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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1328359
審判番号 不服2016-756  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-18 
確定日 2017-05-17 
事件の表示 特願2012- 51219「画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月19日出願公開、特開2013-186691〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月8日の出願であって、平成27年6月23日付けで拒絶理由が通知され、平成27年8月5日付けで手続補正がなされ、平成27年10月19日付けで拒絶査定(謄本送達日平成27年10月21日)がなされ、これに対して平成28年1月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成28年1月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年1月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(この記載事項により特定される発明を以下、「本願補正発明」という。)。
「撮像素子を備える撮像手段と、
前記撮像手段により撮影された実画像の中から拡張現実マーカを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された実画像中の拡張現実マーカの位置、大きさ、姿勢を認識する認識手段と、
前記認識手段により認識された拡張現実マーカの位置、大きさ、姿勢から当該拡張現実マーカの現在の向きに相当する撮影方向を特定する撮影方向特定手段と、
前記認識手段により認識された拡張現実マーカに対して予め決められている基準方向が、前記撮影方向特定手段によって特定された撮影方向に向くまでの回転角度を算出して仮想オブジェクトの方向を設定する方向設定手段と、
前記認識手段により認識された実画像中の拡張現実マーカの位置に、仮想オブジェクトの向きを前記方向設定手段により設定された方向へ変更し重畳表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。」

2 補正の適合性
この補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定する事項である「検出手段」、「認識手段」、「撮影方向特定手段」、「方向設定手段」及び「表示制御手段」を限定するもので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特許第4869430号公報(発行日:平成24年2月8日。以下「引用例」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。

ア 「 【請求項8】
実カメラによって撮像された画像に仮想オブジェクト画像を重ね合わせた画像を生成する画像処理装置であって、
前記実カメラによって撮像された被写体の実画像を取得する実画像取得手段と、
実空間における前記実カメラの位置および姿勢に応じた位置姿勢情報を取得する位置姿勢情報取得手段と、
仮想空間内において、前記位置姿勢情報取得手段によって取得された位置姿勢情報に基づいて仮想カメラの位置および姿勢を設定する仮想カメラ設定手段と、
ユーザによる入力手段への入力に応じて、前記仮想空間内に配置された仮想オブジェクトの少なくとも一部の位置および姿勢の少なくとも一方を変更する仮想オブジェクト変更手段と、
前記仮想オブジェクト変更手段によって位置および姿勢の少なくとも一方が変更された前記仮想オブジェクトを前記仮想カメラで撮像することにより仮想オブジェクト画像を生成する仮想オブジェクト画像生成手段と、
前記実画像取得手段によって取得された実画像と前記仮想オブジェクト画像生成手段によって生成された仮想オブジェクト画像とを重ね合わせた重畳画像を生成する重畳画像生成手段と、
前記重畳画像生成手段によって生成された重畳画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、
ユーザによる撮影指示に応じて、前記重畳画像を記憶手段に保存する保存手段と、
前記仮想空間内に配置された複数の仮想オブジェクトから1つの仮想オブジェクトを選択する選択手段とを備え、
前記仮想オブジェクト変更手段は、ユーザによる前記入力手段への入力に応じて、前記選択手段により選択された仮想オブジェクトの少なくとも一部の位置および姿勢の少なくとも一方を変更し、
前記重畳画像生成手段は、前記選択手段によって前記仮想オブジェクトが選択されたことを示す選択画像を更に重ね合わせた重畳画像を生成し、
前記表示制御手段は、前記選択画像を更に重ね合せた重畳画像を前記表示手段に表示させ、
前記保存手段は、ユーザによる撮影指示に応じて、前記選択画像を非表示にして前記重畳画像を記憶手段に保存する、画像処理装置。」

