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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1328302
審判番号 不服2016-10332  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-08 
確定日 2017-05-11 
事件の表示 特願2014-251665「太陽電池セル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日出願公開、特開2015- 57863〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年11月29日に出願された特願2010-265592号(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願とした特願2012-122217号の一部をさらに新たな特許出願とした特願2014-251665号であって、平成27年9月17日付けで拒絶理由が通知され、同年11月6日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成28年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年7月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年7月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成27年11月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「4つの角部が面取り状である矩形状の光電変換部と、前記光電変換部の一主面の上に配された電極と、を有し、
前記一主面は、第1の方向において前記面取り状角部が設けられている端部と、前記第1の方向において前記面取り状角部よりも中央側に位置している中央部とを含み、
前記電極は、
前記中央部に設けられており、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部と、
前記面取り状角部が設けられている端部において、前記第2の方向に沿って延びる上底部及び下底部と、前記上底部の端部と前記下底部の端部とを接続しており、前記面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部とを含む複数の台形状電極部と、を備え、
前記複数の台形状電極部は前記第一の方向においてそれぞれ離間して設けられており、
前記第1の方向に沿って設けられて複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも前記端部で接続され、前記複数の線状電極部、前記複数の上底部及び前記複数の下底部と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部とを有し、
前記複数の一対の斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、
太陽電池セル。」が

「4つの角部が面取り状である矩形状の光電変換部と、前記光電変換部の一主面の上に配された電極と、を有し、
前記一主面は、第1の方向において前記面取り状角部が設けられている端部と、前記第1の方向において前記面取り状角部よりも中央側に位置している中央部とを含み、
前記電極は、
前記中央部に設けられており、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部と、
前記面取り状角部が設けられている端部において、前記第2の方向に沿って延びる上底部及び下底部と、前記上底部の端部と前記下底部の端部とを接続しており、前記面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部とを含む複数の台形状電極部と、を備え、
前記複数の台形状電極部は、前記第1の方向において隣接する台形状電極部のうち、前記端部側の第1の台形状電極部の下底部と前記中央部側の第2の台形状電極部の上底部、および前記面取り状角部の端辺に沿う方向において前記第1の台形状電極部の一対の斜辺部と前記第2の台形状電極部の一対の斜辺部、がそれぞれ離間して設けられており、
前記面取り状角部が設けられている両端部に渡り前記第1の方向に沿って設けられ、複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも前記面取り状角部が設けられている端部で接続され、前記複数の線状電極部、前記複数の上底部及び前記複数の下底部と直接接続されている少なくともひとつの矩形状のバスバー部とを有し、
前記複数の一対の斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、
太陽電池セル。」と補正されたものである。(下線は補正箇所を示す。)

そして、この補正は、
(1)「台形状電極部」の「離間して設けられて」いる個所について、「前記第1の方向において隣接する台形状電極部のうち、前記端部側の第1の台形状電極部の下底部と前記中央部側の第2の台形状電極部の上底部、および前記面取り状角部の端辺に沿う方向において前記第1の台形状電極部の一対の斜辺部と前記第2の台形状電極部の一対の斜辺部」と限定して特定し、
(2)「第1の方向に沿って設けられ、複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材」について、「面取り状角部が設けられている両端部に渡」るものであると限定して特定し、また、
(3)「バスバー」について、「矩形状」であると限定して特定する補正事項からなり、
特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるといえる。
すなわち、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された刊行物である米国特許4487989号明細書(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、日本語訳は当審において訳したものであり、下記「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

a 「By way of introduction, the front and back of a solar cell 12 are shown in FIGS. 1 and 2. The cell has the shape of a square having its corners cut off at angles of 45°. The solar cell has a semiconductor body 14 (see FIG. 5); a front electrical contact 16 (see FIGS. 1, 3 and 5); and a rear electrical contact 20 (see FIGS. 2, 4 and 5). In accordance with the indicated shape of the body of the solar cell, and as is apparent by reference to FIGS. 2 and 3, such body has one pair of opposed, parallel sides and a second pair of opposed, parallel sides which are perpendicular to the first pair. ・・・(中略)・・・That pad-row-parallel pair of body sides consists of a left side 26 and a right side 28 (with reference to the view of FIG. 1). The other, pad-row-transverse pair of body sides consists of a top 30 and bottom 32 side (with reference to the view of FIG. 1). 」(第5欄第28行から第47行)
はじめに、太陽電池12のフロント側、バック側が図1、2に示されている。該セルは45度の角度の面取り状角部が設けられている矩形を有している。太陽電池セルは半導体基体14を有している(図5参照);フロント電極コンタクト16(図1、3、5参照);背面電極コンタクト20(図2、4、5参照)。太陽電池セル基体の示された形状に対応し、また図2、3を参照することから明らかなように、その基体は、一対の対向する平行な両側と、第1の一対の両側と直交する第2の一対の対向する平行な両側とを有する。・・・(中略)・・・パッド列に対し平行になっている基体の側部の組は、左側26と右側28からなる(図1参照)。一方、パッド列に対し横方向になっている基体の側部の組は、上側30と下側32からなる(図1参照)。

