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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 G01N 審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 G01N |
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管理番号 | 1328311 |
審判番号 | 無効2015-800123 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2015-05-01 |
確定日 | 2016-04-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3249628号発明「青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件に係る特許第3249628号についての手続の経緯は、つぎのとおりである。 ・平成 5年 3月31日 :特許出願(特願平5-74193号) ・平成13年11月 9日 :特許権の設定登録 ・平成27年 5月1日 :本件特許無効審判請求(無効2015-800123号)<請求人> ・平成27年 5月22日付け:請求書副本送達 答弁指令(特134条1項) (送達日同年5月26日) <審判長> ・平成27年 7月22日 :審判事件答弁書提出<被請求人> ・平成27年 8月17日付け:答弁書副本送付<審判長> ・平成27年 8月26日付け:審理事項の通知<審判長> ・平成27年10月 1日 :口頭審理陳述要領書提出<請求人> ・平成27年10月 1日 :上申書の提出<請求人> ・平成27年10月 2日 :口頭審理陳述要領書提出<被請求人> ・平成27年10月 2日 :上申書の提出<被請求人> ・平成27年10月 5日 :口頭審理陳述要領書副本送付<審判長> ・平成27年10月 5日 :上申書副本の送付<審判長> ・平成27年10月16日 :第1回 口頭審理 ・平成27年10月16日 :書面審理通知(口頭による告知) ・平成27年10月30日 :上申書の提出<被請求人> ・平成27年11月13日 :上申書の提出<請求人> 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1および2に係る発明は、本件特許掲載公報(甲第1号証)の特許請求の範囲の請求項1および2に記載のつぎのとおりのものである。(下記記載中のAないしLは、後の便宜のために当審により構成要件を分節し、付記した記号) 1 請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。) 「 【請求項1】 A:搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、 B:この搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段と、 C:この受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段と、 D:複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段と E:を備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」 なお、上記記載のうち「D:・・・遮光手段のの間を除く青果物の周囲から・・・」は「・・・遮光手段の間を除く青果物の周囲から」の明白な誤記であると認められるから、上記のように認定した。 2 請求項2に係る発明(以下、「本件特許発明2」という。) 「 【請求項2】 請求項1において、 F:青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段は、複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されていることを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」 第3 無効理由についての当事者の主張 1 請求人の主張の概要 請求人は、本件特許発明1及び2についての特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出し(なお、甲第8号証ないし甲第13号証は、当審における審理事項通知での要請に応じて口頭審理陳述要領書に添付して追加された証拠であり、また、甲第14号証ないし甲第16号証は、平成27年11月13日付けで提出された上申書に添付して追加された証拠である。)、以下のとおり主張している。 甲第1号証:特許第3249628号公報 甲第2号証:地方独立行政法人大阪市立工業研究所による青果物の透過光量に関する実験報告書(平成27年3月24日) 甲第3号証:特開平3-160344号公報 甲第4号証:特開平4-322778号公報 甲第5号証:特開昭59-87082号公報 甲第6号証:特開平4-104041号公報 甲第7号証:本件特許の審査段階における拒絶理由に対する意見書(平成13年4月23日提出) 甲第8号証:請求人による青果物の透過光量に関する「実験成績証明書」 甲第9号証:実公昭58-25345号公報 甲第10号証:全農 施設・資材レポート 平成4年度 No.2(全国農業協同組合連合会発行 平成4年11月20日) 甲第11号証:実公昭63-26220号公報 甲第12号証:実願昭62-192887号(実開平1-96416号)のマイクロフィルム 甲第13号証:特開昭60-257888号公報 甲第14号証:請求人によるハロゲンランプの発光量を測定した「実験結果報告書」 甲第15号証:[JCR]製品情報(http://www.ushiolighting.co.jp/Product/searchgroup/name:JCR/type:/)2015年11月11日ダウンロード印刷画面 甲第16号証:「JIS C 7527 ハロゲン電球(自動車用を除く) -性能仕様」財団法人 日本規格協会、2011年9月20日発行、p4-p5) (1)無効理由1(明細書の記載不備について) ア 審判請求書における主張の概要 発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されていないので、本件特許発明1および2に対する特許は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるものとされた同法第1条の規定による改正前の特許法(以下、「平成6年法改正前特許法」という。)第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたもので、同法第123条第1項第4号の規定に該当し無効とすべきものである。 (ア)本件特許発明の効果に関する実験結果について 本件特許発明に関して、本件明細書記載どおりの効果を奏するか否かについての機能調査、具体的には、【0017】【0031】が適切であるかの調査を実施した。機能調査としては、甲第2号証に記載の実験を行った。 甲第2号証に示されたテスト区分2の結果から、発光効率が同じランプであって照射する位置と照射対象までの距離が同じという条件の下では、被測定サンプルの種類によらず、透過光量はランプの総電力にほぼ比例しており、ランプの個数との相関関係はない。すなわち、ランプの個数を増やしたことによって、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い透過光量、すなわち約2倍程度以上の透過光量を得ることができるものではないことが示されている。 (イ)発明の詳細な説明に記載された「複数光源と発光量の関係」について 図4には表題として「複数光源と発光量の関係」と記載されているが、図4の説明となる段落【0017】の記載を参酌しても、図4で示されている、複数光源と発光量の関係が、以下の2つのいずれの場合を指しているのかが明確ではない。 (解釈イ)光源の数が単一か複数かによって、青果物等の内部を透過した後の透過光の発光量が異なることを示している (解釈ロ)青果物等の内部の透過に無関係に、単に光源の数が単一か複数かによって光源の発光量が異なることを示している 本件特許発明1、2は光透過検出回路であり、その発明の目的は効率的に透過光の光量を得るものであるから、図4で示している関係は、上記(解釈イ)の場合を示しているものと解される。この場合、比較実験は上記の機能調査と同じように、発光効率が同じランプであって照射する位置と照射対象までの距離も同じであり、光源が単数か複数かの点のみが異なるという条件の下で行われたものと考えられる(少なくとも、上記説明等からはそのように読める)が、この図4で示された比較実験の結果は、先の説明した機能調査における実験結果に反するものである。 仮に、図4で示している関係が、上記(解釈ロ)の場合を示しているとすると、青果物等に対して光源より周囲から光を照射して、照射された青果物等から出る透過光を受光するように受光手段を配置することを前提とした本件特許発明に対して、青果物等を透過した後の透過光の強度を検出したものでない図4の比較実験は、本件特許発明における前提を欠いたものであって、本件特許発明における効果等を説明するための比較実験として相応しいものではない。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)(解釈ロ)について (解釈ロ)の方が、図4の「複数光源と発光量の関係」との表題等の記載や、明細書【0017】等の記載内容に忠実な解釈ではあるものの、発光光量を増大させるためには、単一光源に供給している所定の電力をさらに増大させる、もしくは所定の電力が供給される光源を複数用いることが必要であり、いずれにしても照明光学系に供給される電力は増大すると思料する。 この点について、どのようにすれば、単一光源ランプと、複数の光源ランプの合計に、同じ電力エネルギーを供給した際に、光学系の発光光量が図4のように得られるのかが発明の詳細な説明の記載から定かではない。 さらに、審判請求書に記載したように、本件発明は、透過光を用いて青果物の内部品質を検査するものであるのに対して、(解釈ロ)を採用した場合には、図4の比較実験は、透過光の光量を検出、比較したものでないことになるため、本件発明の前提を欠いたものであり、本件発明の効果を説明するための比較実験として相応しいものとはいえない。 (イ)(解釈イ)について (解釈イ)の方が、より効率的に透過光の光量を得るという本発明の主たる目的に合致していると思料する。 また、段落0017の記載「・・・より多い光量を得ることができる。これは・・・図4の結果から確認できる。・・・」における「光量を得る」という言葉は、明細書全体を通じて「青果物透過光を好適に得る(段落0001)」、「透過光の光量を得る(段落0011)」、および「透過光として得る(段落0018)」のように用いられていることを踏まえると、段落0017の光量とは青果物を透過して出た透過光の光量として解釈すべきと思料する。 このように、(解釈イ)を採用すべきであり、そのように解釈した場合には、審判請求書に記載の通り、図4は、請求人が実施した機能調査に反している。 ウ 平成27年11月13日付け上申書における主張の概要 (ア)複数の発光光源を用いることの効果について 被請求人は、実験結果報告書(乙第1号証)を提出し、本件特許発明の「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができる。」という効果(以下、「本件効果」という)を当業者が容易に得ることができると主張する。 しかし、乙第1号証の実験結果報告書は、写真1?4で示されている実験設備を参酌しても、受光部の配置位置等は把握できるものの、受光部自体の構成が不明である。 また、下記(イ)ないし(オ)に述べる通り、乙第1号証の実験は本件特許発明の効果を立証するための実験として不適切であり、実験結果は本件効果の裏づけとして認められない。 よって、被請求人の乙第1号証は本件効果を証明し得るものではない。 (イ)乙第1号証の実験1におけるハロゲンランプの波長特性について 乙第1号証の実験1で用いられたハロゲンランプであるPHILIPS製EXN12V50W(以下「P社製50W」という)およびウシオライティング株式会社製JCR15V150WB/32(以下「U社製150W」という)は、いずれもランプの照射方向とは反対側(ランプの後方)にダイクロイックミラーを有している。このミラーは、特定の波長帯域の光を反射し、その他の波長帯域の光を透過させる。具体的には、U社製150Wのミラーは波長600nm以上の光を透過させ、それ未満の光を反射させる。一方、P社製50Wのミラーは、波長750nm以上の光を透過させ、それ未満の光を反射させる。いずれのランプにおいても、ミラーを透過した光は、ランプの前方に照射されないので、結果として、ランプの照射方向における当該波長帯域における光量が減衰することとなる。 このことは、今回、請求人が新たに提出する実験結果報告書(甲第14号証)の実験イ(図1)と実験ロ(図2)の対比において示されており、両ランプは可視放射?近赤外放射における照射光量が減衰されている。より具体的に述べれば、U社製150Wは波長600nm以上の帯域で照射光量が急激に減衰し始め、またP社製50Wは波長750nm以上の帯域で照射光量が次第に減衰している。そのため、波長600nmを超えるとP社製50Wの光量とU社製150Wの光量との差が次第に縮小していき、750?800nmを超える帯域では、両者の光量がほぼ同量となっている。 ここで、本件特許発明は、甲第1号証の【0030】に記載されているように、可視光領域?近赤外領域の分光分析を行うものであることからすると(なお、可視光と赤外線の境界は波長750nm前後である)、本件特許発明の光透過検出装置は、果実内部の糖分が可視光に近い赤外線を他の帯域の光より高い度合で吸収すること(そして、この吸収度合の相違と糖度とが相関関係にあること)を利用するものであると考えられる。ちなみに、甲第1号証の図4のグラフも、この帯域を中心にして描かれている。 乙第1号証の実験1においても、甲第1号証の図4のグラフとほぼ同じ帯域で実験が行われているものの、この実験で用いられているハロゲンランプは、それぞれのダイクロイックミラーの作用の相違により本件特許発明が必要とする波長帯域の光量が異なって減衰されているため、本件効果を証明するためのランプとして相応しいものではない。 そのため、乙第1号証の実験1の結果についても、600nmを超える帯域では、U社製150Wからの光が次第に減衰するものの、P社製50Wからの光はまだ減衰しないため、P社製50Wからの光が相対的に強力なものとなるのであり、しかもP社製50Wを3灯使用しているため、この影響も3倍大きくなった結果であると推測される。 このように、乙第1号証の図1に示された実験結果は、両ランプのミラーの透過特性の違いの影響が大きいのであって、光源が単一(150W×1)か複数(50W×3)かの違いによって生じたものでないと思料する。 (ウ)乙第1号証の実験1におけるハロゲンランプの配光特性について U社製150Wは、甲第15号証によれば、集光性能を高めたハロゲンランプであり、その焦点距離が32mmである。甲第14号証の実験ハに示すように、このハロゲンランプから100mmの位置では、照射領域の中心付近が明るく外側に広がるに従って徐々に暗くなるといった特性がある。 一方、P社製50Wは、ANSI規格によれば、50W,MR-16型,ビーム角40°程度のハロゲンランプである。甲第14号証の実験ハに示すように、このハロゲンランプから100mmの位置では、U社製150Wより照射領域が狭くなっているものの、照射領域全体が略均一な明るさとなっている。 このように上記2種類のハロゲンランプの配光特性は互いに異なっており、受光部に対する照射態様は一様ではないから、この点においても、乙第1号証の実験1は、本件効果を立証するための実験として不適切であると考えられる。 以上のとおり、乙第1号証の図1のような結果は、上記(a)で述べた透過特性の違いに加えて、配光特性の違いも影響していると推測されるのであり、光源が単一か複数かの違いにより生じたものではないと考えられるのであるから、乙第1号証の実験1は本件効果を証明し得るものではない。 (エ)乙第1号証の実験2におけるハロゲンランプのミラー特性について 乙第1号証の実験2で使用されたウシオライティング株式会社製JCR12V50WGAL(50W)は、アルミニウム反射膜が形成されたミラーを有するハロゲンランプである。 一方、ウシオライティング株式会社製JCR12V100WBAU(100W)は、金反射膜が形成されたミラーを有するハロゲンランプである。 このように上記2種類のハロゲンランプが有するミラーの反射膜が互いに異なっており、光の反射特性は一様ではない。 したがって、乙第1号証の図2や図3のような結果は、ミラーの反射膜の違いに起因して生じた可能性があり、光源が単一か(100W×1)、複数か(50W×2)の違いにより生じたものでないと思料する。 (オ)乙第1号証の実験2の結果を示す図2および3について 乙第1号証の図2および図3では、複数光源の光量が、単一光源の光量よりも2割程度高い値になっている。 ここで、JIS C 7527:2011「ハロゲン電球の性能仕様」(甲第16号証)には、「4.5 光学特性」において、「反射形電球の最大光度の初期値は、定格値の75%以上でなければならない。」と規定されている。換言すれば、2.5割程度の誤差が、最大光度の初期値において存在している。 また、上記JIS規格には、「4.6 光束維持率及び最大光度維持率」において、「反射形電球の最大光度維持率は、定格寿命の50%の時点で、定格値の90%以上でなければならない。」と規定されている。換言すれば、上記の2.5割程度の誤差に加えて、さらに1割程度の誤差が使用に伴って生じる。 このように、ハロゲンランプの光度について、2割以上の誤差が存在することが、規格上許容されている。 したがって、乙第1号証の図2および図3で示されたような2割程度の差は、ハロゲンランプの光度における誤差の範囲内であるから、この程度の差をもって、複数の光源の発光量の方が、同一電力の単一光源の発光量に比べて多くなると結論づけることはできない。 さらに、本件特許発明の甲第1号証の【0009】に記載されているように、「光源から青果物に照射される光の光量が比較的大きくても、分析しようとする透過光の光量は極めて微弱になってしまい、測定精度が低下」するという問題に対して、上記2割程度の差が当該問題の解決にどれだけ寄与しているのかが不明である。 (2)無効理由2-1(本件特許発明1の甲第3、4号証に基づく進歩性の欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明(以下、「甲3発明」という。)に甲第4号証に記載された発明(以下、「甲4発明」という。)を組み合わせることで、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア)本件特許発明1と甲3発明との一致点 本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における、「投光装置」、「近赤外線」、「ファイバ端」は、それぞれ本件特許発明1の「光源」、「光」、「受光手段」に相当することは明らかである。 また、甲3発明における、投光装置から照射された近赤外線が、青果物の内部で拡散反射し、拡散反射した後、集光レンズにより集められ、その後の光を受光することは、青果物の表面で反射されるものではなく、青果物の内部で拡散反射して、その後集光レンズにより集められ、その後の光を受光していることから、ファイバ端が、光を照射された青果物から出る透過光を受光していることは明らかである。また、第2図及び第3図を参照すると、ファイバ端が青果物の一部である下部の表面に対向して設けられている。 さらに、甲3発明におけるフード及びゴム製光遮へい物は、その内面が金メッキされており、これによりフード内を通る光を内面で反射させてフード外に漏れないようにしている。してみると、当然にフードの外面から内側への光の侵入も防止されるものであり、本件特許発明1における、受光手段に透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段に相当することは明らかである。 また、第2図を参照すると、甲3発明における投光装置は、フード及びゴム製光遮へい物の外側に配置されていることが明らかであるから、光ファイバ端と、フード及びゴム製遮へい物との間を除く青果物の周囲から青果物を照射していることは明らかである。 また、青果物の成分測定装置は、選果機等に適用されるので、青果物の内部品質の検査に用いられることは明らかである。 (イ)本件特許発明1と甲3発明との相違点A 本件特許発明1が、搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーを有しているのに対し、甲3発明ではかかるトレーを有していない点。 (ウ)本件特許発明1と甲3発明との相違点B 本件特許発明1が、青果物が搬送コンベア上のトレーに載っており、照射された青果物から出る透過光が、トレーの貫通した穴を通して受光手段に受光されるのに対し、甲3発明では、トレーを有していないため、これらの構成も有していない点。 (エ)相違点A、Bの検討 a 甲4発明 甲第4号証の記載及び図面によれば、甲第4号証には、以下の発明が記載されているものと認められる。 走行回転する左右一対のコンベアチェン間に架設する小巾スラットを進行方向に所定間隔に多数配設してスラット状のコンベアで構成された搬送手段により水平に搬送面上を搬送され、中央に抜穴を有し、その上部に青果物を載せて移送する受皿と、 この搬送手段の受皿に載った青果物に対し、小巾スラットの搬送面に形成された検出用穴と受皿の抜穴とを介して特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測する品質検査装置と、 を備えた選別機用コンベア装置。 b 本件特許発明1と甲4発明との一致点 甲4発明における「スラット状のコンベアで構成された搬送手段」、「受皿」、「抜穴」は、本件特許発明1における「搬送コンベア」、「トレー」、「トレーの貫通した穴」に相当する。 c 技術分野の関連性 甲第4号証に記載されている「品質検査装置5」と甲第3号証に記載されている「選果機等に適用される青果物の成分測定装置」は、青果物の内部品質を検査している点で一致しており、その検査態様も青果物に対して下方より光を照射して、照射した青果物からの光を青果物の下方側で受光している点で一致するものである。 d 甲3発明に甲4発明を適用することの動機付け 甲3発明は、選果機等に適用されるものであるため、複数の青果物等を対象とし、これらの青果物を搬送しながら大きさや重さ別に選別することを前提としたものであるといえる。してみれば、甲4発明に接した当業者であれば、甲3発明において搬送されてくる複数の青果物を、連続して青果物の内部品質を検査するために、水平に搬送面上を移送する搬送装置に載せられたトレー上に青果物を配置し、搬送装置の下部から光を照射して、その後青果物からの光を受光するために、搬送装置及びトレーの中央部に貫通した穴を設けて、その貫通した穴を通して受光手段で光を受光するようにすることは、容易に想到しうるものである。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)甲3発明に甲4発明を適用することの動機付け 甲第3号証に記載されている「選果機等に適用される青果物の成分測定装置」と、甲第4号証に記載されている「品質検査装置5」とは、青果物に対して下方から光を照射し、青果物の内部を透過した透過光を受光し、受光した光に基づいて青果物の内部を測定する測定装置という点で共通しているから、両者の技術分野は関連しており、作用、機能も共通している。 また、短期間で大量に品質を測定する必要があることは、選別機用コンベアに内在する課題であり、甲3発明と甲4発明とは課題が共通している。 上記のとおり、甲3発明と甲4発明とは、技術分野は関連しており、課題は共通し、さらに作用、機能も共通しているため、両者の検査装置が、接触式または非接触式で異なっていたとしても、両発明を組み合わせる動機づけはある。 (イ)接触式の検査装置を設けることが、容易であるとする技術常識 搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置において、「接触式の検査装置」を設けることは、甲第9号証、甲第10号証に示すように技術常識である。 (ウ)選果機という用語の意味 “選果”という言葉自体は、「果実の出荷の際、大きさ・外見・熟度など、品質に従って等級に選別する(広辞苑)」を意味するものであり、選果機は、果実の出荷の際に用いられるものであるので、多量の果実を対象とし、搬送しながら大きさや、重さ別に選別することを前提としているといえる。 また、甲第11号証ないし甲第13号証の記載によっても、「選果機」といえば、青果物を搬送しながら大きさや重さ別に搬送することが一般的である。 ウ 平成27年11月13日付け上申書における主張の概要 (ア)甲3発明に甲4発明を適用することの動機付け 甲3発明と甲4発明とは、青果物の内部の糖度等の品質を測定する測定装置という点で共通しており、このことに着目すると、両者の技術分野は関連しているといえ、作用、機能も共通しているといえる。 また、甲3発明の課題である極めて短時間に青果物の内部品質を検査することは、青果物の搬送を前提としなければ想定しえないところであり、青果物の搬送手段としてはコンベアが一般的であるから、この点からも甲3発明の「選果機」が「青果物を大量に搬送するとともに、短時間で大量に品質を測定する必要がある」という課題を内在していることは明白である。 さらに、被請求人は、口頭審理において「甲第4号証の課題を離れて、一般的課題を甲4発明の課題として認定することはできず、果実には、高級果実などもあり、その場合にはスピードよりも品質等が重視されることもあるから、特定されていない甲4発明において一般的課題が存在し得るとは必ずしもいえない」と主張したが、本件発明、甲3発明、及び甲4発明のいずれにも果実の種類等は特定されている事項ではないから、上記の主張は課題の認定において考慮すべき事項ではない。 (イ)「搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置において、接触式の検査装置を設けること」が技術常識であるかについて 甲第9号証に記載されている事項である「コンベア(ヤー)」とは、「一定の場所で循環しているベルトや鎖で、物体を輸送する装置」(広辞苑)である。そのため、甲第9号証におけるターンテーブル3の周縁部は「搬送コンベア」であるといえる。そして、図2を参酌すれば受光器Eはミカンに接触しているので、「接触式の検査装置を設けること」であるといえる。 また、甲第10号証は、特段検査方式を問わずに「搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置において、接触式の検査装置を設けること」が技術常識であると判断する根拠として提示したものである。なお、甲第10号証における測定機(導電性吸盤)の接触は、コンベアによる搬送中のトレーの下方からトレーの穴を通してスイカに接触するものである(第25ページ写真2,写真3及び図4)。 (3)無効理由2-2(本件特許発明2の甲第3、4号証に基づく進歩性の欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明2は、甲3発明に甲4発明を組み合わせるとともに、甲第4号証ないし甲第6号証に示された周知・慣用技術を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア)甲第3号証は、投光装置はフード及びゴム製光遮へい物の外側に配置されていることは明らかであるから、甲第3号証における、光ファイバ端と、フード及びゴム製光遮へい物との間を除く青果物の周囲から青果物を照射していることは明らかであり、トレーの搬送路上から両方向に外れて青果物の周囲に配置されていることは明らかである。 また、仮に甲第3号証における投光装置の配置位置が、トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されているものではないものだとしても、甲第4号証に「又、この内部品質の検査は、青果物の胴廻りに特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測する方式にすることもできる。」(段落【0024】)と記載されていること、甲第5号証の第6図に、内部品質検査装置として、照光器(投光器)が、搬送ベルトから横方向に外れて青果物の周囲に配置されることが示されていること、甲第6号証にも、品質測定装置において、複数の白色光源がコンベアの横に配置されていることを考慮すると、投光装置の配置位置を変更して、トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されるようにすることは、甲第4号証の記載や、甲第5号証、甲第6号証に示されているように周知・慣用技術であり、当業者が適宜容易になし得る程度のことに過ぎない。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)甲第3号証について 「甲第3号証には、上記したとおり、投光装置は・・・(略)・・・トレーの搬送路上から両方向に外れて青果物の周囲に配置されていることは明らかである。」の主張は、甲第3号証の記載に基づく主張ではないため取り下げる。 ただ、投光装置は斜め下方向から光を照射しているものであり、甲3発明に甲4発明の搬送コンベアを適用すると、投光装置の配置位置は、トレーの搬送路から両横方向に外れた位置となる蓋然性が高いと思料する。 また、トレーの搬送路と重なる位置に投光装置を配置すると、搬送の邪魔になったり、照射の妨げになるおそれもあるため、その点からも組み合わせた際には、投光装置の配置位置を、トレーの搬送路に重なる位置とはせずに、トレーの搬送路から両横方向に外れた位置となるようにする可能性が高いと思料する。 