イ 「【0056】
外側撮像部23は、上側ハウジング21の外側面(上側LCD22が設けられた主面と反対側の背面)21Dに設けられた2つの撮像部(23aおよび23b)の総称である。外側撮像部(左)23aと外側撮像部(右)23bの撮像方向は、いずれも当該外側面21Dの外向きの法線方向である。また、これらの撮像部はいずれも、上側LCD22の表示面(内側面)の法線方向と180度反対の方向に設計される。すなわち、外側撮像部(左)23aの撮像方向および外側撮像部(右)23bの撮像方向は、平行である。外側撮像部(左)23aと外側撮像部(右)23bとは、ゲーム装置10が実行するプログラムによって、ステレオカメラとして使用することが可能である。また、プログラムによっては、2つの外側撮像部(23aおよび23b)のいずれか一方を単独で用いて、外側撮像部23を非ステレオカメラとして使用することも可能である。また、プログラムによっては、2つの外側撮像部(23aおよび23b)で撮像した画像を合成してまたは補完的に使用することにより撮像範囲を広げた撮像をおこなうことも可能である。本実施形態では、外側撮像部23は、外側撮像部(左)23aおよび外側撮像部(右)23bの2つの撮像部で構成される。外側撮像部(左)23aおよび外側撮像部(右)23bは、それぞれ所定の共通の解像度を有する撮像素子(例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等)と、レンズとを含む。レンズは、ズーム機構を有するものでもよい。」

ウ 「【0087】
具体的には、マーカ61が検出された場合、上側LCD22には、外側撮像部23によって撮像された実画像(マーカ61と背景を含む実空間を撮像した画像)に、仮想キャラクタ51?53、カーソル55、および、表示バー56が重畳表示される。仮想キャラクタ51?53は、仮想空間に存在するキャラクタであり、人を模した仮想オブジェクトである。より具体的には、上側LCD22には、マーカ61の上に仮想キャラクタ52が乗っている様子が表示される。また、当該仮想キャラクタ52の左側(画面上の左側)には仮想キャラクタ51が、仮想キャラクタ52の右側(画面上の右側)には仮想キャラクタ53が表示される。なお、カーソル55は、現在選択されている仮想キャラクタを示すためのものである。また、表示バー56は、ゲーム装置10の操作方法をユーザに知らせるために表示される。」

エ 「【0089】
仮想キャラクタ51?53は、仮想空間に配置されたオブジェクトである。図6は、仮想空間上の座標系の定義を示す図である。仮想空間は、マーカ61の中心を原点としたXYZ座標系(マーカ座標系)によって定義される。マーカ座標系は、マーカ61の矢印と同じ方向にZ軸、矢印方向を基準として右向き(右方向)にX軸、マーカ61に対して垂直上向き(上方向)にY軸が設定される。このように、実空間に配置されたマーカ61を基準として仮想空間の座標系が定義されることにより、実空間と仮想空間とを対応付けることができる。このようにして定義された仮想空間上に仮想キャラクタ51?53が配置される。例えば、仮想キャラクタ52は、マーカ座標系の原点(0,0,0)に配置され、その向き(姿勢)は、X軸をY軸周りに45度回転させた方向に設定される。また、仮想キャラクタ51および53は、XZ平面上の所定の位置に配置され、その向きは、仮想キャラクタ52と同じに設定される。」

オ 「【0104】
仮想キャラクタ情報73は、各仮想キャラクタ51?53に関連する情報である。具体的には、仮想キャラクタ情報73は、仮想キャラクタの形状を表す3次元モデルデータ(ポリゴンデータ)や、仮想キャラクタの模様をあらわすテクスチャデータ、仮想空間における仮想キャラクタの位置や姿勢の情報、および、現在選択されているか否かを示す情報を含む。各仮想キャラクタ51?53は、これら3次元モデルデータ、テクスチャデータ、位置や姿勢に関する情報、現在選択されているか否かを示す情報を有している。なお、各仮想キャラクタは、部位毎に上記3次元モデルデータ、位置や姿勢に関する情報を有している。例えば、仮想キャラクタ51は、体(首から下の部分)の3次元モデルデータ、当該体の位置や姿勢に関する情報、頭部の3次元モデルデータ、当該頭部の位置や姿勢に関する情報を有している。頭部の位置と体の位置とは、予め定められた所定の関係を有している。このように部位毎に上記情報を有することにより、頭部と体の向きを異なるようにすることができる。例えば、仮想キャラクタ51の体が仮想空間内の原点に位置して当該体の向きがX軸の正方向を向いている場合において、仮想キャラクタ51の顔を原点よりもY軸正方向の所定位置に配置して、顔をZ軸の正方向に向かせることができる。」

