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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1328308
審判番号 不服2016-12677  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-23 
確定日 2017-05-11 
事件の表示 特願2011-164087号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年2月7日出願公開、特開2013-27460号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月27日の出願であって、平成27年2月19日付け拒絶理由通知に対して、同年4月21日付けで手続補正がなされ、同年9月24日付け拒絶理由通知に対して、同年11月27日付けで手続補正がなされたところ、平成28年5月19日付け(発送日:平成28年5月24日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、明細書及び特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前に、

(平成27年11月27日付け手続補正)
「【請求項1】
複数の図柄が表面に表示された複数の回転リールと、
前記回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
前記各回転リールの回転をそれぞれ停止させるための複数のストップスイッチと、
遊技機の作動を制御する制御装置とを少なくとも備え、
前記制御装置は、
所定の図柄組合せから構成される役について当選か否かの役抽選を行う役抽選手段と、
前記スタートスイッチの操作に基づいて前記回転リールを回転開始させるとともに、前記各ストップスイッチの操作に基づいて、当該ストップスイッチに対応する前記回転リールの回転停止を制御するリール制御手段と、
前記ストップスイッチの操作を契機に、前記役抽選の結果を遊技者に報知する特定報知演出を実行させるための特定報知演出制御手段とを少なくとも備え、
前記複数の回転リールを全て停止させた状態で、当選している役を構成する図柄組合せに含まれる当選図柄が所定の有効ライン上にあらかじめ定められた配列で停止することにより入賞となり、役に応じた利益が付与される遊技機において、
前記役抽選において、複数の役が同時に当選する場合があるように形成されており、
前記リール制御手段は、
前記複数の役が同時に当選している場合において、前記ストップスイッチが適正な操作態様で操作された場合には、前記複数の役に含まれるあらかじめ定められた特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃うように前記回転リールを停止させ、
前記ストップスイッチが適正な操作態様で操作されなかった場合には、前記特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃わないように、かつ前記特定役以外の役が揃うこともあり得るように前記回転リールを停止させ、
前記特定報知演出制御手段は、
前記複数の役が同時に当選している場合において、特定報知演出の実行を決定し、
いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作態様であり前記特定役の入賞が確定した場合には、当該ストップスイッチの操作を契機に、前記特定役が当選していることを遊技者に報知する特定報知演出を実行させ、
いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作態様でない場合には、前記複数の役の当選を契機に特定報知演出を実行することが決定されていたときには当該決定に係る特定報知演出を破棄して、特定報知演出を全く行わせないように形成されていることを特徴とする遊技機。」

とあったものを、

(本件補正である平成28年8月23日付け手続補正)
「【請求項1】
A 複数の図柄が表面に表示された複数の回転リールと、
B 前記回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
C 前記各回転リールの回転をそれぞれ停止させるための複数のストップスイッチと、
D 遊技機の作動を制御する制御装置とを少なくとも備え、
前記制御装置は、
D1 所定の図柄組合せから構成される役について当選か否かの役抽選を行う役抽選手段と、
D2 前記スタートスイッチの操作に基づいて前記回転リールを回転開始させるとともに、前記各ストップスイッチの操作に基づいて、当該ストップスイッチに対応する前記回転リールの回転停止を制御するリール制御手段と、
D3 前記ストップスイッチの操作を契機に、前記役抽選の結果を遊技者に報知する特定報知演出を実行させるための特定報知演出制御手段とを少なくとも備え、
E 前記複数の回転リールを全て停止させた状態で、当選している役を構成する図柄組合せに含まれる当選図柄が所定の有効ライン上にあらかじめ定められた配列で停止することにより入賞となり、役に応じた利益が付与される遊技機において、
F 前記役抽選において、複数の役が同時に当選する場合があるように形成されており、
前記リール制御手段は、
D2A 前記複数の役が同時に当選している場合において、前記ストップスイッチが適正な操作順番で操作された場合には、前記複数の役に含まれるあらかじめ定められた特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃うように前記回転リールを停止させ、
D2B 前記ストップスイッチが適正な操作順番で操作されなかった場合には、前記特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃わないように、かつ前記特定役以外の役が揃うこともあり得るように前記回転リールを停止させ、
前記特定報知演出制御手段は、
D3A 前記複数の役が同時に当選している場合において、特定報知演出の実行を決定し、
D3B いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作順番であり前記特定役の入賞が確定した場合には、当該ストップスイッチの操作を契機に、前記特定役が当選していることを遊技者に報知する特定報知演出を実行させ、
D3C いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作順番でない場合には、前記複数の役の当選を契機に特定報知演出を実行することが決定されていたときには当該決定に係る特定報知演出を取りやめて、特定報知演出を全く行わせないように形成されていることを特徴とする遊技機。」

と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。記号A?D3Cは、分説するため当審で付した。)。

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「リール制御手段」及び「特定報知演出制御手段」に関して、これらの事項を限定する表現中の「操作態様」を「操作順番」と限定することを含むものである。
また、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の「演出を破棄して」を、「演出を取りやめて」と補正することを含むものであるところ、本件補正前の明細書の段落【0012】に記載された「演出を破棄」の定義と、補正後の明細書の段落【0012】に記載された「演出を取りやめて」の定義が、ともに「いったん実行を決定した演出の実行を取りやめにし、最初から無かったものとして扱うことであり、例えば、実行させる演出データを一時保存しておくための記憶手段から、当該演出データを消去することが含まれる」というように同じであるから、当該補正は、同じ意味内容を平易な言葉で言い換えて、より明りょうにするものであるといえる。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び同項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の段落【0009】、【0012】等の記載からみて、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-36322号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0078】
〔第1実施の形態〕
以下、添付図面を参照して、第1実施の形態について説明する。図1は、この実施の形態にかかるスロットマシンの全体構造を示す正面図であり、図2は、スロットマシンの内部構造を示す図である。スロットマシン1は、前面が開口する筐体1aと、この筺体の側端に回動自在に枢支された前面扉1bと、から構成されている。
【0079】
本実施の形態のスロットマシン1の筐体1a内部には、外周に複数種の図柄が配列されたリール2L、2C、2R(以下、左リール、中リール、右リールともいう)が水平方向に並設されており、図1に示すように、これらリール2L、2C、2Rに配列された図柄のうち連続する3つの図柄が前面扉1bに設けられた透視窓3から見えるように配置されている。」

