEGF受容体の結合を阻止する。同一の受容体は二つ以上のEGF分子と同時に結合することはできず、その他のEGF分子は、その細胞には余計なものとなる。EGFは広範な生物学的反応を備えており、上皮や上皮組織の成長を促進する作用がある。またEGFは皮膚の上皮細胞の新陳代謝を促進し、消炎、鎮静作用があるため、皮膚の老化防止や若返りなどの目的で、化粧品用途にも益々の使用が期待される。」

(キ) 「【0026】
以下に、本発明において、美容健康飲料に使用される他の成分の特徴について述べる。
果糖ブドウ糖液糖は、生体内の活動エネルギーになるブドウ糖や果糖が含まれる。甘味の質は砂糖に極めて近く、すっきりとした清涼感を与える。
LCPは、コラーゲンよりも体内からの吸収が約2.5倍と高く、コラーゲンのもつ体の保湿性向上や爪や毛髪への美容効果なども得られる。
トレハロースは、自然界に存在する糖質の一種で、タンパク質、核酸、細胞膜など生体成分を安定化させる作用が高く、外界から受ける乾燥などのストレスから生体を保護する機能を持っている。
シルクペプチドは、消化吸収されるシルク分解成分であり、コラーゲンの構成要素として知られる必須アミノ酸をはじめとする18種のアミノ酸を含んでいる。また、これらのアミノ酸が吸収され易い形で存在しており、より高い美容効果を発揮する。
ローヤルゼリーは、蜜蜂の体内で合成され、女王蜂にだけ与えられる物質で、多くのビタミン類、ミネラル、アミノ酸などをバランス良く含んでいる。抗炎症作用や免疫賦活作用などの健康作用がある。
オリゴペプチドは、30?50以下の様々なアミノ酸が決まった順番で結合して出来たもので、アミノ酸単体よりも消化吸収が速いといわれている。血中コレステロール値・中性脂肪の値を正常化し、便秘の解消の作用がある。
ガラナ抽出液は、カフェイン、タンニン、サポニンや油脂などを含み、強壮、健胃、下痢止め、興奮、鎮痛、疲労回復などに幅広く用いられている。
ショウガ抽出液は、6-ジンゲロールと云う含有成分により、鎮静、鎮痛、胃運動抑制などの薬理作用があるとされている。
ヒアルロン酸は、ムコ多糖の一種であり、保水性に優れている。また、コラーゲンの変性を抑えて肌のハリを維持し、シミやしわの予防と肌の弾力を維持する作用を持つ。
イワベンケイ根エキスは、高山植物であるイワベンケイソウから抽出したもので、優れた抗酸化作用と温度ストレス防護作用を持つ。またコラーゲン、エラスチンの吸収促進だけではなく、その形成促進をも行なう。詳細は、本出願人の特許出願に係る、特願2005-317431(特開2007-119433号公報)を参照されたい。
ムコ多糖体は、無数のコンドロイチンやヒアルロン酸などで構成されるゼリー状のタンパク球である。細胞を結合させる役割を持ち、体内の保水力や弾力性の維持に重要な成分である。
増粘剤(カラギーナン)は、ゲル化剤、安定剤としての添加物である。
ビタミンCは、美容のビタミンとも呼ばれる水溶性ビタミンである。細胞間を支えるコラーゲンの合成に作用している。また、抗酸化作用を持つ。
甘味料(D・キシロース)は、植物中に存在する多糖類であるキシランの構成成分で食品添加物として幅広く用いられている。
ビタミンB群とは、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチンの8種の総称である。ビタミンB群は特に抗炎症作用や皮脂分泌調節作用が顕著で、外用した場合は、肌をなめらかにして、肌荒れを治す効果がある。
【0027】
(実施例1)以下により、細胞成長因子類やノイラミン酸類などが効果的に配合された美容健康飲料(ドリンク)を得た。
成分名 配合量
(単位mg/50mL中)
1 精製水 適量
2 果糖ブドウ糖液糖 9000.0
3 増粘多糖類 215.0
4 トレハロース 1000.0
5 シルクペプチド 25.0
6 オリゴペプチド 25.0
7 ローヤルゼリー 25.0
8 シアル酸成分 (ノイラミン酸類) 10.0
9 精製蜂蜜 5000.0
10 コラーゲンLCP液 2000.0
11 プラセンタエキス 30000.0
12 ヒアルロン酸 0.5
13 ガラナ抽出液 25.0
14 ショウガ抽出液 25.0
15 イワベンケイ根エキス 10.0
16 ムコ多糖体 10.0
17 ビタミンC 50.0
18 ビタミンB群 50.0
19 甘味料(スクラロース) 2.5
20 EGF 0.02
21 ピーチ果汁 600.0
22 酸味料 350.0
23 香料 176.0
製法および工程は、以下に示すとおりである。
1) 1を60℃まで加温する。
2) 1)に2?4を加え、80?85℃まで加温する。
3) 5?8を2)に加えて溶解させる。
4) 9?16をあらかじめ混合し、加える。
5) 40℃以下まで冷却する。
6) 17?23を順次混合して完成させる。」