b 「The details of the angle strips, the other strips and the pads are shown in FIG. 3, which shows the lower, right quadrant of FIG. 1. As is apparent by reference to FIG. 1, the upper, right quadrant is symmetrical to the lower, right quadrant, with respect to the midline of the cell face perpendicular to the pad-row-parallel sides 26 and 28; the lower, left quadrant is symmetrical to the lower, right quadrant with respect to the midline perpendicular to the pad-row-transverse body sides 30 and 32; and the upper, left quadrant is symmetrical to the lower, right quadrant with respect to the point of intersection of these two midlines.」(第5欄第60行から第6欄第3行)
傾斜ストリップ、他のストリップ及びパッドの詳細は、図1の右下象限を示す図3に示される。図1から明らかなように、右上象限は、パッド列に対し平行になっている側部26及び28に直交するセル面の中央線に関して、右下象限と対称である;左下象限は、パッド列に対し横方向になっている基体の側部30及び32に直交する中央線に関して、右下象限と対称である。左上象限は、これらの2つの中央線の交差点に関して、右下象限と対称である。

c 「Continuing to refer to FIG. 3, there is an outside pad-row-parallel connector strip 112 having two different widths along its length, the greater being three times as large as the lesser. It extends along the row of pads, for example, in the immediate vicinity of the end 106 and the second-from-the-end 108 pad. It also extends the full dimension of the contact. An end inside pad-row-parallel connector strip 114 extends along the row of pads only near the end and second-from-the end pads. It also has two widths along its length, the lesser being the same as the lesser width of the outside pad-row-parallel connector strip, and the greater being the same as the greater width of such strip. ・・・(中略)・・・A pad-row-parallel outside strip 120 in FIG. 3 also has that same, lesser width.」(第9欄第38行から第58行)
図3について続けると、狭いほうの幅の3倍以上の広い幅である長手方向に異なる2つの幅を有する、パッド列に対しに平行になっている外側コネクターストリップ112を有している。それは、例えば、端部106及び端部から2番目のパッド108のすぐ近くでのパッド列に沿って延びている。それは、接続する全ての範囲にも延びている。パッド列に対し平行になっている端部内側コネクターストリップ114は端部のパッド付近から端部から2番目のパッドまでにのみにパッド列に沿って延びている。それも長手方向に2つの幅を有しており、パッド列に対し平行になっている外側コネクターストリップの狭いほうの幅と同じ幅と、パッド列に対し平行になっている外側コネクターストリップの広いほうの幅と同じ幅を有している。・・・(中略)・・・図3に示されるパッド列に対し平行になっている外側ストリップ120もまた、狭いほうの幅と同じ幅を有している。

d 「Eighteen of a total of thirty-six pad-row-transverse, non-pad-crossing strips 127 are present in FIG. 3. They each have only a single width therealong which is the same as the lesser width discussed in connection with other of the strips.」(第10欄第29行から第31行)
36本のパッド列に対し横方向になっている非パッド接続ストリップ127うちの18本が図3に示されている。それらは、各々他のストリップとの接続において記述された狭いほうの幅と同じ単一の幅を有している。

e 「A corner strip 128 shown in FIG. 3 has a single width which is the smallest of the widths which have been discussed in connection with other of the strips. The corner strip intersects the pad-row-parallel outside strip 120 and the outside one of the pad-row-transverse-non-pad-crossing strips 126.」(第10欄第64行から第11欄第2行)
図3に示されるコーナーストリップ128は、他のストリップとの接続において記述された幅のうちで最も狭い単一の幅を有している。該コーナーストリップはパッド列に対し平行になっている外側ストリップ120とパッド列に対し横方向になっている非パッド接続ストリップ126と接続している。