(イ)「【0088】
また、前面扉1bには、メダルを投入可能なメダル投入部4、メダルが払い出されるメダル払出口9、クレジット(遊技者所有の遊技用価値として記憶されているメダル数)を用いてメダル1枚分の賭数を設定する際に操作される1枚BETスイッチ5、クレジットを用いて、その範囲内において遊技状態に応じて定められた規定数の賭数(本実施の形態では後述の通常遊技状態、準備モード、およびリプレイの当選確率が高確率となるRT(Replay Time)においては3、ボーナスにおいては2)を設定する際に操作されるMAXBETスイッチ6、クレジットとして記憶されているメダルおよび賭数の設定に用いたメダルを精算する(クレジットおよび賭数の設定に用いた分のメダルを返却させる)際に操作される精算スイッチ10、ゲームを開始する際に操作されるスタートスイッチ7、リール2L、2C、2Rの回転を各々停止する際に操作されるストップスイッチ8L、8C、8R、が遊技者により操作可能にそれぞれ設けられている。」

(ウ)「【0098】
ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L、8C、8Rを操作すると、対応するリール2L、2C、2Rの回転が停止し、透視窓3に表示結果が導出表示される。
【0099】
そして全てのリール2L、2C、2Rが停止されることで1ゲームが終了し、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L4上に予め定められた図柄の組合せ(以下、役とも呼ぶ)が各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し、その入賞に応じて定められた枚数のメダルが遊技者に対して付与され、クレジットに加算される。また、クレジットが上限数(本実施の形態では50)に達した場合には、メダルが直接メダル払出口9(図1参照)から払い出されるようになっている。なお、有効化された複数の入賞ライン上にメダルの払出を伴う図柄の組合せが揃った場合には、有効化された入賞ラインに揃った図柄の組合せそれぞれに対して定められた払出枚数を合計し、合計した枚数のメダルが遊技者に対して付与されることとなる。ただし、1ゲームで付与されるメダルの払出枚数には、上限(本実施の形態では、15枚)が定められており、合計した払出枚数が上限を超える場合には、上限枚数のメダルが付与されることとなる。また、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L4上に、遊技状態の移行を伴う図柄の組合せが各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には図柄の組合せに応じた遊技状態に移行するようになっている。」

(エ)「【0107】
遊技制御基板40には、メインCPU41a、ROM41b、RAM41c、I/Oポート41dを備えたマイクロコンピュータからなり、遊技の制御を行なうメイン制御部41、所定範囲(本実施の形態では0?65535)の乱数を発生させる乱数発生回路42、乱数発生回路から乱数を取得するサンプリング回路43、遊技制御基板40に直接または電源基板101を介して接続されたスイッチ類から入力された検出信号を検出するスイッチ検出回路44、リールモータ32L、32C、32Rの駆動制御を行なうモータ駆動回路45、流路切替ソレノイド30の駆動制御を行なうソレノイド駆動回路46、遊技制御基板40に接続された各種表示器やLEDの駆動制御を行なうLED駆動回路47、スロットマシン1に供給される電源電圧を監視し、電圧低下を検出したときに、その旨を示す電圧低下信号をメイン制御部41に対して出力する電断検出回路48、電源投入時またはメインCPU41aからの初期化命令が入力されないときにメインCPU41aにリセット信号を与えるリセット回路49、遊技制御基板40と投入メダルセンサ31との間の電気的な接続状態及び遊技制御基板40と演出制御基板90との間の電気的な接続状態を監視する断線監視IC50、その他各種デバイス、回路が搭載されている。
・・・・・
【0118】
演出制御基板90には、メイン制御部41と同様にサブCPU91a、ROM91b、RAM91c、I/Oポート91dを備えたマイクロコンピュータにて構成され、演出の制御を行なうサブ制御部91、演出制御基板90に接続された液晶表示器51の表示制御を行なう表示制御回路92、演出効果LED52、リールLED55の駆動制御を行なうLED駆動回路93、スピーカ53、54からの音声出力制御を行なう音声出力回路94、電源投入時またはサブCPU91aからの初期化命令が一定時間入力されないときにサブCPU91aにリセット信号を与えるリセット回路95、演出制御基板90に接続されたスイッチ類から入力された検出信号を検出するスイッチ検出回路96、日付情報および時刻情報を含む時間情報を出力する時計装置97、スロットマシン1に供給される電源電圧を監視し、電圧低下を検出したときに、その旨を示す電圧低下信号をサブ制御部91に対して出力する電断検出回路98、受光装置56b、57bからの信号に基づき、液晶表示器51の表示面に対してタッチ操作された位置を特定する処理などを行なうタッチパネルコントローラ99、その他の回路等、が搭載されており、サブCPU91aは、遊技制御基板40から送信されるコマンド、タッチパネルコントローラ99からの出力情報を受けて、演出を行なうための各種の制御を行なうとともに、演出制御基板90に搭載された制御回路の各部を直接的または間接的に制御する。」

(オ)「【0171】
次に、図7を参照して、遊技状態毎に抽選対象役として読み出される抽選対象役の組合せについて説明する。本実施の形態では、遊技状態がいずれであるかによって抽選対象役の組合せが異なる。なお、抽選対象役として後述するように、複数の入賞役が同時に読出されて、重複して当選し得る。図7においては、入賞役の間に“+”を表記することにより、内部抽選において同時に抽選対象役として読み出されることを示す。
・・・・・
【0175】
また、左押しブドウ1とは、ブドウ+バナナブドウ2+バナナブドウ9をいう。左押しブドウ2とは、ブドウ+バナナブドウ5+バナナブドウ12をいう。中押しブドウ1とは、ブドウ+バナナブドウ4+バナナブドウ8をいう。中押しブドウ2とは、ブドウ+バナナブドウ7+バナナブドウ11をいう。右押しブドウ1とは、ブドウ+バナナブドウ1+バナナブドウ3をいう。右押しブドウ2とは、ブドウ+バナナブドウ10+バナナブドウ6をいう。左、中、右押しブドウ1および2におけるブドウは、ブドウ1+ブドウ2+ブドウ3+…+ブドウ8をいう。よって、たとえば、左押しブドウ1とは、ブドウ1?8、バナナブドウ2、およびバナナブドウ9が読み出されて内部抽選が行なわれることを示す。」

(カ)「【0182】
次に、内部抽選について説明する。内部抽選は、上記した各入賞役の発生を許容するか否か、すなわち入賞役を発生させる図柄組合せがいずれかの入賞ラインに揃える制御を行なうことを許容するか否かを、可変表示装置2の表示結果が導出表示される以前に(実際には、スタートスイッチ7操作時に)、決定するものである。内部抽選では、乱数発生回路42から内部抽選用の乱数(0?65535の整数)が取得される。そして、遊技状態に応じて定められた各役について、取得した内部抽選用の乱数と、遊技状態と、リセット/設定スイッチ38により設定された設定値に応じて定められた各入賞役の判定値数に応じて行なわれる。」

