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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1328316
審判番号 不服2016-12723  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-24 
確定日 2017-06-06 
事件の表示 特願2012-65196「ライブラリ装置及びライブラリ装置におけるアクセッサの制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月30日出願公開、特開2013-196738、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月22日の出願であって、平成27年9月15日付けで拒絶理由が通知され、同年11月24日付けで手続補正がなされたが、平成28年5月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年8月24日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2010-152993号公報
引用文献2.特開平05-342723号公報
引用文献3.特開平05-258433号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成27年11月24日付けの手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、本願発明1及び本願発明4に係る発明はそれぞれ次のとおりのものである。

「【請求項1】
マガジン設置部の所定位置に配置され、各マガジンセル内に記録媒体をそれぞれ格納する複数のマガジンと、該マガジンのセル配置方向に沿って移動自在に設けられて該マガジンとの間で記録媒体を授受するアクセッサと、該アクセッサの移動及び位置を制御する制御部と、前記アクセッサのアクセス経路を補正するための補正データを各マガジン固有のマガジンID毎に記憶する補正データ記憶部と、を具備するライブラリ装置であって、
前記マガジンには、前記マガジンIDを記録したID記録部と、該マガジンセルの位置を測定する基準となる基準ターゲットとが設けられ、
前記アクセッサには、前記マガジンIDと前記基準ターゲットとを読み取る読取手段が設けられ、
前記制御部は、前記読取手段によって読み取られた前記マガジンIDが、過去に読み取ったことのあるマガジンIDのマガジンであるか否かを判断し、過去に読み取ったマガジンIDである場合には、前記補正データ記憶部が記憶する当該マガジンIDに対応する補正データに基づいて、前記アクセッサの移動を制御し、また、過去に読み取っていないマガジンIDである場合には、前記基準ターゲットに基づき補正データを算出して前記補正データ記憶部に格納し、該補正データに基づいて前記アクセッサの移動を制御する、ことを特徴とするライブラリ装置。」

「【請求項4】
マガジン設置部の所定位置に配置され、各マガジンセル内に記録媒体をそれぞれ格納する複数のマガジンと、該マガジンのセル配置方向に沿って移動自在に設けられて該マガジンとの間で記録媒体を授受するアクセッサと、前記アクセッサのアクセス経路を補正するための補正データを各マガジン固有のマガジンID毎に記憶する補正データ記憶部とを有するライブラリ装置におけるアクセッサの制御方法であって、
前記アクセッサの読取手段が、前記マガジンに設けられた前記マガジンIDを読み取るステップと、
前記読取手段によって読み取られた前記マガジンIDが、過去に読み取ったことのあるマガジンIDのマガジンであるか否かを判断するステップと、
過去に読み取ったマガジンIDである場合に、当該マガジンIDに対応する補正データに基づいて、前記アクセッサの移動を制御するステップと、
過去に読み取っていないマガジンIDである場合に、前記アクセッサの読取手段が、前記マガジンに設けられた前記マガジンセルの位置を測定する基準となる基準ターゲットを読み取るステップと、
前記基準ターゲットに基づき補正データを算出して前記補正データ記憶部に格納するステップと、
前記算出した補正データに基づいて前記アクセッサの移動を制御するステップと
を有することを特徴とするライブラリ装置におけるアクセッサの制御方法。」

なお、本願発明2及び本願発明3は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明5及び本願発明6は、本願発明4を減縮した発明である。

第4 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2010-152993号公報)には、「ライブラリ装置」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