これらの記載事項を総合すると、引用例1には、特に、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項4に記載された事項及び請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6に記載された事項に基づいて、次の発明(それぞれ、「引用発明1」および「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明1:請求項1を引用する請求項4)
「上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)及び/又は繊維芽細胞成長因子(以下、FGFと云う)を含む細胞・組織成長・増殖因子(以下、細胞成長因子類と云う)にN-アセチルノイラミン酸(シアル酸)、及び/又はノイラミン酸及び/又はプラセンタ成分を配合してなる美容組成物である、粒状の美容健康食品。」

(引用発明2:請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6)
「上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)及び/又は繊維芽細胞成長因子(以下、FGFと云う)を含む細胞・組織成長・増殖因子(以下、細胞成長因子類と云う)にN-アセチルノイラミン酸(シアル酸)、及び/又はノイラミン酸及び/又はプラセンタ成分を配合してなる液状の美容組成物であって、
前記細胞成長因子類にノイラミン酸類、プラセンタ、コラーゲン、発酵熟成コラーゲン(以下、LCPと云う)の内、1種以上の成分を配合してなり、
前記細胞成長因子類にプラセンタエキス、果糖ブドウ糖液糖、精製蜂蜜、LCP、トレハロース、ピーチ果汁、シルクペプチド、オリゴペプチド、ローヤルゼリー、ガラナ抽出液、ショウガ抽出液、ノイラミン酸類、イワベンケイ根エキス、ムコ多糖体、酸味料、増粘多糖類、香料、ビタミンC、甘味料(スクラロース)、ビタミンB群、ヒアルロン酸の内1種以上の成分を配合してなる、美容健康ドリンク。」

(2) 当審の拒絶理由に引用した、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平1-148146号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア) 「2.特許請求の範囲
(1)獣乳由来の上皮細胞成長因子を配合して成る育児用人工乳。
(2)獣乳が牛乳、ヤギ乳、スイギュウ乳である特許請求の範囲第1項記載の育児用人工乳。
(3)育児用人工乳が育児用粉乳または育児用液体人工乳である特許請求の範囲第1項または第2項記載の育児用人工乳。
(4)上皮細胞成長因子を1.8?310μg/100gの割合で育児用粉乳に配合して成る特許請求の範囲第3項記載の育児用人工乳。
(5)上皮細胞成長因子を3?400ng/ml(当審注:「ml」の「l」は筆記体の「アルファベットのエルの小文字」を表す。以下、引用例2の引用において同様。)の割合で育児用液体人工乳に配合して成る特許請求の範囲第3項記載の育児用人工乳。」(1ページ 「2.特許請求の範囲」)