(キ)「【0198】
次に、リール2L、2C、2Rの停止制御について説明する。
メインCPU41aは、リールの回転が開始したときおよび、リールが停止し、かつ未だ回転中のリールが残っているときに、ROM41bに格納されているテーブルインデックスおよびテーブル作成用データを参照して、回転中のリール別に停止制御テーブルを作成する。そして、ストップスイッチ8L、8C、8Rのうち、回転中のリールに対応するいずれかの操作が有効に検出されたときに、該当するリールの停止制御テーブルを参照し、参照した停止制御テーブルの引込コマ数に基づいて、操作されたストップスイッチ8L、8C、8Rに対応するリール2L、2C、2Rの回転を停止させる制御を行なう。」

(ク)「【0231】
まず、左押しブドウ1に当選した場合について説明する。
左押しブドウ1に当選し、左リール2Lを第1停止させた場合には、第2停止および第3停止させる操作手順に関わらず、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかを入賞ラインに揃えて停止させるリール制御が行なわれる。なお、第2停止とは、第1停止させた後、2番目にリールを停止させることをいう。第3停止とは、第2停止させた後、3番目であって、最後まで回転しているリールを停止させることをいう。
【0232】
これに対し、左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合には、第1停止されたリールの「バナナ」を入賞ライン上に引き込むリール制御が行なわれる。「バナナ」は、ブドウ1?8を構成する図柄ではない。また、「バナナ」が入賞ライン上に停止したときには、図3に示す各リールの図柄配列より、いずれのリールにおいてもブドウ1?8を構成する「黒ブドウ」または「白ブドウ」を入賞ライン上に停止することがない。たとえば、左リール2Lの「バナナ」が上段に停止したときには、「黒ブドウ」および「白ブドウ」のいずれも下段に停止することがない。このため、左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合には、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれも入賞ラインに揃えて停止させることができなくなる。しかし、左押しブドウ1は、中リール2Cの「バナナ」を構成図柄とするバナナブドウ9と、右リール2Rの「バナナ」を構成図柄とするバナナブドウ2とを含む。
・・・・・
【0236】
このように、左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合であっても、入賞の可能性が残るバナナブドウの構成図柄を入賞ライン上に引き込み可能な停止タイミングとなる操作手順で第2停止および第3停止させたときのみ、対応するバナナブドウ2または9に入賞し得る。
【0237】
一方、左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合で、入賞の可能性が残るバナナブドウの構成図柄を入賞ライン上に引き込み可能な停止タイミングとなる操作手順で第2停止および第3停止されなかったときには、ブドウ1?8およびバナナブドウ2、9のいずれにも入賞せずに、図5(b)で示した特殊出目のいずれかが導出され得る。」

(ケ)「【0255】
次に、本実施の形態にかかるスロットマシン1におけるメイン制御部41により実行される処理について説明する。スロットマシン1においては、ゲームの処理が1ゲームずつ繰り返して行なわれることで遊技が進行されるものであるが、そのためには、まず、遊技の進行が可能な状態となっていなければならない。遊技の進行が可能な状態であるためには、たとえば、メインCPU41aを含むメイン制御部41が起動された状態で正常範囲の設定値が設定値ワークに格納されており、RAM41cに格納されたデータに異常がないことが条件となる。そして、遊技の進行が可能な状態となると、スロットマシン1においてゲームの処理が1ゲームずつ繰り返して行なわれることとなる。以下、スロットマシン1における各ゲームについて説明する。なお、スロットマシン1における“ゲーム”とは、狭義には、スタートスイッチ7が操作されてからリール2L、2C、2Rが停止するまでをいうものであるが、ゲームを行なう際には、スタートスイッチ7の操作前の賭数の設定や、リール2L、2C、2Rの停止後にメダルの払い出しや遊技状態の移行も行なわれるので、これらの付随的な処理も広義には“ゲーム”に含まれるものとする。
・・・・・
【0257】
BET処理により賭数が設定され、スタートスイッチ7が操作されると、内部抽選用の乱数を抽出し、抽出した乱数の値に基づいて遊技状態に応じて定められた各役への入賞を許容するかどうかを決定する抽選処理を行なう。抽選処理では、抽選結果に応じてRAM41cに設定されている当選フラグの設定状況を示す内部当選コマンドが演出制御基板90に送信される。また、抽選処理では、BB1?BB5のいずれかに当選したときに、内部中RTに制御するための処理(たとえば、遊技状態フラグの値に内部中RTフラグの値を設定など)が行なわれる。
【0258】
抽選処理が終了すると、次にリール回転処理が行なわれる。リール回転処理では、前回のゲームでのリール2L、2C、2Rの回転開始から1ゲームタイマが計時する時間が所定時間(たとえば、4.1秒)経過していることを条件に、リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させる。これにより、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rが回転している段階に更新される。リール2L、2C、2Rの回転開始から所定の条件(回転速度が一定速度に達した後、リールセンサ33SL、33SC、33SRにより基準位置を検出すること)が成立すると、ストップスイッチ8L、8C、8Rを操作有効とする。その後、ストップスイッチ8L、8C、8Rが遊技者によって操作されることにより、リールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させる。これにより、遊技者によって操作されたストップスイッチに対応するリールモータを駆動停止させ、当該リールモータに対応するリールの回転を停止させた段階に更新される。リール回転処理では、リール2L、2C、2Rの回転開始時にリールの回転の開始を通知するリール回転コマンドが演出制御基板90に送信され、リール2L、2C、2Rのうちいずれかの回転が停止する毎に、当該停止したリールがいずれであるか、該当するリールの停止操作位置の領域番号を特定可能なリール停止コマンドが演出制御基板90に送信される。」

(コ)「【0272】
本実施の形態におけるスロットマシンでは、RT中において特定の当選状況となったときに、サブ制御部91により、当該当選状況に対応する情報を報知するナビ演出を実行するためのナビ演出実行処理が行なわれる。ナビ演出実行処理が行なわれることにより、RT中における演出状態に応じて、たとえば、転落リプレイと他のリプレイとが同時に当選しているとき(左押しリプ当選時など)や、ブドウ1?8とバナナブドウとが同時に当選しているとき(左押しブドウ当選時など)など、特定の当選状況となったときに、当該当選状況の種類に対応するナビ演出が実行される。
【0273】
本実施の形態におけるナビ演出は、完全ナビ演出、途中ナビ演出、および一部ナビ演出を少なくとも含む。」