2 被請求人の主張の概要 これに対して被請求人は、答弁の趣旨として、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として乙第1号証を提出し(なお、乙第1号証は平成27年10月30日提出の上申書に添付して提出されたものである。)、以下のとおり主張している。 乙第1号証:被請求人によるハロゲンランプの発光量を測定した「実験結果報告書」 (1)無効理由1(明細書の記載不備について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 請求人が主張する無効理由1は、本件発明の効果に対する誤った解釈を前提とするものであり、理由が無い。本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、本件発明の目的、構成及び効果が記載されていることは明らかである。 (ア)被請求人は、甲第2号証のテスト区分2が本件発明の効果を確認した実験結果であることを認めるものではないが、少なくともテフロン球の実験結果(表5)によれば、0°の方向から100Wのランプを1つ照射した場合の透過光量を1とした場合の透過光量比率を比較すると、0°の方向から100Wのランプを1つ照射した場合(1.000)に比べて、0°の方向から100Wのランプを2つ照射した場合(2.011)の方が増加している。さらに、同実験結果(表5)において、90°の方向から100Wのランプを1つ照射した場合(3.749)に比べて、90°の方向から100Wのランプを2つ照射した場合(8.171)の方が増加している。 また、本件発明1は、構成要件B及びDで規定しているように、「青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射する」ものであるところ、同実験結果(表5)によれば、0°の方向から250Wのランプを1つ照射した場合(2.655)に比べて、90°の方向から100Wのランプを2つ照射した場合(8.171)の方が約3倍増加しており、さらに、りんごの同実験結果(表6)においては、0°の方向から250Wのランプを1つ照射した場合(2.320)に比べて、90°の方向から100Wのランプを2つ照射した場合(27.999)の方が約12倍増加している。このように、複数の光源により周囲から光を照射することによって前記発明の効果を奏していることは、請求人自身が実施した実験結果からも明らかなのである。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)(解釈イ)、(解釈ロ)について 本件特許の明細書に「単一光源ランプと、複数の光源ランプの合計に、同じ電力エネルギーを供給した際の発光光量を比較した図4の結果」(【0017】)と記載されているとおり、本件特許の図4は、光源の「発光光量」を示すものであり、(解釈ロ)を指すとする御庁の解釈は正当である。 (イ)本件特許の図4の結果を得た際の条件について 本件特許は、平成5年3月31日に株式会社果実非破壊品質研究所が出願し、同社が当初の権利者であったが、平成19年1月25日に株式会社マキ製作所に権利移転し、さらに、平成20年5月9日に被請求人に権利移転されたものであり、20年以上も前の資料は見当たらないため、図4の具体的な実験条件は不明である。 但し、出願当時に行われた図4の具体的な実験条件に関する資料が無くとも、本件発明1及び2の効果は、本件特許の明細書から明らかである。すなわち、本件特許の明細書には、「光源から青果物に照射される光の光量が比較的大きくても、分析しようとする透過光の光量は極めて微弱になってしまい、測定精度が低下し、そのままでは測定結果の信頼性が実際上問題となる」(【0009】)という従来の課題について、「対策としては、例えば強力なランプを使用して光源光の光量をより大きくすること・・・が考えられるが、光源光量を大きくするとランプの発熱や電力消費が大きくなる問題があり、またランプも大型化してしまう。」(【0010】)という対策及びその問題点が記載されており、その上で、本件発明1及び2では、「複数の発光光源からの照射光を・・・青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段」(【0015】)という構成を採用したものである。 ウ 平成27年10月30日付け上申書における主張の概要 (ア)本件特許の図4の効果に関する実験結果について 本件特許の明細書には、「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができる。」(【0017】)、「本発明の透過光検出装置によれば、複数の発光光源を用いて照明光量を増大させるので、単に単一光源に強力なランプを用いる場合に比べて、光量増大の割に電力エネルギーの増大を少なくでき、また発光量の小さい既存,市販のハロゲンランプなどを利用できるという効果がある。」(【0039】)という効果の記載がある。 被請求人は、かかる効果を検証するため、光源の発光量を計測する分光器の受光部から同じ距離に、同一の電力となるように、「複数の光源」と「単一の光源」をそれぞれ配置し、各発光量を計測する実験を実施した(実験結果報告書(乙第1号証))。 実験結果報告書(乙第1号証)の図1は、分光器の受光部から100mmの位置に配置した「3個の50Wの光源からの発光量」及び「1個の150Wの光源からの発光量」を比較測定した結果、図2は、分光器の受光部から150mmの位置に配置した「2個の50Wの光源からの発光量」及び「1個の100Wの光源からの発光量」を比較測定した結果、図3は、分光器の受光部から100mmの位置に配置した「2個の50Wの光源からの発光量」及び「1個の100Wの光源からの発光量」を比較測定した結果である。いずれの結果においても、複数の光源の発光量の方が、同一電力の単一光源の発光量に比べて多くなることが確認された。 これらの測定結果から明らかなとおり、「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができる。」という効果自体は、特別な条件を必要とするものではなく、単に同一電力となるように同じ距離に複数の光源を配置するだけで得ることができ、当業者が技術常識に基づいて通常選択可能な条件で容易に得ることができる。付言すれば、被請求人の前記各実験における光源と光検出器との距離は、請求人が提出した甲第2号証の報告書で採用された距離(150mm)及び甲第8号証の実験成績証明書で採用された距離(100mm)と同じであり、当業者にとって特別な条件ではなく、技術常識に基づいて通常選択される範囲内のものである。 (2)無効理由2-1(本件特許発明1の甲第3、4号証に基づく進歩性の欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 以下(ア)ないし(エ)のとおり、甲3発明と甲4発明とを組み合わせる動機付けがない。 (ア)甲4発明の品質検査装置5と甲3発明の成分測定装置とは、検出する対象が反射光と透過光とで異なり、その構成についても非接触式と接触式とで根本的に異なるものである。そして、甲3発明は搬送中に青果物を検査するものではなく、搬送中に検査する甲4発明を組み合わせる動機付けは無い。 (イ)甲3発明の成分測定装置は、青果物2の下面にゴム製外乱遮へい物20及びゴム製外乱遮へい物16を直接接触させて検査するものであるから、検査中に青果物2が移動することは想定していない。甲3発明は、搬送中に青果物を検査するものではなく、搬送中に検査する甲4発明を組み合わせる動機付けはない。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)本件特許発明1と甲3発明との一致点 甲3発明の「投光装置」は、本件特許発明1の「搬送コンベア上のトレーに載った青果物」に対して複数の光源により周囲から光を照射するという構成を備えていない点において、本件特許発明1の「光源」と一致せず、甲3発明の「投光装置」は本件特許発明1の「光源」と相違する。 甲3発明の「ファイバ端」は、本件特許発明1の「上記トレーの貫通した穴」を通して該青果物の一部表面に対向するという構成を備えていない点で、本件特許発明1の「受光手段」と一致せず、甲3発明の「ファイバ端」は本件特許発明1の「受光手段」と相違する。 (イ)甲3発明に甲4発明を適用することの動機付け 甲4発明には、「この発明が解決しようとする課題は、異なる等級の青果物を、搬送中の受皿に載せて1条のラインで混在搬送し、搬送中に受皿上の青果物の種々の等級を判定することのできる選別機用コンベア装置を提供することである。」(【0007】)という具体的かつ特有の課題が開示されているのであって、かかる具体的かつ特有の課題を無視して、甲第4号証に記載されていない「青果物を大量に搬送するとともに、短時間で大量に品質を測定する必要がある」という課題(以下「対象課題」という。)を認定し得ない。当然ながら、甲4発明は、対象課題を解決するための手段を何ら明らかにしていない。 仮に、甲4発明にかかる課題が内在していたとしても、そもそも、甲3発明は、青果物の成分測定装置に関するものであり、「選別機用コンベア」に関するものではないので、対象課題は甲3発明の課題と共通しない。 甲3発明の課題は、青果物の成分測定装置において、測定時間を短縮し、測定結果の精度が高い機構・構造を有した測定装置を提供することにあるのに対し、対象課題は、選別機用コンベアにおいて、青果物を大量に搬送するとともに、短時間で大量に品質を測定する必要があるというものであり、選別機用コンベアの搬送速度や搬送量に関するものである。このように、甲3発明の課題と対象課題は、具体的な課題の内容が異なり、かつ、その解決手段も異なるのであるから、両課題が共通するとは認められない。 ウ 第1回口頭審理における陳述 甲4の課題を離れて、一般的課題を甲4発明の課題として認定することはできない。 また、果実には、高級果実などもあり、その場合には、スピードよりも品質等が重視されることもあるから、対象となる果実が特定されていない甲4発明において一般的課題が存在し得るとは必ずしもいえない。 エ 平成27年10月30日付け上申書における主張の概要 (ア)甲3発明に甲4発明を適用することの動機付け 甲3発明は、「青果物の成分測定装置」であり、甲4発明は「選別機用コンベア装置」であり、両者の技術分野は明白に相違する。さらに、被請求人の口頭審理陳述要領書において詳述したとおり、甲3発明と甲4発明とは課題が共通するものとは認められない。 (イ)「搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置において、接触式の検査装置を設けること」が技術常識であるかについて 甲第9号証の測定対象物1は、搬送コンベアではなく、傾斜したターンテーブル3によって光学的内部品質分析手段9に搬送されるものであるし、測定対象物1と測定光受光器Eとが接触していることは記載されておらず、第2図においても測定対象物1と測定光受光器Eとの間には隙間が存在しているから、甲第9号証には、「搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置において、接触式の検査装置を設けること」は開示されていない。 また、甲第10号証は、単に、スイカの電子密度選果法において連続測定が可能であることを開示しているだけであり、一般的に「搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置において、接触式の検査装置を設けること」が可能であることを示すものではない。 (2)無効理由2-2(本件特許発明2の甲第3、4号証に基づく進歩性の欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 (ア)本件特許発明1の従属項であること 本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであるところ、本件特許発明1が、甲3発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものでない以上、本件特許発明2についても当業者が容易に想到し得たものではないことは自明である。 (イ)甲3発明との対比 甲3発明は、独立した青果物の成分測定装置であり、そもそも搬送路が存在しないので、本件特許発明2の「複数の発光光源をトレーの搬送路上から両方向に外れて青果物の周囲に配置されていること」という構成要件Fを採用する動機付けが無い。 のみならず、甲3発明の成分測定装置は、測定ヘッド部の内部に投光部が設けられており、測定ヘッド部を青果物に接触させて検査することを必須の要件とするものであるから、かかる構成を変更し、本件特許発明2の「複数の発光光源をトレーの搬送路上から両方向に外れて青果物の周囲に配置されていること」という構成要件Fを適用することについて明確な阻害事由が存在する。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)甲3発明と甲4発明との組み合わせについて 甲3発明と甲4発明を組み合わせたとしても、投光装置1aは青果物の下方に配置され、「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置」される構成は得られないのであるから、本件発明2は、甲3発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではない。 加えて、甲3発明は、測定ヘッド部1内において投光装置1aと光ファイバ3とが一体不可分で設けられており、投光装置1aを測定ヘッド部1から分離して「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置」することはできないから、本件発明2は、甲3発明から実現し得ない構成なのである。 (イ)「複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されていること」が周知技術であるかについて 甲第4号証及び甲第5号証は、いずれも透過光方式の検査装置を開示しておらず、透過光方式の検査装置において、「複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されていること」が周知・慣用技術であるとする根拠とはならない。請求人は、前記主張の根拠として、甲第4号証における「この内部品質の検査は、青果物の胴廻りに特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測する方式にすることもできる。」(【0024】)という記載を引用しているが(審判請求書30頁下から2行?31頁1行)、かかる記載から明らかなように「反射光量を計測する方式」であり、透過光方式の検査装置に関する記載ではない。 また、請求人は、「甲第5号証の第6図に、内部品質検査装置として、照光器(投光器)が、搬送ベルトから横方向に外れて青果物の周囲に配置されることが示されている」と主張している(審判請求書31頁1行?4行)。