1.「【0017】
そこで、本発明は、上記関連技術の不都合を改善し、複数の記録媒体を収納したマガジン内の記憶媒体の収納状況を確認する処理が完了するまでにかかる時間を短縮し得るライブラリ装置及びその記憶媒体管理方法,記憶媒体管理用プログラムを提供することを、その目的とする。」
2.「【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のように構成され機能するため、これにより、マガジンに装備された各カウンタ部から読み取った各スロットの挿抜回数を前回読み取って記憶した各スロットの挿抜回数と比較して、一致しなかったスロットに対して記憶媒体の確認を行うので、記録媒体の出し入れがあったスロットのみを対象にして記憶媒体の収納状況を確認することができ、マガジン内の記憶媒体を確認する処理が完了するまでにかかる時間を有効に短縮することができる。」
3.「【0023】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る第1の実施形態の磁気テープライブラリ装置1の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、本実施形態の磁気テープライブラリ装置1は、複数の記憶媒体(磁気テープ)を格納する媒体格納部(マガジン)15を着脱可能に搭載すると共に、ホストコンピュータ2と接続してデータの送受信を行うホストI/F(インタフェース)部11と、磁気テープライブラリ装置1の全体動作を制御する主制御部12と、搭載されたマガジン15から取り出された記憶媒体にデータを読み書きするデータ読み書き部(テープドライブ)13と、マガジン15及びテープドライブ13に対して記憶媒体を出し入れすると共にマガジン15とテープドライブ13との間で記憶媒体を搬送する媒体搬送部14とを備えている。
【0024】
さらに、本実施形態の磁気テープライブラリ装置1は、マガジン15に収納されている記憶媒体を確認する媒体確認部19と、媒体確認部19に確認された結果得られたマガジン15のスロット毎に収納されている記憶媒体の識別子を記憶する媒体情報記憶部16とを備えている。」
4.「【0029】
また、図2及び3に示すように、本実施形態のマガジン15は、さらに、スロット155に記憶媒体152が出し入れされた回数をカウントするメカカウンタ157と、メカカウンタ157がカウントした回数を計数し表示するカウント表示機構158とからなるカウンタ部159をスロット155毎に備えている。図5(a)は、メカカウンタ157の設置位置を示す図である。また、図5(b)及び図5(c)は、メカカウンタ157の動作を説明する図である。」
5.「【0033】
本実施形態のライブラリ装置1は、さらに、マガジン15に取り付けられたカウンタ部159の計数値を読み取るカウンタリード部17を備えている。このカウンタリード部17は、例えば、カウンタ部159が計数値を記憶する手段と通信手段を有している場合は、カウンタ部159と電気的に通信を行い、カウンタ部159から計数値を応答として受け取るような構成であり、また、カウンタ表示機構158の表示を撮影して画像認識し計数値を読み取る構成であってもよい。カウンタリード部17が読み取った各カウンタ159の計数値は、媒体情報記憶部16に記憶される。
【0034】
媒体確認部19は、マガジン15の各スロットに対して記憶媒体の有無を確認し収納されている記憶媒体に付された媒体識別子を読み取る機能を備えている。本実施形態の媒体確認部19は、媒体識別子を読み取る媒体識別読取機構を媒体搬送部14上に設けた構成であり、媒体識別読取機構が各スロットまで移動し、スロットに記憶媒体が収納されていると確認した場合に、記憶媒体に付された識別子を読み取るというような動作を行う。このとき、1つのスロットに2巻媒体が格納されていた場合(図2参照)、本実施形態の媒体確認部19は、手前の記憶媒体を媒体搬送部14に格納した状態で、奥に収納されている記憶媒体の識別子の読み取りを行うように構成されている。ここで、媒体識別読取機構は、例えば、記憶媒体の識別子がバーコードに記録されている場合はバーコードリーダであればよく、記憶媒体の識別子がRFID(Radio Frequency IDentification)タグに記録されている場合はタグリーダであればよい。
【0035】
上述した媒体情報記憶部16は、媒体確認部19により取得された情報に従ってスロット毎に記憶媒体の有無及び収納されている記憶媒体の媒体識別子を記録したテーブルデータを記憶する。
【0036】
図6は、本実施形態における媒体記憶部16に記憶されているテーブルデータの一例を示す図である。媒体情報記憶部16に記憶されているテーブルデータは、マガジン15のスロット番号に対応付けてカウンタ値,媒体の有無又は媒体識別子が記録されたテーブルデータである。本実施形態のマガジン15が1つのスロットに2つの記憶媒体を収納できる構成となっているので、媒体情報記憶部16に記憶されているテーブルデータには、図6に示すように、スロット番号に対して「行1」,「行2」と2つの媒体情報が記録されている。図6に示すテーブルデータには、番号「1」のスロットのカウンタ値が「3」であり、「1」のスロットには識別子「VOL001」の記憶媒体が収納されていることが記録されている。」
6.「【0054】
図9は、本第2実施形態の磁気テープライブラリ装置1bの構成を示す機能ブロック図である。第2実施形態の磁気テープライブラリ装置1bは、上述した第1実施形態の磁気テープライブラリ装置1の構成に比べて、マガジン15bにマガジンを識別するためのマガジン識別子156が付されている点が異なっている(図10参照)。このマガジン識別子156は、例えば、バーコードで記録されたものであってもよいし、RFIDといった電子的なタグに記録されたものであってもよい。
【0055】
また、図9に示すように、本第2実施形態の磁気テープライブラリ装置1bは、第1の実施形態の磁気テープライブラリ装置1と同様に、ホストI/F部11と、テープドライブ13と、媒体搬送部14と、媒体情報記憶部16と、カウンタリード部17と、媒体確認部19とを備えており、さらに、主制御部12bと、マガジン識別子156を保持するマガジン15bと、マガジン15bに付されているマガジン識別子156を読み取るマガジン識別子リード部18とを備えている。マガジン識別子リード部18は、例えば、マガジン識別子156がバーコードに記録されている場合は、媒体搬送部14にバーコードリーダを取り付けた構成であり、マガジン識別子156がRFIDタグに記録されている場合は、タグリーダである。マガジン識別子リード部18が読み取ったマガジン識別子156は媒体情報記憶部16に記憶される。
【0056】
図11は、本第2実施形態の媒体情報記憶部16に記憶されるテーブルデータを表した図である。図11に示すように、本第2実施形態の媒体情報記憶部16には、スロット毎のカウンタ値,記憶媒体の有無又は記憶媒体の識別子に加えて、搭載されているマガジン15bのマガジン識別子156が記憶されている。図11に示すテーブルデータには、マガジン識別子が「MAG001」のマガジンのスロット「1」のカウンタ値が「3」であり、スロット「1」には識別子「VOL001」の記憶媒体が収納されていることが記録されている。」
7.「【0057】
また、本第2実施形態における主制御部12bは、上述した主制御部12と同様の機能と、マガジン識別子リード部18が読み取ったマガジン識別子と媒体情報記憶部16に記憶されている前回読み取ったマガジン識別子とを照合し、一致しなかった場合、全スロットの記憶媒体の有無を確認するように媒体確認部19の動作を制御する機能を備えている。
【0058】
このように、第2の実施形態では、マガジン15bの個体識別を行うためのマガジン識別子を用いてマガジン15bが他のマガジンに入れ替えられたことを判断し、マガジン15が入れ替えられた場合はすべてのスロットの媒体確認を行うことにより、異なるマガジンでカウンタ値が偶然一致している場合でも正しく記憶媒体の入れ替わりを検出することができる。
【0059】
次に、本第2実施形態の磁気テープライブラリ装置1bの動作について説明する。
【0060】
図12は、本第2実施形態の磁気テープライブラリ装置1bの動作を示すフローチャートである。まず、マガジン識別子リード部18がマガジン15bのマガジン識別子156を読み取る(図12のステップS301)。
【0061】
主制御部12bが、この読み取られたマガジン識別子と媒体情報記憶部16に記憶されたマガジン識別子とが一致するか否か判断し(図12のステップS302)、一致した場合(図12のステップS302のYes)、第1の実施形態と同様に、各スロットのカウンタ部159の計数値とテーブルデータ内のカウンタ値との比較を行い、カウンタ値が異なるスロットのみの確認を行う(図12のステップS304,図7のステップS101?S104))。
【0062】
マガジン識別子が一致しなかった場合(図12のステップS302のNo)、主制御部12bは、カウンタ値が一致するか否かに関わらず全てのスロットの媒体確認を行うように媒体確認部19の動作を制御する(図12のステップS303)。」
8.「【0063】
本第2実施形態の磁気テープライブラリ装置1bは、このように動作することで、マガジンを取り替えた際に、すべての記憶媒体が入れ替わったにも関わらず、入れ替えたマガジンのカウンタ部の計数値と前回読み取られたカウンタ部の計数値とが偶然一致してしまう場合があっても、マガジン識別子が変わると、全てのスロットの媒体確認を行うので、正しく記憶媒体の入れ替わりを検出することができる。」