カ 「【0123】
ステップS10において、情報処理部31は、注目処理を実行する。注目処理では、各仮想キャラクタを仮想カメラに注目させる処理であり、各仮想キャラクタの顔を仮想カメラの方向に向かせる処理である。注目処理の詳細については、後述する。注目処理の後、ステップS11の処理が行われる。」

キ 「【0131】
(マーカ認識処理の説明)
図13は、マーカ認識処理(ステップS3)の詳細を示すフローチャートである。まず、ステップS21において、情報処理部31は、マーカを検出したか否かを判定する。ここでは、ステップS2で取得した左目用実画像72Lおよび右目用実画像72Rを用いて、2つの画像の何れにもマーカが含まれているか否かを判定する。具体的には、情報処理部31は、各画像に対してパターンマッチング等の画像処理を行い、マーカが含まれるか否かを判定する。どちらか一方の画像にマーカが含まれない場合、判定結果は否定となって、次にステップS25の処理が実行される。一方、何れの画像にもマーカが含まれている場合、判定結果は肯定となって、次にステップS22の処理が実行される。
【0132】
ステップS22において、情報処理部31は、実カメラとマーカとの位置関係を算出する。具体的には、情報処理部31は、左目用実画像72Lに含まれるマーカの当該左目用実画像72Lにおける位置や大きさ、形状、および、マーカの矢印の方向等に基づいて、外側撮像部(左)23aと実空間に存在するマーカ61との位置関係を算出する。ここで、外側撮像部(左)23aとマーカ61との位置関係とは、マーカ61および外側撮像部(左)23aの何れか一方を基準とした場合の他方の3次元の位置および姿勢である。すなわち、上記位置関係は、マーカ61に対する外側撮像部(左)23aの相対的な位置および姿勢である。同様に、情報処理部31は、右目用実画像72Rに含まれるマーカの当該右目用実画像72Rにおける位置や大きさ、形状、および、マーカの矢印の方向等に基づいて、外側撮像部(右)23bと実空間に存在するマーカ61との位置関係を算出する。」

ク 「【0136】
ステップS23において、情報処理部31は、左右の仮想カメラの位置および姿勢を決定する。ここでは、左右の仮想カメラの位置および姿勢は、外側撮像部23の位置および姿勢と一致する。すなわち、左仮想カメラ58aの仮想空間における位置および姿勢は、外側撮像部(左)23aの位置および姿勢と一致するように設定される。また、右仮想カメラ58bの仮想空間における位置および姿勢は、外側撮像部(右)23bの位置および姿勢と一致するように設定される。具体的には、左仮想カメラ58aの位置および姿勢は、行列(左ビュー行列)として表され、ステップS22で算出された外側撮像部(左)23aの位置および姿勢を表す行列が、左仮想カメラ情報74LとしてRAMに保存される。同様に、右仮想カメラ58bの位置および姿勢は、行列(右ビュー行列)として表され、ステップS22で算出された外側撮像部(右)23bの位置および姿勢を表す行列が、右仮想カメラ情報74RとしてRAMに保存される。なお、上述のように外側撮像部(左)23aの姿勢と外側撮像部(右)23bの姿勢とは常に一致するため、左仮想カメラ58aの姿勢と右仮想カメラ58bの姿勢とも一致する。ステップS23の後、情報処理部31は、次にステップS24の処理を実行する。」