f 「図1



g 「図3



h 「図5



上記図1,3において、図面の上下方向は、パッド(106,108,110)が配列された方向であり、以下において「パッド配列方向」という。すると、図面の左右方向は「パッド配列方向」と垂直の方向であり、以下において、「パッド配列と垂直の方向」という。
上記の図1、3より、45度の角度の面取り状角部は4つあることが記載されているといえる。
上記の図1、3、5より、「フロント電極コンタクト16」(図5参照)は、パッド配列方向において「4つの45度の角度の面取り状角部」が設けられている上下2つの端部と、パッド配列方向において上記2つの端部の間にある中央部を有することが、記載されているといえる。
上記の図1、3、5より、「フロント電極コンタクト16」は、上記の「中央部」に、パッド配列と垂直の方向に延びる2つの「非パッド接続ストリップ127」(図3参照)を有することが、記載されているといえる。
上記の図1、3、5より、「フロント電極コンタクト16」は、上記の「2つの端部」のそれぞれ(の1つの端部)に、パッド配列と垂直の方向に延びる2つの「非パッド接続ストリップ127」(図3参照)を有することが、記載されているといえる。
上記の図1、3より、「フロント電極コンタクト16」は、パッド配列方向に延びる「外側コネクターストリップ112」を有することが、記載されているといえる。
上記の図1、3より、「フロント電極コンタクト16」は、「非パッド接続ストリップ127」の端部を接続し、「45度の角度の面取り状角部」の端辺に沿って延びる「コーナーストリップ128」(図3参照)を有し、パッド配列と垂直の方向の左右両端の「コーナーストリップ128」と、パッド配列と垂直の方向に延びる上下2つの「非パッド接続ストリップ127」によって台形状の外殻を形成する電極を形成していることが、記載されているといえる。
上記の図1、3より、「コーナーストリップ128」は、パッド配列方向において下側32から1本目と2本目の「非パッド接続ストリップ127」の端部と接続している部分と、下側32から3本目と4本目の「非パッド接続ストリップ127」の端部と接続する部分とを有していることから、「コーナーストリップ128」は、互いに離間して延びている複数の部分を有するといえる。
上記の図1、3、5より、4本の「非パッド接続ストリップ127」の端部は、「コーナーストリップ128」と、「外側コネクターストリップ112」(図3参照)と接続していることが、記載されているといえる。


イ 引用例1に記載された発明の認定
上記「ア」のa?hの記載から、引用例1には、
「半導体基体14と半導体基体14上のフロント電極コンタクト16を有し、上記半導体基体14は、4つの角部が45度の角度の面取り状に設けられている矩形を有する太陽電池セルであって、
上記フロント電極コンタクト16は、パッド配列方向において45度の角度の面取り状角部が設けられている上下2つの端部と、パッド配列方向において上記2つの端部の間にある中央部を有し、
上記フロント電極コンタクト16は、上記の中央部に、パッド配列と垂直の方向に延びる2つの非パッド接続ストリップ127を有し、
上記フロント電極コンタクト16は、上記の2つの端部のそれぞれ(の1つの端部)に、パッド配列と垂直の方向に延びる2つの非パッド接続ストリップ127を有し、
上記フロント電極コンタクト16は、パッド配列方向に延びる外側コネクターストリップ112を有し、
上記フロント電極コンタクト16は、非パッド接続ストリップ127の端部を接続し、45度の角度の面取り状角部の端辺に沿って延びるコーナーストリップ128を有し、パッド配列と垂直の方向の左右両端のコーナーストリップ128と、パッド配列と垂直の方向に延びる上下2つの非パッド接続ストリップ127によって台形状の外殻を形成する電極を形成し
上記コーナーストリップ128は、パッド配列方向において下側32から1本目と2本目の非パッド接続ストリップ127の端部と接続している部分と、下側32から3本目と4本目の非パッド接続ストリップ127の端部と接続する部分とを有していて、互いに離間して延びている複数の部分を有するものであり、
上記の4本の非パッド接続ストリップ127の端部は、コーナーストリップ128と、外側コネクターストリップ112と接続している太陽電池セル。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(2)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「4つの角部が45度の角度の面取り状に設けられている矩形を有する」「半導体基体14」が、本願補正発明の「4つの角部が面取り状である矩形状の光電変換部」に相当する。
引用発明の「半導体基体14上のフロント電極コンタクト16」が、本願補正発明の「前記光電変換部の一主面の上に配された電極」に相当する。
引用発明の「半導体基体14上のフロント電極コンタクト16」「におけるパッド配列方向において45度の角度の面取り状角部が設けられている上下2つの端部」が、本願補正発明の「前記一主面」に含まれる「第1の方向において前記面取り状角部が設けられている端部」に相当する。
引用発明の「パッド配列方向において上記2つの端部の間にある中央部」が、本願補正発明の「前記第1の方向において前記面取り状角部よりも中央側に位置している中央部」に相当する。
引用発明の「上記フロント電極コンタクト16」における「上記の中央部」の「パッド配列と垂直の方向に延びる2つの非パッド接続ストリップ127」することが、本願補正発明の「前記中央部に設けられており、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部」に相当する。
引用発明の「非パッド接続ストリップ127の端部を接続し、45度の角度の面取り状角部の端辺に沿って延びるコーナーストリップ128」が、本願補正発明の「電極」の「前記面取り状角部が設けられている端部」における「前記面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部」に相当し、引用発明の「パッド配列と垂直の方向の左右両端のコーナーストリップ128と、パッド配列と垂直の方向に延びる上下2つの非パッド接続ストリップ127によって台形状の外殻を形成する電極」が、本願補正発明の「前記面取り状角部が設けられている端部において、前記第2の方向に沿って延びる上底部及び下底部と、前記上底部の端部と前記下底部の端部とを接続しており、前記面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部とを含む複数の台形状電極部」に相当する。
引用発明の「上記コーナーストリップ128は、パッド配列方向において下側32から1本目と2本目の非パッド接続ストリップ127の端部と接続している部分と、下側32から3本目と4本目の非パッド接続ストリップ127の端部と接続する部分とを有していて、互いに離間して延びている複数の部分を有するもの」であることが、本願補正発明の「前記複数の台形状電極部は、前記第1の方向において隣接する台形状電極部のうち、前記端部側の第1の台形状電極部の下底部と前記中央部側の第2の台形状電極部の上底部、および前記面取り状角部の端辺に沿う方向において前記第1の台形状電極部の一対の斜辺部と前記第2の台形状電極部の一対の斜辺部、がそれぞれ離間して設けられて」いることに相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明とは、
「4つの角部が面取り状である矩形状の光電変換部と、 前記光電変換部の一主面の上に配された電極と、を有し、
前記一主面は、第1の方向において前記面取り状角部が設けられている端部と、前記第1の方向において前記面取り状角部よりも中央側に位置している中央部とを含み、
前記電極は、
前記中央部に設けられており、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部と、
前記面取り状角部が設けられている端部において、前記第2の方向に沿って延びる上底部及び下底部と、前記上底部の端部と前記下底部の端部とを接続しており、前記面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部とを含む複数の台形状電極部と、を備え、
前記複数の台形状電極部は、前記第1の方向において隣接する台形状電極部のうち、前記端部側の第1の台形状電極部の下底部と前記中央部側の第2の台形状電極部の上底部、および前記面取り状角部の端辺に沿う方向において前記第1の台形状電極部の一対の斜辺部と前記第2の台形状電極部の一対の斜辺部、がそれぞれ離間して設けられている、太陽電池セル。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。