しかし、甲第5号証には、「第6図は、本実施例の光学系全体を示す。図示した201は、1キロワットのハロゲンランプを内蔵する投光器である。202は、投光器200から照射された光線のうち赤外光のみを通過させると同時に、残りの可視光を被検体204、すなわち『みかん』に向けて反射し、さらにこの被検体204からの反射光をカメラ206に導入するスリット付きのミラーである。」(469頁左下欄1行?8行)とあるように、被検体204からの反射光を計測するものとされ、透過光方式の検査装置に関する記載は見当たらない。 ウ 第1回口頭審理における陳述 「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置」とは、トレーの搬送路上での横側に離れて、配置される構成を特定するものである。 第4 無効理由1(明細書の記載不備)についての当審の判断 1 無効理由1に関連する各証拠の記載事項 (1)乙第1号証(実験結果報告書) ア 乙第1号証に記載された事項 (ア)「1 実験1(50W×3、150W×1) (1) 実験日、実験場所、実験者 平成27年9月14日、シブヤ精機株式会社内において、シブヤ精機株式会社 生産統轄本部 浜松品質管理本部 東日本CS部 河野吉秀が実験した。 (2) 実験内容 1○(当審注:「1○」は丸数字を表す。)光源:ハロゲンランプ 50W PHILIPS製EXN12V50W 150W ウシオライティング株式会社製 JCR15V150WB/32 2○(当審注:「2○」は丸数字を表す。)測定方法 写真1は、実験設備の全体を示す写真である。受光部と光源とを対向させて、受光部で受光した光を導光して分光器(シブヤ精機株式会社製 型式:MIQ2200)により測定した。 写真2に示すように、受光部から100mmの距離に、3個の50Wの光源を受光部に向けて配置し、3個の50Wの光源から照射された発光量を分光器によって測定した。さらに、受光部から100mmの距離に、1個の150Wの光源を受光部に向けて配置し(写真2における中央の位置)、1個の150Wの光源から照射された発光量を分光器によって測定した。 (3)実験結果 図1は、受光部から100mmの位置に配置した「3個の50Wの光源からの発光量」(50W×3)及び「1個の150Wの光源からの発光量」(150W×1)を比較測定した結果である。図1において、横軸は波長であり、 縦軸は任意強度(AU)である。 図1に示すように、全ての波長範囲において、150W×1に比べて50W×3の発光量が多い結果となった。 2 実験2(50W×2、100W×1) (1)実験目、実験場所、実験者 平成27年10月29日、シブヤ精機株式会社内において、シブヤ精機株式会社 技術統轄本部 センサ技術部 松下透が実験した。 (2)実験内容 1○(当審注:「1○」は丸数字を表す。)光線:ハロゲンランプ 50W ウシオライティング株式会社製 JCR12V50WGAL 100W ウシオライティング株式会社製 JCR12V100WBAU 2○(当審注:「2○」は丸数字を表す。)測定方法 実験1と同様に受光部と光源とを対向させて、受光部で受光した光を導光して分光器(シブヤ精機株式会社製 型式:MIQ2200)により測定した。 写真3に示すように、光検出器から150mmの距離に、2個の50Wの光線を受光部に向けて配置し(写真3における両側の位置)、2個の50Wの光源から照射された発光量を分光器によって測定した。さらに、写真4に示すように、受光部から150mmの距離に、1個の100Wの光源を受光郎に向けて配置し(写真4における中央の位置)、1個の100Wの光源から照射された発光量を受光部によって測定した。 また、受光部からの距離を100mmとし、同様に2個の50Wの光線から照射された発光量及び1個の100Wの光源から照射された発光量を分光器によって測定した。 (3)実験結果 図2は、受光部から150mmの位置に配置した「2個の50Wの光源からの発光量」(50W×2)及び「1個の100Wの光源からの発光量」(100W×1)を比較測定した結果である。 また、図3は、受光部から100mmの位置に配置した「2個の50Wの光源からの発光量」(50W×2)及び「1個の100Wの光源からの発光量」(100W×1)を比較測定した結果である。 図2及び3において、横紬は波長であり、縦軸は任意強度(AU)である。 図2及び3に示すように、受光部から100mmの位置に配置した場合も、150mmの位置に配置した場合も、全ての波長範囲において、100W×1に比べて50W×2の発光量が多い結果となった。」(2頁5行-3頁29行) (イ)写真2 ![]() (ウ)写真3 ![]() (エ)写真4 ![]() (オ)図1 ![]() (カ)図2 ![]() (キ)図3 ![]() (ク)上記(ウ)から、50Wのハロゲンランプ(ウシオライティング株式会社製 JCR12V50WGAL)のミラーが銀色であること、上記(エ)から、100Wのハロゲンランプ(ウシオライティング株式会社製 JCR12V100WBAU)のミラーが金色であることが見て取れるから、両者のミラーの反射膜が異なる金属であることは明らかである。 (ケ)上記(ア)ないし(ク)の記載を総合すると、乙第1号証には、「受光部から100mmの距離に配置した3個の50Wハロゲンランプ(PHILIPS製EXN12V50W)の発光量と、同距離に配置された1個の150Wハロゲンランプ(ウシオライティング株式会社製 JCR15V150WB/32)の発光量とを比較測定すると、前者の発光量が多くなることを示した実験結果と、受光部から100mmまたは150mmの距離に配置した2個の50Wハロゲンランプ(ウシオライティング株式会社製 JCR12V50WGAL)の発光量と、同距離に配置された50Wハロゲンランプ(ウシオライティング株式会社製 JCR12V50WGAL)とは異なる金属の反射膜を用いた1個の100Wハロゲンランプ(ウシオライティング株式会社製 JCR12V100WBAU)の発光量とを比較測定すると、前者の発光量が多くなることを示した実験結果」が示されている。 (2)甲第2号証(報告書) 甲第2号証は、地方独立行政法人大阪市立工業研究所による青果物の透過光量に関する「報告書」であり、2種類のハロゲンランプ光源と4種類の被測定サンプルを用いて透過光量を測定したものである。 (3)甲第8号証(実験成績証明書) 甲第8号証は、請求人による青果物の透過光量に関する「実験成績証明書」であり、4種類のハロゲンランプ光源と3種類の被測定サンプルを用いて透過光量を測定したものである。 (4)甲第14号証(実験結果報告書) ア 甲第14号証に記載された事項 (ア)「2. 実験イ (1)目的 リフレクターなしのハロゲンランプを用いて、単一光源(100W×1)の発光量と複数光源(50W×2)の発光量を比較する。 (2)光源 松下電器産業株式会社製ハロゲンランプ ・J12V50WAS(50W) ・J12V100WA(100W) (3)実験方法 写真1は実験イの設備全体を示す写真である。受光部と光源とを対向させて、受光部で受光した光を導光して分光器(カールツァイス製MMS1)により測定した。受光部は外筒内の筒軸上に光ファイバー(コア径0.5mm)を配置した。外筒の先端にはNDフィルター(Kenko製 PRO ND 1000)を設けて、光源からの光を減光した。光源と受光部との距離は100mmとした(写真2)。 (4)実験結果 図1は、受光部から100mmの位置に配置した「2個の50Wの光源からの発光量(破線)」及び「1個の100Wの光源からの発光量(実線)」を測定し、比較した結果である。図1において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は任意強度である。 図1に示すように、分光器の測定波長帯域(310nm?1150nm)において、両者の発光量はほぼ等しいという結果となった。 3. 実験ロ (1)目的 JCR15V150WB/32およびEXN12V50Wの照射光の波長特性を比較する。 (2)光源 ウシオライティング株式会社製ハロゲンランプ ・JCR15V150WB/32 ダイクロイックミラー,焦点距離32mm PHILIPS製ハロゲンランプ ・EXN12V50W(JR12V50WAKW/5-1(EXN)) ダイクロイックミラー,ビーム角38°(焦点なし) (3)実験方法 実験イと同じ設備を用いて各光源の照射光を測定した。光源と受光部との距離は100mmとした。 (4)実験結果 図2は、受光部から100mmの位置に配置した「JCR15V150WB/32(実線)」および「EXN12V50W(破線)」を測定し、比較した結果である。図2において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は任意強度である。 図2の各グラフの波長特性を、図1のリフレクターなし(ミラーなし)の場合の波長特性と比較すると、図1の方が広い波長帯域において光が測定されている。すなわち、図2のJCR15V150WB/32は600nmより長い波長の光が減衰しており、EXN12V50Wは750mmより長い波長の光が減衰している。 したがって、JCR15V150WB/32のダイクロイックミラーは600mmより長い波長の光を透過させ、EXN12V50Wのダイクロイックミラーは750mmより長い波長の光を透過させていることが分かる。 4. 実験ハ (1)目的 JCR15V150WB/32およびEXN12V50Wの配光特性を比較する。 (2)光源 ウシオライティング株式会社製ハロゲンランプ ・JCR15V150WB/32 ダイクロイックミラー,焦点距離32mm PHILIPS製ハロゲンランプ ・EXN12V50W(JR12V50WAKW/5-1(EXN)) ダイクロイックミラー,ビーム角38°(焦点なし) (3)実験方法 10mm×10mmのマス目から成る方眼紙に対して、100mmの距離に光源を対向配置し、光を照射する。このとき方眼紙の照明態様を撮影する。 (4)実験結果 図3は、方眼紙から100mmの位置に配置した「JCR15V150WB/32(左)」および「EXN12V50W(右)」を比較した結果である。 図3に示すように、JCR15V150WB/32の照明領域は、EXN12V50Wの照明領域よりも広い。JCR15V150WB/32の照明領域は、中央が明るく、外側に広がるに従って徐々に暗くなっている。EXN12V50Wの照明領域は、領域の略全体に渡って均一な明るさとなっている。」(2頁5行-4頁21行) (イ)図1 ![]() (ウ)図2 ![]() (エ)図3 ![]() (オ)上記(ア)ないし(エ)の記載を総合すると、甲第14号証には、「J12V50WASのハロゲンランプ2個からの発光量と、J12V100WAのハロゲンランプ1個からの発光量とは、分光器の測定波長帯域(310nm?1150nm)において、両者の発光量はほぼ等しいという実験結果と、JCR15V150WB/32のダイクロイックミラーは600mmより長い波長の光を透過させ、EXN12V50Wのダイクロイックミラーは750mmより長い波長の光を透過させているものであり、JCR15V150WB/32の照明領域は、EXN12V50Wの照明領域よりも広く、かつ、JCR15V150WB/32の照明領域は、中央が明るく、外側に広がるに従って徐々に暗くなっているのに対して、EXN12V50Wの照明領域は、領域の略全体に渡って均一な明るさとなっていることを示す実験結果」とが記載されていると認められる。 (5)甲第15号証([JCR]製品情報(http://www.ushiolighting.co.jp/Product/searchgroup/name:JCR/type:/)2015年11月11日ダウンロード印刷画面) ア 甲第15号証に記載された事項 (ア)JCR15V150WB/32の詳細 ![]() (イ)上記(ア)の記載より、甲第15号証には、ウシオライティング株式会社のハロゲンランプであるJCR15V150WB/32JCRの焦点距離が32mmであることが示されている。 (6)甲第16号証(「JIS C 7527 ハロゲン電球(自動車用を除く) -性能仕様」財団法人 日本規格協会、2011年9月20日発行、p4-p5) 甲第16号証は、ハロゲン電球の規格であるJIS C 7527の仕様を示すものであり、反射形電球の最大光度の初期値は、定格値の75%以上でなければならないこと、反射形電球の最大光度維持率は、定格寿命の50%時点で、定格値の90%でなければならないことが示されている。 2 本件発明について (1)本件特許掲載公報の記載 本件特許掲載公報には、従来技術とその課題として、 「【0003】 【発明の背景と従来技術】周知のように、取り引き市場における青果物の取引価格はその品質に大きく左右される。例えば従来から、その品種や原産地等が品質指標の一つとされているし、また、現在多くの選果場で行われているように、個々の果の大きさや形状、傷の有無等の外観的品位もその品質指標とされている。そしてこの後者の品質指標は、一般的には階級,等級のランクで具体的に評価されている。このランク付け評価が行なわれるのは、青果物が自然環境下での気候,天候に影響される農業生産品であることから、同一規格製品間の品質差が殆ど無いよう製造される工業製品とは異なって、ある地方から搬出される単一品種の青果物であっても個々の果は大きさ、形状、外観的品位等によって評価が大きく異なるのが普通で、それが取引価格に直接反映するからである。 【0004】このように青果物の品質評価は、従来から上述した品種等による特定グループの全体を指標する評価と、これとは別に、グループ内の個々の果の傷の有無等の外観的品位で代表される果個別の評価を総合して行われていた。 【0005】しかし近時においては、例えば桃に含まれる糖度の値やスイカ内部の巣の有無というような内部品質を、果を破壊することなく検査・測定する技術(非破壊検査技術)が提案されるに及び、またこれらの内部品質が需要者にとっては商品購買の極めて重要な目安になることから、内部品質の検査・測定技術の実際面への応用が要望されている。例えば、甘いと思って購買した桃が実際には甘くなかったような場合には、需要者は著しく損をした気持ちになるし、販売店や生産者にとっては信用失墜というリスクが大きいからである。このような青果物の内部品質としては例えば、糖度,酸度,渋,クロロフィル等の値、褐変,みつ症,核割れ等で代表される病・障害の有無などが挙げられ、これらの内部品質も、上記外観的品位と同様に個々の果において一律ではない。 【0006】以上のような背景の下で、青果物の内部品質検査のための技術として従来提案されているものに、青果物に光を照明し、その反射光の分光分析によって糖度を測定する反射光方式の光学的測定法がある。しかしこの反射光方式では、せいぜい果の表皮近傍の内部品質しか測定できないので広く普及するに至っていない。 【0007】そこでこれに代えて、果を透過した光によって内部品質を測定することが考えられる。 【0008】しかしながら、この透過光方式によって青果物の果の内部品質を実用的に意味のある程度まで検査,測定できるようにするには、更に解決すべきいくつかの問題がある。 