ケ 「【0156】
ステップS52において、情報処理部31は、仮想カメラの位置と仮想キャラクタの頭部の位置とに基づいて、仮想キャラクタの視線方向を算出する。図23は、仮想キャラクタの視線方向を示す図である。ここで、「仮想カメラの位置」は、図23に示すように、左仮想カメラ58aの位置と右仮想カメラ58bの位置との中間である。具体的には、情報処理部31は、上記ステップS41で取得したビュー行列(左右の仮想カメラの中点、および、左右の仮想カメラと同じ姿勢を示す行列)に基づいて、「仮想カメラの位置」(左右の仮想カメラの中点)を取得する。また、情報処理部31は、ステップS51で取得した仮想キャラクタの体の位置に基づいて、当該仮想キャラクタの頭部の位置を算出する。仮想キャラクタの体と頭部は、予め定められた位置関係を有しており、情報処理部31は、仮想キャラクタの体の位置に、所定のベクトルを加えることによって当該仮想キャラクタの頭部の位置を算出する。そして、情報処理部31は、上記仮想キャラクタの頭部の位置から上記仮想カメラの位置に向かうベクトルを算出して、仮想キャラクタの視線方向としてRAMに記憶する。次に、情報処理部31は、ステップS53の処理を実行する。なお、仮想キャラクタの体と頭部の位置関係は、当該仮想キャラクタのポーズ毎に異なるため、現在の仮想キャラクタのポーズに応じて仮想キャラクタの頭部の位置が算出される。
【0157】
ステップS53において、情報処理部31は、ステップS52で算出した視線方向に基づいて、頭部の各軸(XY軸)周りの回転角度を算出する。ここでは、仮想キャラクタの頭部(顔)を上記視線方向に向かせるために必要なX軸およびY軸周りの回転角度が算出される。具体的には、情報処理部31は、仮想キャラクタ情報73を参照して、仮想キャラクタの体の姿勢を示す行列(現在の体の姿勢行列)を取得する。次に、情報処理部31は、当該仮想キャラクタの頭部を上記視線方向に向けたときの頭部の姿勢行列(視線方向の頭部の姿勢行列)を算出する。そして、情報処理部31は、上記現在の体の姿勢行列と上記視線方向の頭部の姿勢行列とに基づいて、頭部の回転を示す回転行列を算出し、当該回転行列に基づいて、各軸(X軸およびY軸)周りの回転角度を算出する。次に、情報処理部31は、ステップS54の処理を実行する。」

コ 「【0160】
ステップS56において、情報処理部31は、頭部の姿勢行列を決定する。具体的には、情報処理部31は、直前のステップS55で頭部の回転角度が修正された場合は、当該修正された回転角度で頭部を回転させた場合の頭部の姿勢行列を算出する。また、情報処理部31は、ステップS55で頭部の回転角度が修正されなかった場合、ステップS53で算出した視線方向の頭部の姿勢行列を、新たな頭部の姿勢行列として決定し、仮想キャラクタ情報73を更新する。情報処理部31は、次にステップS57の処理を実行する。」

サ 「【0170】
また、本実施形態では、注目処理において、仮想キャラクタの顔が仮想カメラを向くように顔(頭部)の姿勢を変更した。他の実施形態では、体全体を仮想カメラの方向に向けてもよい。また、他の実施形態では、顔ではなく、目のみを仮想カメラの方向に向けてもよいし、腕や足等を仮想カメラの方向に向けてもよい。すなわち、注目処理において、仮想キャラクタの体の一部位を仮想カメラの方向に向けてもよい。」