(イ) 「本発明で用いるEGFは、獣乳を出発原料とするが、量的確保から牛乳、ヤギ乳、スイギュウ乳が好ましく、EGFの含有量は、それぞれ牛乳で約3ng/ml、ヤギ乳で約3ng/mlおよびスイギエウ乳で約5ng/mlである。
これらの獣乳からEGFを以下のようにして調製する。
牛乳、ヤギ乳およびスイギュウ乳の生乳または還元乳を処理したものからホエーを分離する。この分離法としては、例えば乳酸菌を乳に作用させた後、レンネットを反応させてホエーを分離しても良いが他の手段を用いることもできる。このホエーを分画分子量8,000?10,000の膜に通し、透過液を得る。次いで、透過液を分画分子量500?5,000の透過膜で更に透析し、透析膜内液を得る。この内液は、約110?900ng/mlのEGFを含有する濃縮液で、このEGF含有濃縮液は、そのまま育児用粉乳または育児用液体人工乳に使用可能であるが、更に必要に応じてイオン交換カラムクロマトグラフィーあるいは、アフィニティークロマトグラフィー等の分画手段の一種または二種を組合せたものに付して、EGF含有濃度を高め、より純度の高いEGFを得る事も可能である。
更にまたEGFは、生乳もしくはホエーをエタノール等の有機溶媒で抽出して、この抽出液を膜分画することによっても得られる。
上記のようにして得られたEGFの配合方法は、育児用液体人工乳の場合には、原料を滅菌し調製した溶液に、除菌したEGF含有濃縮溶液を添加混合して、常法に従って冷却する。また育児用粉乳の場合には、原料を均質化後殺菌した調製溶液に、除菌したEGF含有濃縮液を添加混合して、常法に従って濃縮、乾燥して粉乳としてもよいが、EGFを含有する除菌濃縮液を、例えば凍結乾燥等の手段を用いて粉末にした後、育児用粉乳と粉々混合することもできる。
尚、本発明で育児用人工乳に配合するEGFの量は、母乳と同等の効果を付与するために、固形率13?16重量%の調乳時において、育児用粉乳に対して1.8?310μg/100g、好ましくは3?300μg/100g、また育児用人工乳に対して3?400ng/ml、好ましくは5?380ng/mlを基準とするのが望ましい。」(2ページ左下欄13行?3ページ左上欄15行)

(ウ) 「(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
EGF濃縮粉の調製
牛乳(還元乳でもよい)100l(当審注:「l」は筆記体の「アルファベットのエルの小文字」を表す。以下同様。)に乳酸菌を添加し、37℃で1時間作用させ、pHが6.5?6.0になった時、レンネットを3/100,000重量/重量の割合で加え、30?35℃の温度で30?60分間反応させた。生じたホエーを10,000Gで15分間遠心分離した後、上清を分画分子量10,000の膜に通して透過液を得た。この透過液を1/10に濃縮して、エタノールを加え、混合した。
更にこれを3,000Gで15分間遠心分離した後、上層液を取り除き、エタノールを留去した。残渣を0.04Mの酢酸ナトリウム緩衝液、pH3.9、10lに溶解し、同緩衝液で平衡化したCM-52セルロースカラム(直径10×高さ100cm、ワットマン社製)に吸着させた。同緩衝液でカラムをよく洗浄した後、20lの1M酢酸ナトリウム緩衝液、pH3.9でEGFに冨む画分を溶出し、溶出液を1lに濃縮した。この濃縮液を透析分画分子量1,000の透析チューブに入れ、純水に対して18時間透析を行い、透析膜内液を凍結乾燥してウシEGF濃縮粉3.0gを得た。
さらに同様の方法により、それぞれヤギ乳およびスイギュウ乳由来のEGF濃縮粉を得た。
EGF含有量の測定:
上記の方法で得られたウシEGF濃縮粉と、母乳(初乳および4週間経過後の成乳)、生牛乳、ヤギ乳、スイギュウ乳および市販育児用粉乳について、EGF含有量を比較するため、各試料の溶液1mlを20,000Gで30分間遠心分離した後、その中間層を常法に従ってラジオレセプターアッセィを用いて測定した。
その結果を表1に示す。尚、ウシEGF濃縮粉は固形率が0.27%になるように純水に溶解したものを試料とした。また、市販育児用粉乳は固形率が13%になるように純水に溶解したものを使用した。
表1
(略)

実施例2
ヒト正常細胞に対する増殖促進効果の試験
ヒト肺由来WI-38細胞を2%コウシ血清を含むタルベッコの変法イーグル培養液中でコンフェルントの状態に培養した。この細胞に、表2に示す試料の溶液をそれぞれ2.5μl(当審注:「μl」の「l」は筆記体の「アルファベットのエルの小文字」を表す。以下同様。)ずつ加え、更に^(3)Hラジオアイソトープで標識したチミジンを加えた。この細胞を37℃で炭酸ガス存在下において48時間培養した後、培養液を除去して、細胞内に取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンターにより測定した。増殖促進効果は、細胞内に取り込まれた放射性チミジンの量をDNA合成の指標とした。
その結果を表2に示す。
表2
(略)

尚、表中対照は、市販のダルベッコの変法イーグル培養液のみを2.5 μl添加したときの放射活性を示す。
ヤギおよびスイギュウEGF濃縮物は、実施例1に示したウシEGF濃縮物と同様の方法によって調製した。また、市販育児用粉乳とウシEGF濃縮物を混合した試料は、ウシEGFをそれぞれ292μg/100gおよび3.7μg/100g配合したものを使用した。
表2に見られる通り、市販育児用粉乳にウシEGFを配合した本発明のウシEGF含有育児用粉乳は、母乳(初乳および成乳)と同程度の細胞増殖能を有することが認られる。」(3ページ右上欄5行?4ページ右上欄下から2行)