【0009】その一つは、透過光の減衰が多くの青果物において極めて大きいという問題である。例えば温州ミカンではその減衰率は10-4?10-6であり、リンゴでは更に大きく10-6?10-8という値となるため、光源から青果物に照射される光の光量が比較的大きくても、分析しようとする透過光の光量は極めて微弱になってしまい、測定精度が低下し、そのままでは測定結果の信頼性が実際上問題となるからである。 【0010】このような透過光の高い減衰という問題に対する対策としては、例えば強力なランプを使用して光源光の光量をより大きくすることや、受光側の受光感度を増大させる方法が考えられるが、光源光量を大きくするとランプの発熱や電力消費が大きくなる問題があり、またランプも大型化してしまう。このため青果物の内部品質検査用の装置として実際に使用できる適当な照明ランプは提供されていない。また後者の受光感度を増大させる方法としては、受光素子の受光面積の拡大や、光電子増倍管,イメージインテンシファイア等を用いて受光した光強度を増倍することが考えられるが、受光面積の拡大は雑音成分の除去のための冷却装置が大型になるし、光学系のムラに由来する精度低下の問題を招き、更に上記光電子増倍管等は、原理的に受光した光に含まれる周波数に依存した情報は消失して光強度のみを比例的に増倍した光情報になってしまうため、増倍後の光情報では内部品質を測定するのに不適で、例えば分光分析ができず、したがって特定波長域の光の吸収程度を利用した糖度測定ができないという致命的な問題がある。このように従来は、透過光による青果物の内部品質の検査.測定が、照明側、受光側のいずれにおいても技術的に満足できるものがなかった。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記のような透過光方式で青果物の内部品質を検査・測定しようとする場合の問題を鋭意検討し、単に光源の光量を増大するのではなく、より効率的に透過光の光量を得ることができて、感度のよい光の照明,検出ができる透過光方式の方法を検討して本発明をなすに至ったのであり、本発明の目的の一つはかかる方法を実現できる光透過検出装置を提供するところにある。 【0012】また本発明の他の目的は次ぎのことにある。すなわち、透過光に基づいて果の内部品質を精度よく測定,検査するには、上記透過光の減衰の問題とは別に、検出した透過光が果内部の状態に対応した情報を持っていることが求められる。しかし、照明ムラ等が原因して果内部の透過光光路が偏っていれば、測定結果が実際の内部品質を正確に表わしていないことになる。 【0013】かかる観点から本発明者は、上記した高い感度で透過光の検出を実現することと併せて、実際の果の内部状態とできるだけ一致(対応)した情報をもつ透過光の検出ができるように工夫した光透過検出装置を提供することを目的として本発明をなすに至ったのである。」 と記載されている。 そして、上記課題を解決するための手段として、 「【0014】 【課題を解決するための手段及び作用】上記の目的の実現のためになされた本発明の特徴は、上記特許請求の範囲の各請求項に記載した通りにある。 【0015】そして本発明よりなる光透過検出装置の特徴の一つは、搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、この搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段と、この受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段と、複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段のの間(当審注:「遮光手段の間」の誤記である。)を除く青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段とを備えた構成をなすところにある。 【0016】この光透過検出装置の受光光学系に受光された透過光は、特に限定されるものではないが、例えば、青果物に対向された受光手段である光ファイバーを通して分光器に導かれ、所定波長帯域毎の光強度をCCD等で検出する分光分析を行なって、例えば所定波長域における吸収の度合に基づく含有糖度の測定で内部品質を検査することに利用できる。」と記載され、上記手段によって、つぎの効果を奏することができると記載されている。 「【0017】そして、本発明の上記光透過検出装置は、複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができる。これは単一光源ランプと、複数の光源ランプの合計に、同じ電力エネルギーを供給した際の発光光量を比較した図4の結果から確認できる。なお複数の発光光源には、例えばハロゲンランプ等の同一規格の光源ランプを複数使用することもできるし、必要に応じて異なる発光量のものや種類の異なる光源ランプを組み合わせて用いてもよい。更に、青果物の形状や品目による透過光量の減衰率の違いなどに応じて、発光光源の数を変更するように設けることもできる。 【0018】また本発明装置では、複数光源により青果物をその周囲から照明するので、透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光として得ることができる。したがって得られた透過光を分析した測定結果は、実際の果の内部状態を十分反映したものとなる。なお、光源は少なくとも2以上あれば有効であるが、例えば桃やリンゴ等の球形果実をムラなく照明するには好ましくは3以上の光源を青果物の周囲に均等に配置することがよい。このように複数の発光光源を用いれば、単一の強力な光源ランプを用いるとその発熱を考慮してレンズ系等で光源を青果物からできるだけ離すことが必要になるのに対し、個々の光源ランプの発熱量を大幅に小さくできるので、青果物の周囲に直接ランプを対向配置することも可能であり、装置の構成を簡易と出来る。」 (2)本件特許発明1、2が解決しようとする課題、解決手段および効果の認定 上記(1)の記載から、本件特許発明1、2が解決しようとする課題、解決手段および効果は、以下のとおりであると認められる。 ア 解決しようとする課題 (課題1)透過光の減衰に対する対策として、「光源光量を大きくするとランプの発熱や電力消費が大きくなる問題があり、またランプも大型化してしまう」(段落【0010】)。 (課題2)透過光の減衰に対する対策として、「受光素子の受光面積の拡大や、光電子増倍管,イメージインテンシファイア等を用いて受光した光強度を増倍することが考えられるが、受光面積の拡大は雑音成分の除去のための冷却装置が大型になるし、光学系のムラに由来する精度低下の問題を招」く(段落【0010】)。 イ 解決手段 「青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように」「受光手段」を配置すること ウ 効果 (効果1)「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができる。」(段落【0017】) (効果2)「複数光源により青果物をその周囲から照明するので、透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光として得ることができる」(段落【0018】) (効果3)「複数の発光光源を用いれば、単一の強力な光源ランプを用いるとその発熱を考慮してレンズ系等で光源を青果物からできるだけ離すことが必要になるのに対し、個々の光源ランプの発熱量を大幅に小さくできるので、青果物の周囲に直接ランプを対向配置することも可能であり、装置の構成を簡易と出来る。」(段落【0018】) 3 本件特許発明1、2の効果の検討 上記2の(2)で認定したように、発明の詳細な説明には、本件特許発明1及び2が、3つの効果を奏するものと記載されている。そこで、請求人が無効理由1として主張している(効果1)を含め、上記3つの効果について、発明の詳細な説明に、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているかどうか検討する。 (1)(効果1)について 本件特許発明1、2の(効果1)は、「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができる。」というものである。 ところで、同一の特性であって異なる定格消費電力の光源同士を比較すると、一般的には定格消費電力が大きな光源の方が発光効率が高くなることは技術常識である。当該技術常識を踏まえると、複数の発光光源と単一の発光光源の電力とを同一とすれば、単一の発光光源による照明の方がより多い光量となると解するのが自然である。ところが、上記(効果1)は、複数の発光光源による照明の方がより多い光量を得ており、本件特許発明1及び2が、上記(効果1)を奏することに疑義があると言わざるを得ない。 また、本件特許掲載公報の段落【0017】には、「これは単一光源ランプと、複数の光源ランプの合計に、同じ電力エネルギーを供給した際の発光光量を比較した図4の結果から確認できる。」と記載され、図4には、発光光源が単一の場合と複数の場合の相違を示すグラフが示されているが、このグラフを得るための測定条件等が明らかにされておらず、これらから、本件特許発明1及び2が上記(効果1)を奏することが明らかであるとはいえない。 さらに、被請求人は乙第1号証を提出し、本件特許発明1及び2が、上記(効果1)を奏する旨主張する。しかしながら、乙第1号証には、複数の発光光源と単一の発光光源として異なる特性の光源を用いた実験の結果は示されているものの、同一の特性の光源を用いた実験の結果は示されていない。一方、請求人が提出した甲第14号証の実験イには、複数の発光光源と単一の発光光源とを同一の特性とした場合には、ほぼ同じ光量を得ることが記載されている。同一の特性とした場合には、上記(効果1)を奏するものではないことからすると、乙第1号証によって、本件特許発明1及び2が、上記(効果1)を奏すると認めることはできない。 以上のことからすれば、本件特許発明1および2が、上記(効果1)を奏するものであるとまでいうことはできない。 (2)(効果2)について 本件特許発明1、2の(効果2)は、「複数光源により青果物をその周囲から照明するので、透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光として得ることができる」というものである。 本件特許発明1、2は、「青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射」するものであり、青果物の一方向から照明する単一の光源に比べて、複数の方向から照明することができることは明らかであるから、上記(効果2)を奏するものであると理解できる。 (3)(効果3)について 本件特許発明1、2の(効果3)は、「複数の発光光源を用いれば、単一の強力な光源ランプを用いるとその発熱を考慮してレンズ系等で光源を青果物からできるだけ離すことが必要になるのに対し、個々の光源ランプの発熱量を大幅に小さくできるので、青果物の周囲に直接ランプを対向配置することも可能であり、装置の構成を簡易と出来る。」というものである。 ここで、光源ランプの電力と当該電力による発熱量とが比例することは、技術常識であるから、単一の光源ランプと、複数の光源ランプとを同一の電力とした場合、当該複数の光源ランプのそれぞれの光源ランプは、単一の光源ランプよりも発熱量が小さくなることは明らかである。 そうすると、単一の強力な光源ランプに比べて、複数の光源ランプを青果物に近づけることができるものであるから、本件特許発明1、2は、上記(効果3)を奏するものであると理解できる。 4 小括 上記のとおり、上記(効果1)については、発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているとまではいえない。しかしながら、本件特許発明1、2は、上記(効果2)及び(効果3)という効果を奏するものであるから、発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されていないとまでいうことはできない。 よって、請求人が主張する無効理由1によっては、本件特許発明1および2に係る特許を無効とすることはできない。 第5 無効理由2-1、2-2についての当審の判断 1 無効理由2-1、2-2に関連する各証拠の記載事項 (1)甲第3号証(特開平3-160344号公報) ア 甲第3号証に記載された事項 (ア)「本発明は、選果機等に適用される青果物の成分測定装置に関する。」(1頁左下欄20行?右下欄1行) (イ)「本発明は、青果物等の内容成分を近赤外線を用いて瞬間に、精度よく、かつ非破壊的に測定できる装置を提供しようとするものである。」(2頁左上欄3?5行) (ウ)「本発明の一実施例を第1図乃至第4図に示す。 第1図乃至第4図に示す本発明の一実施例は、内容成分が測定される青果物2に当てられる測定ヘッド部1、・・・(略)・・・を備えている。上記測定ヘッド部11(当審注:「上記測定ヘッド部1」の誤記である。)は、第2図に示すように青果物2との接触部分にゴム製外乱光遮へい物20が設けられ、内部には青果物2による反射光を入光し内面が金メッキされたフード17、同フード17の青果物2との接触する一端に配設されたゴム製光遮へい物16、上記フード17の他端に配設された集光レンズ15、同集光レンズ15を介して青果物2による反射光を受光し第3図に示すように配設された光ファイバ3のファイバ端18、及び上記フード17の外側に第4図に示すように配設された投光装置1aが設けられている。 上記において、投光装置1aより青果物2に当てられた近赤外線は、青果物2の内部で拡散反射し、その光は内面が金メッキされているフード17で反射し、集光レンズ15により集められてファイバ端18に当てられる。」(2頁左下欄4?右下欄19行) (エ)図2 ![]() (オ)図4 ![]() イ 甲第3号証記載の発明 (ア)上記ア(ウ)及び図2、4によれば、「投光装置1a」は、複数配設されており、青果物2に対し周囲から近赤外線を照射するものであることが読み取れる。 (イ)上記ア(ア)(イ)によれば、甲第3号証に記載の発明は、「選果機等に適用される青果物の成分測定装置」であって、「青果物等の内容成分を近赤外線を用いて瞬間に、精度よく、かつ非破壊的に測定できる装置」であることから、上記ア(ウ)及び図2、4に記載の本発明の実施例は、「選果機等に適用される青果物の成分測定装置」であって、「青果物等の内容成分を近赤外線を用いて瞬間に、精度よく、かつ非破壊的に測定できる装置」であるといえる。 (ウ)上記図2によれば、「青果物2」の一部表面と「ファイバ端18」とは対向していることが読み取れる。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)を前提に上記ア(ア)ないし(ウ)の記載及び同(エ)ないし(オ)の図面の記載を総合すると、甲第3号証にはつぎの発明が記載されているものと認められる。 