ウ 相違点
本願補正発明においては、「前記面取り状角部が設けられている両端部に渡り前記第1の方向に沿って設けられ、複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも前記面取り状角部が設けられている端部で接続され、前記複数の線状電極部、前記複数の上底部及び前記複数の下底部と直接接続されている少なくともひとつの矩形状のバスバー部とを有し、前記複数の一対の斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない」のに対して、引用発明においてはその点についての特定がない点。

(3)当審の判断
ア 上記相違点について検討する。
太陽電池セルの技術分野において、セル間接続の配線電極を接続する矩形状のバスバーを設けて集電の効率を高めることは周知の技術である(必要とあらば、特開2010-67987号公報(図6)、特開2010-109334号公報(図2)、特開2010-186862号公報(図1)参照)。
引用発明においても,集電効率を向上させるために、上記の周知技術を採用し、矩形状のバスバーを設けることに何らの困難性も認められない。
そして、当該バスバーを設けるに際して配線電極中でどのように設けるか、すなわち、フロント電極コンタクト16におけるどの非パッド接続ストリップと接続するように設けるかは、当業者が必要に応じて適宜設定し得る設計的事項といえるから、バスバーを最も上側の非パッド接続ストリップ127と最も下側の非パッド接続ストリップ127とに渡るように設けて配線電極に接続し、かつ、コーナーストリップ128には直接接続しないように設けて、上記相違点における本願補正発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年7月8日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年11月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成28年7月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成28年7月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 平成28年7月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、(1)「台形状電極部」の「離間して設けられて」いる個所について、「前記第1の方向において隣接する台形状電極部のうち、前記端部側の第1の台形状電極部の下底部と前記中央部側の第2の台形状電極部の上底部、および前記面取り状角部の端辺に沿う方向において前記第1の台形状電極部の一対の斜辺部と前記第2の台形状電極部の一対の斜辺部」と特定し、(2)「第1の方向に沿って設けられ、複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材」について、「面取り状角部が設けられている両端部に渡」るものであると特定し、また、(3)「バスバー」について、「矩形状」であると特定することにより限定したものが本願補正発明である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定しものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成28年7月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明との対比」及び「(3)当審の判断」において記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-02 
結審通知日 2017-03-07 
審決日 2017-03-27 
出願番号 特願2014-251665(P2014-251665)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 俊彦  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
松川 直樹
発明の名称 太陽電池セル  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  

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