(サ)「【0292】
図11(c1)?(c2)は、一部ナビ演出の一例を説明するための図である。左押しブドウ1に当選している場合には、図9で示したように、左リール2Lを第1停止させることにより、第2停止および第3停止の操作手順に関わらず、確実にブドウ1?8のいずれかを入賞させることができる。よって、有利操作手順以外の操作手順としては、中リール2Cあるいは右リール2Rを第1停止させないための手順となる。
【0293】
このため、図11(c1)では、リール2L?2R各々が回転されてゲームが開始されたときに、右リール2Rを第1停止させないことを想起させるように、右リール2Rに対応するリール情報枠58Rに「×」が表示され、リール情報枠58L、58C各々には「?」が表示されている。これにより、遊技者は、少なくとも右リール2Rを第1停止させるべきでないことを認識することができ、左リール2Lを第1停止させるべきか中リール2Cを第1停止させるべきか、選択肢を2つに絞り込むことができる。図11(c2)では、左リール2Lが第1停止されて、ナビ演出領域58に「正解」といったメッセージが表示されている。なお、左リール2L以外のリールが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「不正解」といったメッセージが表示される。」

(シ)「【0304】
[CZモード、DZモード、ノーマルモードについて]
CZモードは、特定の当選状況となったときに、所定の実行割合にしたがってナビ演出を実行するか否かを決定し、実行すると決定されたときに一部ナビ演出を実行し、実行しないと決定されたときに特定の当選状況のうちのいずれかとなっている旨のみを報知する演出状態をいう。実行割合は、後述するように、演出状態抽選でCZモードに決定されたときに複数種類から決定される。」

(ス)上記(ケ)の段落【0255】には、「本実施の形態にかかるスロットマシン1におけるメイン制御部41により実行される処理について説明する。」と記載され、同段落【0257】には、「内部抽選用の乱数を抽出し、抽出した乱数の値に基づいて遊技状態に応じて定められた各役への入賞を許容するかどうかを決定する抽選処理を行なう。」と記載されている。
また、上記(カ)の段落【0182】には、「内部抽選は、上記した各入賞役の発生を許容するか否か、すなわち入賞役を発生させる図柄組合せがいずれかの入賞ラインに揃える制御を行なうことを許容するか否かを、可変表示装置2の表示結果が導出表示される以前に(実際には、スタートスイッチ7操作時に)、決定するものである。」と記載されている。
そして、メイン制御部41は、内部抽選用の乱数を抽出して抽選処理を行うものであるから、内部抽選を行う内部抽選手段を備えるものということができる。
したがって、引用文献1には、「メイン制御部41は、入賞役を発生させる図柄組合せをいずれかの入賞ラインに揃える制御を行なうことを許容するか否かを決定する内部抽選を行う内部抽選手段を備える」ことが記載されていると認められる。

(セ)上記(ケ)の段落【0255】には、「本実施の形態にかかるスロットマシン1におけるメイン制御部41により実行される処理について説明する。」と記載され、同段落【0258】には、「リール回転処理では、・・・リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させる。・・・その後、ストップスイッチ8L、8C、8Rが遊技者によって操作されることにより、リールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させる。」と記載されている。
また、上記(ウ)の段落【0098】には、「ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し」と記載され、上記(キ)の段落【0198】には、「操作されたストップスイッチ8L、8C、8Rに対応するリール2L、2C、2Rの回転を停止させる制御を行なう。」と記載されている。
そして、メイン制御部41は、リール回転処理を実行するから、リール回転制御手段を備えるものということができる。
したがって、引用文献1には、「メイン制御部41は、スタートスイッチ7が操作されると、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させ、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチ8L、8C、8Rに対応するリール2L、2C、2Rの回転を停止させるリール回転処理を実行するリール回転制御手段を備える」ことが記載されていると認められる。

(ソ)上記(コ)の段落【0272】には、「本実施の形態におけるスロットマシンでは、RT中において特定の当選状況となったときに、サブ制御部91により、当該当選状況に対応する情報を報知するナビ演出を実行するためのナビ演出実行処理が行なわれる。ナビ演出実行処理が行なわれることにより、RT中における演出状態に応じて、たとえば、転落リプレイと他のリプレイとが同時に当選しているとき(左押しリプ当選時など)や、ブドウ1?8とバナナブドウとが同時に当選しているとき(左押しブドウ当選時など)など、特定の当選状況となったときに、当該当選状況の種類に対応するナビ演出が実行される。」と記載されている。
そして、サブ制御部91によりナビ演出実行処理が行なわれるから、サブ制御部91は、ナビ演出実行制御手段を備えるものということができる。
また、同段落【0273】には、「本実施の形態におけるナビ演出は、完全ナビ演出、途中ナビ演出、および一部ナビ演出を少なくとも含む。」と記載されている。
したがって、引用文献1には、「サブ制御部91は、RT中において転落リプレイと他のリプレイとが同時に当選しているとき(左押しリプ当選時など)や、ブドウ1?8とバナナブドウとが同時に当選しているとき(左押しブドウ当選時など)など、特定の当選状況となったときに、一部ナビ演出を含むナビ演出を実行するためのナビ演出実行制御手段を備える」ことが記載されていると認められる。

(タ)上記(ク)の段落【0231】には、「左押しブドウ1に当選し、左リール2Lを第1停止させた場合には、第2停止および第3停止させる操作手順に関わらず、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかを入賞ラインに揃えて停止させるリール制御が行なわれる。」と記載されている。
そして、上記(セ)で検討したとおり、リール回転制御手段はリール回転処理を行うものであるから、リール制御を行うのはリール回転制御手段であるといえる。
また、上記(オ)の段落【0171】には、「なお、抽選対象役として後述するように、複数の入賞役が同時に読出されて、重複して当選し得る。図7においては、入賞役の間に“+”を表記することにより、内部抽選において同時に抽選対象役として読み出されることを示す。」と記載され、同段落【0175】には、「左押しブドウ1とは、ブドウ+バナナブドウ2+バナナブドウ9をいう。」と記載されているから、左押しブドウ1は、ブドウとバナナブドウ2とバナナブドウ9の重複当選を表すものといえる。
したがって、引用文献1には、「前記リール回転制御手段は、ブドウとバナナブドウ2とバナナブドウ9の重複当選を表す左押しブドウ1に当選し、左リール2Lを第1停止させた場合には、第2停止および第3停止させる操作手順に関わらず、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかを入賞ラインに揃えて停止させるリール制御を行う」ことが記載されていると認められる。

(チ)上記(タ)の段落【0232】には、「左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合には、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれも入賞ラインに揃えて停止させることができなくなる。」と記載され、同段落【0236】には、「左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合であっても、入賞の可能性が残るバナナブドウの構成図柄を入賞ライン上に引き込み可能な停止タイミングとなる操作手順で第2停止および第3停止させたときのみ、対応するバナナブドウ2または9に入賞し得る。」と記載されている。
そして、左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合の各入賞の有無が、上記(タ)で検討した、左押しブドウ1に当選し左リール2Lを第1停止させた場合と同様に、リール回転制御手段により行われるリール制御により実現されることは明らかである。
したがって、引用文献1には、「前記リール回転制御手段は、左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合には、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれも入賞ラインに揃えて停止させることができなくなり、入賞の可能性が残るバナナブドウの構成図柄を入賞ライン上に引き込み可能な停止タイミングとなる操作手順で第2停止および第3停止させたときのみ、対応するバナナブドウ2または9に入賞し得るようにリール制御を行う」ことが記載されていると認められる。