シ 図5、図12、図13及び図16の記載は以下のとおりである。
図5

図12


図13


図16


上記記載アの「実カメラ」は、上記記載イの「外側撮像部23」に対応するものであって、上記記載イによれば、「外側撮像部23」は、それぞれが撮像素子を含む外側撮像部(左)23aおよび外側撮像部(右)23bで構成され、プログラムによっては、2つの外側撮像部(23aおよび23b)のいずれか一方を単独で用いて、外側撮像部23を非ステレオカメラとして使用することも可能であるとしている。
そうすると、撮像素子を含む外側撮像部(左)23aを単独で用いて非ステレオカメラとする場合には、「外側撮像部(左)23a」、「左目用実画像72L」、「左仮想カメラ58a」、「左仮想カメラ58aの位置および姿勢」及び「左ビュー行列」は、それぞれ「外側撮像部23」、「実画像」、「仮想カメラ」、「仮想カメラの位置および姿勢」及び「ビュー行列」と読み替えることができる。

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「外側撮像部23によって撮像された画像に仮想オブジェクト画像を重ね合わせた画像を生成する画像処理装置であって、
撮像素子を含む前記外側撮像部23と、
前記外側撮像部23によって撮像された被写体の実画像を取得する実画像取得手段と、
実空間における前記外側撮像部23の位置および姿勢に応じた位置姿勢情報を取得する位置姿勢情報取得手段と、
仮想空間内において、前記位置姿勢情報取得手段によって取得された位置姿勢情報に基づいて仮想カメラの位置および姿勢を設定する仮想カメラ設定手段と、
ユーザによる入力手段への入力に応じて、前記仮想空間内に配置された仮想オブジェクトの少なくとも一部の位置および姿勢の少なくとも一方を変更する仮想オブジェクト変更手段と、
前記仮想オブジェクト変更手段によって位置および姿勢の少なくとも一方が変更された前記仮想オブジェクトを前記仮想カメラで撮像することにより仮想オブジェクト画像を生成する仮想オブジェクト画像生成手段と、
前記実画像取得手段によって取得された実画像と前記仮想オブジェクト画像生成手段によって生成された仮想オブジェクト画像とを重ね合わせた重畳画像を生成する重畳画像生成手段と、
前記重畳画像生成手段によって生成された重畳画像を表示手段に表示させる表示制御手段とを備え、
マーカ認識処理では、実画像を用いて、マーカを検出したか否かを判定し、
実画像に含まれるマーカの当該実画像における位置や大きさ、形状、および、マーカの矢印の方向等に基づいて、外側撮像部23と実空間に存在するマーカ61との位置関係を算出し、ここで、外側撮像部23とマーカ61との位置関係とは、マーカ61および外側撮像部23の何れか一方を基準とした場合の他方の3次元の位置および姿勢であり、
仮想カメラの仮想空間における位置および姿勢は、外側撮像部23の位置および姿勢と一致するように設定され、
仮想カメラの位置および姿勢は、行列(ビュー行列)として表され、
仮想キャラクタ51?53は、仮想空間に配置されたオブジェクトであり、
仮想空間は、マーカ61の中心を原点とし、マーカ61の矢印と同じ方向にZ軸が設定されたマーカ座標系によって定義され、例えば、仮想キャラクタ51の体が仮想空間内の原点に位置し、顔をZ軸の正方向に向かせることができ、
注目処理は、各仮想キャラクタの顔を仮想カメラの方向に向かせる処理であり、
上記ステップS41で取得したビュー行列に基づいて、「仮想カメラの位置」を取得し、
上記仮想キャラクタの頭部の位置から上記仮想カメラの位置に向かうベクトルを算出して、仮想キャラクタの視線方向とし、
当該仮想キャラクタの頭部を上記視線方向に向けたときの頭部の姿勢行列(視線方向の頭部の姿勢行列)を算出し、
視線方向の頭部の姿勢行列を、新たな頭部の姿勢行列として決定し、仮想キャラクタ情報73を更新し、
上側LCD22には、マーカ61の上に仮想キャラクタ52が乗っている様子が表示される、
画像処理装置。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「外側撮像部23」は、本願補正発明にいう「撮像素子を備える撮像手段」に相当し、引用発明の「画像処理装置」は、本願補正発明にいう「画像処理装置」に対応する。