そして、第2実施形態に着目して、上記1.ないし8.の記載事項と図面の記載とを総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「複数のスロット155内に記憶媒体152をそれぞれ格納するマガジン15bと、マガジン15b及びテープドライブ13に対して記憶媒体を出し入れすると共にマガジン15bとテープドライブ13との間で記憶媒体を搬送する媒体搬送部14と、磁気テープライブラリ装置1bの全体動作を制御する主制御部12bと、搭載されているマガジン15bのマガジン識別子156とスロット毎のカウンタ値と記憶媒体の有無又は記憶媒体の識別子とを記憶する媒体情報記憶部16と、を具備する磁気テープライブラリ装置1bであって、
前記マガジン15bには、前記マガジン識別子156を記録したバーコード又はRFIDタグが設けられ、
前記媒体搬送部14には、前記マガジン識別子156を読み取るマガジン識別子リード部18が設けられ、
主制御部12bは、マガジン識別子リード部18によって読み取られたマガジン識別子と媒体情報記憶部16に記憶されたマガジン識別子とが一致するか否か判断し、一致した場合、各スロットのカウンタ部159のカウント値と媒体情報記憶部16に記憶されたカウンタ値とが異なるスロットのみの媒体確認を行い、マガジン識別子が一致しなかった場合、カウンタ値が一致するか否かに関わらず全てのスロットの媒体確認を行うように制御する、
磁気テープライブラリ装置1b。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「マガジン15b」は本願発明1における「マガジン」に相当し、引用発明におけるマガジン15bが有する「スロット155」と、当該スロット155に格納される「記憶媒体152」は、本願発明1における「マガジンセル」及び「記録媒体」にそれぞれ相当する。
イ.引用発明における「媒体搬送部14」は、本願発明1における「アクセッサ」に相当し、上記媒体搬送部14は「マガジン15に対して記憶媒体を出し入れする」ことからみて、「マガジンとの間で記録媒体を授受する」ものであるということができ、また、「マガジン15とテープドライブ13との間で記憶媒体を搬送する」ことからみて、「マガジンのセル配置方向に沿って移動自在に設けられて」いるということができる。
ウ.引用発明における「主制御部12b」は、「磁気テープライブラリ装置1bの全体動作を制御する」ものであるから、媒体搬送部14の移動及び位置も制御することは明らかであり、そうすると、上記「主制御部12b」は本願発明1における「制御部」に相当する。
エ.引用発明における「マガジン識別子156」と、それを記録した「バーコード又はRFIDタグ」及びそれを読み取る「マガジン識別子リード部18」は、本願発明1における「マガジンID」、「ID記録部」、「読取手段」にそれぞれ相当する。
オ.引用発明における「磁気テープライブラリ装置1b」は、本願発明1における「ライブラリ装置」に相当する。
カ.引用発明は、「搭載されているマガジン15bのマガジン識別子156とスロット毎のカウンタ値と記憶媒体の有無又は記憶媒体の識別子とを記憶する媒体情報記憶部16」は具備しているが、本願発明1のような「前記アクセッサのアクセス経路を補正するための補正データを各マガジン固有のマガジンID毎に記憶する補正データ記憶部」は具備していない。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「各マガジンセル内に記録媒体をそれぞれ格納するマガジンと、該マガジンのセル配置方向に沿って移動自在に設けられて該マガジンとの間で記録媒体を授受するアクセッサと、該アクセッサの移動及び位置を制御する制御部と、を具備するライブラリ装置であって、
前記マガジンには、前記マガジンIDを記録したID記録部が設けられ、
前記アクセッサには、前記マガジンIDを読み取る読取手段が設けられた、
ライブラリ装置。」