(エ) 3ページの「表1」には「試料」が「ウシEGF濃縮物0.27%w/v」の「EGF含有量(ng/ml)」は「130.0」であることが記載され、4ページの「表2」には「試料」が「ヤギEGF濃縮物0.27%w/v」の「EGF含有量ng/well」は「0.255」であり、「試料」が「ウシEGF濃縮物0.27%w/v」の「EGF含有量ng/well」は「0.325」であることが記載されている。

4 対比・判断
(1) 本願発明1について
本願発明1と引用発明1とを対比する。
名称・機能等からして、引用発明1の「上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)」「を配合してなる美容組成物である、」「粒状の美容健康食品」は、本願発明1の「食品組成物(ただし、育児用人工乳を除く)」に相当する。
そして、本願発明1の「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)が含まれているヤギホエーを凍結乾燥してなる成分と、賦形剤とを含有する」態様と引用発明1の「上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)及び/又は繊維芽細胞成長因子(以下、FGFと云う)を含む細胞・組織成長・増殖因子(以下、細胞成長因子類と云う)にN-アセチルノイラミン酸(シアル酸)、及び/又はノイラミン酸及び/又はプラセンタ成分を配合してなる」態様とは、「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)を含有する」態様の限りにおいて一致している。
また、本願発明1の「錠剤の固形サプリメント」と引用発明1の「粒状の美容健康食品」とは、「粒状の食品」の限りにおいて一致している。

したがって、両者は、
「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)を含有する粒状の食品である食品組成物(ただし、育児用人工乳を除く)。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)を含有する粒状の食品に関し、本願発明1では「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)が含まれているヤギホエーを凍結乾燥してなる成分と、賦形剤とを含有する錠剤の固形サプリメント」であるのに対して、引用発明1では「上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)及び/又は繊維芽細胞成長因子(以下、FGFと云う)を含む細胞・組織成長・増殖因子(以下、細胞成長因子類と云う)にN-アセチルノイラミン酸(シアル酸)、及び/又はノイラミン酸及び/又はプラセンタ成分を配合してなる」「粒状の美容健康食品」である点。
[相違点2]
成分含有量に関し、本願発明1では「ヤギホエーを凍結乾燥してなる成分を10質量%以上、40質量%以下含有し、」「上皮細胞増殖因子(EGF)の含有量が、2.0μg/g以下である」のに対し、引用発明1では特段特定されていない点。