「青果物等の内容成分を近赤外線を用いて瞬間に、精度よく、かつ非破壊的に測定できる、選果機等に適用される青果物の成分測定装置であって、 前記青果物の成分測定装置は、測定ヘッド部1を備え、 前記測定ヘッド部1は、青果物2との接触部分にゴム製外乱光遮へい物20が設けられ、内部には青果物2による反射光を入光し内面が金メッキされたフード17と、同フード17の青果物2との接触する一端に配設されたゴム製光遮へい物16、上記フード17の他端に配設された集光レンズ15、青果物2の一部表面と対向し、同集光レンズ15を介して青果物2による反射光を受光する光ファイバ3のファイバ端18、及び上記フード17の外側に、青果物2に対し周囲から近赤外線を照射するように複数配設された投光装置1aを設け、 投光装置1aより青果物2に当てられた近赤外線は、青果物2の内部で拡散反射し、その光は内面が金メッキされているフード17で反射し、集光レンズ15により集められてファイバ端18に当てられる青果物の成分測定装置」(以下、「甲3発明」という。) (2)甲第4号証(特開平4-322778号公報) ア 甲第4号証に記載された事項 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は異なる等級の青果物を搬送中の受皿に載せて1条のラインで混在搬送し、搬送中に受皿上の青果物の種々の等級を判定する選別機用コンベア装置に関する。」 (イ)「【0015】第1図は本発明の一実施例を示す一部破断した平面図であり、第2図は同じく一部を破断した側面図である。この図面において、1は青果物Fを載置するための受皿、2は受皿1を搬送する搬送手段であり、その搬送面上には受皿1を目視の等級別に位置決めする手段2Aを有している。3は前記搬送手段2の搬送面上の受皿1の載せ位置を検出するための等級検出装置。4は等級検出装置3の下流側に設けられた整列装置である。 【0016】実施例における各部について詳述すると、前記受皿1は第3図の斜視図に示す如く、平面視で円形状をなしており、その上面には逆円錐型の載部11を形成している。12は抜穴であり青果物Fが通過しない大きさで載部11の中央部から底面に貫通し、載部11に載せられた青果物Fの下部における例えば熟度をその抜穴12を介して検出可能になしている。13はバーコードマークであり各バーを縦にして並設している。夫々の受皿1のバーコードマーク13には、夫々背番号付けする如く固有情報を付与している。この受皿1は例えば樹脂成型等で一体型に成形したものを用いることができる。尚、この受皿1は、熟度等を青果物Fの下部から計測しない場合においては抜穴12のない受皿1を用いることができる。 【0017】搬送手段2は第4図の部分平面図と第5図の部分斜視図によく示す如く、走行回転する左右一対のコンベアチェン21,21間に架設する小巾スラット22を進行方向に所定間隔に多数配設してスラット状のコンベアを構成する。23は突起状の係止部であり、前記小巾スラット22の上面に搬送方向と直交する方向に受皿1の一部がちょうど嵌まり込む間隔で且つ、搬送方向に受皿1が一個ずつ載る間隔で等間隔に設けられて位置決めする手段2Aを構成している。この位置決めする手段2Aは例えば第6図に示す如く、小巾スラット22の端の一部を上方に折り曲げて係止部23を突出する如く形成することもできる。」 (ウ)「【0023】5は品質検査装置であり、前記整列装置4の下流側で第7図によく示す如く小巾スラット22の下方に設けられ、小巾スラット22の搬送面に形成された検出用穴25と受皿1の抜穴12とを介して青果物Fの下部における熟度を検査する如く構成する。この品質検査装置5は青果物F中にふくまれるクロロフィルの消失が成熟度と高い相関があることを応用したもので、クロロフィルの特定波長領域における吸収帯を利用してこの吸収帯における反射光量を計測しこの値に基づき内部の品質を検査する如く構成する。即ち、青果物Fの下部に特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測し、この値を所定の演算式によりクロロフィルの消失度合を数値化し熟度判定要素とする。尚、実施例では青果物Fの下部における熟度を検出する如く構成したが糖度等の内部品質であってもよく更に、カメラ等によって青果物Fの下部のキズや形状等の外観品質を検査する如く構成してもよい。」 (エ)第1図 ![]() (オ)第3図 ![]() (カ)第7図 ![]() (キ)上記(ア)ないし(ウ)の記載及び(エ)ないし(カ)の図面の記載を総合すると、甲第4号証には、「搬送中に受皿上の青果物の種々の等級を判定する選別機用コンベア装置であって、 走行回転する左右一対のコンベアチェン間に架設する小巾スラット22を進行方向に所定間隔に多数配設してスラット状のコンベアで構成された搬送手段により搬送面上を搬送され、中央に抜穴12を有し、その上部に青果物Fを載せて移送する受皿1と、 この搬送手段の受皿1に載った青果物Fに対し、小巾スラット22の搬送面に形成された検出用穴25と受皿の抜穴12とを介して特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測する品質検査装置5と、 を備えた選別機用コンベア装置」の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)甲第5号証(特開昭59-87082号公報) ア 甲第5号証に記載の事項 (ア)「第6図は、本実施例の光学系全体を示す。図示した201は、1キロワットのハロゲンランプを内蔵する投光器である。202は、投光器200から照射された光線のうち赤外光のみを通過させると同時に、残りの可視光を被検体204、すなわち「みかん」に向けて反射し、さらにこの被検体204からの反射光をカメラ206に導入するスリット付きのミラーである。」(5頁左欄1?8行) (イ)「搬送されてきた被検体204がカメラ206の直前に到達する時刻を検出するために、一対の照光器208P・・・及び受光器208Rを・・・搬送ベルト301の両側に対向して配置する。なお、カメラ206としては、後に詳述するとおり、2種のCCDラインセンサを備えるのが好適である。本実施例では、被検体204の左右両側について品位(大きさ、きず、色)を測定しているので、更に、別個の投光器212、・・・カメラ218、・・・一対の照光器218P・・・および受光器218R・・・を設ける。」(5頁左欄10行?右欄4行) (ウ)第6図 ![]() (エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、甲第5号証には、搬送ベルトの搬送路から横方向に外れた位置に、光源であるハロゲンランプ201及び212と、被検体204からの反射光を受光するためのカメラ206とを配置すること、また、被検体の所定位置への到達時刻を検出するための照光器受光器の対からなる光検出器の光源208P、218Pを搬送ベルトの搬送路から横方向に外れた位置に配置するものが記載されているものといえるが、これらの光源201、212はいずれも被検体の横方向の反射光像を検出するためのものであり、照光器208P、218Pはいずれも被検体の搬送路上の位置を検出するためのものである。 (4)甲第6号証(特開平4-104041号公報) ア 甲第6号証に記載の事項 (ア)「第1図は、本発明の第1の実施例に係る青果物の品質測定装置(みかんの糖度測定装置)の概略構成を示す。この装置は、上記の(1)式を用いたものである。 同図において、1はみかんを載せて移動するコンベア、2はコンベア1に載せられ矢印のように移動するみかんである。コンベア1の後端部には、糖度の高いみかんを運ぶコンベア1Aと、糖度の低いみかんを運ぶコンベア1Bとが、備えられている。2Aは糖度の高いみかん、2Bは糖度の低いみかんを示す。3は白色光源、4は500nm乃至700nmの波長域の光のみを通すフィルタ(バンドパスフィルタ)、5は充電変換素子である受光器、6は500nm乃至11000nの波長域の光を通すフィルタ、7は受光器を示す。 また、8は受光器5からの出力を増幅する増幅器、9は受光器7からの出力を増幅する増幅器、10は除算器、11は計算機(マイクロコンピュータ)、12は計算機11からの指令に基づき糖度の高いみかんと低いみかんとを選別する選別装置、13は選別装置12により駆動される選別駆動機構を示す。」(5頁左上欄16行?右上欄17行) (イ)「第3図は、本発明の第2の実施例に係るみかんの糖度測定装置の概略構成を示す。この装置は、上記の(2)式を用いたものである。 同図において、21-1,21-2,21-3,・・・,21-nはn個の光源制御装置、22-1,22-2,22-3,・・・,22-nはn個の光源を示す。n個の光源22-1,22-2,22-3,・・・,22-nは、それぞれ500nm乃至700nmの範囲のいずれかの波長(それぞれλ1,λ2,・・・,λnとする)の光を発生する光源である。例えば、500nm乃至700nmの範囲を適当な間隔で等分して各波長を設定すればよい。 21-refは光源制御装置21-1,・・・,21-nと同様の光源制御装置、22-refは所定の一波長(λref=740nmとする)の光を発生する光源である。光源22-1,22-2,22-3,・・・,22-nおよび22-rerの点灯や消灯は、それぞれ光源制御装置21-1,21-2,21-3,・・・,21-nおよび2l-refにより制御される。 23は測定すべきみかん、24はみかん23を透過してくる光を受光して電気信号に変換する受光器、25は受光器24の出力信号を増幅する増幅器、27は所定の間隔のクロックパルス信号を発生するクロック発生回路である。26はクロック発生回路27からのクロックパルス信号に基いて各波長λ1,λ2,・・・,λn,λrefの透過光の強度を得る同期化回路、28は同期化回路26の出力である各波長の透過光の強度を正規化する基準化回路、29は基準化回路28の出力である各波長の透過光の強度を正規化した値を加算する加算器、30は計算機である。」(6頁左上欄5行?右上欄16行) (ウ)「なお、この第2の実施例において、みかんを載せるコンベア、および計算機の指令に基づいてみかんを選別する機構などは、第1の実施例と同様であるので図示しない。」(6頁右上欄17?20行) (エ)第1図 ![]() (オ)第3図 ![]() (カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、甲第6号証には、複数の光源22-1・・22-nからなることが記載されており、上記(ウ)の記載、第1図及び第3図をあわせみれば、光源が搬送路から横方向に外れた位置に配置されているものと解されるものの、これらの複数の光源は、みかん23の横方向からそれぞれ光を照射し、横方向において、透過光を検出するものである。 (5)甲第9号証(実公昭58-25345号公報) ア 甲第9号証に記載された事項 (ア)「57○(当審注:「57○」は丸数字を表す。)実用新案登録請求の範囲 水平面に対して傾斜した状態で回転し、且つ、周縁には複数個の透孔を有する測定対象物載置用のターンテーブルと、・・・(略)・・・光源及び受光器を具備していて、前記透孔内にはまりこんで保持された状態の測定対象物の内部品質を分析する光学的内部品質分析手段と、・・・(略)・・・よりなる内部品質分析装置。」(第1欄14-28行) (イ)「第1図は、本考案にかかる内部品質分析装置の斜視図であり、1は例えばコンベア2によりターンテーブル3上に搬入される測定対象物、たとえばミカンである。図示する例では、搬入手段としてベルトコンベア2を用いているが、その外にシュート等を用いてもよい。 上記ターンテーブル3は、ターンテーブル3の中心にある回転軸4により水平方向に対して一定の傾斜角度を有して軸支されており、その形状は円形をなす。このターンテーブル3の周縁部は、上記回転軸4を中心とする同心円上の小溝5によって区画されており該小溝5の外側、即ちターンテーブル3の中心より遠距離側には例えばスポンジ等のクッション材6を内側面に貼付けた透孔7が、同心円状に複数個穿設されている。」(第2欄4-18行) (ウ)「Eは測定対象物1が光路上に存在するときに、その測定対象物1の内部で散乱して透過してくる光を測定光として受ける受光器で、前記光源の光路軸線からずれた位置においてその測定光を複数の異なる波長に分割して検出する。」(第3欄5-9行) (エ)第1図 ![]() (オ)第2図 ![]() (カ)上記(ア)ないし(ウ)の記載及び(エ)ないし(オ)の図面の記載を総合すると、甲第9号証には、「複数の透孔7を有するターンテーブル3と、測定受光器Eとを有する内部品質分析装置であって、測定対象物載置用の前記測定受光器Eの先端は、透孔7の内部に配置されている内部品質分析装置」が開示されている。 (6)甲第10号証(全農 施設・資材レポート 平成4年度 No.2(全国農業協同組合連合会発行 平成4年11月20日)) ア 甲第10号証に記載された事項 (ア)「スイカの共同選果施設の実用機では、連続測定と製作の観点から写真2に示すように、外部電極は8角筒状のトンネルになっている。このトンネルの中でスイカを連続移送させながら、写真3に示す導電性ゴム製の吸盤を下部から押し当て吸引して通電し、スイカと外部電極及び静電容量を測定し体積を求めている。」(第25頁左欄17-23行) (イ)写真2 ![]() (ウ)写真3 ![]() (エ)図4 ![]() (オ)上記(ア)の記載及び(イ)ないし(エ)の図面の記載を総合すると、甲第10号証には、「外部電極のトンネルの中でスイカを連続移送させながら、導電性ゴム製の吸盤を下部から押し当てて静電容量を測定するスイカ空洞果判定装置」が開示されている。 (7)甲第11号証(実公昭63-26220号公報) ア 甲第11号証に記載された事項 (ア)「(従来例) みかんやトマト等の農産物をコンベヤ部により選別部の選別体に1個づつ供給して、大小別や重量別に選別する選果機が知られている。」(第1欄15-18行) (8)甲第12号証(実願昭62-192887号(実開平1-96416号)のマイクロフィルム) ア 甲第12号証に記載された事項 (ア)「(従来例) ナシ,リンゴ,トマト,ミカンなどの果菜類の選果機として、果菜類を容器を入れ、該容器をコンベアにより搬送しながら、重鎮や荷重センサーなどから成る秤量部によりその重量を秤量し、設定重量以上の重量を有するときは、該容器を下方へ回転させて、その中の果菜類を下方へ落下させて選別するようにした選果機が知られている。」(第1頁18行-第2頁6行) (9)甲第13号証(特開昭60-257888号公報) ア 甲第13号証に記載された事項 (ア)「(作用) 供給部(3)からコンベア(2)上に供給された果実(1)は、このコンベア(2)によって機体一側に向けて搬送されるが、搬送途時において、果実センサ(5)によって大きさを検出され、また、糖度センサ(6)によって果実(1)の糖度を検出される。そして、判定器(7)が両センサ(5)(6)からの判定信号を受けて果実(1)の等級を判定する。」(第2頁左上欄2-9行) (イ)「(実施例) 以下、この発明の一実施例を図面に基づいて具体的に説明する。 