である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本願発明1においては、「複数」のマガジンが「マガジン設置部の所定位置に配置され」ているのに対して、引用発明においては、そのようにされていない点。
<相違点2>
本願発明1においては、「前記アクセッサのアクセス経路を補正するための補正データを各マガジン固有のマガジンID毎に記憶する補正データ記憶部」を具備しているのに対して、引用発明においては、そのような記憶部を具備していない点。
<相違点3>
本願発明1においては、マガジンには「該マガジンセルの位置を測定する基準となる基準ターゲットとが設けられ」ているのに対して、引用発明においては、マガジンにそのような基準ターゲットは設けられていない点。
<相違点4>
本願発明1においては、アクセッサに設けられた読取手段は、「前記マガジンIDと前記基準ターゲットとを読み取る」のに対して、引用発明においては、「前記マガジンIDを読み取る」点。
<相違点5>
本願発明1においては、制御部は、「前記読取手段によって読み取られた前記マガジンIDが、過去に読み取ったことのあるマガジンIDのマガジンであるか否かを判断し、過去に読み取ったマガジンIDである場合には、前記補正データ記憶部が記憶する当該マガジンIDに対応する補正データに基づいて、前記アクセッサの移動を制御し、また、過去に読み取っていないマガジンIDである場合には、前記基準ターゲットに基づき補正データを算出して前記補正データ記憶部に格納し、該補正データに基づいて前記アクセッサの移動を制御する」のに対して、引用発明の「制御部」は、そのような制御をしていない点。