(ツ)上記(サ)の段落【0292】には、「図11(c1)?(c2)は、一部ナビ演出の一例を説明するための図である。左押しブドウ1に当選している場合には、図9で示したように、左リール2Lを第1停止させることにより、第2停止および第3停止の操作手順に関わらず、確実にブドウ1?8のいずれかを入賞させることができる。」と記載され、同段落【0293】には、「図11(c1)では、リール2L?2R各々が回転されてゲームが開始されたときに、右リール2Rを第1停止させないことを想起させるように、右リール2Rに対応するリール情報枠58Rに「×」が表示され、リール情報枠58L、58C各々には「?」が表示されている。・・・図11(c2)では、左リール2Lが第1停止されて、ナビ演出領域58に「正解」といったメッセージが表示されている。なお、左リール2L以外のリールが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「不正解」といったメッセージが表示される。」と記載されている。
そして、上記(ソ)で検討したとおり、一部ナビ演出を実行するのは、ナビ演出実行制御手段である。
したがって、引用文献1には、「ナビ演出実行制御手段は、一部ナビ演出において、左押しブドウ1に当選している場合には、リール2L?2R各々が回転されてゲームが開始されたときに、右リール2Rに対応するリール情報枠58Rに「×」を表示し、リール情報枠58L、58C各々には「?」を表示し、左リール2Lが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「正解」といったメッセージを表示し、左リール2L以外のリールが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「不正解」といったメッセージを表示する」ことが記載されていると認められる。

上記(ア)?(シ)の記載事項、及び、上記(サ)?(ツ)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?d3cは、本願補正発明の記号A?D3Cに対応させて付した。)。

「a 外周に複数種の図柄が配列されたリール2L、2C、2R(左リール、中リール、右リール)と、(【0079】)
b ゲームが開始可能な状態で各リール2L、2C、2Rを回転させるために操作されるスタートスイッチ7と、(【0098】)
c リール2L、2C、2Rの回転を各々停止する際に操作されるストップスイッチ8L、8C、8Rと、(【0088】)
d 遊技の制御を行なうメイン制御部41、及び、演出の制御を行なうサブ制御部91とを備え、(【0107】、【0118】)
前記メイン制御部41は、
d1 入賞役を発生させる図柄組合せをいずれかの入賞ラインに揃える制御を行なうことを許容するか否かを決定する内部抽選を行う内部抽選手段と、(ス)
d2 スタートスイッチ7が操作されると、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させ、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチ8L、8C、8Rに対応するリール2L、2C、2Rの回転を停止させるリール回転処理を実行するリール回転制御手段とを備え、(セ)
前記サブ制御部91は、
d3 RT中において転落リプレイと他のリプレイとが同時に当選しているとき(左押しリプ当選時など)や、ブドウ1?8とバナナブドウとが同時に当選しているとき(左押しブドウ当選時など)など、特定の当選状況となったときに、一部ナビ演出を含むナビ演出を実行するためのナビ演出実行制御手段を備え、(ソ)
e 全てのリール2L、2C、2Rが停止されることで、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L4上に予め定められた図柄の組合せ(役)が各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し、その入賞に応じて定められた枚数のメダルが付与されるスロットマシンにおいて、(【0099】、【0078】)
f 内部抽選において、複数の入賞役が同時に抽選対象役として読み出されて、重複して当選し得るようになっており、(【0171】)
前記リール回転制御手段は、
d2a ブドウとバナナブドウ2とバナナブドウ9の重複当選を表す左押しブドウ1に当選し、左リール2Lを第1停止させた場合には、第2停止および第3停止させる操作手順に関わらず、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかを入賞ラインに揃えて停止させるリール制御を行い、(タ)
d2b 左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合には、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれも入賞ラインに揃えて停止させることができなくなり、入賞の可能性が残るバナナブドウの構成図柄を入賞ライン上に引き込み可能な停止タイミングとなる操作手順で第2停止および第3停止させたときのみ、対応するバナナブドウ2または9に入賞し得るようにリール制御を行い、(チ)
前記ナビ演出実行制御手段は、
d3a CZモードにおいて特定の当選状況となったときに、一部ナビ演出を実行するか否かを決定し、(【0304】)
d3b 一部ナビ演出において、左押しブドウ1に当選している場合には、リール2L?2R各々が回転されてゲームが開始されたときに、右リール2Rに対応するリール情報枠58Rに「×」を表示し、リール情報枠58L、58C各々には「?」を表示し、左リール2Lが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「正解」といったメッセージを表示し、(ツ)
d3c 左リール2L以外のリールが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「不正解」といったメッセージを表示するスロットマシン。(ツ、【0078】)」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願補正発明の構成A?D3Cと引用発明の構成a?d3cについて、それぞれ(a)?(d3c)の見出しを付けて行った。)。

(a)引用発明の「リール2L、2C、2R」の「外周」は、本願補正発明の「回転リール」の「表面」に相当する。
また、引用発明の「リール2L、2C、2R」は、「複数種の図柄が配列された」ものであるから、複数の図柄が表示されていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「外周に複数種の図柄が配列されたリール2L、2C、2R(左リール、中リール、右リール)」は、本願補正発明の「複数の図柄が表面に表示された複数の回転リール」に相当する。

(b)引用発明の「スタートスイッチ7」は、「ゲームが開始可能な状態で各リール2L、2C、2Rを回転させるために操作される」ものであるから、各リールの回転を開始させるためのものであることは明らかである。
そうすると、引用発明の「ゲームが開始可能な状態で各リール2L、2C、2Rを回転させるために操作されるスタートスイッチ7」は、本願補正発明の「前記回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチ」に相当する。

(c)引用発明の「リール2L、2C、2Rの回転を各々停止する際に操作されるストップスイッチ8L、8C、8R」は、本願補正発明の「前記各回転リールの回転をそれぞれ停止させるための複数のストップスイッチ」に相当する。

(d)引用発明の「遊技の制御を行なうメイン制御部41」が備える「内部抽選手段」、「リール回転制御手段」は、それぞれ本願補正発明の「役抽選手段」、「リール制御手段」に相当し(下記(d1)及び(d2)を参照。)、引用発明の「演出の制御を行なうサブ制御部91」が備える「ナビ演出実行制御手段」は、本願補正発明の「特定報知演出制御手段」に相当する(下記(d3)を参照。)から、引用発明の「遊技の制御を行なうメイン制御部41」及び「演出の制御を行なうサブ制御部91」は、本願補正発明の「遊技機の作動を制御する制御装置」に相当する。