上記[相違点1]及び[相違点2]について以下検討する。
粒状の美容健康食品として、賦形剤とを含有する錠剤の固形サプリメントは例示するまでもなく本願出願前周知の事項であるから、引用発明1の具体化の際に、粒状の美容健康食品の形態を賦形剤とを含有する錠剤の固形サプリメントとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用例2(特に、「3 (2) (イ)及び(ウ)」参照。)には、獣乳由来の上皮細胞成長因子(EGF)の調整について、獣乳、特にヤギ乳のホエーから凍結乾燥によるEGF含有粉末を得ることが記載されているから、引用発明1の具体化の際に、そのEGFとして引用例2の上記記載事項から、ヤギホエーを凍結乾燥してなるEGF含有粉末を用いることで、「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)が含まれているヤギホエーを凍結乾燥してなる成分を含有する」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。さらに、引用例2(特に、「3 (2) (イ)」参照。)には、獣乳由来の上皮細胞成長因子(EGF)の調整においては、EGFの含有濃度を高めるために、必要に応じた高純度のEGFとすることが記載されているところ、どの程度のEGFの含有濃度とするかは、その調整のためのコスト等を考慮して適宜設定し得る事項といえる。また、本願明細書の段落【0012】の記載からして、本願発明1の「上皮細胞増殖因子(EGF)の含有量が、2.0μg/g以下である」ことは、最大値程度の意味であって格別な技術的意義があるものともいえない。そうすると、引用発明1の具体化の際に用いるEGF含有粉末のEGFの含有濃度を設定し、EGFの配合量を、錠剤の形態とした引用発明1の粒状の美容健康食品を1日当たり何錠摂取するかや1日当たりのEGFの所望摂取量等から、所望の効果に応じた適宜の量等として設定することにより、EGF含有粉末であるヤギホエー成分の配合量及びEGFの配合量を、「ヤギホエーを凍結乾燥してなる成分を10質量%以上、40質量%以下含有し、」「上皮細胞増殖因子(EGF)の含有量が、2.0μg/g以下である」とする程度のことは、当業者が普通に行う調整の範囲内のことである。
以上のことは、次のことからもいえる。例えば、引用例2には「(4)上皮細胞成長因子を1.8?310μg/100gの割合で育児用粉乳に配合して成る特許請求の範囲第3項記載の育児用人工乳。」(「3 (2) (ア)」参照。)及び「母乳と同等の効果を付与するために、固形率13?16重量%の調乳時において、育児用粉乳に対して1.8?310μg/100g、好ましくは3?300μg/100g、また育児用人工乳に対して3?400ng/ml、好ましくは5?380ng/mlを基準とするのが望ましい。」(「3 (2) (イ)」参照。)と記載され、EGFの含有量を2.0μg/g以下とすることが記載されており、本願発明1のEGF含有量の設定値は当業者が行い得る調整の範囲内のことであるといえる。そして、EGFの調整において、EGF含有粉末のEGFの含有濃度を高めるために必要な分離・濃縮等の工程と、所望のヤギホエーのEGFを除いた成分の含有量(許容範囲)及びヤギホエー由来EGFの含有量とから、EGF含有粉末のEGFの含有濃度をどの程度とするかは当業者が適宜に設定し得る事項であって、2.0μg/g以下のEGFを得るためのヤギホエーを凍結乾燥してなる成分の必要量が10質量%以上、40質量%以下の範囲とすることも、当業者が適宜行える調整の範囲内のことといえる。
そして、本願明細書の記載からして、本願発明1は上記[相違点2]に係る含有量の組合せに特定したことにより格別な効果を奏するものとはいえないところ、本願発明1の全体構成により奏される効果は、引用発明1、引用例2の記載事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願発明1は引用発明1、引用例2の記載事項及び周知の事項に基いて当業者が容易になし得たものである。

(2) 本願発明5について
本願発明5と引用発明2とを対比する。
名称・機能等からして、引用発明2の「上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)」「を配合してなる液状の美容組成物」であって、「コラーゲン」、「ヒアルロン酸」「の内1種以上の成分を配合してなる美容健康ドリンク」は、本願発明5の「ドリンク剤」及び「食品組成物(ただし、育児用人工乳を除く)」に相当する。
そして、本願発明5の「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)が含まれているヤギホエーを凍結乾燥してなる成分と、他の栄養素または食品成分として、ヒアルロン酸もしくはその塩、コラーゲン、または、コエンザイムQ10を含有する」態様と引用発明2の「上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)及び/又は繊維芽細胞成長因子(以下、FGFと云う)を含む細胞・組織成長・増殖因子(以下、細胞成長因子類と云う)にN-アセチルノイラミン酸(シアル酸)、及び/又はノイラミン酸及び/又はプラセンタ成分を配合してなる」、「前記細胞成長因子類にノイラミン酸類、プラセンタ、コラーゲン、発酵熟成コラーゲン(以下、LCPと云う)の内、1種以上の成分を配合してなる」、「前記細胞成長因子類にプラセンタエキス、果糖ブドウ糖液糖、精製蜂蜜、LCP、トレハロース、ピーチ果汁、シルクペプチド、オリゴペプチド、ローヤルゼリー、ガラナ抽出液、ショウガ抽出液、ノイラミン酸類、イワベンケイ根エキス、ムコ多糖体、酸味料、増粘多糖類、香料、ビタミンC、甘味料(スクラロース)、ビタミンB群、ヒアルロン酸の内1種以上の成分を配合してなる」態様とは、「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)と、他の栄養素または食品成分として、ヒアルロン酸又はコラーゲンを含有する」態様の限りにおいて一致している。

したがって、両者は、
「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)と、他の栄養素または食品成分として、ヒアルロン酸又はコラーゲンを含有するドリンク剤である食品組成物(ただし、育児用人工乳を除く)。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点3]
上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)に関し、本願発明5では「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)が含まれているヤギホエーを凍結乾燥してなる成分」であるのに対して、引用発明2では「上皮細胞成長因子(以下、EGF関連物質と云う)及び/又は繊維芽細胞成長因子(以下、FGFと云う)を含む細胞・組織成長・増殖因子(以下、細胞成長因子類と云う)にN-アセチルノイラミン酸(シアル酸)、及び/又はノイラミン酸及び/又はプラセンタ成分を配合してなる」点。
[相違点4]
成分含有量に関し、本願発明5では、「ヤギホエーを凍結乾燥してなる成分を0.5質量%以上、20質量%以下含有し、」「上皮細胞増殖因子(EGF)の含有量が、0.1μg/mL以下である」のに対して、引用発明2では特段特定されていない点。