イ 引用発明は、「実空間における前記外側撮像部23の位置および姿勢に応じた位置姿勢情報を取得する位置姿勢情報取得手段」及び「仮想空間内において、前記位置姿勢情報取得手段によって取得された位置姿勢情報に基づいて仮想カメラの位置および姿勢を設定する仮想カメラ設定手段」を有し、実画像を用いて、マーカを検出したか否かを判定し、実画像に含まれるマーカの当該実画像における位置や大きさ、形状、および、マーカの矢印の方向等に基づいて、仮想カメラの位置および姿勢を算出している。
そうすると、引用発明の「マーカ」及び「位置姿勢情報」は、それぞれ本願補正発明の「拡張現実マーカ」及び「拡張現実マーカの位置、大きさ、姿勢」に相当し、引用発明は、本願補正発明にいう「前記撮像手段により撮影された実画像の中から拡張現実マーカを検出する検出手段」及び「前記検出手段により検出された実画像中の拡張現実マーカの位置、大きさ、姿勢を認識する認識手段」を有しているといえる。
また、引用発明の「仮想カメラ」の「姿勢」は、マーカ61および外側撮像部23の何れか一方を基準とした場合の他方の3次元の姿勢であるから、本願補正発明にいう「拡張現実マーカの現在の向きに相当する撮影方向」に相当し、引用発明の「仮想空間内において、前記位置姿勢情報取得手段によって取得された位置姿勢情報に基づいて仮想カメラの位置および姿勢を設定する仮想カメラ設定手段」は、本願補正発明にいう「前記認識手段により認識された拡張現実マーカの位置、大きさ、姿勢から当該拡張現実マーカの現在の向きに相当する撮影方向を特定する撮影方向特定手段」に相当する。

ウ 引用発明は、「ユーザによる入力手段への入力に応じて、前記仮想空間内に配置された仮想オブジェクトの少なくとも一部の位置および姿勢の少なくとも一方を変更する仮想オブジェクト変更手段」を有し、顔を仮想カメラの方向に向かせる注目処理では、仮想キャラクタの頭部を視線方向に向けたときの「頭部の姿勢行列」を算出して仮想キャラクタ情報73を更新している。
ここで、姿勢行列とは、回転角度に相当する姿勢角をその成分として含む行列であるから、姿勢行列を算出することにより、回転角度が算出されると解することができる。
そして、引用発明の「仮想オブジェクト」は、マーカ61の中心を原点とし、マーカ61の矢印と同じ方向にZ軸が設定された仮想空間上のマーカ座標系において、体が原点に位置し、顔(「頭部」)がZ軸の正方向に向かうように配置された「仮想キャラクタ」であり、仮想カメラの姿勢は、外側撮像部23の姿勢と一致するから、引用発明の「仮想オブジェクト変更手段」は、「仮想キャラクタの頭部が撮像手段の方向に向くまでの回転角度」を算出して「仮想キャラクタの頭部」の方向を設定するものといえる。
そうすると、引用発明の「仮想オブジェクト変更手段」と本願補正発明の「方向設定手段」とは、いずれも「仮想オブジェクトが撮像手段の方向に向くまでの回転角度を算出し、仮想オブジェクトの方向を設定する方向設定手段」である点で共通する。