(d1)引用発明の「図柄組合せ」により「発生」する「入賞役」は、本願補正発明の「所定の図柄組合せから構成される役」に相当するから、引用発明の「入賞役を発生させる図柄組合せをいずれかの入賞ラインに揃える制御を行なうことを許容するか否かを決定する内部抽選」は、本願補正発明の「所定の図柄組合せから構成される役について当選か否かの役抽選」に相当する。
そうすると、引用発明の「入賞役を発生させる図柄組合せをいずれかの入賞ラインに揃える制御を行なうことを許容するか否かを決定する内部抽選を行う内部抽選手段」は、
本願補正発明の「所定の図柄組合せから構成される役について当選か否かの役抽選を行う役抽選手段」に相当する。

(d2)引用発明の「スタートスイッチ7が操作されると、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させ、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチ8L、8C、8Rに対応するリール2L、2C、2Rの回転を停止させるリール回転処理を実行するリール回転制御手段」は、
本願補正発明の「前記スタートスイッチの操作に基づいて前記回転リールを回転開始させるとともに、前記各ストップスイッチの操作に基づいて、当該ストップスイッチに対応する前記回転リールの回転停止を制御するリール制御手段」に相当する。

(d3)引用発明の「一部ナビ演出」は、左押しブドウ1が当選している場合に、左リール2Lが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「正解」といったメッセージを表示し(引用発明の構成d3bを参照。)、左リール2L以外のリールが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「不正解」といったメッセージを表示するものである(引用発明の構成d3cを参照。)。そして、引用発明は、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチ8L、8C、8Rに対応するリール2L、2C、2Rの回転を停止させるものであるから(引用発明の構成d2を参照。)、引用発明の「一部ナビ演出」は、ストップスイッチ8L、8C、8Rの操作を契機に、ナビ演出領域58に「正解」又は「不正解」というメッセージを表示するものであるといえる。
また、引用発明の「一部ナビ演出」は、「RT中において転落リプレイと他のリプレイとが同時に当選しているとき(左押しリプ当選時など)や、ブドウ1?8とバナナブドウとが同時に当選しているとき(左押しブドウ当選時など)など、特定の当選状況となったとき」に実行されるものである。そうすると、引用発明の「一部ナビ演出」のうち「ナビ演出領域58に「正解」又は「不正解」というメッセージを表示する」演出は、「左押しリプ」や「左押しブドウ」などの特定の役に当選した場合にのみ実行され、これらの特定の役に当選したことを遊技者に報知するものといえるから、本願補正発明の「前記役抽選の結果を遊技者に報知する特定報知演出」に相当する。
したがって、引用発明の「RT中において転落リプレイと他のリプレイとが同時に当選しているとき(左押しリプ当選時など)や、ブドウ1?8とバナナブドウとが同時に当選しているとき(左押しブドウ当選時など)など、特定の当選状況となったときに、一部ナビ演出を含むナビ演出を実行するためのナビ演出実行制御手段」は、
本願補正発明の「前記ストップスイッチの操作を契機に、前記役抽選の結果を遊技者に報知する特定報知演出を実行させるための特定報知演出制御手段」に相当する。

(e)引用発明の「全てのリール2L、2C、2Rが停止されること」、「有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L4」は、それぞれ本願補正発明の「前記複数の回転リールを全て停止させ」ること、「所定の有効ライン」に相当する。
また、引用発明の「予め定められた図柄の組合せ(役)が各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止」することは、本願補正発明の「当選している役を構成する図柄組合せに含まれる当選図柄が」「あらかじめ定められた配列で停止すること」に相当する。
そして、引用発明の「入賞に応じて定められた枚数のメダルが付与される」こと、「スロットマシン」は、それぞれ本願補正発明の「役に応じた利益が付与される」こと、「遊技機」に相当する。
そうすると、引用発明の「全てのリール2L、2C、2Rが停止されることで、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L4上に予め定められた図柄の組合せ(役)が各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し、その入賞に応じて定められた枚数のメダルが付与されるスロットマシン」は、
本願補正発明の「前記複数の回転リールを全て停止させた状態で、当選している役を構成する図柄組合せに含まれる当選図柄が所定の有効ライン上にあらかじめ定められた配列で停止することにより入賞となり、役に応じた利益が付与される遊技機」に相当する。

(f)上記(d1)で検討したとおり、引用発明の「内部抽選」は、本願補正発明の「役抽選」に相当する。
また、引用発明の「同時に抽選対象役として読み出されて、重複して当選」することは、本願補正発明の「同時に当選」することに相当する。
そうすると、引用発明の「内部抽選において、複数の入賞役が同時に抽選対象役として読み出されて、重複して当選し得るようになって」いることは、
本願補正発明の「前記役抽選において、複数の役が同時に当選する場合があるように形成されて」いることに相当する。

(d2a)引用発明の「ブドウとバナナブドウ2とバナナブドウ9の重複当選を表す左押しブドウ1に当選」することは、本願補正発明の「前記複数の役が同時に当選」することに相当する。
また、引用発明は、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチ8L、8C、8Rに対応するリール2L、2C、2Rの回転を停止させるものであるから(引用発明の構成d2を参照。)、引用発明の「左リール2Lを第1停止させた場合」は、ストップスイッチ8Lが最初に操作された場合であり、本願補正発明の「前記ストップスイッチが適正な操作順番で操作された場合」に相当する。
そして、引用発明において、「ブドウ」役は重複当選役である「左押しブドウ1」に含まれるから、引用発明の「当選したブドウのうちブドウ1?8」は、本願補正発明の「前記複数の役に含まれるあらかじめ定められた特定役」に相当する。
さらに、引用文献1の図5には、入賞役であるブドウ1?8が、「黒ブドウ-黒ブドウ-黒ブドウ」等のそれぞれ異なる図柄の組合せに対応することが図示されている。
そうすると、引用発明の「第2停止および第3停止させる操作手順に関わらず、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかを入賞ラインに揃えて停止させるリール制御を行」うことは、本願補正発明の「前記複数の役に含まれるあらかじめ定められた特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃うように前記回転リールを停止させ」ることに相当する。
したがって、引用発明の「ブドウとバナナブドウ2とバナナブドウ9の重複当選を表す左押しブドウ1に当選し、左リール2Lを第1停止させた場合には、第2停止および第3停止させる操作手順に関わらず、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかを入賞ラインに揃えて停止させるリール制御を行」うことは、
本願補正発明の「前記複数の役が同時に当選している場合において、前記ストップスイッチが適正な操作順番で操作された場合には、前記複数の役に含まれるあらかじめ定められた特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃うように前記回転リールを停止させ」ることに相当する。