まず、その構成について説明すると、選果機(8)はコンベア(2)と分級部(4)等で構成されており、このコンベア(2)はフレーム(9)の前後両端部に回転可能に架設した左右一対の輪体(10)(11)(一方は、図示していない)と、該輪体(10)(11)間に巻掛けて張設した左右一対の無端帯(12)(一方は図示していない)と、該無端帯(12)間に回動自在に枢着して移動方向に所定間隔置きに多数配設した果実載皿(13)で構成されている。そして、該果実載皿(13)は所定の分級位置に来たとき分級装置(20)(例えば、ソレイド)で転倒するべく構成している。」(第2頁左上欄14行-右上欄7行) (ウ)「検出ケース(21)はコンベア(2)の果実載皿(13)に載って移動してくる果実(1)が通過し得る通路を形成し、且つ門型に形成している。そして、該ケース(21)にはコンベア(2)の移動方向下手側から果実(1)の大きさを検出する果実センサ(5)と果実(1)の糖度を検出する糖度センサ(6)を順に装備している。」(第2頁右上欄18行-左下欄3行) (エ)第1図 ![]() (オ)上記(ア)ないし(ウ)の記載及び(エ)の図面の記載を総合すると、甲第13号証には、「コンベア(2)と、検出ケース(21)と、分級部(4)とからなる選果機(8)であって、検出ケース(21)は、コンベア(2)の移動方向下手側から果実(1)の大きさを検出する果実センサ(5)と果実(1)の糖度を検出する糖度センサ(6)とを備え、果実(1)の搬送途時において、果実センサ(5)によって大きさを検出し、糖度センサ(6)によって果実(1)の糖度を検出することで、果実(1)の等級を判定する選果機(8)。」が開示されている。 2 無効理由2-1(本件特許発明1の甲第3、4号証に基づく進歩性の欠如) (1)本件特許発明1と甲3発明の対比 本件特許発明1は、上記第2の1において認定したとおり、本件特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明特定事項により特定されるとおりのものである。 ア 本件特許発明1の構成要件Aについて 上記1(1)イで認定したように、甲3発明は、選果機に用いられる検査装置であるものの、搬送コンベアやトレーを有するものではない。よって、甲3発明は、本件特許発明1の構成要件Aである「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」を有さない点で本件特許発明1と相違する。 イ 本件特許発明1の構成要件Bについて (ア)甲3発明の「投光装置1a」は、「青果物2に対し周囲から近赤外線を照射するように複数配設された」ものであり、「近赤外線」は光である。また、「投光装置1a」が光源を有することは技術常識から明らかである。 よって、甲3発明の「投光装置1a」が有する光源と、本件特許発明1の構成要件Bの「この搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し」、その「周囲から光を照射」する「光源」とは、「青果物に対しその周囲から光を照射する複数の光源」である点で共通する。 また、甲3発明の「ファイバ端18」には、「投光装置1aより青果物2に当てられ」、「青果物2の内部で拡散反射」した「近赤外線」が「当てられ」ていること、「ファイバ端18」は「青果物2の一部表面と対向」していることから、甲3発明の「ファイバ端18」と、本件特許発明1の構成要件Bの「照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」とは、「照射された青果物から出る透過光を受光するように該青果物の一部表面に対向する受光手段」である点で共通する。 以上のことからすれば、本件特許発明1の構成要件Bと、甲3発明の「青果物2に対し」「複数の投光装置1a」の光源により「周囲から近赤外線を照射」し、「青果物2の内部で拡散反射」した「近赤外線」が当たる「青果物2の一部表面」に「対向」する「ファイバ端18」とは、「青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように該青果物の一部表面に対向する受光手段」の点で共通し、甲3発明は、「搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し」て光を照射するものではない点、青果物の一部表面と受光手段とが「トレーの貫通した穴を通して」対向するものではない点で相違するものである。 ウ 本件特許発明1の構成要件Cについて 甲3発明の「フード17」は、「青果物2による反射光を入光する」ものであって、「内面が金メッキされた」ものであるから、「フード17」を通して「青果物2による反射光」以外の光が「ファイバ端18」に入光しないことは明らかである。そして、甲3発明の「ゴム製光遮へい物16」は、「フード17」の「青果物2との接触する一端に配設された」ものであって、甲3発明の「フード17」及び「ファイバ端18」は、「青果物2」と「ファイバ端18」との間に配置されるものである。 以上のことからすれば、甲3発明の「フード17」及び「ゴム製光遮へい物16」は、本件特許発明1の「この受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段」に相当するものである。 エ 本件特許発明1の構成要件Dについて 本件特許発明1の構成要件Dの「複数の発光光源」が、構成要件Bの「複数の光源」を指すものであることは明らかである。また、甲3発明の「投光装置1a」は、「フード17の外側」に「配設され」ているものである。 よって、上記イ及びウで検討した点も踏まえると、甲3発明の「投光装置1a」は、本件特許発明1の「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段」に相当するものである。 オ 本件特許発明1の構成要件Eについて 甲3発明は、「投光装置1a」から「近赤外線」を「青果物2」に照射し、「青果物2の内部で拡散反射」した「近赤外線」を受光して「青果物等の内容成分を」測定する装置であるから、本件特許発明1の「青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」に相当するものといえる。 カ 以上アないしオで検討したことをまとめると、本件特許発明1と甲3発明とは、つぎの一致点で一致し、相違点1、2において相違するものと認められる。 <一致点> 「 青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように該青果物の一部表面に対向する受光手段と、 この受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段と、 複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段と、 を備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」である点 <相違点1> 本件特許発明1が、「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」を備えるのに対して、甲3発明では、トレーを備えていない点 <相違点2> 本件特許発明1が、「搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し」て「光を照射し」、「照射された青果物から出る透過光」が、「トレーの貫通した穴を通して」「受光手段」に「受光」されるのに対して、甲3発明は、「搬送コンベア上のトレー」を備えておらず、「青果物2の内部で拡散反射」した「近赤外線」は、「トレー」を通ることなくファイバ端18」に当たる点 (2)相違点1および2についての検討 ア 相違点1について (ア)甲第4号証には、上記1(2)ア(キ)で認定したとおり、「搬送中に受皿上の青果物の種々の等級を判定する選別機用コンベア装置であって、走行回転する左右一対のコンベアチェン間に架設する小巾スラット22を進行方向に所定間隔に多数配設してスラット状のコンベアで構成された搬送手段により搬送面上を搬送され、中央に抜穴12を有し、その上部に青果物Fを載せて移送する受皿1と、この搬送手段の受皿1に載った青果物Fに対し、小巾スラット22の搬送面に形成された検出用穴25と受皿の抜穴12とを介して特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測する品質検査装置5と、を備えた選別機用コンベア装置」が記載されている。 ここで、甲3発明に、甲4発明の「走行回転する左右一対のコンベアチェン間に架設する小巾スラット22を進行方向に所定間隔に多数配設してスラット状のコンベアで構成された搬送手段により搬送面上を搬送され、中央に抜穴12を有し、その上部に青果物Fを載せて移送する受皿1」を組み合わせるとすると、上記「受皿1」は甲3発明における「測定ヘッド部1」と「青果物2」との間に配置されることとなる。その際、甲3発明の「成分測定装置」は、「測定ヘッド部1」を「青果物2」に接触させて測定する装置であるから、「測定ヘッド部1」は、「抜穴12」を貫通して「青果物2」と接触することが必要である。そして、上記「受皿1」はコンベア上に配置されたものであって、測定の前後においてはコンベアによって搬送されるものであるから、「測定ヘッド部1」は、非測定時は、搬送の妨げとならないよう「青果物2」及び「抜穴12」から離間している必要がある。つまり、甲3発明に甲4発明を組み合わせて本件特許発明1の相違点1に係る構成とするためには、「測定ヘッド部1」に、測定時には、「青果物2」と接触し、非測定時は「青果物2」と離間するための駆動手段を設ける必要があるといえる。 しかしながら、甲3発明の「測定ヘッド部1」は駆動手段を有するものではないから、甲3発明に甲4発明を組み合わせるだけでは、本件特許発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者にとって容易であるということはできない。 (イ)この点につき、請求人は、搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置が、接触式の検査装置を備えていることが技術常識であることを示す証拠として甲第9号証および甲第10号証を提出しているので以下に検討する。 a 甲第9号証について (a)上記1(5)で認定したように、甲第9号証には、「複数の透孔7を有するターンテーブル3と、測定受光器Eとを有する内部品質分析装置であって、測定対象物載置用の前記測定受光器Eの先端は、透孔7の内部に配置されている内部品質分析装置」が記載されている。しかしながら、ターンテーブル3は搬送コンベアではないし、ターンテーブル3の透孔7の内部に測定受光器Eが配置されているものの、ターンテーブル3が回転している際に測定受光器Eがどこに配置されるか記載されておらず、ターンテーブル3の回転を妨げないための構成が開示されているものでもない。 したがって、甲第9号証は、上記技術常識を立証する証拠として採用することができない。 (b)ターンテーブル3に関し、請求人は、「甲第9号証に記載されている事項である「コンベア(ヤー)」とは、「一定の場所で循環しているベルトや鎖で、物体を輸送する装置」(広辞苑)である。そのため、甲第9号証におけるターンテーブル3の周縁部は「搬送コンベア」であるといえる。」と主張している。しかしながら、甲第9号証におけるターンテーブル3は、物体を輸送する装置ではなく、内部品質分析装置の一構成要素であるので、採用することができない。 (c)以上のことからすれば、甲第9号証を上記技術常識を立証する証拠として採用することはできない。 b 甲第10号証について (a)上記1(6)で認定したように、甲第10号証には、「外部電極のトンネルの中でスイカを連続移送させながら、導電性ゴム製の吸盤を下部から押し当てて静電容量を測定するスイカ空洞果判定装置」が開示されている。「連続移送させ」ていることからすれば、甲第10号証のスイカ空洞果判定装置が「搬送コンベア」に対応する構成を有するものと解することができるものの、スイカを連続移送させつつ、導電性ゴム製の吸盤を下部から押し当てることを実現するための具体的手段が開示されていない。 よって、甲第10号証に、「搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する接触式の検査装置」が記載されていたとしても、甲3発明に甲4発明を適用するために必要な、上記技術常識が記載されているとまではいえないから、甲第10号証を上記技術常識を立証する証拠として採用することはできない。 (b)この点につき、請求人は、「審理事項通知書における指摘事項は、特段検査方式を問わずに「搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置において、接触式の検査装置を設けること」が技術常識であると判断する根拠をたずねられたので、接触式である甲3発明に甲4発明を組み合わせることが容易である技術常識を示す文献として、果実に接触して電気的に密度を測定する方式である技術を開示する甲第10号証を提示したものである。なお、甲第10号証における測定機(導電性吸盤)の接触は、コンベアによる搬送中のトレーの下方からトレーの穴を通してスイカに接触するものである(第25ページ写真2,写真3及び図4)。」と主張している。しかしながら、上記(a)で検討したとおり、甲第10号証を「接触式である甲3発明に甲4発明を組み合わせることが容易である技術常識を示す文献」として採用することはできない。また、第25ページ写真2,写真3及び図4を参酌しても、甲第10号証のスイカ空洞果判定装置がトレーを有するものであるとは認められない。 c 結論 以上のことから、「搬送コンベアにより逐次搬送される青果物の内部品質を連続して検査する装置が、接触式の検査装置」を備えていることが技術常識であるとまではいうことができない。 (ウ)以上のとおりであるから、甲3発明に、甲4発明、甲第9号証および甲第10号証を適用して、本件特許発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者にとって容易であるということはできない。 イ 相違点2について 相違点2は、上記アにおいて検討した「搬送コンベア上のトレー」を前提とするものである。そして、相違点1については、上記アにおいて検討したとおり甲3発明、甲4発明、甲第9号証および甲第10号証に基づいて、本件特許発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者にとって容易であるということはできないものである。 よって、相違点2に係る構成にすることについても、相違点1と同様に、当業者にとって容易であるということはできない。 ウ なお、甲3発明に甲4発明を適用することの動機付けについて、念のため以下検討する。 (ア)技術分野の関連性について a 甲3発明は、上記1(1)イで認定したとおり、「選果機等に適用される青果物の成分測定装置」であり、甲4発明は、上記1(2)イで認定したとおり、「搬送中に受皿上の青果物の種々の等級を判定する選別機用コンベア装置」であって、「選別機用コンベア装置」には、「青果物の種々の等級を判定する」ための「品質検査装置5」が備えられているものである。 