(2)判断
まず、相違点2及び相違点5について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開平05-342723号公報)には、磁気テープライブラリ装置において、カートリッジ保管セル12内の複数の収納棚13の挿入口にカートリッジ搬送機構部14を正確に位置決めするために、前記収納棚13毎に目標フラグ19を設け、前記目標フラグ19を前記カートリッジ搬送機構部14に設けた光電センサ18で検出することによって得られた位置データをメモリに記憶することにより、前記カートリッジ搬送機構部14を制御するための位置データの補正を行うことが記載されている(段落【0002】、【0008】ないし【0015】を参照。)。
そして、上記引用文献2の「磁気テープライブラリ装置」、「カートリッジ保管セル12」、「収納棚13」、「カートリッジ搬送機構部14」、「目標フラグ19」、「光電センサ18」、「位置データ」、「メモリ」が、本願発明1における「ライブラリ装置」、「マガジン」、「マガジンセル」、「アクセッサ」、「基準ターゲット」、「読取手段」、「補正データ」、「補正データ記憶部」にそれぞれ相当することを勘案すると、引用文献2には、ライブラリ装置に、「前記アクセッサのアクセス経路を補正するための補正データを記憶する補正データ記憶部」を設け、「前記補正データ記憶部が記憶する補正データに基づいて、前記アクセッサの移動を制御する」ことが記載されているといえる。
しかしながら、上記引用文献2には、「前記補正データを各マガジン固有のマガジンID毎に記憶する」ことまでは記載されておらず、かつ、「前記読取手段によって読み取られた前記マガジンIDが、過去に読み取ったことのあるマガジンIDのマガジンであるか否かを判断し、過去に読み取ったマガジンIDである場合には、前記補正データ記憶部が記憶する当該マガジンIDに対応する補正データに基づいて、前記アクセッサの移動を制御し、また、過去に読み取っていないマガジンIDである場合には、前記基準ターゲットに基づき補正データを算出して前記補正データ記憶部に格納し、該補正データに基づいて前記アクセッサの移動を制御する」ことも記載されていない。
また、上記「第4 引用発明」において摘示したように、引用発明は、複数の記録媒体を収納したマガジン内の記憶媒体の収納状況を確認する処理が完了するまでにかかる時間を短縮し得るライブラリ装置を提供することを目的とするものであって、マガジン内の記憶媒体を確認する処理が完了するまでにかかる時間を有効に短縮することができるとともに、マガジンを取り替えた際にも、正しく記憶媒体の入れ替わりを検出することができるという効果を奏するものである。すなわち、引用文献1には、マガジン内の記憶媒体の収納状況を確認する処理に関する発明は記載されているものの、マガジンに対する記憶媒体の収納処理を効率化して、当該収納処理に係る時間を短縮化という課題や、そのための解決手段については、何ら記載も示唆もされておらず、特に、アクセッサのアクセス経路を補正することに関して、何ら記載も示唆もされていないから、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用する動機付けもない。
さらに、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特開平05-258433号公報)には、複数のマガジンを装着することは記載されているが、上記相違点2及び相違点5に係る発明特定事項は何ら記載も示唆もされていない。

したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2.本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1をさらに減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由で、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3.本願発明4ないし6について
本願発明4はライブラリ装置のアクセッサの制御方法の発明であって、上記ライブラリ装置は、本願発明1の上記相違点2に係る「前記アクセッサのアクセス経路を補正するための補正データを各マガジン固有のマガジンID毎に記憶する補正データ記憶部」を有しており、かつ、上記制御方法は、本願発明1の上記相違点5に係る制御部の制御内容に対応する複数のステップを有するものであるから、本願発明1と同様の理由で、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明5及び6は、本願発明4をさらに減縮した発明であるから、本願発明4と同様の理由で、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし6は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-22 
出願番号 特願2012-65196(P2012-65196)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 斎藤 眞  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 國分 直樹
酒井 朋広
発明の名称 ライブラリ装置及びライブラリ装置におけるアクセッサの制御方法  
代理人 森 隆一郎  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 伊藤 英輔  
代理人 松沼 泰史  
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