(d2b)引用発明の「左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合」は、本願補正発明の「前記ストップスイッチが適正な操作順番で操作されなかった場合」に相当する。
また、上記(d2a)で検討したとおり、引用発明の「当選したブドウのうちブドウ1?8」は、本願補正発明の「前記複数の役に含まれるあらかじめ定められた特定役」に相当するから、引用発明の「当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれも入賞ラインに揃えて停止させることができなくな」「るようにリール制御を行」うことは、本願補正発明の「前記特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃わないように」「前記回転リールを停止させ」ることに相当する。
さらに、引用発明において、「バナナブドウ2または9」は、「当選したブドウのうちブドウ1?8」以外の役であるから、引用発明の「入賞の可能性が残るバナナブドウの構成図柄を入賞ライン上に引き込み可能な停止タイミングとなる操作手順で第2停止および第3停止させたときのみ、対応するバナナブドウ2または9に入賞し得るようにリール制御を行」うことは、本願補正発明の「前記特定役以外の役が揃うこともあり得るように前記回転リールを停止させ」ることに相当する。
そうすると、引用発明の「左押しブドウ1が当選し、中リール2Cまたは右リール2Rを第1停止させた場合には、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれも入賞ラインに揃えて停止させることができなくなり、入賞の可能性が残るバナナブドウの構成図柄を入賞ライン上に引き込み可能な停止タイミングとなる操作手順で第2停止および第3停止させたときのみ、対応するバナナブドウ2または9に入賞し得るようにリール制御を行」うことは、
本願補正発明の「前記ストップスイッチが適正な操作順番で操作されなかった場合には、前記特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃わないように、かつ前記特定役以外の役が揃うこともあり得るように前記回転リールを停止させ」ることに相当する。

(d3a)引用発明の「特定の当選状況」は、「RT中において転落リプレイと他のリプレイとが同時に当選しているとき(左押しリプ当選時など)や、ブドウ1?8とバナナブドウとが同時に当選しているとき(左押しブドウ当選時など)など」を含むものであるから(引用発明の構成d3を参照。)、引用発明の「CZモードにおいて特定の当選状況となったとき」は、本願補正発明の「前記複数の役が同時に当選している場合」に相当する。
したがって、上記(d3)の検討を踏まえると、引用発明の「CZモードにおいて特定の当選状況となったときに、一部ナビ演出を実行するか否かを決定」することは、
本願補正発明の「前記複数の役が同時に当選している場合において、特定報知演出の実行を決定」することに相当する。

(d3b)引用発明のリール回転制御手段は、左押しブドウ1に当選し、左リール2Lを第1停止させた場合には、第2停止および第3停止させる操作手順に関わらず、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかを入賞ラインに揃えて停止させるリール制御を行うものであるところ(引用発明のd2aを参照。)、「第2停止および第3停止させる操作手順に関わらず、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかを入賞ラインに揃えて停止させるリール制御を行う」ことは、当選したブドウのうちブドウ1?8のいずれかの入賞が確定するということであるといえる。
また、引用発明は、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチ8L、8C、8Rに対応するリール2L、2C、2Rの回転を停止させるものであるから(引用発明の構成d2を参照。)、引用発明の「左リール2Lが第1停止されたとき」は、ストップスイッチ8Lが最初に操作されたときであるといえる。
そうすると、引用発明の「左押しブドウ1に当選している場合」に「左リール2Lが第1停止されたとき」は、本願補正発明の「いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作順番であり前記特定役の入賞が確定した場合」に相当する。
また、引用発明において、「一部ナビ演出において」「ナビ演出領域58に「正解」といったメッセージを表示」することは、これにより当選したブドウのうちブドウ1?8などが当選していることを遊技者に報知しているといえるから、特定役が当選していることを遊技者に報知する特定報知演出ということができる。
したがって、上記(d3)の検討を踏まえると、引用発明の「一部ナビ演出において、左押しブドウ1に当選している場合には、リール2L?2R各々が回転されてゲームが開始されたときに、右リール2Rに対応するリール情報枠58Rに「×」を表示し、リール情報枠58L、58C各々には「?」を表示し、左リール2Lが第1停止されたときには、ナビ演出領域58に「正解」といったメッセージを表示」することは、
本願補正発明の「いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作順番であり前記特定役の入賞が確定した場合には、当該ストップスイッチの操作を契機に、前記特定役が当選していることを遊技者に報知する特定報知演出を実行させ」ることに相当する。

(d3c)引用発明の「左リール2L以外のリールが第1停止されたとき」は、本願補正発明の「いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作順番でない場合」に相当する。
しかしながら、「いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作順番でない場合」の構成が、本願補正発明の構成D3Cと引用発明の構成d3cとで異なるため、この点を両発明の相違点とした。

上記(a)?(d3c)の検討により、本願補正発明と引用発明とは、

(一致点)
「A 複数の図柄が表面に表示された複数の回転リールと、
B 前記回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
C 前記各回転リールの回転をそれぞれ停止させるための複数のストップスイッチと、
D 遊技機の作動を制御する制御装置とを少なくとも備え、
前記制御装置は、
D1 所定の図柄組合せから構成される役について当選か否かの役抽選を行う役抽選手段と、
D2 前記スタートスイッチの操作に基づいて前記回転リールを回転開始させるとともに、前記各ストップスイッチの操作に基づいて、当該ストップスイッチに対応する前記回転リールの回転停止を制御するリール制御手段と、
D3 前記ストップスイッチの操作を契機に、前記役抽選の結果を遊技者に報知する特定報知演出を実行させるための特定報知演出制御手段とを少なくとも備え、
E 前記複数の回転リールを全て停止させた状態で、当選している役を構成する図柄組合せに含まれる当選図柄が所定の有効ライン上にあらかじめ定められた配列で停止することにより入賞となり、役に応じた利益が付与される遊技機において、
F 前記役抽選において、複数の役が同時に当選する場合があるように形成されており、
前記リール制御手段は、
D2A 前記複数の役が同時に当選している場合において、前記ストップスイッチが適正な操作順番で操作された場合には、前記複数の役に含まれるあらかじめ定められた特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃うように前記回転リールを停止させ、
D2B 前記ストップスイッチが適正な操作順番で操作されなかった場合には、前記特定役を構成する図柄の組合せが有効ライン上に揃わないように、かつ前記特定役以外の役が揃うこともあり得るように前記回転リールを停止させ、
前記特定報知演出制御手段は、
D3A 前記複数の役が同時に当選している場合において、特定報知演出の実行を決定し、
D3B いずれかのストップスイッチの操作が、前記適正な操作順番であり前記特定役の入賞が確定した場合には、当該ストップスイッチの操作を契機に、前記特定役が当選していることを遊技者に報知する特定報知演出を実行させるように形成されている遊技機。」