上記[相違点3]及び[相違点4]について以下検討する。
引用例2(特に、「3 (2) (イ)及び(ウ)」参照。)には、獣乳由来の上皮細胞成長因子(EGF)の調整について、獣乳、特にヤギ乳のホエーから凍結乾燥によるEGF含有粉末を得ることが記載されているから、引用発明2の具体化の際に、そのEGFとして引用例2の上記記載事項から、ヤギホエーを凍結乾燥してなるEGF含有粉末を用いることで、「上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)が含まれているヤギホエーを凍結乾燥してなる成分を含有する」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。さらに、引用例2(特に、「3 (2) (イ)」参照。)には、獣乳由来の上皮細胞成長因子(EGF)の調整においては、EGFの含有濃度を高めるために、必要に応じた高純度のEGFとすることが記載されているところ、どの程度のEGFの含有濃度とするかは、その調整のためのコスト等を考慮して適宜設定し得る事項といえる。また、本願明細書の段落【0014】の記載からして、本願発明2の「上皮細胞増殖因子(EGF)の含有量が、0.1μg/mL以下である」ことは、最大値程度の意味であって格別な技術的意義があるものともいえない。そうすると、引用発明2の具体化の際に用いるEGF含有粉末のEGFの含有濃度を設定し、EGFの配合量を、引用発明2の美容健康ドリンクを1日当たりどの程度の量を摂取するかや1日当たりのEGFの所望摂取量等から、所望の効果に応じた適宜の量等として設定することにより、EGF含有粉末であるヤギホエー成分の配合量及びEGFの配合量を、「ヤギホエーを凍結乾燥してなる成分を0.5質量%以上、20質量%以下含有し、」「上皮細胞増殖因子(EGF)の含有量が、0.1μg/mL以下である」とする程度のことは、当業者が普通に行う調整の範囲内のことである。
以上のことは、次のことからもいえる。例えば、引用例2には「(5)上皮細胞成長因子を3?400ng/mlの割合で育児用液体人工乳に配合して成る特許請求の範囲第3項記載の育児用人工乳。」(「3 (2) (ア)」参照。)及び「母乳と同等の効果を付与するために、固形率13?16重量%の調乳時において、育児用粉乳に対して1.8?310μg/100g、好ましくは3?300μg/100g、また育児用人工乳に対して3?400ng/ml、好ましくは5?380ng/mlを基準とするのが望ましい。」(「3 (2) (イ)」参照。)と記載され、EGFの含有量を0.1μg/mL以下とすることを選択できることが記載されており、本願発明5のEGF含有量の設定値は当業者が行い得る調整の範囲内のことであるといえる。そして、EGFの調整において、EGF含有粉末のEGFの含有濃度を高めるために必要な分離・濃縮等の工程と、所望のヤギホエーのEGFを除いた成分の含有量(許容範囲)及びヤギホエー由来EGFの含有量とから、EGF含有粉末のEGFの含有濃度をどの程度とするかは当業者が適宜に設定し得る事項であって、0.1μg/mL以下のEGFを得るためのヤギホエーを凍結乾燥してなる成分の必要量が0.5質量%以上、20質量%以下の範囲とすることも、当業者が適宜行える調整の範囲内のことといえる。
そして、本願明細書の記載からして、本願発明5は上記[相違点4]に係る含有量の組合せに特定したことにより格別な効果を奏するものとはいえないところ、本願発明5の全体構成により奏される効果は、引用発明2及び引用例2の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願発明5は引用発明2及び引用例2の記載事項に基いて当業者が容易になし得たものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1、引用例2の記載事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明5は、引用発明2及び引用例2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、本願の特許請求の範囲の請求項2ないし4、6及び7に係る発明について検討するまでもなく、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-09 
結審通知日 2017-03-14 
審決日 2017-03-27 
出願番号 特願2011-14034(P2011-14034)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊達 利奈  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 田村 嘉章
佐々木 正章
発明の名称 食品組成物  
代理人 二口 治  
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