エ 引用発明は、「仮想オブジェクト画像生成手段」により、位置および姿勢の少なくとも一方が変更された仮想オブジェクト画像を生成し、「重畳画像生成手段」により、実画像と仮想オブジェクト画像とを重ね合わせた重畳画像を生成し、「表示制御手段」により、表示手段に重畳画像を表示することで、LCD22に、マーカ61の上に仮想キャラクタ52が乗っている様子を表示させているから、引用発明の「仮想オブジェクト画像生成手段」、「重畳画像生成手段」及び「表示制御手段」は、本願補正発明にいう 「前記認識手段により認識された実画像中の拡張現実マーカの位置に、仮想オブジェクトの向きを前記方向設定手段により設定された方向へ変更し重畳表示させる表示制御手段」に対応する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「撮像素子を備える撮像手段と、
前記撮像手段により撮影された実画像の中から拡張現実マーカを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された実画像中の拡張現実マーカの位置、大きさ、姿勢を認識する認識手段と、
前記認識手段により認識された拡張現実マーカの位置、大きさ、姿勢から当該拡張現実マーカの現在の向きに相当する撮影方向を特定する撮影方向特定手段と、
仮想オブジェクトが撮像手段の方向に向くまでの回転角度を算出し、仮想オブジェクトの方向を設定する方向設定手段と、
前記認識手段により認識された実画像中の拡張現実マーカの位置に、仮想オブジェクトの向きを前記方向設定手段により設定された方向へ変更し重畳表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明では、「仮想オブジェクト」が「拡張現実マーカの位置」にあり、「方向設定手段」は、「前記認識手段により認識された拡張現実マーカに対して予め決められている基準方向が、前記撮影方向特定手段によって特定された撮影方向に向くまでの回転角度」を算出して「仮想オブジェクト」の方向を設定し、「表示制御手段」は、「仮想オブジェクト」の向きを変更して重畳表示させるのに対し、
引用発明では、「仮想オブジェクト」が「仮想キャラクタの体」と「仮想オブジェクトの頭部」とを有し、「仮想キャラクタの体」が「拡張現実マーカの位置」にあり、「方向設定手段」は、「仮想キャラクタの頭部が撮像手段の方向に向くまでの回転角度」を算出して「仮想キャラクタの頭部」の方向を設定し、「表示制御手段」は、「仮想キャラクタの頭部」の向きを変更して重畳表示させる点。

(3)相違点に対する判断
上記引用例には、他の実施形態として、「体全体を仮想カメラの方向に向けてもよい」ことが示唆されており(上記(1)サ参照)、引用発明において、「体全体を仮想カメラの方向に向け」る注目処理を行う動機付けがあるといえる。

そして、「体全体を仮想カメラの方向に向け」る注目処理を行うべく、引用発明において、「仮想キャラクタの頭部」と「仮想キャラクタの体」とを一体の「仮想オブジェクト」として「拡張現実マーカの位置」(マーカ座標系の原点)に配置し、「仮想オブジェクト」の向きをZ軸の正方向と設定して、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

なお、この場合、Z軸が「基準方向」となり、「撮像手段の方向」は「前記撮影方向特定手段によって特定された撮影方向」と一致するから、「方向設定手段」は、「前記認識手段により認識された拡張現実マーカに対して予め決められている基準方向が、前記撮影方向特定手段によって特定された撮影方向に向くまでの回転角度」を算出して「仮想オブジェクト」の方向を設定し、「表示制御手段」は、「仮想オブジェクト」の向きを変更して重畳表示させることとなるのは明らかである。

また、これによる効果も引用発明から予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年1月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年8月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「撮像素子を備える撮像手段と、
前記撮像素子に映っている実画像の中から拡張現実マーカを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された拡張現実マーカを認識する認識手段と、
前記認識手段により拡張現実マーカが認識された場合に撮影方向を特定する撮影方向特定手段と、
前記撮影方向特定手段によって特定された撮影方向に対する方向を設定する方向設定手段と、
前記拡張現実マーカに対して予め決められている基準方向を基準として、前記方向設定手段により設定された方向に基づいて仮想オブジェクトの向きを変更し重畳表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。」

2 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明は、前記第2[理由]2(1)のとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、「検出手段」、「認識手段」、「撮影方向特定手段」、「方向設定手段」及び「表示制御手段」について、本願補正発明から平成28年1月18日付け手続補正に係る限定を省いたものであるから、本願補正発明と同様、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-26 
結審通知日 2017-02-21 
審決日 2017-03-06 
出願番号 特願2012-51219(P2012-51219)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡本 俊威  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 吉田 隆之
北岡 浩
発明の名称 画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラム  

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