である点で一致し、構成D3Cに関する以下の点で相違している。

(相違点)
特定報知演出制御手段が実行する特定報知演出について、いずれかのストップスイッチの操作が適正な操作順番でない場合に、本願補正発明では、複数の役の当選を契機に特定報知演出を実行することが決定されていたときには当該決定に係る特定報知演出を取りやめて、特定報知演出を全く行わせないのに対して、引用発明では、ナビ演出領域58に「不正解」といったメッセージを表示する点。

(3)判断
ア 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明の特定報知演出制御手段(ナビ演出実行制御手段)は、いずれかのストップスイッチの操作が適正な操作順番であり特定役の入賞が確定した場合には、ナビ演出領域58に「正解」といったメッセージを表示し、いずれかのストップスイッチの操作が適正な操作順番でない場合には、ナビ演出領域58に「不正解」といったメッセージを表示するものである。
そして、ストップスイッチの操作が適正な操作順番である場合に「正解」というメッセージを表示する構成であれば、仮にストップスイッチの操作が適正な操作順番でない場合に「不正解」というメッセージを表示しなくても、「正解」というメッセージが表示されないことにより、遊技者はストップスイッチの操作が適正な操作順番でなかったことを知ることができるから、引用発明において、ストップスイッチの操作が適正な操作順番でない場合に「不正解」というメッセージを表示するか否かは、表示の分かり易さと記憶容量の節約とのいずれを優先させるか等に応じて、当業者が適宜選択し得る設計事項ということができる。
また、引用発明において、一部ナビ演出は、「正解」又は「不正解」というメッセージの表示を含むものであり、CZモードにおいて特定の当選状況(重複当選である左押しブドウ当選時など)となったときに実行するか否かが決定され(引用発明の構成d3及びd3aを参照。)、左押しブドウ1に当選している場合には、リール2L?2R各々が回転されてゲームが開始されたときに、右リール2Rに対応するリール情報枠58Rに「×」を表示し、リール情報枠58L、58C各々には「?」を表示するものである(引用発明の構成d3bを参照。)。そうすると、引用発明は、複数の役の当選を契機に特定報知演出(一部ナビ演出のうち「正解」などのメッセージを表示する演出)の実行を決定するものであるといえる。
そして、報知演出の実行を予め決定しておき、遊技中に演出の前提よりも遊技者にとって不利な状況となり当該演出の実行が不要となった場合に、当該演出をとりやめることは、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-35211号公報(図柄抽選の結果に基づいた入賞の可能性を遊技者に暗示するために、演出1、2、3、4をそれぞれ実行するか否かを抽選で決めて、今回停止したリールの停止位置が図柄抽選による入選の可能性がなくなる解除位置に該当するときは、今回のゲーム中は演出を開始しないようにする点。段落【0009】、【0012】、図2?3等を参照。)や、特開2001-46586号公報(役抽選手段61の抽選結果に基づいて、いずれかの演出パターンを抽選により選択し、第1リール31の停止位置が、第1リール確定ハズレ目を出現させる停止位置であるときは、演出中止フラグ70をオンにし、演出中止フラグ70がオンであると判別されたときは、全リール31の停止後の告知演出のうち、効果ランプ29及びバックランプ33による告知演出処理を中止する点。段落【0050】?【0052】、【0060】、図5?7等を参照。)等にも記載されているように、遊技機の技術分野において本願出願前に周知の技術である。
引用発明と上記の周知技術とは、遊技中の状況に応じて報知演出を変化させるという点で共通するから、引用発明に上記の周知技術を適用する動機付けが存在するといえる。
したがって、引用発明の特定報知演出において、いずれかのストップスイッチの操作が適正な操作順番でない場合に、ナビ演出領域58に「不正解」というメッセージの表示をしないように設計変更するとともに、複数の役の当選を契機に実行が決定される、一部ナビ演出のうちの「正解」というメッセージを表示する演出(特定報知演出)について、いずれかのストップスイッチの操作が適正な操作順番でない場合、すなわち、遊技中に演出の前提よりも遊技者にとって不利な状況となり特定報知演出の実行が不要となった場合に、上記の周知技術に基づき、当該特定報知演出を取りやめて、特定報知演出を全く行わせないものとして、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

イ 本願補正発明の作用効果
本願補正発明の作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は審判請求書において、「一方、引用文献1は、拒絶査定に、「引用例1では、操作した停止態様によりブドウの入賞が確定すると「正解」との報知を行い、操作した停止態様によってブドウが入賞するか否かに遊技者の関心が集中するするっとマシンである。」と記載されているように、(単一の)当選役が引き込めた時(第1停止後)に報知するものである。即ち、引き込めたか否かのみの報知である。」(第6頁第22?27行)と主張している。
しかしながら、引用発明は、ブドウとバナナブドウ2とバナナブドウ9の重複当選を表す左押しブドウ1に当選している場合に、左リール2Lが第1停止されたときに、ナビ演出領域58に「正解」というメッセージを表示するものであるから(引用発明の構成d2a及びd3bを参照。)、重複当選役が引き込めたときに報知がなされるものであって、単一の当選役が引き込めたときに報知するものではない。
また、拒絶査定においても、引用文献1が単一の当選役が引き込めたときに報知するものであることは認定されていない。

(イ)請求人は審判請求書において、「ここで特に、「複数役当選時に、有利当選役引き込み、不利当選役引き込み、ハズレの3種類が存在するものの、そのうちで、有利当選役引き込みがあった場合には、完全停止前に有利当選を報知する(特定演出を実行)ので、有利当選役引き込みがあることを完全停止前に知ることができるので、楽しい。」との解決課題はいずれの引用文献にも記載されていない。」(第8頁第13?18行)と主張している。
しかしながら、引用発明も、複数役(左押しブドウ1)当選時に、有利当選役(ブドウ1?8)引き込み、不利当選役(バナナブドウ2、バナナブドウ9)引き込み、ハズレ(引用文献1の段落【0237】に記載された「特殊出目」)の3種類が存在し、そのうちで、有利当選役(ブドウ1?8)引き込みがあった場合には、完全停止前(左リール2Lが第1停止されたとき)に有利当選を報知(ナビ演出領域58に「正解」というメッセージを表示)するものであるから、本願補正発明と同様の課題が解決されているといえる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、請求人の上記主張はいずれも採用することができない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年11月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定については、上記「第2[理由]3(1)引用文献に記載された事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、構成要件である「リール制御手段」及び「特定報知演出制御手段」に関して、これらの構成要件を限定する表現中の「操作順番」を「操作態様」として限定を省くとともに、発明特定事項の一部(「演出をとりやめて」)を意味内容の変わらない異なる表現(「演出を破棄して」)としたものである。
そうすると、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]3(2)対比、(3)判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-15 
結審通知日 2017-03-21 
審決日 2017-03-28 
出願番号 特願2011-164087(P2011-164087)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 治企  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 小島 寛史
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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