ここで、「選果機」とは、甲第11号証ないし甲第13号証を根拠として請求人が主張するように、青果物を搬送しながら大きさや糖度などに基づいて等級別に選別するためのものを意味することは技術常識である。してみると、甲4発明における「搬送中に受皿上の青果物の種々の等級を判定する選別機」と「選果機」とは同義といい得るから、甲3発明と甲4発明とは、「選果機に適用される青果物の成分測定装置」という点で共通しており、両者の技術分野には関連性があると認められる。 b 被請求人は、甲3発明は、「青果物の成分測定装置」であり、甲4発明は「選別機用コンベア装置」であり、両者の技術分野は明白に相違すると主張しているが、上記aに照らして、採用することができない。 c 以上のことからすれば、甲3発明と甲4発明とは、「選果機に適用される青果物の成分測定装置」という点で共通しており、両者の技術分野は、関連性があるものといえる。 (イ)課題の共通性について a 甲3発明が解決しようとする課題は、甲第3号証の【従来の技術】および【発明が解決しようとする課題】によれば、「従来の選果機等に適用される青果物の内容成分の測定」は、「1秒間に数個の青果物を測定することは困難」であり、「本発明は、青果物等の内容成分を近赤外線を用いて瞬間に、精度よくかつ非破壊的に測定できる装置を提供」することである。そうすると、甲3発明は、青果物を短時間で大量に測定するという課題を解決しようとするものであるといえる。 ここで、甲4発明は、選別機用コンベア装置において等級を判別するものである以上、青果物を搬送するにあたって、短時間でその青果物の等級を測定する必要があることは、当業者にとって自明な課題である。 よって、甲4発明においても、上記課題を内在するものといえる。 b この点につき、被請求人は、甲4発明の課題を離れて、一般的課題を甲4発明の課題として認定することはできないし(以下、「主張1」とする。)、果実には、高級果実などもあり、その場合には、スピードよりも品質等が重視されることもあるから、対象となる果実が特定されていない甲4発明において一般的課題が存在し得るとは必ずしもいえない(以下、「主張2」とする。)と主張している。 そこで、上記主張について検討する。 (a) 主張1について 主引用発明と副引用発明との間の課題の共通性を検討するにあたって、本願の出願時において、当業者にとって自明な課題または当業者が容易に着想し得る課題が共通する場合も、課題の共通性が認められるものであり、上記主張1を採用することはできない。 (b) 主張2について 甲4発明は、対象となる果物が特定されていない一般的な選別機用コンベア装置であり、一般的な選別機用コンベア装置において、青果物を搬送するにあたって、短時間でその青果物の等級を測定する必要があることは、当業者にとって自明な課題であるから、甲4発明においても、当該課題を有するものといえる。 よって、上記主張2を採用することはできない。 c 以上のことからすれば、甲3発明と甲4発明とは、「青果物を搬送するにあたって、短時間でその青果物の等級を測定する必要がある」という共通する課題を有するものである。 (ウ)結論 したがって、甲3発明と甲4発明とは、技術分野の関連性があるとともに、共通する課題を有するものであるから、甲3発明に甲4発明を適用することの動機付けが存在するものである。 (3)小括 上記のとおり、本件特許発明1と甲3発明との間には、相違点1および2が存在し、当該相違点1および2は、請求人が提出した甲第4号証、甲第9号証ないし甲第13号証を勘案しても当業者が容易に想到し得るものということはできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2-1によっては、本件特許発明1に係る特許を無効とすることはできない。 3 無効理由2-2(本件特許発明2の甲第3、4号証に基づく進歩性の欠如) (1)本件特許発明2と甲3発明との対比 ア 本件特許発明2について 本件特許発明2は、上記第2の2で認定したとおり、本件特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項2に記載の発明特定事項により特定されるとおりのものである。 イ 本件特許発明2と甲3発明との対比 (ア)本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであるから、本件特許発明2と甲3発明とは、少なくとも上記2の(1)のカにおいて認定したとおりの一致点で一致するものであり、相違点1、2において相違するものである。 (イ)本件特許発明2の構成要件Fについて a 本件特許発明2の構成要件Fの「複数の光源」が「トレーの搬送路上から両横方向に外れて配置されている」は、ここでの光源が搬送路のトレー載置面側とは異なる面側、つまり受光部側に配置される構成を含むものであるのかが不明であることから、その意味内容について検討する。 本件特許明細書には、複数の光源に対応する実施例として、「【0028】6は、搬送面2の下側から、上記測定ステージに停止されたトレー1の貫通穴3を通して青果物20の底部に対向するように配置された吸着パッドであり、本例では、図中に一点鎖線で示した待機位置から、実線で示した青果物20に接触する測定位置の間で、図示しない上下動機構により上動、下動されるように設けられている。この上下動機構の作動は、トレーの移送状態と同期して該トレーが測定ステージに停止された時に上動して測定を行なうように設けることがよい。またこの吸着パッド6は、吸引管8を介し真空ポンプ7に接続されていて、吸着パッド6が青果物20に接触したときに吸引して、その接触部が気密的にシールされた状態となるように設けられ、これによって次ぎの受光光学系に外乱光が入ることを防止している。」、「【0037】なお64,64は青果物の側方に配置された複数の光源ランプ、65,65は熱線カットフィルターであり、これらは例えば青果物の搬送に邪魔とならないように搬送路上からは横方向に外れて配置されていることがよい。69はトレーの貫通穴63及び弾性シートの穴73を通してその一端が青果物に対向するように配置された受光手段としての光ファイバーであり、この他端は、分光器70に接続されており、これらによって構成される受光光学系は実施例1の構成と略同様である。」と記載されている。上記記載及び図1、3の記載から、本件特許発明2の構成要件Fにおける「複数の光源」は、受光部側に配置される構成を含まないと意味するものと解される。 また、本件特許発明2の構成要件Fにおける「複数の光源」が、受光部側に配置される構成を含まないことは、被請求人の「「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置」とは、トレーの搬送路上での横側に離れて、配置される構成を特定するものである」という主張からも裏付けられる(第1回口頭審理調書参照)。 b これに対して、甲3発明の投光装置1aは、光ファイバ3のファイバ端18の周囲に配置されているものである。また、甲3発明は、相違点1において検討したように、搬送コンベア及びトレーを有さないものである。 (ウ)してみると、本件特許発明2と甲3発明とは、上記2(1)カにおいて認定したとおりの一致点で一致し、相違点1、2及びつぎの相違点3で相違する。 <相違点3> 本件特許発明2の「青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段は、複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されている」のに対して、甲3発明の「投光装置1a」は、「光ファイバ3」の「ファイバ端18」の周囲に配置されている点 (2)相違点についての検討 ア 相違点1および2が当業者が容易に想到し得るものとはいえないことは、上記2(2)で検討したとおりである。 イ 相違点3の想到容易性について 甲3発明は、「搬送コンベア」及び「トレー」を備えないものであるから、相違点3の前提となる相違点1および2が当業者が容易に想到し得るものとはいえない以上、相違点3についても当業者が容易に想到し得るものとはいえないが、相違点1および2が当業者が容易に想到し得るものであったと仮定して、念のため検討を行う。 (ア)甲3発明は、「投光装置1a」を「光ファイバ3」の「ファイバ端18」の周囲に配置し、「投光装置1a」の周囲を「ゴム製外乱光遮へい物20」によって覆うものであるから、甲3発明において、「投光装置1a」を「ゴム製外乱光遮へい物20」の外部に配置する構成をわざわざ採用する必要性は見いだせず、そのようにする動機付けはない。 また、甲3発明に、甲4発明の「搬送コンベア」および「トレー」を組み合わせるとともに、「投光装置1a」を青果物の上部に配置したとしても、「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置」する構成とはならない。なぜなら、甲3発明の「投光装置1a」は青果物の周囲に均等に配置されているものであり、青果物の上部に配置すれば、トレーの搬送路上にも「投光装置1a」が配置されるからである。 ここで、請求人は「複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置」することが周知技術であることを示す証拠として、甲第4号証ないし甲第6号証を提出しているので以下に検討する。 a 甲第4号証について 段落【0024】には、「又、この内部品質の検査は、青果物の胴廻りに特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測する方式にすることもできる。」と記載されているが、甲4発明の「品質検査装置5」は、「特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測する」ものである。よって、上記記載に基づいて、青果物の胴周りに特定波長領域の光を照射した場合、横方向において反射光を検出するものとなる。 b 甲第5号証について 甲第5号証には、搬送ベルトの搬送路から横方向に外れた位置に、光源であるハロゲンランプ201及び212と、被検体204からの反射光を受光するためのカメラ206とを配置すること、また、被検体の所定位置への到達時間を検出するための照光器受光器の対からなる光検出器の光源208P、218Pを搬送ベルトの搬送路から横方向に外れた位置に配置するものが記載されているものといえるが、これらの光源201、212はいずれも被検体の横方向の反射光像を検出するためのものである。 なお、請求人は、「甲第5号証の第6図に、内部品質検査装置として、照光機(投光器)が、搬送ベルト301から横方向に外れて青果物の204の周囲に配置されている」と主張しているが、この「照光機(投光器)」は、いずれも「搬送された被検体204がカメラ206の直前に到達する時刻を検出するため」(上記1(3)ア(イ))のものであって、検査用の光源についてのものではない。 c 甲第6号証について 甲第6号証には、複数の光源22-1・・22-nからなることが記載されており、上記1(4)ア(ウ)の記載並びに第1図及び第3図をあわせみれば、光源が搬送路から横方向に外れた位置に配置されているものと解されるものの、これらの複数の光源は、みかん23の横方向からそれぞれ光を照射し、横方向において、透過光を検出するものである。 d ところで、請求人は、投光装置の配置位置を変更して、トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されるようにすることは、甲第4号証の記載や、甲第5号証、甲第6号証に示されているように周知・慣用技術である旨主張するが、青果の内部品質検査装置には、透過型や反射型があるように、青果物に対して「光源」と「受光手段」とをどのように配置するかによって、光の経路が異なるものである。よって、上記相違点3が容易想到であるとするには、「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置」された「複数の発光光源」と「青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」とを備えた構成が周知技術である必要がある。これに対して、上記a?cで検討したとおり、甲第4号証ないし甲第6号証は、上記構成を示すものとはいえない。 e よって、甲第4号証ないし甲第6号証は、「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置」された「複数の発光光源」と「青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」とを備えた構成が周知技術であることを示すものでもない。 ウ したがって、上記相違点3は、甲3発明に甲4発明を組み合わせるとともに、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された事項を勘案したとしても、当業者が容易に想到し得るものでもない。 (3)小括 上記で検討したとおり、本件特許発明2と甲3発明との間には、相違点1ないし3が存在し、これらの相違点は、請求人が提出した甲第3号証ないし甲第6号証、甲第9号証ないし甲第13号証を勘案しても、いずれも当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2-2によっては、本件特許発明2に係る特許を無効とすることはできない。 第6 むすび したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、平成6年法改正前特許法第36条第4項の規定に違反するものではなく、また、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもないから、請求人の主張及び提出した証拠方法によって、これらの特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-16 |
結審通知日 | 2016-02-18 |
審決日 | 2016-03-02 |
出願番号 | 特願平5-74193 |
審決分類 |
P
1
123・
121-
Y
(G01N)
P 1 123・ 536- Y (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横井 亜矢子 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
麻生 哲朗 三崎 仁 |
登録日 | 2001-11-09 |
登録番号 | 特許第3249628号(P3249628) |
発明の名称 | 青果物の内部品質検査用の光透過検出装置 |
代理人 | 楠本 高義 |
代理人 | 一宮 誠 |
代理人 | 安國 忠彦 |
代理人 | 永島 孝明 |
代理人 | 朝吹 英太 |
代理人 | 磯田 志郎 |
代理人 | 若山 俊輔 |
代理人 | 安友 雄一郎 |
代理人 | 浅野 哲平 |
代理人 | 白石 光男 |
代理人 | 竹本 松司 |
代理人 | 野中 信宏 |